(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】エネルギー管理システムおよびエネルギー管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20230428BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230428BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2021520722
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020018985
(87)【国際公開番号】W WO2020235394
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019095141
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】生田 富美乘
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163457(JP,A)
【文献】特開2013-236520(JP,A)
【文献】特開2017-139865(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057614(WO,A1)
【文献】特開2018-121405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/14
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要の増減要求を受け付ける要求受付部と、
電力が使用される空間領域の、時間帯によって異なる用途情報およびユーザ属性情報を取得する情報取得部と、
前記用途情報および前記ユーザ属性情報に基づいて、前記空間領域の温度を含む環境パラメータの変更許容度を導出する変更許容度導出部と、
前記電力需要の増減要求および前記環境パラメータの変更許容度に基づいて、前記空間領域の前記環境パラメータの値を生成する環境パラメータ生成部と、
前記環境パラメータの値に基づいて、前記空間領域の環境パラメータを制御する環境制御部
と、
前記環境パラメータの値を前記空間領域に設けられた通信端末に送信する通信部と、
を備
え、
前記環境制御部は、前記通信端末から送信された前記環境パラメータの値を許可する許可信号を受け取ることで、前記空間領域の環境パラメータを制御する
エネルギー管理システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、複数の前記空間領域を有する施設から前記空間領域それぞれの前記用途情報および前記ユーザ属性情報を取得し、
前記変更許容度導出部は、複数の前記空間領域それぞれの前記環境パラメータの変更許容度を導出し、
前記環境パラメータ生成部は、複数の前記空間領域それぞれの前記環境パラメータの値を生成する
請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項3】
前記環境パラメータ生成部は、前記環境パラメータの変更許容度が低い前記空間領域よりも高い前記空間領域のほうが前記電力需要の増減要求に対する貢献度が多くなるように、前記環境パラメータの値を生成する
請求項
1または2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項4】
前記環境パラメータ生成部は、冷房稼働時には前記環境パラメータの変更許容度が低い前記空間領域よりも高い前記空間領域のほうが前記温度が高くなるように、前記環境パラメータの値を生成し、暖房稼働時には前記環境パラメータの変更許容度が低い前記空間領域よりも高い前記空間領域のほうが前記温度が低くなるように、前記環境パラメータの値を生成する
請求項
1~3のいずれか1項に記載のエネルギー管理システム。
【請求項5】
前記環境パラメータ生成部は、前記環境パラメータの変更許容度が閾値以上である前記空間領域の前記環境パラメータの値を前記電力需要の増減要求に応じて変更し、前記環境パラメータの変更許容度が前記閾値よりも小さい前記空間領域の前記環境パラメータの値を前記電力需要の増減要求に応じて変更しない
請求項
1~4のいずれか1項に記載のエネルギー管理システム。
【請求項6】
前記環境パラメータは、さらに、前記空間領域の照度を含み、
前記環境制御部は、前記環境パラメータ生成部で生成した前記環境パラメータの値に基づいて、前記空間領域に設けられた照明器具を調光制御する
請求項
1~5のいずれか1項に記載のエネルギー管理システム。
【請求項7】
電力需要の増減要求を受け付けるステップと、
電力が使用される空間領域の、時間帯によって異なる用途情報およびユーザ属性情報を取得するステップと、
前記用途情報および前記ユーザ属性情報に基づいて、前記空間領域の温度を含む環境パラメータの変更許容度を導出するステップと、
前記電力需要の増減要求および前記環境パラメータの変更許容度に基づいて、前記空間領域の前記環境パラメータの値を生成するステップと、
前記環境パラメータの値を前記空間領域に設けられた通信端末に送信するステップと、
前記通信端末から送信された前記環境パラメータの値を許可する許可信号を受け取るステップと、
前記環境パラメータの値に基づいて、前記空間領域の環境パラメータを制御するステップと
を含むエネルギー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デマンドレスポンスに用いられるエネルギー管理システムおよびエネルギー管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の安定化を図る仕組みであるデマンドレスポンス(DR:Demand Response)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、電気機器が設置された管理エリアの快適性を実現しつつ、電力需要の増減要求に応じることで電力系統の安定化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば電力を使用する空間領域が時間帯によって異なる使い方をされる場合、電力需要の増減要求に適切に応じることが困難となることがある。
【0005】
本開示は、電力需要の増減要求に適切に応じることができるエネルギー管理システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るエネルギー管理システムは、電力需要の増減要求を受け付ける要求受付部と、電力が使用される空間領域の、時間帯によって異なる用途情報およびユーザ属性情報を取得する情報取得部と、前記用途情報および前記ユーザ属性情報に基づいて、前記空間領域の温度を含む環境パラメータの変更許容度を導出する変更許容度導出部と、前記電力需要の増減要求および前記環境パラメータの変更許容度に基づいて、前記空間領域の前記環境パラメータの値を生成する環境パラメータ生成部と、前記環境パラメータの値に基づいて、前記空間領域の環境パラメータを制御する環境制御部と、前記環境パラメータの値を前記空間領域に設けられた通信端末に送信する通信部と、を備え、前記環境制御部は、前記通信端末から送信された前記環境パラメータの値を許可する許可信号を受け取ることで、前記空間領域の環境パラメータを制御する。
【0007】
本開示の一態様に係るエネルギー管理方法は、電力需要の増減要求を受け付けるステップと、電力が使用される空間領域の、時間帯によって異なる用途情報およびユーザ属性情報を取得するステップと、前記用途情報および前記ユーザ属性情報に基づいて、前記空間領域の温度を含む環境パラメータの変更許容度を導出するステップと、前記電力需要の増減要求および前記環境パラメータの変更許容度に基づいて、前記空間領域の前記環境パラメータの値を生成するステップと、前記環境パラメータの値を前記空間領域に設けられた通信端末に送信するステップと、前記通信端末から送信された前記環境パラメータの値を許可する許可信号を受け取るステップと、前記環境パラメータの値に基づいて、前記空間領域の環境パラメータを制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係るエネルギー管理システム等によれば、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るエネルギー管理システム、電力供給サーバ、および、施設に設けられた複数の空間領域などによって構成されるDRシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、空間領域に設置される電気機器および通信端末を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係るエネルギー管理システムを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、空間領域の用途情報を示す図である。
【
図5】
図5は、空間領域を使用する人のユーザ属性情報を示す図である。
【
図6】
図6は、各空間領域の用途情報およびユーザ属性情報を含むスケジュール情報を示す図である。
【
図7】
図7は、各空間領域の環境パラメータの変更許容度、各空間領域に割り当てられる電力削減目標、および、各空間領域に設定される環境パラメータの値の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、通信端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、DRシステムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本開示の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0012】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
(実施の形態)
[1.DRシステムの全体構成]
まず、DRシステム(デマンドレスポンスシステム)の全体構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、実施の形態に係るエネルギー管理システム10、電力供給サーバ2、および、施設5に設けられた複数の空間領域6などによって構成されるDRシステム1を示す図である。
図2は、空間領域6に設置される電気機器7、通信端末8および9を示す図である。
【0015】
図1に示されるように、DRシステム1は、電力供給サーバ2、電力を使用する需要家が所有する複数の施設5、および、電力供給サーバ2と各施設5との間に設けられるエネルギー管理システム10などによって構成される。各施設5は、電力が使用される複数の空間領域6を備えている。
図2に示されるように、各空間領域6には、電力を消費する電気機器7、および、エネルギー管理システム10と通信する通信端末9が設置されている。また、
図2に示す空間領域6には、エネルギー管理システム10と通信する施設管理用の通信端末8も配置されている。
【0016】
電力供給サーバ2は、電力系統を管理する電力供給事業者が所有するサーバである。電力供給事業者は、例えば送配電事業者または小売電気事業者などのことであり、需要家の各施設5に電力を供給する。また、電力供給サーバ2は、インターネット回線または専用の通信回線などの通信ネットワークによってエネルギー管理システム10と接続されている。
【0017】
エネルギー管理システム10は、DRにおいて電力供給事業者と需要家とを仲介する事業者であるアグリゲータ(エネルギー管理事業者)が所有するサーバである。アグリゲータは、需要家とDRの契約を結び、例えば、電力消費のピーク時に需要家に電力消費を抑制させる。
【0018】
各施設5には、電力供給サーバ2または配電事業者が所有する配電網300(電力線310)を通じて電力が供給される。また、各施設5はインターネット400(信号線410)を通じてエネルギー管理システム10と接続されている。各施設5は、例えば、学校、オフィス、集合住宅、工場、商業施設である。施設5の空間領域6は、建物の壁またはパーテーションに囲まれた空間を有する領域であり、施設5に設けられた各種の部屋および通路などを含む。例えば施設5が学校である場合、各空間領域6は、講義室、実験室、セミナー室、イベントホール、ロビーまたは廊下などである。例えば施設5が工場である場合、各空間領域6は、業務フロア、研修室、製品製造室、来客室、玄関フロアまたは移動通路などである。
【0019】
電気機器7は、各空間領域6に設けられた配電盤3を介して配電網300に接続され、電力が供給される。また、電気機器7は、各空間領域6に設けられたルータ4、および、インターネット400を介してエネルギー管理システム10に接続され、エネルギー管理システム10で決定された制御内容に応じて制御される。電気機器7は、例えば、空調機器または照明器具である。電気機器7が空調機器である場合、エネルギー管理システム10は、空調機器を用いて空間領域6の温度または湿度を制御する。電気機器7が照明器具である場合、エネルギー管理システム10は、照明器具を用いて空間領域6の照度を調光制御する。
【0020】
通信端末8および通信端末9は、需要家または空間領域6を使用するユーザの操作入力を受け付けたり、需要家またはユーザにDRに関する情報を通知したりする装置である。通信端末8は、例えばパーソナルコンピュータであり、複数の空間領域6のうちの所定の空間領域に設けられる。通信端末9は、タブレット端末、スマートフォン、または、タッチパネル付の壁スイッチであり、各空間領域6の内部または各空間領域6の入口に設けられる。通信端末8、9は、ルータ4およびインターネット400を介してエネルギー管理システム10に接続される。通信端末8、9には、空間領域6の用途情報および空間領域6を使用する人のユーザ属性情報が入力され、表示され、および保存される。用途情報およびユーザ属性情報については後述する。
【0021】
上記のようなDRシステム1においては、まず、電力供給サーバ2が、電力系統の需給の状況に基づいて電力需要の増減要求をエネルギー管理システム10に送信する。電力需要の増減要求とは、電力系統の安定化を図るため、需要家に対して電力使用量の増加または削減を求めることである。この増減要求を受信したエネルギー管理システム10は、インターネット400を通じて各施設5に電力需要の増減要求を送信する。各施設5では、受信した増減要求に応じて電力使用量が調整される。この電力使用量の調整により、例えばアグリゲータから需要家にインセンティブが支払われる。
【0022】
[2.エネルギー管理システムの構成]
次に、実施の形態のエネルギー管理システム10について、
図3~
図8を参照しながら説明する。
【0023】
図3は、エネルギー管理システム10を示すブロック図である。
【0024】
図3に示されるように、エネルギー管理システム10は、通信部11、12および13と、制御部20とを備える。なお、
図3には、電力供給サーバ2、電気機器7および通信端末8、9なども示されている。各通信部11~13は、制御部20に接続されている。
【0025】
通信部11は、電力供給サーバ2と通信する通信モジュールである。通信部11は、電力供給サーバ2から電力需要の増減要求を指示する信号を受信する。なお、通信部11は、電力需要の増減要求に対する応答を含む各種情報を電力供給サーバ2に送信することも可能である。
【0026】
通信部12は、インターネット400を介して通信端末8、9と通信する通信モジュールである。通信部12は、通信端末8、9から送信された、空間領域6の用途情報および空間領域6を使用する人のユーザ属性情報(
図4および
図5参照)を受信する。また、通信部12は、制御部20にて生成した、空間領域6の温度などの環境パラメータの値(
図6参照)を通信端末8、9に送信する。なお、通信部12は、電力需要の増減要求に対する応答を含む各種情報を通信端末8、9から受信することも可能である。
【0027】
通信部13は、インターネット400を介して電気機器7と通信する通信モジュールである。通信部13は、制御部20にて生成した制御信号を電気機器7に送信する。なお、通信部12および13は、それぞれ異なる通信モジュールによって構成されていてもよいし、同じ1つの通信モジュールによって構成されていてもよい。
【0028】
図3に示されるように制御部20は、要求受付部21と、情報取得部22と、変更許容度導出部24と、環境パラメータ生成部25と、環境制御部23と、記憶部26とを備える。制御部20は、エネルギー管理システム10が有する各構成要素を制御する回路であり、マイクロプロセッサ、メモリ、およびメモリに格納されたプログラムによって実現される。
【0029】
要求受付部21は、通信部11を介して、電力供給サーバ2から送信された電力需要の増減要求に関する情報を受け付ける。電力需要の増減要求に関する情報は、後述する環境パラメータの値を生成するために用いられる。
【0030】
情報取得部22は、電力が使用される空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報を取得する。用途情報およびユーザ属性情報は、後述する環境パラメータの変更許容度を導出するために用いられる。
【0031】
図4は、空間領域6の用途情報を示す図である。用途情報は、空間領域6の使用目的を示す情報である。例えば施設5が学校である場合の用途情報は、講義、実験、講演会、学生集会などから選択される情報であり、施設5が工場である場合の用途情報は、事務作業、会議、製品製造、来客などから選択される情報である。
【0032】
図5は、空間領域6を使用する人のユーザ属性情報を示す図である。ユーザ属性情報は、空間領域6を使用する人の所属を示す情報である。例えば施設5が学校である場合のユーザ属性情報は、学生、教員、学外講演者、一般参加者などから選択される情報であり、施設5が工場である場合のユーザ属性情報は、社員、役員、来訪者などから選択される情報である。また、ユーザ属性情報には、ユーザがコミュニティ内(施設関係者)およびコミュニティ外(施設関係者以外)のいずれに属するかを示す情報も含まれる。
【0033】
情報取得部22は、通信端末8または通信端末9から送信された、空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報を取得する。なお、情報取得部22は、施設管理用の通信端末8から情報を取得する場合、各空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報を一括して取得することも可能である。
【0034】
記憶部26は、情報取得部22で取得した用途情報およびユーザ属性情報を保存する。
【0035】
図6は、各空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報を含むスケジュール情報を示す図である。記憶部26では、各空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報が時間ごとに集約され、スケジュール情報として保存されている。
【0036】
例えば、
図6には、午前11時から午後2時までの時間帯において、101号室は植物生育実験のために学生、教員によって使用され、102号室は講演会のために学生、教員、学外講演者によって使用され、103号室は講義のために学生、教員によって使用され、104号室は学生集会のために学生のみによって使用されることが示されている。このように、各空間領域6の使用目的および使用する人が時間帯によって変わるので、各空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報は時間帯によって異なる情報となる。
【0037】
変更許容度導出部24は、上記用途情報および上記ユーザ属性情報に基づいて、空間領域6の環境パラメータの変更許容度を導出する。環境パラメータとは、空間領域6の環境状態を示す変数であり、例えば、温度、湿度、照度などである。環境パラメータの変更許容度とは、環境パラメータの変更が許される度合であり、例えば4段階で表され、0から3に数字が大きくなるにしたがい環境状態の変更が許されることを示す。この変更許容度は、後述する環境パラメータの値を生成するために用いられる。
【0038】
図7は、各空間領域6の環境パラメータの変更許容度、各空間領域6に割り当てられる電力削減目標、および、各空間領域6に設定される環境パラメータの値の一例を示す図である。なお以下では、電力需要を削減する要求があった場合を例に挙げて説明する。
【0039】
例えば
図7に示されるように、施設5の101号室は、植物生育実験に用いられ、空間領域6の環境を変えてはならないので変更許容度が0に設定される。また、102号室は、学外講演者が発表する講演会に用いられ、空間領域6の環境を変えないほうが望ましいので変更許容度が1に設定される。103号室は、コミュニティ内の学生および教員が出席する講義に用いられ、環境を変えることがある程度許されるので変更許容度が2に設定される。104号室は、コミュニティ内の学生のみによる学生集会に用いられ、環境を変えることが許されるので変更許容度が3に設定される。
【0040】
環境パラメータ生成部25は、要求受付部21にて受け付けた電力需要の削減要求、および、変更許容度導出部24にて導出した環境パラメータの変更許容度に基づいて、各空間領域6の環境パラメータの値を生成する。
【0041】
環境パラメータ生成部25は、電力需要の削減要求および環境パラメータの変更許容度に応じて、各空間領域6の電力使用量を削減するための割り振りを行う。この割り振りを行う際、環境パラメータ生成部25は、環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが電力需要の増減要求に対する貢献度が多くなるように、環境パラメータの値を生成する。例えば、環境パラメータ生成部25は、冷房稼働時には環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが温度が高くなるように、環境パラメータの値を生成する。また、環境パラメータ生成部25は、暖房稼働時には環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが温度が低くなるように、環境パラメータの値を生成する。
【0042】
ここで
図7を参照しながら、各空間領域6に対して電力削減目標を割り振る例について説明する。まず、環境パラメータ生成部25は、午前11時から午後2時の間に4500kWhの電力の削減要求を受け付けると、各空間領域6の環境パラメータの変更許容度に応じて、各空間領域6の電力削減目標を割り振る。例えば、環境パラメータ生成部25は、101号室および102号室については変更許容度が1以下なので電力削減目標を0とし、103号室については変更許容度が2なので電力削減目標を2000kWhとし、104号室については変更許容度が3なので電力削減目標を103号室よりも多い2500kWhとする。
【0043】
このように環境パラメータ生成部25は、施設全体として電力の削減要求に応えられるように各空間領域6の電力削減目標を算出する。なお、環境パラメータ生成部25は、各空間領域6の電力削減目標を割り振る際、各空間領域6の広さ、各空間領域6で使用される電気機器7の能力および台数、電力削減を実行した場合の各空間領域6の不快さレベルなども考慮して電力削減目標を決めてもよい。
【0044】
そして、環境パラメータ生成部25は、
図7に示されるように、算出した電力削減目標に応じて各空間領域6の変更後の温度を生成する。例えば、環境パラメータ生成部25は、101号室および102号室の温度を変更せず、103号室の温度を25℃から27℃に変更し、104号室の温度を25℃から28℃に変更するように環境パラメータの値を生成する。
【0045】
このように、環境パラメータ生成部25は、環境パラメータの変更許容度が閾値以上である空間領域6の環境パラメータの値を電力需要の増減要求に応じて変更し、環境パラメータの変更許容度が閾値よりも小さい空間領域6の環境パラメータの値を電力需要の増減要求に応じて変更しない。例えば、エネルギー管理システム10において上記閾値が2に設定されている場合、環境パラメータ生成部25は、変更許容度が0である101号室および変更許容度が1である102号室の環境パラメータの値は変更せず、変更許容度が2である103号室および変更許容度が3である104号室の環境パラメータの値を変更する。上記閾値は、アグリゲータによってあらかじめ設定されていてもよいし、需要家からの希望に応じて設定されてもよい。
【0046】
環境パラメータ生成部25で生成された環境パラメータの値は、通信部12を介して通信端末8、9に送信される。
【0047】
図8は、通信端末9に表示される画面9aの一例を示す図である。
【0048】
図8に示されるように通信端末9の画面9aには、電力需要の削減要求をユーザに通知するため、空間領域の番号、電力削減を実行する時間帯、電力削減目標および変更後の温度などの情報が表示される。ここで画面9a上のYesのアイコンがユーザによって押圧されると、上記環境パラメータの値がユーザに許可されたことになる。なお、上記では通信端末9を用いて、電力需要の削減要求の通知、および、環境パラメータの値の許可を行う例を示したが、通信端末9の代わりに通信端末8を用いて行ってもよい。
【0049】
上記環境パラメータの値が許可されると、環境制御部23は、上記環境パラメータの値に基づいて空間領域6の温度などの環境パラメータを制御する。具体的には、環境制御部23は、通信部13を介して、空調機器などの電気機器7の作動を制御する。なお、上記では環境制御部23が空調機器で温度を制御する例について説明したが、それに限られず、空調機器で空間領域6の湿度を制御してもよい。また、電気機器7が照明器具である場合は、環境制御部23は、空間領域6の照度を制御してもよい。このようにエネルギー管理システム10が、空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に基づいて環境パラメータの値を生成し、空間領域6の電力使用量を調整することで、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0050】
[3.DRシステムの動作]
次に、DRシステム1の動作について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、DRシステム1の動作を示すシーケンス図である。
【0051】
まず、電力供給サーバ2がエネルギー管理システム10に電力需要の増減要求を行う。エネルギー管理システム10は、電力供給サーバ2から送信された電力需要の増減要求を受け付ける(ステップS11)。電力需要の増減要求には、所定の時間帯における電力の増加目標または削減目標に関する情報が含まれている。
【0052】
エネルギー管理システム10を所有するアグリゲータは、あらかじめ複数の需要家とDRの契約を結んでいる。エネルギー管理システム10は、需要家の施設5に対して、電力需要の増減要求を送信する。
【0053】
一方、エネルギー管理システム10は、電力が使用される施設5の各空間領域6の用途情報および空間領域6を使用する人のユーザ属性情報を取得する(ステップS12)。エネルギー管理システム10は、これらの用途情報およびユーザ属性情報を通信端末8または通信端末9から取得する。なお、エネルギー管理システム10は、ステップS11よりも前に用途情報およびユーザ属性情報を取得してもよい。
【0054】
エネルギー管理システム10は、取得した用途情報およびユーザ属性情報に基づいて、空間領域6の環境パラメータの変更許容度を導出する(ステップS13)。変更許容度は、例えば数字で表され、数字が大きくなるほど環境の変更が可能であるように決定される。
【0055】
次に、エネルギー管理システム10は、ステップS11で受け付けた電力需要の増減要求、および、ステップS13で導出した環境パラメータの変更許容度に基づいて、空間領域6の環境パラメータの値を生成する(ステップS14)。環境パラメータの値は、例えば、環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが電力需要の増減要求に対する貢献度が多くなるように生成される。
【0056】
次に、エネルギー管理システム10は、空間領域6に設置された通信端末8または通信端末9に環境パラメータの値を含む各種情報を送信する(ステップS15)。具体的には、空間領域6の番号、電力需要の増減要求を実行する時間帯、電力増減量、および、変更後の環境パラメータの値を送信する。変更後の環境パラメータの値がユーザによって許可されると、すなわち、通信端末8または9が、変更後の環境パラメータの値を許可する許可入力を受け付けると(ステップS15A)、通信端末8または9は、それを示す許可信号をエネルギー管理システム10に送信する。
【0057】
エネルギー管理システム10は、この許可信号を受け取ると、ステップS14にて生成した環境パラメータの値に基づいて、空間領域6の環境パラメータを制御する(ステップS16)。このように、空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に基づいて環境パラメータの値を生成し、空間領域6の電力使用量を調整することで、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0058】
[4.効果]
本実施の形態に係るエネルギー管理システム10は、電力需要の増減要求を受け付ける要求受付部21と、電力が使用される空間領域6の、時間帯によって異なる用途情報およびユーザ属性情報を取得する情報取得部22と、上記用途情報および上記ユーザ属性情報に基づいて、空間領域6の温度を含む環境パラメータの変更許容度を導出する変更許容度導出部24と、電力需要の増減要求および環境パラメータの変更許容度に基づいて、空間領域6の環境パラメータの値を生成する環境パラメータ生成部25と、環境パラメータの値に基づいて、空間領域6の環境パラメータを制御する環境制御部23とを備える。
【0059】
これによれば、時間帯によって異なる空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に応じて、空間領域6の環境パラメータの変更許容度が導出され、この変更許容度に基づいてデマンドレスポンス(DR)が実行される。これにより、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0060】
また、情報取得部22は、複数の空間領域6を有する施設5から空間領域6それぞれの用途情報およびユーザ属性情報を取得し、変更許容度導出部24は、複数の空間領域6それぞれの環境パラメータの変更許容度を導出し、環境パラメータ生成部25は、複数の空間領域6それぞれの環境パラメータの値を生成してもよい。
【0061】
これによれば、複数の空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に応じて、各空間領域6の環境パラメータの変更許容度が導出され、この変更許容度に基づいてデマンドレスポンスが実行される。これにより、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0062】
また、エネルギー管理システム10は、さらに、環境パラメータの値を空間領域6に設けられた通信端末9に送信する通信部12を備えていてもよい。
【0063】
これによれば、環境パラメータの値が空間領域6に設けられた通信端末9に送信されるので、空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に対応した快適性を実現し、かつ、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0064】
また、環境パラメータ生成部25は、環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが電力需要の増減要求に対する貢献度が多くなるように、環境パラメータの値を生成してもよい。
【0065】
これによれば、各空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に対応した快適性を確保し、かつ、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0066】
また、環境パラメータ生成部25は、冷房稼働時には環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが温度が高くなるように、環境パラメータの値を生成し、暖房稼働時には環境パラメータの変更許容度が低い空間領域6よりも高い空間領域6のほうが温度が低くなるように、環境パラメータの値を生成してもよい。
【0067】
これによれば、各空間領域6の用途情報、ユーザ属性情報および周囲の寒暖状況に照らし合わせて無理することなく電力需要の増減要求に応えることができる。
【0068】
また、環境パラメータ生成部25は、環境パラメータの変更許容度が閾値以上である空間領域6の環境パラメータの値を電力需要の増減要求に応じて変更し、環境パラメータの変更許容度が上記閾値よりも小さい空間領域6の環境パラメータの値を電力需要の増減要求に応じて変更しなくてもよい。
【0069】
これによれば、環境パラメータの変更許容度が閾値よりも小さい空間領域6が、デマンドレスポンスの実行対象から除外されるので、例えば、植物生育実験中である空間領域6の環境パラメータが外部要因によって変更されることを避けることができる。
【0070】
また、環境パラメータは、さらに、空間領域6の照度を含み、環境制御部23は、環境パラメータ生成部25で生成した環境パラメータの値に基づいて、空間領域6に設けられた照明器具を調光制御してもよい。
【0071】
このようにデマンドレスポンスに応じて照明器具の調光を制御することで、空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に合った最適な照度が実現され、かつ、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0072】
本実施の形態に係るエネルギー管理方法は、電力需要の増減要求を受け付けるステップと、電力が使用される空間領域6の、時間帯によって異なる用途情報およびユーザ属性情報を取得するステップと、上記用途情報および上記ユーザ属性情報に基づいて、空間領域6の温度を含む環境パラメータの変更許容度を導出するステップと、電力需要の増減要求および環境パラメータの変更許容度に基づいて、空間領域6の環境パラメータの値を生成するステップと、環境パラメータの値に基づいて、空間領域6の環境パラメータを制御するステップとを含む。
【0073】
これによれば、時間帯によって異なる空間領域6の用途情報およびユーザ属性情報に応じて、空間領域6の環境パラメータの変更許容度が導出され、この変更許容度に基づいてデマンドレスポンスが実行される。これにより、電力需要の増減要求に適切に応じることができる。
【0074】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば上記DRシステム1の動作では、環境パラメータの値がユーザによって許可された後、エネルギー管理システム10が空間領域6の環境パラメータを制御する例について示したが、それに限られない。例えば、アグリゲータがユーザの許可を得ずに空間領域6の環境パラメータを制御するように需要家と契約している場合、エネルギー管理システム10は、ステップS14を実行せず、すなわちユーザの許可を求めずに空間領域6の環境パラメータを制御してもよい。
【0076】
また、上記ユーザ属性情報として、人の所属を示す情報を例に挙げて説明したが、それに限られない。例えば、空間領域6内にカメラを設け、カメラで撮像した情報に基づいて空間領域6にいる人の年齢を導出し、そしてエネルギー管理システム10が、この年齢に関する情報をユーザ属性情報として扱い、空間領域6の環境パラメータを制御してもよい。
【0077】
また、上記実施の形態において説明した装置間の通信方式は、一例であり、装置間においては有線または無線のどのような通信方式が用いられてもよい。
【0078】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0080】
なお、本開示の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、本開示の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0081】
なお、本開示は、これらの実施の形態またはその変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態またはその変形例に施したもの、あるいは異なる実施の形態またはその変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
5 施設
6 空間領域
8、9 通信端末
10 エネルギー管理システム
11、12、13 通信部
21 要求受付部
22 情報取得部
23 環境制御部
24 変更許容度導出部
25 環境パラメータ生成部