IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社医器研の特許一覧

特許7270355酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法
<>
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図1
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図2
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図3
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図4
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図5
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図6
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図7
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図8
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図9
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図10
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図11
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図12
  • 特許-酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置および酸素濃縮装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20230428BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61M16/10 B
C01B13/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018188911
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020054723
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】396007694
【氏名又は名称】エア・ウォーター・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】榎本 尚
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0213234(US,A1)
【文献】特表2006-502826(JP,A)
【文献】特開2005-152615(JP,A)
【文献】特開2005-237953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
C01B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型酸素濃縮ユニットと、定置ユニットと、を備える酸素濃縮装置であって、
前記携帯型酸素濃縮ユニットは、
大気から圧縮空気を生成する圧縮部と、
前記圧縮部により供給された前記圧縮空気から筒体の内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を濃縮分離する吸着部と、
前記吸着部により分離された酸素を貯蔵するタンクと、
前記タンクに貯蔵された酸素を供給する酸素供給部と、
前記吸着部により吸着された窒素を排出する窒素排出部と、を備え、
前記定置ユニットは、
大気圧よりも低い負圧を発生する負圧発生部と、
前記窒素排出部と前記負圧発生部とを接続する接続機構と、を備え、
前記携帯型酸素濃縮ユニットは、前記定置ユニットに対して着脱可能に設けられ、
前記接続機構は、
前記負圧発生部へ窒素を導く配管部材と、
前記配管部材を該配管部材の軸線に沿って移動可能に支持する支持部と、前記配管部材の端部に取り付けられるとともに前記窒素排出部に当接した状態で前記窒素排出部から排出される窒素を前記配管部材へ導く接続部と、を備え、
前記窒素排出部は、
窒素を排出する排出穴と、
前記排出穴を取り囲むとともに前記配管部材の前記軸線と直交するように形成される平坦面と、を備え、
前記接続部は、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続された接続状態において前記平坦面と当接し、前記排出穴の全周を取り囲むシール領域を形成するシール部を備え、
前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続される場合、前記窒素排出部により排出される窒素が気密に連通し、前記接続機構を介して前記負圧発生部に導かれることを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
記接続部は、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続される場合に、前記窒素排出部へ向けた付勢力を発生することを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
記接続部は、前記窒素排出部に対向する位置で前記支持部および前記配管部材に取り付けられており、前記支持部に対する前記配管部材の位置に応じて形状が変化する弾性材料により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記シール部は、前記排出穴の全周を取り囲むように2以上の前記シール領域を形成することを特徴とする請求項3に記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
前記携帯型酸素濃縮ユニットは、
前記酸素供給部が供給する酸素の流量を設定する設定部と、
前記酸素供給部が供給する酸素の流量を制御する流量制御部と、
前記定置ユニットに接続された接続状態と前記定置ユニットから分離された分離状態とを検出する検出部と、を備え、
前記流量制御部は、前記検出部が前記分離状態を検出する際に、前記設定部が設定する流量が所定流量以下である場合は前記酸素供給部が連続的に酸素を供給するよう制御し、
前記設定部が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記酸素供給部が間欠的に酸素を供給するよう制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
前記定置ユニットは、
前記負圧発生部を制御する負圧制御部を備え、
前記負圧制御部は、前記検出部が前記接続状態を検出する際に、前記設定部が設定する流量が前記所定流量以下である場合は前記負圧発生部を停止させ、前記設定部が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記負圧発生部を動作させるよう制御することを特徴とする請求項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項7】
携帯型酸素濃縮ユニットと、定置ユニットと、を備える酸素濃縮装置の制御方法であって、
前記携帯型酸素濃縮ユニットは、
大気から圧縮空気を生成する圧縮部と、
前記圧縮部により供給された前記圧縮空気から筒体の内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を濃縮分離する吸着部と、
前記吸着部により分離された酸素を貯蔵するタンクと、
前記タンクに貯蔵された酸素を供給する酸素供給部と、
前記吸着部により吸着された窒素を排出する窒素排出部と、を備え、
前記定置ユニットは、
大気圧よりも低い負圧を発生する負圧発生部と、
前記窒素排出部と前記負圧発生部とを接続する接続機構と、を備え、
前記接続機構は、
前記負圧発生部へ窒素を導く配管部材と、
前記配管部材を該配管部材の軸線に沿って移動可能に支持する支持部と、前記配管部材の端部に取り付けられるとともに前記窒素排出部に当接した状態で前記窒素排出部から排出される窒素を前記配管部材へ導く接続部と、を備え、
前記窒素排出部は、
窒素を排出する排出穴と、
前記排出穴を取り囲むとともに前記配管部材の前記軸線と直交するように形成される平坦面と、を備え、

前記接続部は、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続された接続状態において前記平坦面と当接し、前記排出穴の全周を取り囲むシール領域を形成するシール部を備え、
前記酸素供給部が供給する酸素の流量を設定する設定工程と、
前記定置ユニットに接続された接続状態と前記定置ユニットから分離された分離状態とを検出する検出工程と、
前記検出工程が前記分離状態を検出する際に、前記設定工程が設定する流量が所定流量以下である場合は前記酸素供給部が連続的に酸素を供給するよう制御し、前記設定工程が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記酸素供給部が間欠的に酸素を供給するよう制御する第1制御工程と、を備えることを特徴とする酸素濃縮装置の制御方法
【請求項8】
前記検出工程が前記接続状態を検出する際に、前記設定工程が設定する流量が前記所定流量以下である場合は前記負圧発生部を停止させ、前記設定工程が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記負圧発生部を動作させるよう制御する第2制御工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の酸素濃縮装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型酸素濃縮ユニットと定置ユニットとを備える酸素濃縮装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の酸素を透過させて、窒素を選択的に吸着するゼオライトを吸着剤として用いることで酸素を生成する圧力スイング吸着法による酸素濃縮装置が医療用として実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、正圧の圧縮空気を吸着筒体内に送り窒素を吸着させ脱着操作を略大気圧下で行う正圧力変動吸着法(PSA)を用いた携帯用の小型酸素濃縮装置が開示されている。
【0003】
また、正圧力変動吸着法とは異なる正負圧力変動吸着法(VPSA)を用いた酸素濃縮装置も知られている。正負圧力変動吸着法は、正圧の圧縮空気と減圧された負圧空気を送ることで、より積極的にゼオライトに吸着された窒素の洗浄を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-125304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正負圧力変動吸着法を用いた酸素濃縮装置では、例えば、正圧の圧縮空気と減圧された負圧空気の双方を送気可能なコンプレッサが必要となる。このようなコンプレッサは通常大型化するので、携帯用の小型酸素濃縮装置に組み入れることは困難となる。また、例えば、正圧の圧縮空気を送気するコンプレッサと、減圧された負圧空気を送気する真空ポンプを、それぞれ設ける必要がある。この場合、真空ポンプを設ける必要があるため、携帯用の小型酸素濃縮装置に組み入れることは困難となる。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、正負圧力変動吸着法を用いて窒素の脱着操作を積極的に行うことを可能にしつつ携帯可能な携帯型酸素濃縮ユニットを備えた酸素濃縮装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明によれば、携帯型酸素濃縮ユニットと、定置ユニットと、を備える酸素濃縮装置であって、前記携帯型酸素濃縮ユニットは、大気から圧縮空気を生成する圧縮部と、前記圧縮部により供給された前記圧縮空気から筒体の内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を濃縮分離する吸着部と、前記吸着部により分離された酸素を貯蔵するタンクと、前記タンクに貯蔵された酸素を供給する酸素供給部と、前記吸着部により吸着された窒素を排出する窒素排出部と、を備え、前記定置ユニットは、大気圧よりも低い負圧を発生する負圧発生部と、前記窒素排出部と前記負圧発生部とを接続する接続機構と、を備え、前記携帯型酸素濃縮ユニットは、前記定置ユニットに対して着脱可能に設けられ、前記接続機構は、前記負圧発生部へ窒素を導く配管部材と、前記配管部材を該配管部材の軸線に沿って移動可能に支持する支持部と、前記配管部材の端部に取り付けられるとともに前記窒素排出部に当接した状態で前記窒素排出部から排出される窒素を前記配管部材へ導く接続部と、を備え、前記窒素排出部は、窒素を排出する排出穴と、前記排出穴を取り囲むとともに前記配管部材の前記軸線と直交するように形成される平坦面と、を備え、前記接続部は、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続された接続状態において前記平坦面と当接し、前記排出穴の全周を取り囲むシール領域を形成するシール部を備え、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続される場合、前記窒素排出部により排出される窒素が気密に連通し、前記接続機構を介して前記負圧発生部に導かれることを特徴とする酸素濃縮装置により解決される。
【0008】
本構成の酸素濃縮装置によれば、携帯型酸素濃縮ユニットを定置ユニットに接続した接続状態では、窒素排出部と負圧発生部が接続機構により接続されるため、吸着部に吸着した窒素を負圧により積極的に洗浄する正負圧力変動吸着法を用いることができる。一方、携帯型酸素濃縮ユニットを定置ユニットから分離した分離状態では、負圧発生部を備える定置ユニットから携帯型酸素濃縮ユニットが分離されるため、携帯型酸素濃縮ユニットの重量が低減して携帯可能となる。このように、本構成の酸素濃縮装置によれば、正負圧力変動吸着法を用いて窒素の脱着操作を積極的に行うことを可能にしつつ携帯可能な携帯型酸素濃縮ユニットを備えた酸素濃縮装置を提供することができる。
また、本構成の酸素濃縮装置によれば、携帯型酸素濃縮ユニットが定置ユニットに接続される場合に、シール部が排出穴の全周を取り囲むシール領域を形成するため、排出穴を介して負圧発生部が発生する負圧をより確実に吸着部へ導くことができる。
【0009】
前記構成の酸素濃縮装置において、好ましくは、前記接続部は、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続される場合に、前記窒素排出部へ向けた付勢力を発生することを特徴とする。
本構成の酸素濃縮装置によれば、携帯型酸素濃縮ユニットが定置ユニットに接続される場合に、接続部が窒素排出部へ向けた付勢力を発生する。そのため、接続部が窒素排出部に当接した状態を維持し、窒素排出部を介して負圧発生部が発生する負圧を吸着部へ導く
ことができる。
【0010】
前記構成の酸素濃縮装置において、好ましくは、前記接続部は、前記窒素排出部に対向する位置で前記支持部および前記配管部材に取り付けられており、前記支持部に対する前記配管部材の位置に応じて形状が変化する弾性材料により形成されていることを特徴とする。
本構成の酸素濃縮装置によれば、配管部材を配管部材の軸線に沿って移動可能に支持する支持部に対する配管部材の位置に応じて接続部が弾性変形するため、弾性変形した接続部の付勢力によって接続部が窒素排出部に当接した状態を維持することができる。
【0012】
前記構成の酸素濃縮装置において、好ましくは、前記シール部は、前記排出穴の全周を取り囲むように2以上の前記シール領域を形成することを特徴とする。
本構成の酸素濃縮装置によれば、排出穴の全周を取り囲むように2以上のシール領域が形成されるため、排出穴を介して負圧発生部が発生する負圧を更に確実に吸着部へ導くことができる。
【0013】
前記構成の酸素濃縮装置において、好ましくは、前記携帯型酸素濃縮ユニットは、前記酸素供給部が供給する酸素の流量を設定する設定部と、前記酸素供給部が供給する酸素の流量を制御する流量制御部と、前記定置ユニットに接続された接続状態と前記定置ユニットから分離された分離状態とを検出する検出部と、を備え、前記流量制御部は、前記検出部が前記分離状態を検出する際に、前記設定部が設定する流量が所定流量以下である場合は前記酸素供給部が連続的に酸素を供給するよう制御し、前記設定部が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記酸素供給部が間欠的に酸素を供給するよう制御することを特徴とする。
【0014】
本構成の酸素濃縮装置によれば、携帯型酸素濃縮ユニットは、定置ユニットから分離された分離状態において、吸着部の窒素の洗浄を略大気圧下で行う正圧力変動吸着法を用いる。この場合、窒素の洗浄能力は低下するが、設定部が設定する流量が所定流量以下である場合、酸素供給部は、設定された流量の酸素を連続的に供給する。また、設定部が設定する流量が所定流量より大きい場合、酸素供給部は、設定された流量の酸素を連続的に供給することができないが、設定された流量の酸素を間欠的に供給する。設定された流量に応じて酸素を連続的に供給するか間欠的に供給するかを切り替えることで、定置ユニットの真空ポンプによる負圧が利用できない場合であっても、設定された流量の酸素を使用者に供給することができる。
【0015】
前記構成の酸素濃縮装置において、好ましくは、前記定置ユニットは、前記負圧発生部を制御する負圧制御部を備え、前記負圧制御部は、前記検出部が前記接続状態を検出する際に、前記設定部が設定する流量が前記所定流量以下である場合は前記負圧発生部を停止させ、前記設定部が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記負圧発生部を動作させるよう制御することを特徴とする。
【0016】
本構成の酸素濃縮装置によれば、定置ユニットは、携帯型酸素濃縮ユニットが接続される接続状態において、設定部が設定する流量が所定流量以下である場合、負圧発生部を停止させ、正圧力変動吸着法による動作を行う。負圧発生部を動作させなくとも設定する流量の酸素を供給することができるため、負圧発生部を動作させることによる動作負荷や動作音を低減することができる。一方、定置ユニットは、携帯型酸素濃縮ユニットが接続される接続状態において、設定部が設定する流量が所定流量より大きい場合、負圧発生部を動作させ、正負圧力変動吸着法による動作を行う。そのため、本構成の酸素濃縮装置は、負圧発生部を動作させることにより所定流量よりも大きい流量の酸素を供給することができる。
【0017】
前記課題は、本発明によれば、携帯型酸素濃縮ユニットと、定置ユニットと、を備える酸素濃縮装置の制御方法であって、前記携帯型酸素濃縮ユニットは、大気から圧縮空気を生成する圧縮部と、前記圧縮部により供給された前記圧縮空気から筒体の内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を濃縮分離する吸着部と、前記吸着部により分離された酸素を貯蔵するタンクと、前記タンクに貯蔵された酸素を供給する酸素供給部と、前記吸着部により吸着された窒素を排出する窒素排出部と、を備え、前記定置ユニットは、大気圧よりも低い負圧を発生する負圧発生部と、前記窒素排出部と前記負圧発生部とを接続する接続機構と、を備え、前記接続機構は、前記負圧発生部へ窒素を導く配管部材と、前記配管部材を該配管部材の軸線に沿って移動可能に支持する支持部と、前記配管部材の端部に取り付けられるとともに前記窒素排出部に当接した状態で前記窒素排出部から排出される窒素を前記配管部材へ導く接続部と、を備え、前記窒素排出部は、窒素を排出する排出穴と、前記排出穴を取り囲むとともに前記配管部材の前記軸線と直交するように形成される平坦面と、を備え、前記接続部は、前記携帯型酸素濃縮ユニットが前記定置ユニットに接続された接続状態において前記平坦面と当接し、前記排出穴の全周を取り囲むシール領域を形成するシール部を備え、前記酸素供給部が供給する酸素の流量を設定する設定工程と、前記定置ユニットに接続された接続状態と前記定置ユニットから分離された分離状態とを検出する検出工程と、前記検出工程が前記分離状態を検出する際に、前記設定工程が設定する流量が所定流量以下である場合は前記酸素供給部が連続的に酸素を供給するよう制御し、前記設定工程が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記酸素供給部が間欠的に酸素を供給するよう制御する第1制御工程と、を備えることを特徴とする酸素濃縮装置の制御方法により解決される。
【0018】
本構成の酸素濃縮装置の制御方法によれば、携帯型酸素濃縮ユニットは、定置ユニットから分離された分離状態において、吸着部の窒素の洗浄を略大気圧下で行う正圧力変動吸着法を用いる。この場合、窒素の洗浄能力は低下するが、設定工程が設定する流量が所定流量以下である場合、酸素供給部は、設定された流量の酸素を連続的に供給する。また、設定工程が設定する流量が所定流量より大きい場合、酸素供給部は、設定された流量の酸素を連続的に供給することができないが、設定された流量の酸素を間欠的に供給する。設定された流量に応じて酸素を連続的に供給するか間欠的に供給するかを切り替えることで、定置ユニットの真空ポンプによる負圧が利用できない場合であっても、設定された流量の酸素を使用者に供給することができる。
【0019】
前記構成の酸素濃縮装置の制御方法において、好ましくは、前記検出工程が前記接続状態を検出する際に、前記設定工程が設定する流量が前記所定流量以下である場合は前記負圧発生部を停止させ、前記設定工程が設定する流量が前記所定流量より大きい場合は前記負圧発生部を動作させるよう制御する第2制御工程を備えることを特徴とする。
【0020】
本構成の酸素濃縮装置の制御方法によれば、携帯型酸素濃縮ユニットが接続される接続状態において、設定工程が設定する流量が所定流量以下である場合、定置ユニットの負圧発生部を停止させ、正圧力変動吸着法による動作を行う。負圧発生部を動作させなくとも設定する流量の酸素を供給することができるため、負圧発生部を動作させることによる動作負荷や動作音を低減することができる。一方、携帯型酸素濃縮ユニットが接続される接続状態において、設定工程が設定する流量が所定流量より大きい場合、定置ユニットの負圧発生部を動作させ、正負圧力変動吸着法による動作を行う。そのため、本構成の酸素濃縮装置の制御方法は、負圧発生部を動作させることにより所定流量よりも大きい流量の酸素を供給することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正負圧力変動吸着法を用いて窒素の脱着操作を積極的に行うことを可能にしつつ携帯可能な酸素濃縮ユニットを備えた酸素濃縮装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る酸素濃縮装置を示す斜視図である。
図2図1に示す定置ユニットから携帯型酸素濃縮ユニットを分離した状態を示す正面である。
図3図1に示す携帯型酸素濃縮ユニットの概略構成を示す系統図である。
図4図1に示す携帯型酸素濃縮ユニットの操作部を示す図である。
図5図1に示す定置ユニットの概略構成を示す系統図である。
図6図1に示す携帯型酸素濃縮ユニットを下方側からみた斜視図である。
図7図1に示す定置ユニットを上方側からみた斜視図である。
図8図7に示す接続機構の部分拡大図である。
図9図8に示す接続機構の縦断面図である。
図10図8に示す接続機構の縦断面図である。
図11図10に示す窒素排出部を下方側からみた図である。
図12】本実施形態の携帯型酸素濃縮ユニットの制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図13】本実施形態の定置ユニットの制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る酸素濃縮装置300について、図面を参照して説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の酸素濃縮装置300は、携帯型酸素濃縮ユニット100と、定置ユニット200と、を備える。定置ユニット200は、設置面において移動可能となるようにその低部の4隅に進行方向が自由な4つの車輪が設けられている。なお、この車輪にストッパを設けることで、室内の所定の位置で不要に動くことがないように設置することができる。携帯型酸素濃縮ユニット100は重量5~7kg程度で、定置ユニット200に対して着脱機構により着脱可能に設けられている。
【0025】
携帯型酸素濃縮ユニット100は、底部から上部に亘って幅寸法、奥行き寸法はほぼ同一に形成されている。定置ユニット200は、携帯型酸素濃縮ユニット100が着脱されるその上部は、携帯型酸素濃縮ユニット100の底部の幅寸法、奥行き寸法はほぼ同一に形成されているが、底部に向かって前面、後面、側面のいずれの面もなだらかな曲面形状の末広がりに形成されている。こうすることで、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に取り付けられた接続状態においても転倒などが起こらず安定した状態となる。
【0026】
着脱機構は、図6に示す携帯型酸素濃縮ユニット100の下面に設けられた4つの係合爪101と、図7に示す定置ユニット200の上面に設けられた4つの係合穴203との係合状態を切り替える機構である。着脱機構は、4つの係合爪101を4つの係合穴203に係合させることにより、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に取り付けられた機械的な接続状態とする。
【0027】
また、着脱機構は、4つの係合爪101を4つの係合穴203に係合しない状態とすることにより、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200から分離した分離状態とする。係合爪101と係合穴203の係合状態は、使用者がレバー(図示略)を操作することにより切り替えることができる。
【0028】
図1および図2に示すように、携帯型酸素濃縮ユニット100の正面の上方には、酸素濃縮装置300の各部を操作するための操作部180が設けられている。操作部180の下方には、酸素濃縮装置300が生成した酸素を使用者に供給するための酸素出口部165が設けられている。酸素出口部165には、鼻カニューラ(図示略)が取り付けられる。
【0029】
まず初めに、本実施形態の携帯型酸素濃縮ユニット100について説明する。
図3の系統図に示すように、本実施形態の携帯型酸素濃縮ユニット100は、コンプレッサ110と、フィルタ111と、安全弁120と、熱交換器121と、電磁弁131と、電磁弁132と、吸着部140と、製品タンク150と、圧力センサ151と、酸素供給部160と、窒素排出部170と、操作部(設定部)180と、制御部(流量制御部)190と、バッテリ191と、着脱センサ(着脱検出部)192と、を備える。
【0030】
コンプレッサ(圧縮部)110は、大気中の空気を空気取り入れ管L1から空気を取り入れ、大気から圧縮空気を生成する。携帯型酸素濃縮ユニット100は、この空気取り入れ管L1にフィルタ111を設けて、コンプレッサ110を接続している。このコンプレッサ110の近傍には、コンプレッサ110を冷却するための送風ファン(図示略)を設けて、コンプレッサ110を冷却するようにしている。
【0031】
コンプレッサ110からは、安全弁120、及び熱交換器121が接続された圧縮空気の送り管L2が延びている。その下流は二つに分かれた分岐管L4-1、L4-2を備える送り管L4が延びており、分岐管L4-1は、電磁弁131に、分岐管L4-2は、電磁弁132に接続されている。各電磁弁131,132の各出口ポートはそれぞれ吸着筒(筒体)141,142に接続されている。
【0032】
吸着部140は、吸着筒141,142を備え、コンプレッサ110により供給された圧縮空気から吸着筒141,142の内部に充填されたゼオライト(吸着剤)により窒素を吸着して酸素を濃縮分離するものである。吸着筒141,142の出口側から延びる管路L9、L10は、ひとつの均等圧弁143に接続されている。さらに、各吸着筒141,142の下流には、生成した酸素を貯留するための製品タンク150が配置されている。吸着部140は、90%以上の濃度の濃縮酸素を生成し、製品タンク150へ供給する。
【0033】
酸素濃縮装置300の起動前においては、吸着筒141,142内に収容されているゼオライトが、大気と接触すると、その湿度によって、劣化してしまう。これを防ぐため、電磁弁131のノーマルオープンポートには、分岐管L4-1先端の加圧空気ポートが接続され、電磁弁131のノーマルクローズポートには送り管L5が接続されている。
【0034】
送り管L5は送り管L6に接続されている。電磁弁132のノーマルオープンポートには、分岐管L4-2先端の加圧空気ポートが接続され、電磁弁132のノーマルクローズポートには送り管L5が接続されている。これによって、起動していない、つまり運転していない状態では、各電磁弁131,132を介して吸着筒141,142に大気が入り込むことがないから、各吸着筒141,142内のゼオライトが劣化することが有効に防止される。
【0035】
製品タンク150は、吸着部140により分離された酸素を貯蔵する。この製品タンク150にはタンク内の圧力を計測するための圧力センサ151が接続されている。製品タンク150から延びる下流の配管L13には、酸素供給部160が接続されている。
【0036】
酸素供給部160は、製品タンク150に貯蔵された酸素を酸素出口部165に気密に取り付けられた可撓性の鼻カニューラ(図示略)を介して、使用者へ供給する。酸素供給部160は、配管L13に対して、流量コントローラ161、フィルタ162、酸素センサ163、圧力センサ164、酸素出口部165の順に接続されている。
【0037】
窒素排出部170は、吸着部140により吸着された窒素を定置ユニット200または酸素濃縮装置300の外部へ排出する。窒素排出部170は、送り管L6に設けられる電磁弁171と、電磁弁171に接続されるサイレンサ172と、窒素を定置ユニット200へ排出する排出口173と、を備える。電磁弁171は、制御部190からの制御指令に基づいて、吸着部140により吸着された窒素の排出先をサイレンサ172または排出口173に切り替える。
【0038】
電磁弁171は、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に装着される接続状態において、吸着部140により吸着された窒素の排出先を定置ユニット200とする。電磁弁171は、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続した接続状態が解除され、分離される分離状態において、吸着部140により吸着された窒素の排出先をサイレンサ172とする。サイレンサ172は、送り管L6から供給される窒素を機外へ排出する際の騒音を低減する。
【0039】
操作部180は、携帯型酸素濃縮ユニット100の正面上部に10~60度程度の所定角度で上方に傾斜して設けられており、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、受け付けた操作入力を制御部190に伝達するものである。図4に示すように、操作部180は、例えば電源スイッチ181と、流量インジケータ182と、流量設定ボタン183と、メンテナンスボタン184と、表示部185と、バッテリ残量モニタ186と、充電中ランプ187を有している。
【0040】
電源スイッチ181は、患者を含む使用者等が押すことで電源のオンオフを行うことで、酸素濃縮装置300の運転と停止ができる。流量インジケータ182は、患者を含む使用者に供給されている酸素流量の設定値をデジタルで示す。流量設定ボタン183は、押すことで酸素流量の増減を設定できる。メンテナンスボタン184は、メンテナンス時に押す。バッテリ残量モニタ186は、バッテリの残量を例えば5段階で表示する。充電中ランプ187は、バッテリが充電中に点灯する。
【0041】
操作部180は、流量設定ボタン183により設定された設定値を酸素の目標流量として設定する。流量設定ボタン183により設定する設定値は、例えば、0~3.0までの数値であって、0.25刻みの数値である。この数値は、酸素供給部160から1分間あたりに供給される濃縮酸素の流量[L]を示す数値である。
【0042】
表示部185は、酸素供給用の鼻カニューラが折れ曲がったことの警報発生時に点灯するチューブ折れアイコン185Aと、コンセントが外れたことの警報発生時に点灯するコンセントアイコン185Bと、酸素濃縮装置300における警報発生時に連絡をすべきときに点灯する要連絡アイコン185Cと、火気の検知の警報発生時に点灯する火気検知アイコン185Dと、酸素濃度の低下の警報発生時に点灯する濃度低下アイコン185Eを有する。
【0043】
制御部190は、コンプレッサ110,電磁弁131,電磁弁132,均等圧弁143,流量コントローラ161を含む携帯型酸素濃縮ユニット100の各部を制御する装置である。制御部190は、記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、携帯型酸素濃縮ユニット100の各部を制御する。
【0044】
バッテリ191は、携帯型酸素濃縮ユニット100の各部に電力を供給する電力供給源である。携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態において、定置ユニット200の電源ユニット260に接続している給電側コネクタ(図示略:例えばマグネット式コネクタ)と携帯型酸素濃縮ユニット100に設けられた受電側コネクタ(図示略:例えばマグネット式コネクタ)が電気的に接続される。定置ユニット200の電源ユニット260は、バッテリ191を充電するとともに、携帯型酸素濃縮ユニット100の駆動電源となる。
【0045】
着脱センサ(検出部)192は、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続された接続状態と、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200から分離された分離状態とを検出する検出部であり、例えば、リミットスイッチが用いられる。
【0046】
次に、本実施形態の定置ユニット200について説明する。
図5に示すように、本実施形態の定置ユニット200は、真空ポンプ(負圧発生部)210と、真空タンク220と、排気マフラ230と、接続機構240と、制御部(負圧制御部)250と、電源ユニット260と、着脱センサ(着脱検出部)270と、を備える。
【0047】
真空ポンプ210は、電源ユニット260から供給される電力により駆動するモータにより大気圧よりも低い負圧を発生する。携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態において、真空ポンプ210は、接続機構240を介して吸着部140に接続される。真空ポンプ210は、電磁弁131又は電磁弁132が送り管L5に接続される場合に、発生した負圧を吸着部140へ伝達して吸着部140を減圧する。
【0048】
真空タンク220は、真空ポンプ210が発生する負圧を貯蔵するためのタンクである。真空ポンプ210は、電磁弁131および電磁弁132が送り管L5に接続されない状態において、真空タンク220に負圧を貯蔵する。真空タンク220は、電磁弁131又は電磁弁132が送り管L5に接続されることにより、送り管L5に貯蔵した負圧を伝達する。
【0049】
排気マフラ230は、真空ポンプ210に接続されており、真空ポンプ210が発生する負圧により吸引された窒素を定置ユニット200の機外へ排出する。排気マフラ230は、内部に消音機構を備えており、窒素を機外へ排出する際の騒音を低減する。
【0050】
接続機構240は、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態において、携帯型酸素濃縮ユニット100の窒素排出部170と定置ユニット200の真空ポンプ210とを接続する機構である。携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態において、窒素排出部170により排出される窒素は、接続機構240を介して真空ポンプ210へ導かれる。接続機構240の詳細については後述する。
【0051】
制御部250は、真空ポンプ210,真空タンク220を含む定置ユニット200の各部を制御する装置である。制御部250は、記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、定置ユニット200の各部を制御する。
【0052】
電源ユニット260は、商用電源から入力される交流電圧に基づいて酸素濃縮装置300の各部へ電力を供給する装置である。
着脱センサ270は、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続された接続状態と、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200から分離された分離状態とを検出する検出部であり、例えば、リミットスイッチが用いられる。
【0053】
次に、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態において、酸素濃縮装置300が大気から酸素を濃縮分離して使用者に酸素を供給する動作について説明する。
【0054】
大気中の空気は、空気取り入れ管L1から、フィルタ111を介して、コンプレッサ110に取り込まれる。この空気は、コンプレッサ110により加圧されて圧縮空気となり、電磁弁131,132を介して、それぞれ吸着筒141,142内のゼオライトに交互に送り込まれる。
【0055】
吸着筒141,142は、内部に収容されたゼオライトにより、送り込まれた圧縮空気から窒素を吸着し、酸素を分離して90%以上に濃縮する。電磁弁131,132の切替えを行うことにより、吸着筒141および吸着筒142のいずれか一方は、ゼオライトに窒素を吸着させ、酸素を分離して90%以上に濃縮する。吸着筒141および吸着筒142のいずれか他方は、内部の圧力を開放してゼオライトに吸着している窒素を脱離させ、ゼオライトを洗浄(再生)する。
【0056】
吸着筒141および吸着筒142のいずれか他方から窒素を脱離する際に、定置ユニット200の制御部250は、真空ポンプ210を動作させて配管L11,送り管L6,送り管L5を介して、真空ポンプ210が発生する負圧を吸着筒141および吸着筒142のいずれか他方に伝達する。
【0057】
吸着筒141および吸着筒142のいずれか他方から脱離された窒素は、送り管L5,送り管L6,配管L11を介して真空ポンプ210へ導かれる。真空ポンプ210へ導かれた窒素は、排気マフラ230を介して酸素濃縮装置300の機外へ排出される。2本の吸着筒141,142は、交互に使用することで、濃縮酸素を連続的に生成することができる。生成された濃縮酸素は、製品タンク150に貯められた後、酸素供給部160へ導かれる。
【0058】
制御部190は、製品タンク150から酸素供給部160へ供給された濃縮酸素が流量設定ボタン183により設定された流量で酸素出口部165へ供給されるように、流量コントローラ161を制御する。制御部190は、呼吸同調モードと連続供給モードのいずれかで濃縮酸素を酸素出口部165へ供給する。
【0059】
制御部190は、呼吸同調モードにおいて、使用者の吸気により生じる所定の負圧を圧力センサ164で検出する場合に酸素供給部160へ濃縮酸素を供給し、所定の負圧を圧力センサ164で検出しない場合に酸素供給部へ濃縮酸素を供給しないよう流量コントローラ161を制御する。流量コントローラ161は、呼吸同調モードにおいて、圧力センサ164が検出する圧力に応じて濃縮酸素を間欠的に供給することで、最大連続供給モードでの連続流3.0L/分に相当するまで制御することができる。
【0060】
一方、制御部190は、連続供給モードにおいて、連続的に濃縮酸素を酸素出口部165へ供給するよう流量コントローラ161を制御する。流量コントローラ161は、連続供給モードにおいて、圧力センサ164が検出する圧力によらず、濃縮酸素を連続的に供給する。
【0061】
次に、携帯型酸素濃縮ユニット100の窒素排出部170と定置ユニット200の真空ポンプ210とを接続する接続機構240について、図面を参照して詳細に説明する。
図6に示すように、携帯型酸素濃縮ユニット100の下面には、排出口173が設けられている。図7に示すように、定置ユニット200の上面には、接続機構240が設けられている。携帯型酸素濃縮ユニット100を定置ユニット200に接続した接続状態にするだけで、排出口173と接続機構240とを位置決めする作業を行うことなく、排出口173と接続機構240が当接し、気密性が保たれた連通状態となる。
【0062】
図8は、図7に示す接続機構240の部分拡大図であり、定置ユニット200の上面を形成するカバー部材201を取り外した状態を示す図である。図8に示すように、接続機構240は、締結ボルトBにより、接続機構240が設置される設置面を形成する板状部材202に取り付けられる。
【0063】
図9および図10は、図8に示す接続機構240の縦断面図であり、図9は携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続されない分離状態を示し、図10は携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態を示す。図9および図10に示すように、接続機構240は、配管部材241と、支持部242と、接続部243と、フィルタ部材244と、を備える。
【0064】
配管部材241は、配管L11に取り付けられる部材であり、配管L11を介して真空ポンプ210へ窒素を導く。配管部材241には、フランジ部241aが設けられている。フランジ部241aは、支持部242と板状部材202との間の空間に収納されている。配管部材241の軸線Xに沿った移動範囲の上端及び下端は、フランジ部241aにより規制される。
【0065】
支持部242は、配管部材241と同軸に配置され、配管部材241を配管部材241が延びる軸線Xに沿って移動可能に支持する部材である。支持部242は、締結ボルトBによって板状部材202に取り付けられている。
【0066】
接続部243は、配管部材241の上端(端部)に取り付けられるとともに排出口173に気密に当接した状態で窒素排出部170から排出される窒素を配管部材241へ導く部材である。接続部243は、排出口173に対向する位置で支持部242および配管部材241に取り付けられている。接続部243は、板状部材202に固定された支持部242に対する配管部材241の軸線X(長手方向)上の位置に応じて形状が変化する弾性材料(例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー、ウレタン樹脂)により形成されている。
【0067】
図9に示すように、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続されない分離状態において、配管部材241のフランジ部241aは、支持部242に接触する。接続部243は、分離状態において、排出口173と当接しない。分離状態において、板状部材202から接続部243の上端までの軸線X方向の長さはL1となる。
【0068】
一方、図10に示すように、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される接続状態において、配管部材241のフランジ部241aは、板状部材202と接するか板状部材202に近接する。接続部243は、接続状態において、排出口173と当接する。接続状態において、板状部材202から接続部243の上端までの軸線X方向の長さはL1よりも短いL2となる。
【0069】
接続状態では分離状態に比べ、弾性材料により形成された接続部243の上端の位置が長さL1から長さL2を減算した差分だけ低くなる。図10に示す接触状態の接続部243は、長さL1から長さL2を減算した差分だけ弾性変形し、窒素排出部170へ向けた付勢力を発生する。
【0070】
図9および図10に示すように、携帯型酸素濃縮ユニット100の排出口173は、窒素を排出する排出穴173aと、排出穴173aを軸線X回りに取り囲むとともに配管部材241の軸線Xと直交するように形成される平坦面173bと、を備える。接続部243は、接続状態において平坦面173bと当接し、排出穴173aの全周を取り囲むシール領域SR1,SR2を形成するシール部243aを備える。こうして、排出口173と接続機構240は、気密に連通する。
【0071】
図11は、図10に示す排出口173を下方側からみた図である。図11において、シール領域SR1およびシール領域SR2は、平坦面173bのうちシール部243aが接触する領域を示す。シール領域SR1は、排出穴173aの全周を取り囲むように形成される領域である。シール領域SR2は、排出穴173aおよびシール領域SR1の双方の全周を取り囲むように形成される領域である。シール部243aは、排出穴173aの全周を取り囲むように二重のシール領域SR1,SR2を形成する。ここでは、シール領域を二重にする例を示したが、2以上の複数のシール領域を形成してもよい。
【0072】
フィルタ部材244は、排出口173から接続機構240へ窒素とともに異物が流入することを防止するための部材である。フィルタ部材244は、例えば、メッシュ状に配置された金属材料により形成されている。
【0073】
次に、本実施形態の携帯型酸素濃縮ユニット100の制御部190が実行する処理について説明する。図12は、本実施形態の携帯型酸素濃縮ユニット100の制御部190が実行する処理を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS11で、制御部190は、流量インジケータ182に表示される数値を酸素供給部160が1分間あたりに供給すべき濃縮酸素の流量の目標値(L/分)として設定する。
ステップS12で、制御部190は、着脱センサ192から出力される信号に基づいて、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続された接続状態であるかどうかを判定する。制御部190は、接続状態であると判定した場合はステップS13へ処理を進め、接続状態でないと判定した場合はステップS15へ処理を進める。
【0075】
ステップS13で、制御部190は、接続状態であるため、送り管L6から排出される窒素の排出先を定置ユニット200へ切り替えるよう電磁弁171を制御する。
ステップS14で、制御部190は、連続供給モードを実行するよう流量コントローラ161を制御する。
【0076】
ステップS15で、制御部190は、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200から分離された分離状態であるため、送り管L6から排出される窒素の排出先をサイレンサ172へ切り替えるよう電磁弁171を制御する。
【0077】
ステップS16で、制御部190は、ステップS11で設定された濃縮酸素の設定流量が所定流量Fr(L/分)以下であるかどうかを判定する。所定流量Fr(L/分)は、例えば、1.0(L/分)である。制御部190は、YESであればステップS14へ処理を進め、NOであればステップS17へ処理を進める。制御部190は、ステップS16でYESと判定した場合は、ステップS14で連続供給モードを実行するよう流量コントローラ161を制御する。
【0078】
ステップS17で、制御部190は、ステップS11で設定された濃縮酸素の設定流量が所定流量Fr(L/分)より大きいため、呼吸同調モードを実行するよう流量コントローラ161を制御する。流量コントローラ161は、呼吸同調モードにおいて、圧力センサ164が検出する圧力に応じて濃縮酸素を使用者の吸気に同調して間欠的に供給する。
【0079】
次に、本実施形態の定置ユニット200の制御部250が実行する処理について説明する。図13は、本実施形態の定置ユニット200の制御部250が実行する処理を示すフローチャートである。
【0080】
ステップS21で、制御部250は、着脱センサ270から出力される信号に基づいて、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続された接続状態であるかどうかを判定する。制御部250は、接続状態であると判定した場合はステップS22へ処理を進め、接続状態でないと判定した場合はステップS25へ処理を進める。
【0081】
ステップS22で、制御部250は、流量インジケータ182に表示される数値を携帯型酸素濃縮ユニット100の制御部190から信号線(図示略)を介して受信することで、濃縮酸素の流量の目標値(L/分)を設定する。
【0082】
ステップS23で、制御部250は、ステップS22で設定された濃縮酸素の設定流量が所定流量Fr(L/分)以下であるかどうかを判定する。制御部250は、YESであればステップS25へ処理を進め、NOであればステップS24へ処理を進める。
【0083】
ステップS24で、制御部250は、ステップS22で設定された濃縮酸素の設定流量が所定流量Fr(L/分)より大きいことから、真空ポンプ210を動作させる必要があると判断し、真空ポンプ210を動作させる。
【0084】
ステップS25で、制御部250は、真空ポンプ210を停止させる。携帯型酸素濃縮ユニット100が接続されていない場合、真空ポンプ210を動作させる必要がない。そのため、制御部250は、ステップS21でNOと判定する場合にステップS25を実行する。また、ステップS22で設定された濃縮酸素の設定流量が所定流量Fr以下である場合、真空ポンプ210を動作させる必要がない。そのため、制御部250は、ステップS23でYESと判定する場合にステップS25を実行する。
【0085】
以上説明した本実施形態の酸素濃縮装置300が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、携帯型酸素濃縮ユニット100を定置ユニット200に接続した接続状態では、窒素排出部170と真空ポンプ210が接続機構240により気密に当接して接続されるため、吸着部140に吸着した窒素を負圧により積極的に洗浄する正負圧力変動吸着法を用いることができる。
【0086】
一方、携帯型酸素濃縮ユニット100を定置ユニット200から分離した分離状態では、真空ポンプ210を備える定置ユニット200から携帯型酸素濃縮ユニット100が分離されるため、携帯型酸素濃縮ユニット100の重量が低減して携帯可能となる。このように、本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、正負圧力変動吸着法を用いて窒素の脱着操作を積極的に行うことを可能にしつつ携帯可能な携帯型酸素濃縮ユニット100を備えた酸素濃縮装置300を提供することができる。
【0087】
また、本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される場合に、接続部243が窒素排出部170へ向けた付勢力を発生する。そのため、接続部243が窒素排出部170に気密に当接して接続した状態を維持し、窒素排出部170を介して真空ポンプ210が発生する負圧を吸着部140へ導くことができる。
【0088】
また、本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、配管部材241を配管部材241の軸線Xに沿って移動可能に支持する支持部242に対する配管部材241の位置に応じて接続部243が弾性変形するため、弾性変形した接続部243の付勢力によって接続部243が窒素排出部170に気密に当接して接続した状態を維持することができる。
【0089】
また、本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続される場合に、シール部243aが排出口173の全周を取り囲むシール領域SR1,SR2を形成するため、排出口173を介して真空ポンプ210が発生する負圧をより確実に吸着部140へ導くことができる。特に、2以上のシール領域SR1,SR2を形成することにより、排出口173を介して真空ポンプ210が発生する負圧を更に確実に吸着部140へ導くことができる。
【0090】
また、本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、携帯型酸素濃縮ユニット100は、定置ユニット200から分離された分離状態において、吸着部140の窒素の洗浄を略大気圧下で行う正圧力変動吸着法を用いる。この場合、窒素の洗浄能力は低下するが、操作部180が設定する流量が所定流量Fr(L/分)以下である場合、酸素供給部160は、設定された流量の酸素を連続的に供給する。
【0091】
また、操作部180が設定する流量が所定流量Fr(L/分)より大きい場合、酸素供給部160は、設定された流量の酸素を連続的に供給することができないが、設定された流量の酸素を間欠的に供給する。設定された流量に応じて酸素を連続的に供給するか間欠的に供給するかを切り替えることで、定置ユニット200の真空ポンプ210による負圧が利用できない場合であっても、設定された流量の酸素を使用者に供給することができる。
【0092】
本実施形態の酸素濃縮装置300によれば、定置ユニット200は、携帯型酸素濃縮ユニット100が接続される接続状態において、操作部180が設定する流量が所定流量Fr(L/分)以下である場合、真空ポンプ210を停止させ、正圧力変動吸着法による動作を行う。真空ポンプ210を動作させなくとも設定する流量の酸素を供給することができるため、真空ポンプ210を動作させることによる動作負荷や動作音を低減することができる。
【0093】
一方、定置ユニット200は、携帯型酸素濃縮ユニット100が接続される接続状態において、操作部180が設定する流量が所定流量Fr(L/分)より大きい場合、真空ポンプ210を動作させ、正負圧力変動吸着法による動作を行う。そのため、本実施形態の酸素濃縮装置300は、真空ポンプ210を動作させることにより所定流量Frよりも大きい流量の酸素を供給することができる。
【0094】
以上の説明においては、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200に接続された接続状態と、分離状態とを、着脱センサ192,270により検出するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、携帯型酸素濃縮ユニット100の制御部190と定置ユニット200の制御部250との通信信号の確立ができているか否かを制御部190、制御部250のそれぞれで判断を行うことで、接続状態と分離状態とを検出してもよい。
【0095】
また、例えば、定置ユニット200の給電側コネクタと携帯型酸素濃縮ユニット100の受電側コネクタとが電気的に接続しているか否かを制御部190、制御部250のそれぞれで判断を行うことで、接続状態と分離状態とを検出してもよい。
また、例えば、通信手段に赤外線を用い、携帯型酸素濃縮ユニット100側に赤外線送信部または赤外線受信部、定置ユニット200側に赤外線受信部または赤外線送信部を設け、赤外線通信が確立されているか否かを制御部190,制御部250のそれぞれで判断を行うことで、接続状態と分離状態とを検出してもよい。
【0096】
以上の3つの変形例においては、制御部190,250が、着脱センサ192,270の機能を実行する。なお、携帯型酸素濃縮ユニット100が定置ユニット200と分離状態であると判断された場合、安全性を考慮して定置ユニット200の給電側コネクタへの通電を停止するように制御部250で制御するようにすることが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0097】
100・・・携帯型酸素濃縮ユニット、 110・・・コンプレッサ、 120・・・安全弁、 131,132・・・電磁弁、 140・・・吸着部、 141,142・・・吸着筒、 150・・・製品タンク、 160・・・酸素供給部、 161・・・流量コントローラ、 164・・・圧力センサ、 165・・・酸素出口部、 170・・・窒素排出部、 171・・・電磁弁、 172・・・サイレンサ、 173・・・排出口、 173a・・・排出穴、 173b・・・平坦面、 180・・・操作部、 183・・・流量設定ボタン、 190・・・制御部、 191・・・バッテリ、 192・・・着脱センサ、 200・・・定置ユニット、 210・・・真空ポンプ、 220・・・真空タンク、 240・・・接続機構、 241・・・配管部材、 242・・・支持部、 243・・・接続部、 243a・・・シール部、 250・・・制御部、 260・・・電源ユニット、 270・・・着脱センサ、 300・・・酸素濃縮装置、 SR1,SR2・・・シール領域、 X・・・軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13