(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】光学材料、光学材料用重合性組成物、硬化物、光学材料、プラスチックレンズ、光学材料の製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20230428BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20230428BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20230428BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230428BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230428BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20230428BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G02B5/22
G02C7/00
G02C7/10
C08G18/08 038
C08G18/32
C08G18/38
C08G18/72
(21)【出願番号】P 2021514237
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016889
(87)【国際公開番号】W WO2020213716
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2019079855
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391007507
【氏名又は名称】伊藤光学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】末杉 幸治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】小田 博文
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/011581(WO,A2)
【文献】特許第6324973(JP,B2)
【文献】国際公開第2009/101867(WO,A1)
【文献】特表2019-502953(JP,A)
【文献】特開2011-237730(JP,A)
【文献】特開2008-239592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02C 7/00
G02C 7/10
C08G 18/08
C08G 18/32
C08G 18/38
C08G 18/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み2mmで測定した透過率曲線が以下(1)~(2)の特性を満たし、かつCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が以下(3)の特性を満たし、
YIが以下(4)の特性を満たし、
下記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む有機色素を5ppm~50ppm含む、
片頭痛軽減用の光学材料;
(1)波長400nm~450nmまたは520nm~570nmに透過率の極大値を有し、且つ、波長400nm~450nmの透過率の最大値及び520nm~570nmの透過率が50%以上である。
(2)波長470nm~500nmに透過率の極小値を有し、その極小値が40%以下である。
(3)CIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、a*が
3.0以上
4.5以下であり、b*が
15以上
22以下である。
(4)YIが30以上42以下である。
【化1】
[一般式(1)中、X
1~X
8はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、エチニル基、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、フェニル基を有するエチニル基、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基を表す。ただし、X
1~X
8のすべてが水素原子であることはない。R
1~R
4はそれぞれ独立に、水素原子、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、または酸化金属原子を表す。]
【請求項2】
前記有機色素は、下記式(1-1)及び下記式(1-2)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む、請求項
1に記載の光学材料。
【化2】
【化3】
【請求項3】
さらに色調調整剤を3ppm以上20ppm以下含む、請求項1又は請求項
2に記載の光学材料。
【請求項4】
ポリ(チオ)ウレタン、及びポリ(チオ)ウレタンウレアから選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項5】
片頭痛軽減用レンズとして用いられる請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項6】
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の光学材料の片頭痛軽減用レンズとしての使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学材料、光学材料用重合性組成物、硬化物、光学材料、プラスチックレンズ、光学材料の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料に急速に普及してきている。
近年では、特定波長の光の透過を抑制することにより、物体や映像の視認性等が改善されたレンズや、眼への影響を軽減する眼鏡レンズの開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、ポルフィリン化合物を含有する防眩性レンズが開示されている。特許文献2には、ポルフィリン化合物を含有する眼鏡レンズが開示されており、当該レンズはコントラスト性に優れると記載されている。
【0004】
特許文献3には、特定の透過率曲線を備える、ポルフィリン化合物を含有するレンズが開示されている。当該文献には、当該レンズは、夜間における物体の視認性に優れると記載されている。
【0005】
特許文献1:特開2013-238634号公報
特許文献2:特開2011-237730号公報
特許文献3:国際公開第2015/037627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、哺乳類の網膜上に、新たな光受容器である、内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell: ipRGC)が発見され、ipRGCが概日リズムの光同調や瞳孔反射等に関与することが分かってきている。
また、片頭痛の症状のひとつとして、頭痛時に光を過敏に感じる光過敏の症状を有する場合が多いが、片頭痛の光過敏にipRGCが関与している可能性が示唆されている。
【0007】
ipRGCは、波長域450~500nmの青色成分光に強く反応することから、波長域450~500nmの青色成分光の透過率が低いレンズを有する眼鏡やサングラスなどのアイウェアを使用することで、使用者の片頭痛の予防・軽減の効果が期待されている。
さらに、波長域450~500nmの青色成分光の透過率が低いレンズは、外観上、黄色味を帯びることから、使用者にとって自然な色相のレンズに対するニーズもあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、波長域450~500nmの青色成分光の透過率を所定の範囲とすることにより、光過敏による片頭痛を軽減できることを見出し、本開示の発明を完成させた。
すなわち、本開示の発明は、以下に示すことができる。
【0009】
[1] 厚み2mmで測定した透過率曲線が以下(1)~(2)の特性を満たし、かつCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が以下(3)の特性を満たす、光学材料;
(1)波長400nm~450nmまたは520nm~570nmに透過率の極大値を有し、且つ、波長400nm~450nmの透過率の最大値及び520nm~570nmの透過率が50%以上である。
(2)波長470nm~500nmに透過率の極小値を有し、その極小値が40%以下である。
(3)CIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、a*が2.5以上5.5以下であり、b*が5以上25以下である。
[2] YIが30以上45以下である、[1]に記載の光学材料。
[3] 下記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む有機色素を5ppm~50ppm含む、[1]または[2]に記載の光学材料。
【0010】
【0011】
[一般式(1)中、X1~X8はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、エチニル基、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、フェニル基を有するエチニル基、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基を表す。ただし、X1~X8のすべてが水素原子であることはない。R1~R4はそれぞれ独立に、水素原子、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、または酸化金属原子を表す。]
[4] 前記有機色素は、下記式(1-1)及び下記式(1-2)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む、[3]に記載の光学材料。
【0012】
【0013】
【0014】
[5] さらに色調調整剤を3ppm以上20ppm以下含む、[3]または[4]に記載の光学材料。
[6] ポリ(チオ)ウレタン、及びポリ(チオ)ウレタンウレアから選択される少なくとも1種を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光学材料。
[7] 片頭痛軽減用レンズとして用いられる[1]~[6]のいずれかに記載の光学材料。
[8] (A)イソシアネート化合物と、
(B)2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の活性水素化合物と、
(C)下記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む有機色素5ppm~50ppmと、
を含む、光学材料用重合性組成物。
【0015】
【0016】
[一般式(1)中、X1~X8はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、エチニル基、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、フェニル基を有するエチニル基、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基を表す。ただし、X1~X8のすべてが水素原子であることはない。R1~R4はそれぞれ独立に、水素原子、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、または酸化金属原子を表す。]
[9] 前記有機色素(C)は、下記式(1-1)及び下記式(1-2)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む、[8]に記載の光学材料用重合性組成物。
【0017】
【0018】
【0019】
[10] 前記イソシアネート化合物(A)が、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、及び芳香脂肪族イソシアネート化合物から選択される少なくとも1種を含む、[8]または[9]に記載の光学材料用重合性組成物。
[11] 前記イソシアネート化合物(A)は、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種である、[10]に記載の光学材料用重合性組成物。
[12] 前記ポリチオール化合物は、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種である、[8]~[11]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[13] 前記有機色素(C)は、当該光学材料用重合性組成物100質量部中に、0.0005~0.0050質量部含まれる、[8]~[12]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[14] [8]~[13]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の硬化物。
[15] [14]に記載の硬化物を含む光学材料。
[16] [14]に記載の硬化物を含むプラスチックレンズ。
[17] [8]~[13]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注型重合する工程を含む、光学材料の製造方法。
[18] [1]~[7]のいずれかに記載の光学材料の片頭痛軽減用レンズとしての使用方法。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一実施形態によれば、波長域450~500nmの青色成分光の透過率が低く、光過敏による片頭痛を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1で得られたプラノーレンズの透過率曲線を示す。
【
図2】実施例2で得られたプラノーレンズの透過率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0023】
本開示の光学材料を実施の形態により具体的に説明する。
【0024】
本実施形態の光学材料は、厚み2mmで測定した透過率曲線が以下(1)~(2)の特性を満たし、かつ厚み2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が以下(3)の特性を満たす。
【0025】
(1)波長400nm~450nmまたは520nm~570nmに透過率の極大値を有し、且つ、波長400nm~450nmの透過率の最大値及び520nm~570nmの透過率が50%以上、好ましくは60%以上である。
なお、「520nm~570nmの透過率」とは、520nm~570nmの全ての波長域における個々の透過率を意味する。つまり、「520nm~570nmの透過率が50%以上、好ましくは60%以上である」とは、波長520nm~570nmの全ての波長域において、透過率が50%以上、好ましくは60%以上であることを意味する。
(2)波長470nm~500nmに透過率の極小値を有し、その極小値が40%以下、好ましくは30%以下である。
(3)CIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、a*が2.5以上5.5以下、好ましくは2.8以上4.5以下、より好ましくは3.0以上4.5以下であり、b*が5以上25以下、好ましくは13以上22以下、より好ましくは15以上22以下である。
本実施形態の光学材料は、透過率曲線及び色相が上記範囲を満たすことにより、片頭痛を軽減することができる。
【0026】
さらに、本実施形態の光学材料は、以下(4)の特性を満たすことが好ましい。
(4)YI(YellowIndex)が25以上45以下、好ましくは30以上42以下である。
これにより、本実施形態の光学材料は、色相にも優れる。
【0027】
本実施形態の光学材料は、上記特性(1)~(3)、さらに特性(4)を満たすことができれば光学材料に含まれる成分は特に限定されず、光学材料に用いることができる従来公知の成分を用いることができる。本実施形態の光学材料は、例えば、有機色素を含むことが好ましい。
【0028】
[有機色素]
有機色素は、例えば、本開示における効果の観点から、下記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0029】
【0030】
一般式(1)中、X1~X8はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基、エチニル基、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、フェニル基を有するエチニル基、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基を表す。ただし、X1~X8のすべてが水素原子であることはない。R1~R4はそれぞれ独立に、水素原子、または、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、水酸化金属原子、または酸化金属原子を表す。
【0031】
ここで、置換されたエチニル基の置換基としては、それぞれアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基が挙げられる。
一般式(1)においてX1~X8は、好ましくはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、または、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基、無置換のフェニル基を有するエチニル基である。ただし、X1~X8のすべてが水素原子であることはない。
【0032】
R1~R4は、好ましくはそれぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。
また、Mは好ましくは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Mn、Mg、Mn(OH)、Mn(OH)2、VO、またはTiOである。
【0033】
より好ましくは、X1~X8はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1~8の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたエチニル基、または、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を有するエチニル基である。
また、Mはさらに好ましくは、Cu、Pt、Pd、NiまたはVOであり、より好ましくはNi,またはPdである。
【0034】
X1~X8の具体例について以下に説明する。
X1~X8が直鎖もしくは分岐のアルキル基である場合、直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基、などが挙げられる。
【0035】
これらのうちでも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、または2-エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、またはn-オクチル基がより好ましい。
【0036】
X1~X8が置換エチニル基である場合、置換エチニル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基、などの直鎖もしくは分岐のアルキル基を置換基として有するエチニル基;無置換のフェニル基を置換基として有するエチニル基;2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基、4-n-ヘキシルフェニル基、4-n-オクチルフェニル基、4-n-ノニルフェニル基などの直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を置換基として有するエチニル基;などが挙げられる。
【0037】
これらのうちでも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基などの直鎖もしくは分岐のアルキル基を置換基として有するエチニル基;フェニル基を置換基として有するエチニル基;2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基などの直鎖もしくは分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を置換基として有するエチニル基がより好ましい。
【0038】
R1~R4が直鎖もしくは分岐のアルキル基である場合、直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、3-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,4-ジメチルペンチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基、などが挙げられる。
【0039】
これらのうちでも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、1,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、またはn-オクチル基がより好ましい。
【0040】
本実施形態の光学材料において用いられる、このようなポルフィリン系化合物は、上記特性(1)~(3)、さらに特性(4)を満たすことができ、光過敏による片頭痛を軽減することができる。
【0041】
本実施形態の光学材料に用いられるポルフィリン系化合物は、それ自体公知の方法を参考にして製造することができる。すなわち、一般式(1)で表される化合物は、例えば、一般式(a-1)~一般式(a-4)で表される化合物と一般式(b-1)~一般式(b-4)で表される化合物とを、酸触媒(例えば、プロピオン酸、ボロントリフルオリド・エチルエーテル錯体、トリフルオロ酢酸)による脱水縮合反応及び酸化(例えば、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン)、いわゆるRothermunt反応により合成し、更に、所望により金属あるいは金属塩(例えば、アセチルアセトン錯体、金属の酢酸塩)を適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0042】
【0043】
式中、X1~X8、及びR1~R4は一般式(1)の場合と同じ意味を表す。
なお、本明細書において、一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物は、実際には、一種または二種以上の異性体から成る混合物を表している。このような複数の異性体から成る混合物の構造の記載に際しても、本明細書においては、便宜上、例えば、一般式(1)で表される一つの構造式を記載しているものである。
【0044】
本開示におけるポルフィリン系化合物は、本開示における効果の観点から、濃度0.01g/Lクロロホルム溶液の光路長10mmで測定した吸収スペクトルにおいて、波長470nm~500nmの範囲に極大吸収ピークを有する。
【0045】
本実施形態において、ポルフィリン系化合物は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される化合物であることが好ましい。これらの化合物を用いることにより、光過敏による片頭痛をより軽減することができる。
【0046】
【0047】
【0048】
本実施形態の光学材料においては、ポルフィリン系化合物は、一種または二種以上の異性体から成る混合物を使用することができる。また、所望により、該混合物から各異性体を分離し、異性体の内の一種の化合物を用いることができ、さらには、任意の割合から成る複数の異性体を併用することができる。尚、本実施形態に係るポルフィリン系化合物とは、結晶は勿論であるが、無定型(アモルファス体)をも包含するものである。
【0049】
光学材料中に含まれる有機色素の量は、上記の特性を満たす範囲であれば特に限定されないが、本開示における効果の観点から、本実施形態の光学材料は、有機色素を5ppm~50ppm、好ましくは10ppm~25ppm、より好ましくは12ppm~22ppmの量で含むことができる。
本開示において、「ppm」は質量基準である。
【0050】
本実施形態の光学材料は、一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物を、5ppm~50ppm、好ましくは10ppm~25ppm、より好ましくは12ppm~22ppmの量で含むことができる。
【0051】
本実施形態の光学材料は、厚み2mmで測定された前記(1)~(3)の特性、さらに好ましくは(4)の特性を備える。本実施形態の光学材料は、有機色素として一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機色素は、ポルフィリン系化合物を一種単独で使用してもよく、あるいは二種以上を併用してもよい。
【0052】
[色調調整剤]
本実施形態の光学材料は、さらに色調調整剤を含むことが好ましい。
色調調整剤としては、本開示における効果を奏することができれば従来公知の色調調整剤から選択して用いることができる。
色調調整剤としては、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、モノアゾ系染料、ジアゾ系染料、及びフタロシアニン系染料等を挙げることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
アントラキノン系染料としては、Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 63(1-(メチルアミノ)-4-(m-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 97(1,4-ビス((2,6-ジエチル-4-メチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 104(1,4-ビス(メシチルアミノ) アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 13(1-ヒドロキシ-4-(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 13(1,5-ビス(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 52(3-メチル-6-(p-トリルアミノ)-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン)、Solvent Red 168またはPlast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 207(1,5-ビス(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 22(1-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 60(1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-フェノキシアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 59(1,4-ジアミノ-2,3-ジフェニルアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Green 28(1,4-ビス((4-ブチルフェニル)アミノ)-5,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン)、Plast Blue 8514(1-ヒドロキシ-4-[(4-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラセンジオン)等を挙げることができる。
【0054】
ペリノン系染料としては、Solvent Orange 60(12H-イソインドロ[2,1-a]ペリミジン-12-オン)、Solvent Orange 78、Solvent Orange 90、Solvent Red 135(8,9,10,11-テトラクロロ-12H-イソインドロ[2,1-a] ペリミジン-12-オン)、Solvent Red 162、Solvent Red 179(14H-ベンゾ[4,5] イソキノリノ[2,1-a]ペリミジン-14-オン)等を挙げることができる。
【0055】
モノアゾ系染料としては、Solvent Red 195、ファストオレンジR、オイルレッド、オイルエロー等を挙げることができる。
ジアゾ系染料としては、シカゴスカイブルー6B(ソディウム 6,6’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノ-5-ヒドロキシナフタレン-1,3-ジスルホネート))、エバンスブルー(ソディウム 6,6’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノ-5-ヒドロキシナフタレン-1,3-ジスルホネート))、ダイレクトブルー15(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(5-アミノ-4-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホネート))、トリパンブルー(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(5-アミノ-4-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホネート))、ベンゾプルプリン4B(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノナフタレン-1-スルホネート))、コンゴーレッド(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノナフタレン-1-スルホネート))等を挙げることができる。
フタロシアニン系染料としては、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー199等を挙げることができる。
【0056】
本実施形態においては、本開示における効果の観点から、好ましくは、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 104、Solvent Violet 59、Solvent Red 195、Disperse Red 60、Solvent Green 28、Solvent Orange 60、Plast Blue 8514、またはPlast Red 8320であり、さらに好ましくはPlast Blue 8514、またはPlast Red 8320である。これらは単独で使用しても2種以上組合せて使用してもよいが、2種以上組合せて用いることが好ましい。
【0057】
本実施形態の光学材料は、有機色素を上記の量で含むとともに、色調調整剤を3ppm以上20ppm以下、好ましくは5ppm以上15ppm以下含むことができる。
これにより、本実施形態の光学材料は、色相にも優れる。
【0058】
[樹脂]
本実施形態の光学材料は、さらに、樹脂を含むことが好ましい。
樹脂としては、本開示における効果を発揮することができれば、特に限定されず、光学材料に用いることができる公知の透明樹脂から選択することができる。
【0059】
樹脂としては、例えば、ポリ(チオ)ウレタン、ポリ(チオ)ウレタンウレア、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等を挙げることができ、好ましくはポリ(チオ)ウレタン、またはポリ(チオ)ウレタンウレアである。樹脂はこれらから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0060】
以下、光学材料の調製に用いられる組成物について説明する。本実施形態においては、樹脂としてポリ(チオ)ウレタンまたはポリ(チオ)ウレタンウレアを含む光学材料の調製に用いられる重合性組成物について説明する。
【0061】
[光学材料用重合性組成物]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
(A)イソシアネート化合物と、
(B)2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の活性水素化合物と、
(C)一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物から選択された少なくとも1種を含む有機色素と、を含む。
有機色素(C)としては上述の有機色素を用いることができる。
【0062】
光学材料中に含まれる有機色素(C)の量は、上記の特性を満たす範囲であれば特に限定されないが、本開示における効果の観点から、本実施形態の光学材料用重合性組成物は、有機色素を5ppm~50ppm、好ましくは10ppm~25ppm、より好ましくは12ppm~22ppmの量で含むことができる。
【0063】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物を、5ppm~50ppm、好ましくは10ppm~25ppm、より好ましくは12ppm~22ppmの量で含むことができる。
【0064】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらに色調調整剤(D)を含むことが好ましい。色調調整剤(D)としては上述の色調調整剤を用いることができる。
【0065】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、有機色素を上記の量で含むとともに、色調調整剤を3ppm以上20ppm以下、好ましくは5ppm以上15ppm以下含むことができる。
これにより、本実施形態の光学材料用重合性組成物は、片頭痛がより軽減されるとともに、色相にも優れた光学材料を得ることができる。
【0066】
[イソシアネート化合物(A)]
イソシアネート化合物(A)としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、芳香脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられ、1種または2種以上混合して用いられる。これらのイソシアネート化合物は、二量体、三量体、プレポリマーを含んでもよい。
これらのイソシアネート化合物としては、WO2011/055540号に例示された化合物を挙げることができる。
【0067】
本実施形態において、本開示における効果の観点から、イソシアネート化合物(A)が、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0068】
(活性水素化合物(B))
本実施形態において、活性水素化合物(B)としては、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
これらの活性水素化合としては、WO2016/125736号に例示された化合物を挙げることができる。
【0069】
活性水素化合物(B)は、本開示における効果の観点から、好ましくは2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物から選択される少なくとも一種である。
【0070】
ポリチオール化合物としては、好ましくは5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0071】
本実施形態において、イソシアネート化合物(A)におけるイソシアナト基に対する、活性水素化合物(B)における活性水素基のモル比率は0.8~1.2の範囲内であり、好ましくは0.85~1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9~1.1の範囲内である。上記範囲内で、光学材料、特に眼鏡用プラスチックレンズ材料として好適に使用される樹脂を得ることができる。
【0072】
任意の添加剤として、重合触媒、内部離型剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。本実施形態において、ポリウレタン及びポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いても良いし、用いなくてもよい。
【0073】
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられ、好ましくは2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
光学材料用組成物は、上記の成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
【0074】
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散・溶解させる方法などがある。例えばポリウレタン樹脂の場合、ポリイソシアネート化合物に添加剤を分散・溶解させてマスターバッチを作製する方法などがある。
【0075】
有機色素を含む成形体を得るには、有機色素と光学材料用樹脂モノマーとを含む光学材料用組成物を混合し、重合させる方法や、有機色素と光学材料用樹脂とを含む光学材料用組成物を硬化させる方法により行うことができる。
【0076】
<硬化物>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、重合することにより硬化物を得ることができ、モールドの形状により様々な形状の硬化物を得ることができる。重合方法は、従来公知の方法を挙げることができ、その条件も特に限定されない。
【0077】
本実施形態において、硬化物の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法として注型重合が挙げられる。はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に光学材料用重合性組成物を注入する。この時、得られる硬化物に要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0078】
重合条件については、成分(A)~成分(C)、さらに成分(D)の種類と使用量、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、-50℃~150℃の温度で1時間~50時間かけて行われる。場合によっては、10℃~150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1時間~25時間で硬化させることが好ましい。
【0079】
本実施形態の硬化物は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50℃~150℃の間で行われるが、90℃~140℃で行うことが好ましく、100℃~130℃で行うことがより好ましい。
【0080】
また、本実施形態において、光学材料用重合性組成物を加熱硬化させて得られる硬化物は、たとえば光学材料として使用することができ、光学材料の一部を構成することができる。本実施形態の硬化物は、無色透明で外観に優れ、波長域450~500nmの青色成分光の遮断効果に優れ片頭痛を軽減することができる。硬化物は、高屈折率、高アッベ数などの光学特性及び耐熱性などの諸物性に優れており、硬化物を所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な光学材料として用いることができる。
【0081】
<光学材料>
本実施形態の光学材料は硬化物を含む。具体的には、本実施形態の光学材料は、硬化物からなるレンズ基材、フィルム層、またはコーティング層を含む。
【0082】
光学材料の構成としては、代表的には、レンズ基材から構成される光学材料、レンズ基材とフィルム層から構成される光学材料、レンズ基材とコーティング層とから構成される光学材料、レンズ基材とフィルム層とコーティング層とから構成される光学材料が挙げられる。
【0083】
本実施形態の光学材料として、具体的には、レンズ基材のみから構成される光学材料、レンズ基材の少なくとも一方の面にフィルム層が積層されてなる光学材料、レンズ基材の少なくとも一方の面にコーティング層が積層されてなる光学材料、レンズ基材の少なくとも一方の面にフィルム層とコーティング層とが積層されてなる光学材料、2つのレンズ基材でフィルム層が狭持されてなる光学材料等が挙げられる。
本実施形態の光学材料は、光学材料全体として、上記(1)~(3)の特性を有し、好ましくはさらに上記(4)の特性を有する。
【0084】
例えば、有機色素を含まない光学材料用組成物を用いて成形体(レンズ基材や光学フィルム)を調製し、次いで、有機色素を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に当該成形体を浸漬して有機色素を成形体中に含浸させ、乾燥する。このようにして得られた、成形体を用いて光学材料を調製することができる。
【0085】
また、光学材料を調製した後に、前記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物を該光学材料に含浸させることもできる。その他、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備えるプラスチック眼鏡レンズを、有機色素を含む分散液に浸漬して有機色素を含浸させることもできる。
【0086】
有機色素の含浸量は、分散液中の有機色素の濃度と、分散液の温度、光学材料用樹脂組成物を浸漬させる時間により所望の含浸量に制御することができる。濃度を高く、温度を高く、浸漬時間を長くするほどに含浸量が増す。含浸量を精密に制御したい場合は、含浸量が少ない条件で、複数回浸漬を繰り返すことにより実施する。
また、有機色素を含むコーティング材料を用い、プラスチックレンズ基材上に有機色素含有コーティング層を形成することもできる。
【0087】
このような構成を有する光学材料は、プラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができる。なお、本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を損なわない範囲で様々な態様を取り得ることができる。
【0088】
例えば、光学材料が上記(1)~(3)の特性を満たし、好ましくはさらに上記(4)の特性を満たすことができれば、前述の実施形態の「前記一般式(1)で表されるポルフィリン系化合物を含む光学材料用重合性組成物」を用いることなく光学材料を得ることができる。
以下、光学材料の好ましい態様であるプラスチックレンズについて詳細に説明する。
【0089】
[プラスチックレンズ]
プラスチックレンズとしては、以下の構成を挙げることができる。
(1)本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を備えるプラスチックレンズ
(2)レンズ基材(ただし、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)表面の少なくとも一方の面上に、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材、フィルムまたはコーティング層を備えるプラスチックレンズ
(3)本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムの両面上に、レンズ基材(ただし、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)が積層されているプラスチックレンズ
本実施形態においては、これらのプラスチックレンズを好適に用いることができる。
以下、それぞれの実施形態について説明する。
【0090】
(実施形態1)
本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を備えるプラスチックレンズを製造する方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法としてレンズ注型用鋳型を用いた注型重合が挙げられる。レンズ基材は、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリウレタンウレア、ポリチオウレタンウレア、ポリスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート等から構成することができ、有機色素と、これらの樹脂のモノマー(光学材料用樹脂モノマー)とを含む本実施形態の光学材料用組成物を用いることができる。
【0091】
具体的には、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内に光学材料用組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0092】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0093】
本実施形態において、樹脂を成形する際には、上記「任意の添加剤」に加えて、目的に応じて公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
【0094】
また、本実施形態におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。コーティング層には有機色素を含むことができる。有機色素を含むコーティング層は、有機色素を含むコーティング材料(組成物)を用いて調製することができ、またはコーティング層を形成した後、有機色素を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に、コーティング層付きプラスチックレンズを浸漬して有機色素をコーティング層中に含浸させることにより調製することができる。
【0095】
(実施形態2)
本実施形態におけるプラスチックレンズは、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材以外のレンズ基材の少なくとも一方の面上に、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材、フィルム、またはコーティング層を備える。レンズ基材は、本実施形態の光学材料用組成物から形成されたものではない。
【0096】
本実施形態におけるプラスチックレンズの製造方法としては、(2-1)本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材と異なるレンズ基材を製造し、次いで当該レンズ基材の少なくとも一方の面上に、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材、フィルム、またはシートを貼り合わせる方法、(2-2)後述のようなガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートをモールドの一方の内壁に沿って配置し、次いでキャビティ内に光学材料用組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0097】
前記(2-1)の方法において用いられる、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートは、特に限定されないが、溶融混練や含浸等により得られた光学材料用組成物のペレットを、従来種々公知の方法、具体的には、例えば、射出成形法、異形押出成形法、異種成形体の被覆成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法、プレス成形法などの成形方法により得ることができる。得られるフィルムまたはシートは、ポリカーボネート、またはポリオレフィン等を含んでなる。
レンズ基材は、公知の光学用樹脂から得ることができ、光学用樹脂としては、(チオ)ウレタン、ポリスルフィド等を挙げることができる。
本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
【0098】
前記(2-2)の方法における注型重合は、実施形態:1におけるプラスチックレンズの方法と同様に行うことができ、注型重合に用いる組成物としては、光学材料用樹脂モノマーを含む組成物(有機色素を含まない)を挙げることができる。
【0099】
また、本実施形態におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、光学材料用組成物から得られるレンズ基材上または「フィルムまたは層」上に種々のコーティング層を有していてもよい。実施形態:1におけるプラスチックレンズと同様に、コーティング層には有機色素を含むことができる。
【0100】
(実施形態3)
本実施形態におけるプラスチックレンズは、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムの両面上に、レンズ基材(本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)が積層されている。
【0101】
本実施形態におけるプラスチックレンズの製造方法としては、(3-1)レンズ基材を製造し、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートの両面上に貼り合わせる方法、(3-2)ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、モールドの内壁から離間した状態で配置し、次いでキャビティ内に光学材料用組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0102】
前記(3-1)の方法において用いられる、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシート、及びレンズ基材は、実施形態:2におけるプラスチックレンズの(2-1)の方法と同様のものを用いることができる。
本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
【0103】
前記(3-2)の方法は具体的に以下のように行うことができる。
実施形態:1におけるプラスチックレンズの製造方法で用いた、レンズ注型用鋳型の空間内に、本実施形態の光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、この両面が、対向するフロント側のモールド内面と並行となるように設置する。
【0104】
次いで、レンズ注型用鋳型の空間内において、モールドと偏光フィルムとの間の2つの空隙部に、所定の注入手段により、光学材料用樹脂モノマーを含む組成物(有機色素を含まない)を注入する。
【0105】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0106】
また、本実施形態におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、レンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。実施形態:1におけるプラスチックレンズと同様に、コーティング層には有機色素を含むことができる。
【0107】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本実施形態のプラスチックレンズを用いて、プラスチック眼鏡レンズを得ることができる。なお、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
【0108】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0109】
これらのコーティング層はそれぞれ、本実施形態において用いられる有機色素、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0110】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られたレンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0111】
プライマー層は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズに塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0112】
ハードコート層は、一般的には、硬化性を有する有機ケイ素化合物と、
Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物、及び、
Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiからなる群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物の少なくとも一方と、を含むハードコート組成物が使用される。
【0113】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物及び多官能性エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0114】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0115】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系及び有機系があり、無機系の場合、SiO2、TiO2等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ-ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0116】
反射防止層は単層及び多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO2、CeO2、Sb2O5、SnO2、ZrO2、Ta2O5等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO2膜等が挙げられる。
【0117】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇処理方法、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0118】
以上、一実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示における効果を損なわない範囲で様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例により本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本開示の実施例において用いた評価方法、材料は以下の通りである。
【0120】
[L*,a*,b*の測定方法]
分光測色計(コニカミノルタ製CM-5)を用いて、2mm厚のプラノーレンズにおいて、CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*,b*を測定した。
[YIの測定方法]
2mm厚のプラノーレンズをコニカミノルタ社製の分光測色計CM-5でYIを測定した。
【0121】
[視感透過率、及び波長480nmでの分光透過率の測定方法]
島津製作所製 島津分光光度計 UV-1800を用い、2mm厚のプラノーレンズにおける厚み方向の分光透過率を測定し、視感透過率を求めた。
【0122】
[6項目の頭痛インパクトテスト(6-item Headache Impact Test:HIT-6)]
全19名の片頭痛の症状を有する被験者の群を、9名の被験者からなる第1の群と、10名の被験者からなる第2の群とに分けて、各々の群に対して着用テストを行った。具体的には、第1の群の9名の被験者が、眼鏡なしで1ヶ月生活した後(ステージ1)、実施例で得られたレンズを備える眼鏡を着用して1ヶ月生活し(ステージ2)、更に眼鏡なしで1ヶ月生活し(ステージ3)、そして、プラセボレンズ(実施例で得られたレンズと同等の色調を有するレンズであって、波長450nm~500nmの波長の光を実施例で得られたレンズよりもカットしないレンズ)を備える眼鏡を着用して1ヶ月生活した(ステージ4)。ここで、被験者による着用テストの実施期間中は、各々の被験者は、各ステージにおいて着用すべき眼鏡を、被験者の日常生活に合わせて着用場面や用途を限定することなく、1日3時間以上着用した。また、いずれの眼鏡のフレームも、被験者が着用することによる外因・ストレスを低減するため、軽量かつリムの無いフレームを用いた(不図示)。
各々の被験者は、全ステージにおいて毎日片頭痛の有無や症状を記録し、ステージ1、ステージ2、ステージ4の終了後に6項目の以下のアンケートに回答し、各項目の点数を合計した合計点を算出した。合計点が49以下の場合には片頭痛の症状が無視できる範囲であるものとして片頭痛の改善効果があるとした。
第2の群の10名の被験者については、眼鏡なしで1ヶ月生活した後(ステージa)、プラセボレンズを備える眼鏡を着用して1ヶ月生活し(ステージb)、更に眼鏡なしで1ヶ月生活し(ステージc)、そして、実施例で得られたレンズを備える眼鏡を着用して1ヶ月生活した(ステージd)。ステージa、ステージb、ステージdの終了後に6項目の以下のアンケートに回答し、各項目の点数を合計した合計点を算出した。各項目の回答結果を以下の基準で数値化し、合計点が49以下の場合には片頭痛の症状が無視できる範囲であるものとして片頭痛の改善効果があるとした。
【0123】
(アンケート)
・項目1 頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
6点:全くない、8点:ほとんどない、10点:時々ある、11点:しばしばある、13点:いつもそうだ
・項目2 頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることがありますか?(例えば、家事、仕事、学校生活、人付き合いなど)
6点:全くない、8点:ほとんどない、10点:時々ある、11点:しばしばある、13点:いつもそうだ
・項目3 頭が痛いとき横になりたくなることがありますか?
6点:全くない、8点:ほとんどない、10点:時々ある、11点:しばしばある、13点:いつもそうだ
・項目4 この4週間に、頭痛のせいで疲れてしまって、仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
6点:全くなかった、8点:ほとんどなかった、10点:時々あった、11点:しばしばあった、13点:いつもそうだった
・項目5 この4週間に、頭痛のせいで、うんざりしたりいらいらしたりしたことがありましたか?
6点:全くなかった、8点:ほとんどなかった、10点:時々あった、11点:しばしばあった、13点:いつもそうだった
・項目6 この4週間に、頭痛のせいで、仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか?
6点:全くなかった、8点:ほとんどなかった、10点:時々あった、11点:しばしばあった、13点:いつもそうだった
【0124】
(合成例1)
下記構造式(3-a)で示される化合物30.0gを1,1,2-トリクロロエタン150g水60gに分散し、50℃~55℃で臭素58.7gと1,1,2-トリクロロエタン60gの溶液を滴下した。50℃~55℃にて3時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応液に亜硫酸ナトリウム水溶液(亜硫酸ナトリウム4.2g、水21g)を添加し、室温で15分撹拌した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム16.2g、水162g)を添加し、室温で30分撹拌した。析出物を濾取、水洗し、メタノールにて洗浄、乾燥して下記構造式(3-b)で示される化合物45.6gを得た。
【0125】
【0126】
次に構造式(3-b)で示される化合物40.0g、よう化銅1.85g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド3.16g、トリフェニルホスフィン1.55gをテトラヒドロフラン800mlに溶解し、トリエチルアミン54.91g、3,3-ジメチル-1-ブチン(純度96%)29.2gを加えた。窒素気流下室温で攪拌し、反応終了後、不溶物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮残渣にメタノール500mlを加え、攪拌し、濾過した後、メタノールで洗浄、乾燥し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムにより精製(展開溶剤:トルエン/ヘキサン=1:1vol.比)して、具体例化合物(1-1)28.6gを得た。
【0127】
【0128】
MS(m/e):1360(M+)
この化合物の吸収スペクトルを、島津製作所製 島津分光光度計 UV-1800を使用し、濃度0.01g/Lクロロホルム溶液の光路長10mmで測定したところ、479nmに吸収ピークがあった。また、当該ピークの半値幅は36nmであった。
【0129】
(合成例2)
下記構造式(2-a)で示される化合物15.0gをN,N-ジメチルホルムアミド150mlに溶解し、10℃~20℃で臭素31.8gを滴下した。室温にて4時間攪拌した後、氷水700gに排出し、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。析出物を濾取、水洗し、メタノールにて洗浄、乾燥して、下記構造式(2-b)で示される化合物31gを得た。
【0130】
【0131】
次に構造式(2-b)で示される化合物26.1g、よう化銅1.34g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド2.13g、トリフェニルホスフィン1.05gをテトラヒドロフラン525mlに溶解し、トリエチルアミン36.4g、3,3-ジメチル-1-ブチン(純度96%)21.16gを加えた。窒素気流下室温で攪拌し、反応終了後、不溶物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮残渣に85%メタノール水500mlを加え、攪拌し、濾過した後、85%メタノール水で洗浄、乾燥し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムにより精製(展開溶剤:トルエン/ヘキサン=6:4vol.比)して、具体例化合物(1-2)10.8gを得た。
【0132】
【0133】
MS(m/e):1312(M+)
この化合物の吸収スペクトルを、島津製作所製 島津分光光度計 UV-1800を使
用し、濃度0.01g/Lクロロホルム溶液の光路長10mmで測定したところ、479nmに吸収ピークがあった。また、当該ピークの半値幅は27nmであった。
【0134】
[実施例1]
ジブチル錫(II)ジクロリドを0.35質量部、ステファン社製ZelecUNを1質量部、BASFジャパン社製紫外線吸収剤Tinuvin329を15質量部、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンとの混合物を506質量部、合成例1で得られた化合物(1-1)を20ppm、Plast Blue 8514(有本化学工業社製)を8ppm、Plast Red 8320(有本化学工業社製)を5ppm仕込んで混合溶液を作製した。この混合溶液を25℃で1時間攪拌して完全に溶解させた。その後、この調合液に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを255質量部とペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を239質量部とを仕込み、これを25℃で30分攪拌し、均一溶液とした。この溶液を400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径80mmの2Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、プラノーレンズを得た。得られたプラノーレンズを更に120℃で2時間アニールを行った。プラノーレンズの表面にはウレタン系のプライマーコート、シリコーン系のハードコートをディップコーティングにて順次成膜を行い、次いで真空蒸着法によりSiO
2とZrO
2を交互に積層し5層構成の反射防止膜を成膜し、加えて最表面にはフッ素系の撥水膜を成膜した。得られたプラノーレンズの物性を測定した。結果を表-1に示す。また、透過率データを表-3に示し、透過率曲線を
図1に示す。
本実施例に基づくプラノーレンズを作製し、当該プラノーレンズ2枚を備える眼鏡を調製した。その後、上述の被験者による着用テストに供試し、片頭痛の改善効果を検証するため、頭痛インパクトテスト(HIT-6)にて評価を行った。評価結果を表-2に示す。
【0135】
[実施例2]
ジブチル錫(II)ジクロリドを0.35質量部、ステファン社製ZelecUNを1質量部、BASFジャパン社製紫外線吸収剤Tinuvin329を15質量部、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンとの混合物を506質量部、合成例1で得られた化合物(1-1)を15ppm、Plast Blue 8514(有本化学工業社製)を5ppm、Plast Red 8320(有本化学工業社製)を5ppm仕込んで混合溶液を作製した。この混合溶液を25℃で1時間攪拌して完全に溶解させた。その後、この調合液に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを255質量部とペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を239質量部とを仕込み、これを25℃で30分攪拌し、均一溶液とした。この溶液を400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径80mmの2Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、プラノーレンズを得た。得られたプラノーレンズを更に120℃で2時間アニールを行った。プラノーレンズの表面にはウレタン系のプライマーコート、シリコーン系のハードコートをディップコーティングにて順次成膜を行い、次いで真空蒸着法によりSiO
2とZrO
2を交互に積層し5層構成の反射防止膜を成膜し、加えて最表面にはフッ素系の撥水膜を成膜した。得られたプラノーレンズの物性を測定した。結果を表-1に示す。また、透過率データを表-3に示し、透過率曲線を
図2に示す。
本実施例に基づくプラノーレンズを作製し、当該プラノーレンズ2枚を備える眼鏡を調製した。その後、上述の被験者による着用テストに供試し、片頭痛の改善効果を検証するため、頭痛インパクトテスト(HIT-6)にて評価を行った。評価結果を表-2に示す。
【0136】
[比較例1]
ジブチル錫(II)ジクロリドを0.35質量部、ステファン社製ZelecUNを1質量部、BASFジャパン社製紫外線吸収剤Tinuvin329を15質量部、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンとの混合物を506質量部仕込んで混合溶液を作製した。この混合溶液を25℃で1時間攪拌して完全に溶解させた。その後、この調合液に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを255質量部とペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を239質量部とを仕込み、これを25℃で30分攪拌し、均一溶液とした。この溶液を400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径80mmの2Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、プラノーレンズを得た。得られたプラノーレンズを更に120℃で2時間アニールを行った。
90℃に加熱した1リットルの水に青色染料としてDianix Blue FBL(ダイスタージャパン社製)1質量部を添加し、キャリアー材としてベンジルアルコールを40質量部、界面活性剤を1質量部混合し青色染料分散液を作製した。同様に赤色染料分散液をSumikaron Red E-RPD(住化ケミテックス社製)、黄色染料分散液をDianix Yellow AC-E(ダイスタージャパン社製)、茶色染料分散液をDianix Yellow Brown AM-R(ダイスタージャパン社製)よりそれぞれ作製した。得られた各色の染料分散液それぞれにプラノーレンズを浸漬し実施例1で作製したレンズと同等の視感度透過率、同等の色調となるまで染色した。
染色されたプラノーレンズの表面にはウレタン系のプライマーコート、シリコーン系のハードコートをディップコーティングにて順次成膜を行い、次いで真空蒸着法によりSiO
2とZrO
2を交互に積層し5層構成の反射防止膜を成膜し、加えて最表面にはフッ素系の撥水膜を成膜した。
得られたプラノーレンズの物性を測定した。結果を表-1に示す。また、透過率データを表-3に示し、透過率曲線を
図1に示す。
本比較例に基づく染色されたプラノーレンズをもう一枚作製し、当該プラノーレンズ2枚を備える眼鏡を調製した。その後、上述の被験者による着用テストに供試し、片頭痛の改善効果を検証するため、頭痛インパクトテスト(HIT-6)にて評価を行った。評価結果を表-2に示す。
【0137】
[比較例2]
比較例1と同様の方法でプラノーレンズを調製した。
90℃に加熱した1リットルの水に青色染料としてDianix Blue FBL(ダイスタージャパン社製)1質量部を添加し、キャリアー材としてベンジルアルコールを40質量部、界面活性剤を1質量部混合し青色染料分散液を作製した。同様に赤色染料分散液をSumikaron Red E-RPD(住化ケミテックス社製)、黄色染料分散液をDianix Yellow AC-E(ダイスタージャパン社製)、茶色染料分散液をDianix Yellow Brown AM-R(ダイスタージャパン社製)よりそれぞれ作製した。得られた各色の染料分散液それぞれにプラノーレンズを浸漬し実施例2で作製したレンズと同等の視感度透過率、同等の色調となるまで染色した。
染色されたプラノーレンズの表面にはウレタン系のプライマーコート、シリコーン系のハードコートをディップコーティングにて順次成膜を行い、次いで真空蒸着法によりSiO
2とZrO
2を交互に積層し5層構成の反射防止膜を成膜し、加えて最表面にはフッ素系の撥水膜を成膜した。
得られたプラノーレンズの物性を測定した。結果を表-1に示す。また、透過率データを表-3に示し、透過率曲線を
図2に示す。
本比較例に基づく染色されたプラノーレンズをもう一枚作製し、当該プラノーレンズ2枚を備える眼鏡を調製した。その後、上述の被験者による着用テストに供試し、片頭痛の改善効果を検証するため、頭痛インパクトテスト(HIT-6)にて評価を行った。評価結果を表-2に示す。
【0138】
【0139】
【0140】
表-2に示すように、実施例の眼鏡を着用した全被験者19名のうちの32%である6名の頭痛インパクトテスト(HIT-6)による合計点(3)が、頭痛が日常生活にほとんど、あるいはまったく影響を与えていないと判定される基準スコアである49以下となり、片頭痛の改善効果が認められた。
また、実施例の眼鏡を着用した全被験者19名のうちの11%である2名(被験者No.6及び12)の頭痛インパクトテスト(HIT-6)による合計点(3)が、眼鏡を着用しなかった場合の合計点(1)に比べて大きく改善した。具体的には、頭痛が日常生活にかなりの影響を与えている状態(基準スコア60以上)から、頭痛が日常生活にある程度の影響を与えている状態(基準スコア50~55)にまで改善し、一定の片頭痛の改善効果が認められた。
以上より、実施例の眼鏡を着用することで、全被験者19名のうちの43%である8名について一定以上の片頭痛の改善効果が認められた。
【0141】
また、表-2中、被験者No1~19において、実施例の眼鏡を使用した場合、(3)-(1)の値の合計値は-54であり、平均値は-2.84であった。
つまり、実施例の眼鏡を使用した場合は、眼鏡なしの場合と比較して、スコアを平均2.84下げることができた。
一方、被験者No1~19において、比較例の眼鏡を使用した場合、(2)-(1)の値の合計値は-16であり、平均値は-0.84であった。
つまり、比較例の眼鏡を使用した場合は、眼鏡なしの場合と比較して、スコアを平均0.84しか下げることができなかった。
以上のことから、実施例の眼鏡は、比較例の眼鏡と比較して、光過敏による片頭痛をより軽減できることが示された。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
2019年4月19日に出願された日本国特許出願2019-079855号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。