(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ウエットシート
(51)【国際特許分類】
A47L 13/17 20060101AFI20230428BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20230428BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230428BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20230428BHJP
C11D 10/02 20060101ALI20230428BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20230428BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230428BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20230428BHJP
D06M 13/188 20060101ALI20230428BHJP
D06M 15/15 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A47L13/17 A
C11D17/04
C11D3/20
C11D3/26
C11D10/02
A01N61/00 D
A01P3/00
A01N25/34 A
D06M13/188
D06M15/15
(21)【出願番号】P 2018228531
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】三橋 幸子
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-233471(JP,A)
【文献】特開2003-339567(JP,A)
【文献】特開2007-029264(JP,A)
【文献】特開2005-000479(JP,A)
【文献】特開2000-239699(JP,A)
【文献】特開平11-113780(JP,A)
【文献】特開2018-027916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/17
C11D 17/04
C11D 3/20
C11D 3/26
C11D 10/02
A01N 61/00
A01P 3/00
A01N 25/34
D06M 13/188
D06M 15/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤が基材シートに含浸されたウエットシートであって、
前記洗浄剤が、
ポリリジン0.01質量%以上1.0質量%以下、
酢酸を除く、乳酸、クエン酸
のいずれかのナトリウム塩、又はこれらの
ナトリウム塩の2種以上の組み合わせ0.01質量%以上1.0質量%以下、
界面活性剤0.01質量%以上1.0質量%以下
を有し、
シート絞り液のpHが6.0以上8.0以下であるウエットシート。
【請求項2】
前記基材シートは、レーヨンと合成樹脂繊維とを混合して有するスパンレース不織布である請求項1記載のウエットシート。
【請求項3】
前記洗浄
剤の含有割合が、前記基材シートの質量に対して100質量%以上1000質量%以下である請求項1又は2記載のウエットシート。
【請求項4】
前記界面活性剤が、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤若しくは両性界面活性剤又はこれら2種以上の組み合わせである請求項1~3のいずれか1項に記載のウエットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人が日常生活を送る空間において、洗浄剤等を含ませたウエットシートを用いる機会が増えている。これに伴い、ウエットシートに対して求められる性能は多様化し、これに応じた技術が提案されてきた。
例えば、特許文献1には、洗浄対象物における残香性を向上させる観点から、乳化作用を有する水溶性のアニオン性ポリマー及び香料を含有する乳化液が含浸された硬質表面用ウエットシートが記載されている。また、特許文献2には、医療施設における医療機器等の汚染防止のために、殺菌剤を含浸したウエットシートが用いられることが記載されている。このウエットシートにおいて、殺菌剤の成分を医療機器等の外装のプラスティック類に影響を与えないものとする技術が記載されている。このようにウエットシートに対する用途やニーズは多岐に亘るようになってきた。
上記の殺菌剤等に関し、特許文献3には、ポリリジンと、魚の白子を酸処理して得たプロタミン等とを組み合わせた食品加工設備又は調理器具用の殺菌洗浄剤組成物が記載されている。この食品加工設備又は調理器具用の殺菌洗浄剤組成物は使用後に、すすぎを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-255605号公報
【文献】特開2010-138519号公報
【文献】特開2016-160350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエットシートを使用する環境として住宅空間が挙げられる。近年では、ライフスタイルの変化に伴って、キッチン、ダイニング及びリビングを互いにボーダレス化して、ひと続きの空間にするものが見られる。また、調理機器の発達等に伴って、キッチンだけでなくダイニングやリビングに跨って調理を行ったりすることがあり、食事の場所もダイニングに限定されない。このように人の往来がしやすくなった分、汚れや菌飛散の範囲が広がりやすい。
このようなライフスタイルの変化に伴って、従来のような仕切られた空間や設備毎ではなく、人の行動を軸に、人の集う場所の様々な物を衛生管理する必要が出てきた。
そのため、手に触れる物に対し、いつでも水洗い不要で手軽に汚れの除去、除菌及び除菌後の抗菌を安心安全に行いたいというニーズが高まってきている。また、このようなニーズは、住宅空間に留まらず、職場や乗り物など人の行き来が多い様々な場所においても多くなっている。
【0005】
しかし、除菌後に、乳幼児や子供、更にはペットなどが被洗浄物に触れる可能性があり、知らずに該被洗浄物に残留する洗浄剤の成分が体内に取り込まれないとも限らない。そのため、洗浄剤の成分の生体への影響は抑えなければならない。また、除菌された被洗浄物に手が触れる機会が多くなり、手荒れが起きないよう配慮が求められる。さらには、ウエットシートで拭き取り後の被洗浄物が洗浄剤の成分で劣化等しないよう、また、洗浄剤の成分の臭いが気にならないよう配慮しなければならない。このような生活環境に配慮したものは、特許文献1~3には記載がない。また、特許文献3記載のプロタミンなど動物由来の殺菌成分は臭いが強すぎるため、生活環境において洗い流さずに用いるウエットシートの洗浄剤の成分としては適さない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、汚れの除去性のみならず、除菌性及び除菌後の抗菌性に優れ、生体への影響、被洗浄物の劣化及び臭いを抑えたウエットシートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗浄剤が基材シートに含浸されたウエットシートであって、前記洗浄剤が、ポリリジン0.01質量%以上1.0質量%以下、乳酸、クエン酸若しくはこれらの酸のいずれかの塩、又はこれらの酸若しくは塩の2種以上の組み合わせ0.01質量%以上1.0質量%以下、界面活性剤0.01質量%以上1.0質量%以下を有し、シート絞り液のpHが6.0以上8.0以下であるウエットシートを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワイピングシートは、汚れの除去性のみならず、除菌性及び除菌後の抗菌性に優れ、生体への影響、被洗浄物の劣化及び臭いを抑えたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のウエットシートについて好ましい実施形態に基づき説明する。
【0010】
本発明のウエットシートは、洗浄剤が基材シートに含浸されたものであり、人が日常生活で手に触れる様々なものの汚れ除去及び除菌清拭に用いられる。以下、汚れ除去及び除菌清拭の対象物を被洗浄物という。また、本発明において、洗浄剤とは、目に見える汚れを落とすいわゆる洗剤だけでなく、細菌を除去等する剤(殺菌剤、除菌剤及び抗菌剤等)を含む剤である。
【0011】
前記洗浄剤は、(A)ポリリジン0.01質量%以上1.0質量%以下、(B)乳酸、クエン酸若しくはこれらの酸のいずれかの塩、又はこれらの酸若しくは塩の2種以上の組み合わせ0.01質量%以上1.0質量%以下、(C)界面活性剤0.01質量%以上1.0質量%以下を有する。本発明における洗浄剤は、上記(A)~(C)の成分を含んで前記洗浄液のpHを好適に制御する観点及び汚れの除去性を高める観点から、水溶液であることが好ましい。なお、上記成分の割合は、有効分の割合(%)を示す。
【0012】
本発明のウエットシートは前記洗浄液を含んでおり、シート絞り液のpHは、6.0以上8.0以下である。前記「pH6.0以上8.0以下」は、洗浄剤の液性が中性の範囲であることを意味する(本発明において上記pHの範囲を単に中性ということがある。)。これにより、本発明のウエットシートを用いて被洗浄物を拭いた際に、放出される洗浄剤の液が中性の範囲のものとなる。その結果、被洗浄物に損傷等(塗装の剥がれや素材の変色等)の劣化を生じさせず、手荒れを抑えて、前述の(A)及び(B)の成分の組み合わせによる除菌及び抗菌作用をより高めることができる。絞り液のpHは、洗浄剤の原液に対しシートへの含浸によって調整できる。
【0013】
中性の洗浄剤において、前記(A)の成分と前記(B)の成分との組み合わせが、本発明のウエットシートにおける除菌性と除菌後の抗菌性を優れたものとする。この洗浄剤は、原液として被洗浄物に直接適用する場合よりも、本発明のウエットシートとして含浸させて被洗浄物を清拭した場合の方が、液性をより好適に制御でき、除菌及び抗菌の効果が高くなる。洗浄液を手にやさしい中性の水溶液にするためにポリリジンを中和する必要がある。中和に用いる酸等を硫酸やそのナトリウム塩とするとポリリジンの除菌効果が阻害されやすくなることが確認された。これに対し、本発明では、乳酸、クエン酸、を添加することでポリリジンの除菌及び抗菌効果が高くなる。これは、上記の組み合わせによって、カチオンポリマーであるポリリジンが菌表面へとどきやすくし、ポリリジン本来の除菌効果が発現しやすくなることによるものと考えられる。また、ナトリウム等の金属イオンはカチオン系ポリマーより先に細胞膜に吸着するのに対し、乳酸、クエン酸はカチオン性ポリマーを効率よく細胞表面に到達させると推察される。更に、洗浄液に金属イオンが含まれている場合でも、該洗浄液をシートに含浸することでシートに金属イオンが吸着し、塩濃度を下げて、よりポリリジン本来の除菌効果が発現しやすくなっていると考えられる。
【0014】
また、前記(A)のポリリジン、前記(B)の乳酸及びリン酸は、後述のとおり天然成分由来の成分であり、食品添加物として使用される成分であるため、生体への影響は非常に小さい。また、前記(A)のポリリジン、前記(B)の乳酸及びリン酸は、プロタミンのような異臭を放たない。生体への影響を抑える観点から、前記洗浄剤の水以外の成分が全て上記食品添加物として使用されるものであることが好ましい。この「食品添加物」とは、食品衛生法第10条に基づいて厚生労働大臣の指定を受けた「指定添加物」(食品衛生法施行規則別表第一)、長年使用されてきた天然添加物であって品目が決められている「既存添加物」、「天然香料」及び「一般飲食物添加物」に挙げられたものを意味する。
【0015】
本発明のウエットシートは、日常生活において手に触れる種々の物(被洗浄物)を拭いて洗浄剤を放出させた後、該被洗浄物の表面を洗い流さないようにして用いられる。これにより、前記被洗浄物に付着した洗浄剤の成分が残留(リーブオン)して除菌及び除菌後の抗菌作用を発現させる。本発明のウエットシートがこのように使用されることを考慮すると、前記洗浄剤は揮発性の成分を含むことが好ましい。
【0016】
前記(A)のポリリジンは、必須アミノ酸の1つであるL-リジンの低分子天然ホモポリマーであり(ε-ポリ-L-リジン、EPL)、細菌による発酵によって生産される。すなわち、天然成分由来の抗菌剤である。ポリリジンの分子量は、除菌及び抗菌作用をより高める観点から、2000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上がさらに好ましい。また、ポリリジンの分子量は、安定性の観点から、8000以下が好ましく、7000以下がより好ましく、6000以下がさらに好ましい。具体的には、ポリリジンの分子量は、2000以上8000以下が好ましく、3000以上7000以下がより好ましく、4000以上6000以下がさらに好ましい。
ポリリジンの前記洗浄剤にける含有割合は、除菌及び抗菌作用をより高める観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、ポリリジンの前記洗浄剤にける含有割合は、安全性の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。具体的には、ポリリジンの前記洗浄剤にける含有割合は、0.05質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0017】
前記(B)の成分については、乳酸又はクエン酸のいずれかであってもよく、乳酸塩又はクエン酸塩のいずれかであってもよく、これらの2種以上を組み合わせたものであってもよい。乳酸及びクエン酸は、洗浄剤の液性がpH6.0以上8.0以下の中性の範囲にある状況下において、酢酸に比べて、除菌性及び抗菌性が高い。これは、中性の洗浄液中において非解離分子の割合が多くなり、該非解離分子が本発明のウエットシートから放出された際に、微生物の細胞膜を通過しやすいことによる。すなわち、より多くの非解離分子が微生物の細胞内で解離して、微生物が細胞内の水素イオンの排出にエネルギーを消耗し、細胞内のpHの変化により活動を妨げる作用をすることになる。これによって前記(B)の成分の抗菌力が高いものとなる。
そのため、前記(B)の成分には、酢酸を除く、乳酸、クエン酸又はこれらのいずれかの塩が含まれる。乳酸塩及びクエン酸塩としては、Na、K、Ca等のアルカリ金属塩が挙げられる。前記(B)の成分としては、乳酸塩又はクエン酸であることが好ましく、この場合の洗浄剤は前述の水溶液であることが好ましい。これにより、乳酸塩、クエン酸塩が水に溶解して解離すると同時に、水の存在により乳酸分子と乳酸イオンの平衡状態、クエン酸分子とクエン酸イオンとの平衡状態が生じ、前述の除菌及び抗菌作用を発現する。また、乳酸塩、クエン酸塩は、pH緩衝剤として洗浄剤の中性を保ちやすく作用(緩衝作用)する。例えば、塩分を含む汚れが付着した被洗浄物を本発明のウエットシートを用いて拭いた場合、塩分のナトリウムイオンが本発明のウエットシートに吸着され、該ウエットシート内の洗浄剤のpHをpH緩衝作用によって新たに平衡状態へと制御できる。その際、ナトリウムイオンが本発明のウエットシートに吸着されたまま、平衡状態における乳酸分子及びクエン酸分子がさらに放出されて前述の除菌及び抗菌作用が続く。このような観点から、前記(B)の成分には、乳酸ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム塩が含まれることが好ましい。この場合、前記(B)の乳酸ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム塩は、ナトリウムが多い環境下で活動が抑制されやすい前記(A)のポリリジンの除菌及び抗菌作用をより活発させる助剤として作用する。
【0018】
前記(B)の成分の前記洗浄剤にける含有割合は、除菌及び抗菌作用をより高める観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、前記(B)の成分の前記洗浄剤にける含有割合は、仕上がりの観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。具体的には、前記(B)の成分の前記洗浄剤にける含有割合は、0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0019】
前記(C)の界面活性剤は、洗浄剤における洗浄基剤となる成分であり、ウエットシートにおいて通常用いられるものを特に制限なく採用することができる。この界面活性剤は、本発明のウエットシートの洗浄剤において、液安定性を高め、前記(A)の成分及び前記(B)の成分が分離するのを防ぐことができる。
この界面活性剤の前記洗浄剤にける含有割合は、基材損傷性を低減する観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。また、前記界面活性剤の前記洗浄剤にける含有割合は、洗浄性を高める観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。具体的には、前記界面活性剤の成分の前記洗浄剤にける含有割合は、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0020】
前記(C)の界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤若しくは両性界面活性剤又はこれら2種以上の組み合わせであることがより好ましい。すなわち、陰イオン界面活性以外のものであることが好ましい。これにより、+の荷電を持つ前記(A)のポリリジンと界面活性剤との間でのコンプレックスの発生を抑えて、ポリリジンによる除菌及び抗菌作用をより発現させやすくすることができる。
【0021】
本発明における前記洗浄剤は、水を含んだ水溶液とすることが好ましい。また、前記(A)~(C)の成分に加えて、他の成分を含有するものであってもよい。他の成分としては、例えば溶剤、色素、防腐剤、香料、pH調整剤などが挙げられる。これらの他の成分は、前述の食品添加物として使用されるものであることが好ましく、その添加量は本発明のウエットシートの目的に即して適宜設定されることが好ましい。
【0022】
前記溶剤としては水溶性であることが好ましい。水溶性溶剤としては、例えば一価アルコール、多価アルコール及びその誘導体から選ばれる1種以上のものが好適である。特に仕上がり性の点から蒸気圧267Pa(2mmHg)以上のものが好ましい。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましい。溶剤は、洗浄剤中に、1.8質量%以上40質量%以下、特に0.4質量%以上20質量%以下含有されることが好ましい。
【0023】
本発明のウエットシートに用いられる基材シートは、繊維シートが好ましく、不織布がより好ましい。不織布としては、ウエットシートに通常用いられるものを特に制限なく採用することができる。清拭操作時の強度を保持する観点から、合成樹脂繊維が混用されてなるものが好ましい。該合成樹脂繊維の具体例としては、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル-ポリエチレン芯鞘繊維、ポリプロピレン-ポリエチレン芯鞘繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。さらには高密度ポリエチレンポリプロピレン等の共重合体系の繊維も合成樹脂繊維に含まれる。
【0024】
また、不織布としては、前記合成樹脂繊維と他の天然繊維(木綿等)や再生繊維(レーヨン等)とが混合されたものであることがより好ましい。これにより、洗浄剤の保持性と放出性を両立させ、かつ、被洗浄物に付着した液状の汚れに対する吸水性を向上させることができる。
【0025】
上記の不織布の製造方法としは、この種の物品において通常用いられる方法を適宜採用することができる。例えば、湿式法、乾式法、抄紙法、接着法(ケミカルボンディング、サーマルボンディング)、機械結合法(ニードルパンチ法、水流交絡法)、スパンボンド法、交合法などが挙げられ、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0026】
本発明のウエットシートの基材シートは、レーヨンと合成樹脂繊維とを混合したものであることが好ましく、これらの混合繊維を有するスパンレース不織布であることがより好ましい。
【0027】
基材シートにおけるレーヨンの質量割合は、洗浄液徐放量の観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。また、基材シートにおけるレーヨンの質量割合は、シート強度の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。具体的には、基材シートにおけるレーヨンの質量割合は、50質量%以上90質量%以下が好ましく、60質量%以上85質量%以下がより好ましく、70質量%以上80質量%以下が更に好ましい。したがって、基材シートにおける合成樹脂繊維の質量割合は、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
【0028】
本発明のウエットシートにおいて、前述の洗浄剤の含有割合は、徐放性の観点から、前記基材シートの質量に対して100質量%以上が好ましく、150質量%以上がより好ましく、200質量%以上が更に好ましい。また、該洗浄剤の含有割合は、液保持性の観点から、前記基材シートの質量に対して1000質量%以下が好ましく、500質量%以下がより好ましく、300質量%以下が更に好ましい。具体的には、前記洗浄剤の含有割合は、前記基材シートの質量に対して100質量%以上1000質量%以下が好ましく、150質量%以上500質量%以下がより好ましく、200質量%以上300質量%以下が更に好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。また、下記表中の「-」は項目名に該当する値や事項を有さないこと等を意味する。
【0030】
(実施例1~6)
表1に記載の洗浄剤を調製し、レーヨン80%及び合成樹脂繊維(芯鞘型合成樹脂繊維、芯:ポリプロピレン、鞘:ポリエチレン)20%を混合したスパンレース不織布(坪量40g/m2)に含浸させた。含浸はスポイトからの滴下の方法によって行った。含浸させた不織布シートを200mm×140mmに裁断して実施例1~6のウエットシート試料1~6とした。なお、洗浄剤の各成分は、表1に示す配合率に原料有効分の割合を掛けた分を含有させた(以下、各比較例においても同様。)。
【0031】
(比較例1~9)
表2に記載の洗浄剤を調製した以外は、実施例1と同様にして比較例1~9のウエットシート試料C1~C9を作製した。
【0032】
(比較例10~15)
表3に記載の洗浄剤を調製した以外は、実施例1と同様にして比較例10~15のウエットシート試料C10~C15を作製した。
【0033】
(比較例16~22)
表4に記載の洗浄剤を調製した以外は、実施例1と同様にして比較例16~22のウエットシート試料C16~C22を作製した。
【0034】
(1)洗浄剤原液のpHの測定
HORIBA LAQUA pH/ION METER F-72(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
(2)絞り液のpHの測定
洗浄原液を一様にシートに対し250%含浸し、絞ぼり液を前記(1)に示した装置を用いて測定した。
【0035】
(3)除菌性能の試験
下記のとおり、黄色ブドウ球菌として”Staphylococcus aureus NBRC12732”を用いて、日本薬局方 微生物限度試験法 Bー531の試験方法(懸濁法)に基づき除菌性能の試験を行った。除菌試験において得られた値が2.0以上で除菌性が高いと評価される。
(洗浄原液の場合)
試料として作製した各ウエットシートの原液を10ml採取し、25℃で保温した。10mlの洗浄原液は、各実施例および各比較例につき2つずつ用意した。次いで、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の菌母液(108cells/ml)を、0.1ml前記絞り液と混合し接種したサンプルを各々2種作成した。接種後、5分間保持(接触)し、各液体洗浄性組成物に対して、計2種のサンプルを作成した。混合時の菌濃度はそれぞれ106cells/mlであった。各サンプルを25℃の保温状態で5分間静置した。その後、各サンプル1mlを不活化剤のLP(ポリシンおよびポリソルベート80)液9mlに入れ、不活化し、菌濃度を105cells/mlとした。次いで、LP液に入れたサンプル0.1mlをシャーレ内のSCDLP寒天培地(SoybeanCasein Digest Agar with Lecithin and Polysorbate80)に塗沫し、該シャーレを回転させ、コンラージ棒で広げた。このときの菌濃度は104cells/シャーレであった。その後、恒温槽で35℃にて24時間培養して、コロニー数を測定した。
除菌活性値:log(初期植え付け菌体数)-log(所定時間後の菌体数)
(絞り液の場合)
試料として作製した各ウエットシートから絞り液を10ml採取し、以下、洗浄原液の場合と同様な操作で除菌性能の試験を行った。
【0036】
(4)抗菌性能の試験
前記(3)と同じ黄色ブドウ球菌を用いて、下記のとおり、JISZ2801「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に記載の試験方法に基づき抗菌性能の試験を行った。抗菌試験において得られた値が2.0以上で除菌性が高いと評価とされる。
試料として作製した各ウエットシートで5cm×5cmのPP樹脂を拭き乾燥しサンプルとした。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の菌母液を0.1mlを1/200に希釈した普通ブイヨン培地液10mlに入れ調整した。調整した菌液を、サンプルであるPP樹脂に0.4ml接種後、菌液の乾燥を防ぐようにフィルムを覆いかぶせ、24時間保持(接触)した。その時の環境は35℃、湿度90%とした。その後、不活化剤のLP(ポリシンおよびポリソルベート80)液10mlに入れ、不活化し、次いで、LP液に入れたサンプル0.1mlをシャーレ内のSCDLP寒天培地(SoybeanCasein Digest Agar with Lecithin and Polysorbate80)に塗沫し、該シャーレを回転させ、コンラージ棒で広げた。このときの菌濃度は104cells/シャーレであった。その後、恒温槽で35℃にて24時間培養して、コロニー数を測定した。
抗菌活性値:log(初期植え付け菌体数)-log(所定時間後の菌体数)
【0037】
(5)匂い試験
調整した試験液を50ml用意し、試験液の匂いを下記3段階臭気強度表示法で官能評価を行った。官能評価は3人で行い、3人の3段階臭気強度表示法による得点の平均(小数点第一位四捨五入)を求めた。
〔3段階臭気強度表示法〕
3:匂わない
2:匂う
1:強く匂う
【0038】
上記試験の結果を下記表1~4に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
上記表1~4に示すように、前記(A)の成分と前記(B)の成分との組み合わせを有さない比較例1~11、比較例13~22では、ウエットシートから被洗浄物に放出された洗浄剤を想定した絞り液による抗菌活性値は2.0未満であり、抗菌効果が十分でなかった。比較例12は、プロタミンを使用していたため、魚臭が発生し、本発明のウエットシートの使用には適さないものであった。
これに対し、実施例1~6では、前記(A)の成分と前記(B)の成分との組み合わせを有することにより、気になる臭いも無く、絞り液による抗菌活性値3.3、3.5、4.7と基準2.0の1.6倍以上の抗菌効果を示していた。