(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】流体ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
B67D 1/04 20060101AFI20230428BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B67D1/04 C
B65D83/00 G
(21)【出願番号】P 2020563849
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 IT2019050026
(87)【国際公開番号】W WO2019150409
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】102018000002421
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520292132
【氏名又は名称】ビーエックスラボ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ペピーニ,ディエゴ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-520237(JP,A)
【文献】特開2002-225990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/04
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(2)を備える
流体ディスペンサーであって、
前記容器(2)は、その内部に収容空洞(3)を有し、
前記収容空洞(3)は、注ぎ出される第1の
流体(6)を収容し、膜状構造を有する、少なくとも1対の壁(4、5a)によって仕切られ、
少なくとも一つの第1の壁(4)は、注ぎ出される前記第1の
流体(6)と接触するように設置され、
少なくとも1対の前記壁のうち、第2の壁(5a)は、前記第1の壁(4)を部分的に囲み、
ディスペンサー(1)は、さらに開閉可能な中空空間(7)を備え、
前記中空空間(7)は、前記第1の壁(4)及び前記第2の壁(5a)の間に位置し、
前記中空空間(7)内に導入される第
2の
流体(8)は、前記第1の壁(4)と連携し、注ぎ出される前記第1の
流体(6)が前記容器(2)の供給口(9)に向けて動くよう働きかけ、少なくとも、前記収容空洞(3)内に存在する気体が前記容器(2)の外側に向かって排出される動作を同時に引き起こ
し、
前記ディスペンサー(1)は、さらに1対の前記壁(4、5a)のうち少なくとも一方の前記壁(4、5a)に結合されたフランジ(12)と、
前記フランジ(12)の突起(13)に形成された、前記第2の流体(8)を開閉可能な前記中空空間(7)に搬送するための第1の流路と、を備え、
前記フランジ(12)は、円環状の平板(14)と、筒状つば(20)とを有し、前記筒状つば(20)は、前記平板(14)から離れた遠位端で供給口により終端し、
前記平板(14)は、前記筒状つば(20)によって覆われた領域を超えて延在し、
前記突起(13)は、前記つば(20)から遠ざかるよう、径方向に突出し、前記平板(14)の表面から軸方向に突出することを特徴とする
流体ディスペンサー。
【請求項2】
前記第2の壁(5a)の少なくとも一部
が前記突起(13)と結合し、
少なくとも一つの前記第1の壁(4)の
離間した少なくとも一部
が前記フランジ(12)と結合することを特徴とする、請求項
1に記載の
流体ディスペンサー。
【請求項3】
前記中空空間(7)内の前記第2の
流体(8)を加圧する加圧手段(15)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の
流体ディスペンサー。
【請求項4】
前記中空空間(7)に導入される前記第2の
流体(8)は気体
流体であることを特徴とする、請求項
1に記載の
流体ディスペンサー。
【請求項5】
閾値に到達したことを検知するセンサー手段(16)をさらに備え、前記閾値は、前記中空空間(7)内に収容された前記第2の
流体(8)の圧力が限界値を示し、それにより加圧手段(15)を作動または解除させることを特徴とする、請求項1に記載の
流体ディスペンサー。
【請求項6】
注ぎ出される前記第1の
流体(6)用の冷
却手段(17)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の
流体ディスペンサー。
【請求項7】
注ぎ出される前記第1の
流体(6)は、少なくとも液状食品であることを特徴とする、請求項1に記載の
流体ディスペンサー。
【請求項8】
前記液状食品は、ワイン、油、ビール、カクテルのグループから選択されることを特徴とする、請求項
7に記載の
流体ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ディスペンサーに関し、特に、ワイン、油、ビール、カクテルといった液状食品のディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
液状食品、特にワインは、一度栓を開けてしまうと、空気に触れることにより、急速に酸化が進み、変質してしまう。これにより、液状食品及びその感覚刺激特性は著しく劣化する。
【0003】
例えば、ボトルに入ったワインは、一度開栓すると、酸化により3日~5日程度で劣化する。
【0004】
開栓後のボトルに入ったワインを、真空により再び栓詰めしたとしても、一週間程度で腐敗が始まる。
【0005】
不活性ガス(例えば、アルゴン)の導入により、ボトルを再び閉栓した場合、中のワインは3週間~4週間ほどであれば保たれるが、その後の開栓回数や取り出すワインの量が多いほど、その期間も短くなる。
【0006】
これにより、家庭内や専門店において、相当の問題が引き起こされることになる。
【0007】
実際、家庭内において、消費者がワインのボトルを開けた場合、そしてそれが質の高い高級品であり、グラスに1杯か2杯程度しか飲まなかった場合、ボトル内の残ったワインは、空気に触れたことによって酸化が進み、変質してしまうため、たった数日で捨てなければならないことになる。
【0008】
こうした行動により、多くの負の連鎖が生まれる。特に、資材、経済資源の無駄使いであることは明らかで、環境に悪影響を及ぼす。
【0009】
専門店においても、同様の問題が生じている。例えば、グラスでワインを提供するケータリング業者は、劣化によるワインの廃棄を避けるため、中身が全てなくなるまで、ワインを提供する度に、ボトル内に進入した空気を機械的に取り除くことのできる複雑かつ高価な装置を設置しなければならない。
【0010】
「バッグ・イン・ボックス」と称される先行技術によれば、ワインは繰り返し閉栓可能な袋容器内に封入・保存される。袋容器は、好適なフィルム材が積層された複数層により形成した、薄く、丈夫な複合壁を備え、フィルム材は、必要に応じて金属化される。袋容器は、箱型の本体に格納され、垂直に支持される。それにより、重力が働き、箱型の本体の下部に取り付けられた専用のタップを通して、内容物を全て注ぎ出すことができる。
【0011】
米国特許第8763857号明細書には、さらに他の先行技術が記載されている。これによると、複雑な多関節ロッド機構によって、袋容器が機械的に圧縮され、ワインの入った袋容器に入り込んだ空気が排出される。該機構は、バネの作用によって作動し、対応するディスペンサーに取り付けられる。
【0012】
本分野における、さらに別の先行技術が提供する解決策として、ディスペンサー本体に一体化され、バキュームポンプを備えた装置により、ワインに触れた空気を排出するディスペンサーがある。該バキュームポンプは、好適な油圧回路により動作し、既知のベンチュリ管の動作原理を用いて、空気を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ディスペンサーを考案することにより、先行技術のデメリットを排除することにあり、該ディスペンサーは、収容された流体の感覚刺激特性を保つにあたり、最高レベルの効率を、より簡便、より低価格、かつより信頼性の高い構造とともに実現する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、請求項において定義されるディスペンサーにより、これらの目的を達成するものである。
【0016】
本発明の特徴とさらなる利点に関して、添付の図面を参照しながら、下記に記載する本発明の実施形態を用いて、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2は、
図1の袋容器を使用した既知の方法を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の斜視集合図であり、よりよく理解されるよう、一部を省略している。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の線Xの詳細を示すため、大きく拡大された詳細図である。
【
図6】
図6は、本発明の詳細を示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、本発明によるディスペンサーに嵌め込むことを意図した構成部品の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図7の詳細を示す断面図であり、その機能面を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照すると、
図1は、液状食品を収容するための、先行技術における容器を示し、該技術は、箱型の本体とともに機能する袋容器を備え、
図2に示すように、袋容器は、箱型の本体内に設置・格納される。
【0019】
袋容器は、その側面が、薄い膜構造材料により形成された複数層からなり、膜構造材料は、高い強度とマイクロメートルサイズの厚さを有する。こうした材料を重ねて、互いにモノリシックに溶接することにより、実質的に容器を形作る。容器は、流体を下に移動させながら、つまり、重力で下に移動させながら、供給する場合に適しており、流体は、タップを通して注ぎ出される。タップは、「開」「閉」の二つの状態を切り替えることができ、箱型の本体の下部に位置する。
【0020】
図3及び
図4は、本発明の範囲を限定することを意図せず、単なる例示としての二例をそれぞれ示している。本発明による
流体ディスペンサー1は、基本的に、全体を通して符号「2」を付された容器を備える。容器2は、その内部に、注ぎ出される第1の
流体6を収容するための収容空洞3を有し、第1の
流体6は、特に好ましくは、例えば、ワイン、ビール、油等のグループから選択される液状食品である。
【0021】
収容空洞3は、第1囲壁4により仕切られる。第1囲壁4は、略袋状をなし、注ぎ出される流体6と直接接触するように設置されており、複数の層により形成された、マイクロメートルサイズの厚さを有する膜状構造を有する。
【0022】
第2壁5aは、第1壁4の外部、少なくともその一部を覆い、第1壁4とともに流体6を収容し、二つの壁4及び5aの間に介在する、閉じた中空空間7を仕切る。
【0023】
第2の流体8を中空空間に導入し、収容空洞3の外側において、第1壁4と連携させる。これにより、その内側にある流体6を圧縮するようにする。
【0024】
容器2の上部に位置し、収容空洞3と連通する、タップの供給口9を「開」にすると、壁4に対して第2の流体8を押出力が働き、注ぎ出される流体6が、供給口9に向かう。これにより、容器2の外側に向かう、収容空洞3内に存在する気体の初期の排出動作が引き起こされる。
【0025】
気体を完全に排出するのに必要とされる以上の押出力がさらに加わると、
図3及び
図4で示すように、第2の
流体8により、
流体6は続けて、上述の容器2の上部より強制的に供給される。
【0026】
特に、
図3及び5によると、マイクロメートルサイズの厚さと膜状構造を有する、二つの壁4及び5aの間に、中空空間7を形成するのが望ましい。ここで、壁4及び5aは、互いに同等の硬さを有していてもよく、あるいは、互いに異なる硬さを有していてもよい。後者の場合、最外側に位置する壁5aが、より硬いことが望ましい。これにより、容器2が異方特性(必要であれば、自支持性)を有し、収容空洞3に収容された、注ぎ出される
流体6に対して、壁4から負荷される押出力の効果をより高めることができる。
【0027】
また、本発明の考え得る変形例として、
図4及び
図5は、中空空間7が、いかにして、第1壁4及び第2の壁5bの間で単純に幾何的に介在する物理的空間になりえるか、を示す。第2の壁5bは、より硬く、より厚い壁であり、蓋25に対する、中空収容体10の境界壁である。蓋25は、容器2の一部であり、袋容器を囲い込み、内側に格納し、必要であれば密封する。袋容器は、第1壁4及び内部空洞3によって形成され、注ぎ出される第1の
流体6を受容する。
【0028】
図6、
図7、及び
図8によると、ディスペンサー1は、さらにフランジ12を備える。フランジ12は、膜状構造を有し、互いに重なり合う、1対の壁4及び5aに接続する(
図6右側を参照のこと)。
【0029】
図8に明確に示す通り、フランジ12は、円環状の平板14を有し、平板14は、筒状つばを片持ち支持する。つば20は、板14と反対側が、供給口9により終端している。
【0030】
つば20は、その側壁において部分的に厚い場所に、角柱状の突起13を有する。突起13は、平滑化された縁を有し、つば20から遠ざかるよう、その径方向に突出し、板14の、対応する下面を部分的に覆う。
【0031】
突起13は、板14に対向する、角柱状の溝を有する。
【0032】
したがって、突起13及び板14の間に延伸し、溝及び、つば20の側壁において厚みを持たせた部分に沿って、流路の一部11aが存在する。流路は、その一端が、つば20内で、容器2の外側に対向する孔21と連通しており、他端が、他の流路11に当接し、最終的に、中空空間7に連通する。
【0033】
図6及び
図7によると、突起13(容器2の外界に連通)及び中空空間7(ただし、第1壁4と隣接するかたちで位置づけ)の間の相互連携は、膜状壁4及び5a及び突起13間の局地的かつ特殊な接続によって実現される。
【0034】
図6の右側を見ると、突起13は存在せず、膜状の第1の壁4及び膜状の第2の壁5aが完全に重なり合い、互いに溶接され、下面の環状板14にもモノリシックに溶接されている。しかし、
図6の右側で確認できる様相とは違い、
図6の左側を見ると、つまり、突起13が存在する位置を見ると、第1壁4は、板14とのみ溶接されており、一方で、第2壁5aは局地的に第1壁4と離間し、突起13と直接溶接されている。
【0035】
したがって、第2の
流体8が気体であり、外気である場合、好適な加圧手段15(
図4の中空収容体10の下部に概略的に示す)を流路11に設けることで、中空空間7を加圧することができる。中空空間7は、好適に密閉されており、
注ぎ出される第1の
流体6を収容するための収容空洞3の内部に存在する気体を、供給口9を通して、完全に排出することができる。同時に、注ぎ出される第1の
流体6を供給することも可能になる。
【0036】
加圧手段15の位置づけ(ディスペンサー1の構成に一体化された例を
図4に示す)は、ディスペンサー1の持ち運びを想定した際に、特に有益かつ利点があることは明白である。しかしながら、これに限らず、例えば、加圧手段15は、容器2の外側に、必要であれば独立して位置づけることもできる。その場合、例えば、流路11の孔21を通して圧縮された気体を送り込むことができればよい。
【0037】
閾値を検知するためのセンサー手段16を、好適に加圧手段15に一体化し、加圧手段15の自動開始・停止スイッチとして機能させる。該閾値は、中空空間7に収容された第2の流体8の圧力の限界値であり、この値をもとに、前記加圧手段(15)を作動または解除させる。センサー手段16は、例えば、圧力レギュレータで構成されていてもよい。本発明は、収容空洞3からの気体の排出を、簡便、低価格、かつ非常に効果的に実現することにより、前述の目的を果たすものである。これにより、収容された流体を、酸化から最適に保護することができる。これは、酸化により、物質の感覚刺激特性が大幅に変質してしまう種々の液状食品、例えば、ワイン、ビール、油、カクテル、フルーツジュース等に、特に有利である。
【0038】
本発明はまた、さらなる利点をもたらす。つまり、収容空洞3内の収容物を完全に注ぎ出すにあたり、外的動作を必要としない点である。実際、
図1及び
図2に示すような先行技術とは違い、本発明によるディスペンサー1には、
図3及び
図4からも明らかなように、注ぎ口となるタップが上部に設けられており、これにより、容器2を傾ける必要なく、収容空洞3内を完全に空にすることができる。
【0039】
本発明は、さらに有益な応用に、好適に用いることができる。例えば、注ぎ出される
流体6用の
冷却手段17を一体化する(
図4に、概略的に示す)ことにより、液状食品6を最適な状態で保存し、最適な温度条件で提供する場合において、特に有効である。これは、既知の事項である通り、一般的に、ワイン、特に白ワインに必要な環境である。
【0040】
以上、説明した本発明が産業上利用可能であることは、明らかである。また、請求の範囲を逸脱しない限り、複数の方法により、変形・応用され得る。
【0041】
さらに、本発明の詳細は全て、技術的に相当する要素に差し替えが可能である。