(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】運転経路生成装置、運転経路生成方法、運転経路生成プログラム、およびドローン
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20230428BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230428BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230428BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20230428BHJP
G01C 21/20 20060101ALI20230428BHJP
G08G 5/04 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C27/08
B64C39/02
B64C13/20 Z
G01C21/20
G08G5/04 A
(21)【出願番号】P 2020550415
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038484
(87)【国際公開番号】W WO2020071305
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018187936
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
(72)【発明者】
【氏名】村雲 泰
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106054917(CN,A)
【文献】特開2015-113100(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0057021(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106289264(CN,A)
【文献】特表2018-510423(JP,A)
【文献】特開2017-144811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/10
B64C 27/08
B64C 39/02
B64C 13/20
G01C 21/20
G08G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定する進入禁止エリア決定部と、
取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において移動装置が安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定する移動許可エリア決定部と、
を備え
、
前記進入禁止エリア決定部は、前記障害物の外縁から前記進入禁止エリアの外縁に至る距離を、前記障害物の種類により決定する、
運転経路生成装置。
【請求項2】
前記進入禁止エリア決定部は、前記障害物の種類と前記進入禁止エリアの大きさとが関連付けられる障害物テーブルをあらかじめ記憶し、前記障害物テーブルを参照して、前記障害物の外縁から前記進入禁止エリアの外縁に至る前記距離を、前記障害物の種類により決定する、
請求項1記載の運転経路生成装置。
【請求項3】
前記移動許可エリア決定部は、少なくとも前記対象エリアの地面の高さと、前記対象エリアに生育する作物の高さと、飛行を制御する際に安全が担保できるマージンと、を合計して、前記移動許可エリアの高さ方向の範囲を決定する、
請求項1
又は2記載の運転経路生成装置。
【請求項4】
前記進入禁止エリア決定部は、前記障害物の座標情報と、当該障害物の種類と、に基づいて、前記進入禁止エリアを決定する、
請求項1
乃至3のいずれかに記載の運転経路生成装置。
【請求項5】
前記対象エリアは3次元方向に規定されていて、
前記移動許可エリア決定部は、前記障害物の高さ方向の座標情報に基づいて前記進入禁止エリアを算出し、3次元方向に規定される前記進入禁止エリアを前記対象エリアから除くことで、前記移動許可エリアを生成する、
請求項1乃至
4のいずれかに記載の運転経路生成装置。
【請求項6】
前記移動許可エリア内に、1又は複数の整形エリアと、前記整形エリアよりも1個当たりの面積が小さい1又は複数の異形エリアと、を策定するエリア策定部と、
前記整形エリアと前記異形エリアとに、互いに異なる経路パターンで移動装置の運転経路の生成を行う経路生成部と、
をさらに備える、
請求項1乃至
5のいずれかに記載の運転経路生成装置。
【請求項7】
前記エリア策定部は、凹多角形状の前記移動許可エリアに対し、それぞれが凸多角形である複数の前記整形エリアを生成可能である、
請求項
6記載の運転経路生成装置。
【請求項8】
前記整形エリアの外縁を成す環状の外周エリアを生成する外周エリア生成部と、前記外周エリアを周回する周回運転経路を生成する外周経路生成部と、をさらに備える、
請求項
6又は
7記載の運転経路生成装置。
【請求項9】
前記外周エリアの内側に内側エリアを生成する内側エリア生成部と、前記内側エリアに往復する往復運転経路を生成する内側経路生成部と、をさらに備える、
請求項
8記載の運転経路生成装置。
【請求項10】
前記整形エリアおよび異形エリアに対し、前記移動装置の運転性能に基づいて経路生成が可能か否かを判定する経路生成対象エリア確定部をさらに備える、
請求項
6乃至
9のいずれかに記載の運転経路生成装置。
【請求項11】
前記経路生成部は、前記対象エリアに複数種類の運転経路を生成可能であり、いずれの運転経路に決定するかを選択可能な経路選択部をさらに備え、前記経路選択部は、入力される優先順位の情報に基づいて運転経路を選択する、
請求項
6乃至
10のいずれかに記載の運転経路生成装置。
【請求項12】
コンピュータが、
障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定するステップと、
取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において移動装置が安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定するステップと、
前記障害物の外縁から前記進入禁止エリアの外縁に至る距離を、前記障害物の種類により決定するステップと、
を
実行する、運転経路生成方法。
【請求項13】
障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定する命令と、
取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において移動装置が安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定する命令と、
前記障害物の外縁から前記進入禁止エリアの外縁に至る距離を、前記障害物の種類により決定する命令と、
をコンピュータに実行させる、運転経路生成プログラム。
【請求項14】
運転経路生成装置および飛行制御部を備えるドローンであって、
前記運転経路生成装置は、
障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定する進入禁止エリア決定部と、
取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において前記ドローンが安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定する移動許可エリア決定部と、
を備え、
前記進入禁止エリア決定部は、前記障害物の外縁から前記進入禁止エリアの外縁に至る距離を、前記障害物の種類により決定する、
ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、運転経路生成装置、運転経路生成方法、運転経路生成プログラム、およびドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。欧米と比較して農地が狭い日本においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
その一方で、農業用の薬剤散布向け自律飛行型ドローンについては安全性に対する考慮が十分とは言いがたいケースがあった。薬剤を搭載したドローンの重量は数10キログラムになるため、人の上に落下する等の事故が起きた場合に重大な結果を招きかねない。また、通常、ドローンの操作者は専門家ではないためフールプルーフの仕組みが必要であるが、これに対する考慮も不十分であった。今までに、人間による操縦を前提としたドローンの安全性技術は存在していたが(たとえば、特許文献2)、特に農業用の薬剤散布向けの自律飛行型ドローンに特有の安全性課題に対応するための技術は存在していなかった。
【0005】
また、ドローンが自律飛行を行う運転経路を自動で生成する方法が必要とされている。特許文献3には、圃場において、往復走行させる往復走行経路と、外周形状に沿って周回させる周回走行経路とを生成する走行経路生成システムが開示されている。このシステムは、苗植付装置等の地上走行型の機械が想定されている。
【0006】
特許文献4には、圃場の外形線が内側に局部的に入り込んだ凹部を有する場合の経路生成を行う走行経路生成装置が開示されている。特許文献5には、走行領域内に存在する障害物を迂回する走行経路を生成する自律走行経路生成システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【文献】特許公開公報 特開2018-117566
【文献】特許公開公報 特開2018-116614
【文献】特許公開公報 特開2017-204061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自律運転時であっても効率よく移動し、高い安全性を維持できる運転経路を生成する運転経路生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る運転経路生成装置は、障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定する進入禁止エリア決定部と、取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において移動装置が安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定する移動許可エリア決定部と、を備える。
【0010】
前記移動許可エリア決定部は、少なくとも前記対象エリアの地面の高さと、前記対象エリアに生育する作物の高さと、飛行を制御する際に安全が担保できるマージンと、を合計して、前記移動許可エリアの高さ方向の範囲を決定してもよい。
【0011】
前記進入禁止エリア決定部は、前記障害物の座標情報と、当該障害物の種類と、に基づいて、前記進入禁止エリアを決定してもよい。
【0012】
前記対象エリアは3次元方向に規定されていて、前記移動許可エリア決定部は、前記障害物の高さ方向の座標情報に基づいて前記進入禁止エリアを算出し、3次元方向に規定される前記進入禁止エリアを前記対象エリアから除くことで、前記移動許可エリアを生成してもよい。
【0013】
前記移動許可エリア内に、1又は複数の整形エリアと、前記整形エリアよりも1個当たりの面積が小さい1又は複数の異形エリアと、を策定するエリア策定部と、前記整形エリアと前記異形エリアとに、互いに異なる経路パターンで移動装置の運転経路の生成を行う経路生成部と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
前記エリア策定部は、凹多角形状の前記移動許可エリアに対し、それぞれが凸多角形である複数の前記整形エリアを生成可能であってもよい。
【0015】
前記整形エリアの外縁を成す環状の外周エリアを生成する外周エリア生成部と、前記外周エリアを周回する周回運転経路を生成する外周経路生成部と、をさらに備えていてもよい。
【0016】
前記外周エリアの内側に内側エリアを生成する内側エリア生成部と、前記内側エリアに往復する往復運転経路を生成する内側経路生成部と、をさらに備えていてもよい。
【0017】
前記整形エリアおよび異形エリアに対し、前記移動装置の運転性能に基づいて経路生成が可能か否かを判定する経路生成対象エリア確定部をさらに備えていてもよい。
【0018】
前記経路生成部は、前記対象エリアに複数種類の運転経路を生成可能であり、いずれの運転経路に決定するかを選択可能な経路選択部をさらに備え、前記経路選択部は、入力される優先順位の情報に基づいて運転経路を選択するように構成されていてもよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る運転経路生成方法は、障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定するステップと、取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において移動装置が安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定するステップと、を含む。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る運転経路生成プログラムは、障害物の座標情報に基づいて、前記障害物および前記障害物周辺の進入禁止エリアを決定する命令と、取得される対象エリアから前記進入禁止エリアを除くことで、前記対象エリアの内部において移動装置が安全を確保して移動可能な移動許可エリアを決定する命令と、をコンピュータに実行させる。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンは、運転経路生成装置により生成される運転経路を受信して、前記運転経路に沿って飛行可能なドローンであって、前記運転経路生成装置は、上述のいずれかに記載の運転経路生成装置である。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンは、運転経路生成装置と、飛行制御部と、を備えるドローンであって、前記運転経路生成装置は、上述のいずれかに記載の運転経路生成装置である。
【発明の効果】
【0023】
自律運転時であっても効率よく移動し、高い安全性を維持できる運転経路を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願発明に係るドローンの第1実施形態を示す平面図である。
【
図6】上記ドローンが有する薬剤散布システムの全体概念図である。
【
図7】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
【
図8】本願発明に係る運転経路生成装置と、ネットワークを介して接続されるドローン、基地局、操作器、および座標測量装置の様子を示す全体概念図である。
【
図9】上記運転経路生成装置の機能ブロック図である。
【
図10】上記運転経路生成装置が運転経路を生成する圃場、上記圃場近辺に決定される進入禁止エリア、および上記圃場内に生成される移動可能エリアの例を示す概略図である。
【
図11】上記移動可能エリアを、異形エリア、外周エリア、および内側エリアに分割する様子を示す概略図である。
【
図12】上記運転経路生成装置が有するエリア分割要否判定部が、エリアを分割する処理を行う移動エリアの例であって、(a)2辺から成る凹部を有する移動エリアの例、(b)3辺からなる凹部を有する移動エリアの例である。
【
図13】上記エリア分割要否判定部が、移動エリアを分割する工程を示すフローチャートである。
【
図14】上記運転経路生成装置が有するエリア策定部が、外周エリア、内側エリア、および異形エリアを生成し、経路生成対象エリアを確定する工程を示すフローチャートである。
【
図15】上記運転経路生成装置が有する経路生成部により上記経路生成対象エリアに生成される経路の例である。
【
図16】上記経路生成部が、上記経路生成対象エリアに運転経路を生成する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0026】
本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。ドローンは移動装置の例であり、本願発明に係る運転経路生成装置により生成される運転経路の情報を適宜受信し、当該運転経路に沿って飛行することが可能である。
【0027】
図1乃至
図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、バッテリー消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。
【0028】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。なお、一部の回転翼101-3b、および、モーター102-3bが図示されていないが、その位置は自明であり、もし左側面図があったならば示される位置にある。
図2、および、
図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0029】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0030】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0031】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作機(図示していない)を使用してもよい(非常用操作機は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい)。操作器401とドローン100はWi-Fi等による無線通信を行う。
【0032】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の障害物が存在する場合もある。
【0033】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0034】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(進入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0035】
図7に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。フライトコントローラー501は、飛行制御部の例である。
【0036】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0037】
バッテリー502は、フライトコントローラー501、および、ドローンのその他の構成要素に電力を供給する手段であり、充電式であってもよい。バッテリー502はヒューズ、または、サーキットブレーカー等を含む電源ユニットを介してフライトコントローラー501に接続されている。バッテリー502は電力供給機能に加えて、その内部状態(蓄電量、積算使用時間等)をフライトコントローラー501に伝達する機能を有するスマートバッテリーであってもよい。
【0038】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、GPSモジュール504により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。GPSモジュール504は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのGPSモジュール504は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0039】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段(さらに、加速度の積分により速度を計算する手段)である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0040】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513はドローン障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の障害物に接触したことを検知するためのセンサーである。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0041】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0042】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。表示手段は、LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0043】
ドローン100は、様々な形状の圃場に対し、効率よく移動するための運転経路が必要である。すなわち、ドローン100は、ある圃場内に薬剤を散布する場合や、ある圃場内を監視する場合において、当該圃場の上空をくまなく飛行する必要がある。その際、なるべく同じ経路を飛行しないことで、バッテリーの消費や飛行時間を短くすることができる。また、薬剤散布においては、同じ経路に薬剤を散布すると当該経路下の薬剤濃度が高くなってしまう恐れがある。そこで、運転経路生成装置は、ドローン100を始めとする移動装置が圃場の座標情報に基づいて効率よく移動するための運転経路の生成を行う。
【0044】
図8に示すように、運転経路生成装置1は、ネットワークNWを介してドローン100、基地局404および座標測量装置2に接続されている。運転経路生成装置1は、その機能が営農クラウド405上にあってもよいし、別途の装置であってもよい。また、運転経路生成装置1は、ドローン100が有する構成であってもよい。圃場は、対象エリアの例である。ドローン100は、移動装置の例である。
【0045】
座標測量装置2は、RTK-GPSの移動局の機能を有する装置であり、圃場の座標情報を測量することができる。座標測量装置2は、使用者により保持して歩行することが可能な小型の装置であり、例えば棒状の装置である。座標測量装置2は、下端を地面についた状態で、使用者が直立して上端部を保持できる程度の長さの、杖のような装置であってもよい。ある圃場の座標情報を読み取るために使用可能な座標測量装置2の個数は、1個であっても複数であってもよい。複数の座標測量装置2により1か所の圃場に関する座標情報を測量可能な構成によれば、複数の使用者がそれぞれ座標測量装置2を保持して圃場を歩行することができるため、測量作業を短時間で完了することができる。
【0046】
また、座標測量装置2は、圃場における障害物の情報を測量することができる。障害物は、ドローン100が衝突する危険のある壁や法面、電柱、電線などや、薬剤散布又は監視を要さない各種物体を含む。
【0047】
座標測量装置2は、入力部201、座標検出部202および送信部203を備える。
【0048】
入力部201は、座標測量装置2の上端部に設けられる構成であり、例えば使用者の押下を受け付けるボタンである。使用者は、座標測量装置2の下端の座標を測量する際に、入力部201のボタンを押下する。
【0049】
また、入力部201は、入力される情報が圃場の外周に関する座標であるか、障害物の外周の座標であるかを区別して入力可能に構成されている。さらに、入力部201は、障害物の外周の座標を、障害物の種類と関連付けて入力可能である。
【0050】
座標検出部202は、基地局404と適宜通信を行って座標測量装置2の下端の3次元座標を検出可能な機能部である。
【0051】
送信部203は、入力部201への入力に基づいて、当該入力時の座標測量装置2下端の3次元座標を、ネットワークNWを介して操作器401又は運転経路生成装置1に送信する機能部である。送信部203は、当該3次元座標を、ポインティングされた順番とともに送信する。
【0052】
圃場の座標情報を読み取る工程において、使用者は、座標測量装置2を持って圃場を移動する。まず、当該圃場の3次元座標を取得する。使用者は、圃場の端点又は端辺上において入力部201によるポインティングを行う。次いで、使用者は、障害物の端点又は端辺上において入力部201によるポインティングを行う。
【0053】
ポインティングされて送信される圃場の端点又は端辺上の3次元座標は、圃場外周の3次元座標および障害物の3次元座標を区別して、運転経路生成装置1により受信される。また、ポインティングされる3次元座標は、操作器401の受信部4011により受信され、表示部4012により表示されてもよい。また、操作器401は、受信される3次元座標が圃場外周又は障害物の3次元座標として適しているかを判定し、再測量が必要と判定される場合は、表示部4012を通じて使用者に再測量を促してもよい。
【0054】
図9に示すように、運転経路生成装置1は、対象エリア情報取得部10、移動許可エリア生成部20、エリア策定部30、経路生成部40、および経路選択部50を備える。
【0055】
対象エリア情報取得部10は、座標測量装置2から送信される3次元座標の情報を取得する機能部である。
【0056】
図10に示すように、移動許可エリア生成部20は、対象エリア情報取得部10により取得される3次元座標に基づいて、圃場80内においてドローン100が移動する移動許可エリア80iを指定する。移動許可エリア生成部20は、進入禁止エリア決定部21、および移動許可エリア決定部22を有する。
【0057】
進入禁止エリア決定部21は、対象エリア情報取得部10により取得される障害物81a,82a,83a,84a,85aの3次元座標および当該障害物の種類に基づいて、ドローン100の進入禁止エリア81b,82b,83b,84b,85bを決定する機能部である。進入禁止エリア81b,82b,83b,84b,85bは、障害物81a,82a,83a,84a,85aおよび障害物周辺のエリアを含む領域である。進入禁止エリア81b,82b,83b,84b,85bは、水平方向および高さ方向に規定される、3次元方向に広がりを有する領域であり、例えば障害物81a,82a,83a,84a,85aを中心にして描かれる直方体状の領域である。なお、進入禁止エリアは、障害物を中心に描かれる球状の領域であってもよい。ドローン100は空中を飛行するため、障害物の高さ方向の大きさによっては障害物の上空を飛行することが可能である。障害物の高さ方向の大きさにより、障害物の上空を進入禁止エリアとはみなさない構成によれば、障害物を過剰に迂回することなく圃場内を効率的に飛行することができる。
【0058】
障害物外縁から進入禁止エリア81b,82b,83b,84b,85bの外縁に至る距離は、障害物81a,82a,83a,84a,85aの種類により決定される。ドローン100が衝突した場合の危険度が大きい障害物ほど、障害物外縁から進入禁止エリア81b,82b,83b,84b,85bの外縁に至る距離は大きい。例えば、家屋の場合、家屋の外縁から50cmの範囲を進入禁止エリアとする一方、電線の外縁から80cmの範囲を進入禁止エリアとする。電線の場合は衝突時にドローン100の故障に加えて送電不良や電線の破壊等の事象が起こり得るため、衝突時の危険度がより高いと考えられるためである。進入禁止エリア決定部21は、障害物の種類と進入禁止エリアの大きさとが関連付けられる障害物テーブルをあらかじめ記憶していて、取得される障害物の種類に応じて進入禁止エリアの大きさを決定する。
【0059】
移動許可エリア決定部22は、移動許可エリア80iを決定する機能部である。移動許可エリア80iの平面方向に関しては、圃場80の対象エリア情報取得部10により取得される平面上の座標が圃場80の外周位置にあるものとする。移動許可エリア決定部22は、移動許可エリア80iの高さ方向に関しては、対象エリア情報取得部10により取得される高さ方向の座標、すなわち圃場80の地面の高さに、作物の高さや、飛行を制御する際に安全が担保できるマージンを合計して、移動許可エリア80iの高さ方向の範囲を決定する。当該移動許可エリア決定部22は、当該3次元座標に囲まれている内側の領域から進入禁止エリア81b,82b,83b,84b,85bを除くことで移動許可エリア80iを決定する。
【0060】
図11に示すように、エリア策定部30は、移動許可エリア生成部20により決定される移動許可エリア80iを、互いに異なる経路パターンで飛行する領域ごとに分割して策定する機能部である。エリア策定部30は、移動許可エリア80i内を、1又は複数の整形エリア81iと、整形エリア81iよりも面積の小さい1又は複数の異形エリア82i,83iと、に分割して策定可能である。
【0061】
経路パターンとは、ある領域に対し網羅的に飛行するために、当該領域の形状に応じて自動的に経路を生成するための規則である。経路パターンは、整形エリアに対する経路パターンと、異形エリアに対する経路パターンに大別される。
【0062】
また、整形エリア81iに対する経路パターンは、当該整形エリア81iの外周を周回する外周パターンと、周回経路の内側を往復する内側パターンと、を含む。整形エリア81iにおいて、外周パターンにより飛行するエリアを外周エリア811i、内側パターンにより飛行するエリアを内側エリア812iと呼ぶ。異形エリア、外周エリア、および内側エリアの特徴に関しては、後述する。
【0063】
エリア策定部30は、エリア分割要否判定部31、整形エリア生成部32、および異形エリア生成部33を有する。
【0064】
エリア分割要否判定部31は、移動許可エリアを複数の整形エリアに分割する要否を判定する機能部である。エリア分割要否判定部31は、特に移動許可エリアを上空から俯瞰した際に凹多角形状である場合、移動許可エリアを分割する。凹多角形は、多角形の内角の少なくとも1個が180°を超える角である多角形であり、言い換えれば凹部形状を有する多角形である、
【0065】
図12(a)、(b)、および
図13を用いて、エリア分割要否判定部31が移動許可エリア90iの分割要否を判定し、エリア分割を行う工程を説明する。
【0066】
図12(a)に示す移動許可エリア90iは、上空から俯瞰すると、辺91iおよび辺92iの2辺から構成される凹部93iがある。そこで、
図13に示すように、エリア分割要否判定部31は、2辺から成る凹部93iがあることを判定すると(S11)、2辺91i,92iのうち長い方の辺91iを判定対象辺として、長さを算出する(S12)。エリア分割要否判定部31は、移動許可エリア90iに凹部が発見できないとき、エリア分割を行わない。
【0067】
エリア分割要否判定部31は、当該辺91iの長さがドローン100の有効幅に基づいて決定される所定値以上の場合、当該辺91iを含むエリアの分割が必要と判定し(S13)、移動許可エリア90iを2個のエリア901i,902iに分割する(S14)。次いで、分割後のエリア内に凹部があるか否かを判定する(S15)。凹部が発見された場合、ステップS12に戻る。凹部が発見されない場合、これ以上の分割は不要と判定し、処理を終了する。
【0068】
分割線94iは、分割後において小さい方のエリアの端辺を構成する辺であって、分割線94iに対向する端辺95iと平行になるように決定される。この構成によれば、分割後のエリアをドローン100が往復飛行する際に、当該エリア内をより網羅的に飛行することができる。
【0069】
エリア分割要否判定部31により分割されて生成される複数のエリアには、それぞれ少なくとも1個の整形エリアが生成可能である。整形エリア81iは、そのエリアを外周エリア811iおよび内側エリア812iを生成可能な形状および面積である。外周エリア811iは、ドローン100の有効幅を有する環状のエリアであり、内側エリア812iはドローン100の有効幅から重複許容幅を除く幅が必要である。したがって、エリア分割要否判定部31は、当該辺(91i)の長さが、ドローン100の有効幅の3倍から重複許容幅を除いた値以上であるとき、エリアを分割する。なお、ドローン100の有効幅は、例えば薬剤散布用ドローンである場合は薬剤の散布幅である。また、ドローン100の有効幅は、監視用ドローンである場合は、監視可能幅である。
【0070】
図12(b)に示す移動許可エリア100iは、上空から俯瞰すると、辺111i、辺112i、および辺113iの3辺がこの順に隣接して構成される凹部110iがある。そこで、
図13に示すように、エリア分割要否判定部31は、3辺111i乃至113iから成る凹部110iがあることを判定すると(S11)、凹部110iの対向する辺111i,113iのうち長い方の辺111iを判定対象辺として、長さを算出する(S12)。エリア分割要否判定部31は、当該辺111iの長さがドローン100の有効幅に基づいて決定される所定値以上の場合、当該辺111iを含むエリアの分割が必要と判定し(S13)、分割線(121i)により移動許可エリア100iを2個のエリア1001i,1002iに分割する(S14)。
【0071】
次いで、分割後のエリア内に凹部があるか否かを判定する(S15)。凹部が発見された場合、ステップS12に戻る。移動許可エリア100iの例においては、エリア分割要否判定部31は、分割後のエリアにさらに分割が必要と判定し(S13)、分割線122iによりエリア1001iをさらに2個のエリア1003i,1004iに分割する(S14)。
【0072】
凹部110iの底辺113iの両端から移動許可エリア100iの左右端辺101i,102iに向かって分割線121i,122iが規定される。分割線121i,122iは、分割後において小さい方の領域の端辺を構成する辺であって、対向する端辺103i,104iと平行になるように決定される。この構成によれば、分割後のエリアをドローン100が往復飛行する際に、当該エリア内をより網羅的に飛行することができる。
【0073】
なお、エリア分割要否判定部31は、移動許可エリアに代えて、対象エリアを分割か否かを判定するように構成されていてもよい。
【0074】
整形エリア生成部32はエリア分割要否判定部31により生成された1又は複数のエリアのそれぞれに、整形エリアを生成する機能部である。
【0075】
図11に示すように、整形エリア生成部32は、移動許可エリア80iの内部において最大面積の凸多角形を、整形エリア81iとして生成する。凸多角形は、多角形の内角がいずれも180°未満である多角形である。
【0076】
図9に示すように、整形エリア生成部32は、外周エリア生成部321および内側エリア生成部322を有する。
図11の例においては、外周エリア生成部321は、整形エリア81iの外縁を成す、ドローン100の有効幅を有する環状の領域を、外周エリア811iとする。また、内側エリア生成部322は、外周エリア811iの内側を、内側エリア812iとする。
【0077】
異形エリア生成部33は、エリア分割要否判定部31により生成された1又は複数のエリアのそれぞれに、異形エリアを生成する機能部である。
【0078】
異形エリア82i,83iは、整形エリア81iよりも1個当たりの面積が小さいエリアであり、外周エリアおよび内側エリアを規定することができないエリアである。より具体的には、異形エリア82i,83iは、当該エリアの最短辺の長さが、ドローン100の有効幅の3倍から重複許容幅を除いた値未満である。
図11の例においては、2か所の異形エリア82i,83iが策定されている。
【0079】
経路生成対象エリア確定部34は、策定される各エリア811i,812i,82i,83iに対し、経路生成が可能なエリアか否かを判定し、経路生成の対象となるエリアを確定する機能部である。整形エリア81iおよび異形エリア82i,83iは、その形状により、運転が不可能な場合があるためである。経路生成対象エリア確定部34は、ドローン100の運転性能に基づいて定められる所定値に基づいて、経路生成が可能なエリアか否かを判定する。ドローン100の運転性能とは、ドローン100が等速運転に至るまでに要する助走距離、および等速運転から停止までに要する停止距離を含む。また、ドローン100の運転性能とは、薬剤散布や監視における有効幅を含む。
【0080】
経路生成対象エリア確定部34は、外周エリア811iの長辺が、ドローン100が等速運転に至るまでに要する助走距離および停止に要する停止距離に基づいて定められる所定値未満である場合、当該外周エリア811iに経路生成を行わない旨の決定をする。例えば、外周エリア811iの長辺が、助走距離および停止距離を合計した値未満であるとき、経路生成を行わない旨の決定をする。また、外周エリア811iの最短辺がドローン100の有効幅に基づいて決定される所定値未満であるとき、経路生成を行わない。より具体的には、外周エリア811iの最短辺がドローン100の有効幅未満であるとき、経路生成を行わない。当該所定値未満である場合、外周エリア811iを周回する経路が生成できないためである。
【0081】
同様に、経路生成対象エリア確定部34は、内側エリア812iの長辺が、ドローン100が等速運転に至るまでに要する助走距離および停止に要する停止距離に基づいて定められる所定値未満である場合、経路生成を行わない旨の決定をする。例えば、内側エリア812iの長辺が、助走距離および停止距離を合計した値未満であるとき、経路生成を行わない旨の決定をする。内側エリア812iの最短辺がドローン100の有効幅に基づいて決定される所定値未満であるとき、経路生成を行わない旨の決定をする。より具体的には、内側エリア812iの最短辺がドローン100の有効幅の2倍から重複許容値を除いた値未満であるとき、経路を生成しない。
【0082】
また、経路生成対象エリア確定部34は、策定される異形エリア82i,83iそれぞれに対し、ドローン100の運転が可能か否かを判定する。異形エリア82i,83iに対する経路パターンは、長辺方向に向かって一方に飛行する経路、又は一往復する経路である。そこで、異形エリア82i,83iの最短辺がドローン100の有効幅に基づいて決定される所定値未満であるとき、経路生成対象エリア確定部34は、ドローン100が当該異形エリア内の運転を行わない旨の決定をする。より具体的には、異形エリア82i,83iの最短辺が重複許容未満であるとき、運転を行わない旨の決定をする。重複許容値は、例えばドローン100の有効幅の10%であってもよい。
【0083】
また、異形エリア82i,83iの長辺が、ドローン100が等速運転に至るまでに要する助走距離および停止に要する停止距離に基づいて定められる所定値未満である場合も、運転を行わない旨の決定をする。例えば、異形エリア82i,83iの長辺が、助走距離および停止距離を合計した値未満であるとき、運転を行わない。
【0084】
エリア策定部30は、策定されるエリアの情報を操作器401に送信し、操作器401で表示してもよい。また、運転不可のエリアがある場合には、その旨を警告する表示を行ってもよい。
【0085】
なお、本例においては、外周エリア811i、内側エリア812i、および異形エリア83iは運転可能なエリアであり、異形エリア82iは運転不可のエリアである。
【0086】
図14を用いて、ここまでに説明した、対象エリア情報を取得して経路生成対象エリアを確定するまでの工程を説明する。
【0087】
まず、対象エリア情報取得部10は、圃場に関する座標情報を取得する(S21)。また、対象エリア情報取得部10は、障害物に関する座標情報を取得する(S22)。なお、ステップS21乃至S22は、順不同であり、同時であってもよい。
【0088】
次いで、移動許可エリア生成部20は、圃場および障害物に関する座標情報に基づいて、移動許可エリアを生成する(S23)。
【0089】
エリア分割要否判定部31は、移動許可エリアの形状および大きさに基づいて、移動許可エリアを分割する必要があるか否かを判定する(S24)。分割が必要である場合、エリア分割要否判定部31は、移動許可エリアを複数のエリアに分割する(S25)。
【0090】
整形エリア生成部32は、移動許可エリア、又はエリア分割要否判定部31により分割される複数のエリアのそれぞれに整形エリアを生成し、さらに各整形エリアに外周エリアおよび内側エリアを生成する(S26)。
【0091】
異形エリア生成部33は、移動許可エリアのうち整形エリア以外のエリアを、異形エリアとする(S27)。
【0092】
次いで、経路生成対象エリア確定部34は、規定されるエリアそれぞれに対し、ドローン100の運転可否を判定する(S28)。ドローン100の運転が不可と判定される場合、経路生成対象エリア確定部34は、当該エリアを移動許可エリアから除去する(S29)。最後に、経路生成対象エリア確定部34は、運転可能なエリアを、経路生成対象エリアとして確定する(S30)。
【0093】
図9に示す経路生成部40は、経路生成対象エリアに、経路パターンに基づいて運転経路を生成する機能部である。経路生成部40は、外周経路生成部41と、内側経路生成部42と、異形エリア経路生成部43と、経路連結部44と、を有する。
【0094】
図9および
図15に示すように、外周経路生成部41は、外周エリア811iにおける周回運転経路811rを生成する機能部である。周回運転経路811rは、外周エリア811i上を1回周回する経路である。本実施形態においては左回りであるが、右回りであってもよい。
【0095】
内側経路生成部42は、内側エリア812iにおける往復運転経路812rを生成する機能部である。往復運転経路812rは、内側エリア812iを往復する経路である。往復運転経路812rは、内側エリア812iの各辺のうち、最も長い長辺813i方向に沿って連続して生成され、当該長辺に隣接する辺のうち短い方である短辺814i方向に沿う経路上で方向転換を行うように生成されている。長辺813i方向に沿う運転経路は、長辺813iに平行であってもよいし、平行でなくてもよい。また、長辺813i方向に沿う運転経路のそれぞれは、互いに平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0096】
異形エリア経路生成部43は、異形エリア83iにおける異形エリア運転経路83rを生成する機能部である。異形エリア運転経路83rは、異形エリア83iの長辺方向に向かって一方に飛行する経路、又は一往復する経路である。
【0097】
経路連結部44は、周回運転経路811r、往復運転経路812r、および異形エリア運転経路83rを連結する機能部である。この構成によれば、複数のエリアに分割して経路が生成される場合にも、経路の重複を最小限にして、効率のよい運転経路を生成することができる。
【0098】
図16に示すように、まず、外周経路生成部41は、外周エリア811iを周回する周回運転経路811rを生成する(S41)。次いで、内側経路生成部42は、内側エリア812iを往復する往復運転経路812rを生成する(S42)。異形エリア経路生成部43は、異形エリア83iを一方に飛行する、又は一往復する異形エリア運転経路83rを生成する(S43)。なお、ステップS41乃至S43は順不同であり、同時に行ってもよい。経路連結部44は、周回運転経路811r、往復運転経路812r、および異形エリア運転経路83rを連結する(S44)。
【0099】
凸多角形の整形エリアを生成し、整形エリアと異形エリアとを分けてそれぞれ運転経路を生成する構成によれば、内側エリアも整形エリアの外周と相似形の凸多角形に生成することができるので、重複する経路を最小限にして往復運転することができる。したがって、対象エリアを短時間で網羅的に運転することができる。すなわち、作業時間、ドローンのバッテリー消費、および薬剤消費の面で、効率のよい運転経路を生成可能である。また、薬剤散布用ドローンにおいては、重複して薬剤を散布するおそれが少なくなり、高い安全性を維持できる。
【0100】
図9に示す経路生成部40は、経路生成対象エリアに複数種類の運転経路を生成可能であってもよい。経路選択部50は、いずれの運転経路に決定するかを選択可能である。使用者は、生成される複数の運転経路を目視して、運転経路を決定してもよい。
【0101】
また、経路選択部50は、使用者により優先順位の情報が入力可能であってもよい。例えば、使用者は、作業時間、ドローン100のバッテリー消費量、および薬剤消費量のうち、いずれを最優先するかを操作器401に入力する。また、操作器401は、2番目に優先すべき指標を合わせて入力可能であってもよい。経路選択部50は、複数の運転経路のうち、入力される優先順位に最も合致する運転経路を選択する。この構成によれば、使用者の方針に合わせた、効率の良い経路生成が可能である。
【0102】
本構成によれば、自律運転時であっても効率よく移動し、高い安全性を維持できる運転経路を生成することができる。
【0103】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、自律的に動作する機械全般に適用可能である。農業用以外の、自律飛行を行うドローンにも適用可能である。また、自律的に動作する、地面を自走する機械にも適用可能である。
【0104】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明に係る運転経路生成装置においては、自律運転時であっても効率よく移動し、高い安全性を維持できる運転経路を生成する。