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特許7270314検査方法、検査システム、ニューラルネットワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】検査方法、検査システム、ニューラルネットワーク
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022177926
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2022-11-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年10月12日に、オンラインで開催された「シリウスビジョンセミナー」にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年8月8日に、ウェブサイト<URL:https://taktpixel.co.jp/service/poodl/>にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年5月23日に、一般社団法人日本印刷学会に論文を投稿
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519450215
【氏名又は名称】タクトピクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100224719
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】玉城 哲平
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187657(JP,A)
【文献】特開2018-096908(JP,A)
【文献】国際公開第2022/130762(WO,A1)
【文献】特開2021-177154(JP,A)
【文献】特開2021-047592(JP,A)
【文献】特開2021-139769(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111681197(CN,A)
【文献】印刷製造現場への深層学習技術の適用と画像認識プラットフォーム POODL(プードル)の紹介,Mavic[online],2019年03月14日,[2022年12月22日検索],インターネット<URL:https://mavic.ne.jp/ai-shinsogakusyu-poodl/>
【文献】Siamese Networkの紹介と印刷検査への応用,タクトピクセル開発者ブログ[online],2022年05月09日,[2022年12月22日検索],インターネット<URL:https://techblog.taktpixel.co.jp/entry/2022/05/09/141229>
【文献】LEI Tao et al.,Unsupervised SAR image change detection based on difference feature fusion,CAAI Transactions on Intelligent Systems,2021年05月,Vol.16, No.3,p.595-604,<DOI:https://dx.doi.org/10.11992/tis.202103011>
【文献】外観検査AIの決定版。教師あり&なし統合外観検査AI「Gemini eye Integration」を正式発売。,PR TIMES[online],2020年12月28日,[2022年12月22日検索],インターネット<URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000055953.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06N 3/00 - G06N 3/12
G06N 7/08 - G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物に含まれる欠陥を検査する検査方法であって、
検査装置を用いて、欠陥を含まない印刷物の第1画像データに基づいて検査対象となる印刷物の第2画像データに含まれる欠陥の有無を判定する第1検査工程を実行し、
前記第1検査工程により欠陥ありと判定された場合、前記検査装置より前記欠陥に関する基準画像データおよび対象画像データを含む欠陥情報を取得し、複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワーク構造を有する判定モデルに入力し、前記判定モデルより前記検査対象に含まれる欠陥の分類結果を出力する第2検査工程をコンピュータが実行し、
前記第2検査工程は、
前記特徴抽出層の各層において前記基準画像データおよび前記対象画像データの特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の前記基準画像データおよび前記対象画像データの画像特徴量をそれぞれ抽出する画像特徴抽出工程と、
異なる解像度の前記基準画像データおよび前記対象画像データに基づいて差分特徴量を抽出する差分特徴抽出工程と、
少なくとも異なる解像度の前記差分特徴量に基づいて、異なる解像度の前記対象画像データの特徴領域に重みを付与する画像処理工程と、
前記重みを付与した対象画像データより抽出される特徴強調画像特徴量および前記差分特徴量に基づき前記分類結果を出力する分類工程と、を含む、検査方法。
【請求項2】
前記第2検査工程は、前記欠陥の欠陥種別を特定し、前記欠陥種別ごとに設定された基準値に基づき前記検査対象となる印刷物の不良品を判定する、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
欠陥を含まない印刷物の画像データと、欠陥を含む印刷物の画像データと、前記欠陥の分類結果と、を含むデータセットを用いて機械学習された判定モデルを格納する記憶工程を更に実行し
記対象画像データは、前記第2画像データにおいて欠陥として検出された所定領域の画像データであって、
前記基準画像データは、前記第2画像データにおいて欠陥として検出された所定領域に対応する前記第1画像データにおける所定領域の画像データである、請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
前記分類結果は、前記欠陥の欠陥種別を含む、請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
前記重みに基づき画像処理された前記特徴領域を含む画像データを出力する出力工程を更に実行する、請求項1に記載の検査方法。
【請求項6】
前記特徴抽出層は、畳み込み層であって、
前記特徴抽出処理は、畳み込み処理であって、
前記特徴抽出基準画像データは、畳み込み基準画像データであって、
前記特徴抽出対象画像データは、畳み込み対象画像データである、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の検査方法。
【請求項7】
請求項1に記載の判定モデルは、複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワークであって、
入力層と、複数層の第1特徴抽出層と、複数層の第2特徴抽出層と、複数の差分処理層と、出力層と、を備え、
前記入力層は、基準画像データおよび対象画像データの入力を受け付け、
前記第1特徴抽出層は、各層において前記基準画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出基準画像データを生成し、
前記第2特徴抽出層は、各層において前記対象画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出対象画像データを生成し、
前記差分処理層は、前記第1特徴抽出層および前記第2特徴抽出層の各層において生成された前記特徴抽出基準画像データおよび前記特徴抽出対象画像データの入力を受け付け、各層ごとに差分処理を実行し、
前記出力層は、前記差分処理層より各層ごとの差分処理結果の入力を受け付け、前記対象画像データの分類結果を出力する、検査方法。
【請求項8】
複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワークであって、
入力層と、複数層の第1特徴抽出層と、複数層の第2特徴抽出層と、複数の差分処理層と、画像処理層と、分類層と、を備え、
前記入力層は、対象を含まない基準画像データおよび、検査対象となる対象画像データの入力を受け付け、
前記第1特徴抽出層は、各層において前記基準画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出基準画像データを生成し、異なる解像度の特徴抽出基準画像データの画像特徴量を抽出し、
前記第2特徴抽出層は、各層において前記対象画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出対象画像データを生成し、異なる解像度の特徴抽出対象画像データの画像特徴量を抽出し、
前記差分処理層は、前記第1特徴抽出層および前記第2特徴抽出層の各層において生成された前記特徴抽出基準画像データおよび前記特徴抽出対象画像データの入力を受け付け、各層ごとに差分処理を実行し、差分特徴量を抽出し、
前記画像処理層は、少なくとも異なる解像度の前記差分特徴量に基づいて、異なる解像度の前記対象画像データの特徴領域に重みを付与し、
前記分類層は、前記重みを付与した対象画像データより抽出され、前記画像処理層より出力される特徴強調画像特徴量および前記差分処理層より各層ごとの差分特徴量の入力を受け付け、前記対象画像データの分類結果を出力する、ニューラルネットワーク。
【請求項9】
印刷物に含まれる欠陥を検査する検査システムであって、
画像取得部と、第1検査部と、第2検査部と、を備え、
前記画像取得部は、欠陥を含まない印刷物の第1画像データと、検査対象となる印刷物の第2画像データと、を取得し、
前記第1検査部は、前記第1画像データに基づいて、前記第2画像データに含まれる欠陥の有無を判定し、
前記第2検査部は、前記第1検査部より前記欠陥に関する基準画像データおよび対象画像データを含む欠陥情報を取得し、複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワーク構造を有する判定モデルに入力し、前記判定モデルより前記検査対象となる印刷物の分類結果を出力し、
前記第2検査部は、
前記特徴抽出層の各層において前記基準画像データおよび前記対象画像データの特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の前記基準画像データおよび前記対象画像データの画像特徴量をそれぞれ抽出する画像特徴抽出部と、
異なる解像度の前記基準画像データおよび前記対象画像データに基づいて差分特徴量を抽出する差分特徴抽出部と、
少なくとも異なる解像度の前記差分特徴量に基づいて、異なる解像度の前記対象画像データの特徴領域に重みを付与する画像処理部と、
前記重みを付与した対象画像データより抽出される特徴強調画像特徴量および前記差分特徴量に基づき前記分類結果を出力する分類部と、を備える、検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法、検査システム、ニューラルネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基準となる画像データと、対象となる画像データとの間における差分を検出することで対象を検査する技術が知られている。差分検出は、検査対象における欠陥など異常の有無を判定する手法として、印刷業や製造業などの分野で用いられる。
【0003】
近年は、機械学習モデルを用いた画像認識技術も発展し、検査精度は飛躍的に向上している。
【0004】
特許文献1では、深層学習を用いて印刷物を検査する際に画像データを適切な重複量で分割する印刷物の欠陥検査技術を開示している。特許文献1では、深層学習モデルを少なくとも1つ用いて、撮像データと印刷データとを入力として、印刷物の欠陥情報を出力とする検査処理部と、深層学習モデルの畳み込み層のフィルタサイズとプーリング層のプーリングサイズと畳み込み層及びプーリング層の数とに応じた画素数だけ重複させて撮像データと印刷データとを分割する分割処理を行う前処理部と、を備えることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-047592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷分野における欠陥検出技術は、印刷機の機械的特性に由来するゆらぎや、工場内の環境に由来する異物の混入、原紙の状態に由来する異物などで、様々な画像差分が検出される。一方で、その中には印刷品質としては問題とならないものの、過剰検出された欠陥箇所も存在する。過剰検出は、印刷品質として評価すべき欠陥箇所の特定が難しくなり、問題となっている。
【0007】
また、深層学習を用いた欠陥検査技術では、特許文献1のように、欠陥の有無といった2値分類を行うことが知られているものの、深層学習モデルがどのように欠陥を評価しているかはブラックボックスであるため、モデルの改善や調整が難しい側面があった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、検査対象に検出された欠陥に対して第2検査を行うことで検査効率を改善する技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明は、印刷物に含まれる欠陥を検査する検査方法であって、検査装置を用いて、欠陥を含まない印刷物の第1画像データに基づいて検査対象となる印刷物の第2画像データに含まれる欠陥の有無を判定する第1検査工程を実行し、前記第1検査工程により欠陥ありと判定された場合、前記検査装置より前記欠陥に関する欠陥情報を取得し、前記検査対象に含まれる欠陥の分類結果を出力する第2検査工程をコンピュータが実行する。
【0010】
また、本発明は、印刷物に含まれる欠陥を検査する検査システムであって、画像取得部と、第1検査部と、第2検査部と、を備え、前記画像取得部は、欠陥を含まない印刷物の第1画像データと、検査対象となる印刷物の第2画像データと、を取得し、前記第1検査部は、前記第1画像データに基づいて、前記第2画像データに含まれる欠陥の有無を判定し、前記第2検査部は、前記欠陥に基づき前記検査対象となる印刷物の分類結果を出力する。
【0011】
このような構成とすることで、印刷物に欠陥が含まれる場合に、更に当該欠陥を分類することができ、検査の自動化、検査の精度向上、検査の速度向上を実現することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記第2検査工程は、前記欠陥の欠陥種別を特定し、前記欠陥種別ごとに設定された基準値に基づき前記検査対象となる印刷物の不良品を判定する。
このような構成とすることで、欠陥種別に対応した基準値に基づき印刷物の良品・不良品判定を行うことができる。また、検査の現場別に、許容する基準値を設定することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、欠陥を含まない印刷物の画像データと、欠陥を含む印刷物の画像データと、前記欠陥の分類結果と、を含むデータセットを用いて機械学習された判定モデルを格納する記憶工程を更に実行し、
前記第2検査工程は、基準画像データおよび対象画像データを前記判定モデルに入力し、前記判定モデルより前記分類結果を出力として取得し、
前記対象画像データは、前記第2画像データにおいて欠陥として検出された所定領域の画像データであって、
前記基準画像データは、前記第2画像データにおいて欠陥として検出された所定領域に対応する前記第1画像データにおける所定領域の画像データである。
このような構成とすることで、機械学習により検査の現場別の判定モデルを容易に生成し、現場のニーズに適合した検査を実施することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記分類結果は、前記欠陥の欠陥種別を含む。
このような構成とすることで、欠陥の有無という2値分類の場合におけるコンピュータの判定処理のブラックボックス化を防止する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記第2検査工程は、画像特徴抽出工程と、差分特徴抽出工程と、分類工程と、を含み、
前記画像特徴抽出工程は、前記基準画像データの特徴抽出基準画像データと、前記対象画像データの特徴抽出対象画像データと、を生成し、
前記差分特徴抽出工程は、前記特徴抽出基準画像データおよび前記特徴抽出対象画像データに基づいて差分特徴量を抽出し、
前記分類工程は、前記差分特徴量に基づき前記分類結果を出力する。
また、本発明の好ましい形態では、前記判定モデルは、複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワーク構造を有し、
前記画像特徴抽出工程は、特徴抽出層の各層において特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出基準画像データおよび特徴抽出対象画像データを生成し、
前記差分特徴抽出工程は、前記特徴抽出層の各層において生成された前記特徴抽出基準画像データおよび前記特徴抽出対象画像データに基づいて差分特徴量を抽出する。
このような構成とすることで、画像特徴抽出後の基準画像データと対象画像データの差分特徴量を得ることで、分類精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記画像特徴抽出工程は、前記特徴抽出層の各層において、前記基準画像データおよび前記対象画像データの画像特徴量を抽出し、
前記分類工程は、前記画像特徴量および前記差分特徴量に基づき、前記分類結果を出力する。
このような構成とすることで、異なる解像度で段階的に得られる画像特徴量と差分特徴量を用いることで、分類精度を向上させることができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記第2検査工程は、画像処理工程を更に含み、
前記画像処理工程は、抽出された前記画像特徴量および前記差分特徴量の少なくとも何れか一方に基づいて、前記特徴抽出対象画像データの特徴領域に重みを付与する。
このような構成とすることで、画像中の特徴領域を強調し、分類精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記重みに基づき画像処理された前記特徴領域を含む画像データを出力する出力工程を更に実行する。
このような構成とすることで、特徴領域が強調された画像データを得ることで、コンピュータによる特徴抽出の過程を可視化でき、ブラックボックス化を防止する。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記特徴抽出層は、畳み込み層であって、
前記特徴抽出処理は、畳み込み処理であって、
前記特徴抽出基準画像データは、畳み込み基準画像データであって、
前記特徴抽出対象画像データは、畳み込み対象画像データである。
このような構成とすることで、畳み込み処理の段階ごとの画像の特徴や、画像の差分の特徴に基づく好ましい判定モデルとすることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、判定モデルは、複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワークであって、
入力層と、複数層の第1特徴抽出層と、複数層の第2特徴抽出層と、差分処理層と、出力層と、を備え、
前記入力層は、基準画像データおよび対象画像データの入力を受け付け、
前記第1特徴抽出層は、各層において前記基準画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出基準画像データを生成し、
前記第2特徴抽出層は、各層において前記対象画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出対象画像データを生成し、
前記差分処理層は、前記第1特徴抽出層および前記第2特徴抽出層の各層において生成された前記特徴抽出基準画像データおよび前記特徴抽出対象画像データの入力を受け付け、各層ごとに差分処理を実行し、
前記出力層は、前記差分処理層より各層ごとの差分処理結果の入力を受け付け、前記対象画像データの分類結果を出力する。
このような構成とすることで、異なる解像度の特徴に基づく好ましい判定を行うモデルとすることができる。
【0021】
本発明は、複数の特徴抽出層を有するニューラルネットワークであって、
入力層と、複数層の第1特徴抽出層と、複数層の第2特徴抽出層と、差分処理層と、出力層と、を備え、
前記入力層は、対象を含まない基準画像データおよび、検査対象となる対象画像データの入力を受け付け、
前記第1特徴抽出層は、各層において前記基準画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出基準画像データを生成し、
前記第2特徴抽出層は、各層において前記対象画像データに対して特徴抽出処理を実行し、異なる解像度の特徴抽出対象画像データを生成し、
前記差分処理層は、前記第1特徴抽出層および前記第2特徴抽出層の各層において生成された前記特徴抽出基準画像データおよび前記特徴抽出対象画像データの入力を受け付け、各層ごとに差分処理を実行し、
前記出力層は、前記差分処理層より各層ごとの差分処理結果の入力を受け付け、前記対象画像データの分類結果を出力する。
このような構成とすることで、異なる解像度の特徴に基づく好ましい判定を行うモデルとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検査対象に検出された欠陥に対して第2検査を行うことで検査効率を改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の検査システムの構成図。
図2】本実施形態の第1検査装置のハードウェア構成図。
図3】本実施形態の各装置のハードウェア構成図。
図4】本実施形態の第1検査工程に関する処理フローチャート。
図5】本実施形態の第2検査工程に関する処理フローチャート。
図6】本実施形態のデータセットのデータ構成図。
図7】本実施形態の画像データのサンプル。
図8】本実施形態のニューラルネットワークの構成図。
図9】本実施形態の特徴強調画像データのサンプル。
図10】本実施形態の評価テストの結果。
図11】本実施形態の検査システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明の検査方法、検査システム、ニューラルネットワークについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0025】
本実施形態では検査システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータのプログラムおよび当該プログラムを格納したプログラム記録媒体なども、同様の作用効果を奏することができる。以下で説明する本実施形態にかかる一連の処理は、コンピュータで実行可能なプログラムとして提供され、CD-ROMやフレキシブルディスクなどの非一過性コンピュータ可読記録媒体、更には通信回線を経て提供可能である。
【0026】
検査システムは、コンピュータ装置により構成される。コンピュータ装置は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置および記憶装置を有する。当該コンピュータ装置は、記憶装置に格納される検査プログラムを、演算装置により実行することで、当該コンピュータ装置を検査装置として機能させることができる。検査方法は、検査装置を含むコンピュータ装置の処理により実現される。
【0027】
本実施形態において、検査対象は、印刷物を含む。検査対象は、例えば、設計図などの基準に従って製造される物品であって、基準となる物品および検査対象となる物品を撮像して得られる画像データの比較検証によって、検査対象となる物品の良し悪しを判断できるものであれば限定されない。
【0028】
<実施形態1>
図1は、検査システム0のブロック図を示す。検査システム0は、図1に示すように、第1検査装置1と、利用者端末3と、第2検査装置2と、記憶部DBと、を備える。検査を実施する工場などの検査現場Fは、第1検査装置1および利用者端末3を備える。検査現場Fは、図1に示すように、F1、F2と複数存在するものとする。第1検査装置1、利用者端末3、第2検査装置2は、通信ネットワークNWに接続され、それぞれデータ通信可能に構成される。なお、第1検査装置1と利用者端末3は、有線または無線により接続されてもよい。
【0029】
第1検査装置1は、機能構成要素として、第1画像取得部11と、第1検査部12と、第1出力部13と、を備える。本実施形態において、第1検査装置1は、検査対象となる画像データに含まれる欠陥を検出する第1検査工程を実行する。
【0030】
第2検査装置2は、機能構成要素として、第2画像取得部21と、第2検査部22と、第2出力部27と、を備える。第2検査部22は、画像特徴抽出部23と、差分特徴抽出部24と、画像処理部25と、分類部26と、を備える。本実施形態において、第2検査装置2は、第1検査工程で検出された欠陥を分類する第2検査工程を実行する。
【0031】
利用者端末3は、第2検査装置2に対して第2検査工程を実行する第2検査要求を送信する。利用者端末3は、第2検査装置2より第2検査工程の実行結果を受信する。利用者は、利用者端末3のディスプレイ等に実行結果を表示でき、検査対象の分類結果を確認することができる。
【0032】
記憶部DBは、各種データを格納するデータベースであって、第2検査装置2とデータ通信可能に構成されている。記憶部DBは、通信ネットワークNWに接続され、通信ネットワークNWを介して、第2検査装置2とデータ通信を行う態様であってもよい。
【0033】
<ハードウェア構成>
図2は、第1検査装置1のハードウェア構成図の一例を示す。第1検査装置1は、ハードウェア構成として、制御部101、通信部102、供給排出部103、読取部104、記憶部105、入出力インターフェイス(IF)部106、を備える。
【0034】
制御部101は、CPU等の1又は2以上のプロセッサを含み、プログラム、OS、その他のアプリケーションを実行することで、第1検査装置1の動作処理全体を制御する。制御部101は、記憶部105に記憶されている第1検査プログラムに基づき、処理を実行することによって、第1検査装置の機能構成要素(11-13)を実現する。
【0035】
通信部102は、通信ネットワークNWとの通信を制御し、第1検査装置1を動作させるために必要な入力や、動作結果に関するデータ出力を行う。
【0036】
供給排出部103は、印刷物を供給および排出する。供給排出部103は、検査対象となる複数の印刷物の供給および排出を自動で行うことができる。
【0037】
読取部104は、供給排出部103により供給された印刷物を読み取り、画像データを生成するスキャン装置や撮像デバイスなどにより構成される。
【0038】
記憶部105は、HDD(Hard disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等であって、第1検査プログラムおよび、制御部101が当該プログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。また、記憶部105は、欠陥を検出するための第1判定モデルを記憶してもよい。
【0039】
入出力IF部106は、利用者が第1検査装置1に対して第1検査工程を実行させるための入力操作や、第1検査工程の実行結果の表示など出力を行う。
【0040】
本実施形態において、第2検査装置2は、汎用のサーバ装置やパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置を用いることができる。また、利用者端末3は、利用者が操作する携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等を用いることができる。第1検査装置1、第2検査装置2、利用者端末3および、記憶部DBは、データ通信可能に構成されている。ここで、第2検査装置2は、複数のコンピュータ装置により構成されてもよく、全体として機能構成要素(21-27)を実現できれば、構成は限定されない。
【0041】
図3(a)は、第2検査装置2のハードウェア構成図の一例を示す。第2検査装置2は、ハードウェア構成として、制御部201と、通信部202と、記憶部203と、を備える。
【0042】
制御部201は、CPU等の1又は2以上のプロセッサを含み、プログラム、OS、その他のアプリケーションを実行することで、第2検査装置2の動作処理全体を制御する。制御部201は、記憶部203に記憶されている第2検査プログラムに基づき、処理を実行することによって、コンピュータ装置を第2検査装置2として機能させ、機能構成要素(21-27)を実現する。
【0043】
通信部202は、通信ネットワークNWとの通信を制御し、第2検査装置2を動作させるために必要な入力や、動作結果に関するデータ出力を行う。
【0044】
記憶部203は、HDD、ROM、RAMなどであって、第2検査プログラムおよび、制御部201が当該プログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。
【0045】
図3(b)は、利用者端末3のハードウェア構成図の一例を示す。利用者端末3は、ハードウェア構成として、CPUなどによる制御部301と、通信ネットワークNWとの通信制御を行う通信部302と、HDD、ROM、RAMなどによる記憶部303と、利用者からの操作入力を受け付けるタッチパネル、キーボード、マウス、物理ボタンなどによる入力部304と、ディスプレイなどによる表示部305と、を備える。
【0046】
<第1検査工程>
図4は、第1検査装置1が実行する第1検査工程の処理フローチャートを示す。
【0047】
ステップS11:第1画像取得部11は、欠陥を含まない基準となる印刷物の第1画像データを取得する。第1画像データは、基準となる印刷物を読取部104により読み取ることで生成される画像データを含む。また、第1画像データは、印刷物を印刷する際に、印刷装置に入力されるデザインデータであってもよい。
【0048】
ステップS12:第1画像取得部11は、検査対象となる印刷物の第2画像データを取得する。第2画像データは、検査対象となる印刷物を読取部104により読み取ることで生成される画像データを含む。
【0049】
ステップS13:第1検査部12は、第1画像データに基づいて第2画像データに含まれる欠陥の有無を判定する。第1検査部12は、欠陥ありと判定する場合、第2画像データに含まれる欠陥の欠陥領域を抽出する。第1検査部12は、第2画像データに複数の欠陥が含まれる場合、それぞれの欠陥領域を抽出する。
【0050】
第1検査部12は、欠陥の判定処理において、第1画像データと第2画像データの差分を検出することで、欠陥の有無を判定する。例えば、第1画像データと第2画像データの差分がない場合、または、差分が微小である場合、第2画像データに含まれる印刷物は、第1画像データに含まれる基準となる印刷物と差異がなく、良品であると判定される。第1画像データと第2画像データに差分がある場合、第2画像データに含まれる印刷物は、不純物や位置ズレなど欠陥として検出される。
【0051】
第1検査部12は、欠陥の判定処理において、記憶部105に格納される第1判定モデルを用いることができる。第1判定モデルは、機械学習済のモデルを示す。モデルは、例えば、ニューラルネットワークなどを採用することができるが、これに限定されない。
【0052】
ステップS14:第1検査部12は、第2画像データに少なくとも1つ以上の欠陥があると判定した場合(ステップS14でYES)、続くステップS15に進む。第1検査部12は、第2画像データに欠陥がないと判定した場合(ステップS14でNO)、続くステップS16に進む。
【0053】
ステップS15:第1出力部13は、第2画像データの欠陥領域に基づき、対象画像データを生成する。また、第1出力部13は、第1画像データに基づき、対象画像データに対応する基準画像データを生成する。第1出力部13は、生成された基準画像データおよび対象画像データを対応付けて、欠陥情報として出力する。
【0054】
対象画像データは、第2画像データにおいて欠陥として検出された所定領域(欠陥領域)の画像データである。基準画像データは、第2画像データにおいて欠陥として検出された所定領域に対応する前記第1画像データにおける所定領域の画像データである。所定領域のサイズは、本実施形態において、128×128ピクセルとしているがこれに限定されず、任意のサイズを設定可能である。
【0055】
欠陥情報は、少なくとも基準画像データと、対象画像データとを含む。欠陥情報は、対象画像データの基となった第2画像データの識別子が付与される。欠陥情報は、更に、欠陥のサイズ、輝度、色値、などの欠陥の属性データを含んでもよい。第1出力部13は、欠陥のサイズが大きい場合、欠陥が含まれる領域を欠陥領域として検出し、所定領域のサイズとなるよう画像処理を実行してもよい。また、第1出力部13は、第1画像データとしてデザインデータを用いる場合、第1画像データと第2画像データにおける輝度や色合いなど調整する画像処理を実行してもよい。
【0056】
ステップS16:第1画像取得部11は、1つの第1画像データに対して、複数の第2画像データを取得することができる。第1画像取得部11は、未取得の第2画像データがない場合(S16でNO)、処理を完了する。第1画像取得部11は、未取得の第2画像データがある場合(S16でYES)、ステップS12に戻り、ステップS12~S16の処理を繰り返し実行する。
【0057】
第1検査装置1により出力された基準画像データおよび対象画像データを含む欠陥情報は、利用者端末3により取得される。利用者端末3は、取得した欠陥情報を、第2検査装置2に対して送信する。なお、第1検査装置1は、第2検査装置2に対して生成した基準画像データおよび対象画像データを送信する構成としてもよい。
【0058】
<第2検査工程>
図5は、第2検査装置2が実行する第2検査工程の処理フローチャートを示す。本実施形態において、第2検査工程は、画像特徴抽出工程と、差分特徴抽出工程と、画像処理工程と、分類工程と、を含む。
【0059】
ステップS21:第2画像取得部21は、基準画像データおよび対象画像データを含む欠陥情報を取得し、記憶部DBに格納する。
【0060】
<画像特徴抽出工程>
ステップS22:第2検査部22の画像特徴抽出部23は、基準画像データおよび対象画像データの入力を受け付け、画像特徴抽出処理を実行する。画像特徴抽出部23は、画像特徴抽出処理を実行することで、基準画像データおよび対象画像データのそれぞれの画像特徴量を抽出する。
【0061】
また、画像特徴抽出部23は、画像特徴抽出処理を実行することで、基準画像データを異なる抽象度とした特徴抽出基準画像データと、対象画像データを異なる抽象度とした特徴抽出対象画像データと、を生成する。異なる抽象度は、例えば、128×128ピクセルの画像データと64×64ピクセルの画像データのように解像度が異なることを示す。画像特徴抽出部23は、特徴抽出基準画像データおよび特徴抽出対象画像データのそれぞれの画像特徴量を更に抽出する。
【0062】
ステップS23:画像特徴抽出部23は、画像特徴抽出処理をN回(N=1,2,3・・・)繰り返し実行することで、異なる抽象度の画像特徴量を取得する。本実施形態において、画像特徴抽出部23は、1回の画像特徴抽出処理により抽象度を1/2とし、これを4回実行し、5段階の異なる抽象度の画像特徴量を抽出する。なお、抽象度の変化幅や実行回数は、これに限定されない。なお、特徴抽出基準画像データおよび特徴抽出対象画像データは、異なる抽象度で複数生成される。
【0063】
本実施形態において、画像特徴抽出処理は、畳み込み処理を含む。なお、画像特徴抽出処理は、基となる画像データを所定サイズとなるよう分割処理し、分割された画像データのそれぞれの画像特徴量を抽出する処理を含んでもよい。本実施形態において、画像特徴抽出処理は、基となる画像データより異なる複数の画像特徴量を取得できる態様であればその手法は限定されない。
【0064】
<差分特徴抽出工程>
ステップS24:差分特徴抽出部24は、差分特徴抽出処理を実行することで、差分特徴量を抽出する。差分特徴量は、基準画像データおよび対象画像データの差分演算、抽象度ごとの特徴抽出基準画像データおよび特徴抽出対象画像データの差分演算により取得される。差分特徴量は、基準画像データおよび対象画像データより抽出された画像特徴量の差分演算、抽象度ごとの特徴抽出基準画像データおよび特徴抽出対象画像データより抽出された画像特徴量の差分演算により取得される構成であってもよい。
【0065】
<画像処理工程>
ステップS25:画像処理部25は、基準画像データおよび対象画像データより抽出された画像特徴量および差分特徴量の少なくとも何れか一方に基づいて、特徴領域に重みを付与する画像処理を実行する。
【0066】
画像処理部25は、同一の抽象度同士でそれぞれ画像処理を実行する。画像処理部25は、特徴抽出対象画像データに重みを付与することで特徴強調対象画像データを生成する。特徴強調対象画像データから特徴が強調された画像特徴量を取得することができる。画像処理部25は、異なる抽象度の特徴強調対象画像データを、同一の抽象度となるように復号化処理を実行し、出力する。
【0067】
<分類工程>
ステップS26:特徴抽出処理が完了すると(S25でYES)、分類部26は、画像特徴量および差分特徴量の少なくとも何れか一方に基づき分類結果を出力する。ここで、分類部26は、異なる抽象度で取得された画像特徴量、差分特徴量を融合し、分類結果を出力する。
【0068】
分類結果は、検査対象である印刷物が良品であるか不良品であるかを示す結果を含む。また、分類結果は、検査対象である印刷物に含まれる欠陥の欠陥種別の結果を含む。
【0069】
ステップS27:第2出力部27は、分類結果を出力する。第2検査装置2は、分類結果の出力を、利用者端末3に送信することで、利用者は、検査対象の印刷物が良品であるか、不良品であるか、または、どのような欠陥種別であるかを把握することができる。
【0070】
第2出力部27は、分類結果として取得される欠陥種別を特定し、欠陥種別ごとに設定された基準値に基づき検査対象となる印刷物が不良品か否かを判定する。第2出力部27は、欠陥種別ごとに設定された基準値テーブルに基づき、印刷物が良品であるか不良品であるかを判定する。
【0071】
基準値テーブルは、検査現場Fごとに設定可能であって、記憶部DBに格納されている。基準値テーブルは、検査現場の識別可能な検査現場IDと、欠陥種別と、欠陥種別に対応する基準値と、を有する。
【0072】
本実施形態において、欠陥種別は、汚れ、見当ズレ、カスレ、毛ごみ、網点、スジ汚れ、ピンホールを含む。なお、欠陥種別は、これらに限定されず、他の種別を更に含んでもよい。
【0073】
基準値は、欠陥種別が汚れである場合、汚れの大きさや、汚れの輝度などとして設定される。第2出力部27は、例えば、汚れの大きさが設定された基準値以下である場合、良品と判定し、汚れの大きさが基準値を超える場合、不良品と判定する。これによって、印刷物に欠陥が含まれる場合であっても、当該欠陥が許容できる範囲のものであるか否かを2次検査することで、過剰な欠陥の検出に対しても検査現場別に適合した最終的な良品/不良品の分類を自動で実行することができる。
【0074】
本実施形態において、ステップS25は省略されてもよい。また、ステップS22、S24、S25は、並行して実行可能であり、例えば、S22の画像特徴抽出処理を1回実行後、当該抽象度におけるS24の差分特徴抽出処理およびS25の画像処理を実行することができる。
【0075】
<判定モデル>
本実施形態において、第2検査部22は、基準画像データおよび対象画像データを第2判定モデルに入力し、第2検査処理を実行することで、当該第2判定モデルより分類結果を出力として取得する。第2判定モデルは、機械学習により生成され、記憶部DBに格納される。第2判定モデルは、機械学習済のモデルを示す。
【0076】
第2判定モデルは、ニューラルネットワーク構造を有する。本実施形態において、第2判定モデルは、畳み込みニューラルネットワークである。なお、第2判定モデルは、入力された画像データを異なる抽象度で複数の段階で特徴抽出する構造を有するものであればこれに限定されず、任意のモデルを採用することができる。
【0077】
第2判定モデルは、画像データを含むデータセットにより機械学習され、生成される。機械学習は、外部の装置で実行され、生成された第2判定モデルが記憶部DBに格納される。
【0078】
図6(a)は、機械学習に用いられるデータセットの構成例を示す。データセットは、データの識別子であるデータIDをキーとして、欠陥を含まない印刷物の画像データ(基準画像データに相当)と、欠陥を含む印刷物の画像データ(対象画像データに相当)と、当該欠陥の分類結果と、を含む。分類結果は、図6(a)の例において、汚れ、見当ズレ、カスレ、毛ごみ、網点、スジ汚れ、ピンホールなどを含む。
【0079】
図6(b)は、機械学習に用いられるデータセットの異なる構成例を示す。分類結果は、図6(b)の例において、良品または不良品を含む。
【0080】
データセットに含まれる画像データは、第1検査装置1により生成される基準画像データと対象画像データを用いることができる。また、データセットに含まれる画像データは、基準となる基準画像データと、当該基準画像データに対して欠陥を付与する画像処理を行うことで生成される対象画像データと、を用いることができる。
【0081】
図7(a)~(g)は、データセットに含まれる基準画像データおよび対象画像データのサンプルを示す。図7(a)~(g)は、それぞれ欠陥種別が、(a)汚れ、(b)見当ズレ、(c)カスレ、(d)毛ごみ、(e)網点、(f)スジ汚れ、(g)ピンホールの画像データであって、左図が基準画像データ、右図が対象画像データを示す。
【0082】
図8は、本実施形態における第2判定モデルのニューラルネットワーク構造を示す。ニューラルネットワーク50は、図8に示すように、入力層51と、特徴抽出層52と、差分処理層53と、画像処理層54と、分類層55と、を備える。
【0083】
入力層51は、基準画像データおよび対象画像データを入力とする層である。特徴抽出層52は、入力層51の出力結果を入力とし、基準画像データおよび対象画像データに基づく各抽象度の画像特徴量を抽出する層であり、画像特徴抽出部23における画像特徴抽出処理を実行する。差分処理層53は、特徴抽出層52の出力結果を入力とし、各抽象度の差分特徴量を抽出する層であり、差分特徴抽出部24における差分特徴抽出処理を実行する。画像処理層54は、特徴抽出層52の出力結果を入力とし、各抽象度における画像データの特徴領域に重みを付与する層であり、画像処理部25における画像処理を実行する。分類層55は、差分処理層53および画像処理層54の出力結果を入力とし、それらの結果を統合することで、対象画像データの分類結果を出力する層であり、分類部26における分類処理を実行する。
【0084】
<入力層>
入力層51は、対象画像データを入力する入力層51Aと、基準画像データを入力する入力層51Bと、を備える。
【0085】
<特徴抽出層>
特徴抽出層52は、異なる抽象度の画像データの画像特徴量を抽出する複数の特徴抽出層521~523により形成される。特徴抽出層52は、図8において、3層の例を示すが層数はこれに限定されず、N層(N=1、2、・・・N)により形成される。特徴抽出層521A~523Aは、基準画像データに基づく画像特徴抽出処理を行う層であり、特徴抽出層521B~523Bは、対象画像データに基づく画像特徴抽出処理を行う層である。特徴抽出層521Aと特徴抽出層521Bは、同じ抽象度の画像データの画像特徴抽出処理を行う層を示す。特徴抽出層52は、同じ抽象度の基準画像データと対象画像データの画像特徴抽出処理の結果を、差分処理層53および画像処理層54に対して出力する。
【0086】
特徴抽出層52の具体的な構成例を挙げると、特徴抽出層521~523は、畳み込み層と、プーリング層と、をそれぞれ有する。畳み込み層は、所定サイズの畳み込みフィルタを用いて画像データを畳み込み処理することで、画像特徴が抽出された畳み込み画像データを生成する。畳み込み層は、画像データに含まれる局所的な特徴を抽出する役割を担う。プーリング層は、畳み込み画像データに含まれる所定サイズのプーリングフィルタを用いて当該フィルタ内の代表値を取得することで特徴マップ(特徴抽出画像データ)を生成する。代表値は、例えば、フィルタ内の最大値または平均値を示す。プーリング層は、畳み込み層で抽出された局所的な特徴の位置や大きさのズレを抽象化し、ロバスト性を持たせる役割を担う。
【0087】
特徴抽出層521は、特徴マップを生成し、次の特徴抽出層522の入力データとする。特徴抽出層522は、特徴抽出層521の特徴マップより高い抽象度の特徴マップを生成し、次の特徴抽出層523の入力データとする。特徴抽出層521の出力は、基準画像データと対象画像データの抽象度で特徴抽出処理した特徴マップと、基準画像データと対象画像データを高い抽象度とした特徴マップと、を含む。
【0088】
特徴抽出層521A~523Aと、特徴抽出層521B~523Bは、同様のパラメータを有するものとする。
【0089】
<差分特徴抽出層>
差分処理層53は、特徴抽出層521~523の層数に対応した差分処理層53A~53Cを備える。図8において、差分処理層53Aは、第1の抽象度となる特徴抽出層521の出力(基準画像データ、対象画像データ)を入力とし、それら差分処理の結果を差分特徴量として出力する。差分処理層53Bは、第2の抽象度となる特徴抽出層522の出力(基準画像データに基づく特徴マップ、対象画像データに基づく特徴マップ)を入力とし、それら差分処理の結果を差分特徴量として出力する。差分処理層53A~53Cは、それぞれの差分処理の結果を、分類層55の入力データとする。また、差分処理層53A~53Cは、それぞれの差分処理の結果を、画像処理層54の入力データとすることもできる(図示せず)。
【0090】
<画像処理層>
画像処理層54は、特徴抽出層521~523の層数に対応し、それぞれの結果を入力する層(入力1~3)と、領域抽出層541と、領域抽出層の結果を出力する層(出力1~3)と、により形成される。領域抽出層は、特徴抽出層52により抽象化された画像特徴の位置情報を、基の画像データの位置情報に復元する役割を担う。
【0091】
領域抽出層541では、画像データの畳み込み処理およびプーリング処理を行うことで画像特徴を抽出し、抽出した画像特徴を維持しながら、基の画像データのサイズに復元することができる。領域抽出層541は、画像データの復元の過程で、逆畳み込み処理を実行する。本実施形態において、領域抽出層541は、U-netの構造を採用する。領域抽出層541は、セマンティック・セグメンテーションの役割を担うものであれば、U-netに限定されず、任意の構造を採用することができる。
【0092】
本実施形態において、画像処理層54は、差分処理層53A~53Cにより抽出された異なる抽象度の差分特徴量を取得する。画像処理層54は、差分特徴量に基づき、同じ抽象度の特徴マップに対して重みを付与する。画像処理は、具体的には、差分特徴量に基づく重みを、特徴マップの空間方向および/またはチャンネル方向に乗算または加算する処理を含む。画像処理層54では、領域抽出層により特徴領域の位置情報を特定し、特定した特徴領域に対して差分特徴量に基づく画像処理を行う。これにより、画像中の特徴領域が強調された特徴強調画像データを生成することができる。画像処理層54は、特徴強調画像データより画像特徴量を抽出する処理を実行してもよい。
【0093】
画像処理層54は、特徴強調画像データ、または、特徴強調画像データより抽出された画像特徴量を出力し、分類層55の入力データとする。
【0094】
<分類層>
分類層55は、融合層551と、畳み込み層552と、プーリング層553と、全結合層554と、出力層555と、を備える。融合層551は、差分処理層53および画像処理層54による結果を入力データとして受け付け、融合する層である。融合層551は、異なる抽象度の特徴マップを融合し、同じ抽象度の特徴マップを生成する。畳み込み層552は、融合層551で融合された特徴マップを畳み込み処理する。プーリング層553は、畳み込み層552により生成された特徴マップをプーリング処理する。プーリング層553は、GAP(Global Average Pooling)および/またはGMP(Global Max Pooling)によるプーリング処理を行う。全結合層554は、プーリング層553のニューロンと全結合するニューロンにより構成される。出力層555は、活性化関数を有し、全結合層554の処理結果を活性化関数の入力とし、分類結果を出力する。
【0095】
以上に示したニューラルネットワークの各パラメータは、図6に示したデータセットを用いた機械学習により決定され、第2判定モデルが生成される。基準画像データおよび対象画像データは、機械学習された第2判定モデルに入力されることで、最終的な出力として分類結果が得られる。
【0096】
第2出力部27は、第2判定モデルより分類結果を取得し、欠陥情報の送信元である第1検査装置1または利用者端末3に対して、出力する。第1検査装置1または利用者端末3は、分類結果を確認することで、検査対象となる印刷物が不良品であるか否か、または、検査対象となる印刷物に含まれる欠陥の欠陥種別が何れのものか、表示することができる。
【0097】
また、第2出力部27は、画像処理部25により画像処理された特徴強調画像データを出力することができる。特徴強調画像データは、例えば、融合層551で融合された特徴マップに基づき生成される。
【0098】
図9(a)~(g)は、対象画像データおよび特徴強調画像データのサンプルを示す。図9(a)~(g)は、それぞれ欠陥種別が、(a)汚れ、(b)見当ズレ、(c)カスレ、(d)毛ごみ、(e)網点、(f)スジ汚れ、(g)ピンホールの画像データであって、左図が対象画像データ、右図が特徴強調画像データを示す。
【0099】
特徴強調画像データは、図9に示すように、対象となる欠陥領域の周辺に画素の変化が確認できる。これによって、第2判定モデルが画像特徴量および差分特徴量を正しく抽出していることを可視化し、第2判定モデルによる処理のブラックボックス化を防止できる。例えば、利用者は、特徴強調画像データを確認したうえで、追加の機械学習を行うかを判断することができる。また、特徴強調画像データは、特徴マップの画像特徴量を増幅しているため、分類精度を向上させることができる。
【0100】
<性能テスト>
本実施形態における第2判定モデルM1、M2の性能テストの結果を表1に示す。第2判定モデルM1は、画像処理層54を有さない第2判定モデルを示し、第2判定モデルM2は、画像処理層54を有する第2判定モデルを示す。パラメータ数は、判定モデルに含まれるパラメータの総数を示す。表1に示す性能テストの結果は、各判定モデルによる欠陥種別ごとの正答率と、正答率のマイクロ平均値(micro-F1)およびマクロ平均値(macro-F1)を示す。
【0101】
性能テストの結果によると、第2判定モデルM1および第2判定モデルM2は、マイクロ平均値が、98.9%以上、マクロ平均値が97.8%以上の分類精度が得られた。画像処理層54を有する第2判定モデルM2は、網点を除く欠陥種別において、第2判定モデルM1以上の分類精度が得られた。これらの結果より、第2判定モデルは、画像処理層54を導入し、差分特徴量に基づく重みが特徴領域に付与されることで、欠陥種別の分類精度が向上するものと把握される。
【0102】
【表1】
【0103】
図10は、第2判定モデルM1(Multi DiffNet(no attention))、第2判定モデルM2(Multi DiffNet)、および、他のモデルの性能テストの結果の比較を示す。図10において、縦軸は、モデルにおけるパラメータ数を示し、横軸は、平均正答率を示す。図10で比較した他のモデルは、VGG16、VGG19、InceptionV3、ResNet50、ResNet101、ResNet152、InceptionResNetV2、Xception、DenseNet121、DenseNet169、DenseNet201などである。
【0104】
第2判定モデルM1、M2は、他のモデルで最も高い平均正答率98.4%(InceptionResNetV2)よりも高い平均正答率98.9%(第2判定モデルM1)、99.0%(第2判定モデルM2)を示した。また、第2判定モデルM1は、比較した他のモデルより少ないパラメータ数であり、第2判定モデルM2は、DenseNet121に次ぐ少ないパラメータ数であった。
【0105】
性能テストの結果が示すように、第2判定モデルは、パラメータ数が他のモデルと比較して少なく、一方で、高い分類精度を実現している。本実施形態における第2判定モデルは、パラメータ数が少ないことで、メモリや計算リソースを抑えることができる。
【0106】
<実施形態2>
図11は、検査システム0の異なるシステム構成例を示す。実施形態1と共通する構成要素には同様の符号を付して、説明を省略する。
【0107】
検査システム100は、図1に示すように、第1検査装置1と、第2検査装置2と、記憶部DBと、を備える。第1検査装置1および第2検査装置2は、有線または無線により接続され、通信可能に構成されている。記憶部DBは、第2検査装置2とデータ通信可能に接続されている。記憶部DBは、第2判定モデルを格納する。第2検査装置2は、第2判定モデルを用いて第2検査工程を実行する。
【0108】
実施形態2において、第1検査装置1と第2検査装置2は一体型の装置であってよい。第1検査装置1は、第1検査工程を実行し、結果を第2検査装置2に出力する。第2検査装置2は、第1検査工程の結果を取得し、基準画像データおよび対象画像データに対する第2検査工程を実行し、分類結果を出力する。
【0109】
実施形態2において、第2検査装置2は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の汎用コンピュータとして構成されてもよい。本実施形態にかかる第2判定モデルは、パラメータ数が比較的少ないため、メモリや計算リソースが少ない汎用コンピュータで実装可能であって、導入コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0110】
0 検査システム
1 第1検査装置
11 第1画像取得部
12 第1検査部
13 第1出力部
2 第2検査装置
21 第2画像取得部
22 第2検査部
23 画像特徴抽出部
24 差分特徴抽出部
25 画像処理部
26 分類部
27 第2出力部
3 利用者端末
DB 記憶部
50 ニューラルネットワーク
51 入力層
52 特徴抽出層
53 差分処理層
54 画像処理層
55 分類層
100 検査システム
【要約】
【課題】
検査対象に検出された欠陥に対して第2検査を行うことで検査効率を改善する技術を提供すること。
【解決手段】
印刷物に含まれる欠陥を検査する検査方法であって、検査装置を用いて、欠陥を含まない印刷物の第1画像データに基づいて検査対象となる印刷物の第2画像データに含まれる欠陥の有無を判定する第1検査工程を実行し、前記第1検査工程により欠陥ありと判定された場合、前記検査装置より前記欠陥に関する欠陥情報を取得し、前記検査対象に含まれる欠陥の分類結果を出力する第2検査工程をコンピュータが実行する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11