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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】商品の前出し装置
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/02 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
A47F3/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019021543
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020127622
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591178849
【氏名又は名称】株式会社太幸
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】小田切 昭央
(72)【発明者】
【氏名】守高 一史
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-350642(JP,A)
【文献】特開2000-051021(JP,A)
【文献】特開2000-056691(JP,A)
【文献】特開2000-051022(JP,A)
【文献】特開2016-187480(JP,A)
【文献】国際公開第2006/027872(WO,A1)
【文献】実開昭64-019338(JP,U)
【文献】実開昭61-143437(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 1/00~11/10
A47B 67/04
A47B 88/00~88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の転び止めが設けられた前部及び該前部に相対する後部を有し、また、磁性を有する陳列棚に適用される商品の前出し装置であって、
前記陳列棚上に配置されるスタンドであって該スタンドに設けられた永久磁石を介して前記陳列棚に磁気吸着されるスタンドと、
前記陳列棚上に配置され前記陳列棚の前後方向へ伸びる商品の載置部材であって前端部、該前端部に相対する後端部及び商品が載置される前後両端部間の中間部を有する載置部材とを備え、
前記載置部材は、その後端部において、前記スタンドに対する前記陳列棚の前後方向への移動と、前記スタンドに対する揺動及び該揺動に伴う前記載置部材の中間部の前記陳列棚の転び止め上への乗り上げとを許すように前記スタンドに係止される、前出し装置。
【請求項2】
さらに、前記載置部材上の商品に対する他の転び止めを備え、
前記他の転び止めは前記陳列棚上において前記スタンドに相対して配置され、また、前記他の転び止めに設けられた永久磁石を介して前記陳列棚に磁気吸着される、請求項1に記載の前出し装置。
【請求項3】
前記スタンドは上下方向へ伸びる一対の長孔を有し、
前記載置部材の中間部は一対の互いに平行な線条からなり、両線条は前記スタンドの両長孔を経てそれぞれ伸びる、請求項1又は2に記載の前出し装置。
【請求項4】
前記スタンドと前記他の転び止めとはそれぞれ上下方向へ伸びる二対の長孔を有し、
前記載置部材の中間部は前記スタンドの両長孔及び前記他の転び止めの両長孔を経てそれぞれ伸びる一対の線条からなる、請求項2に記載の前出し装置。
【請求項5】
さらに、前記陳列棚の前後方向に直交する方向における前記載置部材の両側方に配置され前記載置部材に沿って伸びる一対の商品の仕切り板を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の前出し装置。
【請求項6】
商品の転び止めが設けられた前部と該前部に相対する後部とを有する陳列棚に適用される商品の前出し装置であって、
前記陳列棚上に配置され前記陳列棚の前後方向へ伸びる支持部材であって前記陳列棚の転び止めに引掛けられる引掛け部を有する支持部材と、
前記支持部材に該支持部材の伸長方向へ移動可能に支持されたスタンドと、
前記陳列棚上に配置され前記陳列棚の前後方向へ伸びる商品の載置部材であって前端部、該前端部に相対する後端部及び商品が載置される前後両端部間の中間部を有する載置部材とを備え、
前記載置部材は、その後端部において、前記スタンドに対する前記陳列棚の前後方向への移動と、前記スタンドに対する揺動及び該揺動に伴う前記載置部材の中間部の前記陳列棚の転び止め上への乗り上げとを許すように前記スタンドに係止される、前出し装置。
【請求項7】
さらに、前記載置部材上の商品に対する他の転び止めを備え、
前記他の転び止めは前記支持部材の引掛け部と一体に形成されている、請求項6に記載の前出し装置。
【請求項8】
前記スタンドは一対の切欠きを有し、
前記載置部材の中間部は前記スタンドの両切欠きを経てそれぞれ伸びる一対の互いに平行な線条からなる、請求項6又は7に記載の前出し装置。
【請求項9】
前記スタンド及び前記他の転び止めはそれぞれ一対の切欠き及び上下方向へ伸びる一対の長孔を有し、
前記載置部材の中間部は前記スタンドの両切欠き及び前記他の転び止めの両長孔を経てそれぞれ伸びる一対の互いに平行な線条からなる、請求項7に記載の前出し装置。
【請求項10】
さらに、前記陳列棚の前後方向に直交する方向における前記載置部材の両側方に配置され前記載置部材に沿って伸びる一対の商品の仕切り板を備える、請求項6~9のいずれか1項に記載の前出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアのような店舗に設置される商品の陳列棚、特に陳列棚の前部に商品の転び止めが設けられたものに適用される商品の前出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商品の陳列棚のなかには、陳列棚の前部(購買客から見て手前の側に位置する部分)からの商品の滑り落ち、転がり落ち等を防止するために、陳列棚の前部に商品の転び止めが設けられているものがある。
【0003】
ところで、陳列棚の上にその前部からその後部(購買客から見て奥側に位置する部分)に向けて並べ置かれた複数の商品は、陳列棚の前部の側に位置するものからなくなり始め、その数が次第に減っていくのが通常である。このため、店舗においては、陳列棚の後部の側に残る複数の商品を前部の側へ移動すること(商品の前出し)が行われている。
【0004】
従来、このような商品の前出しに供される装置が提案されている。しかし、従来の前出し装置は転び止めが設けられていない陳列棚に適用されるものであり、転び止めが設けられた陳列棚への使用に適さない。また、商品の転び止めが設けられた陳列棚への前出し装置の適用例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-85089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の実情に鑑み、商品の転び止めが設けられた陳列棚に適用される前出し装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の実施の形態に係る商品の前出し装置は、磁性を有する陳列棚に適用される。前記陳列棚は、商品の転び止めが設けられた前部と該前部に相対する後部とを有する。
【0008】
本発明の一の実施の形態に係る前出し装置は、前記陳列棚上に配置されるスタンド及び商品の載置部材とを備える。前記スタンドはこれに設けられた永久磁石を介して前記陳列棚に磁気吸着される。また、前記載置部材は前記陳列棚上をその前後方向へ伸び、前端部、該前端部に相対する後端部及び商品が載置される前後両端部間の中間部を有する。また、前記載置部材は、その後端部において、前記スタンドに対する前記陳列棚の前後方向への移動と、前記スタンドに対する揺動及び該揺動に伴う前記載置部材の中間部の前記陳列棚の転び止め上への乗り上げとを許すように前記スタンドに係止される。
【0009】
この前出し装置にあっては、前記陳列棚上への商品の陳列のために、前記載置部材の中間部上に複数の商品が載置され、これらの商品は前記スタンドと前記陳列棚の転び止めとの間に並べ置かれる。前記載置部材上の複数の商品は、購買客によって前記陳列棚の手前の側から順次に取り出され、前記陳列棚の奥の側に残っている状態にあるとき、商品の前出しが行われる。
【0010】
前記商品の前出しは、次のようにして行うことができる。まず、前記載置部材の前端部を前記陳列棚の転び止めの上方の高さ位置に置くために、前記載置部材を前記スタンドに対して揺動させ、傾斜した状態におく。次に、前記前端部を介して前記載置部材に引張力を及ぼす。これにより、前記載置部材が前記陳列棚の前方へ移動し、その中間部が前記陳列棚の転び止めの上に乗り上げ、これを横切る。前記載置部材の前方移動及び揺動に伴い、前記スタンドはこれに係止する前記載置部材の後端部を介して、また、前記磁気吸着力に抗して、前記陳列棚上をその前方に向けて滑動する。これにより、前記スタンド共に前記載置部材上の商品が前記転び止めに向けて移動され、商品の前出しが行われる。
【0011】
前記商品の前出しを終了した後は、前記スタンドに対して、前記載置部材をその前端部を介して前記陳列棚の後部に向けて後方移動させることにより、前記転び止め上に乗り上げた状態にある前記載置部材の中間部を前記陳列棚上に戻すことができる。
【0012】
前記前出し装置は、さらに、前記載置部材上の商品に対する他の転び止めを備えるものとすることができる。前記他の転び止めは前記陳列棚上において前記スタンドに相対して配置され、また、永久磁石を介して前記陳列棚に磁気吸着される。これによれば、前記商品の前出しの際、前記スタンドと共に陳列棚の転び止めの上方位置に向けて移動される商品を前記他の転び止めにおいて止めることができる。
【0013】
前記スタンドが上下方向へ伸びる一対の長孔を有し、かつ、前記載置部材の中間部が前記スタンドの両長孔を経てそれぞれ伸びる一対の互いに平行な線条からなるものとすることができる。これによれば、前記スタンドの両長孔は両線条の前後方向への移動及び両長孔の伸長方向への移動を許す。前記載置部材は、前記スタンドに対して前記載置部材が前後方向への移動及び揺動が可能であるように、前記スタンドに保持される。
【0014】
前記他の転び止めを備える前出し装置にあっては、前記スタンドと前記他の転び止めとがそれぞれ上下方向へ伸びる二対の長孔を有し、また、前記載置部材の中間部が前記スタンドの両長孔及び前記他の転び止めの両長孔を経てそれぞれ伸びる一対の線条からなるものとすることができる。これによれば、前記スタンド及び前記他の転び止めに対する前記載置部材の前後方向移動及び揺動を可能とすることができる。
【0015】
前記前出し装置は、さらに、前記陳列棚の前後方向に直交する方向における前記載置部材の両側方に配置され前記載置部材に沿って伸びる一対の商品の仕切り板を備えるものとすることができる。これによれば、前記商品の前出しに際して、前記載置部上に載置された商品が両仕切り板間を整然と移動するようにすることができる。
【0016】
本発明の他の実施の形態に係る商品の前出し装置は、好ましくは、磁性を有しない陳列棚である非磁性の陳列棚に適用される。この陳列棚も、同様に、商品の転び止めが設けられた前部と該前部に相対する後部とを有する。
【0017】
他の実施の形態に係る商品の前出し装置は、前記陳列棚上に配置され前記陳列棚の前後方向へ伸びる支持部材と、スタンドと、商品の載置部材とを備える。前記支持部材は前記陳列棚の転び止めに引掛けられる引掛け部を有する。前記スタンドは前記支持部材に支持され、該支持部材の伸長方向へ移動可能である。また、前記載置部材は前記陳列棚上に配置され前記陳列棚の前後方向へ伸び、前端部、該前端部に相対する後端部及び商品が載置される前後両端部間の中間部を有する。また、前記載置部材は、その後端部において、前記スタンドに対する前記陳列棚の前後方向への移動と、前記スタンドに対する揺動及び該揺動に伴う前記載置部材の中間部の前記陳列棚の転び止め上への乗り上げとを許すように前記スタンドに係止される。
【0018】
この前出し装置にあっては、前記支持部材をその引掛け部において前記陳列棚の転び止めに引掛けることにより、前記支持部材に支持されたスタンドを前記陳列棚上に留め置き、また、前記支持部材上を前記陳列棚の前後方向へ移動させることができる。この前出し装置においても、同様に、前記スタンドに対する前記載置部材の前方移動及び揺動を行うことにより商品の前出しを行うことができる。
【0019】
前記他の実施の形態に係る前出し装置は、前記一の実施の形態に係る前出し装置におけると同様、さらに、前記載置部材上の商品に対する他の転び止めを備えるものとすることができる。この他の実施形態においては、前記他の転び止めは前記支持部材の引掛け部と一体に形成されている。
【0020】
前記スタンドは一対の切欠きを有するものとすることができる。ここにおいて、前記載置部材の中間部は前記スタンドの両切欠きを経てそれぞれ伸びる一対の互いに平行な線条からなる。
【0021】
前記他の転び止めを備える前記他の実施形態の前出し装置にあっては、前記スタンド及び前記他の転び止めがそれぞれ一対の切欠き及び上下方向へ伸びる一対の長孔を有し、前記載置部材の中間部が前記スタンドの両切欠き及び前記他の転び止めの両長孔を経てそれぞれ伸びる一対の互いに平行な線条からなるものとすることができる。
【0022】
前記前出し装置は、前記一の実施形態におけると同様に、前記陳列棚の前後方向に直交する方向における前記載置部材の両側方に配置され前記載置部材に沿って伸びる一対の商品の仕切り板を備えるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一の実施の形態に係る商品の前出し装置の斜視図である。
図2図1に示す前出し装置の分解斜視図である。
図3】商品の陳列棚上に配置された図1に記載の前出し装置の斜視図である。
図4】商品の前出しを行うために操作状態にある図1に記載の前出し装置の斜視図である。
図5】商品の前出し操作後における図1に記載の前出し装置の斜視図である。
図6】本発明の他の実施の形態に係る商品の前出し装置の斜視図である。
図7図6に示す前出し装置の分解斜視図である。
図8図6に示す前出し装置の横断面図である。
図9】商品の陳列棚上に配置された図6に記載の前出し装置の斜視図である。
図10】商品の前出しを行うために操作状態にある図6に記載の前出し装置の斜視図である。
図11】商品の前出し操作後における図6に記載の前出し装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2を参照すると、本発明の一の実施の形態に係る商品の前出し装置が全体に符号10で示されている。
【0025】
前出し装置10は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアに設置される商品の陳列棚12(図3図5参照)に適用される。この陳列棚12は例えば鋼鉄のような金属材料からなり、磁性を有する。陳列棚12は矩形の平面形状を有し、前記矩形の長辺の伸長方向すなわち陳列棚12の長手方向へ伸び互いに相対する両側部を有する。両側部は、それぞれ、陳列棚12上に陳列される商品Sの購買者から見て手前の側に位置する前部12a及び奥の側に位置する後部12bをなす。
【0026】
陳列棚12の前部12aには陳列棚12の長手方向へ伸びる商品の転び止め14が設けられている。図示の転び止め14は細長い板体からなり、陳列棚12の前部12aに設けられ陳列棚12の長手方向へ伸びる溝15(図3)に差し込まれ、陳列棚12からその上方へ突出している。転び止め14は、陳列棚12上に陳列される商品Sが陳列棚12の前部12aからの滑り落ちや転がり落ちを防止するために設けられている。
【0027】
前出し装置10は、陳列棚12上に配置され、転び止め14と後部12bとの間に位置するスタンド16と、陳列棚12上にその転び止め14と後部12bとの間に配置され、陳列棚12の前後方向すなわちその前部12a及び後部12bの一方から他方に向けて伸びる商品の載置部材18とを備える。
【0028】
スタンド16は、これを構成する後記底板部16aに埋め込まれた少なくとも1つの永久磁石(図示の例では3つの円板状の永久磁石)20を介して、陳列棚12に磁気吸着され、これにより陳列棚12に解除可能に固定される。また、載置部材18は、前端部18a、該前端部に相対する後端部18b及び商品S(図3)が載置される前後両端部18a、18b間の中間部18cを有する。載置部材18は、その後端部18bにおいて、スタンド16に対する陳列棚12の前後方向への移動と、スタンド16に対する揺動及び該揺動に伴う載置部材の中間部18cの陳列棚の転び止め14上への乗り上げとを許すようにスタンド16に係止される。
【0029】
図示のスタンド16は全体にT形を呈する2つの板部からなる。前記2つの板部は、陳列棚12に接する矩形状の底板部16aと、底板部16aに連なる矩形状の直立板部16bとからなる。スタンド16は、さらに、スタンド16の底板部16aに設けられた突出部16cを有する。突出部16cは直立板部16bに相対している。スタンド16は、直立板部16bと突出部16cとがそれぞれ陳列棚12の後部12bの側と前部12aの側とに位置するように置かれる。なお、突出部16cは、直立板部16bとの間に複数の商品Sが存するとき、これらの商品Sを直立板部16bと共同して保持する働きをなす。
【0030】
図示の例においては、スタンド16の直立板部16bに、互いに間隔をおいて、一対の上下方向へ伸びる長孔22が設けられている。他方、図示の商品の載置部材18は、全体にコ字形を呈するように折り曲げられた金属製の線材からなる。ここにおいて、載置部材18の後端部が前記線材の両端部であって上方へ折り曲げられた両端部からなる。また、中間部18cは前記線材の両端部にそれぞれ連なる一対の互いに平行な線条からなる。
【0031】
載置部材18は、その中間部18cを構成する両線条がスタンド16の2つの長孔22を経てそれぞれ伸び、後端部18bがスタンド16の直立板部16bにその後方において係止している(図3)。スタンド16の両長孔22は、前記両線条の陳列棚12の前後方向への移動を許し、また、両長孔22の長手方向への移動を許す。両長孔22は、前記両線条の両長孔22の長手方向への移動により、載置部材18がスタンド16に対して揺動し、該揺動に伴なって中間部18cが傾斜し、転び止め14上への乗り上げることを可能とする長さ寸法を有する。
【0032】
商品Sの前出しは、次のようにして行うことができる。まず、載置部材18の前端部18aを手指で摘んでこれを持ち上げる。持ち上げは、前端部18aが陳列棚12の転び止め14を超える高さ位置に達するように行う。これにより、中間部18cを構成する前記2つの線条がそれぞれスタンド16の両長孔22をその長手方向へ移動し、載置部材18がスタンド16に対して揺動し、中間部18cが傾斜した状態におかれる。
【0033】
次に、前端部18aに引張力を及ぼし、載置部材18を陳列棚12の前方へ移動させる。その結果、中間部18cが陳列棚12の転び止め14の上に乗り上げ、これを横切る(図4)。載置部材18の前方移動に伴い、スタンド16が該スタンドに係止する載置部材の後端部18bを介して前記引張力を受け、前記磁気吸着力に抗して、陳列棚12上をその前方に向けて滑動する。このとき、スタンド16と共に、中間部18c上の商品Sが転び止め14に向けて移動する。これにより、商品の前出しが行われる。
【0034】
前記商品の前出しを終了した後は、スタンド16に対して、前端部18aを介して載置部材18の中間部18cを陳列棚12の後部12bに向けて移動させる。その結果、転び止め14上に乗り上げた状態にあった中間部18cが陳列棚12上に移る(図11)。また、スタンド16を載置部材18に対して支持部材42に沿って陳列棚12の後部12bに向けて滑動させることにより、スタンド16の移動により生じた空間、すなわち中間部18cの上方空間に新たな複数の商品Sを補充することができる。
【0035】
前出し装置40も、また、好ましくは、載置部材18の中間部18c上の商品Sに対して転び止めの作用をなす他の転び止め24を備えるものとすることができる。他の転び止め24は陳列棚12上においてスタンド16に相対して配置される。図示の他の転び止め24は、全体にL形を呈し、陳列棚12上に接する底板部24aと、該底板部から立ち上がる直立板部24bとからなる。他の転び止め24は、スタンド16におけると同様に、底板部24aに埋め込まれた少なくとも1つの永久磁石(図示の例では3つの円板状の永久磁石)26を介して、陳列棚12に磁気吸着され、これにより陳列棚12に解除可能に固定される。
【0036】
図示の例においては、他の転び止め24の直立板部24bに、互いに間隔をおいて、一対の長孔28が設けられている。両長孔28は上下方向に伸びている。この他の転び止め24を備える例にあっては、載置部材18の中間部18cを構成する前記2つの線条がそれぞれ両長孔28を経て伸びている。両長孔28はスタンド16に対する載置部材18の前記前方移動及び揺動を許す。これによれば、商品Sの前出しの際、載置部材18の中間部18cが陳列棚12の転び止め14上を前方に向けて移動されるとき、中間部18c上の商品Sが他の転び止め24に当た、止められる。
【0037】
前出し装置10は、さらに、一対の商品の仕切り板30を備えるものとすることができる。図示の両仕切り板30は全体にL形を呈する。両仕切り板30は、商品の載置部材18の両側方において、陳列棚12上に配置され載置部材18に沿って伸びている。両仕切り板30は、載置部材18上の複数の商品Sを整列させる働きをなす。
【0038】
前出し装置10の載置部材18を構成する前記線材は、図示の例に代わる他の例(図示せず)として、その両端部(後端部18b)が互いに他の一方に向けて折り曲げられ、また、両線条の相互間隔がスタンド16の直立板部16bの幅より大きいものとすることができる。この他の例に係る載置部材18は、その後端部18bがスタンド16の直立板部16bにその後方において係止し、また、中間部18cを構成する両線条がスタンドの直立板部16bの両側方を通過する。また、両長孔22に代えて、スタンド16の直立板部16bの両側方に開放する一対の切欠き(図示せず)とすることができる。この他の例によっても、スタンド16に対して載置部材18を揺動可能としまた前後方向へ移動可能とすることができる。あるいは、また、さらに他の例(図示せず)として、スタンド16の直立板部に16bに2つの長孔22を設けることに代えて、直立板部16bに中間部18cを構成する前記両線条が挿通される1つの開口を設けることができる。このさらに他の例によれば、前記両線条に代えて、中間部18cの全部又は一部を例えば板体(図示せず)からなるものとすることができる。
【0039】
次に、図6図11を参照して、本発明の他の実施の形態に係る前出し装置40について説明する。
【0040】
この前出し装置40は、好ましくは、非磁性の陳列棚、例えばプラスチック製の陳列棚12に適用される。但し、前出し装置40は、磁性を有する陳列棚に対しても、適用可能である。
【0041】
前出し装置40は、前述した前出し装置10におけると同様に、スタンド16と、商品の載置部材18とを備える。但し、非磁性の陳列棚12に対する適用を考慮して、前出し装置40は、永久磁石26(図1)の代わりに、支持部材42を有する。支持部材42は陳列棚12上に配置され陳列棚12の前後方向へ伸びる。スタンド16は支持部材42に支持され、支持部材42を介して陳列棚12上に載置される。
【0042】
図示の支持部材42は、図7に示すように、矩形状の底板部42aと、該底板部上をその周縁に沿って伸びるコ字形の枠部42b及びI形の枠部42cとからなる。I形の枠部42cはコ字形の枠部42bに取り外し可能に取り付けられ、コ字形の枠部42bと共同して矩形状の枠部を形成する。コ字形の枠部42bは、2つの直線状に伸びる部分42bと、両部分42bに連なり直線状に伸びる部分42bとを有する。
【0043】
図8に示すように、コ字形の枠部42bにおける2つの部分42bに互いに相対する2条の凹溝44が設けられている。他方、スタンド16は、その底板部16aの両側縁に設けられた2つの突条46を有する。両突条46はそれぞれ支持部材42の両凹溝44に受け入れられ両溝44に沿って陳列棚12の前後方向へ滑動可能である。
【0044】
支持部材42は、また、コ字形の枠部42bの部分42bに設けられた引掛け部48を有する。引掛け部48は全体に鉤形を呈し、陳列棚12の転び止め14に引掛けられる。これにより、支持部材42が陳列棚12上に滑動しないように載置される。
【0045】
この前出し装置40にあっては、スタンド16の直立板部16bに、一対の長孔22(図1)に代えて、一対の切欠き50が設けられている。また、載置部材18は、全体に矩形状を呈するように折り曲げられた金属製の線材からなり、その後端部18bがコ字形を呈する点において、前出し装置10における載置部材18と形状を異にする。この例にあっては、載置部材18の中間部18cを構成する前記2つの線条が、支持部材42の外側をその両部分42bに沿ってまたこれらに近接して伸びている。載置部材18の中間部18cを構成する前記2つの線条と支持部材42の両部分42bとは、スタンド16の両切欠き50を経て伸び、載置部材18の後端部18bが、スタンド16にその後方において係止する。
【0046】
商品Sの前出しは、次のようにして行うことができる。まず、前出し装置10におけると同様、載置部材18の前端部18aを手指で摘んでこれを持ち上げる。持ち上げは、前端部18aが陳列棚12の転び止め14を超える高さ位置に達するように行う。これにより、中間部18cを構成する前記2つの線条がそれぞれスタンド16の両切欠き50内において揺動し、これにより載置部材18がスタンド16に対して揺動し、中間部18cが傾斜した状態におかれる。
【0047】
次に、前端部18aに引張力を及ぼし、載置部材18を陳列棚12の前方へ移動させる。その結果、中間部18cが陳列棚12の転び止め14の上に乗り上げ、これを横切る(図10)。載置部材18の前方移動に伴い、スタンド16が該スタンドに係止する載置部材の後端部18bを介して前記引張力を受け、支持部材42上をその前方に向けて滑動する。このとき、スタンド16と共に、中間部18c上の商品Sが転び止め14に向けて移動する。これにより、商品の前出しが行われる。
【0048】
前記商品の前出しを終了した後は、スタンド16に対して、前端部18aを介して中間部18cを陳列棚12の後部12bに向けて移動させる。その結果、転び止め14上に乗り上げた状態にあった中間部18cが陳列棚12上に移る(図5)。また、スタンド16を載置部材18に対して相対的に、前記磁気吸着力に抗して、陳列棚12の後部12bに向けて滑動させることにより、スタンド16の移動により生じた空間、すなわち中間部18cの上方空間に新たな複数の商品Sを補充することができる。
【0049】
前出し装置40も、また、載置部材18の中間部18c上の商品Sに対する他の転び止め24を備えるものとすることができる。他の転び止め24は、引掛け部48と一体に形成された板状体からなり、陳列棚12上においてスタンド16に相対している。他の転び止め24には、前述した前出し装置10におけると同様に、互いに間隔をおいて、一対の長孔28が設けられている。両長孔28は上下方向に伸びている。この他の転び止め24を備える例にあっては、商品載置部材18の中間部18cを構成する前記2つの線条がそれぞれ両長孔28を経て伸びている。両長孔28はスタンド16に対する載置部材18の前記揺動及び前後方向移動を許す。
【0050】
スタンド16の両切欠き50及び他の転び止め48の両長孔28は、それぞれ、前記両線条の陳列棚12の前後方向への移動を許し、また、両切欠き50は前記両線条の揺動を許し、また、両長孔28はこれらの長手方向への前記両線条の移動を許す。両長孔28は、前記両線条の両長孔28の長手方向への移動により、載置部材18がスタンド16に対して揺動し、該揺動に伴なって中間部18cが傾斜し、転び止め14上への乗り上げることを可能とする長さ寸法を有する。
【0051】
前出し装置40は、また、一対の商品の仕切り板30を備えるものとすることができる。
【0052】
前出し装置40の載置部材18を構成する前記線材は、図示の例に代わる他の例(図示せず)として、その両端部(後端部18b)が互いに他の一方に向けて折り曲げられ、また、両線条の相互間隔がスタンド16の直立板部16bの幅より大きいものとすることができる。この他の例に係る載置部材18は、その後端部18bがスタンド16の直立板部16bにその後方において係止し、また、中間部18cを構成する両線条がスタンドの直立板部16bの両側方を通過するものとすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10、40 前出し装置。
12 陳列棚
14 転び止め
16 スタンド
18 商品の載置部材
20、26 永久磁石
22 長孔
24 他の転び止め
30 仕切り板
42 支持部材
48 引掛け部
50 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11