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特許7270257受電装置、実験動物生体情報取得装置及び実験動物生体情報取得システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】受電装置、実験動物生体情報取得装置及び実験動物生体情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20230428BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20230428BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20230428BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20230428BHJP
【FI】
H02J50/10
A01K29/00
H01F38/14
H02J50/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020070108
(22)【出願日】2020-04-08
(62)【分割の表示】P 2019020009の分割
【原出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020127355
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018109869
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598084390
【氏名又は名称】光電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文博
(72)【発明者】
【氏名】古屋 善紀
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 潤
(72)【発明者】
【氏名】曽根 竹彦
(72)【発明者】
【氏名】湯山 昭房
(72)【発明者】
【氏名】相良 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004628(JP,A)
【文献】特開2013-038967(JP,A)
【文献】特開2005-052637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
H01F 38/14
H01F 38/18
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置の1次側コイル部から非接触で伝送された電力を受電する2次側コイル部を有する受電装置であり、
前記2次側コイル部は、長手方向に垂直な断面形状が円形又は多角形の中実棒状の磁性体コアを有し、
前記磁性体コアの周面に、互いに重なり合わず、辺同士を近接させた3個のスパイラルコイルで構成される環状コイル列が1個設けられており、
前記磁性体コアの比透磁率が1000以上であり、前記環状コイルの外形は、前記磁性体コアのコア軸方向において、前記磁性体コアの外形端部より内側に離して構成されている受電装置。
【請求項2】
送電装置の1次側コイル部から非接触で伝送された電力を受電する2次側コイル部を有する受電装置であり、
前記2次側コイル部は、長手方向に垂直な断面形状が円形又は多角形の中空筒状の磁性体コアを有し、
前記磁性体コアの周面に、互いに重なり合わず、辺同士を近接させた3個のスパイラルコイルで構成される環状コイル列が1個設けられており、
前記磁性体コアの比透磁率が300以下であり、前記環状コイルの外形は、前記磁性体コアのコア軸方向において、前記磁性体コアの外形端部位置まで構成されている受電装置。
【請求項3】
前記磁性体コアは多角形であり、前記辺は、前記多角形の頂点に位置する請求項1又は2記載の受電装置。
【請求項4】
前記磁性体コアは多角形であり、前記辺は、前記多角形の頂点以外の位置に位置する請求項1又は2記載の受電装置。
【請求項5】
前記磁性体コアは多角形であり、前記スパイラルコイルは、前記多角形の角数より少ない数配置されている請求項1ないし4のいずれか1項記載の受電装置。
【請求項6】
前記磁性体コアは、磁化容易軸を前記磁性体コア外面にほぼ垂直に配向させた材料からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の受電装置。
【請求項7】
前記受電装置からの出力を整流平滑後に、並列加算、直列加算、もしくは直並列加算する加算回路を有する請求項1ないし6のいずれか1項記載の受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、実験動物生体情報取得装置及び実験動物生体情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品開発等では、その効果を評価するために、飼育ケージ内で飼育されている多数のマウスなどの小動物を使った実験が日常的に実施されている。実験を実施する際、小動物には体温や活動量、心拍、血圧等の生体情報を経時的に取得する為の生体情報取得装置が装着される。生体情報取得装置は、小動物に外付けする方法と生体に埋め込む方法がとられているが、より正確な値を知るために、埋め込む方法が多くなっている。
埋め込む方法での重要なポイントは、生体情報取得装置への電力供給である。有線方式では小動物の動作が制限されるため、有線方式によらない何らかの電力供給方式が必要とされる。
【0003】
生体情報を取得するに際しては、多数の実験動物を用いて、長期間にわたり、用途によっては計測間隔をあけずに(例えば数秒間隔)、多くの生体情報を取得することが望まれる。また、信頼性のある実験データを得るためには、実験動物にストレスを与えないようにする必要がある。そのためには、生体情報取得装置の形状は生体親和性のある形状であり、生体情報取得装置の寸法重量は小型軽量(一般的に実験動物の体重の1/10以下といわれる)であることが望まれる。
さらに、その生体情報をリアルタイムに取得したい、その際の動作や姿勢等の観察を同時に行いたいというニーズがある。実験動物は飼育ケージ内に放たれ、自由に立ち上がったり歩き回ったりするので、どこに、どんな姿勢で実験動物がいようと、途切れることなく、生体情報を継続的に取得でき、実験動物を観察ができることが望まれる。
また、実験動物を多量に使用するため、一つの生体情報取得装置の消費電力(発熱)が少なく、出来るだけ安価であることが望まれる。
【0004】
従来の埋め込み型の実験動物生体情報取得装置のうちの有線方式によらない電力供給方式によるものとして、例えば非特許文献1で開示される製品がある。この製品は一次電池を内蔵しており、一つの飼育ケージで複数の実験動物の生体情報の取得ができる。
【0005】
他の有線によらない電力供給方式による従来の実験動物生体情報取得装置として、例えば非特許文献2で開示される製品がある。この製品は、非接触電力伝送技術を用いて受電側に給電しているので、生体情報をリアルタイムに長期間にわたって取得して送信することができる。
【0006】
しかし、非接触電力伝送技術を用いる場合、実験動物の姿勢や位置により電磁誘導結合が変化して給電を行うことが出来なくなることがある。この課題の解決に関する先行技術として、例えば特許文献1がある。
特許文献1には、植え込み型医療器具システムにおける非接触電力伝送技術が開示されており、1次側コイルにおいて2軸直交のデュアルコイルを用いた90度位相外れ駆動による回転磁界の生成により送受電間の結合による給電量の極端な低下の抑制を行うことが開示されている。
【0007】
特許文献2には、体内滞留型医療機器が体内でどのような向きであってもその機器に非接触にて効率的にエネルギーを供給できるように、それぞれ異なる方向に磁界を発生するように設置される複数の1次側コイル(ヘルムホルツ型コイル)が開示されている。
【0008】
特許文献3には、送電コイルと受電コイルの位置関係によらず高効率での電力伝送を実現するために、1次側コイルと2次側コイルの少なくとも一方を、球形状に組みつけられた複数のヘリカルコイルから構成することで、1次側と2次側コイル間の位置ズレの影響を軽減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-536532号公報
【文献】特開2004-159456号公報
【文献】特開2013-005591号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】DATA SCIENCES INTERNATIONAL 社ホームページ
【文献】MILLAR社ホームページ User Manual for Millar Mouse Telemetry Systems
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1に記載の先行技術では、小型実験動物に埋め込むため、小型にしてかつ軽量にする必要があり、電池容量が小さい。そのためデータ取得頻度を高くすることやデータ量を多くすることが困難、データ通信間隔を短くすることが困難、リアルタイムに送信しようとすると長期間の動作が出来ない、という課題がある。また、1次電池を内蔵するために、装置の形状が制限され生体親和性のある形状、特に丸型形状とするのが困難であるという課題がある。
非特許文献2に記載の先行技術では、飼育用ケージあたり1~2匹の実験動物の生体情報の取得しか出来ない。そのため多数の送電装置が必要となり、コストや消費電力(発熱)で課題がある。受電側の重量が重いため(2.5g)小型マウスのような軽量な小動物の実験に用いることが出来ない、という課題がある。更に、本製品のユーザーズマニュアル(User Manual for Millar Mouse Telemetry Systems)によれば飼育ケージ内の高いところ、具体的にはケージの底面から高さ約70mmでは実験動物の姿勢等により給電出来なくなりデータ送受信ができなくなるという課題がある。
特許文献1に開示された先行技術では、送信側の駆動回路が複数必要であるため、送電電力が2倍必要、よって発熱も多い、送電側のコストが高い、2軸による回転磁場では、任意の姿勢に対する効果が不十分という課題がある。
特許文献2に開示された先行技術では、送電側の駆動回路が複数必要であるため、送電電力が3倍、よって発熱もより多い、送電側のコストが高い、また観察対象である受電側を囲み覆ってしまうため、実験動物を観察することが困難という課題がある。
特許文献3に開示された先行技術では、送受電ヘリカルコイルペアを常時監視調整する必要があり、送受電ともに複雑かつ高コストとなる、という課題がある。また、受電側にヘリカルコイルを用いると、受電側の体積が大きくなり小型軽量化が困難になる、という課題がある。
【0012】
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、送電側は構成の簡単なスパイラルコイルまたはソレノイドコイルなどで1次側コイルを構成できる。受電側は簡単な構成で、作りやすく安価であり、一つの飼育ケージ内の複数匹の実験動物への埋め込みに際して、生体親和性の高い丸型断面形状に適した受電装置の回転による給電量の低下が発生しない、すなわち実験動物の向きや位置によらず継続的に給電でき、飼育ケージを送電側が覆うことが無く外部から実験動物の行動を観察可能である、受電装置、埋め込み型実験動物生体情報取得装置および実験動物生体情報取得システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、送電装置の1次側コイル部から非接触で伝送された電力を受電する2次側コイル部を有する受電装置であり、
前記2次側コイル部は、長手方向に垂直な断面形状が円形又は多角形の中実棒状の磁性体コアを有し、
前記磁性体コアの周面に、互いに重なり合わず、辺同士を近接させた3個のスパイラルコイルで構成される環状コイル列が1個設けられており、
前記磁性体コアの比透磁率が1000以上であり、前記環状コイルの外形は、前記磁性体コアのコア軸方向において、前記磁性体コアの外形端部より内側に離して構成されている受電装置である。
請求項2に係る発明は、送電装置の1次側コイル部から非接触で伝送された電力を受電する2次側コイル部を有する受電装置であり、
前記2次側コイル部は、長手方向に垂直な断面形状が円形又は多角形の中空筒状の磁性体コアを有し、
前記磁性体コアの周面に、互いに重なり合わず、辺同士を近接させた3個のスパイラルコイルで構成される環状コイル列が1個設けられており、
前記磁性体コアの比透磁率が300以下であり、前記環状コイルの外形は、前記磁性体コアのコア軸方向において、前記磁性体コアの外形端部位置まで構成されている受電装置である。
請求項3に係る発明は、前記磁性体コアは多角形であり、前記辺は、前記多角形の頂点に位置する請求項1又は2記載の受電装置である。
請求項4に係る発明は、前記磁性体コアは多角形であり、前記辺は、前記多角形の頂点以外の位置に位置する請求項1又は2記載の受電装置である。
請求項5に係る発明は、前記磁性体コアは多角形であり、前記スパイラルコイルは、前記多角形の角数より少ない数配置されている請求項1ないし4のいずれか1項記載の受電装置である。
請求項6に係る発明は、前記磁性体コアは、磁化容易軸を前記磁性体コア外面にほぼ垂直に配向させた材料からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の受電装置である。
請求項7に係る発明は、前記受電装置からの出力を整流平滑後に、並列加算、直列加算、もしくは直並列加算する加算回路を有する請求項1ないし6のいずれか1項記載の受電装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁性体コアの軸の周りの回転に関して、給電量の大きな低下の発生がおさえられる。それゆえ、実験動物生体情報取得装置を生体親和性の良い断面丸型形状とできる効果がある。
【0015】
スパイラルコイルを略四角形とし、辺同士を隣接させて配置した場合には、隙間なく配置が行われ、誘導起電力誘起が効果的に行われる。その結果、より効果的に受電を行うことが可能となる。
【0016】
磁性体コアの軸方向に、環状コイル列を複数設けることにより、磁性体コアの軸周りの回転、および磁性体コア軸の立ち上がり変動に関して、給電量の大きな低下の発生がより一層少なくなり無くなり、位置や姿勢に関係なく給電できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の一形態に係わる、実験動物生体情報取得システムの全体構成を説明する概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係わる、1次側コイルの発生する磁場を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係わる、2次側コイル部を構成する磁性体コア近傍の磁場分布を示す図である。
図4】本発明の一つ実施形態に係わる、2次側コイル部の構成図である。
図5】本発明の一つ実施形態に係わる、2次側コイル部の構成図である。
図6】本発明の他の実施形態に係わる、2次側コイル部の構成図である。
図7】本発明の実施形態に係わる、実験動物生体情報取得システムの全体構成の回路ブロック図である。
図8】本発明の実施形態に係わる、加算回路の回路構成図である。
図9】本発明の実施形態に係わる、電力消費装置への入力特性を表す図である。
図10】本発明の実施形態に係わる、カプセルの構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の一形態に係わる実験動物生体情報取得システム01の概略構成図である。この実験動物生体情報取得システム01は、実験動物生体情報取得装置12と、実験動物生体情報取得装置12が埋め込まれた実験動物が収納される透明ケージ14と、実験動物生体情報取得装置12に電力を伝送する送電装置11と、送電装置11を内蔵し、透明ケージ14を載置する載置台15とを有する。
この実験動物生体情報取得システム01は、さらに図7に示すように送電装置11から有線方式または無線方式で送信される情報を処理するサーバー13を有している。サーバー13は、情報を記録、演算、処理、表示するとともに、送電装置の制御も行う。
送電装置11は、非接触電力伝送に用いる1次側コイル(図2の21)と、1次側コイルを駆動するインバータ回路(図示せず)と、実験動物生体情報取得装置12を制御する制御信号の送受信回路(図示せず)と、実験動物生体情報取得装置12からのデータの受信を行うデータ受信回路(図示せず)を有する。送電装置11は、非接触電力伝送にて1次側コイル21から2次側コイル部22を有する実験動物生体情報取得装置12に電力を供給する。
【0019】
図2は、本発明の実施の一形態に係り、1次側コイル21を有する送電装置11が発生する磁場分布23の一例である。
1次側コイル21は、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、金などの電気導電性のある金属及びその合金の単線やリッツ線もしくは印刷法やエッチング法で形成された平面状のスパイラルコイルやソレノイドコイル等のコイルと、必要に応じて設けられる共振回路で構成されている。
送電装置の発生する磁場の向きを、z方向を上方向、x方向を手前方向、y方向を右方向とする。1次側コイル21が前記のような公知の簡単なコイルで構成されていると、その発生する磁場は飼育ケージ内の場所で、磁場の向きが変化し、飼育ケージ14内の場所毎に、特定の向きとなる。図2の実施の一形態では、1次側コイルの中央部など大部分がz方向を向いているが、位置によっては、x方向やy方向の磁場の向きとなる。その為、2次側コイル部22も1次側コイルと同様のスパイラルコイルやソレノイドコイル等の簡単な構成のコイルであると、実験動物生体情報取得装置12が任意の位置や向きであるときに、1次側コイル21と2次側コイル部22との誘導結合状態が大きく変化し、電力伝送量も大きく変化する。
【0020】
図3は、図2における中央付近に2次側コイル部22を構成する磁性体コア31がある場合の磁性体コア31近傍の磁界分布の概略図である。
図3(a)~(d)では磁性体コア31が円筒型の場合を例示する。磁性体コア31の向き(本形態においては実験動物生体情報取得装置の向き)により磁界分布が大きく変わることが理解される。
図3(a)は、磁性体コア31の軸32が1次側コイル21による磁場23と垂直にあるときの磁性体コア31の軸32に垂直な断面での磁界分布を示す概略図である。断面の上半分33と下半分34で磁性体コアに入り込む磁界の向きが反対となることが理解される。
図3(b)は、磁性体コア31の軸32が1次側コイル21による磁場23と平行を向いている場合の磁性体コア31近傍磁界分布を示す概略図である。断面の上半分35と下半分36で磁性体コア31に入り込む磁界の向きが反対となることが理解される。
図3(c)、(d)は、磁性体コア31の軸32そのものが上下方向へ回転する場合の磁性体コア31近傍の磁界分布を示す概略図である。磁性体コア31に入り込む磁界の向きが徐々に変化することが理解される。
図3(e)は、磁性体コア31の断面形状が三角形の場合と四角形の場合における磁界分布を、配置角度を変えた場合とともに示している。
【0021】
図4図6に本発明の実施の形態に係る受電装置の2次側コイル部の例を示す。
2次側コイル部22は、長手方向に垂直な断面形状が円形又は多角形の磁性体コア31と、導体を巻回して構成された複数のスパイラルコイル40a、40b、・、・を有し、複数のスパイラルコイル40a、40b、・、・は、相互に近接させて、前記磁性体コア31の周面全体を覆うにして、周方向に並べて配置されている。
2次側コイル部を構成するスパイラルコイルあるいはソレノイドコイルの各コイルは、導体を巻回して構成することだけではなくフレキシブルコイルを用いて構成することが好ましい。フレキシブルコイルは、可とう性のあるフィルム等の下地材の上に、印刷法やエッチング法で導体を薄膜状に形成してコイルとしたものである。その場合には複数のコイルを同一のフィルム等に配置や特性のバラツキを少なく形成できる。また片面もしくは両面に形成したフィルム状のコイルを積層し接続することで、特性値の調整が可能となるとともに、コイルを撓ませることが容易に出来る。各積層フィルムコイルは接着剤や粘着剤で合わせる事で、各積層フィルムコイルの位置ズレを防ぐことが出来る。

フレキシブルコイルを、受電装置もしくは生体情報取得装置・システムに使用した場合、受電装置・生体情報取得装置においては、特性の調整が容易、特性再現性良好、生産性良好、撓ませるのが容易となり、性能バラツキが無くなる。より詳細に述べる。
(1)環状コイル列を構成する各々のスパイラルコイルの特性を制御(そろえる)必要があるが、巻回コイルでは特性の制御(そろえる)が困難である。フレキシブルコイルであれば特性を揃えることが容易であり、また、コイル毎に異なる特性に制御することが容易である。また、品質バラツキなく生産性がよい。
(2)巻回コイルでは、コイルを撓ませる際にバラツキが生じやすいが、フレキシブルコイルであれば撓ませることが容易であり、バラツキが生じない。
(3)例えば4層フレキシブルコイルでは撓ませることが困難なので両面フレキシブルコイル2枚もしくは両面フレキシブルコイルと片面フレキシブルコイル各1枚接着材、粘着剤で貼りあわせれば撓ませるのが容易で撓ませたときの特性バラツキを抑えられる
(4)受電回路基板への取り付けが容易であり、例えばハンダペースト、異方性導電フィルムや(Au金-Au金の)金属間結合等を利用して熱圧着等で接合できる。
(5)フレキシブルコイル及び受電回路から電力消費装置までの各回路を一体のフレキシブル基板で構成でき、生産性が極めて高い
生体情報取得システムについては、次のような利点がある。
(1)複数の送電装置に任意の受電装置を組み合わせる際に、上記受電装置の特徴から調整無しでシステム化できる。すなわち、いずれの受電装置もいずれの送伝装置に無調整で使用できる。
(2)受電回路基板への取り付けが容易であり、例えばハンダペースト、異方性導電フィルムや(Au金-Au金の)金属間結合等を利用して熱圧着等で接合できる。
(3)フレキシブルコイル及び受電回路から電力消費装置までの各回路を一体のフレキシブル基板で構成でき、生産性が極めて高い。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づきより詳細に説明する。
図4(a)に示す2次側コイル部22は、長手方向に垂直な断面形状が円形の磁性体コア31と、外形が略四角形となるように導体を巻回して構成された複数のスパイラルコイル40a、40bを有し、複数のスパイラルコイル40a、40bは、それぞれその辺同士(40a1と40b1)、(40a2と40b2)を近接させて、磁性体コア31の周面全体を覆うようにして、磁性体コア31の周方向に環状に(リングを形成するように)配置されている。
図4(a)は、2個のスパイラルコイル40a、40bを用いた例を示している。
スパイラルコイル40a、40bはそれぞれ略四角形状をなすように形成されている。
巻線を巻回して外形が略四角形状をなすように形成された平面状のスパイラルコイルに、撓みを与えて、磁性体コア31の外周面に沿った形状とする。図4(a)に示す磁性体コア31の断面形状は円形であるためその半径に対応した曲率半径となる撓みをスパイラルコイルに与える。外周面に沿った形状とされたスパイラルコイル40a、40bは、それぞれの辺同士を近接させて環状に並べて磁性体コアの外周に配置されている。スパイラルコイル40aの一辺40a1とスパイラルコイル40bの一辺40b1と近接させるとともに、スパイラルコイル40aの他の一辺40a2とスパイラルコイル40bの他の一辺40b2とを隣接配置する。これにより、スパイラルコイル40a、40bは磁性体コア31の長手方向から見た場合、リング状配列となる。本明細書においてはこれを環状コイル列と称する。
磁性体コア31を覆っている部分が誘導起電力に寄与し、覆わない部分は寄与しない。隙間無く覆うように複数のスパイラルコイルを配置することになり、外形が円状のスパイラルコイルを配置した場合に比べて誘導起電力を大きくすることが可能となる。
本構成で図3(a)の磁界分布を考えると、極性はコイルを巻く向きと磁場の向きに依存するが2つのコイルは共に誘導起電力を生じる。2つのコイルを磁性体コアの軸32の周りに回転しても電力伝送出来ない状態は、2つのコイルの各々の辺の位置が上下方向になった場合のみであるため、給電量の極端な低下の発生が抑えられる。
図3(b)に示す磁界分布を考えると、断面の上半分35と下半分36で磁性体コア31に入り込む磁界の向きが反対となるため誘導起電力が相殺して出力されないことが理解される。しかし、本構成では、磁性体コア31の軸32そのものの回転により図3(a)から(c)を経て(d)、さらに(b)に示す磁界分布に移っていく過程において、誘導起電力は、磁性体コア31近傍の磁界の向きと磁性体コア31の軸32のなす角度が20度程度になるまでは発生することが理解される。
【0022】
スパイラルコイルを3つ用いて環状コイル列を形成した例を図4(b)、図5(a)に基づいて説明する。なお、図5(a)は、図4(b)における磁性体コア31の長手方向垂直断面図である。
図4(b)は、3個のスパイラルコイル40a、40b、40cを用いた例を示している。
スパイラルコイル40a、40b、40cはそれぞれ略四角形状をなすように形成されている。
略四角形状をなすように巻線を巻回して形成された平面状のスパイラルコイルに、撓みを与えて、磁性体コア31の外周面に沿った形状とする。図4(b)に示す磁性体コア31の断面形状は円形であるためその半径に対応した曲率半径となる撓みをスパイラルコイルに与える。外周面に沿った形状とされたスパイラルコイル40a、40b、40cは、それぞれの辺同士を近接させて環状に並べて磁性体コアの外周に配置されている。スパイラルコイル40aの一辺40a1をスパイラルコイル40bの一辺40b1と近接させ、スパイラルコイル40bの他の一辺40b2をスパイラルコイル40cの一辺40c1と近接させ、さらに、スパイラルコイル40cの他の一辺40c2をスパイラルコイル40aの他の一辺と近接させて配置する。これにより、スパイラルコイル40a、40b、40cは磁性体コア31の長手方向から見た場合、リング状配列すなわち環状コイル列となる。
本構成で図3(a)の磁界分布を考えると、極性はコイルを巻く向きと磁場の向きに依存するが3つのコイルは共に誘導起電力を生じる。3つのコイルを磁性体コアの軸32の周りに回転しても電力伝送出来ない状態は3つのコイルの位置が左右に対称にならなければ発生しないので、給電量の極端な低下の発生が抑えられる。
図3(b)に示す磁界分布を考えると、断面の上半分35と下半分36で磁性体コア31に入り込む磁界の向きが反対となるため誘導起電力が相殺して出力されないことが理解される。しかし、本構成では、磁性体コア31の軸32そのものの回転により図3(a)から(c)を経て(d)、さらに(b)に示す磁界分布に移っていく過程において、誘導起電力は、磁性体コア31近傍の磁界の向きと磁性体コア31の軸32のなす角度が20度程度になるまでは発生することが理解される。
なお、図4(a)、図4(b)に示す例では、複数のスパイラルコイルの寸法、形状は同じ場合を示したが必ずしも同じにする必要はなく、異なった寸法、形状としてもよい。
【0023】
図5は、他の形態に係る2次側コイル部22の構成概略図である。複数の種々の構成のコイルと、種々の磁性体コア31の構成を例示する。
図5(a)では、図4(b)に説明した通り、磁性体コア31の断面形状は円形であり、3つのスパイラルコイル40a、40b、40cは磁性体コア31の周面に沿わせて湾曲させてある。
図5(b)では、スパイラルコイルを4つ用いており、スパイラルコイル40a、40b、40c、40dも磁性体コア31の周面に沿わせてある。
本構成で図3(e)の磁界分布を考えると、少なくとも2つ以上のコイルが誘導起電力を生じるので、給電量の大きな低下は無くなる。
【0024】
更に、図5に例示する2次側コイル部22を構成する2つ以上の各コイルにおいて、図3(b)に示す磁界分布においては、断面の上半分35と下半分36で磁性体コア31に入り込む磁界の向きが反対となるため誘導起電力が相殺して出力されないことが理解される。しかし、磁性体コアの軸32そのものの回転により図3(a)から(c)を経て(d)、さらに(b)に示す磁界分布に移っていく過程において、誘導起電力は、磁性体個コア近傍の磁界の向きと磁性体コアの軸32のなす角度が20度程度になるまでは発生することが理解される。
【0025】
以上例示したように、2個のスパイラルコイル40を、磁性体コア31の周囲に環状に配置して2次側コイル部22を構成することで、2次側コイル部22を磁性体コアの軸32の周りに回転しても給電量の極端な低下が抑えられる。そのため、実験動物生体情報取得装置12を構成した場合、磁性体コアの軸32の周りの回転が可能になり、生体親和性のよい断面丸型形状とすることが出来る。
また、3個以上のスパイラルコイルまたはソレノイドコイル41を、磁性体コアの周囲い環状に配置して2次側コイル部22を構成することで、2次側コイル部22を磁性体コアの軸32の周りに回転しても給電量の大きな低下は無くなる。そのため、実験動物生体情報取得装置12を構成した場合、コア軸周りの回転が可能になり、生体親和性のよい断面丸型形状とすることが出来る。磁性体コア31の形状は、図3に例示した構成には制限されない。例えば円柱型、円筒型、三角柱形、三角筒形、四角柱形、四角筒形、多角柱形多角筒形等が可能であるが、それらに限定されるものではない。
またコイルの形状は、図5に例示したようにコアの外面に沿うように平面状に構成することや、断面が円形の一部を構成するように湾曲させて構成することができる。
またコイルを構成する導体部が重なるように構成しても良い。しかし、2次側コイル部22の同一体積での効果(コイルへの鎖交磁束)を考えると、磁性体コア31の外面に沿うように構成とするのが最も体積効率が高い(図5(a)~(e))。磁性体コア31の断面が多角形の場合、その辺数と同じ数のスパイラルコイルを用いればスパイラルコイルをベンドする手間は不要となる(図5(d)、(e))。ただ、この場合、スパイラルコイル同士が隣接する辺の部分が多角形の頂点の位置と一致するため、磁性体コアの位置、角度によってはその部分からの磁束を取込切れない場合が生ずる。一方、多角形の場合であっても、図5(c)に示すように、スパイラルコイルをベンドすれば、スパイラルコイル同士の隣接する辺を多角形の頂角がある位置からずらして配置することが可能となる。
また、磁性体コア31はフェライトに代表される軟磁性材料を用いて、成形や切削等の方法で柱状や筒状に構成する、磁性シートを用いて筒状に構成することができる。また磁性体コア31を磁気異方性のある材料、例えば扁平磁性微粒子を用いて構成し、磁化容易軸を磁性体コア外面にほぼ垂直に配向させた材料を用いると、図3に例示した磁場分布を改善する効果(磁束が磁性体コア外面に垂直に近くなり、コイルへの鎖交磁束が増える)があり、より誘導起電力を大きく生じさせることができる。
磁性体コアを構成する材料の透磁率には特に制限は無いが、コア材の透磁率が高いほど、反磁場の影響で、コアの端部はそれ以外の場所と異なる磁場分布となるため、2次側コイル部を構成するコイルの位置の適切な構成が必要となる。透磁率が、例えば1000以上のように大きい場合にはコイル外形をコア材の外形端部から内側に離したほうが性能はよく、例えば300以下のように小さい場合には、コイル外形をコア材の端部位置まで構成したほうが性能は良い。誘導起電力の源であるコイル有効開口部への鎖交磁束の面では、透磁率を高くした方が性能は良い。
【0026】
つぎに、図6(a)に、磁性体コア31の周面上に複数(本例では2個)の環状コイル列51A、51Bを用いて、2次側コイル部22を構成した実施の形態を例示する。
この構成とすることで、前記した磁性体コアの軸32の周りの回転に加えて、磁性体コアの軸32そのものの回転による給電量の大きな低下を無くすことができる。
図6(a)に、磁性体コア31の周面に2個のスパイラルコイル40a、40bで構成した環状コイル列51Aと、2個の
スパイラルコイル41aと41bで構成した環状コイル列51Bを用いて、2次側コイル部22を構成している。本例に示すスパイラルコイル40a、40b、41a、41bはともに、略四角形状をなしており、磁性体コア31の外周面に対応するように湾曲させてある。スパイラルコイル40aの一辺とスパイラルコイル40bの一辺を近接させるとともに、スパイラルコイル40aの他の対向する一辺とスパイラルコイル40bの他の対向する一辺とを近接させることにより、スパイラルコイル40aとスパイラルコイル40bとでリング状の環状コイル列51Aを構成して磁性体コア31の半分を覆っている。
同様に、スパイラルコイル41aの一辺とスパイラルコイル41bの一辺を近接させるとともに、スパイラルコイル41aの他の対向する一辺とスパイラルコイル41bの他の対向する一辺とを近接させることにより、スパイラルコイル41aとスパイラルコイル41bとでリング状の環状コイル列51Bを構成して磁性体コア31の残り半分を覆っている。
なお、本例では、スパイラルコイル40a、40bの端子は図面における左側に設け、スパイラルコイル41a、41bの端子は図面における右側に設けてある。端子の配置は適宜決めればよい。
本構成で図3(a)~(d)に示す磁界分布を考えと、どの状態においても誘導起電力が生じ、磁性体コアの軸32そのものの回転に関して給電量の大きな低下の発生しないことが理解される。前記の図4(a)、(b)のように1組のコイルで構成した場合には、図3(a)、(c)、(d)の磁界には誘導起電力が生じるが、図3(b)の磁界に関してだけは、誘導起電力が生じないことが理解される。
さらなる効果として、図4(a)の構成において、磁性体コアの軸32の周りの回転に関して、2つのコイルの各々の辺の位置が上下方向の場合には給電量の大きな低下が発生するが、図6(a)の構成においては、環状コイル列51A,51Bのコイルを全く同一の位置関係に配置しない限り、いずれかのコイルは誘導起電力を生じるという効果をあわせもつ。磁性体コアの軸32から各コイルの外形を見込んだ角度、2個のコイルで構成した場合には約180度、の少なくとも1/4の角度分すなわち45度以上、望ましくは1/2の角度分すなわち90度だけ2組の環状コイル列51A,51Bの角度をずらして構成する。このような角度関係の2組のコイルで構成すると、磁性体コア軸周りの回転に関して誘導起電力の変動を最小にできる。
【0027】
本発明の実施の他の形態を図6(b)に例示する。
図6(b)に、磁性体コア31の周面に配置した3個のスパイラルコイル40a、40b、40cで構成した環状コイル列51Aと、磁性体コア31の周面に配置した別の3個のスパイラルコイル41a、41b、41cで構成した環状コイル列51Bの2組の環状コイル列51A,51Bで、2次側コイル部22を構成した実施形態を例示する。
この構成も前記の図6(a)と同様に、磁性体コアの軸32そのものの回転に関して、給電量の低下が少ないことが理解される。本構成で図3(a)の磁界分布を考えると、給電量の低下が生じることは少ないが、磁性体コアの軸32から各コイルの外形を見込んだ角度、3個のコイルで構成した場合には約120度、の少なくとも1/4の角度分すなわち30度以上、望ましくは1/2の角度分すなわち60度だけ2組の環状コイル列51A,51Bの角度をずらして構成する。
このような2組のコイルで構成すると、磁性体コアの軸32の周りの回転に関して誘導起電力の変動を最小にできる。本実施の形態で例示するように、種々の形態の構成が可能である。なおコイルの構成は、3個のコイルの構成に限定されるものではなく、3個以上のコイルで構成したコイルを2組であれば同様の効果を有することは、本発明の説明から明らかである。
【0028】
さらに本発明の実施の他の形態を図6(c)に例示する。本構成は磁性体コアの周面に配置した3個のスパイラルコイルで構成した環状コイル列51Aと磁性体コアを有するソレノイドコイル56で構成したコイル1個を配置して2次側コイル部22を構成する。このように構成することで、磁性体コアの軸32の周りの回転に関して給電量の低下が無く、かつ磁性体コアの軸32そのものの回転に関して給電量の低下が少ないことが理解される。
図6(d)に示す例と図6(a)に示す例との相違は、スパイラルコイルの端子の配置である。図6(a)に示す例では、スパイラルコイルの端子55は51Aと51Bとでは反対側に配置されているが、図6(d)に示す例で、スパイラルコイルの端子55は51A,51Bとも図面における右側片側に配置されている。組立生産性を考慮して適宜取出し方向を決定すればよい。
【0029】
以上例示したように本発明によれば、磁性体コア31の周面に配置した複数のコイルから成る環状コイル列を2組で2次側コイル部22を構成することで、磁性体コアの軸32の周りの回転に対してだけでなく、磁性体コアの軸32そのものの回転に関しても給電量の低下が少ない構成とすることができる。そのため、実験動物生体情報取得装置12を構成した場合、磁性体コアの軸32の周りの回転が可能になり、生体親和性のよい断面丸型形状とすることが出来るだけでなく、磁性体コアの軸32そのものの回転も可能となり、位置や姿勢に関係なく給電できる。
さらに、例示したように、磁性体コアの周面に配置した3つ以上の複数のコイルからなる環状コイル列1組と、磁性体コアを有するソレノイドコイルで構成したコイルで2次側コイル部を構成することで、磁性体コアの軸32の周りの回転に対して、かつ磁性体コアの軸32そのものの回転に関しても給電量の低下が少ない構成とすることができる。そのため、実験動物生体情報取得装置12を構成した場合、磁性体コアの軸32の周りの回転が可能になり、生体親和性のよい断面丸型形状とすることが出来るだけでなく、磁性体コアの軸32そのものの回転も可能となり、位置や姿勢に関係なく給電できる。
また、磁性体コア31は一体であってもよいが、別々に構成した磁性体コアに構成されたコイルを、磁性接着剤等を用いて、磁気的に強く結合するように構成することができる。一体型磁性体コアもしくは別々の磁性体コアを強く結合する等の製造上の利便性が増す。
【0030】
以下、本発明の回路に関する実施の形態を図に基づいて説明する。
図7は、実験動物生体情報取得装置12、送電装置11、および実験動物生体情報取得システム01の回路ブロック構成概略図である。
実験動物生体情報取得装置12は、受電装置を構成する2次側コイル部22を有する受電回路61、加算回路62、電力供給回路63の回路ブロックと、電力消費装置64の各回路ブロックからなる。以下に各回路ブロックの実施の形態を説明する。
【0031】
受電回路61は、2次側コイル部22を有してなり、必要に応じて並列または直列もしくは直並列共振回路を含む。
【0032】
加算回路62は、2次側コイル部22を構成する複数のコイルの誘導起電力を、前記受電回路61の出力を加算して、電力供給回路63を介して電力消費装置64に必要な電力を供給する。
加算回路62の実施の形態の一例として、整流回路71に静電容量72を並列接続した回路を、並列接続または直列接続もしくは直並列接続した回路を図8(a)から(h)に例示する。整流回路71は半端整流回路や全波整流回路を用いることができる。静電容量72は0.1~100μF程度であり、望ましくは1~10μFである。
接続の構成は、加算回路62に接続する電力供給回路63や電力消費装置64の特性に依存するが、電力供給回路63以降を負荷としてみたときに、負荷が1kΩ以下の重い場合には並列接続、負荷が10kΩ以上の軽い場合には直列接続、負荷がその中間の場合には直並列接続が適する。
本発明の実験動物生体情報取得装置12の場合には、負荷として100~1000Ωであり、並列接続型の加算回路62が適する。また電力供給回路63の入力電圧の上限に制限のある場合には、加算回路62の最終段に制限回路65を構成する。制限回路65は図8(f)から(h)に実施の一例を示すように、例えばツェナーダイオードとトランジスタを用いて電力供給回路と兼用したり、ツェナーダイオードを用いて実施する。このようにすることで、本発明の2次側コイル部22からの受電電力を有効に使うことができる。
【0033】
電力供給回路63は、電力消費装置64に適した電力を供給する回路ブロックである。図9に電力消費装置64の入力部での電圧と電流を例示する。電力消費装置64は、近年のディジタル化の進展に伴い、間歇的に電力を消費する場合が多い。
図9(a)は、電力消費装置64における電流81および電圧82を説明する10秒間の図である。間歇的に約2秒間隔で約2m秒の間で約20mAの電流81を消費しており(詳細は図9(c)に示す)、それ以外には約80m秒間隔で約0.7m秒の間に約10mAの電流81を消費しており(詳細は図9(b)および(e)に示す)、それ以外の時間はほとんど電流81を消費せず、時間平均では約1.2mAの電流81を消費している。
そこで間歇的な電力消費に係わる給電67と時間平均的な電力消費66に係わる給電を分けて構成することを実施する。このように構成することで、受電回路61および加算回路62が電力供給回路63に供給する電力は、間歇的な電力消費に対応させる必要が無く、時間平均的な電力消費に対応させればよい。そのため、受電回路61と加算回路62および電力供給回路63の構成を簡単かつ小さくできる。
電力供給回路63は、例えば低損失型リニアレギュレータやDC-DCコンバータを用いて実現できる。間歇的な電力消費に係わる給電67には等価直列抵抗の小さいコンデンサ、例えば積層セラミックコンデンサで電力供給することを実施する。等価直列抵抗は20mΩ以下が好ましい。間歇的な電力消費の電力ピークが例えば10~50mWであれば、20~100μFのコンデンサが適する。時間平均的な電力消費に係わる給電66には、静電容量の大きいコンデンサで電力供給することを実施する。例えば等価直列抵抗の小さい電気二重層コンデンサが適する。時間平均的な電力消費が例えば3mW程度であれば、等価直列抵抗が50Ω以下、静電容量は2~10mFが望ましい。
図9(d)は、電力消費装置への電力供給を止めた場合の電力消費装置の入力部での電圧と電流の変化を例示する。電力供給装置63への電力供給が途絶えた場合、間歇的な電力供給に際して瞬時電圧低下が発生して、電力消費装置の動作に不具合が生じることがある。そういった状態を回避するためには、電気二重層コンデンサの等価直列抵抗は50Ω以下であることが望ましい。さらに、このように構成することで、加算回路62から電力供給回路63への給電が、例えば40秒程度途絶えた場合でも、電力消費装置64の電力消費により、間歇的な電力消費に係わる給電67の電気エネルギーの低下を時間平均的な電力消費に係わる給電66から補填することができ、継続的な給電を実現でき、停止することの無い動作を可能にすることが理解できる。
【0034】
以下、実験動物生体情報取得装置12に係わる実施の形態を図に基づいて説明する。図7において、電力消費装置64は、実験動物の生体情報を取得するための1つ以上のセンサ、例えば温度センサ、加速度センサ、拍動センサ(心拍センサや脈拍センサ等)、圧力センサ、生体電気センサ等と、前記生体情報の計測・演算・処理回路と制御回路および前記生体情報と制御信号の通信回路と通信アンテナを少なくとも有する。通信回路は例えば低消費電力のブルートゥース(登録商標)で実施する。
【0035】
以下、実験動物生体情報取得装置12のカプセル構成に係わる実施の形態を図に基づいて説明する。
図10に、カプセル構成の実施の形態を例示する。図10(a)に図示するように、筒状の磁性体コア31の周りに2次側コイル部22を構成し、各種回路等を、筒状コアの内側に配置する構成もできる。また、図10(b)に図示するように柱状の磁性体コア31の周りに2次側コイル部22を構成し、実験動物生体情報取得装置12を構成するための各種回路等を、その周りに配置することができる。カプセル90は生体適合材料である、ガラス、セラミックス、生体適合プラスチック等で作ることができる。
ガラスやセラミックスでカプセルを構成した場合には、カプセル90を2つ以上に分割しておき、2次側コイル部や各種回路等を封入するようにしたのち、生体適合エポキシ等で接着させることで構成できる。
生体適合プラスチックでカプセル90を構成した場合には、同様に2つ以上に分割しておき、2次側コイル部22や各種回路等を封入するようにしたのち、生体適合エポキシ等で接着・密着させる、もしくは超音波融着にて接合する等の方法でカプセル90を構成できる。
さらに、筒状の磁性体コア31に2次側コイル部22を構成し、各種回路等をコアの内側に配置するように構成した場合には、筒状コアの少なくとも片側端部にドーム形状等のキャップを合わせ、全体を液状の生体適合プラスチックでディップ、スプレイ等の方法でコーティングし、その後乾燥硬化、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等の方法で硬化してカプセル90を構成することもできる。
また、前記の液状の生体適合プラスチックを用いてコーティングする方法は2分割したカプセル90の接合に用いても効果が高い。その場合にはカプセル90の材質は生体適合性である必要は無い。このような構成により、実験動物の体液に侵されず、実験動物にも悪影響を及ぼさず、生体親和性の高い断面丸型形状が可能な実験動物生体情報取得装置12とすることができる。
【0036】
以下、実験動物生体情報取得システム01に係わる実施の形態を図に基づいて説明する。
図1に実験動物生体情報取得システムの全体構成の概略を示す。1次側コイル21を有する送電装置11が2次側コイル部22を有する前記実験動物生体情報取得装置12を埋め込まれた実験動物が飼育される飼育用ケージ14の下側にあり、前記送電装置の上面は略平坦であり、飼育用ケージの載置台15を構成する。更に前記送電装置11は前記実験動物生体情報取得装置12が送信するデータの受信装置を有し、更に制御信号を送受信する装置を有する構成としている。
このような構成とすることで、2次側コイル部22の向きや位置に関わらず受電することが出来、複数匹の実験動物が飼育される飼育ケージ14を送電側が覆うことが無く外部から実験動物の行動を観察可能な実験動物生体情報取得システム01を構成することが出来る。なお一次側コイル21による前記飼育ケージ内の磁場の強さは、100μT(テスラ)以下であることが望ましい。
【実施例
【0037】
以下、本発明の実施例を例示する。
1次側コイル21による2次側コイル部22の場所での磁場の向き 上下方向
1次側コイル21による2次側コイル部22の場所での磁場の強さ 100μT
1次側コイル21の交流駆動周波数 500kHz
2次側コイル部22の形状 断面丸型コアの外面に沿う形に湾曲したコイル
2次側コイル部22の加算回路からみた負荷インピーダンス 500Ω
コイルの線材 φ0.06~0.08mm
巻回数 30~50
磁性体コアの外形:φ5mmx長さ10mm、厚さ:0.2mmの円筒形
加算回路は並列接続での実施例である

特性例-1 2次側コイル部を2つのコイル、2組で構成
負荷端電圧(V) 電力(mW)
磁性体コア軸が磁界の向きに垂直 3.2 19
平行 2 8
45度 2.4 12

特性例-2 2次側コイル部を3つのコイル、2組で構成
負荷端電圧(V) 電力(mW)
磁性体コア軸が磁界の向きに垂直 3 17
平行 1.8 5.5
45度 2.2 9

本発明の実験動物生体情報取得装置12は、間歇的な電力消費に関しては、ピークで50mW、間歇消費時間の平均で25mW程度である。全体時間平均的な電力消費は3mW程度である。よって、本発明により、埋め込み型実験動物生体情報取得装置12への非接触電力伝送が可能であり、埋め込み型実験動物生体情報取得装置12および埋め込み型実験動物生体情報取得システム01が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の受電装置によれば、2次側コイル部と回路構成の発明により、1次側コイルと2次側コイル部の配置や向きによらず安定に電力を供給でき、非接触電力伝送の無指向化が可能である。 本発明の受電装置を実験動物生体情報取得装置に用いることで、生体情報取得装置の駆動用の電源線が不要になり、有線方式のように実験動物の動作に制限を与えることが無くなる。また実験動物にストレスを与えない生体親和性のある形状にでき、小型軽量で、生体情報をリアルタイムに取得でき、動き回る複数の小動物の姿勢や位置に関わりなく、生体情報を途切れることなく継続的に取得でき、医薬品開発等の発展に寄与することができる。また、本発明で実現する無指向性非接触給電技術は、実験動物生体情報取得装置のみならず、受電装置の位置が不定な広範囲のデバイスへの展開も見込まれ、産業の発展に寄与することができる。
【符号の説明】
【0039】
01 実験動物生体情報取得システム
11 送電装置
12 実験動物生体情報取得装置
13 サーバー
14 飼育ケージ
15 載置台
21 1次側コイル
22 2次側コイル部
23 1次側コイルの発生する磁場
31 2次側コイル部を構成する磁性体コア
32 磁性体コアの軸
33 磁性体コアの断面の上半分
34 磁性体コアの断面の下半分
35 磁性体コアの断面の上半分
36 磁性体コアの断面の下半分
40a、40b、40c、40d 2次側コイル部を構成するスパイラルコイル
40a1、40a2、40b1、40b2、40c1、40c2 スパイラルコイルの辺
41a、41b、41c 2次側コイル部を構成するスパイラルコイル
51A、51B 環状コイル列
55 コイル端子
56 2次側コイル部のソレノイドコイル
61 2次側コイル部を有する受電回路
62 加算回路
63 電力供給回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10