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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】鍵およびその鍵を備えた宅配ボックス
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/00 20060101AFI20230428BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20230428BHJP
   A47G 29/124 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
E05B19/00 G
E05B65/00 D
A47G29/124
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019129503
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021014716
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】519254015
【氏名又は名称】有限会社ウェム
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直之
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193494(JP,A)
【文献】特開平08-199872(JP,A)
【文献】特開平09-189158(JP,A)
【文献】特開平09-049355(JP,A)
【文献】特開2017-217453(JP,A)
【文献】特開2003-213992(JP,A)
【文献】特開2015-094195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/00
47/00
49/00
65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と錠に挿入されるブレード部とを有する鍵本体と、前記鍵本体の位置を検出可能な位置検出手段と、前記位置検出手段に電力を供給する電源と、前記位置検出手段と前記電源とを電気的に接続する電力供給線と、を備え、
前記位置検出手段及び前記電源は、前記把持部内部に設けられ、
前記電力供給線は、前記ブレード部の内部で通じ、前記ブレード部と前記把持部とが切り離された際に断線することで、切り離しを検知する切り離し検知手段である鍵。
【請求項2】
前記把持部と前記ブレード部とは、一体形成されている、請求項1に記載の鍵。
【請求項3】
前記ブレード部は、同種の複数の錠を施解錠可能な形状に形成されている、請求項1または請求項2に記載の鍵。
【請求項4】
前記電力供給線は、中空に形成された前記ブレード部内部に配設され、全体が壁部に取り囲まれて設けられている、請求項1~3の何れかに記載の鍵。
【請求項5】
前記ブレード部は、前記鍵本体の厚さ方向に複数の凹部が形成されたディンプルキーである、請求項1~4の何れかに記載の鍵。
【請求項6】
前記鍵本体が前記錠に挿入されたことを検出可能な錠検出手段をさらに備える、請求項1~5の何れかに記載の鍵。
【請求項7】
荷物を収納可能な本体部と、前記荷物を出し入れする開口部と、前記開口部を開閉可能な開閉部と、把持部と錠に挿入されるブレード部とを有する物理鍵と前記物理鍵により前記開閉部を施解錠可能な錠と、前記荷物の受領確認が可能な受領確認手段と、を備え、
前記物理鍵は、宅配先が所持する子鍵と宅配業者が所持する親鍵とを有しており、
前記親鍵は、前記親鍵の位置を検出可能な位置検出手段と、前記位置検出手段に電力を供給する電源と、前記位置検出手段と前記電源とを電気的に接続する電力供給線と、を備え、
前記位置検出手段は、前記把持部内部に設けられ、
前記電力供給線は、前記ブレード部の内部で通じ、前記ブレード部と前記把持部とが切り離された際に断線することで、切り離しを検知する切り離し検知手段である宅配ボックス
【請求項8】
前記子鍵は、1つの特定の前記錠を施解錠可能に形成され、
前記親鍵は、前記子鍵で施解錠可能な複数の前記錠を施解錠可能に形成されている、請求項7に記載の宅配ボックス。
【請求項9】
前記親鍵は、請求項2~6に記載の何れかの鍵である、請求項7、8の何れか一方に記載の宅配ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報の検知および不正使用防止が可能な鍵およびその鍵を使用した宅配ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
宅配ボックスやコインロッカー、賃貸住宅等に用いられる鍵は、使用者が鍵をなくした場合等の非常時に、一括管理されている複数の錠を施解錠することが可能なマスターキーを有している。このマスターキーは管理者により管理されることが一般的であるが、マスターキーの紛失や流出、盗難等が起こった場合には、多大な被害をもたらす可能性がある。
【0003】
一方で、一軒家や小規模集合住宅等における宅配荷物の再配達率は近年急激に増加しており、その対策として家庭用の宅配ボックスの設置が普及している。しかしながら、家庭用の宅配ボックスは、一度荷物を収納すると、宅配業者は宅配ボックスを再度開けることができず再配達の必要があることが問題となっている。
【0004】
マスターキーの紛失や流出、盗難に対する対策として、マスターキーの現在位置を把握することが挙げられる。そこで、鍵自身に位置検出機能を設ける技術が提案されている。例えば、特許文献1には、事前に登録された複数個の鍵が所定エリア内のどの位置に存在しているかを常時監視し、個々の鍵の使用状態をリアルタイムで管理すると共に、個々の鍵で操作(開錠)可能な遊技機などの状態を管理することで、関連する遊技機及び鍵のセキュリティを向上させる鍵および鍵管理方法等の技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、鍵・財布・メガネ・カード等の携行品について、自宅内や自宅外において、所有者が所在位置を忘れたり置き忘れたり紛失した場合に、所在位置を容易に確認して、早期発見を図ることのできる探し物の所在位置確認システムに関する技術が記載されている。
特許文献1に記載の鍵および特許文献2に記載の携行品には、GPSが備えられており、現在位置を確認することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-193494号公報
【文献】特開2013-69028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載の鍵や特許文献2に記載の探し物の所在位置確認システムを備えた鍵では、GPSが取り付けられたヘッド部分と錠に差し込むのブレード部分を切り離すことにより、錠を解錠可能なブレード部はGPS情報の影響を受けないため、GPSの機能を維持した状態で自由に使うことが可能となり、不正使用される問題があった。
【0008】
また、上記の問題を有する鍵や探し物の所在位置確認システムを備えた鍵を宅配ボックスやコインロッカー等の鍵として適用する場合には、切り離されて自由に使うことができるブレード部分を不正に使用した盗難等が発生する可能性があった。
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものであり、現在位置を検知可能な鍵およびその鍵を備えた宅配ボックスを提供することを課題とする。
また、本発明は、不正使用を防止可能な鍵およびその鍵を備えた宅配ボックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明に係る鍵は、把持部と錠に挿入されるブレード部とを有する鍵本体と、前記鍵本体の位置を検出可能な位置検出手段と、前記位置検出手段に電力を供給可能な電力供給線と、を備え、前記位置検出手段は、前記把持部内部に設けられ、前記電力供給線は、前記ブレード部内部に配設される。
【0011】
本発明に係る鍵によれば、位置検出手段を設けているため、現在位置を特定することができる。また、鍵本体の内部に位置検出手段と電力供給線を有し、特に電力供給線がブレード部内部に設けられることにより、把持部とブレード部を切り離してブレード部のみを自由に使用したり、新しい鍵を複製したりする不正行為を防止することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記把持部と前記ブレード部とは、一体形成されている。
このように、把持部とブレード部を一体形成することにより、継ぎ目等ができず、把持部とブレード部が簡単に分離できないようにすることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記ブレード部は、同種の複数の錠を施解錠可能な形状に形成されている。
このように、同種の複数の錠に適用可能な形状に形成されることにより、マスターキーとして使用することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記ブレード部は、専用機以外での複製ができない形状に形成されている。
このように、専用機以外での複製ができない形状とすることにより、不正に複製されることを防止することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記ブレード部は、前記鍵本体の厚さ方向に複数の凹部が形成されたディンプルキーである。
このように、ブレード部をディンプルキーの形状に形成することにより、不正複製の防止やピッキングの防止をすることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記鍵本体が前記錠に挿入されたことを検出可能な錠検出手段をさらに備える。
このように、鍵が錠に挿入されたことを検出可能とする手段を備えることにより、位置検知手段のみでなく、鍵の解錠および施錠によっても不正使用の有無を検知することができる。位置検知手段と錠検出手段との両方を備えることにより、より正確な状況を把握することができる。
【0017】
また、本発明は宅配ボックスにも関する。すなわち、本発明にかかる宅配ボックスによれば、荷物を収納可能な本体部と、前記荷物を出し入れする開口部と、前記開口部を開閉可能な開閉部と、把持部と錠に挿入されるブレード部とを有する物理鍵と前記物理鍵により前記開閉部を施解錠可能な錠と、前記荷物の受領確認が可能な受領確認手段と、を備え、前記物理鍵は、宅配先が所持する子鍵と宅配業者が所持する親鍵とを有している。
【0018】
本発明にかかる宅配ボックスによれば、物理鍵として子鍵と親鍵との2種類を有するため、宅配業者は宅配ボックス内が荷物でいっぱいになるまで何回でも解錠と施錠を繰り返して荷物を宅配することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記子鍵は、1つの特定の前記錠を施解錠可能に形成され、前記親鍵は、前記子鍵で施解錠可能な複数の前記錠を施解錠可能に形成されている。
このように、子鍵は宅配先に備えてある宅配ボックスのみの解錠および施錠を可能とするため、不正防止が可能となる。また、親鍵は複数の錠を解錠および施錠することができるマスターキーの機能を有しているため、宅配業者は多くの鍵を持ち歩かずに複数の宅配ボックスに宅配することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記親鍵は、前記親鍵の位置を検出可能な位置検出手段と、前記位置検出手段に電力を供給可能な電力供給線と、を備え、前記位置検出手段は、前記把持部内部に設けられ、前記電力供給線は、前記ブレード部内部に配設される。
このように、親鍵が位置検出手段を有していることにより、親鍵の現在位置の把握が可能となり、宅配業者による鍵の不正使用を防止することができる。さらに、親鍵の把持部内部に位置検出手段を有し、ブレード部内部に電力供給線を配設することにより、親鍵の把持部とブレード部を切断してブレード部のみにより錠を不正に解錠することを防止することができる。すなわち、把持部とブレード部を切り離すと位置検出手段が機能しなくなり、それを検知することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記親鍵は、請求項1~6に記載の何れかの鍵である。
このように、親鍵が上位請求項で定義した鍵の何れかであることにより、親鍵の管理として位置検出が可能となり、さらに不正使用やブレード部分の改ざん等を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
開示した技術によれば、現在位置を検知可能であり、不正使用を防止可能な鍵およびその鍵を備えた宅配ボックスを提供することができる。
【0023】
他の課題、特徴及び利点は、図面及び特許請求の範囲とともに取り上げられる際に、以下に記載される発明を実施するための形態を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る鍵の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る鍵の内部を示した断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る宅配ボックスの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る宅配ボックスの受領確認手段を説明する説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る宅配ボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示した好ましい一実施形態に係る鍵およびその鍵を備えた宅配ボックスについて、図1図5を参照して詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、添付図面に示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0026】
[鍵]
以下、本発明の一実施形態に係る鍵について図1および図2を用いて詳細に説明する。
図1および図2は本実施形態に係る鍵の構成を説明する図である。図1は、鍵を斜め上から観察した状態を示し、図2は、中空に形成された鍵の内部を示す断面図である。
【0027】
本発明に係る鍵は、鍵本体1と、鍵本体1の位置を検出可能な位置検出手段2と、位置検出手段2に接続され、電力を供給可能な電力供給線3と、を備える。
鍵本体1は、把持部11と錠に差し込むブレード部12と鍵本体1の周辺に設けられる壁部13とを有し、内部に空間を有する中空に形成されている。
【0028】
把持部11は、使用者が持って錠の施錠や解錠を行う部分であり、少なくとも使用者の親指よりも大きく形成されることが好ましい。なお、把持部11は、内部に空間を有する中空に形成されていれば、形は自由に決めて良く、通常良く使われる鍵のデザインを採用することができる。略円形や、略長方形等を例示することができる。
【0029】
把持部11には、図1および図2に示すように、孔111を設けることもでき、この孔111にはキーホルダーなどを取り付けうることができる。また、中空に形成されることが好ましいが、孔111を設けることにより、孔111の周りにも壁部13が設けられるため、強度の面からも利点を有する。
【0030】
ブレード部12は、錠に差し込んで施錠および解錠を可能とする部分であり、鍵本体1の厚さ方向に複数の凹部121が設けられている。また、これらの凹部121は深さや大きさが異なるものが複数含まれている。すなわち、ディンプルキーであることが好ましい。両面がリバーシブルに使えるように形成することもでき、汎用性を高めることができる。なお、ブレード部12は、凹部121に限らず溝等を設けることも当然にできるが、複製が容易であることから上述のディンプルキーであることが好ましい。
【0031】
また、ブレード部12は簡単に複製できない形状に形成されていることが好ましく、さらに好ましくは、専用機以外で複製ができない形状に形成されることである。
したがって、合鍵を作る場合や、鍵を紛失した場合には、業者に頼む必要があるため、不正複製等のリスクを軽減することができる。
【0032】
また、ブレード部12は、同じグループに属する(同種の)複数の錠を施解錠可能に形成されていることが好ましい。すなわち、同種であるが錠内部のピンの配置等が異なる複数の錠を施解錠可能なマスターキーであることが好ましい。
上述のブレード部12の構造としては、例えば美和ロック株式会社のPRキーやLBキーや株式会社ゴールのGVキーのようなディンプルキーを例示することができる。
【0033】
ブレード部12も把持部11同様に中空に形成されており、外周には壁部13を有している。さらに、把持部11とブレード部12とは、一体形成されていることが好ましい。すなわち、内部の空間が連結して鍵本体1の内部として1つの空間を形成している。
【0034】
壁部13は、鍵本体1および孔111の外周部に設けられる。鍵本体1の内部を中空に形成するために設けられ、内部空間を広くするためには薄く形成することが好ましいが、強度面を考慮して壁部13の厚さが決められることが好ましい。
【0035】
壁部13の厚さと鍵本体1の内部空間の広さとはトレードオフの関係であるため、鍵本体1が簡単に破壊されない強度を有し、かつ内部空間を広くできる最適な厚さに形成される。
【0036】
位置検出手段2は、把持部11の内部に設けられる。本発明の一実施形態に係る位置検出手段2は、GPS21と、GPS21の電源22とを有し、現在位置情報を検出することができる。
検出された位置情報は、鍵の管理者に送られ、鍵の管理者により管理される。
【0037】
この位置検出手段2は、本実施形態においてはGPS21を用いた方法を例示しているが、例えばWi-Fi(登録商標)等を用いることもできる。なお、接続の安定性や位置検出の制度等を考慮すると、GPS21であることが好ましい。
【0038】
電源22は、GPS21を動かすための電力であり、乾電池、ボタン電池や充電池等を例示することができる。鍵本体1の内部に設けられるため、薄く小型であるものを選択することが好ましいが、電源22はGPS21を動作させることができる電源であれば様々なものを適用することができる。なお、一体形成された鍵本体1では電池交換が困難であるため充電池を備えていることが好ましく、さらに好ましくは一般的な携帯電話やスマートフォンと同様の充電機能を流用できることである。
【0039】
電力供給線3は、位置検出手段2に接続され、電力を供給する線であり、GPS21と電源22とを接続して回路を形成する。すなわち、一端がGPS21に接続され、他端が電源22に接続される。なお、GPS21と電源22との間も電線で接続される。
【0040】
この電力供給線3は、一端をGPS21に接続し、ブレード部12の内部を通って、他端を電源22に接続する。すなわち、電力供給線3は、位置検出手段2と接続した上で、ブレード部12の内部に形成された空間に配設される。
【0041】
電力供給線3は、位置検出手段2と電力供給線3とにより回路を形成し、位置検出手段2を作動させることができれば、種類や材質等に制限は設けていない。なお、シールドおよび被覆が施された一般的に使用される電気ケーブルを使用することが好ましく、ブレード部12の内部に配設されるため、細く形成されていることが好ましい。
【0042】
鍵本体1は、位置検出手段2の他にも鍵本体1の状態を検出することができる様々な機能を付加することができる。例えば、ブレード部12が錠に挿入されたことを検出可能な錠検出手段を設けることができる。この錠検出手段を導入する際には、ブレード部12にセンサを設け、電源22と接続する。なお、GPS21と並列に接続することが好ましい。
【0043】
錠検出手段を設けることにより、錠にブレード部12が挿入されたことが検知可能であるため、位置検出手段2で得られた位置情報と組み合わせて使用することにより、現在位置情報だけでなく、鍵がどのような状況であるのかも適宜把握することができる。すなわち、不正に錠を開けているかどうか等を検知することができる。
【0044】
また、錠検出手段の他にも複数の錠の中のどの錠に挿入されたかを検知できる錠特定手段や、ブレード部12の形状に対応していない錠に挿入したことを知らせるアラート手段等を備えることができる。これらの位置検出手段2や錠検出手段、錠特定手段、アラート手段等は、何れも鍵本体1の内部空間に設けることが可能な小型のセンサ等により実現することができる。したがって、鍵本体1内部に設けることができる手段であれば様々な手段を採用することができる。
【0045】
本発明の鍵は、後述するような宅配ボックス5に適用することに鑑みて発明者が位置検出可能であり、把持部11とブレード部12との切り離しによる不正使用を防止するために見出したものである。一方で、宅配ボックス5に限らず、コインロッカーや賃貸住宅等の一般に使用される鍵としても当然に使用することができる。
【0046】
以上のように、本発明の鍵によれば、位置検出手段2を備えていることにより、鍵本体1の現在位置を特定することができる。
【0047】
また、位置検出手段2とブレード部12内部に配設された電力供給線3により、把持部11とブレード部12とを切り離すことをGPS21の動作有無により検出することもできる。したがって、位置検出手段2のGPS21の電源の入、切、を検知することにより、切り離し検知手段として使用することができる。さらに、例えば、電力供給線3が断線したことを感知して警報をならし、管理者へ通報される手段等を備えることもできる。なお、この際にGPS21が最後に位置計測を行った位置情報が同時に通報されることが好ましい。
【0048】
また、内部に位置検出手段2等を設けるために鍵本体1を中空に形成しているが、外周部に壁部13を設けることにより、鍵本体1を破壊することができないように形成することができる。
【0049】
また、把持部11とブレード部12を内部空間が一体となるように一体形成することにより、より強度を高め、把持部11とブレード部12を切り離して不正使用することを防止することができる。
【0050】
また、ブレード部12を複数の凹部121を有するディンプルキーとしたり、専用機以外での複製ができないように形成したりすることにより、不正複製を防止することができる。
【0051】
また、簡単に複製ができないブレード部12の形状と位置検出手段2(切り離し検知手段)とが相俟って、不正使用の防止手段を有するマスターキーとして使用することができる。
【0052】
また、錠検出手段はセンサをブレード部12に設け、そのセンサを動作させるための電源22が把持部11に設けられているため、把持部11とブレード部12とを切り離してブレード部12を不正使用することを防止することができる。
[宅配ボックス]
【0053】
以下、本発明の一実施形態に係る宅配ボックスについて図3図5を用いて詳細に説明する。
図3は本発明の一実施形態に係る宅配ボックスの構成を説明する図であり、図4は宅配ボックスに設けられる後述する受領確認手段を説明する説明図を示し、図5は別の形状の宅配ボックスの例を示している。
【0054】
図3に示すように、本発明に係る宅配ボックス5は、内部に荷物を収納可能な本体部51と、荷物を出し入れする開口部52と、開口部52を開閉可能な開閉部53と、物理鍵54と、物理鍵54により開閉部53の施解錠が可能な錠55と、荷物の受領確認が可能な受領確認手段56と、を備える。
【0055】
なお、本発明の宅配ボックス5は、図3に示すような形に限らず上記の構成を有する様々な形状の宅配ボックス5とすることができる。例えば、図5に示すような形状の宅配ボックス5であっても良い。
【0056】
本体部51は、宅配業者により宅配された荷物を収納可能な大きさに形成されている。図3に示す宅配ボックス5では、略直方体に形成された本体部51を例示している。本体部51の形状は、荷物を収納可能であれば自由に選択することができる。
【0057】
開口部52は、本体部51の一部に設けられ、荷物を出し入れする部分である。図3に示す宅配ボックス5では、本体部51の一面全面を開口部52としている例を示している。開口部52の形状は、荷物の出し入れが可能に形成されていれば自由に選択することができる。
【0058】
開閉部53は、開口部52を開閉可能に設けられており、開口部52を完全に閉じることができるように形成される。図3に示す宅配ボックス5では、開口部52の一辺にヒンジが設けられ、扉のように開閉可能に形成された例を示しているが、開口部52を完全に閉じ、また開けることが可能であれば、蓋のように上下方向に開くもの等、自由に選択することができる。
【0059】
物理鍵54は、図1に示す上述した鍵の構成であることが好ましい。すなわち、把持部11とブレード部12とを備える。
ブレード部12は、錠55に差し込む部分であり、物理鍵54の厚さ方向に複数の凹部121が設けられ、凹部121は深さや大きさが異なる。すなわち、ディンプルキーであることが好ましく、さらに好ましくは両面がリバーシブルに使えるように形成することである。
【0060】
また、ブレード部12は通常の店等では複製できない形状に形成されていることが好ましく、さらに好ましくは、専用機のみで複製できる形状に形成されることである。したがって、不正複製等のリスクを軽減することができる。
【0061】
物理鍵54は、宅配ボックス5を所有している宅配先が所持、管理する子鍵541と、宅配業者が所持、管理する親鍵542と、を有している(図1参照)。
子鍵541は、宅配先が所有している宅配ボックス5に備えられている錠55のみの施解錠可能とする。
【0062】
すなわち、宅配ボックス5は常時施錠されており、宅配業者が親鍵542により解錠して荷物を宅配し、子鍵541を用いて宅配先は荷物を回収する。したがって、ごみなどが不法に捨てられることも防止することができる。
【0063】
また、子鍵541は位置検出手段2や電力供給線3等を設けていても、設けていなくても良い。設けている場合には、上述の鍵と同様に中空に形成され、設けられていない場合には、中実に形成し、強度を上げることが好ましい。なお、子鍵541にも把持部11内部に設けられる位置検出手段2とブレード部12内部に設けられる電力供給線3とを設けることにより、誤って紛失した場合や盗難等にあった場合にも位置を検知し、適切に対処することができる。
【0064】
親鍵542は、図2に示す鍵のように、把持部11内部に設けられる位置検出手段2とブレード部12内部に設けられる電力供給線3とを備える。位置検出手段2は、GPS21と電源22を有し、GPS21により位置を検知し、宅配業者がルート等を管理するために使うことができる。なお、GPS21の電源の入、切、を検知し、電源が切になっていた場合には把持部11とブレード部12とを切り離す不正をしたことを検知できる。
【0065】
さらに、錠55にブレード部12が挿入されたことを検出可能な錠検出手段を備えていても良く、錠検出手段を設けていることにより、位置検出手段2による位置検出と錠に挿入された回数等からより正確な宅配状況を把握することができる。また、より正確な状況を把握可能であることから、不正防止につながる。
【0066】
また、親鍵542のブレード部12は、同種の複数の錠55を施解錠可能に形成されていることが好ましい。すなわち、同種であるが錠55内部のピンの配置等が異なる複数の錠を施解錠可能なマスターキーであることが好ましい。
したがって、同種の錠55を有する宅配ボックス5が配置されている複数の宅配先において1つの親鍵542を使用することができる。
【0067】
すなわち、宅配業者は沢山の鍵を持つことなく、1つの鍵で複数の宅配ボックス5の施解錠をすることができるため、効率的に宅配ができる。
【0068】
なお、親鍵542がマスターキーとして使用できることによる不正使用のリスクは、内部に設けられた位置検出手段2(使い方によっては切り離し検知手段)により防止される。
【0069】
錠55は、物理鍵54(1つの子鍵541および対応する親鍵542)により開閉部53を施解錠可能に形成される。図3では、ディンプル鍵に対応するディンプルシリンダー錠を例示しているが、南京錠やディスクシリンダー錠等の様々な種類の錠を自由に選択することができる。
【0070】
図4は、本発明に係る宅配ボックス5の受領確認手段56を示している。受領確認手段56は、宅配業者が、宅配先が荷物を受領したことを証明可能とするものであり、宅配ボックス5の内部に印鑑を入れたり、本実施形態のように宅配先専用のQRコード(登録商標)561を設けて置いたりすることができる。
【0071】
本実施形態のようにQRコード561を受領確認手段56として使用する場合には、QRコード561により画像を宅配先に送る機能を設ける。すなわち、宅配業者は宅配ボックス5に荷物を収納した状態の写真を撮り、QRコード561により宅配先に画像を送る。画像を送ったことが確認されると、それが受領確認となる仕組みである。
【0072】
なお、このQRコード561による画像送信機能は、宅配ボックス5が荷物でいっぱいだった場合に、宅配ボックス5が荷物でいっぱいだったことによる証明ともなり得る。その際には、同時に再配達の通知を送る機能を有することが好ましい。
【0073】
QRコード561による受領確認手段56は、上述の画像を送る手段に限らず、宅配先に通知を送る機能や、宅配先から受領をもらえる機能等でも良く、QRコード561を用いて可能とする様々な方法を自由に選択することができる。
【0074】
以上のように、本発明に係る宅配ボックス5によれば、宅配業者が所持、管理する親鍵542により複数回の宅配であっても荷物を収納することができる。そのため、宅配業者の再配達への労力が減り、宅配先の再配達の時間制限等のストレスを軽減することができる。
また、平成27年8月に国土交通省物流審議官部門物流政策課により公開された資料「宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について」によると、宅配業者の再配達は、配達に係る走行距離の約25%に相当し、労働力に換算すると年間約9万人分の経済損失となるが、本明細書で示した宅配ボックス5により、これらの経済損失を軽減できる可能性が示された。
【0075】
また、親鍵542を宅配業者が所持、管理するリスクは、親鍵542が位置検出手段2を有することにより、現在位置の特定ができるため、回避することができる。すなわち、所定のルートを変えて不正に親鍵542を使用して荷物を盗む等の行為を防止することができる。
【0076】
また、位置検出手段2の電源の入、切を検知することにより、位置検出手段2の改ざん等の不正を防止することができる。なお、把持部11に位置検出手段2が設けられ、電力供給線3がブレード部12に配設されている場合には、把持部11とブレード部12とを切り離して、ブレード部12を使用する不正を防止することができる。
【0077】
また、各宅配先が管理する子鍵541が、その宅配先が所有する宅配ボックス5の錠のみを施解錠可能とすることにより、子鍵541による不正な荷物の盗難も防止することができる。
【0078】
また、宅配ボックス5の機能として受領確認手段56を採用し、それがQRコード561であることから、宅配ボックス5自体への電力供給は不要であり、自由な場所に設置可能であり、簡単に導入することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 鍵本体
2 位置検出手段
3 電力供給線
5 宅配ボックス
11 把持部
12 ブレード部
51 本体部
52 開口部
53 開閉部
54 物理鍵
55 錠
56 受領確認手段
541 子鍵
542 親鍵
図1
図2
図3
図4
図5