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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 25/00 20060101AFI20230428BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230428BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230428BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20230428BHJP
   B64C 1/08 20060101ALI20230428BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20230428BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20230428BHJP
   B64U 20/70 20230101ALI20230428BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C39/02
B64D47/08
B64C27/04
B64C1/08
F16F15/067
F16F15/08 E
B64U20/70
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021010852
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114550
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(73)【特許権者】
【識別番号】300054310
【氏名又は名称】株式会社E・C・R
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宏行
(72)【発明者】
【氏名】今中 雄一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 博之
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-69745(JP,A)
【文献】特開2017-39334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0131507(US,A1)
【文献】国際公開第2019/198393(WO,A1)
【文献】米国特許第8874283(US,B1)
【文献】特開平3-96499(JP,A)
【文献】特開2019-189196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 25/00,47/08,
B64C 39/02,27/04, 1/08,
B64U 20/70,
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転翼を有する無人航空機であって、
胴体及び前記回転翼を有する機体と、
前記機体を覆う枠体とを備え、
前記枠体は、複数の長尺状の枠材で構成された直方体の外形を有し、可撓性を有する異方性可撓部を介して前記胴体に支持され、
前記異方性可撓部は、前記枠体の荷重を前記胴体に伝達するとともに、前記枠体に加わる左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓み、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに設定可能であり、
前記異方性可撓部は、左右に離間して配置された複数の可撓性部材から成り、
前記各可撓性部材は、前記枠体と前記胴体を鉛直方向に連結し、水平方向の力に対して可撓性を有することを特徴とする無人航空機。
【請求項2】
前記可撓性部材は、防振ゴムから成ることを特徴とする請求項に記載の無人航空機。
【請求項3】
複数の回転翼を有する無人航空機であって、
胴体及び前記回転翼を有する機体と、
前記機体を覆う枠体とを備え、
前記枠体は、複数の長尺状の枠材で構成された直方体の外形を有し、可撓性を有する異方性可撓部を介して前記胴体に支持され、
前記異方性可撓部は、前記枠体の荷重を前記胴体に伝達するとともに、前記枠体に加わる左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓み、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに設定可能であり、
前記異方性可撓部は、左右及び前後に離間して配置された複数の可撓性部材から成り、
前記各可撓性部材は、前記枠体と前記胴体を鉛直方向に連結し、水平方向の力に対して可撓性を有することを特徴とする無人航空機。
【請求項4】
前記可撓性部材は、ばねであることを特徴とする請求項に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記機体は、撮像装置を有し、
前記撮像装置は、その撮像範囲に前記枠体が入らないように設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転翼を有する無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道の高架橋の点検は、主に高所作業車等を用いて行われている。高所作業車を使用できない箇所では、ロープ高所作業によって点検が行われる。ロープ高所作業とは、作業箇所の上方にある支持物にロープを緊結してつり下げ、そのロープに身体を保持するための器具を用いて行う作業である(労働安全衛生規則第三十六条参照)。そのような高所作業車を使用できない箇所における高所作業のいっそうの安全性向上が望まれる。
【0003】
そこで、高所作業の代わりに、ドローン(通称)を用いて高所の検査対象物をカメラで撮像することが考えられる。ドローンは、日本産業規格(JIS)に規定されている無人航空機である(非特許文献1参照)。
【0004】
検査に用いる無人航空機として、無人飛行検査機が知られている(特許文献1参照)。しかし、この無人飛行検査機は、球状の外枠(枠体)を有するので、撮像する画像にその外枠が映り込む。
【0005】
複数のカメラを球状のフレーム(枠体)に設けた無人飛行体(無人航空機)が知られている(特許文献2参照)。カメラがフレームの外側に設けられるので、カメラ画像にフレームが映らない。しかし、この無人飛行体は、多数の枠材で構成される球状のフレームと、複数のカメラで重くなるので、プロペラ(回転翼)を駆動するモータの負荷が大きくなり、飛行時間が短くなる。
【0006】
直方体の網枠(枠体)で覆われた検査用の小型無人飛行機(無人航空機)が知られている(特許文献3参照)。直方体の枠体は、球状の枠体よりも少ない枠材で構成できるが、機体に対する定位の角度が存在する。この小型無人航空機は、前進・後進しようとする際に網枠に対する機体の傾斜を許容するため、シャフト及び軸受等を有する。しかし、この小型無人航空機は、網枠に対して機体が左右方向には傾斜しないので、曲がって飛行する際、網枠が受ける遠心力が機体に直接伝わり、飛行が不安定になるおそれがある。
【0007】
また、筐体の外形を構成する枠体を備えた無人航空機が知られている(特許文献4参照)。この無人航空機は、検査対象の壁面(検査面)に枠体の車輪を押し付けて検査面上を移動する(壁面走行)。この無人航空機は、ロータが遊動可能に支持され、壁面走行時、壁面に対する枠体の姿勢を維持したまま、その遊動可能範囲内でロータのピッチ角およびロール角が変化する。しかし、この無人航空機は、壁面から離れて空中を飛行する時、枠体に対するロータの角度が遊動可能範囲内で定まらず、飛行が不安定になるおそれがある。また、ロータを遊動可能に支持する構成が複雑であり、無人航空機の重量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-167017号公報
【文献】特開2016-180866号公報
【文献】特開2017-124691号公報
【文献】特開2018-144627号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】JIS W 0141:2019「無人航空機-用語」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するものであり、機体を覆う枠体が撮像等に支障し難く、その枠体に生じる慣性力に対する飛行の安定性が高い無人航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無人航空機は、複数の回転翼を有するものであって、胴体及び前記回転翼を有する機体と、前記機体を覆う枠体とを備え、前記枠体は、複数の長尺状の枠材で構成された直方体の外形を有し、可撓性を有する異方性可撓部を介して前記胴体に支持され、前記異方性可撓部は、前記枠体の荷重を前記胴体に伝達するとともに、前記枠体に加わる左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓み、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに設定可能であることを特徴とする。
【0012】
この無人航空機において、前記異方性可撓部は、左右に離間して配置された複数の可撓性部材から成り、前記各可性部材は、前記枠体と前記胴体を鉛直方向に連結し、水平方向の力に対して可撓性を有することが好ましい。
【0013】
この無人航空機において、前記可撓性部材は、防振ゴムから成ることが好ましい。
【0014】
この無人航空機において、前記異方性可撓部は、左右及び前後に離間して配置された複数の可性部材から成り、前記各可性部材は、前記枠体と前記胴体を鉛直方向に連結し、水平方向の力に対して可撓性を有してもよい。
【0015】
この無人航空機において、前記可撓性部材は、ばねであることが好ましい。
【0016】
この無人航空機において、前記機体は、撮像装置を有し、前記撮像装置は、その撮像範囲に前記枠体が入らないように設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無人航空機によれば、機体を覆う枠体は、直方体の外形を有するので、球形の外形を有する枠体よりも少ない枠材で構成でき、撮像等に支障し難い。また、枠体は、左右方向及び前後方向の可撓性を有する異方性可撓部を介して胴体に支持されるので、枠体から胴体に伝達される水平方向の力が緩和され、無人航空機は、枠体に生じる慣性力に対する飛行の安定性が高くなる。さらに、異方性可撓部は、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに設定可能であるので、それぞれの方向における飛行の安定性に適した撓みやすさに設定することにより、無人航空機は、枠体に生じる慣性力に対する飛行の安定性がいっそう高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無人航空機の図面代用写真。
図2】同無人航空機における枠体の斜視図。
図3】同無人航空機における異方性可撓部及びその周辺部分の斜視図。
図4】同異方性可撓部及びその周辺部分の図面代用写真。
図5】本発明の第2の実施形態に係る無人航空機における異方性可撓部及びその周辺部分の斜視図。
図6】同異方性可撓部及びその周辺部分の図面代用写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る無人航空機について図1乃至図4を参照して説明する。日本産業規格によれば、「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船などであって、構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦によって飛行させることができるものである(非特許文献1の番号1001参照)。図1の全体写真に示すように、本実施形態の無人航空機1は、複数の回転翼2を有する回転翼無人航空機である(非特許文献1の番号1021参照)。無人航空機1は、ドローンとも呼ばれる。本実施形態では、回転翼2の数は4つである。
【0020】
この無人航空機1は、機体3と、枠体5とを備える。機体3は、胴体4及び回転翼2を有する。枠体5は、機体3を覆う。枠体5は、ガードとも呼ばれる。
【0021】
機体3は、一般的なドローンの構成を有し、回転翼2を回転駆動するモータ、制御装置(フライトコントローラ)、GPS受信機、加速度センサ、無線受信機、蓄電池等を有する。
【0022】
機体3は、上記の構成に加え、撮像装置6を有する。撮像装置6は、カメラ又は赤外線イメージセンサ等であり、検査対象物等を撮像するために用いられる。撮像装置6は、その撮像範囲に枠体5が入らないように設けられる。
【0023】
図2に示すように、枠体5は、複数の長尺状の枠材(511~515)で構成された直方体の外形を有する。
【0024】
図3及び図4に示すように、枠体5は、可撓性を有する異方性可撓部7を介して胴体4に支持される。なお、図3では、胴体4及び枠体5は、異方性可撓部7の近傍部分を表している。異方性可撓部7は、枠体5の荷重を胴体4に伝達する。異方性可撓部7は、枠体5に加わる左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓み、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに設定可能である。なお、可撓性とは、外力によって撓むことができる性質である。弾性力学によれば、異方性可撓部7の撓みやすさの大きさは、外力に対する異方性可撓部7の変形量によって定量的に表される。
【0025】
ここで、枠体5の構成を詳述する。枠体5は、外枠51と、横梁52とを有する(図2参照)。外枠51は、複数の長尺状の枠材を結合して直方体の外形にしたものである。横梁52は、外枠51内に延在し、その両端が外枠51の左右の面にある枠材に結合されている。外枠51は、少なくとも直方体の各辺に枠材を有する。その各辺にある枠材は、上下方向の4本の縦枠511と、左右方向の4本の横枠512と、前後方向の4本の側枠513である。外枠51の上下の面は、それぞれ横枠512と側枠513で囲まれ、補強のための枠材が無く、大きな開口となっている。縦枠511と側枠513とで囲まれた左右の各側面には、補強のための側柱514及び側梁515がある。各側柱514は、上下に対を成す側枠513の各中間部を上下方向に接続する。各側梁515は、前後に対を成す縦枠511及びその間にある側柱514の各中央部を前後方向に接続する。横梁52は、左右の側梁515の各中央部を左右方向に接続する。横梁52の中央部が異方性可撓部7を介して胴体4に支持される(図3参照)。
【0026】
異方性可撓部7は、左右に離間して配置された複数の可撓性部材71から成る。各可性部材71は、枠体5と胴体4を鉛直方向に連結し、水平方向(左右方向と前後方向)の力に対して可撓性を有する。
【0027】
異方性可撓部7は、可撓性部材71の左右方向の数が多いほど左右方向に撓み難くなる。また、可撓性部材71の左右の間隔が大きいほど左右方向に撓み難くなる。本実施形態では、異方性可撓部7を構成する可性部材71は、2つであり、胴体4上において、左右対称に配置される。このため、この異方性可撓部7は、左右方向より前後方向のほうが撓みやすい。
【0028】
本実施形態では、可撓性部材71は、防振ゴムからなる。防振ゴムとは、機械設備に取り付けて荷重を支えると同時に振動の伝達を防止するゴムであり、日本産業規格JIS K 6200「ゴム-用語」、及びJIS K 6386「防振ゴム-ゴム材料の区分」に規定されている。可撓性部材71の防振ゴムの具体的な選択は設計事項であり、異方性可撓部7が受ける力によって適度に弾性変形して塑性変形しない防振ゴムが用いられる。
【0029】
上記のように構成された無人航空機1において、無人航空機1が水平面上で静止している時、無人航空機1は鉛直方向の重力を受け、機体3及び枠体5は、定位の姿勢及び位置となる。すなわち、その時、機体3及び枠体5は、傾いていない。無人航空機1が飛行し、前後方向に加減速する時、枠体5に前後方向の慣性力が発生し、その慣性力は、異方性可撓部7によって胴体4に伝達される。その際、異方性可撓部7が前後方向に撓むので、胴体4に伝達される慣性力が緩和される。また、無人航空機1が左右方向に曲がって飛行する時(旋回時)、枠体5に遠心力(左右方向の慣性力)が発生し、その遠心力は、異方性可撓部7によって胴体4に伝達される。その際、異方性可撓部7が左右方向に撓むので、胴体4に伝達される遠心力が緩和される。異方性可撓部7は、弾性変形によって撓むので、枠体5の慣性力が無くなると、撓みが解消される。
【0030】
以上、本実施形態に係る無人航空機1によれば、機体3を覆う枠体5は、直方体の外形を有するので、球形の外形を有する枠体よりも少ない枠材で構成でき、撮像等に支障し難い。また、枠体5は、左右方向及び前後方向の可撓性を有する異方性可撓部7を介して胴体4に支持されるので、枠体5から胴体4に伝達される水平方向の力が緩和され、無人航空機1は、枠体5に生じる慣性力に対する飛行の安定性が高くなる。さらに、異方性可撓部7は、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに設定可能であるので、それぞれの方向における飛行の安定性に適した撓みやすさに設定することにより、無人航空機1は、枠体5に生じる慣性力に対する飛行の安定性がいっそう高くなる。
【0031】
また、異方性可撓部7は、枠体5の荷重を胴体4に伝達するとともに、枠体5に加わる左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓むので、枠体5を支持するために回り対偶の軸受が不要である。このため、無人航空機1は、構成がシンプルになって軽量化される。
【0032】
異方性可撓部7は、左右に離間して配置された複数の可撓性部材71から成るので、可撓性部材71の左右方向の数、及び可撓性部材71の左右の間隔によって、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに容易に設定可能である。
【0033】
第1の実施形態では、可撓性部材71は、防振ゴムから成るので、左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓むとともに、胴体4に対する枠体5の揺れが減衰する。
【0034】
枠体5は直方体の外形を有するので、機体3を枠体5で覆っても、撮像装置6は、その撮像範囲に枠体5が入らないように機体3に設けることが容易である。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る無人航空機1について図5及び図6を参照して説明する。本実施形態の無人航空機1は、第1の実施形態と同様の構成を有し、異方性可撓部の構成が異なる。第1の実施形態と同等の箇所には同じ符号を付している。以下の説明において、第1の実施形態と同等の箇所の説明は省略する。
【0036】
図5及び図6に示すように、本実施形態では、異方性可撓部70は、左右及び前後に離間して配置された複数の可性部材72から成る。各可性部材72は、枠体5と胴体4を鉛直方向に連結し、水平方向の力に対して可撓性を有する。
【0037】
異方性可撓部70は、可撓性部材72の左右方向の数が多いほど左右方向に撓み難くなり、前後方向の数が多いほど前後方向に撓み難くなる。また、異方性可撓部70は、可撓性部材72の左右の間隔が大きいほど左右方向に撓み難くなり、前後の間隔が大きいほど前後方向に撓み難くなる。本実施形態では、異方性可撓部70を構成する可性部材72は、左右2つ×前後2つの計4つ、すなわち左右方向と前後方向が同数であり、胴体4上において、左右対称に配置される。可撓性部材72の間隔は、前後方向より左右方向が大きい。このため、この異方性可撓部70は、左右方向より前後方向のほうが撓みやすい。
【0038】
第2の実施形態では、可撓性部材72は、ばねである。そのばねは、コイルばねであり、水平方向の力を受けていない静止時に軸方向が鉛直である。可撓性部材72のばねの具体的な選択は設計事項であり、異方性可撓部70が受ける力によって適度に弾性変形して塑性変形しないばねが用いられる。
【0039】
上記のように構成された無人航空機1において、無人航空機1が水平面上で静止している時、無人航空機1は鉛直方向の重力を受け、機体3及び枠体5は、定位の姿勢及び位置となっている。すなわち、その時、機体3及び枠体5は、傾いていない。無人航空機1が飛行し、前後方向に加減速する時、枠体5に前後方向の慣性力が発生し、その慣性力は、異方性可撓部70によって胴体4に伝達される。その際、異方性可撓部70が前後方向に撓むので、胴体4に伝達される慣性力が緩和される。また、無人航空機1が左右方向に曲がって飛行する時、枠体5に遠心力が発生し、その遠心力は、異方性可撓部70によって胴体4に伝達される。その際、異方性可撓部70が左右方向に撓むので、胴体4に伝達される遠心力が緩和される。異方性可撓部70は、弾性変形によって撓むので、枠体5の慣性力が無くなると、撓みが解消される。
【0040】
以上、本実施形態に係る無人航空機1によれば、異方性可撓部70は、左右及び前後に離間して配置された複数の可撓性部材72から成るので、可撓性部材72の左右方向及び前後方向の数、及び可撓性部材72の左右及び前後の間隔によって、左右方向と前後方向の撓みやすさを異なる大きさに容易に設定可能である。
【0041】
第2の実施形態では、可撓性部材72は、ばねであるので、弾性係数の大きさを容易に設定でき、左右方向の力によっても前後方向の力によっても弾性変形によって撓む。胴体4に対する枠体5の揺れは、ばねの内部損失によって減衰する。なお、本実施形態の変形例として、ばねに並列に防振ゴムを設けることにより、異方性可撓部70の減衰係数をばね単独よりも大きくしてもよい。
【0042】
本発明の実施例として、無人航空機1を作った(図1参照)。そして、その無人航空機1を飛行させる試験を実施した。
【0043】
(比較例)
比較例として、無人航空機1の異方性可撓部7、70を省略し、枠体5を機体3に剛結した。
【0044】
この比較例の無人航空機は、墜落することがあった。枠体5(ガード)の反復振動によって、機体3に設けられた加速度センサが過大に反応したためである。
【実施例1】
【0045】
実施例1として、防振ゴムから成る可性部材71を有する異方性可撓部7を無人航空機1に設けた。この構成は、第1の実施形態の無人航空機1である(図4参照)。
【0046】
実施例1の無人航空機1は、飛行の安定性が高かった。特に、曲がって飛行する時の安定性が比較例と比べて向上した。また、撮像装置6(カメラ)は、その前方に枠体5の枠材が無いため、焦点が合った。無人航空機1は、球形の枠体を有する球形ドローンよりも軽量化された。球形ドローンは、飛行モード(フライトモード)がスポーツモードである。それに対して、実施例1の無人航空機1は、トライポッドモード、GPSモード、スポーツモードの全ての飛行モードに対応することができた。この無人航空機1は、トライポットモードで飛行できるので、操縦が容易である。
【実施例2】
【0047】
実施例2では、可性部材72がばねである異方性可撓部70を無人航空機1に設けた。それ以外の構成は実施例1と同じにした。この構成は、第2の実施形態の無人航空機1である(図6参照)。
【0048】
実施例2の無人航空機1は、実施例1と同様、飛行の安定性が高かった。
【0049】
比較例、実施例1及び実施例2により、異方性可撓部7、70による飛行の安定性向上が確認された。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、防振ゴムから成る可撓性部材71は、左右方向と前後方向の寸法によって、それぞれの方向の撓みやすさを設定してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 無人航空機
2 回転翼
3 機体
4 胴体
5 枠体
6 撮像装置
7、70 異方性可撓部
71 可撓性部材(防振ゴム)
72 可撓性部材(ばね)
図1
図2
図3
図4
図5
図6