(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】光合波器及びそれを用いた画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/10 20060101AFI20230428BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20230428BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230428BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20230428BHJP
G02B 27/42 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
G02B27/10
G02B5/18
G03B21/00 D
G03B21/14 A
G02B27/42
(21)【出願番号】P 2019184783
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 和政
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝司
(72)【発明者】
【氏名】福井 厚司
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090766(JP,A)
【文献】特表2003-506737(JP,A)
【文献】特開2011-066339(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172968(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082863(US,A1)
【文献】国際公開第2016/035349(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0314793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/10,5/18,6/42
G02B 26/10,26/12
G03B 21/00
H01S 5/02-5/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる複数の入射光を合波して射出する光合波器であって、
前記複数の入射光が入射する入射面と、
前記入射面に入射した前記複数の入射光を反射する第1の反射面と、
前記第1の反射面で反射した複数の反射光を外部に射出する射出面と
を備え、
前記入射面には、各入射光に対応した複数の隣接した集光レンズが設けられており、
前記第1の反射面は、前記各集光レンズで集光した入射光をそれぞれ反射する複数の隣接した反射面を有し、
前記複数の反射面は、それぞれ、隣接する前記集光レンズで集光した各入射光がなす角度に対して、隣接する前記反射面で反射した各反射光がなす角度が小さくなるように、配置されており、
前記射出面には、前記複数の反射面で反射した複数の反射光が、同じ位置に入射して同一方向に回折される透過型の回折格子が設けられている、光合波器。
【請求項2】
前記複数の反射面は、第1反射面と、該第1反射面に隣接する第2反射面及び第3反射面とからなり、
前記第2反射面及び第3反射面は、それぞれ、前記第1反射面に対して、互いに斜め方向に傾斜して配置されている、請求項1に記載の光合波器。
【請求項3】
前記入射面、前記第1の反射面、及び前記射出面は、透明な同一部材の表面に形成されている、請求項1に記載の光合波器。
【請求項4】
前記複数の反射面で反射した各反射光を、平行光化して反射する第2の反射面をさらに備え、
前記第2の反射面で反射した複数の平行光が、前記回折格子に入射される、請求項1に記載の光合波器。
【請求項5】
前記複数の反射面は、それぞれ、前記入射面に入射した前記複数の入射光を全反射する、請求項1に記載の光合波器。
【請求項6】
隣接する前記反射面で反射した各反射光がなす角度は、
2°以下である、請求項1に記載の光合波器。
【請求項7】
前記複数の集光レンズは、前記複数の入射光を、それぞれ、前記複数の反射面にライン状に集光する、請求項1に記載の光合波器。
【請求項8】
前記複数の入射光は、光の3原色である赤色、緑色、及び青色の波長からなり、
前記緑色の波長の入射光が、前記第1反射面に入射し、
前記赤色の波長の入射光、及び前記青色の波長の入射光が、それぞれ、前記第2反射面及び前記第3反射面に入射する、請求項2に記載の光合波器。
【請求項9】
前記緑色の波長の入射光が、前記回折格子において、1次回折光の回折効率が最大になるように設定されている、請求項8に記載の光合波器。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の光合波器と、
波長の異なる複数の光を射出し、該複数の光を前記光合波器に入射する複数の光源と、
前記光合波器から前記複数の光を合波して射出された射出光を走査する走査手段と、
前記光源において射出する複数の光、及び前記走査手段において前記射出光の走査を制御する制御手段と
を備えた画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長の異なる複数の入射光を合波して射出する光合波器、及びそれを用いた画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長毎に反射と透過を制御できるダイクロイックミラーを用いて、異なる波長の光を1つの光に合波する光合波器が知られている。
【0003】
ダイクロイックミラーを用いた光合波器は、高い光効率で異なる波長の光を合波することができるが、多層の光学薄膜が必要となり、コストが高くなるという課題がある。
【0004】
特許文献1には、回折格子を用いた光合波器が開示されている。特許文献1に開示された光合波器は、
図9に示すように、回折格子100と、コリメータレンズ110、120、130とが、一体化された樹脂で構成されている。波長の異なる光L1、L2、L3は、それぞれ、コリメータレンズ110、120、130で平行光化されて、回折格子100で回折反射する。光L1,L2、L3は、回折格子100の同じ位置に入射し、各光の反射光が同一光路L4となるように、回折格子100への入射角が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された光合波器は、回折格子100と、コリメータレンズ110、120、130とを、樹脂成形により一体的に製造することができるため、コストの低減を図ることができる。
【0007】
しかしながら、異なる波長の光L1、L2、L3の光源を、物理的に離して配置すると、各波長の光の回折格子100での回折角が大きくなるため、回折効率が大幅に低下する。これは、一つの波長の光に対しては、高い回折効率の最適化を図ることができるが、最適化した波長以外の光に対しては、回折効率が低下してしまうためである。特に、回折角を大きくすると、最適化した波長以外の光に対して、回折効率の低下が顕著になる。
【0008】
一方、回折格子100での回折角を小さくすると、回折効率は高くなるが、各波長の光の回折角が互いに近くなる。そのため、各波長の光の光源を互いに分離するためには、各波長の光源から回折格子100に至る光路長さを長くする必要がある。その結果、各波長の光源を、回折格子100からかなり離れた位置に配置する必要があるため、光源を含む光学系が大型化してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、回折効率が高く、光源を含む光学系の小型化を図ることができる光合波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に関わる光合波器は、波長の異なる複数の入射光を合波して射出する光合波器であって、複数の入射光が入射する入射面と、入射面に入射した複数の入射光を反射する第1の反射面と、第1の反射面で反射した複数の反射光を外部に射出する射出面とを備えている。
【0011】
入射面には、各入射光に対応した複数の隣接した集光レンズが設けられており、第1の反射面は、各集光レンズで集光した光をそれぞれ反射する複数の隣接した反射面を有し、複数の反射面は、それぞれ、隣接する集光レンズで集光した各入射光がなす角度に対して、隣接する反射面で反射した各反射光がなす角度が小さくなるように配置されており、射出面には、複数の反射面で反射した複数の反射光が、同じ位置に入射して同一方向に回折される透過型の回折格子が設けられている。
【0012】
本発明に関わる画像投影装置は、上記の光合波器と、波長の異なる複数の光を射出し、複数の光を光合波器に入射する複数の光源と、光合波器から複数の光を合波して射出された射出光を走査する走査手段と、光源において射出する複数の光、及び走査手段において射出光の走査を制御する制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回折効率が高く、光源を含む光学系の小型化を図ることができる光合波器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における光合波器の構成を模式的に示した平面図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の反射面の平面図で、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。
【
図4】第1の反射面に入射した入射光と、第1の反射面で全反射した反射光との関係を示した図である。
【
図5】
図2において、X軸に垂直な方向から見た回折格子の拡大図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、本発明の変形例における第1の反射面の構成を示した図である。
【
図7】第1の反射面に入射した入射光と、第1の反射面で全反射した反射光との関係を示した図である。
【
図8】本発明の他の実施形態における画像投影装置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における光合波器の構成を模式的に示した平面図である。また、
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。なお、
図1において、紙面上下方向をX軸、紙面奥行き方向をY軸、紙面左右方向をZ軸とする。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本実施形態における光合波器1は、入射面10、第1の反射面20、第2の反射面40、及び射出面30を備え、それぞれ、透明な同一部材の表面に形成されている。透明な同一部材は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ガラス等からなる。
【0018】
入射面10には、波長の異なる複数の入射光が入射される。入射面10に入射した複数の入射光は、第1の反射面20で反射される。第1の反射面20で反射した複数の反射光は、第2の反射面40で、平行光化されて反射される。第2の反射面40で反射した複数の平行光は、射出面30に設けられて回折格子31によって合波され、射出面30から外部に射出される。例えば、波長の異なる複数の入射光として、光の3原色である赤色、緑色、青色の波長の光を用いた場合、射出面30からは、3つの波長の光が合波された白色光が射出される。
【0019】
以下、光合波器1の各構成について詳しく説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、光合波器1に対向する位置に、波長の異なる光L1、L2、L3を射出する光源50、51、52が配置されている。光源50、51、52は、例えば、半導体レーザからなる。
【0021】
光源50、51、52から射出されたL1、L2、L3は、入射面10に入射される。入射面10には、各入射光L1、L2、L3に対応した複数の集光レンズ11、12、13が、隣接して設けられている。集光レンズ11、12、13で集光された光L1、L2、L3は、第1の反射面20に入射される。
【0022】
図3(a)は、第1の反射面20の平面図で、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。
【0023】
図3(a)、(b)に示すように、第1の反射面20は、各集光レンズ11、12、13で集光された光を、それぞれ反射する複数の隣接した反射面(第1反射面21と、第1反射面に隣接する第2反射面22及び第3反射面23)を有する。
【0024】
本実施形態では、
図3(b)に示すように、第1反射面21は、XZ面内に形成され、第2反射面22及び第3反射面23は、それぞれ、第1反射面21に対して、互いに斜め方向に傾斜して配置されている。なお、第1の反射面20は、光合波器1の底部から窪んだ位置に形成されている。
【0025】
集光レンズ11、12、13は、直交する方向で異なる曲率のレンズからなり、例えば、アナモフィック形状からなる。各集光レンズ11、12、13に入射した光L1、L2、L3は、それぞれ、XZ面内とYZ面内で別々に集光される。これにより、光L1、L2、L3は、
図3(a)、(b)に示すように、各反射面21、22、23の中央付近に、幅bのライン状に集光される。また、
図2に示すように、光L1は、YZ面において、平行光に近い状態で、反射面21に入射する。同様に、光L2、L3も、それぞれ、YZ面において、平行光に近い状態で、反射面22、23に入射する。
【0026】
入射光L1、L2、L3の各反射面21、22、23への入射角は、全反射する臨界角よりも大きくなるように設定されている。例えば、光合波器1がポリカーボネート(屈折率が約1.59)からなる場合、全反射の臨界角は約39°である。
【0027】
図4は、反射面21、22、23に入射した入射光L1、L2、L3と、反射面21、22、23で全反射した反射光L1a、L2a、L3aとの関係を示した図である。
【0028】
図4に示すように、Z軸に対して平行に第1反射面21に入射した光L1は、Z軸に対して平行に、反射光L1aが反射される。これに対して、第2反射面22は、第1反射面21に対して傾斜しているため、Z軸に対して角度αで入射した光L2は、Z軸に対して、角度αよりも小さい角度βで、反射光L2aが反射される。同様に、第3反射面23も、第1反射面21に対して傾斜しているため、Z軸に対して角度αで入射した光L3は、Z軸に対して、角度αよりも小さい角度βで、反射光L3aが反射される。
【0029】
すなわち、複数の反射面21、22、23は、隣接する集光レンズ11、12(11、13)で集光した入射光L1、L2(L1、L3)のなす角度αに対して、隣接する反射面21、22(21、23)で反射した反射光L1a、L2a(L1a。L3a)のなす角度βが、小さくなるように配置されている。
【0030】
このように、本実施形態において、複数の反射面21、22、23からなる第1の反射面20は、光線角度変換機能を有する。そのため、
図1に示したように、異なる波長の光L1、L2、L3の光源50、51、52を、光合波器1の近傍で、物理的に離れた位置に配置しても、互いになす角度が大きい入射光L1、L2、L3を、互いになす角度が小さい反射光L1a、L2a、L3aに変換することができる。反射光L1a、L2a、L3aは、後述するように、回折格子に入射されるため、反射光L1a、L2a、L3aの回折格子での回折角を小さくできる。その結果、回折効率の高い光合波器1を実現することができる。
【0031】
また、異なる波長の光L1、L2、L3の光源50、51、52を、光合波器1の近傍に配置しても、回折効率の高い光合波器1が実現できるため、光源を含む光学系の長さを短縮して、小型化を図ることができる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、反射面21、22、23で反射された反射光L1a、L2a、L3aは、第2の反射面40に入射される。第2の反射面40は、例えば、アナモフィック形状の全反射レンズで構成され、XZ面内とYZ面内で別々に集光を行う。なお、第2の反射面40は、第2の反射面40での反射光L1b、L2b、L3bが、平行光化されるように、全反射レンズの焦点面が、各反射面21、22、23の中央付近に来るように配置されている。これにより、第2の反射面40で反射された反射光L1b、L2b、L3bは円形になる。
【0033】
図1及び
図2に示すように、第2の反射面40で反射された反射光L1b、L2b、L3bは、射出面30に設けられた透過型の回折格子31に入射される。
【0034】
図5は、
図2において、X軸に垂直な方向から見た回折格子31の拡大図である。回折格子31の格子溝は、傾斜角θのブレーズ型で、ピッチPの周期構造からなる。また、回折格子31は、格子溝方向がYZ面と平行で、面法線Pが、XZ面内において、Z軸と角度をなして配置されている。
【0035】
図5に示すように、第2の反射面40で反射された反射光L1b、L2b、L3bは、平行光になっているため、反射光L1b及び反射光L2bのなす角度βが、
図4に示した角度βと同じ角度で、回折格子31に入射する。同様に、反射光L1b及び反射光L3bのなす角度βも、
図4に示した角度βと同じ角度で、回折格子31に入射する。また、回折格子31は、反射光L1b、L2b、L3bが、回折格子31で回折して射出するとき、1次回折光L4が、回折格子31の格子面に垂直になるように配置されている。
【0036】
具体的には、反射光L1b、L2b、L3bの回折角を、それぞれ、φ1、φ2、φ3とし、入射光L1、L2、L3の波長をλ1、λ2、λ3とし、光合波器1の屈折率をnとすると、回折格子31は、以下の式(1)、(2)、(3)を満たすように配置されている。なお、回折角は、回折格子31の面法線Pに対する入射光の角度である。
【0037】
φ1=asin(n×λ1/p)・・・式(1)
φ2=asin(n×λ2/p)・・・式(2)
φ3=asin(n×λ3/p)・・・式(3)
ここで、波長λ1の反射光L1bに対して、1次回折光の回折効率(以下、単に、「1次回折効率」という)が最大となるよう、回折格子31の格子溝深さを最適化した場合、波長λ2、λ3の反射光L2b、L3bに対する1次回折効率は、反射光L1bに対する1次回折効率よりも低くなる。
【0038】
図5に示すように、回折角φ2と回折角φ1の差(φ2-φ1)、及び回折角φ3と回折角φ1の差(φ1-φ3)は、
図4に示した角度βと等しい。また、
図4を参照しながら説明したように、入射光L1、L2及びL1、L3がなす角度αは、光線角度変換機能を有する第1の反射面20によって、反射光L1a、L2a及びL1a、L3aがなす角度βに変換される。
【0039】
角度βは、角度αよりも小さくなっているので、回折角φ2とφ1の差β(φ2-φ1)、及び回折角φ3とφ1の差β(φ1-φ3)は、小さくなっている。そのため、反射光L2b、L3bの回折角φ2、φ3も小さくなっている。1次回折効率の低下は、回折角φ2、φ3が小さいほど低いため、反射光L2b、L3bも、大部分は、1次回折光として、回折格子31の格子面に垂直な方向に射出される。その結果、1次回折効率の高い光合波器1を実現することができる。
【0040】
ところで、第1の反射面20(複数の反射面21、22、23)と、第2の反射面40との距離をDとすると、
図4に示したように、反射面21と、反射面22及び23との距離Lは、以下の式(4)で表される。
【0041】
L=D×tanβ・・・式(4)
従って、Lを小さくすることによって、反射光L1b、L2bの回折角の差(φ2-φ1)、及び反射光L1b、L3bの回折角の差(φ1-φ3)をより小さくすることができる。
【0042】
また、
図3(b)に示したように、集光レンズ11、12、13に入射した入射光L1、L2、L3は、各反射面21、22、23の中央付近に、幅bのライン状に集光される。しかしながら、幅bを小さくすると、入射光L1、L2、L3のエネルギー集中により、反射面21、22、23が熱で溶ける畏れがる。そのため、幅bは、少なくとも回折限界でのビーム径の数倍以上にすることが好ましい。例えば、集光レンズ11、12、13の開口数(NA)を0.3、波長λを530nm(緑色の波長)とすると、回折限界(λ/NA)は、1.77μmとなる。従って、幅bを、回折限界の5倍以上に設定した場合幅bは、9μm以上にすることが好ましい。
【0043】
また、反射面21と、反射面22及び23との距離Lを、L≧2×bにすることによって、隣接する反射面21、22、23間で、入射光L1、L2、L3の漏れを防止することができる。例えば、第1の反射面20と、第2の反射面40との距離Dを10mmとすると、幅bを9μmに設定した場合、β(φ2-φ1、φ1-φ3)は、約0.1°となる。また、幅bを90μmに設定した場合、β(φ2-φ1、φ1-φ3)は、約1°となる。従って、隣接する反射面21、22、23で反射された反射光L1a、L2a、L3aがなす角度βは、典型的には、2°以下が好ましい。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態によれば、集光レンズ11、12、13が設けられた入射面10と、回折格子31が設けられた射出面30との間に、光線角度変換機能を有する第1の反射面20を配置することによって、回折効率が高く、光源を含む光学系の小型化を図ることができる光合波器1を実現することができる。
【0045】
また、第1の反射面20を、第1反射面21と、第1反射面21に対して、互いに斜め方向に傾斜して配置した第2反射面22及び第3反射面23で構成することによって、簡単な構成で、光線角度変換機能を実現することができる。
【0046】
また、入射面10、第1の反射面20、第2の反射面40、及び射出面30を、透明な同一部材の表面に形成することによって、光合波器1を金型成形により製造することができる。これにより、量産化が容易で、低コストな光合波器1を実現することができる。
【0047】
本実施形態において、波長の異なる複数の入射光として、光の3原色である赤色、緑色、及び青色の半導体レーザを用いた場合、回折格子31から、3原色の入射光が合波された白色の射出光L4を射出することができる。これにより、LEDに比べて、演色性の高い白色光を得ることができる。また、各波長の光強度を変えることによって、様々な色の射出光を生成することができる。
【0048】
また、波長の異なる複数の入射光として、赤色、緑色、及び青色の波長の光を用いた場合、緑色の波長の入射光を、第1反射面21に入射し、緑色よりも波長の長い赤色の入射光を第2反射面22に、緑色よりも波長の短い青色の入射光を第3反射面23に入射させることが好ましい。この場合、緑色の波長の入射光が、回折格子31において、1次回折効率が最大になるように設定されていることが好ましい。
【0049】
(変形例)
上記実施形態では、
図3(a)、(b)に示したように、第1の反射面20を、光合波器1の底部から窪んだ位置に形成した。しかしながら、
図6(a)、(b)に示すように、第1の反射面20を、光合波器1の底部から突出した位置に形成してもよい。ここで、
図6(a)は、第1の反射面20の平面図で、
図6(b)は、
図6(a)のVIb-VIb線に沿った断面図である。
【0050】
図3(a)、(b)に示したのと同様に、第2反射面22及び第3反射面23は、それぞれ、第1反射面21に対して、互いに斜め方向に傾斜して配置されている。
【0051】
図7は、反射面21、22、23に入射した入射光L1、L2、L3と、反射面21、22、23で全反射した反射光L1a、L2a、L3aとの関係を示した図である。
【0052】
図7に示すように、Z軸に対して平行に第1反射面21に入射した光L1は、Z軸に対して平行に、反射光L1aが反射される。一方、入射光L2は、入射光L1と交差して、第3反射面23に、Z軸に対して角度αで入射し、Z軸に対して角度αよりも小さい角度βで、反射光L2aが反射される。同様に、入射光L3は、入射光L1と交差して、第2反射面22に、Z軸に対して角度αで入射し、Z軸に対して角度αよりも小さい角度βで、反射光L3aが反射される。すなわち、入射光L2及びL3は、
図3(a)、(b)に示した場合と異なり、それぞれ反対側の反射面23、22に入射して、反射される。
【0053】
このように、本変形例においても、複数の反射面21、22、23からなる第1の反射面20は、光線角度変換機能を有する。
【0054】
(他の実施形態)
図8は、上記実施形態で説明した光合波器1を用いて構成した画像投影装置を模式的に示した図である。なお、光合波器1の各構成及び機能については、説明を省略する。
【0055】
図8に示すように、本実施形態における画像投影装置2は、光合波器1と、波長の異なる複数の光L1、L2、L3を、光合波器1に入射する光源50、51、52と、光合波器1から射出した射出光L4を走査する走査手段60と、各光源50、51、52における射出光L1、L2、L3、及び走査手段60にける射出光L4の走査を制御する制御手段70とを備えている。ここで、光L1、L2、L3は、例えば、赤色、青色、緑色の波長からなる。
【0056】
具体的には、制御手段70は、外部から入力される映像信号81に同期して、各波長の色成分に応じた駆動信号82を、各光源50、51、52に入力し、各光源50、51、52は、駆動信号82に応じて、光L1、L2、L3を射出する。同時に、制御手段70は、映像信号81に同期して、射出光L4の走査を制御する制御信号80を、走査手段60に入力する。走査手段60は、制御信号80に応じて、射出光L4を水平方向及び垂直方向に走査して、走査光線L5をスクリーン(不図示)上に投影する。これにより、スクリーン上に、映像信号81に応じた映像が投影される。
【0057】
なお、走査光線L5を、スクリーン上に投影する代わりに、人の目に網膜に投影してもとよい。例えば、眼鏡を人の頭に装着して網膜に投影するヘッドマウントディスプレイや、画像投影装置2を自動車の車体に設置し、ハーフミラーで走査光線L5を反射させて網膜に投影するヘッドアップディスプレイ等に適用してもよい。
【0058】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、第1の反射面20で反射した複数の反射光L1a、L2a、L3aを平行光化する第2の反射面40を設けたが、反射光L1a、L2a、L3aが平行光に近ければ、必ずしも第2の反射面40を設けなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、第1の反射面20において、入射光L1、L2、L3の各反射面21、22、23への入射角を、入射光L1、L2、L3が全反射するように設定したが、必ずしも全反射させなくてもよい。また、第1の反射面20を、アルミニウム等を蒸着した反射ミラー面にしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、波長の異なる入射光として、光の3原色の波長の例を説明したが、これに限定されず、任意の異なる波長の光であればよい。また、波長の異なる入射光は、3つに限定されず、2つ以上の任意の数であればよい。例えば、2つの波長の場合、可視光と、近赤外あるいは近紫外の不可視光との組み合わせでもよい。あるいは、近赤外と近紫外の不可視光同士の組み合わせでもよい。また、3原色の光に、補助色の光を加えて4つの波長を用いてもよい、これにより、合波した光の表現範囲を広げることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、光源50、51、52として、半導体レーザを用いる例を説明したが、これに限定されず、例えば、LED光源を用いてもよい。なお、LED光源を用いた場合、スペクトル幅は狭い方が好ましい。
【0063】
また、上記実施形態では、入射光L2が第2反射面22に入射する角度αと、入射光L3が第3反射面23に入射する角度αとを同じにしたが、それぞれ異なった角度で第2反射面22及び第3反射面23に入射してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、入射面10、第1の反射面20、第2の反射面40、及び射出面30を、透明な同一部材の表面に形成したが、その一部は、別部材で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 光合波器
2 画像投影装置
10 入射面
11、12、13 集光レンズ
20 第1の反射面
21 第1反射面
22 第2反射面
23 第3反射面
30 射出面
31 回折格子
40 第2の反射面
50、51、52 光源
60 走査手段
70 制御手段
L1、L2、L3 入射光
L1a、L2a、L3a 反射光
L1b、L2b、L3b 反射光