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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】樹脂を含む複合基板の研削方法及び研削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230428BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20230428BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20230428BHJP
   B24B 53/007 20060101ALI20230428BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230428BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/22 Z
B24B55/02 B
B24B53/007
B24B41/06 L
H01L21/304 622T
H01L21/304 622H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018238095
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020102481
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】坂東 翼
(72)【発明者】
【氏名】井出 悟
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028425(JP,A)
【文献】特開2016-058655(JP,A)
【文献】特開2018-049973(JP,A)
【文献】特開2015-090945(JP,A)
【文献】特開2018-186217(JP,A)
【文献】特開平07-009342(JP,A)
【文献】特開2007-157930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/22
B24B 55/02
B24B 53/007
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスチップ及び電極の少なくとも一方を樹脂基板に複数埋め込んで形成された複合基板を、固定砥粒といしを用いて加工する研削工程において、前記複合基板と前記固定砥粒といしとの接触部分に純水を供給し、前記固定砥粒といしの前記複合基板から接触が離れた部分に対して複数の高圧水供給ノズルから高圧水を噴出しながら研削加工を行い、前記高圧水供給ノズルは、1~20mm/secの速度且つ1~10mm幅で揺動しながら前記高圧水を噴射することを特徴とする樹脂を含む複合基板の研削方法。
【請求項2】
半導体デバイスチップ及び電極の少なくとも一方を樹脂基板に複数埋め込んで形成された複合基板を搭載して回転する真空チャック機構と、
前記真空チャックに搭載された前記複合基板を回転しながら研削する固定砥粒といし機構と、
前記複合基板と前記固定砥粒といしとの接触部分に純水を供給する研削水供給機構と、
前記固定砥粒といしの前記複合基板から接触が離れた部分に複数の高圧水供給ノズルから高圧水を供給する高圧水供給機構と、を有し、
前記高圧水供給ノズルは、1~20mm/secの速度且つ1~10mm幅で揺動する機構を有することを特徴とする樹脂を含む複合基板の研削装置。
【請求項3】
前記高圧水供給ノズルから噴出する高圧水の圧力が3~20MPa且つ噴出角が5~20度であり、
前記固定砥粒といしと前記高圧水供給ノズルとの間隔が5~30mmであることを特徴とする請求項2に記載の樹脂を含む複合基板の研削装置。
【請求項4】
前記真空チャックは、表面積が1000~7000cm2の前記複合基板を搭載可能な吸着面積を有し、且つ厚さが0.1~2mmの範囲内にある前記複合基板を研削加工可能となるよう平坦に吸着することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の樹脂を含む複合基板の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスチップ等を同時に大量生産するためのパッケージング技術による樹脂を含む複合基板の研削方法及び研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップ等を大量に、且つ低コストで生産するため、樹脂を含む複合基板を用いたFOPLP(Fan Out Panel Level Package)技術が開発されている。
【0003】
FOPLP技術としては、多くの手法が採られている。FOPLP技術の主な工程としては、先ず、完成した半導体デバイスウェーハが半導体デバイスチップに分割された後、大型の樹脂基板上に配列される。次いで、半導体デバイスチップが配列された樹脂基板上にモールド樹脂が形成されて半導体デバイスチップが埋め込まれる。そして、不要なモールド樹脂が除去されて半導体デバイスチップが露出した後、再配線等が行われる。その後、モールド樹脂部分で分割され、パッケージされた半導体デバイスチップが完成する。
【0004】
半導体デバイスチップのパッケージ手法としては、上述のファンアウトという手法の他に、ファンインという手法が有る。ファンイン手法では、半導体デバイスチップ内にすべての電極を形成する方法であるため、電極点数に限りがある。
【0005】
これに対してファンアウト手法では、半導体デバイスチップの外に形成された樹脂部分にも電極形成ができる。そのため、ファンアウトは、電極点数が大幅に増加できる利点があり、MPUやロジックデバイスなどI/O点数の多いデバイスの主要パッケージ技術となりつつある。
【0006】
FOPLP技術においては、モールド樹脂の加工が必要であり、同時にSiやCu電極も加工する場合がある。このようなFOPLPの加工手段として、ダイヤモンドバイトを用いたフライカッターという手法が用いられている(例えば、特許文献1、2)。フライカッター手法は、加工コストが高く、且つ高平坦度を得るためには長時間を有するという問題と共に、厚さ管理がし難いという課題があった。
【0007】
本発明者らは特許文献3、4に示すように、フライカッターの問題点を全て解決できる研削技術を開発しており、ウェーハレベルのパッケージ研削や、TSV(Through Silicon Via)研削に適用してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-139829号公報
【文献】特開2017-112226号公報
【文献】特開2014-28425号公報
【文献】特開2015-32679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
樹脂、金属及び半導体デバイスチップを含む大型基板であるFOPLPを研削する際には、その研削といしの適正化が重要となる。研削といしには、切れ味を最大限にするため、ダイヤモンド砥粒とボンド材を最適化することが求められている。
【0010】
即ち、研削といしの最適化は、面粗さの要求から、その砥粒径(番手)が重要になり、樹脂や金属を研削するために目詰まりを最小限にするためボンド材とその硬度が重要となる。
【0011】
例えば、300mm角以上のFOPLP基板を最適化された研削といしで加工した場合、#500番手程度の低番手といしにおいても目詰まりが発生する。これにより、複数枚の連続加工ができないという事や、低番手であるため100nm(Ra)程度の表面粗さしか研削加工ができないという問題点がある。また、その後の工程で、研磨技術によって表面粗さを小さく高精度に加工する必要があり、製造コストを高くするという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂を含む大型の複合基板の研削において、研削といしの目詰まりを防止することができ、研削工程を効率良く高精度に実行することができる樹脂を含む複合基板の研削方法及び研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の樹脂を含む複合基板の研削方法は、半導体デバイスチップ及び電極の少なくとも一方を樹脂基板に複数埋め込んで形成された複合基板を、固定砥粒といしを用いて加工する研削工程において、前記複合基板と前記固定砥粒といしとの接触部分に純水を供給し、前記固定砥粒といしの前記複合基板から接触が離れた部分に対して複数の高圧水供給ノズルから高圧水を噴出しながら研削加工を行い、前記高圧水供給ノズルは、1~20mm/secの速度且つ1~10mm幅で揺動しながら前記高圧水を噴射することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の樹脂を含む複合基板の研削装置は、半導体デバイスチップ及び電極の少なくとも一方を樹脂基板に複数埋め込んで形成された複合基板を搭載して回転する真空チャックと、前記真空チャックに搭載された前記複合基板を回転しながら研削する固定砥粒といしと、前記複合基板と前記固定砥粒といしとの接触部分に純水を供給する研削水供給機構と、前記固定砥粒といしの前記複合基板から接触が離れた部分に複数の高圧水供給ノズルから高圧水を供給する高圧水供給機構と、を有し、前記高圧水供給ノズルは、1~20mm/secの速度且つ1~10mm幅で揺動する機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂を含む複合基板の研削方法によれば、半導体デバイスチップ及び電極の少なくとも一方を樹脂基板に複数埋め込んで形成された複合基板を、固定砥粒といしを用いて加工する研削工程において、複合基板と固定砥粒といしとの接触部分に純水を供給し、固定砥粒といしの複合基板から接触が離れた部分に対して複数の高圧水供給ノズルから高圧水を噴出しながら研削加工を行う。このように、固定砥粒といしの複合基板から接触が離れた部分に対して複数の高圧水供給ノズルから高圧水を噴き付けることにより、固定砥粒といしの目詰まりが発生しなくなり、複合基板を連続的に研削できるようになる。そして、例えば、#2000以上の、より高番手の研削といしを連続的に適用できるようになる。その結果、10nm(Ra)以下の表面粗さが実現でき、研磨工程を排除することも可能となり、FOPLP技術による製品加工の大幅な低コスト化が実現できる。
【0016】
また、固定砥粒といしのボンド材を高硬度化しても目詰まりしないため、固定砥粒といしのライフ(寿命)を大幅に改善できる効果もあり、FOPLP技術の本来の目的である低コスト化が実現できる。
【0017】
また、本発明の樹脂を含む複合基板の研削装置によれば、半導体デバイスチップ及び電極の少なくとも一方を樹脂基板に複数埋め込んで形成された複合基板を搭載して回転する真空チャックと、真空チャックに搭載された複合基板を回転しながら研削する固定砥粒といしと、複合基板と前記固定砥粒といしとの接触部分に純水を供給する研削水供給機構と、固定砥粒といしの複合基板から接触が離れた部分に複数の高圧水供給ノズルから高圧水を供給する高圧水供給機構と、を有する。これにより、大型のFOPLP基板を研削する際、固定砥粒といしが目詰まりしないように、複数の高圧水供給ノズルから高圧水を固定砥粒といしに噴き付けることができる。よって、連続的にFOPLP基板の研削を実行することができる。
【0018】
また、本発明の樹脂を含む複合基板の研削装置によれば、高圧水供給ノズルから噴出する高圧水の圧力が3~20MPa且つ噴出角が5~20度であり、固定砥粒といしと高圧水供給ノズルとの間隔が5~30mmであっても良い。この構成により、高圧水供給ノズルから固定砥粒といしの洗浄に好適な高圧水を噴出することができる。
【0019】
また、本発明の樹脂を含む複合基板の研削装置によれば、高圧水供給ノズルは、1~20mm/secの速度且つ1~10mm幅で揺動する機構を有しても良い。これにより、高圧水を広く噴出することができ、大型の固定砥粒といしの目詰まりを防止することができる。よって、大型のFOPLP基板を高効率に研削することができる。
【0020】
また、本発明の樹脂を含む複合基板の研削装置によれば、真空チャックは、表面積が1000~7000cmの複合基板を搭載可能な吸着面積を有し、且つ厚さが0.1~2mmの範囲内にある複合基板を研削加工可能となるよう平坦に吸着する。これにより、大型のFOPLP基板を効率良く高精度に研削することでき、FOPLP技術による生産性に優れた製品製造が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削装置の概略構成を示す平面図であり、高圧水供給ノズルの配置の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削装置の高圧水供給ノズル近傍を示す図であり、高圧水噴出口の位置を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削装置の高圧水供給ノズル近傍を示す図であり、高圧水供給ノズルの揺動する状態を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削工程を示す図であり、図5(A)は、樹脂を含む複合基板が準備された状態、図5(B)は、複合基板が真空チャックに載置された状態、図5(C)は、複合基板を研削している状態、図5(D)は、研削が完了した複合基板の状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削装置で加工する複合基板の他の例を示す図であり、図6(A)は、電極が形成された半導体デバイスチップが埋め込まれ、且つその半導体デバイスチップの外周に電極が形成された複合基板、図6(B)は、半導体デバイスチップのみが埋め込まれた複合基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板の研削方法及び研削装置を図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂を含む複合基板20を研削する研削装置1の概略構成を示す断面図である。図1を参照して、研削装置1は、樹脂を含む大型のFOPLP等である複合基板20を研削する装置である。
【0024】
研削装置1は、加工対象の複合基板20を搭載する真空チャック2と、複合基板20を研削するカップ型の固定砥粒といし5と、研削水供給ノズル8と、を有する。
【0025】
真空チャック2は、複合基板20を吸着して保持するポーラスチャックであり、略平板状の形態をなし、研削テーブル3の上方に取り付けられている。真空チャック2が載置される研削テーブル3は、図示しない駆動装置によって回転駆動される。研削加工工程の際には、真空チャック2の上面に複合基板20が載置され、複合基板20は、真空チャック2及び研削テーブル3と共に水平回転することになる。
【0026】
固定砥粒といし5は、真空チャック2に保持されて回転する複合基板20を上方から研削するカップホイール型のといしである。固定砥粒といし5は、図示しない回転機構によって水平回転する略円盤状の研削ヘッド6と、研削ヘッド6の下部周縁近傍に略円形状に取り付けられている研削といし7と、を有する。
【0027】
また、研削装置1は、固定砥粒といし5を上下方向に移動させる図示しないボールねじによる上下移動機構を有する。研削加工工程の際には、真空チャック2の上面に吸着されて水平回転する複合基板20の上面に、水平回転する固定砥粒といし5の研削といし7の下部にある刃先が接触し、複合基板20が研削される。
【0028】
研削水供給ノズル8は、複合基板20と、固定砥粒といし5の研削といし7と、の接触部分近傍に純水を供給する装置である。具体的には、図示しない研削水供給装置から研削水供給ノズル8を経由して純水が供給される。そして、研削水供給ノズル8の噴出口から、複合基板20の上面と研削といし7の刃先との接触部分近傍に向かって純水が噴き付けられる。
【0029】
上記は、研削加工のための好適な構成であるが、上記の構成のみでは樹脂を含む大型の複合基板20について高精度な研削を行うことは極めて困難である。本実施形態に係る研削装置1は、上記の構成に加えて、固定砥粒といし5に高圧水を噴き付けて洗浄する高圧水供給機構10を備えている。
【0030】
高圧水供給機構10には、高圧水供給ノズル11と、高圧水圧力コントローラ13と、が設けられている。高圧水供給ノズル11は、固定砥粒といし5の複合基板20から接触が離れた部分に対して高圧水を噴出するノズルである。高圧水圧力コントローラ13は、固定砥粒といし5に対して噴出する高圧水を、所定の圧力、流量に調整して高圧水供給ノズル11へ供給する装置である。
【0031】
上記の構成により、研削加工工程において、高圧水供給機構10の高圧水圧力コントローラ13から高圧水供給ノズル11を経由して、加圧された純水等の高圧水が研削といし7の刃先近傍に向かって噴き付けられる。
【0032】
ここで、本実施形態に係る研削装置1では、高圧水供給機構10の高圧水供給ノズル11が複数本設けられている。具体的には、例えば、第1の高圧水供給ノズル11aと第2の高圧水供給ノズル11bの2本の高圧水供給ノズル11が設けられている。なお、高圧水供給機構10は、2本に限定されず、3本以上でも勿論良い。
【0033】
このように複数の高圧水供給ノズル11が設けられる構成により、大型のFOPLP基板である複合基板20を研削する際、固定砥粒といし5が目詰まりしないように、複数の高圧水供給ノズル11から高圧水を固定砥粒といし5に噴き付けることができる。よって、連続的にFOPLP基板の研削を実行することができる。
【0034】
図2は、研削装置1の概略構成を示す平面図であり、高圧水供給ノズル11の配置の一例を示す図である。
図2に示すように、第1の高圧水供給ノズル11aと第2の高圧水供給ノズル11bは、例えば、固定砥粒といし5の回転中心を基準として、回転円周方向の異なる位置に配置されても良い。
【0035】
詳しくは、第1の高圧水供給ノズル11aの高圧水噴出口12aと、第2の高圧水供給ノズル11bの高圧水噴出口12aは、固定砥粒といし5の回転中心を基準として、回転円周方向に角度θ3だけ離れている。このような構成により、固定砥粒といし5の目詰まりを防止する好適な高圧水の噴出を行うことができる。
【0036】
図3は、研削装置1の高圧水供給ノズル11の高圧水噴出口12近傍を示す図であり、高圧水噴出口12の位置を模式的に示している。
図3に示すように、高圧水供給ノズル11は、高圧水噴出口12から固定砥粒といし5の研削といし7の刃先までの距離L1、L2が5~30mmになるように配設されている。更に好ましくは、高圧水噴出口12から研削といし7の刃先までの距離L1、L2は、15~25mmである。この構成により、高圧水供給ノズル11から固定砥粒といし5に対して洗浄に好適な高圧水を噴出することができる。
【0037】
また、第1の高圧水供給ノズル11aと第2の高圧水供給ノズル11bは、何れか一方が固定砥粒といし5に近く配置されても良い。例えば、第1の高圧水供給ノズル11aの方が固定砥粒といし5に近くなるよう第2の高圧水供給ノズル11bよりも上方に配置されても良い。即ち、第1の高圧水供給ノズル11aの高圧水噴出口12aと研削といし7との離間距離L1と、第2の高圧水供給ノズル11bの高圧水噴出口12bと研削といし7との離間距離L2と、は相違しても良い。
【0038】
高圧水供給ノズル11から噴出する高圧水の圧力は、3~20MPa、好ましくは、10~14MPaが良い。そして、高圧水供給ノズル11から噴出する高圧水の噴出角θ1、θ2は、5~20度が好ましく、更に好ましくは、8~12度である。
【0039】
第1の高圧水供給ノズル11aの高圧水噴出口12aから噴出する高圧水の噴出角θ1と、第2の高圧水供給ノズル11bの高圧水噴出口12bから噴出する高圧水の噴出角θ2と、は異なる大きさでも良い。例えば、第1の高圧水供給ノズル11aからの高圧水の噴出角θ1を、第2の高圧水供給ノズル11bの高圧水噴出口12bからの高圧水の噴出角θ2よりも大きく設定しても良い。
【0040】
図4は、研削装置1の高圧水供給ノズル11の高圧水噴出口12近傍を示す断面図であり、高圧水供給ノズル11の揺動する状態を模式的に示している。
図4に示すように、高圧水供給ノズル11は、1~20mm/secの速度且つ1~10mmの揺動幅L3で揺動する機構を有しても良い。これにより、高圧水を広く噴出することができ、大型の固定砥粒といし5の目詰まりを防止することができる。よって、大型のFOPLP基板等の複合基板20を高効率に研削することができる。
【0041】
なお、図示を省略するが、高圧水供給ノズル11は、その中心軸が、固定砥粒といし5の回転軸に対して傾斜するよう配設されても良い。そして、高圧水供給ノズル11は、中心軸が傾斜するよう回動自在であっても良い。
【0042】
図5は、複合基板20の研削工程を示す図であり、図5(A)は、樹脂を含む複合基板20が準備された状態、図5(B)は、複合基板20が真空チャックに載置された状態、図5(C)は、複合基板20を研削している状態、図5(D)は、研削による薄層化が完了した状態の複合基板20を示す図である。
【0043】
図5(A)に示すように、複合基板20は、例えば、FOPLP基板等であり、樹脂基板21に半導体デバイスチップ22及び電極23が埋め込まれている。詳しくは、樹脂基板21に半導体デバイスチップ22が埋め込まれ、半導体デバイスチップ22の外周に電極23が形成された構成の複合基板20である。複合基板20は、表面積が1000~7000cm、厚さが0.1~2mmの範囲内にある大型の実装基板である。
【0044】
例えば、樹脂基板21にはエポキシ系樹脂、半導体デバイスチップ22にはシリコン(Si)、電極23には銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の金属が用いられている。また、樹脂基板21には、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の各種封止材料が適用できる。本実施形態に係る研削装置1は、樹脂基板21として電気特性を改善するためのシリカフィラーを挿入した各種樹脂を採用した複合基板に対しても優れた研削結果を得ることができる。
【0045】
図5(B)に示すように、樹脂基板21の樹脂を含み半導体デバイスチップ22が埋め込まれた大型の複合基板20は、真空チャック2の上に搭載される。詳しくは、複合基板20は、研削対象面となる樹脂基板21側の面を上面に、半導体デバイスチップ22等が埋め込まれた面を下面として、真空チャック2の上面に吸着されて保持される。
【0046】
図5(C)に示すように、インフィード研削により加工する研削工程において、水平回転する固定砥粒といし5が下降し、真空チャック2によって保持されて水平回転する複合基板20の上面に接触して、複合基板20を薄層化する研削が実行される。
【0047】
即ち、研削工程においては、研削テーブル3を水平に回転させながら、研削といし7が形成された固定砥粒といし5の研削ヘッド6を回転させ下降させる。研削といし7には、研削水供給ノズル8から純水が噴き付けられる。また、研削といし7には、2つの高圧水供給ノズル11a、11bから高圧の純水が噴射され噴き付けられている。
【0048】
研削工程においては、先ず、複合基板20の上部の樹脂基板21のみが研削され、次いで、研削が下方に進むと、樹脂基板21、半導体デバイスチップ22及び電極23が同時に研削される。
【0049】
ここで、研削加工の条件は、優れた平坦度が得られるよう複合基板20に応じて好適に調整される。固定砥粒といし5の研削といし7としては、例えば、ヴィトリファイドボンドSD♯4000といしが選定されても良い。
【0050】
固定砥粒といし5を下降させる送り速度は、10~30μm/minが好ましく、20μm/minが最適である。固定砥粒といし5の回転速度は、1000~2000min-1が好ましく、1450min-1が最適である。
【0051】
真空チャック2の回転速度は、100~400min-1が好ましく、197min-1が最適である。研削水供給ノズル8からの純水の噴出量は、例えば、10L/minが好適である。
【0052】
高圧水供給ノズル11から噴き出される高圧水の圧力は、複合基板20に応じて好適に設定され、前述のとおり、3~20MPa、好ましくは、10~14MPaが良く、例えば、12MPaである。高圧水供給ノズル11から噴出する高圧水の噴出角θ1、θ2(図3を参照)は、5~20度が好ましく、更に好ましくは、8~12度である。
【0053】
2つの高圧水供給ノズル11による純水の噴出圧力を同一条件としても好適な研削結果が得られるが、複合基板20のサイズや、樹脂基板21と電極23の面積比率等によって、2つの高圧水供給ノズル11の噴出圧力を異なる条件に設定しても良い。
【0054】
例えば、第1の高圧水供給ノズル11aを高圧、第2の高圧水供給ノズル11bを低圧として、第1の高圧水供給ノズル11aから噴き出される高圧水の圧力を、第2の高圧水供給ノズル11bから噴き出される高圧水の圧力よりも高く設定しても良い。また、これとは逆に、第1の高圧水供給ノズル11aを低圧、第2の高圧水供給ノズル11bを高圧と設定しても良い。
【0055】
また、図3を参照して、前述のとおり、第1の高圧水供給ノズル11aの高圧水噴出口12aから噴出する高圧水の噴出角θ1と、第2の高圧水供給ノズル11bの高圧水噴出口12bから噴出する高圧水の噴出角θ2と、をそれぞれ好適な角度に設定しても良い。
【0056】
このように、加工対象である複合基板20の状況により、高圧水供給ノズル11による純水の噴出圧力を変化させることで、複合基板20の表面粗さや研削速度を好適にコントロールすることができる。
【0057】
図5(D)を参照して、上述の研削工程により、高精度に薄層化された複合基板20が得られる。具体的には、研削後の複合基板20の樹脂基板21の表面粗さは、7~10nm(Ra)、半導体デバイスチップ22の表面粗さは、3~5nm(Ra)、電極23の表面粗さは、5~7nm(Ra)である。
【0058】
このように、研削装置1による研削加工によれば、複合基板20の良好な面粗さが得られ、且つ、固定砥粒といし5の目詰まりによる電極23の引きずりや変色は見られない。
【0059】
図6は、本発明の実施形態に係る研削装置1で加工する複合基板20の他の例を示す図であり、図6(A)は、電極24が形成された半導体デバイスチップ122が埋め込まれ、且つその半導体デバイスチップ122の外周に電極23が形成された複合基板120、図6(B)は、半導体デバイスチップ22のみが埋め込まれた複合基板220を示す図である。
【0060】
図6(A)に示すように、研削装置1は、電極24が形成された半導体デバイスチップ122が樹脂基板21に埋め込まれ、且つその半導体デバイスチップ122の外周に電極23が形成された複合基板120についても研削することができる。
【0061】
図6(B)に示すように、研削装置1は、樹脂基板21に半導体デバイスチップ22のみが埋め込まれた複合基板220についても研削することができる。
また、図示を省略するが、研削装置1は、樹脂基板21に電極23のみが埋め込まれた複合基板についても研削加工を行うことができる。
【0062】
このように、研削装置1は、半導体デバイスチップ22、122及び電極23、24の少なくとも一方を樹脂基板21に複数埋め込んで形成された複合基板20、120、220であっても、高精度且つ高効率に研削加工を実行することができる。
【0063】
以上説明の如く、本実施形態に係る研削装置1によれば、固定砥粒といし5の複合基板20から接触が離れた部分に対して複数の高圧水供給ノズル11から高圧水を噴き付けることにより、固定砥粒といし5の目詰まりが発生しなくなり、連続的に複合基板20を研削できるようになる。
【0064】
例えば、#2000以上の、より高番手の研削といし7を連続的に適用できるようになる。その結果、10nm(Ra)以下の表面粗さが実現でき、研磨工程を排除することも可能となり、FOPLP技術による製品加工の大幅な低コスト化が実現できる。
【0065】
また、固定砥粒といし5の研削といし7のボンド材を高硬度化しても目詰まりしないため、固定砥粒といし5のライフ(寿命)を大幅に改善できる効果もあり、FOPLP技術の本来の目的である低コスト化が実現できる。
【0066】
本実施形態に係る樹脂基板21、半導体デバイスチップ22、電極23からなる複合基板20を研削するための研削方法と研削装置1を用いることにより、高速化と小型・高密度化する三次元半導体デバイスに対応できるFOPLP基板加工が実現できると共に、大きな課題である低コスト化が達成され、半導体デバイス産業の発展に大きく貢献できる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の研削装置の固定砥粒といしとしては、前述のカップホイール型の固定砥粒といし5に替えて、他の一般的な形式の研削といしが用いられても良い。また例えば、固定砥粒といしは、垂直回転するよう設けられても良い。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 研削装置
2 真空チャック
3 研削テーブル
5 固定砥粒といし
6 研削ヘッド
7 研削といし
8 研削水供給ノズル
10 高圧水供給機構
11 高圧水供給ノズル
11a 第1の高圧水供給ノズル
11b 第2の高圧水供給ノズル
12、12a、12b 高圧水噴出口
13 高圧水圧力コントローラ
20、120、220 複合基板
21 樹脂基板
22、122 半導体デバイスチップ
23 電極
24 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6