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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】マグネットホック具及びシート製品
(51)【国際特許分類】
   A44B 1/02 20060101AFI20230428BHJP
   A44B 1/06 20060101ALI20230428BHJP
   A44B 1/18 20060101ALI20230428BHJP
   A44B 17/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A44B1/02 J
A44B1/06 D
A44B1/06 F
A44B1/18 F
A44B17/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018191820
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020058604
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭輔
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1500418(CN,A)
【文献】特公昭60-005050(JP,B2)
【文献】特開2015-136402(JP,A)
【文献】特開2001-204513(JP,A)
【文献】特開2016-214819(JP,A)
【文献】登録実用新案第3209825(JP,U)
【文献】特開2000-236917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0156450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/02
A44B 1/06
A44B 1/18
A44B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁着により互いに係脱自在とされる一方及び他方のマグネットホック部材を有するマグネットホック具において、
一方及び他方のマグネットホック部材は、ゴム質のホック具本体の中間部分に、互いに磁着される磁石が封入され、
一方のマグネットホック部材の磁着面の周囲に形成された環突起状のゴム質係合凸部(11)と、他方のマグネットホック部材の磁着面の周囲に形成された環溝状のゴム質係合凹部(17)と、を有し、磁着時において、環溝状係合凹部(17)に環突起状係合凸部(11)が嵌合され、
前記一方及び他方のマグネットホック部材は、ゴム質の前記ホック具本体の外周部であって前記環溝状係合凹部(17)及び環突起状係合凸部(11)の外周部にゴム質の取付縁部(9,14)がフランジ状に一体的に形成されていることを特徴とするマグネットホック具。
【請求項2】
前記一方及び他方のマグネットホック部材は、ゴム質のホック具本体の中間部分に形成された空間部に、互いに磁着される磁石が挿入され、空間部は、磁石が挿入された状態で、ゴム質の蓋体部の溶着により閉鎖されている請求項1に記載のマグネットホック具。
【請求項3】
前記蓋体部の溶着は、超音波溶着である請求項に記載のマグネットホック具。
【請求項4】
請求項に記載のマグネットホック具を用いたシート製品において、
前記一方及び他方のマグネットホック部材の前記取付縁部の裏面が、互いに開閉されるシート製品の開閉部の生地の対向する取付面に、固着されて取り付けられていることを特徴とするシート製品。
【請求項5】
前記固着は、熱圧着溶着、その他の溶着若しくは接着である請求項に記載のシート製品。
【請求項6】
前記シート製品は、衣類の開閉部、カバーの着脱部、又はテープ類である請求項4又は5に記載のシート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットホック具及びこれを備えた衣類などのシート製品に関するものである。
本発明に係るマグネットホック具を備えたシート製品の生地は、ビニール等の合成樹脂製生地、ゴム製生地、布製生地が含まれる。また、これらの生地によって作成される衣類などの製品は、衣服、フトンカバーのようなカバー類、衣服などの開閉部等に取り付けられる着脱テープ類に適応することができる。
【背景技術】
【0002】
マグネットを用いて互いに磁着させて衣類の合わせ面を閉じるためのマグネットホック具として、マグネット及び磁性体を衣類の生地の互いに開閉される合わせ面に対向して固定した一対のホック部材を備えたホック具がある。しかし、単に磁性面を対面させただけでは、磁着方向と直交する方向の外力が加わった場合にはホック部材同士が簡単に引きはがれやすく、取れやすい欠点がある。
【0003】
また、マグネット具を用いた鞄等の留具が、下記特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録番号第3025580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の留具は、磁石を内蔵して表面に凹部を設けた金属留具本体と、この留具本体の凹部に嵌合する凸部を表面に設けて吸着可能とした金属係止体とからなる。
【0006】
しかしながらこの留具の構造では、留具本体、係止体とも各部が金属で構成されており、錆びるおそれがある。また、それぞれの部品に磁石を固定するためには加工が厄介で、磁石を固定させるための穴を有しており、構造的に複雑であるとともに、防水的機能は有していない。さらに、留具本体、係止体を鞄その他衣類などの閉じ合わせ面に固定するためには、取り付け用脚片を布地、あるいは皮革等の生地を貫通して、生地に穴をあけて取り付ける必要がある。また、その裏側からかしめ付けて固定しなければならず、取付作業も面倒である。
また、上記従来の磁着式ホックの構造では、上記中心部の対向する凹部と凸部の嵌合による固定であって、横方向へのズレに弱く、外れやすい。
【0007】
本発明は以上の課題を解決するものであり、その目的とするところは、構造が簡単であって、錆びることがなく、金属感もなく、使用にあたり柔らかい感触が得られる防水性に優れたマグネットホック具及びこれを用いた衣類などのシート製品を提供するものである。
本発明は、取り付けられる生地の取付面に対し、熱圧着溶着等により簡単且つ密着した状態で取り付けることができ、マグネットホック具を有する衣類の内部に水滴などが入ることがなく、防水性が高く、柔らかい着脱硬度と使用感が得られるマグネットホック具及びこれを用いた衣類などのシート製品を提供するものである。
さらに、本発明は、横方向のズレ及び開き外力に対して外れにくく、閉じやすい構造のマグネットホック具及びこれを用いた衣類などのシート製品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段を説明する。
請求項1に係る本発明は、磁着により互いに係脱自在とされる一方及び他方のマグネットホック部材1,2を有するマグネットホック具において、
一方及び他方のマグネットホック部材1,2は、ゴム質のホック具本体3,4の中間部分に、互いに磁着される磁石5,6(磁性体)が封入され、
一方のマグネットホック部材1の磁着面の周囲に形成されたゴム質環突起状の係合凸部11と他方のマグネットホック部材2の磁着面の周囲に形成されたゴム質環溝状の係合凹部17と、を有し、磁着時において、環溝状係合凹部17に環突起状係合凸部11が嵌合されることを特徴とするマグネットホック具にある。
【0009】
請求項に係る発明は、前記一方及び他方のマグネットホック部材1,2は、ゴム質の前記ホック具本体3,4の外周部にゴム質の取付縁部9,14が一体的にフランジ状に形成されているマグネットホック具にある。
【0010】
本発明は、前記一方及び他方のマグネットホック部材1,2は、ゴム質のホック具本体3,4の中間部分に形成された空間部12,18に、磁石5,6(磁性体)が挿入され、空間部12,18は、磁石5,6(磁性体)が挿入された状態で、ゴム質の蓋体部を構成する蓋部材7,8の溶着により閉鎖されているマグネットホック具にある。
上記蓋部材の溶着は、超音波溶着とすることができる。また、上記ホック具本体と蓋体部とを、内部に磁石を封入した状態で、一体的に成型させることも可能である。
【0011】
本発明は、磁着により互いに係脱自在とされる一方及び他方のマグネットホック部材1,2を有するマグネットホック具であって、一方及び他方のマグネットホック部材1,2は、ゴム質のホック具本体3,4の中間部分に互いに磁着される磁石5,6(若しくは磁性体)が封入され、ホック具本体3,4の外周部にはゴム質の取付縁部9,14がフランジ状に一体的に形成されており、磁着時において、一方のマグネットホック部材1の磁着面の周囲に形成された環突起状のゴム質係合凸部11と、他方のマグネットホック部材2の磁着面の周囲に形成された環溝条のゴム質係合凹部17と、が互いに係脱自在とされるマグネットホック具を用いている。
上記係合凸部11と係合凹部17とは、略環状であればよく、その環状の一部が切りかかれた、略C形若しくは略U形であっても良い。
上記本発明は、上記一方及び他方のマグネットホック部材1,2の前記取付縁部9,14が、互いに開閉される開閉部の生地20,21の対向する取付面に、面方向に密着して固着されて取り付けられていることを特徴とするシート布製品にある。
【0012】
上記固着は、熱圧着溶着、その他の溶着、接着剤若しくは加熱接着シートを用いた接着による固着とすることができる。
【0013】
本発明に係るマグネットホック具を備えた上記シート製品の生地は、ビニールなどの熱可塑性合成樹脂製生地、ゴム製生地、布製生地、これらの生地により製作される衣類の開閉部、カバー類の着脱部、又はこれら生地の開閉部に設けられる開閉テープ類に適応することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、互いに磁着される一方及び他方のマグネット部材の磁着面に、磁着時において互いに嵌合される環溝状のゴム質係合凹部と環突起状のゴム質係合凸部を有しているところから、磁着時において横方向のズレに対して強く、磁着面に傾斜方向の力が加わった場合においても、環状凹凸部の直径方向の両側部が係合して磁着力が継続する。また、磁力で引き合う着脱構造であり、金属性の従来のホック具に比較して、磁力による柔らかい着脱強度が得られる。
【0015】
本発明では、内部に磁石が封入されるホック具本体及びフランジ状の取付縁部が共にゴム質であって、錆びることがなく、また、金属感がなく、全体として柔軟な使用感が得られる。また、着脱強度も柔軟であって、着脱時、生地に無理な力が加わることがない。
【0016】
本発明では、ゴム質のホック具本体の外周部にゴム質の取付縁部が一体的に形成されており、この取付縁部を衣服などのシート製品の生地に熱圧着方式により取り付けることができ、縫い目がなく、衣服の内部に水が入らず、防水性が高い。これにより、スポーツウエアの上部前立てや高級ウエアの前立て等に使用して、防水機能性が特に優れている。また、生地への取り付け状態において、生地に穴を開ける必要がなく、生地を傷めることがない。
【0017】
またホック具本体がゴム質で一体成形でき、しかも磁石(磁性体)を内部に挿入した状態でゴム質の蓋体部を構成する蓋部材で塞ぎ、超音波溶着により一体化する構造であるため、金属バネ性の従来のホック具のように、ホック本体に穴がなく、防水性に優れている。また、組み付け製作も容易となる。
【0018】
更に、本発明のマグネットホック具及びこれを備えた衣類においては、生地に対する取付を熱圧着溶着によって行うことができるため、自動化、省力化に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る一方のマグネットホック部材の平面、側面、背面及び断面図である。
図2】同一方のマグネットホック部材のホック具本体に磁石(磁性体)及び蓋部材を取り付けるための一部半断面分解斜視図である。
図3】同他方のマグネットホック部材の平面、側面、背面及び断面図である。
図4】同他方のマグネットホック部材のホック具本体に磁石(磁性体)及び蓋部材を取り付けるための一部半断面分解斜視図である。
図5】(a)は同一方及び他方のマグネットホック部材を衣類の互いに開閉される生地の対向する取付面に溶着により取り付けた状態を示す断面図、(b)は同取付状態で生地同士を磁着させた状態を示す断面図である。
図6】本発明に係るマグネットホック具を開閉部に用いた衣類の姿図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1,2 は、本発明によるマグネットホック具における雄ホック部である一方のマグネットホック部材1を示し、図3,4は同雌ホック部である他方のマグネットホック部材2を示している。いずれもゴム質の成形体からなる一方のホック具本体3及びこれに係合する他方のホック本体4の中央内部に、互いに磁着する、それぞれ円盤状の磁石5(磁性体)、磁石6(磁性体)を埋設し、背面をゴム製の蓋部材7,8で密着状に覆うものである。
【0021】
一方のホック具本体3は、所定厚みの円盤状フランジよりなる取付縁部9と、取付縁部9の中央にやや表面側に突出した状態に形成された厚みの薄い隔壁部10と、隔壁部10の周囲に立ち上げられた筒状若しくは環状の係合凸部11と、隔壁部10の背面側において取付縁部9の背面に開口する空間部12と、空間部12の開口周縁に立ち上げられた断面直角形状の係止体13とを備えている。上記空間部12内に前記磁石5(磁性体)を挿通し、その背面に前記蓋部材7を嵌合し、図5に示すように係止体13を内側に向けて熱かしめすることによって隔壁部10に対椄した状態で磁石5をホック具本体3内に封入するものである。隔壁部10は、一方を閉鎖した筒型空間部12の、閉鎖底板を構成する。
【0022】
他方のホック具本体4は、前記とほぼ同様の円盤状フランジよりなる取付縁部14と、取付縁部14の中央にあってやや表面側に突出した状態に形成された厚みの薄い隔壁部15と、隔壁部15の周囲に立ち上げられ、かつ前記一方のホック具本体3の係合凸部11の外周を嵌合する筒部16と、隔壁部15の周囲と筒部16の内周底部との間に形成され、かつ前記係合凸部11の先端を嵌合する環溝状の係合凹部17とを備えている。さらに、隔壁部15の背面側にあって取付縁部14の背面に開口する空間部18と、空間部18の開口周縁に立ち上げられた断面直角形状の係止体19とを備えている。上記空間部18内に磁石6(磁性体)を挿通し、その背面に蓋部材8を嵌合し、係止体19を内側に向けて図5に示すように熱かしめすることによって隔壁部15に対椄した状態で磁石6(磁性体)をホック具本体4内に封入するものである。隔壁部15は、一方を閉鎖した筒型空間部18の、閉鎖底板を構成する。
【0023】
以上の構成の雌雄のホック部となる一方及び他方のホック部材1,2は、それぞれ図5に示すように、前記係合凹部17を係合凸部11に対向させた状態で、前記各ホック具本体3,4の取付縁部9,14が、衣類の互いに開閉される生地20,21の対向する取付面に溶着部22の溶着により面方向に密着した状態で取り付けられている。
【0024】
上記係合凸部11と係合凹部17とは、略環状であればよく、その環状の一部が切りかかれた、略C形若しくは略U形であっても良い。
【0025】
ここで、溶着手段としては、加熱溶着、超音波溶着、高周波溶着等のいずれも採用できる。生地が直接溶着されない素材である場合には、溶着フィルム、その他の接着媒体を予め生地20,21に貼り付け、または塗布しておきこれを介して溶着可能である。
【0026】
そして図5(a)に示すように生地20,21同士が離間している状態から図5(b)に示すように生地20,21同士を重合した状態で、係合凸部11が係合凹部17内に入り込み、隔壁10、15を介して磁石5(磁性体)が磁石6(磁性体)に近接することにより磁着作用がなされるとともに、磁着面と直交する方向の引きはがし外力が発生しても、係合凸部11と係合凹部17同士の環状の凹凸係合、並びに係合凸部11の外周が筒部18内に嵌合していることにより、物理的に規制されるため引き抜かない限りは磁着力が作用したままであり、簡単に外れることがない。磁着面に傾斜方向の開き外力が加わった場合においても、環状凹凸部の直径方向の両側部が係合し、磁着力が継続する。 また、磁力で引き合う着脱構造であって、柔らかい着脱強度が得られ、着脱時、生地20,21に無理な力が加わることがない。
【0027】
図6は、以上のマグネットホック具(一方のマグネットホック部材1及び他方のマグネットホック部材2)を上着aの上部前立てボタンに適用した場合を示す。
上着aは、スポーツウエアのアウターやレインウエアー等に適応することができる。上着aの生地は、ビニール生地、ゴム製生地、又は、布製生地とすることができる。
【0028】
1,2 一方及び他方のマグネットホック部材
3,4 ホック具本体
5 磁石(磁性体)
6 磁石(磁性体)
7,8 蓋部材
9,14 取付縁部
10,15 隔壁部
11 係合凸部
12,18 空間部
13,19 係止体
16 筒部
17 係合凹部
20,21 生地
22 溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6