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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】冷媒配管検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
G01M3/26 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019107220
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020201090
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (公開の事由1)2019年5月27日に、レッキス工業株式会社が、東京管工機材商業共同組合主催の第51回管工機材・設備総合展の案内状を顧客に配布した。 (公開の事由2)2019年5月22日に、株式会社レゴリスが、公開資料を、国土交通記者会及び国土交通省建設専門紙記者会に配布した。 (公開の事由3)2019年5月22日~5月24日に、株式会社レゴリスが、一般社団法人日本電設工業協会主催の「JECA FAIR 2019 ~第67回電設工業展~」にて、公開資料を配布した。 (公開の事由4)2019年5月22日に、株式会社レゴリスが、自社のウェブサイト(https://spider-plus.com/news/press_release/2455/)にて、発明を公開した。 (公開の事由5)2019年5月22日に、一般社団法人日本電気協会新聞部、株式会社日刊建設工業新聞社、株式会社日刊建設産業新聞社、株式会社日刊建設通信新聞社、株式会社日刊工業新聞社、株式会社日本工業新聞社の夫々が、電気新聞、日刊建設工業新聞、日刊建設産業新聞、建設通信新聞、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイの夫々の紙面にて、発明を公開した。 (公開の事由6)2019年5月31日に、株式会社きんでん、自社のウェブサイト(http://www.kinden.co.jp/topics/2019/topic348.html)にて、発明を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】391010220
【氏名又は名称】レッキス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】上田 勝人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 亮
(72)【発明者】
【氏名】花澤 俊治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸顕
(72)【発明者】
【氏名】梅本 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】小柳 真二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純大
(72)【発明者】
【氏名】田ノ畑 好幸
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/080935(WO,A1)
【文献】特開2005-195249(JP,A)
【文献】特開2003-130503(JP,A)
【文献】特開2010-060512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
F24F 11/00 - 11/89
F25B 1/00 - 7/00
F25B 43/00 - 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる冷凍回路の冷媒配管内に試験用ガスを圧入した状態で所定時間維持する気密試験処理と、当該気密試験処理に続いて実施されて前記冷媒配管内を減圧した状態で所定時間維持する減圧処理とにおいて利用される冷媒配管検査装置であって、
前記冷媒配管に接続されて当該冷媒配管内の圧力を検知する圧力センサと、
前記圧力センサで検知された圧力の推移を示す圧力データを記録するデータ記録部と、を備え、
前記データ記録部が、前記気密試験処理時に記録される前記圧力データである気密試験圧力データと、当該気密試験処理実施後の前記減圧処理時に記録される前記圧力データである減圧圧力データとを関連付けて記録すると共に、前記減圧圧力データに関連付ける前記気密試験圧力データの記録が存在しない場合には前記減圧圧力データの記録を禁止する冷媒配管検査装置。
【請求項2】
前記データ記録部により記録された前記気密試験圧力データとそれに関連付けられた前記減圧圧力データとを含む検査結果情報を生成して出力する検査結果出力部を備えた請求項1に記載の冷媒配管検査装置。
【請求項3】
直近に前記気密試験圧力データが記録されている場合に、前記圧力センサの検知圧力が所定の減圧処理判定圧力値以下となった時点を記録開始時点として判定する開始判定部を備え、
前記データ記録部が、前記開始判定部で判定された前記記録開始時点から前記減圧圧力データの記録を開始する請求項1又は2に記載の冷媒配管検査装置。
【請求項4】
前記データ記録部が、直近に前記減圧圧力データが記録されている又は前記圧力データの記録が存在しない場合に、前記圧力センサの検知圧力が所定の気密試験処理判定圧力値以上となった時点を記録開始時点として判定する開始判定部を備え、
前記データ記録部が、前記開始判定部で判定された前記記録開始時点から前記気密試験圧力データの記録を開始する請求項1~3の何れか1項に記載の冷媒配管検査装置。
【請求項5】
前記データ記録部により直近に記録された前記圧力データの種別に基づいて次に実施される次処理の種別を判定し、当該判定された次処理の種別を通知する次処理種別通知部を備えた請求項1~4の何れか1項に記載の冷媒配管検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管内に試験用ガスを圧入した状態で所定時間維持する気密試験処理と、当該気密試験処理に続いて実施されて前記冷媒配管内を減圧した状態で所定時間維持する減圧処理とにおいて利用される冷媒配管検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置の設置工事等において冷凍回路の冷媒配管接続作業が完了すると、当該冷凍回路の冷媒配管に対して気密試験処理や減圧処理などの検査作業が実施される。
上記気密試験処理は、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管内に高圧窒素ガス等の試験用ガスを圧入した状態で例えば24時間維持して、当該冷媒配管内の圧力の推移を監視することで、冷媒配管内からの冷媒の漏れがないことを確認するための処理である。
上記減圧処理(例えば真空引き処理)は、冷媒配管内を真空に近づけるように減圧した状態で例えば1時間維持して、当該冷媒配管内の圧力の推移を監視することで、冷媒配管内から試験用ガス等を排出すると共に当該配管内を乾燥させる処理である。
【0003】
従来の空調装置として、このような気密試験処理や減圧処理などの検査作業を予め装備した自動検査部により自動的に実施するもの(例えば、特許文献1を参照。)が知られている。しかしながら、多くの空調装置等ではそのような自動検査部を有さないため、試験用ガスの圧入用タンクや真空ポンプや圧力センサ等を冷媒配管に接続するなどして、作業者が手作業で検査作業を実施する場合がある(例えば、特許文献2を参照。)。また、このような検査作業では、気密試験処理時及び真空引き処理時の夫々において、圧力センサにより検知された冷媒配管内の圧力の推移を示す圧力データが各別に記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-195249号公報
【文献】特開2004-044901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査対象となる冷凍回路の冷媒配管に対して作業者が手作業で検査作業を実施する場合において、作業者の不注意や手抜き等による作業不良を防止するためには、気密試験処理と減圧処理との両方が定められた順序で適切に実施されたか否かを作業者側又は管理者側で把握する必要がある。しかしながら、従来の検査作業にて記録されて管理者側に報告される圧力データは、気密試験処理及び真空引き処理の各処理については個別に作業履歴の確認や品質の評価などで利用できるものの、各処理が定められた順序で適切に実施されたか否かを簡単に把握し得るものではなかった。また、検査作業を実施する作業者側において、上記圧力データの記録の手間を軽減することが望まれている。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管に対して気密試験処理や減圧処理などの検査作業を実施するにあたり、各処理時における圧力データの記録の手間を軽減しながら、作業者に対して気密試験処理と減圧処理との両方を定められた順序で適切に実施させることができる冷媒配管検査装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管内に試験用ガスを圧入した状態で所定時間維持する気密試験処理と、当該気密試験処理に続いて実施されて前記冷媒配管内を減圧した状態で所定時間維持する減圧処理とにおいて利用される冷媒配管検査装置であって、
前記冷媒配管に接続されて当該冷媒配管内の圧力を検知する圧力センサと、
前記圧力センサで検知された圧力の推移を示す圧力データを記録するデータ記録部と、を備え、
前記データ記録部が、前記気密試験処理時に記録される前記圧力データである気密試験圧力データと、当該気密試験処理実施後の前記減圧処理時に記録される前記圧力データである減圧圧力データとを関連付けて記録すると共に、前記減圧圧力データに関連付ける前記気密試験圧力データの記録が存在しない場合には前記減圧圧力データの記録を禁止する点にある。
【0008】
本構成によれば、気密試験処理時に圧力センサで取得された気密試験圧力データと、その気密試験処理に続いて実施される減圧処理時に圧力センサで取得された減圧圧力データとが、上記データ記録部により関連付けて記録される。そして、このように関連付けられて記録された両圧力データを参照すれば、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管に対して気密試験処理と減圧処理との両方が定められた順序で適切に実施されたか否かを簡単に把握することができる。
【0009】
更に、減圧処理が開始される際に、当該減圧処理時に取得される減圧圧力データに関連付けられる気密試験圧力データの記録の有無が確認されて、その記録が存在しない場合には、減圧圧力データの記録が禁止される。すると、気密試験処理が確実に実施された場合のみ、それに続く減圧処理時に取得される減圧圧力データの記録が可能となる。よって、不注意や手抜き等による気密試験処理を省略した減圧処理の実施を適切に防止させることができる。
【0010】
従って、本発明により、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管に対して気密試験処理や減圧処理などの検査作業を実施するにあたり、各処理時における圧力データの記録の手間を軽減しながら、作業者に対して気密試験処理と減圧処理との両方を定められた順序で適切に実施させることができる冷媒配管検査装置を提供することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記データ記録部により記録された前記気密試験圧力データとそれに関連付けられた前記減圧圧力データとを含む検査結果情報を生成して出力する検査結果出力部を備えた点にある。
【0012】
本構成によれば、上記検査結果出力部を備えることにより、データ記録部により記録された気密試験圧力データとそれに関連付けられた減圧圧力データとを含む検査結果情報を自動的に生成し出力することができる。よって、このように出力された検査結果情報を管理者側にて参照すれば、検査対象となる冷凍回路の冷媒配管に対して気密試験処理と減圧処理との両方が定められた順序で適切に実施されたか否かを簡単に把握することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、直近に前記気密試験圧力データが記録されている場合に、前記圧力センサの検知圧力が所定の減圧処理判定圧力値以下となった時点を記録開始時点として判定する開始判定部を備え、
前記データ記録部が、前記開始判定部で判定された前記記録開始時点から前記減圧圧力データの記録を開始する点にある。
【0014】
本構成によれば、上記開始判定部により記録開始時点を圧力センサの検知圧力から自動的に判定することができるので、減圧処理が開始される際において上記データ記録部により自動的に減圧圧力データの記録を開始することができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記データ記録部が、直近に前記減圧圧力データが記録されている又は前記圧力データの記録が存在しない場合に、前記圧力センサの検知圧力が所定の気密試験処理判定圧力値以上となった時点を記録開始時点として判定する開始判定部を備え、
前記データ記録部が、前記開始判定部で判定された前記記録開始時点から前記気密試験圧力データの記録を開始する点にある。
【0016】
本構成によれば、上記開始判定部により記録開始時点を圧力センサの検知圧力から自動的に判定することができるので、気密試験処理が開始される際において上記データ記録部により自動的に気密試験圧力データの記録を開始することができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記データ記録部により直近に記録された前記圧力データの種別に基づいて次に実施される次処理の種別を判定し、当該判定された次処理の種別を通知する次処理種別通知部を備えた点にある。
【0018】
本構成によれば、上記次処理種別通知部により、記録日時が最も遅い直近に記録された前記圧力データの種別に基づいて自動的に次処理の種別を判定し、その判定された次処理の種別が通知されるので、その通知を受ける作業者に対して、気密試験処理及び減圧処理のうちのどちらの処理が次処理であるかを正確に認識させて、誤った次処理の実施を回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】冷媒配管検査装置を用いた気密試験処理の状態を示す図
図2】冷媒配管検査装置を用いた減圧処理の状態を示す図
図3】冷媒配管検査装置の概略構成図
図4】空調装置設置工事の流れを示すフロー図
図5】冷媒配管検査装置が実行するデータ記録処理の流れを示すフロー図
図6】気密試験圧力データ記録処理の流れを示すフロー図
図7】減圧圧力データ記録処理の流れを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る冷媒配管検査装置50(図3等参照)について、図面に基づいて説明する。
空調装置1の設置工事では、例えば図4に示すように、空調装置1を構成する室内機3や室外機2を据え付ける室内機・室外機据付作業(ステップ#01)と、これら室内機3と室外機2とに渡って冷凍回路4を構成する冷媒配管5を接続する冷媒配管接続作業(ステップ#02)と、後述する気密試験処理(ステップ#03)及び減圧処理(ステップ#04)とからなる検査作業と、検査後の冷媒配管5に冷媒を充填する冷媒充填作業(ステップ#05)と、確認作業・試運転(ステップ#06)とが、順に実行される。
【0021】
そして、図3に示す本実施形態に係る冷媒配管検査装置50は、空調装置1の設置工事において、冷媒配管5の接続作業完了時に実施される気密試験処理(図1参照)とそれに続いて実施される減圧処理(図2参照)とからなる検査作業を実施するにあたり、各処理時における冷媒配管5内の圧力の推移を示す圧力データの記録の手間を軽減しながら、作業者に対して気密試験処理と減圧処理との両方を定められた順序で適切に実施させるためのものとして利用可能に構成されている。
【0022】
先ず、気密試験処理及び減圧処理の実施の手順について説明する。
尚、気密試験処理の状態を示す図1、及び減圧処理の状態を示す図2において、閉弁状態にある弁は黒塗りで表し、開弁状態にある弁は白抜きで表している。
図1及び図2に示すように、気密試験処理及び減圧処理では、冷媒配管検査装置50に加えて、ゲージマニホールド10が利用される。かかるゲージマニホールド10は、冷媒配管接続管20を介して冷媒配管5に接続される高圧側接続部12及び低圧側接続部14と、窒素ガスタンク30や真空ポンプ35に接続される負荷側接続部16とを有する。また、高圧側接続部12と負荷側接続部16とは高圧側バルブ17を介して接続されており、一方、低圧側接続部14と負荷側接続部16とは低圧側バルブ18を介して接続されている。また、高圧側接続部12の圧力を計測する高圧側圧力計13と、低圧側接続部14の圧力を計測する低圧側圧力計15とが設けられている。
【0023】
気密試験処理は、検査対象となる冷凍回路4の冷媒配管5内に試験用ガスとしての高圧の窒素ガスを圧入した状態で例えば24時間維持して、当該冷媒配管5内の圧力の推移を監視することで、冷媒配管5内からの冷媒の漏れがないことを確認するための処理である。具体的には、図1に示すように、ゲージマニホールド10の高圧側接続部12が冷媒配管接続管20を介して冷媒配管5に接続され、ゲージマニホールド10の負荷側接続部16が窒素ガスタンク30に接続される。そして、低圧側バルブ18を閉弁したまま高圧側バルブ17を開弁することで、当該高圧側バルブ17を通じて窒素ガスタンク30から冷媒配管5内に試験用ガスとしての高圧窒素ガスが圧入され、その後高圧側バルブ17が閉弁された状態で、冷媒配管5の圧力の推移が、冷媒配管接続管20に接続された冷媒配管検査装置50により監視される。
【0024】
減圧処理は、上記気密試験処理に続いて実施される処理であって、冷媒配管5内を真空に近づけるように減圧した状態で例えば1時間維持して、当該冷媒配管5内の圧力の推移を監視することで、冷媒配管5内から窒素試験用ガスを排出すると共に当該配管5内を乾燥させる処理である。具体的には、図2に示すように、ゲージマニホールド10の低圧側接続部14が冷媒配管接続管20を介して冷媒配管5に接続され、ゲージマニホールド10の負荷側接続部16が真空ポンプ35に接続される。そして、高圧側バルブ17を閉弁したまま低圧側バルブ18を開弁することで、当該低圧側バルブ18を通じて冷媒配管5内のガスが真空ポンプ35により吸引されて、その後低圧側バルブ18が閉弁された状態で、冷媒配管5の圧力の推移が、冷媒配管接続管20に接続された冷媒配管検査装置50により監視される。
【0025】
次に、冷媒配管検査装置50の詳細構成について説明する。
冷媒配管検査装置50は、冷媒配管接続管20を通じて冷媒配管5に接続されて当該冷媒配管5内の圧力(ゲージ圧力)を検知する圧力センサ52と、各種演算処理部として機能するCPU等からなる演算部60等を有して構成されている。更に、冷媒配管検査装置50には、電源用スイッチや操作用スイッチ等の操作部53や、駆動用電源を供給するバッテリ54や、演算部60からの出力データを記憶するメモリ57や、日時の出力や経過時間の計測を行うタイマー58や、外部との間で通信を行う通信部55や、各種情報を表示するディスプレイ等の表示部56や、周囲温度(外気温)を計測する温度センサ59等が設けられている。
演算部60は、所定のプログラムを実行することで、データ記録部61、検査結果出力部62、開始判定部63、終了判定部64、次処理種別通知部65等として機能する。
【0026】
上記演算部60が機能するデータ記録部61は、圧力センサ52で検知された圧力の推移を示す圧力データや上記温度センサ59で計測された周囲温度等を記録日時と関連付けてメモリ57に記録するものとして構成されている。具体的に、データ記録部61は、上記気密試験処理時において圧力センサ52で検知された圧力の推移を示す圧力データを気密試験圧力データとしてメモリ57に記録し、上記減圧処理時において圧力センサ52で検知された圧力の推移を示す圧力データを減圧圧力データとしてメモリ57に記録する。また、データ記録部61は、これら気密試験圧力データや減圧圧力データを記録するにあたり、夫々の圧力データと同時に温度センサ59で計測された周囲温度の推移を示す周囲温度データをメモリ57に記録する。
【0027】
更に、データ記録部61は、気密試験処理時に記録される気密試験圧力データと当該気密試験処理実施後の減圧処理時に記録される減圧圧力データとを関連付けて記録するように構成されている。このことで、メモリ57において関連付けられて記録された気密試験圧力データと減圧圧力データとを参照すれば、検査対象となる冷凍回路4の冷媒配管5に対して気密試験処理と減圧処理との両方が定められた順序で適切に実施されたか否かが簡単に把握されることになる。
【0028】
更に、データ記録部61は、減圧圧力データに関連付ける気密試験圧力データの記録が存在しない場合には減圧圧力データの記録を禁止するように構成されている。即ち、減圧処理が開始される際に、当該減圧処理時に取得される減圧圧力データに関連付けられる気密試験圧力データの記録の有無が確認されて、その記録が存在しない場合には、減圧圧力データの記録が禁止される。すると、気密試験処理が確実に実施された場合のみ、それに続く減圧処理時に取得される減圧圧力データの記録が可能となる。よって、不注意や手抜き等による気密試験処理を省略した減圧処理の実施が適切に防止されることになる。
【0029】
上記演算部60が機能する検査結果出力部62は、上記データ記録部61によりメモリ57に記録された気密試験圧力データとそれに関連付けられた減圧圧力データとを含む検査結果情報を生成し、当該生成した検査結果情報を例えば通信部55を介して管理者側の端末に送信する形態で出力するものとして構成されている。よって、管理者側では、このように出力された検査結果情報を簡単に参照することができ、検査対象となる冷凍回路4の冷媒配管5に対して気密試験処理と減圧処理との両方が定められた順序で適切に実施されたか否かについての合否を簡単に把握することができる。また、上記検査結果情報には、夫々の圧力データと同時に計測されてメモリ57に記録された周囲温度データが含まれており、管理者側では、この周囲温度データも参照して上記夫々の圧力データの補正を行って、気密試験処理及び減圧処理の合否を判定することができる。
【0030】
上記演算部60が機能する開始判定部63は、上記気密試験圧力データ及び上記減圧圧力データの記録を開始する記録開始時点を判定するものとして構成されている。そして、データ記録部61は、当該開始判定部63で判定された記録開始時点から上記気密試験圧力データ及び上記減圧圧力データの記録を開始するように構成されている。即ち、開始判定部63により気密試験処理や減圧処理が開始された時点を記録開始時点として圧力センサ52の検知圧力から自動的に判定することができる。このことで、気密試験処理や減圧処理が開始される際においてデータ記録部61により自動的に気密試験圧力データや減圧圧力データの記録を開始することができる。
【0031】
上記演算部60が機能する終了判定部64は、上記気密試験圧力データ及び上記減圧圧力データの記録を終了する記録終了時点を判定するものとして構成されている。そして、データ記録部61は、当該終了判定部64で判定された記録終了時点で上記気密試験圧力データ及び上記減圧圧力データの記録を終了するように構成されている。即ち、終了判定部64により気密試験処理や減圧処理が終了した時点を記録終了時点として圧力センサ52の検知圧力と経過時間とから自動的に判定することができる。このことで、気密試験処理や減圧処理が終了する際においてデータ記録部61により自動的に気密試験圧力データや減圧圧力データの記録を終了することができる。
【0032】
上記演算部60が機能する次処理種別通知部65は、データ記録部61による記録日時が最も遅い直近に記録された圧力データの種別に基づいて次に実施される次処理の種別を判定し、当該判定された次処理の種別を例えば表示部56に表示する形態で通知するものとして構成されている。このことで、その通知を受ける作業者は、気密試験処理及び減圧処理のうち、どちらの処理が次処理であるかを正確に認識して、誤った次処理の実施を回避することができる。
【0033】
次に、気密試験処理及び減圧処理の夫々において、冷媒配管検査装置50の演算部60が実行するデータ記録処理の詳細について、図5図7に基づいて説明する。
先ず、演算部60は、気密試験処理又は減圧処理が開始されるにあたり、図5に示すように、次処理種別通知部65により次処理の種別の判定と通知が行われる。
即ち、直近にメモリ57に記録された圧力データの有無が確認され(ステップ#11)、記録された圧力データが存在している場合(ステップ#11のyes)には、その直近に記録された圧力データの圧力値PLが0(大気圧)よりも大きい正圧であるか否かが確認される(ステップ#12)。
そして、直近に記録された圧力データが存在しない場合(ステップ#11のno)又は直近に記録された圧力データの圧力値PLが気密試験処理時で取得される値である正圧ではなく0以下である場合(ステップ#12のno)には、次処理種別通知部65により次処理が気密試験処理であると判定されて、気密試験処理の実施を作業者に動機付けるための表示が表示部56に表示される(ステップ#13)。そして、作業者は、この表示部56の案内表示を確認した上で気密試験処理を実施し(ステップ#14)、それに伴って後述する気密試験圧力データ記録処理が実行される(ステップ#15)。
一方、直近に記録された圧力データが存在し(ステップ#11のyes)且つ直近に記録された圧力データの圧力値PLが気密試験処理時で取得される値である正圧である場合(ステップ#12のyes)には、次処理種別通知部65により次処理が減圧処理であると判定されて、減圧試験の実施を作業者に動機付けるための表示が表示部56に表示される(ステップ#16)。そして、作業者は、この表示部56の案内表示を確認した上で減圧処理を実施し(ステップ#17)、それに伴って後述する減圧圧力データ記録処理が実行される(ステップ#18)。即ち、この減圧圧力データ記録処理(ステップ#18)に先立って、減圧処理時に取得される減圧圧力データに関連付ける気密試験圧力データの記録が存在しない場合には、当該減圧圧力データ記録処理が禁止されることになる。
【0034】
上記気密試験圧力データ記録処理(図5のステップ#15)は、図6に示す処理フローに沿って実行される。
即ち、気密試験処理が実施されるにあたって、圧力センサ52で検知された冷媒配管5内の検知圧力値Pnが0(大気圧)よりも大きい正圧であるか否かが確認される(ステップ#21)。
上記ステップ#21において、検知圧力値Pnが正圧であることが確認された場合(ステップ#21のyes)、開始判定部63により、検知圧力値Pnが気密試験処理判定圧力値A(例えば0.2MPa)以上となった時点(ステップ#22のyes)が記録開始時点として判定される。そして、その記録開始時点から例えば圧力センサ52の検知圧力値Pnを単位時間毎にメモリ57に記録する形態で、当該検知圧力値Pnの推移を示す気密試験圧力データの記録が開始され、その旨が表示部56に表示される(ステップ#23)。
尚、上記ステップ#21において、冷媒配管5内の検知圧力値Pnが正圧ではない場合(ステップ#21のno)には、異常である旨が表示部56に表示する形態で報知されて(ステップ#29)、気密試験圧力データ記録処理が終了される。
【0035】
上記気密試験圧力データの記録が開始(ステップ#23)された後に、冷媒配管5内の検知圧力値Pnが気密試験設定圧力値B(例えば1.5MPa)以上となって(ステップ#24のyes)、その検知圧力値Pnが例えば一定時間継続して規定範囲内に維持されて安定した場合(ステップ#25のyes)には、タイマー58を始動して経過時間Tの計測を開始する(ステップ#26)。
そして、終了判定部64により、タイマー58で計測された経過時間Tが24時間に到達した時点(ステップ#27のyes)が記録終了時点として判定されて、その記録終了時点で、気密試験圧力データの記録が終了され、その旨が表示部56に表示される(ステップ#28)。
尚、上記気密試験圧力データ記録処理で用いた気密試験処理判定圧力値Aや気密試験設定圧力値Bは適宜変更可能である。
【0036】
上記減圧圧力データ記録処理(図5のステップ#18)は、図7に示す処理フローに沿って実行される。
即ち、減圧処理が実施されるにあたって、圧力センサ52で検知された冷媒配管5内の検知圧力値Pnが0(大気圧)よりも小さい負圧であるか否かが確認される(ステップ#31)。
上記ステップ#31において、検知圧力値Pnが負圧であることが確認された場合(ステップ#31のyes)、開始判定部63により、検知圧力値Pnが減圧処理判定圧力値C(例えば-0.05MPa)以下となった時点(ステップ#32のyes)が記録開始時点として判定される。そして、その記録開始時点から例えば圧力センサ52の検知圧力値Pnを単位時間毎にメモリ57に記録する形態で、当該検知圧力値Pnの推移を示す減圧圧力データの記録が開始され、その旨が表示部56に表示される(ステップ#33)。
尚、上記ステップ#31において、冷媒配管5内の検知圧力値Pnが負圧ではない場合(ステップ#31のno)には、異常である旨が表示部56に表示する形態で報知されて(ステップ#38)、減圧圧力データ記録処理が終了される。
【0037】
上記減圧圧力データの記録が開始(ステップ#33)された後に、冷媒配管5内の検知圧力値Pnが減圧処理設定圧力値D(例えば-0.1MPa)以下となった場合(ステップ#34のyes)には、タイマー58を始動して経過時間Tの計測を開始する(ステップ#35)。
そして、終了判定部64により、タイマー58で計測された経過時間Tが1時間に到達した時点(ステップ#36のyes)が記録終了時点として判定されて、その記録終了時点で、減圧圧力データの記録が終了され、その旨が表示部56に表示される(ステップ#37)。
尚、上記減圧圧力データ記録処理で用いた減圧処理判定圧力値Cや減圧処理設定圧力値Dは適宜変更可能である。
【0038】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0039】
(1)上記実施形態では、検査結果出力部62により、メモリ57に記録された気密試験圧力データとそれに関連付けられた減圧圧力データとを含む検査結果情報を生成して管理者側の端末に送信するように構成したが、メモリ57に記録された気密試験圧力データとそれに関連付けられた減圧圧力データとをそのまま記録媒体に保存する形態で出力するなどのように、出力方法や出力形態については適宜変更可能である。
【0040】
(2)上記実施形態では、開始判定部63や終了判定部64により、上記気密試験圧力データ及び上記減圧圧力データについての記録開始時点や記録終了時点を自動的に判定するように構成したが、例えば記録開始時点や記録終了時点を作業者が判断して、当該作業者が開始スイッチ又は終了スイッチを押圧することで圧力データの記録を開始又は終了するように構成しても構わない。
【0041】
(3)上記実施形態では、次処理種別通知部65により、自動判定した次処理の種別を表示部56に表示する形態で通知するように構成したが、かかる通知方法については例えば音声で通知するなど適宜改変可能であり、また、このような次処理種別通知部を省略しても構わない。
【符号の説明】
【0042】
4 冷凍回路
5 冷媒配管
50 冷媒配管検査装置
52 圧力センサ
60 演算部
61 データ記録部
62 検査結果出力部
63 開始判定部
64 終了判定部
65 次処理種別通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7