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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】森林管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230428BHJP
【FI】
G06Q50/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022559530
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2022019081
【審査請求日】2022-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322004887
【氏名又は名称】EPFJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169591
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 稔
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106208(JP,A)
【文献】特開2001-297150(JP,A)
【文献】特開2017-201936(JP,A)
【文献】特開2016-081502(JP,A)
【文献】特開2006-094314(JP,A)
【文献】特開2019-185449(JP,A)
【文献】特開2009-110214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置を有しネットワークを介して複数の端末と通信可能なコンピュータにソフトウェアとして実装される森林管理システムであって、
前記記憶装置に保持される森林データベースと、前記ネットワークを介して1台または複数の利用者端末との通信を可能とするためのインターフェースと、アクセス管理部とを備え、
前記森林データベースは、樹木情報と、当該樹木情報に紐付けされた利用者を識別する利用者情報と、前記利用者の付加価値情報へのアクセス権を規定するアクセス権限情報を少なくとも保持し、
前記アクセス管理部は、前記利用者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に応じたアクセス権限を当該利用者に付与し、
前記樹木情報は、立木の識別情報と当該立木の位置情報及び属性情報を含み
前記森林データベースは、前記利用者情報として投資者及び/または投資候補者を保持し、前記利用者情報は、利用者が投資者であるときは当該利用者と当該利用者が投資した立木の識別情報を対応付ける情報であり、利用者が投資候補者であるときは当該利用者と当該利用者が投資を検討する立木の識別情報を対応付ける情報であり、対応するアクセス権限情報として当該投資者及び/または投資候補者に許可されるアクセス権限を、それぞれ保持することができ、
前記付加価値情報は、前記立木が生育する森林の地形情報及び作業道情報とをさらに含み、
前記アクセス管理部は、投資候補者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した投資者または投資候補者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該投資者または当該投資候補者に、前記位置情報と前記属性情報と前記地形情報及び前記作業道情報の閲覧を許可し、
前記森林データベースは、利用者情報として、1つの樹木情報に1または複数の投資者及び/または1または複数の投資候補者、及びそれぞれに対応するアクセス権限情報を保持することができ、
前記森林管理システムは、地図・地形解析部をさらに備え、
前記地図・地形解析部は、前記地形情報を解析して将来作業道として整備され得る経路を抽出し、路網整備計画として前記付加価値情報に追加することができ、
前記アクセス管理部は、投資者または投資候補者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した投資者または投資候補者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該投資者または当該投資候補者に、前記路網整備計画の閲覧を許可する、
森林管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記樹木情報は、立木の識別情報と当該立木の位置情報及び属性情報と含み、
前記利用者情報は、利用者と当該利用者が契約した立木の識別情報を対応付ける情報であり、
前記付加価値情報は、前記立木の識別情報ごとに、対応付けられた利用者に固有の情報を含み、
前記アクセス管理部は、利用者に対して前記利用者情報よって当該利用者に対応付けられた識別情報の立木に対応して、当該利用者に固有の情報を前記付加価値情報に追加することを許可する、
森林管理システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記森林データベースは、利用者に固有の情報に加えて、当該固有の情報に対する第三者のアクセス権限を当該利用者が規定することができる個別アクセス権限管理情報をさらに保持することができ、
前記アクセス管理部は、当該利用者以外から当該固有の情報へのアクセス要求があったときに、前記個別アクセス権限管理情報に基づいてアクセスを許可する、
森林管理システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記樹木情報は、立木の識別情報と当該立木の位置情報及び属性情報と含み、
前記利用者情報は、利用者と当該利用者が契約した立木の識別情報を対応付ける情報であり、上位利用者と下位利用者を含み、
前記森林データベースは、前記上位利用者のアクセス権を規定する上位アクセス権限情報と前記下位利用者のアクセス権を規定する下位アクセス権限情報とをそれぞれ保持することができ、
前記アクセス管理部は、上位利用者からのアクセス要求があったときに、前記上位アクセス権限情報に基づいてアクセスを許可し、下位利用者からのアクセス要求があったときに、前記下位アクセス権限情報に基づいてアクセスを許可する、
森林管理システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記樹木情報は、所定の領域の識別情報と当該領域の位置情報及び属性情報と、立木の識別情報と当該立木の位置情報及び属性情報を含み、
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記領域の位置情報及び属性情報と前記立木の位置情報及び属性情報の閲覧を許可する、
森林管理システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記付加価値情報は、前記所定の領域への道案内情報を含む物理的アクセス情報を含み、
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記物理的アクセス情報の閲覧を許可する、
森林管理システム。
【請求項7】
請求項5において、
前記利用者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であり、
前記森林データベースは、前記利用者端末が前記所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持し、
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者端末の位置情報を参照して当該利用者端末が前記所定の領域内にあるときは、対応するアクセス権限情報に加えて前記現地アクセス権限情報に基づく付加価値情報のへのアクセスを当該利用者に許可する、
森林管理システム。
【請求項8】
請求項5において、前記インターフェースは、前記ネットワークを介して1台または複数の研究者端末との通信を可能とされ、
前記森林データベースは、前記利用者情報として当該樹木情報に紐付けされた研究者を識別する研究者情報と、前記研究者の研究結果を前記付加価値情報として書き込むアクセス権を規定する研究者アクセス権限情報を保持することができ、
利用者のアクセス権限情報は、前記研究結果を閲覧する権限を含むことができ、
前記アクセス管理部は、前記研究者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した研究者を前記研究者情報と照合し、当該研究者に研究結果を前記付加価値情報として書き込むことを許可し、
前記アクセス管理部は、前記利用者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報が前記研究結果の閲覧する権限を含むときに、当該利用者に前記研究結果の閲覧を許可する、
森林管理システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記利用者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であり、
前記森林データベースは、前記利用者端末が前記所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持し、
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者端末の位置情報を参照して当該利用者端末が前記所定の領域内にあるときは、対応するアクセス権限情報に加えて前記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記研究結果の閲覧を許可する、
森林管理システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記樹木情報は、所定の領域の識別情報と当該領域の位置情報及び属性情報を含み、
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に所定のアプリケーションプログラムの利用を許可する、
森林管理システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記利用者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であり、
前記森林データベースは、前記利用者端末が前記所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持し、
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者端末の位置情報を参照して当該利用者端末が前記所定の領域内にある場合は、対応するアクセス権限情報に加えて前記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に所定のアプリケーションプログラムの利用を許可する、
森林管理システム。
【請求項12】
請求項11において、
利用者からアクセス要求を受信したときに前記アクセス管理部が、当該利用者端末が前記所定の領域内にある場合に前記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に許可するアクセス権限は、同じ領域内にある他の利用者端末との情報交換を含む、
森林管理システム。
【請求項13】
請求項1において、
前記森林データベースは、当該樹木情報に紐付けされた管理者を識別する管理者情報と、前記管理者が付加価値情報を更新するためのアクセス権を規定する管理者アクセス権限情報を、さらに保持し、
前記アクセス管理部は、管理者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した管理者を前記管理者情報と照合し、対応する付加価値情報の更新を当該管理者に許可する、
森林管理システム。
【請求項14】
請求項13において、
前記管理者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であり、
前記アクセス管理部は、前記管理者端末からアクセス要求を受信したとき、前記管理者端末自身の位置情報に基づいて周囲の立木に関する管理計画にアクセスすることを許可する、
森林管理システム。
【請求項15】
請求項1において、
前記立木の位置情報及び属性情報は、森林を上空から撮影した画像から抽出する、
森林管理システム。
【請求項16】
請求項1において、
前記立木の位置情報及び属性情報は、森林を上空から撮影した画像を含め、複数の角度から撮影した画像を合成した3次元モデルから抽出する、
森林管理システム。
【請求項17】
請求項1において、
前記地形情報及び作業道情報は、森林を上空から撮影した画像を含め、複数の角度から撮影した画像を合成した3次元モデルから抽出する、
森林管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、森林管理システムに関し、特に森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
国連が掲げる持続可能な17の開発目標に含まれる「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「住み続けられるまちづくり」「陸の豊かさを守る」などに関連した活動の活発化に伴い、森林、特に里山を、復興し管理・育成する事業に注目が集まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定区画の森林の立木(樹木)を保全・管理し、なおかつ当該立木の資産価値をリアルタイムで評価することができる立木の管理システムが開示されている。同文献に開示される管理システムでは、立木を1本単位で識別し、立地、樹種、材積、樹齢などの情報から資産価値を評価し、さらには金融商品として販売するとされる(第0085段落、第0092段落等)。そのために同管理システムには、森林管理の施工業者、木材の加工業者及び材木市場の端末と接続する手段が提供され、さらにまた、金融機関や立木を購入したユーザー(保有者)の端末にも接続する手段が提供され得るとされている。特許文献1発明では、立木の保有者として家具メーカと住宅販売メーカが例示され、その顧客が子供の誕生や結婚など将来を見据えて立木を購入することにより、その代金を所定期間後に最終加工品を受け取るまでの施業を通じた森林の維持管理費用に充当できるとされる。また立木の資産価値がリアルタイムで管理されているため、任意に転売することもできるとされている(第0165段落~第0166段落、図9図10、第0181段落~第0192段落、図15A図15B等)。ここで「立木」とは「りゅうぼく」と読み、土地に生育しているままの樹木またはその集合体を指し、日本国民法上、土地の定着物、即ち、不動産と位置づけられ、立木ニ関スル法律に基づく所有権保存の登記が可能とされている。また「材積」とは加工木材の体積を指す。
【0004】
特許文献2には、森林の復興、育成を行う事業体を支援する森林復興支援システムが開示されている。復興育成計画の対象となる森林の価値を数値化して示し、投資を募る。森林の価値は、植林パターンの美的価値、観光価値、広告価値を含む商業的価値に基づいて評価され、さらにはCO吸収量価値、防災的価値、環境保全価値及び雇用創出価値も、その価値評価に加えることができるとされる。事業体はこの森林復興支援システムによって評価された価値に基づいて投資額を決定し、投資家から投資を募るとされ、その際にはこの森林復興支援システムを通じて森林復興育成計画が提示される(第0009段落~第0015段落)。投資家としては、個人や法人の一般投資家、CO排出権の購入を希望する企業、森林の育成に関心を持つ観光事業者や協賛企業等が想定されている(第0026段落)。
【0005】
特許文献3及び4には、森林を上空から撮影した画像から、個々の立木を識別して緯度経度による位置を特定し、合わせて樹種などの属性を求めて、データベースを構築する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-238191号公報
【文献】特開2015-121880号公報
【文献】特開2014-100099号公報
【文献】特開2008-46837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、特許文献1及び2に記載される森林またはその森林の立木に対する投資管理システムでは、投資者に利益を還元する手段が十分に考慮されていないという新規の課題を見出した。
【0008】
特許文献1に開示される立木の管理システムでは、立木1本単位の資産価値がリアルタイムで算出されて、その立木に投資した投資者に情報提供されるが、その価値は樹木の木材としての価値に留まる。特許文献2に開示される森林復興支援システムでは、樹木の木材としての価値だけではなく、森林の商業的価値、防災的価値、環境保全価値など、多様な価値が投資額に反映される。つまり樹木の木材としてしての価値に加えて多様な価値が投資額に反映されるとされる。ただしその場合でも、当該森林復興支援システムを運営する事業体が何らかの方法で得た利益が投資者に還元されるに留まる。このように、特許文献1の立木の管理システムと特許文献2の森林復興支援システムはいずれも、投資資金の流動性を向上して金融商品としての魅力を向上することに貢献し、その結果集まる投資を森林の管理保全に充当することによって森林の価値を向上させ、結果として投資者に利益を還元する。この2つの従来技術の背景には、森林が適切に管理されればその森林から得られる収益が、管理保全するためのコストを上回って、利益が得られることを前提として構築されたビジネスモデルが存在していることになる。しかしながら昨今の林業の衰退と森林の荒廃は、残念ながら上記前提が満たされず、森林が適切に管理されても必ずしも十分な利益を上げられないことを、顕著に示していると考えざるを得ない。
【0009】
そこで発明者は、投資者から資金を募って、森林を管理するシステムにおいて、投資者に対して従来にない付加価値を提供することが必要であると考えた。ところが上記特許文献1及び2を含む従来技術によっては、投資者に従来以上の高い付加価値を提供することが困難であることに気付いた。
【0010】
本発明の目的は、森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムを実現することである。
【0011】
このような課題を解決するための手段を以下に説明するが、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施の形態によれば、下記の通りである。
【0013】
すなわち、記憶装置を有しネットワークを介して複数の端末と通信可能なコンピュータにソフトウェアとして実装される森林管理システムであって、以下のように構成される。
【0014】
森林管理システムは、記憶装置に保持される森林データベースとネットワークを介して1台または複数の利用者端末との通信を可能とするためのインターフェースとアクセス管理部とを備える。森林データベースは、樹木情報と、当該樹木情報に紐付けされた利用者を識別する利用者情報と、前記利用者の付加価値情報へのアクセス権限を規定するアクセス権限情報とを、少なくとも保持している。アクセス管理部は、利用者端末からアクセス要求を受信したとき、それを発した利用者を森林データベースの利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に応じたアクセスを当該利用者に許可する。
【0015】
ここで、利用者には、投資者、管理事業者、運営事業者、一般利用者など、種々の者が含まれ得る。例えば、投資者は、上記森林管理システムが管理する森林に生育する立木やある一定の区画、またはその森林全体に対して投資をする者である。管理事業者はそれら森林、立木等を管理する者、運営事業者はそれらを利用した事業を行う者、一般利用者は、その事業の利用者である。また、アクセス権限情報には、付加価値情報の保管場所とその付加価値情報に対するアクセスの種類、例えば、閲覧(読み出し)のみ、追記や上書きを含む書き込みなどが含まれる。さらに広義には、アクセス先に保管されているソフトウェア(アプリケーションプログラム)の実行や、アクセス先からのソフトウェアのダウンロード、ダウンロードしたソフトウェアのインストールや実行など種々の利用が含まれても良い。本明細書において、アクセス権とアクセス権限は同義であり、「アクセス」の具体的内容は、ここで説明したのと同様に、閲覧(読み出し)のみ、追記や上書きを含む書き込み、ソフトウェアの実行やダウンロードなど種々のアクセスであり得る。
【発明の効果】
【0016】
前記一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0017】
すなわち、森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の森林管理システム及びそれと接続される複数の端末の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の森林管理システムを用いて皆伐前の森林を管理し、投資対象として運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
図3図3は、森林を皆伐した後、植林した立木を記念樹とする事業を運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
図4図4は、森林を皆伐した後、植林した立木を樹木葬の墓苑として運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
図5図5は、森林を自然環境の保全を目的として管理し、森林の生態研究を投資対象として運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
図6図6は、立木情報を収集する方法の一例を示す説明図である。
図7図7は、収集した立木情報を地図に表示した例を示す説明図である。
図8図8は、森林における野外活動を支援する事業の運営に好適な、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0020】
〔1〕利用者に対して個別の付加価値情報を提供することができる森林管理システム(図1
本発明の一実施の形態に係る森林管理システム(10)は、記憶装置(11)を有しネットワーク(14)を介して複数の端末(15~19)と通信可能なコンピュータにソフトウェアとして実装され、以下のように構成される。
【0021】
森林管理システム(10)は、前記記憶装置に保持される森林データベース(1)と、前記ネットワークを介して1台または複数の利用者端末(16)との通信を可能とするためのインターフェース(13)と、アクセス管理部(3)とを備える。
【0022】
前記森林データベースは、樹木情報(4)と当該樹木情報に紐付けされた利用者を識別する利用者情報(5)と前記利用者の付加価値情報(2)へのアクセス権限を規定するアクセス権限情報(6)を少なくとも保持する。
【0023】
前記アクセス管理部は、前記利用者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に応じたアクセスを当該利用者に許可する。
【0024】
ここで付加価値情報(2)は、森林管理システム(10)の記憶装置(11)内にデータとして保持されても良いし、または、インターフェース(13)を介してネットワーク(14)に接続される外部の装置に記憶されても良い。
【0025】
これにより、森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムを実現することができる。付加価値情報は、各利用者に個別に例えば当該利用者との契約で規定された条件に基づいて提供されるため、その利用者に特有の利益として提供することができるからである。なお、樹木情報は、森林の区画(領域)または個々の立木であって、識別子(ID)とその座標(例えば、緯度と経度)を含み、さらにその区画(領域)または立木の属性情報(例えば、樹種、樹高、樹齢)を含んでもよい。
【0026】
〔2〕将来の木材としての価値に期待して立木に投資(図2
〔1〕の森林管理システム(10)において、前記樹木情報は、立木の識別情報(7)と当該立木の位置情報(8)及び属性情報(9)を含む。
【0027】
前記森林データベースは、前記利用者情報として投資者又は投資候補者を、対応するアクセス権限情報として当該投資者又は投資候補者に許可されるアクセス権を、それぞれ保持することができる。
【0028】
前記付加価値情報は、前記立木が生育する森林の地形情報(55)及び作業道情報(56)とをさらに含み、前記アクセス管理部は、投資者又は投資候補者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した投資者または投資候補者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該投資者または当該投資候補者に対して、前記位置情報と前記属性情報と前記地形情報及び前記作業道情報の閲覧を許可する。
【0029】
ここで、位置情報とは、例えば緯度・経度によって特定される座標とするとよい。森林内に指標(ランドマーク)を設けこれを基準とした相対的な座標としてもよい。地形情報は、国土地理院等公的機関や地図を作成する企業が作成した等高線によって表現された地形情報であってもよく、現地での測量によってさらに高精度な地形情報に更新されても良い。また、北向き斜面/南向き斜面などの方向や斜度のように、立木を主体とした情報に変換されていてもよい。また作業道情報とは、車両が通行することができる林道、人が通行することができる通路のような道、トロッコ等が移動できる軌道、ハイキングコースなど森林の管理者以外にも解放された道など、如何なる通路が含まれても良い。さらに、人の通行が困難な場所に例えば集材のために作設する架線など、木材や資材の運搬を目的とした運搬路を含んでもよい。また、森林データベースに保持される作業道情報には、その通路の経路や幅や斜度、舗装の有無、人や車両の通行の可否などの補足情報を含んでもよい。
【0030】
これにより、森林の立木へ既に投資している投資者だけでなく立木への投資を検討している投資候補者が、当該立木の価値を評価するための情報を得ることができる。立木の属性情報は、例えば、樹種、樹高、幹の太さなどであり、地形情報に立木の位置情報をマッピングすることによって、生育している環境、例えば、平坦地か南向き斜面か北向き斜面か、周囲にどんな樹木が生育しているかがわかり、投資候補者は、投資を検討している立木の生育環境を評価することができる。また、投資候補者は、作業道情報を閲覧することによって、投資を検討している立木の管理や伐採に要するコストを見積もることができ、当該立木の価値に影響する因子に含めることができる。さらに前記地形情報と合わせて、将来の作業道整備を予想することもできる。
【0031】
〔3〕1本の立木に対して複数の投資者/投資候補者
〔2〕の森林管理システム(10)において、前記森林データベースは、利用者情報として、1つの樹木情報に1または複数の投資者及び/または1または複数の投資候補者、及びそれぞれに対応するアクセス権限情報を保持することができる。投資者または投資候補者は、個人、会社などの法人の他、法人格をもたない団体でもよい。(法人格のない団体の場合には契約面で何らかの配慮が必要であるが、発明としてはこの点は不問である。)そのため、上述のように「1または複数」として単位のない表記を採用した。
【0032】
これにより、1本の立木や1つの区画であっても複数の投資者からの投資を受けることができる。また、既に投資者が紐付けられている立木や区画に対して、投資候補者を紐付けることができる。これにより、現在の投資者から投資候補者への投資者の地位の移譲を検討するような場合の利便性が向上する。
【0033】
〔4〕路網整備計画を付加価値として投資者/投資候補者に提供(図1
〔3〕の森林管理システム(10)は、地図・地形解析部(61)をさらに備えることができる。前記地図・地形解析部は、前記地形情報を解析して将来作業道として整備され得る経路を抽出し、路網整備計画として前記付加価値情報に追加することができるように構成される。前記アクセス管理部は、投資者または投資候補者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した投資者または投資候補者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該投資者または当該投資候補者に、前記路網整備計画の閲覧を許可する。
【0034】
前記路網整備計画には、さらに、木材を集積するための架線を敷設することができる経路を含めることができる。また、作業道ごとに、通行することができる林業機械等の種類や組合せを示し、それぞれが伐木造材、集材、造林、保育等、どのような作業に利用することができるかを示し、または推測するための付加価値として提供しても良い。
【0035】
これにより、立木に対する従来の投資管理システムよりも、高い付加価値を、森林管理システムの利用者である投資者/投資候補者に提供することができる。林道、作業道などの路網は、立木を伐採して搬出するコストを算出するために重要な因子であり、将来の路網整備計画は、立木の将来の資産価値を予想するために極めて重要な因子となる。従ってこの路網整備計画は、投資者と投資を検討している投資候補者にとって極めて高い付加価値のある情報である。
【0036】
〔5〕記念樹事業(利用者固有の情報を契約した樹木に紐付けて保管)(図3
〔1〕の森林管理システム(10)において、前記樹木情報は、立木の識別情報(7)と当該立木の位置情報(8)及び属性情報(9)を含むように構成することができる。前記利用者情報は、利用者と当該利用者が契約した立木の識別情報を対応付ける情報である。
【0037】
前記付加価値情報は、前記立木の識別情報ごとに、対応付けられた利用者に固有の情報(53)を含み、前記アクセス管理部は、利用者に対して前記利用者情報よって当該利用者に対応付けられた識別情報の立木に対応して、当該利用者に固有の情報を前記付加価値情報に追加することを許可する。
【0038】
これにより、森林の立木を記念樹等として活用する事業において高付加価値を提供可能な、森林管理システムを実現することができる。例えば利用者は、契約した対象の立木の生育をいつでも閲覧できるばかりでなく、その生育経過に対応付けて、自身や家族等の成長記録を、前記森林データベースを通じて書き込みまた読み出すことができるので、利用者に高付加価値を提供することができる。したがって、森林を借り受け又は購入し、本発明の森林管理システム(10)を使って記念樹の事業を行う事業者は、提供する付加価値に見合った収益を期待して、例えば皆伐された森林に対して、植林、植樹、路網整備などの投資を行うことが容易となる。
【0039】
〔6〕記念樹の利用者に対して第三者へ公開する権限を付与
〔4〕の森林管理システム(10)において、前記森林データベースは、利用者に固有の情報に加えて、当該固有の情報に対する第三者のアクセス権限を当該利用者が規定することができる個別アクセス権限管理情報(図示を省略)をさらに保持することができ、前記アクセス管理部は、当該利用者以外から当該固有の情報へのアクセス要求があったときに、前記個別アクセス権限管理情報に基づいてアクセスを許可する。
【0040】
これにより、森林の立木を記念樹等として運用するする事業においてさらに高い付加価値を提供可能な、森林管理システムを実現することができる。例えば事業者は、投資した立木を記念樹として運用するような事業を展開することができる。さらに詳しい一例では、利用者が立木を卒業記念樹として契約又は購入し、当該立木に対応付けて、卒業生が卒業の記念写真や卒業アルバムを閲覧できるように構成したり、卒業生から寄せられる近況を、当該立木の成長とともに記録して、卒業生やその家族、友人などに公開したりするような事業を展開することができる。
【0041】
〔7〕樹木葬の墓地として立木を販売(利用者の階層化)(図4
〔1〕の森林管理システム(10)において、前記樹木情報は、立木の識別情報(7)と当該立木の位置情報(8)及び属性情報(9)を含み、前記利用者情報は、利用者と当該利用者が投資した立木の識別情報を対応付ける情報であり、上位利用者(5-1)と下位利用者(5-2)を含むように構成することができる。
【0042】
前記森林データベースは、前記上位利用者のアクセス権を規定する上位アクセス権限情報(6-1)と前記下位利用者のアクセス権を規定する下位アクセス権限情報(6-2)とをそれぞれ保持することができ、前記アクセス管理部は、上位利用者からのアクセス要求があったときに、前記上位アクセス権限情報に基づいてアクセスを許可し、下位利用者からのアクセス要求があったときに、前記下位アクセス権限情報に基づいてアクセスを許可する。
【0043】
これにより、利用者を階層化することができる。例えば、上位利用者は、複数の立木に投資して管理運営を行うことによって付加価値を創生し、生み出された付加価値を個々の立木の付加価値として、下位利用者に再販売することができる。上位利用者は付加価値を提供するために、付加価値情報を随時追加して提供し、下位利用者はその付加価値情報にアクセスすることによって、付加価値を享受する。例えば、樹木葬の墓苑管理者が上位利用者となって、墓苑の管理実績や法要計画・実績を付加価値情報に追加し、故人を埋葬する遺族が下位利用者となって、その付加価値情報にアクセスすることによって得られる墓苑の管理実績や法要計画・実績が、下位利用者である遺族が享受できる付加価値となる。下位利用者である遺族が、故人の固有情報(例えば、命日、戒名、遺影)を固有の付加価値情報として保存し、いつでも自由に閲覧、更新することができるように、森林管理システムを構成すれば、これも下位利用者が享受することができる付加価値となる。
【0044】
〔8〕一定の領域への投資(図5
〔1〕の森林管理システム(10)において、前記樹木情報は、所定の領域の識別情報と当該領域の位置情報及び属性情報と、立木の識別情報と当該立木の位置情報及び属性情報を含み、前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記領域の位置情報及び属性情報と前記立木の位置情報及び属性情報の閲覧を許可する。
【0045】
これにより、立木1本1本だけではなく、一定区画など領域単位で森林にも投資することができる。得られる付加価値情報は、例えば、その領域の航空写真などの映像、その領域のライブ映像、その領域の動植物分布、その領域から得られる間伐材などを使ったバイオマス発電の発電実績などである。利用者は例えばその領域への投資者であって、その投資者は投資することによって、その領域の森林管理と自然保護に貢献することができる。
【0046】
これにより、一定の領域の森林に投資してその森林に付加価値を生む事業を展開することができる。また、その領域内の立木1本単位または細分化された小領域単位で再販売することもできる。一定の領域の森林に投資した事業者を上位利用者とし、その事業の需要者や再販売された立木または小領域に投資した者を下位利用者として位置づけ、それぞれに付加価値情報へのアクセス権限を与えることにより、付加価値とすることができる。例えば、下位利用者としての需要者は、当該一定領域の森林で事業として行われる種々の体験型の活動に参加し、また下位利用者としての下位投資者は、当該一定領域の森林の命名権、領域内のハイキングコースを命名または保有する権利、或いは、CO排出権として再販することによる利益を享受することができる。
【0047】
〔9〕現地への物理的アクセス情報(道案内)の提供
〔8〕の森林管理システムにおいて、前記付加価値情報は、前記所定の領域への道案内情報を含む物理的アクセス情報を含むように構成することができる。ここで物理的アクセス情報とは、実際に現地に行くための案内情報で、例えば、最寄りの駅、バス停、宿泊施設、インターチェンジ等からの道順を案内する地図や、それらを目的地とする交通機関の情報が含まれる。前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記物理的アクセス情報の閲覧を許可する。
【0048】
これにより、森林やその森林に生育する立木に投資した利用者等が、自身の投資した森林・立木を実際に訪れるときに、物理的アクセスを助ける付加価値情報を提供することができる。なお、一般に用いられる用語としては単に「アクセス情報」「アクセス案内」を用いれば十分であるが、本明細書では他にコンピュータ情報へのアクセスを意図する「アクセス」を用語として多用しているため、あえて「物理的」として区別している。
【0049】
〔10〕利用者端末(GPS機能付き)を携行した者が現地で活動する場合の情報提供
〔8〕の森林管理システムにおいて、前記利用者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であり、前記森林データベースは、前記利用者端末が前記所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持する。
【0050】
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者端末の位置情報を参照して当該利用者端末が前記所定の領域内にあるときは、対応するアクセス権限情報に加えて前記現地アクセス権限情報に基づく前記付加価値情報へのアクセスを、当該利用者に許可する。
【0051】
これにより、森林やその森林に生育する立木に投資した利用者が、自身の契約した森林・立木を実際に訪れて森林内で活動するときに、森林内の位置に基づいてその周辺の付加価値情報を提供することができる。
【0052】
〔11〕自然環境や野生生物の生態に関する情報を、利用者に還元(図5
〔8〕の森林管理システム(10)において、前記インターフェースは前記ネットワークを介して1台または複数の研究者端末(18)と通信することができ、前記森林データベースは、前記利用者情報として当該樹木情報に紐付けされた研究者を識別する研究者情報(5-1)と、前記研究者の研究結果を前記付加価値情報として書き込むアクセス権を規定する研究者アクセス権限情報(6-1)を保持することができ、利用者のアクセス権限情報(6-2)は、前記研究結果を閲覧する権限を含むことができる。
【0053】
前記アクセス管理部は、前記研究者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した研究者を前記研究者情報と照合し、当該研究者に研究結果を前記付加価値情報として書き込むことを許可し、前記利用者端末からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報が前記研究結果の閲覧する権限を含むときに、当該利用者に前記研究結果の閲覧を許可する。
【0054】
これにより、森林を利用する自然環境保護や野生生物の生態研究を支援する事業において高付加価値を提供可能な、森林管理システムを実現することができる。例えば、利用者は、投資した森林における野生生物の生態研究に対して投資を行った場合に、その研究成果を閲覧することができる。このように本発明の森林管理システムは、付加価値を生む事業の成立に資することができる。
【0055】
〔12〕利用者端末(GPS機能付き)を携行した者が現地で活動する場合に研究結果の閲覧を許可
〔11〕の森林管理システム(10)において、前記利用者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続することができるように構成される。前記森林データベースは、前記利用者端末が前記所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報(図示は省略)をさらに保持する。
【0056】
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者端末の位置情報を参照して当該利用者端末が前記所定の領域内にあるときは対応するアクセス権限情報に加えて前記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記研究結果の閲覧を許可する。
【0057】
これにより、環境保護や生態研究の対象となっている森林やその森林に生育する立木に投資した利用者が、自身の投資した森林を実際に訪れて森林内で活動するときに、森林内の位置に基づいてその周辺の研究結果を付加価値情報として提供することができる。
【0058】
〔13〕利用者端末を携行する者にアプリケーションプログラムの利用を許可(図8
〔1〕の森林管理システム(10)において、前記樹木情報は、所定の領域の識別情報と当該領域の位置情報及び属性情報を含む。前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者を前記利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に所定のアプリケーションプログラム(59)の利用(62)を許可する。
【0059】
これにより、森林を利用する事業において、利用者に対してアプリケーションプログラムの利用という付加価値を提供することができる。
【0060】
〔14〕利用者端末(GPS機能付き)を携行した者が現地で活動する場合
〔13〕の森林管理システムにおいて、前記利用者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であり、前記森林データベースは、前記利用者端末が前記所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持する。
【0061】
前記アクセス管理部は、利用者からアクセス要求を受信したときに、前記アクセス要求を発した利用者端末の位置情報を参照して当該利用者端末が前記所定の領域内にある場合は、対応するアクセス権限情報に加えて前記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に所定のアプリケーションプログラムの利用を許可する。
【0062】
これにより、森林を利用する事業において、管理する森林の所定領域内で活動する利用者に対して、特に付加価値の高いアプリケーションプログラムを提供することができる。
【0063】
〔15〕現地で活動する利用者によるグループワーク
〔14〕の森林管理システムにおいて、利用者からアクセス要求を受信したときに前記アクセス管理部が、当該利用者端末が前記所定の領域内にある場合に前記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に許可するアクセス権限は、同じ領域内にある他の利用者端末との情報交換を含む。
【0064】
これにより、森林を利用する事業において、管理する森林の所定領域内で活動する利用者に対して、相互のコミュニケーションを可能として、提供するアプリケーションプログラムの付加価値を高めることができる。
【0065】
〔16〕管理者による付加価値情報の更新(図2図3図5
〔1〕から〔15〕のうちのいずれか1項の森林管理システム(10)において、前記森林データベースは、当該樹木情報に紐付けされた管理者を識別する管理者情報(25)と、前記管理者が付加価値情報を更新するためのアクセス権を規定する管理者アクセス権限情報(26)を、さらに保持することができる。
【0066】
前記アクセス管理部は、管理者端末(17)からアクセス要求を受信したとき、前記アクセス要求を発した管理者を前記管理者情報と照合し、対応する付加価値情報の更新を当該管理者に許可する。
【0067】
これにより、森林を利用する事業において森林の管理者が行った管理作業(例えば、間伐、枝打ち、下草刈り)の実績は、付加価値情報として逐次更新されアクセス権限を有する利用者に対して、付加価値として提供される。
【0068】
〔17〕管理者はGPS端末を携行して森林管理システムを利用
〔16〕の森林管理システム(10)において、前記管理者端末は、前記森林管理システムが管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能であり、前記森林管理システムに接続可能であるように構成されている。前記アクセス管理部は、前記管理者端末からアクセス要求を受信したとき、前記管理者端末自身の位置情報に基づいて周囲の立木に関する管理計画にアクセスすることを許可する。
【0069】
これにより、森林を利用する事業において管理者が森林の管理を行う際に、管理者端末を携行することによって、管理計画などの情報が森林管理システムから提供される。
【0070】
〔18〕上空からの映像により立木情報を収集(図6図7
〔2〕から〔7〕のうちのいずれか1項の森林管理システム(10)において、前記立木の位置情報及び属性情報は、森林を上空から撮影した画像から抽出する。
【0071】
これにより、森林データベースを作成するためのコストを抑えることができる。
【0072】
〔19〕複数の角度から撮影した映像を合成した3次元モデルから立木情報を抽出(図6図7
〔2〕から〔7〕のうちのいずれか1項の森林管理システム(10)において、前記立木の位置情報及び属性情報は、森林を上空から撮影した画像を含め、複数の角度から撮影した画像を合成した3次元モデルから抽出する。
【0073】
これにより、抽出される立木の位置情報及び属性情報の精度を飛躍的に向上することができ、さらに、作業道や渓流など、立木の価値を評価するために必要な構成物も高精度に抽出される。
【0074】
〔20〕複数の角度から撮影した映像を合成した3次元モデルから地形情報を抽出
〔2〕から〔15〕のうちのいずれか1項の森林管理システム(10)において、前記地形情報及び作業道情報は、森林を上空から撮影した画像を含め、複数の角度から撮影した画像を合成した3次元モデルから抽出する。
【0075】
これにより、抽出される地形情報の精度を飛躍的に向上することができる。さらに、作業道や渓流、集材のための架線作設の適否など、立木の価値を評価するために必要な構成物も高精度に抽出される。
【0076】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0077】
〔実施形態1〕基本構成
本発明の一実施の形態に係る森林管理システムは、利用者に対して個別の付加価値情報を提供することができる森林管理システム10である。例えば投資者である利用者から資金を募って森林を管理するシステムにおいて、森林が適切に管理されることによって得られる価値(収益)に上乗せすることができる、高い付加価値を生むことができる。森林そのものが生み出す収益には、「発明が解決しようとする課題」で説明したように限界がある。そこで、本発明では、利用者に対して個別の情報を付加価値として提供することによって利益を上げる事業に着目した。発明者は、森林またはそこに生育する立木に利用者固有の情報を紐付けて管理し、その利用者にアクセス権限を与えることによって、紐付けられた情報は利用者にとっての付加価値となり得ると考えた。どのような利用者にとってどのような情報が付加価値となるかは、事業的観点であるが、本発明はそのような事業を実現するための森林管理システムである。
【0078】
図1は、本発明の森林管理システム及びそれと接続される複数の端末の構成例を示すブロック図である。森林管理システム10は、記憶装置11を有しネットワーク14を介して複数の端末15~19と通信可能なコンピュータにソフトウェアとして実装され、以下のように構成される。
【0079】
森林管理システム10は、記憶装置11に保持される森林データベース1と、ネットワーク14を介しての利用者端末16等との通信を可能とするためのインターフェース13と、アクセス管理部3とを備える。換言すれば上述のコンピュータは、記憶装置11、情報処理部12及びインターフェース13を備え、アクセス管理部3は情報処理部12で実行されるソフトウェアとして実装されている。インターフェース13は、他に事業者端末15,管理者端末17,研究者端末18,現地端末19等種々の装置と通信するためのインターフェースで、例えば、無線/有線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信の通信規格に準拠する。単一のインターフェースであっても複数のインターフェースであってもよい。
【0080】
森林データベース1は、樹木情報4と、当該樹木情報に紐付けされた利用者を識別する利用者情報5と、与えられた条件に基づくその利用者の付加価値情報2へのアクセス権限を規定するアクセス権限情報6を保持している。ここで樹木情報4は、本発明の森林管理システム10の管理・投資の対象である森林の、区画化された領域、森林内に生育する立木等、識別可能な何らかの投資単位を指し、例えば、識別子と緯度・経度などの座標情報を使って識別されることができる。ここで与えられた条件とは、契約等で規定された条件である。
【0081】
情報処理部12には、ソフトウェアとしてアクセス管理部3が実装される。アクセス管理部3は、利用者端末16からアクセス要求を受信したとき、そのアクセス要求を発した利用者を森林データベース1の利用者情報5と照合し、対応するアクセス権限情報6に応じて付加価値情報2へのアクセスを、当該利用者に許可することによって、付加価値を提供する。情報処理部12には、さらに付加価値情報生成部60がソフトウェアとして実装されてもよい。付加価値情報生成部60は、例えば後述する地図・地形解析部61を含み、森林の地図・地形情報を解析して、路網整備計画を作成する。作成された路網整備計画は、付加価値情報2の一部として提供することができる。
【0082】
この路網整備計画には、さらに、木材を集積するための架線を敷設することができる経路を含めることができる。作業道の作設が困難な地形にあっても、架線集材によって木材の搬出が可能であれば、それによって立木の価値を高く評価することができる。
【0083】
また、作業道ごとに、通行することができる林業機械等の種類や組合せを示し、それぞれが伐木造材、集材、造林、保育等、どのような作業に利用することができるかを示し、または推測するための付加価値として提供しても良い。路網整備計画は、地域、地質、気象条件等を踏まえて策定される。より好適には、周辺地域の施工事例を参考に、その地域における作設作業の経験者の指導を仰ぐなど、豊かな知見に基づいて策定される。
【0084】
さらに好適には、路網整備計画は、林業の作業に目的を限定するのではなく、より広い利用目的を想定して策定される。このとき、限られた回数の木材の搬出に留まらず、長期間にわたっての繰り替えしの利用にも耐えられるような、崩れにくさ、補修・管理の容易さなどを考慮して、路網整備計画が策定されると良い。
【0085】
ここで付加価値情報2は、例えば、森林の管理環境、森林をとりまく自然環境、森林をとりまく経済環境などの環境情報、森林に生育する立木の成長や管理の履歴情報、さらには、利用者固有の情報とすることができ、森林管理システム10が記憶装置11内にデータとして保持され、または、インターフェース13を介してネットワーク14に接続される外部の装置に記憶されても良い。
【0086】
これにより、森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムを実現することができる。付加価値情報は、各利用者に個別に例えば当該利用者との契約で規定された条件に基づいて提供されるため、その利用者に特有の利益として提供することができるからである。
【0087】
ここでは、森林を利用する者を意図して利用者と総称しており、利用者には、投資者、管理事業者、運営事業者、一般利用者など、種々の者が含まれ得る。例えば、投資者は、上記森林データベースが管理する森林に生育する立木やある一定の区画、またはその森林全体に対して投資する者である。管理事業者はそれらを管理する者、運営事業者はそれらを利用した事業を行う者、一般利用者はその事業の利用者である。また、アクセス権限情報には、付加価値情報の保管場所とその付加価値情報に対するアクセスの種類、例えば、閲覧(読み出し)のみ、追記や上書きを含む書き込みなどが含まれる。さらに広義には、アクセス先に保管されているソフトウェアの実行やアクセス先からダウンロードしたソフトウェアの利用が含まれても良い。例えば、森林の所有者又は森林を信託された者が、運営事業者に森林を利用して事業を遂行させるときには、運営事業者は上記利用者として、森林データベースにアクセスする権限を付与され、それを利用した事業を行う。その事業の需要者である一般利用者は、運営事業者が提供する付加価値情報へのアクセス権限を付与される。このアクセス権限は、付加価値情報である、森林に関する情報を閲覧する権限であってもよいし、森林内で活動するときに利用するアプリケーションソフトウェアの実行権限であってもよい。なお、「利用者」や「アクセス」等についての用語の定義は、本明細書全体において同様である。より具体的な形態は、後段の実施形態2~5に例示され詳述される。
【0088】
森林管理システム10は、ネットワーク14を介して利用者端末16の他、事業者端末15、管理者端末17、研究者端末18、現地端末19等と、接続されても良い。事業者端末15は、森林管理システム10を利用してこの森林の投資事業を行う事業者であって、アクセス部3により森林データベース1にアクセスする権限が付与され、さらに必要に応じて付加価値情報2にアクセスする権限が付与される。管理者端末17は、この森林の管理を行う管理者が使用する端末で、例えばカメラ41とGPS(Global Positioning System)42を備えることができる。研究者端末18は、実施形態5に後述されるように、本森林に生息する動植物の生態の研究が投資対象とされたときに、その研究を遂行する研究者が使用する端末である。現地端末19は、森林内に設置される端末であって、例えばライブカメラ41や環境センサ43を備えることができ、研究者端末18から研究者によってアクセスされ制御されることができる。
【0089】
本明細書では、利用者端末16、事業者端末15、管理者端末17、研究者端末18、現地端末19等を区別して説明しているが、これは理解を助けるためであって、必ずしも区別される必要はない。また利用者、事業者、管理者、研究者等の区別についても、理解を助けるための区別であって厳密なものではない。例えば、森林を管理する事業者が森林を野外活動施設として運営する場合には、現地を訪れた利用者に、カメラ41とGPS42を実装した利用者端末16を貸し出して森林内で利用させる一方、利用を検討している者からのアクセスを、カメラ41とGPS42の実装を必要としない一般の利用者端末16からのアクセスと見立て、利用者や利用を検討している者が森林に投資しているか否かを問わずに本発明を適用しても良い。また、森林管理システム10にモニタやマウス、キーボードなどのユーザーインターフェースを設けて、事業者端末の機能を兼ねさせてもよい。
【0090】
〔立木情報及び作業道を含む地形情報の収集とデータ処理〕
図6は、立木情報を収集する方法の一例を示す説明図であり、図7は、収集した立木情報を地図として表示した例を示す説明図である。
【0091】
本発明の森林管理システム10において、立木の位置情報8及び属性情報9は、森林を上空から撮影した画像から抽出するとよい。例えば、特許文献3及び4に開示される技術を採用することができる。これにより、本発明の森林管理システム10の森林データベース1を作成するためのコストを抑えることができる。
【0092】
本発明の森林管理システム10においてはさらに、森林を上空から撮影した画像を含め、複数の角度から撮影した画像を合成した3次元モデルから、立木の位置情報8及び属性情報9を抽出すると、より好適である。これにより、抽出される立木の位置情報8及び属性情報9の精度を飛躍的に向上することができ、さらに、作業道や渓流など、立木の価値を評価するために必要な構成物も高精度に抽出することができる。
【0093】
より具体的には、図6に例示するように、上空を飛行するドローン44から撮影した画像を利用して、特許文献3及び4に開示される技術を適用することができる。特許文献3のように、マルチスペクトラム画像を撮影して解析することにより、樹種を求めることができる。
【0094】
さらに上空を飛行するドローン44の飛行高度を種々変化させ、森林を斜め上空から撮影した画像を組み合わせることによって、森林全体の3次元モデルを作成する。その3次元モデルから、各立木の正確な座標(緯度・経度)、樹高、幹の太さなどの樹木の属性情報を正確に求めることができる。また、作業道や渓流などの構造も正確に求めることができる。さらには、上空を飛行するドローン44に加えて、ドローン44を渓流に沿って飛行させて周囲の映像を撮影し、また森林の管理者(作業者)45が間伐、枝打ち、下草刈りなど森林の管理作業を行う際に、作業道を移動しまた林間に分け入りさらには樹木に登ったときに、ヘルメット等に装着したカメラから撮影した映像も、利用することができる。
【0095】
これらの映像、画像を組み合わせて3次元モデルを作成し、例えば国土地理院が発行する等高線を含む地図上に、抽出した立木や作業道91、渓流92をマッピングして図7に示すような地図を作成することができる。3次元モデルから得られる高さや位置は、地図の等高線よりも正確であるので、図7にはこれに基づいて修正した等高線が採用される。ただし、図7ではその等高線は図示が省略されている。なお、ドローン44など移動体から撮影した映像から3次元モデルを作成して、地図にマッピングする技術は、例えばGoogle(登録商標)のストリートビュー(登録商標)に採用されている技術と同様の技術を応用して実現することができる。
【0096】
撮影した画像から得られた立木情報は、森林データベース1に記憶され、それ以外の、地図情報、地形情報、作業道91や渓流92に関する情報は、自然・管理環境情報として付加価値情報2に含めて管理される。立木等の森林の撮影及び/または3次元モデルの制作は、定期不定期を問わず継続的に行われてもよい。またその一部または全部は、立木の履歴情報として、付加価値情報に含めて保存、管理、活用されるとより好適である。
【0097】
本発明の森林管理システムを用いた森林への投資及びその投資資金を用いた森林の管理事業について、以下、いくつかの実施形態を説明する。このような事業は、森林や山林の所有者が自ら事業体となって推進しても良いし、所有者から信託された事業体または信託会社から事業を委託された事業者が推進してもよい。なお、以下に示す実施形態は、いくつかの例であって、本発明の森林管理システムは、発明概念を変更することなく他の種々の実施形態に適用することができる。
【0098】
〔実施形態2〕将来の木材としての価値に期待して立木に投資(皆伐前)
図2は、本発明の森林管理システムを用いて皆伐前の森林を管理し、投資対象として運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。管理対象の森林内の立木を1本単位で投資の対象とすることができる。投資した立木が生育して木材として出荷されたとき利益が投資家に還元される。立木は大きな高級木材に生育することも、間伐されて集成材の原料として、或いはバイオマス発電の燃料等として利用されることもあり得る。
【0099】
本実施形態の森林管理システム10において、森林データベース1の樹木情報4は、立木の識別情報(ID)7と当該立木の位置情報(座標)8及び属性情報9を含み、さらに投資者だけでなく投資候補者を利用者情報5として含むことができる。投資者候補についても、許可されるアクセス権が対応するアクセス権限情報6として保持される。投資を検討している者にも、投資に対する利益を見積り、投資するか否かの判断をさせるために、種々の付加価値情報にアクセスする権限を与える必要があるからである。投資候補者に与えた権限は、例えば一定期間で解消するように設定することができる。
【0100】
付加価値情報2には、立木が生育する森林の地形情報55及び作業道情報56がさらに含まれる。アクセス管理部3は、利用者である投資者または投資候補者からアクセス要求を受信したときに、そのアクセス要求を発した投資者または投資候補者を森林データベース1に登録されている利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、その投資者または投資候補者に、対応する立木の位置情報8と属性情報9とともに地形情報55及び作業道情報56の閲覧を許可する。
【0101】
ここで、位置情報とは、例えば緯度・経度によって特定される座標とするとよい。例えば上述のドローン44や森林の管理者(作業者)45のカメラにもGPSを接続して、撮影した位置を緯度・経度による絶対値とすることにより、他の地図情報・地形情報との照合を容易化することができる。一方、森林内に指標(ランドマーク)を設けこれを基準とした相対的な座標としてもよい。このように、地形情報は、国土地理院等公的機関や地図を作成する企業が作成した等高線によって表現された地形情報であってもよく、現地での測量によってさらに高精度な地形情報に更新されても良い。また、北向き斜面/南向き斜面などの方向や、斜度のように、立木を主体とした情報に変換されていてもよい。
【0102】
これにより、森林の立木へ既に投資している投資者だけでなく立木への投資を検討している投資候補者が、当該立木の価値を評価するための情報を得ることができる。立木の属性情報は、例えば、樹種、樹高、幹の太さなどであり、地形情報に立木の位置情報をマッピングすることによって、生育している環境、例えば、平坦地か南向き斜面か北向き斜面か、周囲にどんな樹木が生育しているかがわかり、投資候補者は、投資を検討している立木の生育環境を評価することができる。また、投資候補者は、作業道情報を閲覧することによって、投資を検討している立木の管理や伐採に要するコストを見積もることができ、当該立木の価値に影響する因子に含めることができる。さらに、前記地形情報と合わせて将来の作業道整備を予想することもできる。
【0103】
森林データベース1は、利用者情報として、投資の単位となっている1本の立木または1つの区画に対応する1つの樹木情報に、1人の投資者または投資候補者だけではなく、複数の投資者及び/または投資候補者を登録し、それぞれに対応するアクセス権限情報を保持することができるように構成するとより好適である。これにより、1本の立木や1つの区画であっても複数の投資者からの投資を受けることができる。また、既に投資者が紐付けられている立木や区画に対して、投資候補者を紐付けることができる。これにより、現在の投資者から投資候補者への投資者の地位の移譲を検討するような場合の利便性が向上する。
【0104】
森林データベース1は、当該樹木情報に紐付けされた管理者を識別する管理者情報25と、その管理者が付加価値情報を更新するためのアクセス権を規定する管理者アクセス権限情報26を、さらに保持することができるように構成されるとより好適である。
【0105】
アクセス管理部3は、管理者端末17からアクセス要求を受信したとき、アクセス要求を発した管理者を森林データベース1の管理者情報25と照合し、管理者アクセス権限情報26に基づいて、対応する付加価値情報の更新を当該管理者に許可する。
【0106】
ここでいう管理者は、森林における間伐、枝打ち、下草刈り等の管理を計画し、実際の作業を行う者を意味するが、計画を立案する者と作業を行う者に分けて別々のアクセス権限情報26を与えるようにしてもよい。管理計画を立案する管理者は、管理実績を見ながら将来の管理計画を策定し、管理を実行する管理者は、策定された管理計画に沿って管理を行い、その実績を登録する。管理を実行する管理者(作業者)に与えるアクセス権限情報26を適切に規定することによって、例えば作業者に対して、現地の状況に応じて管理計画を変更する権限を与えるか否かを規定することができる。また、森林を利用する事業において森林の管理者(作業者)が行った管理作業の実績は、付加価値情報として逐次更新され、アクセス権限を有する投資者に対して、付加価値として提供される。
【0107】
図2の管理者端末17は、管理を実行する管理者(作業者)が森林の管理作業の際に携行する端末が想定されており、例えば、カメラ41とGPS42が搭載され、森林管理システム10に接続することができるように構成されている。森林管理システム10が管理する森林内で電源がオンになって動作するとき、GPS42によって自身の位置情報を取得することによって、その位置情報を利用することができる。管理者端末17からアクセス要求を受信したとき、森林管理システム10のアクセス管理部3は、管理者端末自身の位置情報に基づいて周囲の立木に関する管理計画にアクセスすることを許可する。例えば、管理者(作業者)が森林内でカメラ41によって周囲の画像を撮影し、GPS42によって取得した位置情報を付して、森林管理システム10へアクセス要求を送信したとき、アクセス管理部3は、受信した位置情報からその周囲の立木に関する情報や管理計画を、管理者端末17に応答する。管理者端末17では撮影した周囲の画像に、森林管理システム10から受信した樹木情報(立木識別子や樹種、樹齢などの属性)及びその樹木に関する管理計画(間伐対象か否かなど)を重ねて表示するなどして、管理者(作業者)に示すことができる。
【0108】
これにより、森林を利用する事業において管理者が森林の管理を行う際に、管理者端末を携行することによって、管理計画などの情報が森林管理システムから提供される。位置情報によって、管理者(作業者)の位置と樹木情報やその管理計画などの情報が照合され、必要な情報が適切に利用可能となり、管理作業の効率及び質の向上を助けることができる。
【0109】
〔地図・地形解析部の追加〕
本実施形態の森林管理システム10の情報処理部12には、地図・地形解析部61を含む付加価値情報生成部60がソフトウェアとして実装されていると好適である(図1)。地図・地形解析部61は、自然・管理環境データベース50に保持される地図・地形情報55を解析して、林道・作業道に適する経路を抽出して将来作業道として整備され得る経路とし、路網整備計画を策定する。策定された路網整備計画は、同じく自然・管理環境データベース50に保持されている作業道情報56に、付加価値情報として追加されることができる(図2)。作業道情報56に現に存在する路網情報が含まれることは必然であり、作業道情報56には、さらに整備計画が既にある路網に加えて、未確定の路網整備計画も包含させる例を説明したが、それぞれを別のデータとして管理するように構成しても良い。アクセス管理部3は、投資者/投資候補者からアクセス要求を受信したときに、そのアクセス要求を発した者を森林データベース1に保持されている利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該投資者または当該投資候補者に、路網整備計画の閲覧を許可する。
【0110】
これにより、立木に対する従来の投資管理システムよりも、高い付加価値を投資者/投資候補者に提供することができる。林道、作業道などの路網は、立木を伐採して搬出するコストを算出するために重要な因子であり、将来の路網整備計画は、立木の将来の資産価値を予想するために極めて重要な因子となる。従ってこの路網整備計画は、投資者と投資を検討している投資候補者にとって極めて高い付加価値のある情報である。
【0111】
路網整備計画には、地図・地形解析部61が抽出した林道・作業道に適する経路が、そのまま予想される路網として含まれてもよい。または、地図・地形解析部61が抽出した林道・作業道に適する経路が、インターフェース13からネットワーク14を経て事業者端末15に表示され、事業者がそれに基づいて路網整備計画を策定して森林管理システム10に入力することができるように構成してもよい。
【0112】
地図・地形解析部61は、例えば特開2017-201936号に開示される路網ルート設計装置を参考にして実装することができる。実施形態1の「立木情報及び作業道を含む地形情報の収集とデータ処理」で説明したように、地図の等高線情報に加えて、森林を上空からだけではなく、森林内を含む複数の角度から撮影した映像を合成した3次元モデルから、より精度の高い地形情報を抽出することができる。このような地形情報を生成する場合に、単に精度の高い等高線だけではなく、巨岩や倒木、降雨時に現れる沢や渓流(水が流れた跡)などの詳細情報が含まれるように構成すれば、地図・地形解析部61をより高精度に構成することができる。これらの詳細情報が、作業道として整備するにあたって整備コストを推定するために、極めて重要な因子であるからである。
【0113】
〔実施形態3〕記念樹事業
図3は、森林を皆伐した後、植林した立木を記念樹とする事業を運営するのに好適な、森林管理システム10の構成例を示す説明図である。
【0114】
森林管理システム10において、森林データベース1の樹木情報4は、立木1本単位の識別情報(ID)7と当該立木の位置情報(座標)8及び属性情報9を含むように構成され、対応する利用者情報5は、利用者とその利用者が契約した立木の識別情報とを対応付けている。本実施形態で付加価値情報2には、立木の識別情報ごとに対応付けられた利用者に固有の情報53を含み、アクセス管理部3は、利用者に対応付けられた立木に対応して、当該利用者に固有の情報を付加価値情報2として書き込むことを許可する。これにより、森林の立木を記念樹等として投資対象とする事業において高付加価値を提供可能な、森林管理システムを実現することができる。
【0115】
本実施形態では例えば、付加価値情報2として、個々の立木の各樹齢での写真や成長の記録を保持する立木の履歴データベース52と、各利用者に固有の情報、例えば誕生時、七五三、入学時、卒業時などの記念写真やドキュメントを記録して保管する利用者固有データベース53を備える。利用者は、投資した対象の立木の生育をいつでも閲覧できるばかりでなく、その生育経過に対応付けて、自身や家族等の成長記録を、前記森林データベースを通じて書き込みまた読み出すことができるので、森林の立木を記念樹等として運営する事業において高付加価値を提供することができる。
【0116】
本実施形態の森林管理システム10において、森林データベース1は、利用者に固有の情報に加えて、当該固有の情報(例えば利用者固有データベース53に保管されている記念写真)に対する第三者のアクセス権限(例えば親戚や友人が閲覧する権限)を、当該利用者が規定することができる個別アクセス権限管理情報(図3等には図示されていない)をさらに保持することができるように構成することができる。アクセス管理部3は、当該利用者以外(上記第三者、例えば親戚や友人)から当該固有の情報へのアクセス要求(例えば記念写真を見たいという要求)があったときに、その利用者が設定した、個別アクセス権限管理情報に基づいてアクセスを許可することができる。
【0117】
これにより、森林の立木を記念樹等として投資対象とする事業においてさらに高い付加価値を提供可能な、森林管理システムを実現することができる。例えば投資者は、投資した森林に生育する立木を記念樹として運用するような事業を展開することができる。さらに詳しい一例では、投資者が運営する事業において利用者が立木を卒業記念樹として購入し、当該立木に対応付けて、卒業生が卒業の記念写真や卒業アルバムを閲覧できるように構成したり、卒業生から寄せられる近況を、当該立木の成長とともに記録して、卒業生やその家族、友人に公開したりするような事業を展開することができる。
【0118】
特に、この記念樹事業は、森林の中の皆伐された区画を投資対象として事業者に提供されるとよい。皆伐された時点では、植林する費用の捻出に課題があったが、事業者が高付加価値を提供することによって、高収益を期待することができ、植林のための投資を呼び込むことが容易となる。さらに、皆伐後に一斉に植林することができれば、当該区画の樹齢が揃い、記念樹としての運営を助けることができる。
【0119】
〔実施形態4〕樹木葬事業
図4は、森林を皆伐した後、植林した立木を樹木葬の墓苑として運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
【0120】
森林管理システム10において、森林データベース1の樹木情報4は、立木1本単位の識別情報(ID)7と当該立木の位置情報(座標)8及び属性情報9を含むように構成され、対応する利用者情報5は、利用者とその利用者が契約した立木の識別情報とを対応付けている。森林データベース1の利用者情報は、実施形態3と同様に、利用者と当該利用者が契約した立木の識別情報とを対応付ける情報であるが、本実施形態では上位利用者5-1と下位利用者5-2を含むことができるように構成する。
【0121】
森林データベース1は、上位利用者のアクセス権を規定する上位アクセス権限情報6-1と、下位利用者のアクセス権を規定する下位アクセス権限情報6-2とをそれぞれ保持することができ、アクセス管理部3は、上位利用者からのアクセス要求があったときには上位アクセス権限情報6-1に基づいて、下位利用者からのアクセス要求があったときには下位アクセス権限情報6-2に基づいてアクセスを許可する。
【0122】
これにより、利用者を階層化することができる。例えば、上位利用者は、複数の立木に投資して管理運営を行うことによって付加価値を創生し、生み出された付加価値を個々の立木の付加価値として、下位利用者に利用させまた販売することができる。上位利用者は付加価値を提供するために、付加価値情報を随時追加して提供し、下位利用者はその付加価値情報にアクセスすることによって、付加価値を享受する。上位と下位の2階層の場合について説明したが、3階層以上の多階層としてもよい。
【0123】
より具体的には、本実施形態4の森林管理システム10は、一例として樹木葬の墓苑事業に適用することができる。図4に示すように付加価値情報2として上位利用者データベース53-1と下位利用者データベース53-2を備える。上位利用者データベース53-1には、墓苑の管理計画や実績の他、法要の計画や実績が保存され、下位利用者データベース53-2には利用者の固有情報である故人の情報、例えば、命日、戒名、遺影が保存されるように構成する。樹木葬の墓苑管理者が上位利用者となって、墓苑の管理実績や法要計画・実績を付加価値情報に追加し、故人を埋葬する遺族が下位利用者となって、その付加価値情報にアクセスすることによって得られる墓苑の管理実績や法要計画・実績が、下位利用者である遺族が享受できる付加価値となる。下位利用者である遺族が、故人の固有情報(例えば、命日、戒名、遺影)を固有の付加価値情報として保存し、いつでも自由に閲覧、更新することができるように、森林管理システムを構成すれば、これも下位利用者が享受することができる付加価値となる。
【0124】
実施形態4と同様に、下位利用者が第三者に対するアクセス権限を付与することができるように構成しても良い。遺族は親戚や故人の友人などにもアクセス権限を与えて、オンラインでの墓参を許すことができる。
【0125】
〔実施形態5〕自然環境の保護に軸足を置く事業
図5は、森林を自然環境の保全を目的として管理し、森林の生態研究を投資対象として運営するための、森林管理システムの構成例を示す説明図である。
【0126】
森林管理システム10において、森林データベース1は、樹木情報4として、所定の領域の識別情報(識別子)7と当該領域の位置情報8及び属性情報9と、立木の識別情報7と当該立木の位置情報8及び属性情報9とを、混在して保持することができるように構成するとよい。領域の位置情報8としては例えば境界線、属性情報9としては例えば、当該領域の面積や生育している樹木の種類、針葉樹林、広葉樹林、ブナ林などが含まれる。
【0127】
これにより、立木1本1本だけではなく、一定区画など領域単位でも森林に投資することができる。得られる付加価値情報は、例えば、その領域の航空写真などの映像、その領域のライブ映像、その領域の動植物分布、その領域から得られる間伐材などを使ったバイオマス発電の発電実績などである。利用者である投資者は投資することによって、その領域の森林管理と自然保護に貢献することができる。
【0128】
領域単位での管理と立木1本単位での管理を混在されるにより、一定の領域の森林に投資してその森林に付加価値を生む事業を展開し、その領域内の立木1本単位または細分化された小領域単位で販売することができる。実施形態4で説明したように利用者の階層化を適用して、一定の領域の森林に投資した事業者を上位利用者(投資者)とし、再販売された立木または小領域に投資した者を下位利用者(投資者)として位置づけ、それぞれに付加価値情報へのアクセス権限を与えることにより、それぞれに対する付加価値とすることができる。例えば、上位利用者は、当該一定領域の森林の命名権、領域内のハイキングコースを命名または保有する権利、或いは、CO排出権として再販することによる利益を享受することができる。一方命名権等を購入した下位利用者は、その森林の映像等を公開して、環境保全に対する貢献を広告宣伝に利用することができる。
【0129】
別のより具体的な一例として、本実施形態の森林管理システム10を利用して、森林を利用する自然環境保護や野生生物の生態研究を支援する事業を展開することができる。
【0130】
森林管理システム10において、森林データベース1は投資者情報2として当該樹木情報に紐付けされた研究者を識別する研究者情報5と、その研究結果を付加価値情報2として書き込むアクセス権を規定する研究者アクセス権限情報6を保持することができるように構成する。森林データベース1の投資者情報2には、研究に投資又は支援する個人や団体が、同じ森林領域に対してまたはその領域に生育する個別の立木に対して、利用者として登録され得るように構成してもよい。
【0131】
または実施形態4と同様に、利用者の階層化を適用してもよい。このような研究を行う研究者は、この森林システム10の上では上位利用者として位置づけられ、その研究に投資し又は支援する利用者は、下位利用者と位置づけられる。下位利用者のアクセス権限情報は、付加価値情報2として保存されている研究結果を閲覧する権限を含むことができる。
【0132】
付加価値情報2は、自然・管理環境データベース50,立木の履歴データベース52など、他の実施形態で説明した付加価値情報に加えて、例えば、その森林に生育する動物や植物の分布や動物の活動履歴、動植物の写真集などを保存する、活動実績データベース54を含むとよい。また、研究者端末18は、この研究を遂行する研究者が使用する端末である。現地端末19は、森林内に設置される端末であって、例えばライブカメラ41や環境センサ43を備えることができ、研究者端末18から研究者によってアクセスされ制御されることができるとよい。
【0133】
アクセス管理部3は、研究者端末18からアクセス要求を受信したとき、そのアクセス要求を発した研究者を森林データベース1の研究者情報と照合し、当該研究者に研究結果を付加価値情報2として書き込むことを許可し、利用者端末16からアクセス要求を受信したとき、そのアクセス要求を発した利用者を森林データベース1の利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報6が研究結果の閲覧する権限を含むときには、その利用者に活動実績データベース54内の研究結果の閲覧を許可する。
【0134】
これにより、森林を利用する自然環境保護や野生生物の生態研究を支援する事業において高付加価値を提供可能な、森林管理システムを実現することができる。例えば、利用者は、投資または支援した森林において、さらに野生生物の生態研究に対して追加の投資又は支援を行った場合に、その研究成果を閲覧することができるように構成することができる。このように本発明の森林管理システムは、付加価値を生む事業の成立に資することができる。
【0135】
〔実施形態6〕種々の実施形態(事業形態)に共通する追加的な実施形態
上述した実施形態2~5をはじめとする種々の実施形態、即ち、森林信託に基づく様々な事業形態には、適宜、以下に説明するような実施形態で、本発明の森林管理システム10がさらなる付加価値を提供することができるように構成されてもよい。
【0136】
〔現地への物理的アクセス情報(道案内)の提供〕
現地への物理的アクセス情報(道案内)を提供することができるように、本発明の森林管理システム10を構成することができる。
【0137】
森林管理システム10において、利用者が契約した領域または契約した立木を含む領域への道案内情報を含む物理的アクセス情報を、付加価値情報2に含むように構成する。ここで物理的アクセス情報とは、実際に現地に行くための案内情報で、例えば、最寄りの駅、バス停、宿泊施設、インターチェンジ等からの道順を案内する地図や、それらを目的地とする交通機関の情報が含まれる。このような物理的アクセス情報を付加価値情報2に含めて提供するためは、例えば、地図・地形情報55に含めて、または別個に、広域の地図、道路、交通機関の情報を、自然・管理環境データベース50に保存しておくとよい。
【0138】
アクセス管理部3は、利用者等からアクセス要求を受信したときに、そのアクセス要求を発した者を森林データベース1の利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に基づいて、当該利用者に物理的アクセス情報の閲覧を許可する。
【0139】
これにより、森林やその森林に生育する立木に投資した投資者等の利用者が、自身の契約した森林・立木を実際に訪れるときに、物理的アクセスを助ける付加価値情報を提供することができる。
【0140】
ここで、物理的アクセス情報を一般的なアクセス案内のみに留める場合には、アクセス権限を利用者等の関係者に限定する必要は必ずしもないので、アクセス管理部3がすべてのアクセス要求に応じてこのような一般的な物理的アクセス情報を提供するように構成してもよい。一方、利用者等の関係者からアクセス要求があった場合には、一般的なアクセス案内に加えて、現地で開催されるイベント情報、紅葉の見頃情報、花が咲いていれば開花情報、動物の生態情報(魚の遡上、渡り鳥の飛来)などを、追加して提供することができるように構成してもよい。現地で開催されるイベント情報については、万人を対象としたイベントの他、実施形態3の記念樹事業では同窓会、実施形態4の樹木葬事業では合同法要など、利用者個々に適した情報が含まれるとよく、森林管理システム10を、それぞれの事業形態に合わせて、利用者に有益な情報を提供することができるように構成すると、さらに好適である。
【0141】
〔GPS機能付き端末を携行した者が現地で活動する場合の情報提供〕
利用者が、自身の契約した領域または契約した立木を含む領域を訪れ、その周辺の森林で活動することを想定した事業モデルは、森林への投資に対する付加価値を提供し事業を安定させるために有益である。このような事業モデルを実現するために、本発明の森林管理システム10では、GPS42が実装された利用者端末16を想定し、以下のように構成されるとよい。
【0142】
利用者端末16は、森林管理システム10が管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用可能で、且つ、森林管理システム10に接続とされる。例えば、森林内に無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)におる通信網を整備して、利用者端末16との通信を可能とする。また、携帯電話などの公衆無線回線網を介して通信することができるように構成してもよい。
【0143】
森林管理システム10の森林データベース1は、利用者端末16が所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持し、アクセス管理部3は、利用者からアクセス要求を受信したときに、そのアクセス要求を発した利用者端末16の位置情報を参照して当該利用者端末が、森林データベース1に記録された所定の領域内にあるときは、対応する通常のアクセス権限情報に加えて規定された上記現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に前記付加価値情報の閲覧を許可する。
【0144】
これにより、森林やその森林に生育する立木に投資した利用者が、自身の契約した森林・立木を実際に訪れて森林内で活動するときに、森林内の位置に基づいてその周辺の付加価値情報を提供することができる。即ち、利用者が自宅から森林管理システム10にアクセスする場合に提供されるよりも、森林を実際に訪れて活動する場合の方が、より多くのより価値の高い付加価値情報が提供されるように構成することができる。例えば、自身の契約した立木を訪れたときに、その立木の生育の履歴や、その立木に巣を作る野鳥の情報が、利用者端末16に表示されるように構成し、その周辺に生育している植物を撮影したときに、その名前や特徴などが撮影した映像と重ねて表示されるように構成してもよい。
【0145】
このような機能は、例えば、実施形態1のように皆伐前の事業を想定した森林管理システムにも、実施形態2,3のように皆伐後の植林から始める事業を想定した森林管理システムにも有効であり、実施形態5の自然環境保護に軸足を置くような事業では、特に有効であると考えられる。
【0146】
〔実施形態7〕野外活動支援事業
実施形態2~5では、実施形態1の基本構成に実施形態6に示したような種々の形態を適宜追加することによって、種々の事業に応用することができることを説明した。実施形態6に示したような種々の形態をさらに組み合わせて追加すれば、利用者に対して、体験型のサービスを付加価値として提供することができ、その結果、本発明の森林管理システムは、野外活動を主体としたアドベンチャー教育施設やレクリエーション施設の運営など種々の事業運営に利用することができる。
【0147】
図8は、森林における野外活動を支援する事業の運営に好適な、森林管理システム10の構成例を示す説明図である。森林管理システム10は、記憶装置11に、森林データベース1に加えて、アプリケーションプログラム59を保持し、情報処理部12のアプリケーション実行部62でそのプログラムを実行することができるように構成されている。
【0148】
森林管理システム10において、森林データベース1は、樹木情報4として、所定の領域の識別情報(識別子)7と当該領域の位置情報8及び属性情報9を保持する。さらに立木の識別情報と当該立木の位置情報及び属性情報を混在して保持するように構成してもよい。これにより、森林管理システム10の利用者の一種である運営事業者(管理者)に対して、一定区画など領域単位で森林を利用した事業運営を許すことができる。このときの事業は、例えば、当該領域を一般利用者に野外活動の場として提供する事業である。
【0149】
アクセス管理部3は、利用者(一般利用者)からアクセス要求を受信したときに、そのアクセス要求を発した利用者を利用者情報5-2と照合し、対応するアクセス権限情報6-2に基づいて、当該利用者に所定のアプリケーションプログラム59の利用を許可することができる。これにより、森林を利用する事業において、利用者に対してアプリケーションプログラムの利用という付加価値を提供することができる。このとき、運営事業者(管理者)に対しては、当該アプリケーションプログラムを管理する権限が、アクセス権限情報6-1として与えられる。この場合の管理とは、アプリケーションプログラムの不具合を修正するバージョンアップや、アプリケーションプログラムが使用するデータの追加や更新などを意味する。
【0150】
図8には、アプリケーションプログラム59は森林管理システム10の記憶装置11に保存され、情報処理部12のアプリケーション実行部62で実行されるものとして図示されているが、アプリケーションプログラム59が、ネットワーク14を介して接続される他の計算機に保存され、その計算機で実行されるように構成されてもよい。そのときアクセス権限情報6-1,6-2にはアクセスすべき先の計算機とアプリケーションプログラム59を利用するための種々の情報が含まれることとなる。ここで、アプリケーションプログラム59の利用には、そのプログラムを利用者端末16にダウンロード、インストールして動作させ、または利用者端末16から別の計算機上でアプリケーションプログラム59を動作させるなど、種々の形態が含まれる。
【0151】
本実施携帯の野外活動支援事業に参加する一般利用者が現地で活動する場合に、「GPS機能付き端末を携行した者が現地で活動する場合の情報提供」で上述したように、利用者端末16にGPS機能を搭載して利用者の位置情報を利用したサービスを提供することができるように構成すると、より好適である。
【0152】
森林管理システム10において、利用者端末16は、森林管理システム10が管理する森林内で動作するとき、自身の位置情報を利用することができるように構成されているとよい。利用者端末16にGPS機能を搭載する例を示したが、位置情報の特定・利用の方法は任意である。例えば、森林内に短距離無線通信のアンテナをランドマーク的に配置しておき、どのアンテナとの通信が可能であるかによって、利用者端末の位置を特定してもよい。
【0153】
自身の位置情報を利用可能とされた利用者端末16は、森林管理システム10に接続可能であり、森林データベース1は、利用者端末16が所定の領域内にあるときに追加的に許可される現地アクセス権限情報をさらに保持する。アクセス管理部3は、利用者からアクセス要求を受信したときに、その要求を発した利用者端末16の位置情報を参照して当該利用者端末が既定の領域内にある場合には、対応するアクセス権限情報に加えて現地アクセス権限情報に基づいて、当該利用者に所定のアプリケーションプログラムの利用を許可する。これにより、森林を利用する事業において、管理する森林の所定領域内で活動する利用者に対して、特に付加価値の高いアプリケーションプログラムを提供することができる。
【0154】
例えば、野外活動支援事業に参加する一般利用者が、GPS機能付き端末を携行して現地で活動する場合に、その位置に応じたアプリケーションプログラムを起動して利用させることができる。より具体的にはフィールドワークを行っている利用者に対して、いろいろな場所でその場所に生育する動植物の情報を与え、その動植物をその場で観察して報告させるような、アプリケーションプログラムを提供することができる。
【0155】
本実施形態の森林管理システム10において、さらに、利用者からアクセス要求を受信したときにアクセス管理部3が当該利用者に許可するアクセス権限に、同じ領域内にある他の利用者端末との情報交換を含むように構成するとより好適である。例えば、利用者をグループにわけ、各グループに所属する複数の利用者が、情報交換をしながら共通の課題に取り組むような、グループワークを可能にすることができる。
【0156】
これにより、森林を利用する事業において、管理する森林の所定領域内で活動する利用者に対して、相互のコミュニケーションを可能として、提供するアプリケーションプログラムの付加価値を高めることができる。
【0157】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、各実施形態で採用した個別の発明概念は、他の実施形態にも任意に組み合わせることができる。即ち、投資環境データベース51は、実施形態5の自然環境保全・生態研究事業にも有益な付加価値情報となり得ることは言うまでもなく、実施形態3の記念樹事業や実施形態4の樹木葬事業においても、利用者から歓迎される付加価値情報となり得る。また、管理者のIDとアクセス権限を森林データベースに追加すること、利用者を階層化することなども、必要に応じて適宜組み合わせることができる。さらに、1つの森林管理システムを複数の異なる事業を営む複数の異なる事業者に共有させることができるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0159】
1 森林データベース
2 付加価値情報
3 アクセス管理部
4 樹木情報
5,5-1,5-2 利用者の識別情報
6,6-1,6-2 利用者のアクセス権限情報
7 領域または立木の識別情報
8 領域または立木の位置情報(座標(緯度・経度))
9 領域または立木の属性情報
10 森林管理システム
11 記憶装置
12 情報処理部
13 インターフェース
14 ネットワーク
15 事業者端末
16 利用者端末
17 管理者端末
18 研究者端末
19 現地端末
25 管理者の識別情報
26 管理者のアクセス権限情報
35 研究者の識別情報
36 研究者のアクセス権限情報
41 カメラ
42 GPS
43 センサ
44 ドローン
45 管理者
50 自然・管理環境データベース
51 投資環境データベース
52 立木の履歴データベース
53 投資者固有データベース
54 活動実績データベース
55 地形情報
56 作業道情報
58 アプリケーションプログラム
60 付加価値情報生成部
61 地図・地形解析部
62 アプリケーション実行部
90 地図
91 作業道
92 渓流

【要約】
森林管理システムは、コンピュータにソフトウェアとして実装され、記憶装置に保持される森林データベースと、ネットワークを介して1台または複数の利用者端末との通信を可能とするためのインターフェースと、アクセス管理部とを備える。森林データベースは、樹木情報と、当該樹木情報に紐付けされた利用者を識別する利用者情報と、前記利用者が与えられた条件に基づいて付加価値情報へのアクセス権を規定するアクセス権限情報を少なくとも保持している。アクセス管理部は、利用者端末からアクセス要求を受信したとき、それを発した利用者を森林データベースの利用者情報と照合し、対応するアクセス権限情報に応じたアクセス権限を当該利用者に付与する。これにより、森林を利用する事業において高収益を生むための高付加価値を提供することができる森林管理システムを実現することができる。

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