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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/07 20060101AFI20230428BHJP
   B01D 24/42 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 29/92 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 29/90 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 35/18 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01D29/06 510D
B01D29/42 510
B01D29/00 C
B01D29/42 501C
B01D35/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018227420
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020089822
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】納冨 洋一
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0008172(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0199979(US,A1)
【文献】特表2015-508706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/07,29/90,29/92
B01D 24/42
B01D 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結可能な液体を濾過する濾過装置であって、
前記液体の流入部及び流出部を有するフィルタケースと、
中心軸が鉛直方向に延びるように前記フィルタケースの内部に設けられた略円筒形状の
フィルタエレメントであって、前記液体を濾過する略円筒形状の濾材と、前記濾材の内側に設けられた略円筒形状の内筒と、前記濾材の下端を覆う第1プレートと、前記濾材の上端を覆う第2プレートと、を有するフィルタエレメントと、
前記フィルタケースの底面に設けられたヒータと、
を備え、
前記内筒は、前記内筒の略筒状の側面である内筒側面の中空部を覆う仕切り板を有し、
前記内筒側面は、前記仕切り板より鉛直方向上側に位置する第1領域と、前記第1領域の鉛直方向下側に位置する第2領域と、を有し、
前記第1領域には、前記内筒側面を貫通する複数の孔が形成され、
前記第1プレートには、前記内筒の中空部と重なる位置に第1孔が形成され、
前記ヒータは、略棒状の加熱部を有し、前記加熱部は、前記第1孔を介して前記内筒側面のうちの前記第2領域及び前記仕切り板により囲まれる空間に挿入され
前記第2プレートには、前記内筒の中空部と重なる位置に略円筒形状の第2孔が形成され、
前記流出部は、前記第2孔と連通し、
前記第2孔は、上側の内径が下側の内径より小さい略円錐台形状の部分を含む
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
請求項に記載のフィルタ装置であって、
前記フィルタエレメントと前記フィルタケースとの間に設けられた略円筒形状のリングを備え、
前記リングは、前記第1プレートと前記第2プレートとの間を移動可能である
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項3】
請求項に記載のフィルタ装置であって、
前記第2プレートは、前記濾材より大きく、
前記フィルタケースの側面は、略円筒形状であり、当該側面の内周面の直径は前記第2プレートの外周面の直径と略同一であり、
前記第2プレートの直径と前記濾材の直径との差は、前記リングの厚さと略同一である
ことを特徴とするフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス封入容積を含む包体を含んだ収縮可能要素がフィルタ筐体内に配置されており、濾過筐体内における液体の凍結による圧力の発生に反応して収縮可能要素が収縮する液体フィルタ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-510712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物の除去には、尿素水が一般的に用いられる。しかしながら、尿素水は低温で凍結しやすく、フィルタ装置の内部で尿素水が凍結して膨張すると、フィルタケースやフィルタエレメントが破損するおそれがある。
【0005】
特許文献1に記載の発明は、収縮可能要素の収縮により、フィルタ要素やフィルタ筐体の破損を防止するためになされたものである。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、液体の凍結を防止することはできない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液体の凍結を防止するとともに、仮に液体が凍結した場合にも装置の破損を防止することができるフィルタ装置及び濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ装置は、例えば、凍結可能な液体を濾過する濾過装置であって、前記液体の流入部及び流出部を有するフィルタケースと、中心軸が鉛直方向に延びるように前記フィルタケースの内部に設けられた略円筒形状のフィルタエレメントであって、前記液体を濾過する略円筒形状の濾材と、前記濾材の内側に設けられた略円筒形状の内筒と、前記濾材の下端を覆う第1プレートと、前記濾材の上端を覆う第2プレートと、を有するフィルタエレメントと、前記フィルタケースの底面に設けられたヒータと、を備え、前記内筒は、前記内筒の略筒状の側面である内筒側面の中空部を覆う仕切り板を有し、前記内筒側面は、前記仕切り板より鉛直方向上側に位置する第1領域と、前記第1領域の鉛直方向下側に位置する第2領域と、を有し、前記第1領域には、前記内筒側面を貫通する複数の孔が形成され、前記第1プレートには、前記内筒の中空部と重なる位置に第1孔が形成され、前記ヒータは、略棒状の加熱部を有し、前記加熱部は、前記第1孔を介して前記内筒側面のうちの前記第2領域及び前記仕切り板により囲まれる空間に挿入されることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るフィルタ装置によれば、フィルタケースの内部には、液体を濾過する略円筒形状の濾材と、濾材の内側に設けられた略円筒形状の内筒を有するフィルタエレメントが設けられており、内筒は、側面の中空部を覆う仕切り板を有する。フィルタケースの底面に設けられたヒータは略棒状の加熱部を有し、加熱部は、濾材の下端を覆う第1プレートの内筒の中空部と重なる位置に形成された第1孔を介して、内筒の側面及び仕切り板により囲まれる空間に挿入される。これにより、加熱部が液体を温めることで、液体の凍結を防止することができる。また、フィルタケースの内部に液体が流入したときに、内筒の側面及び仕切り板により囲まれる空間に空気が残留するため、仮に液体が凍結して液体が膨張したとしても、装置の破損を防止することができる。さらに、内筒の側面及び仕切り板により囲まれる空間に加熱部を挿入することで、フィルタ装置を小型化すると共に、フィルタケース内部の液体が貯留される空間の体積を小さくすることができる。その結果、フィルタケース内部に貯留される液体の体積(水量)を減らし、凍結時の体積変化を小さくすることができる。
【0009】
ここで、前記第2プレートには、前記内筒の中空部と重なる位置に略円筒形状の第2孔が形成され、前記流出部は、前記第2孔と連通し、前記第2孔は、上側の内径が下側の内径より小さい略円錐台形状の部分を含んでもよい。これにより、第2孔の内部に空気溜まりとなる空間をなくし、傾きがなくなったときに空気がポンプやインジェクタに供給されることによる不具合を防ぐことができる。
【0010】
ここで、前記フィルタエレメントと前記フィルタケースとの間に設けられた略円筒形状のリングを備え、前記リングは、前記第1プレートと前記第2プレートとの間を移動可能であってもよい。これにより、フィルタエレメントの隅に形成される空気溜まりとなる空間を小さくし、傾きがなくなったときに空気がポンプやインジェクタに供給されることによる不具合を防ぐことができる。
【0011】
ここで、前記第2プレートは、前記濾材より大きく、前記フィルタケースの側面は、略円筒形状であり、当該側面の内周面の直径は前記第2プレートの外周面の直径と略同一であり、前記第2プレートの直径と前記濾材の直径との差は、前記リングの厚さと略同一であってもよい。これにより、フィルタケース内部の尿素水が貯留される空間の体積を小さくし、フィルタケース内部に貯留される尿素水の体積(水量)を減らし、凍結時の体積変化を小さくすることができる。また、フィルタケース内部の尿素水が貯留される空間の体積を小さくすることで、建設機械の始動時にインジェクタに供給される空気を減らし、空気による不具合を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体の凍結を防止するとともに、仮に液体が凍結した場合にも装置の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態であるフィルタ装置1の概略を示す縦断面図である。
図2】フィルタ装置1の概略を示す平面図である。
図3】フィルタ装置1の概略を示す横断面図である。
図4】フィルタ装置1が傾いた様子を模式的に示す図である。
図5】一般的な尿素SCRシステム100の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、内燃機関(特にディーゼルエンジン)の排気に含まれるNOx(窒素酸化物)を還元する選択還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)型の尿素SCRシステムに適用可能である。なお、SCR型のシステムで用いる液体は、尿素水に限られず、NOxの還元が可能な様々な液体を用いることができる。
【0015】
図5は、一般的な尿素SCRシステム100の概略を示す図である。尿素SCRシステム100は、主として、フィルタ装置101と、タンク102と、ポンプ103と、インジェクタ104と、を有する。尿素SCRシステム100が搭載された建設機械(以下、建機という)や、自動車等のエンジンが始動すると、タンク102に蓄えられた尿素水がポンプ103に吸い上げられる。これにより、尿素水は、タンク102、フィルタ装置101及びポンプ103を通過してインジェクタ104に供給され、インジェクタ104から噴霧される(図5の黒矢印参照)。一部の尿素水は、ポンプ103からタンク102に戻される(図5の黒矢印参照)。建機等のエンジンが停止すると、尿素水の凍結防止のため、フィルタ装置101、ポンプ103及びインジェクタ104の内部にある尿素水がタンク102に戻される(図9の白抜き矢印参照)。
【0016】
以下、本発明について、尿素SCRシステム100に用いられるフィルタ装置を例に、流体として尿素水を用いる場合について説明するが、本発明は、凍結可能な様々な流体を濾過する濾過装置に適用することができる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態であるフィルタ装置1の概略を示す縦断面図である。図2は、フィルタ装置1の概略を示す平面図である。図3は、フィルタ装置1の概略を示す横断面図である。図1において、中心線axから左側はフィルタケース10及びヒータ30の一部を切断した断面図であり、中心線axから右側はフィルタケース10、フィルタエレメント20及びヒータ30を切断した断面図である。なお、図1及び図3では、一部の部品について断面を表すハッチングを省略している。
【0018】
フィルタ装置1は、主として、フィルタケース10と、フィルタエレメント20と、ヒータ30と、リング41と、を有する。
【0019】
フィルタケース10は、主として、下ケース11と、上ケース12と、を有する。フィルタケース10の内部には、主としてフィルタエレメント20と、ヒータ30と、リング41とが設けられている。
【0020】
下ケース11は、有底略筒形状の部材であり、内部が空洞である。下ケース11の上端面は開口している。下ケース11の底面11aは、ヒータ30が挿入されるヒータ取付孔11bを有する。また、底面11aは、略円筒形状の筒状部11cを有し、筒状部11cの中空部はヒータ取付孔11bと重なる。
【0021】
下ケース11の側面11dは、尿素水をフィルタ装置1へ流入させる流入孔11eを有する。また、側面11dは、略円筒形状の流入部11fを有し、流入部11fの中空部は流入孔11eと重なる。流入部11fには、流入パイプ16が挿入される。流入部11fと流入パイプ16との間にはシール部材(例えば、Oリング)52が設けられており、シール部材52は流入部11fと流入パイプ16との間から尿素水が漏れないようにしている。流入孔11e、流入部11f及び流入パイプ16は、本発明の流入部に相当する。
【0022】
上ケース12は、下ケース11上部の開口端を覆う部材である。上ケース12は、下ケース11に対して着脱可能に設けられる。下ケース11と上ケース12との間にはシール部材(例えば、Oリング)51が設けられており、シール部材51は下ケース11と上ケース12との間から尿素水が漏れないようにしている。
【0023】
上ケース12の上端面12aは、尿素水をフィルタ装置1から流出させる流出孔12bを有する。また、上端面12aは、略円筒形状の流出部12cを有し、流出部12cの中空部は流出孔12bと重なる。流出部12cには、流出パイプ17が挿入されている。流出部12cと流出パイプ17との間にはシール部材(例えば、Oリング)53が設けられており、シール部材53は流出部12cと流出パイプ17との間から尿素水が漏れないようにしている。流出孔12b、流出部12c及び流出パイプ17は、本発明の流出部に相当する。
【0024】
下ケース11の側面11dと、上ケース12の側面12dとは、内径が略同一である。したがって、下ケース11と上ケース12とが組み立てられることで、フィルタケース10は、両端が覆われた略円筒形状となる。
【0025】
フィルタエレメント20は、両端が覆われた略筒状(ここでは、略円筒形状)の部材であり、フィルタケース10の内部に設けられている。フィルタケース10及びフィルタエレメント20の中心線axは、鉛直方向(z方向)に延びる。
【0026】
フィルタエレメント20は、主として、濾材21と、内筒22と、プレート23、24と、を有する。
【0027】
濾材21は、尿素水を濾過するためのものであり、径方向に厚みを有する略円筒形状である。濾材21は、合成樹脂や紙等を用いたろ紙をひだ折りにし、ひだ折りにしたろ紙の両端を連結して円筒状に丸めることによって形成される。
【0028】
内筒22は、樹脂製の略円筒形状の部材であり、濾材21の内側に設けられている。内筒22の高さと濾材21の高さとは、略同じである。
【0029】
内筒22の略筒状の側面22aは、鉛直方向上側に位置する第1領域A1と、第1領域A1の鉛直方向下側に位置する第2領域A2とを有する。第1領域A1は内筒22の上端を含み、第2領域A2は内筒22の下端を含む。側面22aの第1領域A1には、尿素水が通過する孔22bが略全面に形成されるが、側面22aの第2領域A2には孔22bが形成されていない。
【0030】
なお、本実施の形態では、第1領域A1は、内筒22の高さ全体の略1/3であるが、第2領域A2の高さはこれに限られない。ただし、第1領域A1の高さは、内筒22の高さの略半分以下とすることが望ましい。
【0031】
内筒22は、側面22aの中空部を覆う仕切り板22cを有する。仕切り板22cの直径は、側面22aの内径と略同一である。仕切り板22cの高さ方向(z方向)の位置は、第1領域A1と第2領域A2との間である。言い換えれば、第1領域A1は仕切り板22cより上側に位置する領域であり、第2領域A2は仕切り板22cより下側に位置する領域である。
【0032】
プレート23は、略円板形状の部材であり、濾材21及び内筒22の下端を覆う。プレート24は、略円板形状又は略円筒形状の部材であり、濾材21及び内筒22の上端を覆う。プレート24は、フィルタケース10(ここでは、上ケース12)の上端面12aに設けられている。プレート23は、プレート24よりわずかに小さい。
【0033】
プレート23には、内筒22の中空部と重なる位置に、略円筒形状の孔23aが形成される。孔23aの大きさは、内筒22の内径と略同一である。孔23aは、フィルタケース10内部かつフィルタエレメント20の外部の空間(空間S1)と、内筒22の側面22aのうちの第2領域A2及び仕切り板22cにより囲まれる空間(空間S3)とを連通させる。
【0034】
プレート24には、内筒22の中空部と重なる位置に、孔24aが形成される。孔24aは、内筒22の側面22aのうちの第1領域A1及び仕切り板22cにより囲まれる空間(空間S2)と流出パイプ17とを連通させる。孔24aの下端部は、内筒22の内径と略同一である。また、孔24aは、上側の内径が下側の内径より小さい略円錐台形状の部分を含む。
【0035】
プレート24は、板状部24bと、板状部24bから上側に突出する突出部24cと、を有する。板状部24bの直径は濾材21の直径より大きく、突出部24cの直径は板状部24bの直径より小さい。なお、板状部24bの直径は、濾材21の直径より少しだけ大きくすることが好ましく、例えば板状部24bの直径と濾材21の直径との差をリング41の厚さと略同一とすることが好ましい。
【0036】
プレート24の上端面12aへの取り付けについて説明する。上端面12aは、2つの平面121、123と、平面121と平面123とを連結する略円筒形状の筒状部122と、を有する。平面121の直径は平面123の直径より小さい。
【0037】
突出部24cは筒状部122に挿入され、突出部24cの上端面は平面121に当接し、板状部24bの上端面は平面123に当接する。突出部24cの外周面にはシール部材(例えば、Oリング)54が設けられており、シール部材54が突出部24cと筒状部122との間に設けられることで、プレート24すなわちフィルタエレメント20が上ケース12に取り付けられる。
【0038】
板状部24bの外周面の直径と、側面12d(すなわち、フィルタケース10の側面)の内周面の直径とは略同一である。したがって、濾材21とフィルタケース10との間の隙間が小さくなる。これにより、フィルタケース10内部に貯留される尿素水の体積(水量)を減らし、凍結時の体積変化を小さくすることができる。
【0039】
フィルタエレメント20が上ケース12に取り付けられた状態において、プレート23と底面11aとの間に隙間を有する。流入パイプ16等を介してフィルタケース10の内部に流入した尿素水は、まず底面11aとプレート23との間に流入し、その後濾材21と側面11d、12dとの間に流入する。
【0040】
尿素水の流れを考慮すると、流入孔11e、流入部11f及び流入パイプ16は、底面11a近傍に設けられていることが好ましい。また、流入孔11e、流入部11f及び流入パイプ16は、側面11dではなく、底面11aに設けられていてもよい。
【0041】
ヒータ30は、例えば電熱棒やセラミックヒータである。ヒータ30は、外周面に雄ねじ部32aが形成された取付部32を有する。雄ねじ部32aと、ヒータ取付孔11b及び筒状部11cの内周面に形成された雌ねじ部11gとが螺合することで、ヒータ30がフィルタケース10の底面11aに設けられる。
【0042】
取付部32の外周面には、シール部材(例えば、Oリング)55が設けられており、シール部材55は取付部32と筒状部11cとの間から尿素水が漏れないようにしている。
【0043】
ヒータ30は、略棒状の加熱部31を有する。加熱部31は、取付部32に設けられている。加熱部31は、フィルタケース10の内部に、長手方向が鉛直方向に沿うように設けられる。また、加熱部31は、孔23aを介して内筒22の側面22a及び仕切り板22cにより囲まれる空間(空間S3)に挿入される。
【0044】
リング41は、略円筒形状の部材であり、フィルタエレメント20とフィルタケース10との間に設けられている。リング41は、尿素水に浮くように形成されている。また、リング41は、固定されておらず、プレート23とプレート24との間を移動可能である。
【0045】
次に、このように構成されたフィルタ装置1の機能について、図1を用いて説明する。図1の白抜き矢印は、尿素水の流れを示す。
【0046】
尿素水は、流入孔11e、流入部11f及び流入パイプ16を介して空間S1に流入する。
【0047】
尿素水がフィルタケース10内部の空間S1に流入する前は、リング41は、プレート23に当接している(図1の点線参照)。リング41は尿素水に浮くため、尿素水がフィルタケース10内部の空間S1に流入すると、尿素水がリング41を押し上げ(図1の矢印参照)、尿素水がフィルタケース10内部の空間S1に完全に貯留された状態ではリング41はプレート24に当接する(図1の実線参照)。
【0048】
空間S1に流入した尿素水は、濾材21の外側から内側へ向かって流れることで濾過される。内筒22の第2領域A2には22bが形成されていないため、尿素水は、内筒22に沿って上向き(+z方向)に流れ、内筒22の第1領域A1に形成された孔22bを通って空間S2に流出する。
【0049】
なお、内筒22の第2領域A2には、孔22bが形成されていない。したがって、尿素水が空間S1に流入すると、内筒22の第2領域A2と仕切り板22cとにより囲まれた領域(空間S3)には、下側(-z側)から尿素水が流入するが、空間S3の上端近傍の部分には一部空気が残留する。
【0050】
空間S3に貯留された尿素水はヒータ30により温められ、尿素水の凍結が防止される。しかしながら、気温の低下等により、ヒータ30により尿素水が温められたとしても、尿素水が凍結する可能性がある。
【0051】
尿素水が凍結すると、尿素水の体積が7%程度増加する。空間S3の上端部分には一部空気が残留しているため、尿素水が凍結する過程で尿素水は空間S3内の気体を圧縮する。このように、尿素水が膨張するための空間をフィルタ装置1の内部に設けることで、フィルタケース10、フィルタエレメント20等の損傷が防止される。
【0052】
なお、本実施の形態では、空間S3の開口部は底面11a近傍にあり、下側(-z側)を向いている。したがって、フィルタ装置1が傾いたとしても空間S3に封入された気体が空間S3から外に出る可能性は至って低い。
【0053】
尿素SCRシステムにおいて、フィルタ装置1が載せられた建機、自動車等を停止するときには、尿素水の凍結を防止するために尿素水をタンクに戻す(図5参照)。そのため建機、自動車等を停止する度に、フィルタ装置1の内部は気体(空気)で満たされる。その後、建機、自動車等を始動するときには、フィルタ装置1の内部にある空気をポンプにより吸い出した後で、タンクからフィルタ装置1に尿素水が供給される。
【0054】
尿素SCRシステムでは、フィルタ装置1の下流にインジェクタがあるが、インジェクタは建機始動後早急に(例えば90秒以内に)圧力を高圧(例えば900kPa)に上げなければならない。しかしながら、インジェクタに供給される空気の量が多いと、圧力が所定の圧力まで上がらないという不具合が生じる。
【0055】
本実施の形態では、空間S1の体積が小さいため、建機始動時にインジェクタに供給される空気を減らすことができる。そのため空気による不具合、具体的には建機始動時にインジェクタの圧力が所定の圧力まで上がらないという不具合を防ぐことができる。
【0056】
次に、フィルタ装置1が傾いた場合について説明する。本実施の形態では、フィルタ装置1は、内燃機関の排気に含まれるNOxを還元する尿素SCRシステムに適用されており、尿素SCRシステムは建機等の車両に搭載されている。したがって、車両と共にフィルタ装置1が傾くおそれがある。
【0057】
図4は、フィルタ装置1が傾いた様子を模式的に示す図である。リング41がない場合には、フィルタエレメント20の隅に空気溜まりとなる空間S11(図4の網掛け参照)が形成されるが、リング41を設けることで空気溜まりを空間S12(図4の網掛け参照)へと小さくすることができる。特に、板状部24bの直径と濾材21の直径との差がリング41の厚さと略同一であるため、空間S12が濾材21と重なる領域のみとなり、空間S12が小さくなる。
【0058】
孔24aは、上側の内径が下側の内径より小さい略円錐台形状のテーパ部24eを含む。孔24aがテーパ部24eを有しない場合には、孔24aの内部に空気溜まりとなる空間S13(図4の網掛け参照)が形成されるが、テーパ部24eを有することで空間S13をなくすことができる。
【0059】
本実施の形態によれば、ヒータ30(加熱部31)をフィルタケース10の内部に設けることで、尿素水の凍結を防止することができる。また、凍結時に空間S3に封入された気体が圧縮されることで、仮に尿素水が凍結した場合にもフィルタ装置1の破損を防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、加熱部31を空間S3に挿入することで、フィルタ装置1を小型化し、空間S1の体積を小さくすることができる。さらに、フィルタエレメント20とフィルタケース10の側面(側面11d及び側面12d)とを近づけることで、空間S1の体積を小さくすることができる。このように、空間S1の体積を小さくすることで、フィルタケース10内部に貯留される尿素水の体積(水量)を減らし、凍結時の体積変化を小さくすることができる。さらに、空間S1の体積を小さくすることで、建機始動時にインジェクタに供給される空気を減らし、空気による不具合を防ぐことができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、リング41が設けられているため、フィルタ装置1が傾いたときに空間S1の内部に気体が溜まる空間を減らすことができる。また、孔24aがテーパ部24eを有するため、フィルタ装置1が傾いたときに孔24aの内部に気体が溜まる空間を減らすことができる。そのため、フィルタ装置1の内部に溜まる空気の量を減らし、傾きがなくなったときときに空気がポンプやインジェクタに供給されることによる不具合を防ぐことができる。
【0062】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0063】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略直交」とは、厳密に直交の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0064】
また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0065】
1 :フィルタ装置
10 :フィルタケース
11 :下ケース
11a :底面
11b :ヒータ取付孔
11c :筒状部
11d :側面
11e :流入孔
11f :流入部
11g :雌ねじ部
12 :上ケース
12a :上端面
12b :流出孔
12c :流出部
12d :側面
16 :流入パイプ
17 :流出パイプ
20 :フィルタエレメント
21 :濾材
22 :内筒
22a :側面
22b :孔
22c :仕切り板
23、24 :プレート
23a、24a:孔
24b :板状部
24c :突出部
24e :テーパ部
30 :ヒータ
31 :加熱部
32 :取付部
32a :雄ねじ部
41 :リング
51、52、53、54、55:シール部材
100 :尿素SCRシステム
101 :フィルタ装置
102 :タンク
103 :ポンプ
104 :インジェクタ
121、123:平面
122 :筒状部
図1
図2
図3
図4
図5