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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】皮膜の製造方法及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/028 20060101AFI20230428BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20230428BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20230428BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230428BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20230428BHJP
   G03F 7/004 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
G03F7/028
G03F7/029
G03F7/031
G03F7/027 515
H05K3/28 D
H05K3/28 F
G03F7/004 512
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018211258
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076913
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502015544
【氏名又は名称】株式会社清和光学製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勇佐
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 伊佐央
(72)【発明者】
【氏名】柳 賢悟
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/028
G03F 7/029
G03F 7/031
G03F 7/027
H05K 3/28
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂組成物を基材上に配置することで、前記基材上に塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に光源が発する光を、280nmより短く200nm以上の波長範囲内の光、及び415nmより長く500nm以下の波長範囲内の光をカットする光学フィルタを通過させてから照射して露光する工程と、
前記露光後の前記塗膜をアルカリ溶液で現像する工程と、を含む、
皮膜の製造方法であって、
前記感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ樹脂(D)と、を含有し、
前記光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルは、
350nm以上370nm以下の波長範囲内にある第一の吸収と、
370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある第二の吸収とを有し、
前記露光する工程で塗膜に照射する光のスペクトルは、
350nm以上370nm以下の波長範囲内で前記第一の吸収の波長と重複する波長にある第一の強度分布と、
370nmより長く415nm以下の波長範囲内で前記第二の吸収の波長と重複する波長にある第二の強度分布と、
305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の強度分布とを有し、
かつ200nm以上500nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、280nmより短く200nmまでの波長範囲の曲線下面積と、415nmより長く500nmまでの波長範囲の曲線下面積との合計の百分比は、5%以下であり、
前記光重合開始剤(C)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(C2)、及びオキシムエステル系光重合開始剤(C3)からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、
皮膜の製造方法。
【請求項2】
前記第二の吸収は、400nmより長く415nm以下の波長範囲内にある吸収を少なくとも含み、
前記第二の強度分布は、400nmより長く415nm以下の波長範囲内で前記第二の吸収の波長と重複する波長にある強度分布を少なくとも含む、
請求項1に記載の皮膜の製造方法。
【請求項3】
前記光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルは、305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の吸収を更に有し、
前記第三の強度分布は、305nm以上325nm以下の波長範囲内で前記第三の吸収の波長と重複する波長にある強度分布を少なくとも含む、
請求項1又は2に記載の皮膜の製造方法。
【請求項4】
前記塗膜の光の吸収スペクトルにおける、350nm以上370nm以下の波長範囲での最大吸光度に対する、305nm以上325nm以下の波長範囲での最大吸光度は、3倍以上である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項5】
前記光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、及び超高圧水銀灯からなる群から選択される少なくとも一種である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項6】
前記光重合開始剤(C)は、水素引き抜き型光重合開始剤(C4)を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項8】
前記感光性樹脂組成物は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する成分を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物は、更に着色顔料(E)を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項10】
導電層と、前記導電層に重なる絶縁層とを備え、
前記絶縁層は、請求項1からのいずれか一項に記載の皮膜の製造方法で製造した皮膜を含む、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜の製造方法及びプリント配線板に関し、より詳細には、感光性樹脂組成物を含有する塗膜を露光して皮膜を製造する方法、及びこの皮膜を備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の電気絶縁性の層を形成するために種々の硬化性の樹脂組成物が使用されている。感光性樹脂組成物では、紫外線等の光を照射することで、感光性樹脂組成物を硬化させ、必要により加熱することで電気絶縁性の層が形成される。
【0003】
例えば、特許文献1では、紫外線を発生するランプからの光を用いる直接描画法(直描法)によりパターン潜像を形成し、このパターン潜像をアルカリ水溶液により現像化させる感光性樹脂組成物が提案されている。この感光性樹脂組成物の乾燥塗膜に、355~375nmの波長範囲の光、及び405nmの波長の光を照射する場合、感光性樹脂組成物が上記波長範囲及び波長に対して高感度であり、直描法による露光であっても厚膜の電気絶縁層等が作製できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-146044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、感光性樹脂組成物から形成される層は、絶縁層に要求される絶縁性、耐酸・アルカリ性、耐メッキ性といった特性には優れる。
【0006】
しかしながら、このような感光性樹脂組成物の塗膜を露光してから現像することで皮膜を作製する場合、皮膜の形状が高い解像性を有することは容易ではない。このため、例えば孔を有する皮膜を作製する場合は、孔の形状をシャープにすることが難しい、という問題があった。
【0007】
本発明の目的は、感光性樹脂組成物の塗膜を露光してから現像して皮膜を製造する場合に、皮膜の形状が高い解像性を有しうる皮膜の製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、上記の製造方法で製造した皮膜を備えるプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る皮膜の製造方法は、感光性樹脂組成物を基材上に配置することで、前記基材上に塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光源が発する光を照射して露光する工程と、前記露光後の前記塗膜をアルカリ溶液で現像する工程と、を含む。前記感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ樹脂(D)と、を含有する。前記光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルは、350nm以上370nm以下の波長範囲内にある第一の吸収と、370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある第二の吸収とを有する。前記露光する工程で塗膜に照射する光のスペクトルは、350nm以上370nm以下の波長範囲内で前記第一の吸収の波長と重複する波長にある第一の強度分布と、370nmより長く415nm以下の波長範囲内で前記第二の吸収の波長と重複する波長にある第二の強度分布と、305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の強度分布とを有し、かつ200nm以上500nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、280nmより短く200nmまでの波長範囲の曲線下面積と415nmより長く500nmまでの波長範囲の曲線下面積との合計の百分比は、5%以下である。
【0010】
本発明の一態様に係るプリント配線板は、導電層と、前記導電層に重なる絶縁層とを備える。前記絶縁層は、前記皮膜の製造方法で製造した皮膜を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る皮膜の製造方法では、感光性樹脂組成物の塗膜を露光してから現像することで皮膜を製造する場合、皮膜の形状が高い解像性を有することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、解像性の高い皮膜を備えるプリント配線板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例における光源の超高圧水銀灯の発する光のスペクトルを示す図である。
図2図2Aは、実施例において、露光条件を条件Aとしたときの皮膜の形状の一例を示す図であり、図2Bは、露光条件を条件Cとしたときの皮膜の形状の一例を示す図であり、図2Cは、露光条件を条件Dとしたときの皮膜の形状の一例を示す図である。
図3図3Aから図3Eは、本発明の一実施形態に係る多層プリント配線板を製造する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態における感光性樹脂組成物について説明する。
【0015】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ樹脂(D)とを含有する。なお、感光性樹脂組成物の各成分の詳細については、後述する。
【0016】
本実施形態では、光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルは、350nm以上370nm以下の波長範囲内にある第一の吸収と、370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある第二の吸収とを有する。第一の吸収は、350nm以上370nm以下の波長範囲内の全体にあってもよく、350nm以上370nm以下の波長範囲内の一部にあってもよい。第二の吸収(370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある吸収)、及び後述の第三の吸収(305nm以上325nm以下の波長範囲内にある吸収)も同様である。
【0017】
本実施形態では、感光性樹脂組成物を基材上に配置することで、基材上に塗膜を形成し、この塗膜に光を照射して露光し、露光後の塗膜をアルカリ溶液で現像することで皮膜が形成されうる。すなわち、感光性樹脂組成物を含む皮膜を製造する方法は、感光性樹脂組成物を基材上に配置することで、基材上に塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光源が発する光を照射して露光する工程と、露光後の前記塗膜をアルカリ溶液で現像する工程と、を含む。露光する工程で塗膜に照射する光のスペクトルは、350nm以上370nm以下の波長範囲内で前記第一の吸収の波長と重複する波長にある第一の強度分布と、370nmより長く415nm以下の波長範囲内で前記第二の吸収の波長と重複する波長にある第二の強度分布と、305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の強度分布とを有する。さらに、この光のスペクトルにおいて、200nm以上500nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、280nmより短く200nmまでの波長範囲の曲線下面積と415nmより長く500nmまでの波長範囲の曲線下面積との合計の百分比は、5%以下である。このため、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を露光してから現像して皮膜を製造する場合に、皮膜の形状が高い解像性を有する。この皮膜が孔を有する場合には、皮膜の孔の形状がシャープに形成できる。なお、強度とは、0よりも大きい値の強度のことである。
【0018】
感光性樹脂組成物の塗膜を露光してから現像することで皮膜を製造する場合、皮膜の形状が高い解像性を有するのは、次のような理由によるものと推測される。
【0019】
本実施形態では、上記のとおり、光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルが350nm以上370nm以下の波長範囲内にある第一の吸収を有し、かつ塗膜に照射する光のスペクトルが350nm以上370nm以下の波長範囲内で第一の吸収の波長と重複する波長にある第一の強度分布を有する。このため、塗膜中で光重合開始剤(C)が350nm以上370nm以下の波長範囲内にある光を吸収して、光重合反応を開始させることができる。これにより、光重合開始剤(C)は、塗膜に照射する光によって効率的に活性化され、感光性樹脂組成物全体の反応を促進させやすくなる。このため、350nm以上370nm以下の波長の光は、感光性樹脂組成物全体の反応性に寄与し、感光性樹脂組成物の反応性を向上させることができると考えられる。本実施形態の一つの態様では、塗膜に照射する光が波長365nmのi線を含み、かつ第一の強度分布が波長365nmにある強度を有する。
【0020】
また、上記のとおり、光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルが370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある第二の吸収を有し、かつ塗膜に照射する光のスペクトルが370nmより長く415nm以下の波長範囲内で第二の吸収の波長と重複する波長にある第二の強度分布を有する。このため、塗膜中で光重合開始剤(C)が370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある光を吸収して、光重合反応を開始させることができる。このため、特に感光性樹脂組成物の塗膜の深部において、良好な硬化性を実現することができる、と考えられる。また、光重合開始剤(C)は、上記の通り350nm以上370nm以下の波長の光を吸収しうることで、フォトブリーチング効果を発現しうる。すなわち、深部硬化に有効な波長の光の透過性を向上させるようにも作用しうる。これにより、感光性樹脂組成物の塗膜の深部硬化性を向上させることができる、と考えられる。特に、第二の吸収が400nmより長く415nm以下の波長範囲内にある吸収を少なくとも含み、かつ第二の強度分布が400nmより長く415nm以下の波長範囲内で第二の吸収の波長と重複する波長にある強度分布を少なくとも含むことが好ましい。この場合、塗膜中で光重合開始剤(C)が400nmより長く415nm以下の波長範囲内にある光を吸収して、光重合反応を開始させることができる。これにより、感光性樹脂組成物の塗膜の深部において、更に良好な硬化性を実現することができる。
【0021】
さらにまた、感光性樹脂組成物の塗膜に照射される光のスペクトルが、305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の強度分布を有することで、感光性樹脂組成物の塗膜の表面硬化性を良好にさせることができる、と考えられる。これは、感光性樹脂組成物中のカルボキシル基含有樹脂(A)が305nm以上325nm以下の波長範囲内の光を吸収することで、光増感作用などにより光重合反応を開始させることができるためであると考えられる。また、305nm以上325nm以下の波長の光は、本来は塗膜中で散乱しやすいが、この光を前記のとおりカルボキシル基含有樹脂(A)が吸収するため、塗膜中で光の散乱が生じにくい。そのため、解像度が低下しにくくなると考えられる。
【0022】
特に、光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルが305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の吸収を更に有し、かつ第三の強度分布が305nm以上325nm以下の波長範囲内で第三の吸収の波長と重複する波長にある強度分布を少なくとも含む場合は、光重合開始剤(C)は、305nm以上325nm以下の波長の光を吸収することで光重合反応を開始させることができる。そのため、塗膜の表面硬化性が特に高まりやすい。さらに、塗膜中で上記のとおり305nm以上325nm以下の波長の光の散乱が生じにくいため、光重合開始剤(C)に起因する解像性の低下がより生じにくい。
【0023】
さらに、上記のとおり、塗膜に照射される光のスペクトルは、200nm以上500nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、280nmより短く200nmまでの波長範囲の曲線下面積と415nmより長く500nmまでの波長範囲の曲線下面積との合計の百分比は、5%以下である。このため、これらの波長範囲内にある光が感光性樹脂組成物の塗膜中で散乱することを抑制できる。それにより、感光性樹脂組成物の塗膜において、光が散乱することによる解像性の低下を生じにくくすることができる。このため、例えば感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィ法で孔を有する皮膜を作製する場合には孔の形状に悪影響を与えにくくすることができる。
【0024】
このように、本実施形態では、感光性樹脂組成物の塗膜が露光されるにあたって特定の波長の光が照射され、反応あるいは硬化に不要な波長の光が照射されないため、感光性樹脂組成物の皮膜の形状が高い解像度を有することができる。
【0025】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を構成する成分について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」とのうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートのうち少なくとも一方を意味する。
【0026】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)は、光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A)は、不飽和化合物(B)とともに、感光性樹脂組成物に感光性、具体的には紫外線硬化性を付与できる。
【0027】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。また、芳香環に起因して、カルボキシル基含有樹脂(A)の光の吸収スペクトルが、305nm以上325nm以下の波長範囲内に吸収を有しうるため、露光時に塗膜内での光の散乱が特に生じにくくなり、解像性が特に向上する。
【0028】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、及びアントラセン骨格のうちいずれかの多環芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、及びアントラセン骨格のうちいずれかの多環芳香環を含むことで、感光性樹脂組成物の硬化物に、より高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。また、この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)の光の吸収スペクトルは、305nm以上325nm以下の波長範囲内に、特に大きな吸収を有しうるため、露光時に光の散乱をより生じにくくでき、解像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含むことが更に好ましい。この場合、ビスフェノールフルオレン骨格に起因して、カルボキシル基含有樹脂(A1)の光の吸収スペクトルが305nm以上325nm以下の波長範囲内に特に大きな吸収を有することができるため、露光時の光の散乱を特に生じにくくでき、解像性の低下をより生じにくくすることができる。これにより、感光性樹脂組成物の塗膜を露光してから現像して皮膜を製造する場合に、皮膜の形状がより高い解像性を有しうる。このため、例えば感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィ法で孔を有する皮膜を作製する場合には孔の形状に悪影響を与えにくくすることができる。また、この場合、感光性樹脂組成物の硬化物に、更に高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。
【0029】
ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えば、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)との反応物である中間体と、酸無水物(a3)との反応物を含む。式(1)において、R~Rは各々独立に水素、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンである。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格(S1)を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)とを反応させ、それにより得られた中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることで合成される。
【0030】
【化1】
【0031】
式(1)におけるR1~R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲンでもよい。なぜなら、芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A1)の物性に悪影響はなく、むしろカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性あるいは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0032】
カルボキシル基含有樹脂(A1)がエポキシ化合物(a1)に由来するビスフェノールフルオレン骨格を有していると、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂(A1)について、より具体的に説明する。カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成するためには、まず式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基の少なくとも一部と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)とを反応させることで、中間体を合成する。中間体の合成は、第一反応と規定される。中間体は、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含むカルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた二級の水酸基を有する。次に、中間体中の二級の水酸基と、酸無水物(a3)とを反応させる。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成できる。中間体と酸無水物(a3)との反応は、第二反応と規定される。酸無水物(a3)は、酸一無水物及び酸二無水物を含みうる。酸一無水物とは、一分子内における二つのカルボキシル基が脱水縮合した、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸二無水物とは、一分子内における四つのカルボキシル基が脱水縮合した、酸無水物基を二つ有する化合物である。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、中間体中の未反応の成分を含んでいてもよい。また、酸無水物(a3)が酸一無水物及び酸二無水物を含む場合は、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、中間体中の成分と酸一無水物中の成分と酸二無水物中の成分との反応物のほか、中間体中の成分と酸一無水物中の成分との反応物、及び中間体中の成分と酸二無水物中の成分の反応物のうち、いずれか一方又は両方を含有してもよい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、これらのような構造の異なる複数の化合物を含む混合物であってよい。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)に由来するエチレン性不飽和基を有することで光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は感光性樹脂組成物に感光性、具体的には紫外線硬化性、を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有することで、感光性樹脂組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。
【0036】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は700以上10000以下の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が700以上であると、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できるとともに、誘電正接を低減できる。また、重量平均分子量が10000以下であると、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。重量平均分子量は、900以上であることが更に好ましく、1000以上であることが特に好ましい。また、重量平均分子量は、8000以下の範囲内であることが更に好ましく、5000以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0037】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度が1.0以上4.8以下の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される硬化物の良好な絶縁性を確保しながら、感光性樹脂組成物に優れた現像性を付与できる。カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度が1.1以上4.0以下であることがより好ましく、1.2以上2.8以下であることが更に好ましい。
【0038】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量及び分子量分布は、カルボキシル基含有樹脂(A1)が、中間体中の未反応の成分、中間体中の成分と酸一無水物中の成分と酸二無水物中の成分との反応物、中間体中の成分と酸一無水物中の成分との反応物、中間体中の成分と酸二無水物中の成分の反応物といった、多様な成分を適度に含有する混合物であることで、達成できる。より具体的には、例えばエポキシ化合物(a1)の平均分子量、エポキシ化合物(a1)に対する酸一無水物の量、エポキシ化合物(a1)に対する酸二無水物の量といったパラメータを制御することで、達成できる。
【0039】
なお、多分散度は、カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)である。
【0040】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の固形分酸価は60mgKOH/g以上140mgKOH/g以下の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性が特に向上する。酸価が80mgKOH/g以上135mgKOH/g以下の範囲内であればより好ましく、酸価が90mgKOH/g以上130mgKOH/g以下の範囲内であれば更に好ましい。
【0041】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、酸二無水物の架橋によって調整されうる。この場合、酸価と分子量とが調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。すなわち、酸無水物(a3)中に含まれる酸二無水物の量を制御することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量及び酸価を容易に調整できる。なお、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる次の条件での測定結果から算出される。
【0042】
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0043】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
【0044】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(2)に示す構造を有する。式(2)中のnは、例えば0~20の範囲内の整数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0~1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0~1の範囲内であれば、酸無水物(a3)が酸二無水物を含有する場合でも、過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。
【0045】
【化2】
【0046】
カルボン酸(a2)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)を含む。カルボン酸(a2)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)のみを含んでいてもよい。あるいは、カルボン酸(a2)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)以外のカルボン酸を含んでいてもよい。
【0047】
不飽和基含有カルボン酸(a2-1)は、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)がアクリル酸を含有する。
【0048】
カルボン酸(a2)は、多塩基酸(a2-2)を含んでもよい。多塩基酸(a2-2)は、1分子内において2つ以上の水素原子が金属原子と置換可能な酸である。多塩基酸(a2-2)は、カルボキシル基を2つ以上有することが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)及び多塩基酸(a2-2)の両方と反応する。エポキシ化合物(a1)の2つの分子中に存在するエポキシ基を多塩基酸(a2-1)が架橋することで、分子量の増大が得られる。それにより、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できると共に、誘電正接を低減できる。
【0049】
多塩基酸(a2-2)は、ジカルボン酸を含むことが好ましい。多塩基酸(a2-2)は、例えば、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、多塩基酸(a2-2)が4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸を含有する。
【0050】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させるに当たっては、適宜の方法が採用されうる。例えばエポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にカルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、中間体が得られる。溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0051】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基とカルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、あるいは97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁性が向上する。
【0052】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対するカルボン酸(a2)の量は0.5モル以上1.2モル以下の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の優れた感光性と安定性が得られる。同様の観点から、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2-1)の量が0.5モル以上1.2モル以下の範囲内であることが好ましい。あるいは、カルボン酸(a2)が、不飽和基含有カルボン酸(a2-1)以外のカルボン酸を含む場合には、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2-1)の量が0.5モル以上0.95モル以下の範囲内であってもよい。また、カルボン酸(a2)が、多塩基酸(a2-2)を含む場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する多塩基酸(a2-2)の量は0.025モル以上0.25モル以下の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の優れた感光性と安定性が得られる。
【0053】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、不飽和基の付加重合反応を抑制して、中間体の分子量の増大及び中間体の溶液のゲル化を抑制できる。また、最終生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な着色を抑制できる。
【0054】
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基とカルボン酸(a2)におけるカルボキシル基とが反応することで生成した水酸基を備える。
【0055】
酸無水物(a3)は酸一無水物を含むことが好ましい。酸一無水物は、酸無水物基を一つ有する化合物である。
【0056】
酸一無水物は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物は、例えば1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、及びメチルヘキサヒドロフタル酸無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。特に酸一無水物が1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できる。酸一無水物全体に対して、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸は20モル%以上100モル%以下の範囲内であることが好ましく、40モル%以上100モル%以下の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
【0057】
酸無水物(a3)は酸二無水物を含むことが好ましい。酸二無水物は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物は、テトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物は、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9´-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3´,4,4´-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト〔1,2-c〕フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物及び3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。酸二無水物は、芳香環を有する酸二無水物を含有することが好ましい。特に酸二無水物が3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物の硬化物の絶縁性を向上できる。また、感光性樹脂組成物の透明性が向上し、それに伴い解像性が向上する。酸二無水物全体に対して、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は20モル%以上100モル%以下の範囲内であることが好ましく、40モル%以上100モル%以下の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
【0058】
中間体と酸無水物(a3)とを反応させるに当たっては、適宜の方法が採用されうる。例えば中間体の溶剤溶液に酸無水物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0059】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物(a3)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁性が更に向上する。
【0060】
中間体と、酸無水物(a3)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量増大が抑制されることで、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
【0061】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、芳香環を有し、光重合性を有さないカルボキシル基含有樹脂を含んでもよい。芳香環を有し、光重合性を有さないカルボキシル基含有樹脂は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート等の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等と二塩基酸無水物との反応物も含有できる。エチレン性不飽和単量体は、直鎖又は分岐の脂肪族あるいは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。
【0062】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外の樹脂、すなわちビスフェノールフルオレン骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂(A2)ともいう)を含有してもよい。
【0063】
カルボキシル基含有樹脂(A2)は、例えば、カルボキシル基を有し光重合性を有さない化合物(以下、(A2-1)成分という)を含有できる。(A2-1)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート等の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等と二塩基酸無水物との反応物も含有できる。エチレン性不飽和単量体は、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族あるいは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。
【0064】
カルボキシル基含有樹脂(A2)は、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、(A2-2)成分という)を含有してもよい。またカルボキシル基含有樹脂(A2)は、(A2-2)成分のみを含有してもよい。(A2-2)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(x1)とエチレン性不飽和化合物(x2)との反応物である中間体と、多価カルボン酸及びその無水物の群から選択される少なくとも一種の化合物(x3)との反応物である樹脂(第一の樹脂(x)という)を含有する。第一の樹脂(x)は、例えばエポキシ化合物(x1)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(x2)中のカルボキシル基とを反応させて得られた中間体に化合物(x3)を付加させて得られる。エポキシ化合物(x1)は、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物等の適宜のエポキシ化合物を含有できる。特にエポキシ化合物(x1)はビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物(x1)は、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のみを含有してもよく、あるいはクレゾールノボラック型エポキシ化合物のみを含有してもよい。この場合、エポキシ化合物(x1)の主鎖に芳香族環が含まれるので、感光性樹脂組成物の硬化物が、例えば過マンガン酸カリウムなどを含有する酸化剤により、著しく腐食される程度を低減できる。エポキシ化合物(x1)は、エチレン性不飽和化合物(z)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(z)は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する化合物(z1)を含有し、あるいは更に2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート等のエポキシ基を有さない化合物(z2)を含有する。エチレン性不飽和化合物(x2)は、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。化合物(x3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸と、これらの多価カルボン酸の無水物とからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。特に化合物(x3)はフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸の群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸を含有することが好ましい。
【0065】
(A2-2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂(第二の樹脂(y)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。第二の樹脂(y)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族あるいは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0066】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみ、カルボキシル基含有樹脂(A2)のみ、又はカルボキシル基含有樹脂(A1)とカルボキシル基含有樹脂(A2)とを含有する。感光性樹脂組成物の高い透明性を得るため、及び感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低減するためには、カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を30質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、100質量%含むことが更に好ましい。
【0067】
カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して5質量%以上85質量%以下の範囲内であることが好ましく、10質量%以上75質量%以下の範囲内であることがより好ましく、26質量%以上60質量%以下の範囲内であることが更に好ましく、30質量%以上45質量%以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、固形分量とは、感光性樹脂組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた、全成分の合計量のことである。
【0068】
カルボキシル基含有樹脂(A)の固形分酸価は、40mgKOH/g以上160mgKOH/g以下の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の安定性が特に向上する。酸価が60mgKOH/g以上140mgKOH/g以下の範囲内であればより好ましく、酸価が80mgKOH/g以上135mgKOH/g以下の範囲内であれば更に好ましく、酸価が90mgKOH/g以上130mgKOH/g以下の範囲内であれば特に好ましい。
【0069】
不飽和化合物(B)は、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する。不飽和化合物(B)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。不飽和化合物(B)は、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0070】
特に不飽和化合物(B)は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上するとともに、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0071】
不飽和化合物(B)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2-メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP-1M、及びライトエステルP-2M)、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP-1A)、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR-260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)との付加反応物である品番HFA-6003、及びHFA-6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)との付加反応物である品番HFA-3003、及びHFA-6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0072】
不飽和化合物(B)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0073】
不飽和化合物(B)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する不飽和化合物(B1)を含有してもよい。不飽和化合物(B1)は、例えばビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノキシフルオレンジメタクリレート、及び9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。不飽和化合物(B1)の具体的な製品の例は、新中村化学工業株式会社製の品名A-BPEF、田岡化学工業株式会社製の品名TBIS-G及びTBIS-MPN、大阪ガスケミカル株式会社製の品名EA-200及びEA-1000である。
【0074】
光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルは、上記の通り、350nm以上370nm以下の波長範囲内にある第一の吸収と、370nmより長く415nm以下の波長範囲内にある第二の吸収とを有する。このため、感光性樹脂組成物の塗膜を露光して皮膜を作製するにあたって、光重合開始剤(C)は、塗膜の深部硬化性を向上させることに寄与することができる。特に、第二の吸収が、少なくとも、400nm以上415nm以下の波長範囲内にある吸収を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の塗膜を露光して皮膜を形成するにあたって、塗膜の深部硬化性をより向上させることに寄与することができる。なお、本実施形態では、光重合開始剤(C)の吸収スペクトルが特定の波長範囲の「吸収を有する」とは、光重合開始剤(C)の吸収スペクトルにおいて、「光重合開始剤(C)の350nm以上370nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、特定の波長範囲の曲線下面積が、2%以上である」ことを意味する。例えば、光重合開始剤(C)が「370nmより大きく415nm以下の波長範囲の光を吸収する」とは、光重合開始剤(C)の吸収スペクトルにおいて「光重合開始剤(C)の350nm以上370nm以下の波長範囲の曲線面積に対する、370nmより大きく415nm以下の波長範囲の曲線下面積が、2%以上である」ことを意味する。以下、光重合開始剤(C)の吸収スペクトルの各波長範囲についても、同様である。
【0075】
光重合開始剤(C)は、更に、305nm以上325nm以下の波長の光を吸収する特性を有することも好ましい。すなわち、光重合開始剤(C)の光の吸収スペクトルは、305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の吸収を更に有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の塗膜を露光して皮膜を形成するにあたって、塗膜表面の硬化性をより向上させることができる。もちろん、光重合開始剤(C)の光吸収スペクトルは、上記の第一の吸収、第二の吸収及び第三の吸収以外の吸収を、更に有してもよい。すなわち、光重合開始剤(C)の光吸収スペクトルは、305nm未満の波長にある吸収を有してもよく、415nmより長い波長にある吸収を有してもよい。
【0076】
光重合開始剤(C)は、適宜の化合物を含有できる。特に、光重合開始剤(C)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(C2)、及びオキシムエステル系光重合開始剤(C3)からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の塗膜を露光して皮膜を作製するにあたって、塗膜の深部硬化性をより向上させることができる。また、この場合、感光性樹脂組成物を紫外線で露光する場合に、感光性樹脂組成物に高い感光性を付与できる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、同層の絶縁信頼性を更に向上させることができる。特に、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は、フォトブリーチング効果が高く、高い深部硬化性を有し、かつ感光性樹脂組成物の塗膜の変色も低減できる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は、感光性樹脂組成物の硬化物の電気絶縁性を阻害しにくい。このため、感光性樹脂組成物を露光して硬化させることで、電気的絶縁性に優れた硬化物が得られ、この硬化物は、例えばソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層として好適である。
【0077】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む。特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドを含むことが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドのみを含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜に、より高い深部硬化性を付与することができる。
【0078】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(C2)は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む。α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜に、より高い深部硬化性を付与することができる。
【0079】
オキシムエステル系光重合開始剤(C3)は、例えば1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することができる。オキシムエステル系光重合開始剤(C3)が含みうる成分の、より具体的な製品の例として、BASF社製、品番Irgacure OXE 01、Irgacure OXE 02、並びにADEKA社製のアデカオクトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、及びアデカアークルズNCI-930が挙げられる。
【0080】
オキシムエステル系光重合開始剤(C1)の光の吸収スペクトルは、350nmより長い波長範囲内にある吸収を有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の深部硬化性を高めることができるため、塗膜の高感度化が実現できうる。そのため、感光性樹脂組成物はソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、及び層間絶縁層等の用途に特に適する。
【0081】
光重合開始剤(C)は、水素引き抜き型光重合開始剤(C4)を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を露光してから現像して皮膜を製造する場合に、皮膜の形状が更に高い解像性を有する。この場合、露光してから現像して孔を有する皮膜を作製するにあたっては、孔の形状をよりシャープにすることができる。
【0082】
水素引き抜き型光重合開始剤(C4)は、例えばビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン系光重合開始剤(C41)、及びチオキサントン系光重合開始剤(C42)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む。
【0083】
ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン系光重合開始剤(C41)は、例えば4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)、及び4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。特にビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン系光重合開始剤(C41)は、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像するにあたって、解像性が特に高くなる。このため、感光性樹脂組成物の硬化物で非常に微細なパターンを形成することが可能となる。特に、感光性樹脂組成物から多層プリント配線板の層間絶縁層を作製すると共にこの層間絶縁層にスルーホールのための小径の孔をフォトリソグラフィ法で設ける場合、小径の孔を精密かつ容易に形成することが可能となる。
【0084】
チオキサントン系光重合開始剤(C42)は、例えば2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0085】
光重合開始剤(C)は、ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有してもよい。ヒドロキシケトン系光重合開始剤は、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0086】
光重合開始剤(C)は、上記で説明した光重合開始剤(C)が含みうる成分のうち、一種の成分のみを含有してもよく、二種以上の成分を含有してもよい。光重合開始剤(C)が二種以上の成分を含有する場合、本実施形態における光重合開始剤(C)の上記の光吸収特性は、二種以上の成分の組合せによって達成されればよい。
【0087】
光重合開始剤(C)全量に対するアシルフォスフィン系光重合開始剤(C1)の量は、20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤(C)全量に対するα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(C2)の量は、20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤(C)全量に対するオキシムエステル系光重合開始剤(C3)の量は、1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。また、光重合開始剤(C)全量に対する水素引き抜き型光重合開始剤(C4)の量は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
【0088】
感光性樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、更に光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えば感光性樹脂組成物は、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;並びに2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(C)と共に、p-ジメチル安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の光重合促進剤や増感剤等を含有してもよい。
【0089】
エポキシ樹脂(D)は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。エポキシ樹脂(D)は、結晶性エポキシ樹脂(D1)を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。さらに、有機フィラー(E1)がカルボキシル基を有するので、有機フィラー(E1)で結晶性エポキシ樹脂(D1)の相溶性を向上させ、感光性樹脂組成物における結晶性エポキシ樹脂(D1)の再結晶化を防ぐことができる。また、エポキシ樹脂(D)は、非晶性エポキシ樹脂(D2)を更に含有してもよい。ここで「結晶性エポキシ樹脂」は融点を有するエポキシ樹脂であり、「非晶性エポキシ樹脂」は融点を有さないエポキシ樹脂である。
【0090】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は、例えば、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC-1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX-4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV-80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR-1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
【0091】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は、1分子中に2個のエポキシ基を有することが好ましい。この場合、温度変化が繰り返される中で、硬化物にクラックを更に生じ難くさせることができる。
【0092】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は150g/eq以上300g/eq以下のエポキシ当量を有することが好ましい。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂(D1)のグラム重量である。結晶性エポキシ樹脂(D1)は融点を有する。結晶性エポキシ樹脂(D1)の融点としては、例えば70℃以上180℃以下が挙げられる。
【0093】
特にエポキシ樹脂(D)は、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂(D1-1)を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂(D1-1)は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX-4000)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV-80XY)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0094】
非晶性エポキシ樹脂(D2)は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLONEXA-1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC-3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST-4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4700、EPICLON HP-4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP-7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATEX-E-201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175-500、及びYL7175-1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR-960、EPICLON TER-601、EPICLON TSR-250-80BX、EPICLON 1650-75MPX、EPICLON EXA-4850、EPICLON EXA-4816、EPICLON EXA-4822、及びEPICLON EXA-9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-156)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-136)、並びにゴム粒子含有ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番カネエースMX-130)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
【0095】
エポキシ樹脂(D)はリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は結晶性エポキシ樹脂(D1)に含有されてもよいし、あるいは非晶性エポキシ樹脂(D2)に含有されてもよい。リン含有エポキシ樹脂は、例えば、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-9726、及びEPICLON EXA-9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX-305等である。
【0096】
エポキシ化合物(D)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(D3)を含有してもよい。このエポキシ化合物(D3)は、例えば上記で説明した式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格(S1)を有するエポキシ化合物(a1)を含む。
【0097】
感光性樹脂組成物は、着色剤(E)を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から皮膜を作製するにあたって、感光性樹脂組成物の塗膜を露光する際に、塗膜中での散乱を抑制しうる。このため、光が散乱することによる解像性の低下をより生じにくくできる。これにより、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を露光してから現像して皮膜を製造する場合に、皮膜の形状が更に高い解像性を有しうる。この場合、孔を有する皮膜を作製するにあたり、孔の形状をよりシャープにすることができる。
【0098】
着色剤(E)は、例えば感光性樹脂組成物から形成される皮膜を着色しうる物質である。着色剤は、顔料と染料とのいずれをも含みうる。感光性樹脂組成物が着色剤を含有する場合、着色剤は、顔料、染料及び色素のいずれを含有してもよい。着色剤(E)は、例えば黒色着色剤、青色着色剤、及び黄色着色剤からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0099】
黒色着色剤の例は、カーボンブラック、ナフタレンブラック、チタンブラック、ラクタムブラック及びペリレンブラックを含む。
【0100】
青色着色剤の例は、フタロシアニン系化合物、及びアントラキノン系化合物を含む。
【0101】
黄色着色剤の例は、モノアゾ系化合物、ジスアゾ系化合物、縮合アゾ系化合物、ベンズイミダゾロン系化合物、イソインドリノン系化合物、及びアントラキノン系化合物を含む。
【0102】
着色剤(E)は、上記以外の色の着色剤であってもよい。上記以外の色の着色剤は、例えば赤色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、及び茶色着色剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分が挙げられる。
【0103】
赤色着色剤の例は、モノアゾ系化合物、ジスアゾ系化合物、アゾレーキ系化合物、ベンズイミダゾロン系化合物、ペリレン系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、縮合アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、及びキナクリドン系化合物を含む。
【0104】
緑色着色剤の例は、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、及びペリレン系化合物を含む。
【0105】
感光性樹脂組成物は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する成分を含むことが好ましい。この場合、ビスフェノールフルオレン骨格を有する成分は、ビスフェノールフルオレン骨格に起因して、305nm以上325nm以下の波長範囲内の光を吸収できる。このため、露光時の光の散乱を特に生じにくくでき、解像性の低下をより生じにくくすることができる。ビスフェノールフルオレン骨格を有する成分は、例えば上記のビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)、ビスフェノールフルオレン骨格を有する不飽和化合物(B1)及びビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(D3)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0106】
感光性樹脂組成物中の成分の量は、感光性樹脂組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0107】
カルボキシル基含有樹脂(A)の量は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して5質量%以上85質量%以下であれば好ましく、10質量%以上75質量%以下であればより好ましく、20質量%以上60質量%以下であれば更に好ましい。
【0108】
不飽和化合物(B)の量は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して1質量%以上50質量%以下であれば好ましく、10質量%以上45質量%以下であればより好ましく、15質量%以上40質量%以下であれば更に好ましい。
【0109】
光重合開始剤(C)の量は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1質量%以上30質量%以下であれば好ましく、1質量%以上25質量%以下であればより好ましく、3質量%以上20質量%以下であれば更に好ましい。
【0110】
エポキシ樹脂(D)の量に関しては、エポキシ樹脂(D)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.7以上2.5以下であることが好ましく、0.7以上2.3以下であればより好ましく、0.7以上2.0以下であれば更に好ましい。
【0111】
感光性樹脂組成物が着色剤(E)を含有する場合、着色剤(E)の量はカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であれば更に好ましい。
【0112】
感光性樹脂組成物がビスフェノールフルオレン骨格を有する成分を含有する場合、ビスフェノールフルオレン骨格を有する成分の量は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であれば更に好ましい。
【0113】
感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に速やかに有機溶剤が揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、感光性樹脂組成物全体に対して、有機溶剤が0質量%より大きく99.5質量%以下であることが好ましく、15質量%以上60質量%以下であれば更に好ましい。なお、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
【0114】
なお、固形分量とは、感光性樹脂組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた、全成分の合計量のことである。
【0115】
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、感光性樹脂組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0116】
例えば、感光性樹脂組成物が無機充填材を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を硬化させる際の硬化収縮が低減する。無機充填材は、例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。感光性樹脂組成物中の無機充填材の割合は適宜設定されるが、カルボキシル基含有樹脂(A)に対し0質量%以上200質量%以下であることが好ましく、0質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。
【0117】
感光性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n-ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有してもよい。
【0118】
感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0119】
感光性樹脂組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばメラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体が挙げられる。
【0120】
感光性樹脂組成物は、硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0121】
感光性樹脂組成物中のアミン化合物の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層の電気絶縁性が損なわれにくい。特にカルボキシル基含有樹脂(A)に対してアミン化合物が6質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であれば更に好ましい。
【0122】
上記のような感光性樹脂組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる混練方法によって混練されることにより、感光性樹脂組成物が調製され得る。感光性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、感光性樹脂組成物を調製してもよい。
【0123】
保存安定性等を考慮して、感光性樹脂組成物の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。この場合、例えば、感光性樹脂組成物の成分のうち不飽和化合物(B)及び有機溶剤の一部及び熱硬化性成分を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、感光性樹脂組成物の成分のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
【0124】
本実施形態による感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層を形成するために適している。
【0125】
感光性樹脂組成物が厚み25μmの皮膜に成形された場合に、皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることが好ましい。この場合、十分に厚みの大きい電気絶縁性の層を感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィ法で作製することが可能であるため、感光性樹脂組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。もちろん、感光性樹脂組成物から厚み25μmより薄い電気絶縁性の層を作製することも可能である。
【0126】
皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることは、次の方法で確認できる。適当な基材上に感光性樹脂組成物を塗布することで湿潤塗膜を形成し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射する。露光後の皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する。この処理後の皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、現像可能であると判断できる。
【0127】
本実施形態に係る皮膜の製造方法は、既に述べた通り、感光性樹脂組成物の塗膜を基材上に配置することで、基材上に塗膜を形成する工程と、塗膜に光を照射して露光する工程と、露光後の前記塗膜をアルカリ溶液で現像する工程と、を含む。以下、本実施形態の感光性樹脂組成物から形成される皮膜を製造する方法、及びこの皮膜を備えるプリント配線板を製造する方法について、図3を参照して、詳細に説明する。
【0128】
基材上に感光性樹脂組成物の塗膜を形成するには、まず、図3Aに示すように、基材としてコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁層2と少なくとも一つの導電層3とを備える。導電層3は、導体配線であってもよい。コア材1の一面上に設けられている導電層3を、以下第一の導体配線31という。図3Bに示すように、コア材1の第一の導体配線31が設けられている面上に、感光性樹脂組成物からなる塗膜4を形成する。感光性樹脂組成物から塗膜4を形成するには、例えば塗布法、及びドライフィルム法等の方法により、形成すればよい。
【0129】
塗布法では、例えばコア材1等の基材上に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法は、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60~120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、塗膜4(乾燥塗膜)を得ることができる。
【0130】
ドライフィルム法では、まずポリエステル製などの適宜の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に感光性樹脂組成物を含むドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる塗膜4が設けられる。
【0131】
このようにして、コア材1等の基材上に感光性樹脂組成物の塗膜4を配置し、基材上に塗膜4を形成することができる。
【0132】
本実施形態の塗膜4の光の吸収スペクトルにおける、350nm以上370nm以下の波長範囲の最大吸光度に対する、305nm以上325nm以下の波長範囲での光の最大吸光度は、3倍以上であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を露光するにあたって、塗膜内での光の散乱が抑制されうる。このため、光が散乱することによる解像性の低下をより生じにくくできる。これにより、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を露光してから現像して皮膜を製造する場合に、皮膜の形状が更に高い解像性を有しうる。この場合、例えば感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィ法によって孔を有する皮膜を作製するにあたり、孔の形状をよりシャープにすることができる。なお、塗膜の吸収スペクトルは、例えば分光光度計等の分光分析装置により測定される。具体的な測定方法は、後述の実施例の評価試験(4-1)と同様にして測定できる。
【0133】
次に、上記でコア材1上に形成した塗膜4に光を照射して、塗膜4を露光する。塗膜4を露光するに当たっては、例えば光源から発せられる光を塗膜4に照射することができる。本実施形態では、露光する工程で塗膜に照射される光のスペクトルは、上記の通り、350nm以上370nm以下の波長範囲内で第一の吸収の波長と重複する波長にある第一の強度分布と、370nmより大きく415nm以下の波長範囲内で第二の吸収の波長と重複する波長にある第二の強度分布と、305nm以上325nm以下の波長範囲内にある第三の強度分布とを有する。さらに、この光のスペクトルでは、200nm以上500nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、280nmより小さく200nmまでの波長範囲の曲線下面積と415nmより大きく500nmまでの波長範囲の曲線下面積との合計の百分比は、5%以下である。
【0134】
光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、及び超高圧水銀灯からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。この場合、短い露光時間で高解像な像を形成することができる。
【0135】
本実施形態では、露光する工程では、光源が発する光を、280nmより短く200nm以上の波長範囲内の光、及び415nmより長く500nm以下の波長範囲内の光をカットする光学フィルタを通過させてから、塗膜に照射することが好ましい。この場合、塗膜に照射される光のスペクトルにおける、200nm以上500nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、280nmより小さく200nmまでの波長範囲の曲線下面積と415nmより大きく500nmまでの波長範囲の曲線下面積との合計の百分比が、5%以下であるようにできる。
【0136】
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、及び超高圧水銀灯以外の光源が発する光を塗膜に照射してもよい。
【0137】
光学フィルタは、所定の波長範囲の光をカットする適宜のフィルタを採用できる。光学フィルタの例は、例えば特定の波長範囲の光のみを透過し、それ以外の短波長側及び長波長側の光をカットするバンドパスフィルタが挙げられる。なお、光学フィルタは、上記作用を有するものであれば、ロングパスフィルタ及びショートパスフィルタ、あるいはこれら2種以上を組み合わせることで、特定の波長範囲の光(例えば、280nmより短い波長の光及び415nmより長い波長の光以外の光)のみを透過するように構成してもよい。また、光学フィルタは、その寸法、形状、並びに配置方法等は特に制限されない。例えば、光学フィルタは、塗膜4と光源との間の位置に配置されていればよい。
【0138】
塗膜4を露光することで、図3Cに示すように塗膜4を部分的に光硬化させる。例えばネガマスクを塗膜4に当てがってから、ネガマスクを介して、皮膜4に光を照射する。ネガマスクは、光を透過させる露光部と光を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。
【0139】
また、露光するに当たっては、上記のネガマスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えば、光源から発せられる光を塗膜4上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で塗膜4を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えばレーザー、LED(Light Emitting Diode)、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
【0140】
また、ドライフィルム法では、支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を透過させて紫外線をドライフィルムからなる塗膜4に照射することで露光し、続いて現像処理前に露光後の塗膜4から支持体を剥離してもよい。
【0141】
続いて、露光後の塗膜4に現像処理を施すことで、図3Cに示す塗膜4の露光されていない部分(非露光部)5を除去する。これにより、図3Dに示すように皮膜40におけるスルーホール10が形成される位置に孔6を設ける。
【0142】
現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0143】
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0144】
これにより、基材上に感光性樹脂組成物を含有する皮膜40を作製することができる。このように作製された感光性樹脂組成物を含有する皮膜40の形状は、高い解像性を有しうる。また、この場合、皮膜40に形成される孔の形状をよりシャープにすることができる。
【0145】
上記で作製した皮膜40には、更に以下のような処理を施してもよい。
【0146】
例えば、皮膜40を加熱することで熱硬化させてもよい。加熱の条件は、例えば加熱温度120~200℃の範囲内、加熱時間30~120分間の範囲内である。この場合、皮膜40から形成される層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜40に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜40の光硬化を更に進行させることができる。
【0147】
これにより、例えばコア材1等の基材上に、感光性樹脂組成物の皮膜40(感光性樹脂組成物の硬化物ともいえる)を含む層間絶縁層7が設けられる。
【0148】
さらに、皮膜40(層間絶縁層7)には、メッキ処理を施してもよい。メッキ処理は、適宜の方法が採用でき、例えばこの層間絶縁層7上に、アディティブ法などの方法で、第二の導体配線8及びホールメッキ9を設けることができる。これにより、図3Eに示すように、第一の導体配線31、第二の導体配線8、第一の導体配線31と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線31と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備えるプリント配線板11が得られる。なお、図3Eにおいて、ホールメッキ9は孔6の内面を覆う筒状の形状を有するが、孔6の内側全体にホールメッキ9が充填されていてもよい。ホールメッキ9を設けるにあたって、後述する粗化された外表面の一部と、孔6の内側面とに無電解金属メッキ処理を施して初期配線を形成することができる。その後、電解金属メッキ処理で初期配線に電解質メッキ液中の金属を析出させることでホールメッキ9を形成することができる。
【0149】
また、上記メッキ処理を施す前に、皮膜40に粗化処理を施すことで、皮膜40の表面を粗化してもよい。例えば層間絶縁層7の外表面の一部と孔6の内側面全体とを粗化するにあたって、酸化剤を用いた一般的なデスミア処理と同じ手順で行うことができる。例えば、層間絶縁層7の外表面に酸化剤を接触させて層間絶縁層7に粗面を付与する。しかし、これに限らず、プラズマ処理、UV処理やオゾン処理等の硬化物に粗面を付与する手法を適宜採用することができる。酸化剤は、デスミア液として入手可能な酸化剤であってもよい。たとえば、市販のデスミア用膨潤液とデスミア液とにより、酸化剤が構成され得る。このような酸化剤は、例えば過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムの群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸塩を含有することができる。
【0150】
本実施形態による感光性樹脂組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0151】
まず、基材となるコア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線(導電層)とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から塗膜を形成する。塗膜の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。塗布法とドライフィルム法としては、上記の基材上に塗膜を形成する場合と同じ方法を採用できる。塗膜を露光することで部分的に光硬化させる。露光方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。続いて、塗膜に現像処理を施すことで、塗膜の露光されていない部分を除去し、これにより、コア材上に、塗膜の露光された部分が残存する。続いて、コア材上に形成された皮膜を加熱することで熱硬化させる。現像方法及び加熱方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化を更に進行させることができる。
【0152】
以上により、コア材上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線(導電層)とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。
【実施例
【0153】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、本発明は実施例のみに制限されない。
【0154】
(1)カルボキシル基含有樹脂の合成
(1-1)合成例A-1及び合成例B-1
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、表1中の「第一反応」欄に示す成分を加えて、これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内でエアバブリング下で攪拌しながら、「反応条件」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0155】
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に表1の「第二反応」欄に示す成分を投入し、エアバブリング下で攪拌しながら「反応条件(1)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。続いて、合成例A-1では、エアバブリング下で攪拌しながら「反応条件(2)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂の多分散度(ただし、合成例B-1のカルボキシル基含有樹脂を除く)、重量平均分子量、及び酸価は表1中に示す通りである。成分間のモル比も表1に示している。
【0156】
なお、表1中の(a1)欄に示す成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物1:式(7)で示され、式(7)中のR1~R8がすべて水素であるエポキシ当量250g/eqのビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物。
【0157】
また、表1中の(g1)欄に示す成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDC-700-5、エポキシ当量203g/eq)。
【0158】
【表1】
【0159】
(2)感光性樹脂組成物の調製(実施例1~9)
後掲の表に示す成分の一部を3本ロールで混練してから、後掲の表に示す全成分をフラスコ内で撹拌混合することで、感光性樹脂組成物を得た。なお、表に示される成分の詳細は次の通りである。また、以下の光重合開始剤において、特定の波長に対し「光を吸収しない」とは、光重合開始剤の吸収スペクトルにおいて、「光重合開始剤の350nm以上370nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、各波長範囲の曲線下面積が2%未満である」ことを意味する。例えば、光重合開始剤Bが、「400nm以上415nm以下の波長の光を吸収しない」とは、光重合開始剤Bの吸収スペクトルにおいて、「光重合開始剤Bの350nm以上370nm以下の波長範囲の曲線下面積に対する、400nm以上415nm以下の波長範囲の曲線下面積が2%未満である」ことを意味する。
・不飽和化合物A:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・不飽和化合物B:ジペンタエリストールペンタアクリレートとジペンタエリストールヘキサアクリレートの混合体(日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA)。
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF社製、品番Irgacure TPO);アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤。305nm以上325nm以下の波長の光と、350nm以上370nm以下の波長の光と、370nmより長く400nm未満の波長の光と、400nm以上415nm以下の波長の光と、を吸収する特性を有する。
・光重合開始剤B:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製、品番Irgacure 907);α‐アミノアルキルフェノン系光重合開始剤。305nm以上325nm以下の波長の光と、350nm以上370nm以下の波長の光と、370nmより長く400nm未満の波長の光と、を吸収する特性を有する。400nm以上415nm以下の波長の光を吸収しない。
・光重合開始剤C:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(BASF社製、品番Irgacure OXE 02);オキシムエステル系光重合開始剤。305nm以上325nm以下の波長の光と、350nm以上370nm以下の波長の光と、370nmより長く400nm未満の波長の光と、を吸収する特性を有する。400nm以上415nm以下の波長の光を吸収しない。
・光重合開始剤D:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製、品番Irgacure 184);α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤。305nm以上325nm以下の波長の光と、350nm以上370nm以下の波長の光と、370nmより長く400nm未満の波長の光と、を吸収する特性を有する。400nm以上415nm以下の波長の光を吸収しない。
・光重合開始剤E:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、品番KAYACURE-DETX-S);水素引き抜き型光重合開始剤。305nm以上325nm以下の波長の光と、350nm以上370nm以下の波長の光と、370nmより長く400nm未満の波長の光と、400nm以上415nm以下の波長の光と、を吸収する特性を有する。
・光重合開始剤F:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;水素引き抜き型光重合開始剤。305nm以上325nm以下の波長の光と、350nm以上370nm以下の波長の光と、370nmより長く400nm未満の波長の光と、400nm以上415nm以下の波長の光と、を吸収する特性を有する。
・エポキシ樹脂A:ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の品名YX-4000、融点105℃、エポキシ当量187g/eq)。
・エポキシ樹脂Bの溶液:長鎖炭素鎖含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、品番EPICLON EXA-4816、液状樹脂、エポキシ当量410g/eq)を固形分90%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分90%換算のエポキシ当量は、455.56g/eq)。
・エポキシ樹脂Cの溶液:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製の品名YDCN-704、軟化点87~97℃、エポキシ当量208g/eq)を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分70%換算のエポキシ当量は、297.14g/eq)。
・黒色着色剤:カーボンブラック分散液、平均粒子径100~300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・青色着色剤:フタロシアニンブルー分散液、平均粒子径100~300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・黄色着色剤:ニッケル錯体顔料分散液、平均粒子径100~300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン;感光性樹脂組成物中において平均粒子径8μmで分散。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製、品番IRGANOX 1010)。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB30。
・ベントナイト:レオックス社製、品番ベントンSD-2。
・有機フィラーの分散液:平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基を有する架橋ゴム(NBR)、JSR株式会社製、品番XER-91-MEK、架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液、酸価10.0mgKOH/g。
・カップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
・消泡剤:信越化学工業株式会社製、品番KS-66。
・界面活性剤:DIC製、品番メガファックF-477。
・溶剤:メチルエチルケトン。
【0160】
(3)試験サンプル(塗膜)の作製
上記(2)で調製した感光性樹脂組成物を用いて、次のように試験サンプル(塗膜)を作製した。
【0161】
感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み25μmの乾燥塗膜(ドライフィルム)を形成した。
【0162】
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR-4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が100μm/100μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。このコア材の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、エッチング剤(メック株式会社製の有機酸系マイクロエッチング剤、品番CZ-8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このコア材の一面全面にドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間である。これにより、コア材上にドライフィルムからなる膜厚25μmの塗膜を形成した。このようにして得られた塗膜を、下記(4-2)評価試験の試験サンプルとして評価を行った。
【0163】
(4)評価試験
(4-1)吸光度特性
各実施例の感光性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み10μmの乾燥塗膜を形成した。ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に形成された各実施例の乾燥塗膜を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製の品番UV-3100PC)にセットして、乾燥塗膜の300~800nmの吸収スペクトルを測定した。リファレンスには、基材であるポリエチレンテレフタレート製のフィルムを使用した。得られた吸収スペクトルより、[波長305~325nmにおける吸光度の最大値]/[波長350~370nmにおける吸光度の最大値]の値(すなわち350nm以上370nm以下の波長範囲での光の最大吸光度に対する、305nm以上325nm以下の波長範囲での光の最大吸光度の比の値)を求め、以下の基準で評価した。
○:[波長305~325nmにおける吸光度の最大値]/[波長350~370nmにおける吸光度の最大値]の値が3以上である。
×:[波長305~325nmにおける吸光度の最大値]/[波長350~370nmにおける吸光度の最大値]の値が3未満である。
【0164】
(4-2)孔の形状
上記(3)で作製した各実施例の試験サンプル(塗膜)に露光してから現像することで、皮膜に形成された孔の形状を評価した。具体的には、各実施例の試験サンプル(塗膜)に、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上から、直径60μmの円形形状の非露光部を有する石英ガラスのネガマスクを直接当てがった状態で、光学フィルタ及びネガマスクを介して塗膜に400mJ/cmの条件で光を照射した。塗膜に光を照射するための光源は、超高圧水銀灯を使用した。超高圧水銀灯が発する光の発光スペクトルは、図1に示すように横軸を波長(単位nm)及び縦軸を相対強度(単位%)として、波長と相対強度とが図1に示すとおりである。下記の露光条件(条件A~F)で光を照射した。なお、露光後、現像前に、塗膜からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。
【0165】
露光する工程において、光源として超高圧水銀灯を用い、超高圧水銀灯が発する光を、光学フィルタで特定の波長の光をカットしてから、塗膜に照射した。下記に、塗膜に照射した光の波長、及び使用した光学フィルタを示す。なお、条件Cでは、光学フィルタを用いなかった。
【0166】
条件A
光源から発せられる光を、280nm以上415nm以下の波長範囲の光のみを透過させる光学フィルタを通過させてから、塗膜に照射した。
【0167】
条件B
光源から発せられる光を、280nm以上370nm以下の波長範囲の光のみを透過させる光学フィルタを通過させてから、塗膜に照射した。
【0168】
条件C
光源から発せられる光を、光学フィルタを通過させずに、塗膜に照射した。
【0169】
条件D
光源から発せられる光を、350nm以上370nm以下の波長範囲の光のみを透過させる光学フィルタを通過させてから、塗膜に照射した。
【0170】
条件E
光源から発せられる光を、350nm以上415nm以下の波長範囲の光のみを透過させる光学フィルタを通過させてから、塗膜に照射した。
【0171】
条件F
光源から発せられる光を、280nm以上325nm以下の波長範囲の光のみを透過させる光学フィルタを通過させてから、塗膜に照射した。
【0172】
露光後の塗膜(皮膜)に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%NaCO水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射することで洗浄した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して、孔を形成した。続いて、皮膜を160℃で60分間加熱した。これにより、コア材上に感光性樹脂組成物の硬化物(ドライフィルムの硬化物ともいえる)からなる層を形成した。これによりテストピースを得た。
【0173】
テストピースにおける孔の、一方の端部の内径と他方の端部の内径とを測定し、二つの内径の差に基づき、孔の形状を、以下の基準で評価した。
A:内径の差が4μm未満である。
B:内径の差が4μm以上、6μm未満である。
C:内径の差が6μm以上、8μm未満である。
D:内径の差が8μm以上、10μm未満である。
E:内径の差が10μm以上である。
F:塗膜を十分に光硬化させることができなかったため、孔を形成できなかった。
【0174】
実施例2において、感光性樹脂組成物の塗膜に対し、条件Aで露光を行った後、現像処理を行うと、図2Aに示すように、孔の内径の差が小さかった。すなわち、感光性樹脂組成物から形成される皮膜の形状は解像性が高く、皮膜に形成された孔の形状はシャープであった。実施例2以外の実施例において、条件Aで露光及び現像を行った場合にも同等の結果が得られた。
【0175】
一方、実施例2において、感光性樹脂組成物の塗膜に対し、条件C、及び条件Dで、同様に露光及び現像を行うと、図2B及び図2Cに示すように、孔の内径の差が大きくなった。すなわち、感光性樹脂組成物から形成される皮膜の形状の解像性が低下し、皮膜に形成された孔の形状には乱れが見られた。実施例2以外の実施例において、条件C及び条件Dで露光及び現像を行った場合にも同等の結果であった。
【0176】
実施例において、条件A、及び条件Bにより得られたテストピースに対し、以下の(4-3)~(4-7)の評価を行った。
【0177】
(4-3)絶縁性
テストピースにおける導体配線(くし型電極)にDC12Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを130℃、85%R.H.の試験環境下に100時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層のくし型電極間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次のように評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に10Ω以上を維持した。
B:試験開始時から70時間経過するまでは電気抵抗値が常に10Ω以上を維持したが、試験開始時から100時間経過する前に電気抵抗値が10Ω未満となった。
C:試験開始時から70時間経過する前に電気抵抗値が10Ω未満となった。
【0178】
(4-4)耐酸性
室温下でテストピースを10%の硫酸水溶液に30分間浸漬した後、硬化物からなる層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
B:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0179】
(4-5)耐アルカリ性
室温下でテストピースを濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬した後、硬化物からなる層の外観を観察した。その結果を次に示すように評価した。
A:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
B:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0180】
(4-6)はんだ耐熱性
水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355-11)を、テストピースの硬化物からなる層に塗布し、続いて硬化物からなる層を260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬してから水洗した。この処理を3回繰り返してから、硬化物からなる層の外観を観察し、その結果を次に示すように評価した。
A:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が認められない。
B:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が僅かに認められる。
C:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色等の異常が顕著に認められる。
【0181】
(4-7)耐メッキ性
市販のメッキ液を用いて、テストピースに無電解ニッケルメッキと無電解金メッキを順次施してから、メッキ層及び硬化物からなる層の状態を確認した。
【0182】
続いて、硬化物からなる層のセロハン粘着テープ剥離試験を行うことで、メッキ後の硬化物からなる層の密着状態を確認した。
【0183】
その結果を、次のようにして評価した。
A:メッキ層の形成前後で硬化物からなる層に外観の変化が認められず、メッキの潜り込みも認められず、セロハン粘着テープ剥離試験には硬化物からなる層の剥離は認められなかった。
B:メッキ層の形成前後で硬化物からなる層に外観の変化が認められないが、セロハン粘着テープ剥離試験には硬化物からなる層の一部剥離が認められる。
C:メッキ層の形成後に硬化物からなる層の浮き上がりが認められ、セロハン粘着テープ剥離試験には硬化物からなる層の剥離が認められる。
【0184】
【表2】
【符号の説明】
【0185】
1 コア材
2 絶縁層
3 導電層
31 第一の導体配線
4 塗膜
5 非露光部
6 孔
7 層間絶縁層
8 第二の導体配線
9 ホールメッキ
10 スルーホール
11 プリント配線板
40 皮膜
図1
図2
図3