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特許7270395磁石組立体の製造方法、ならびにエンコーダおよびエンコーダ付きモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】磁石組立体の製造方法、ならびにエンコーダおよびエンコーダ付きモータ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230428BHJP
   H01F 13/00 20060101ALI20230428BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
H01F13/00 350
G01D5/244 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019011200
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020118594
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 豊
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-112707(JP,A)
【文献】特開2015-114209(JP,A)
【文献】特開平08-022914(JP,A)
【文献】特開2018-042332(JP,A)
【文献】特開2019-009885(JP,A)
【文献】特開2018-132353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252,5/39-5/62,
H01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と一体に回転する磁石ホルダと、前記磁石ホルダに固定される第1磁石および第2磁石と、を備える磁石組立体と、
前記第1磁石に対向する第1感磁素子および前記第2磁石に対向する第2感磁素子、ならびに、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子の信号が入力されるエンコーダ回路が設けられた基板を備える回路基板組と、
前記回路基板組が載る基準面、および、前記磁石組立体が配置される磁石配置孔を備えたエンコーダホルダと、を有し、
前記第1磁石は、周方向にN極とS極が1極ずつ着磁され、
前記第2磁石は、N極とS極が周方向に交互に複数着磁され、
前記第1磁石と前記第2磁石は、径方向に離間し、
前記磁石ホルダは、前記第1磁石と前記第2磁石の間に位置するシールド部を備えた磁性材からなり、
前記第1磁石の着磁面は、前記シールド部の先端面よりも凹んだ位置にあり、
前記基準面と前記第2磁石の着磁面とが同一面上に位置し、
前記回路基板組は、前記基板に対して前記磁石と同じ側に配置される基板ホルダを備え、前記基板ホルダが前記基準面に当接する当接面を備え、
前記第2感磁素子は、前記磁石と対向するセンサ面を備え、前記センサ面と前記基板ホルダに設けられたセンサ基準面とが同一面上に位置することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記第2磁石の着磁面は、前記シールド部の先端面と同一面上、もしくは、前記先端面よりも突出した位置にあることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記磁石ホルダは、前記第2磁石に対して前記第2感磁素子とは反対側に位置するヨーク部を備えることを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記シールド部は、前記回転軸の軸線方向の高さが径方向の幅より小さいことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記シールド部は、前記第1磁石および前記第2磁石と径方向に接していることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記磁石ホルダは、前記回転軸が配置される軸孔と、前記軸孔を囲む部分を貫通する孔を備え、
前記エンコーダホルダは、前記磁石配置孔を囲む部分を径方向に貫通する貫通部を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記エンコーダホルダは、前記磁石配置孔を囲む胴部と、前記胴部の端面から前記回路基板組の側に突出するボス部を備え、前記回路基板組は、前記ボス部にねじ止めされ、
前記基準面は、前記ボス部の先端面であることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記基板ホルダは、前記第2感磁素子が配置される貫通孔を備え、
前記貫通孔は、前記センサ基準面に開口しており、
前記当接面は、前記センサ基準面よりも前記エンコーダホルダの側に突出した位置にあることを特徴とする請求項7に記載のエンコーダ。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のエンコーダと、
前記回転軸を備えたモータと、を有することを特徴とするエンコーダ付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感磁素子によってロータの回転を検出するエンコーダおよびエンコーダ付きモータ、ならびに、エンコーダに用いられる磁石組立体および磁石組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンコーダが開示される。特許文献1のエンコーダは、基板に搭載される感磁素子と、回転体(例えば、モータの回転軸)と一体に回転する磁石を備える。磁石は、周方向にN極とS極が1極ずつ着磁された第1磁石、および、N極とS極が周方向に交互に複数着磁された第2磁石を備える。第2磁石は環状であり、第1磁石の外周側に配置される。感磁素子が搭載される基板は、支持部材を介してモータのフレームに固定される。
【0003】
特許文献1のエンコーダは、第1磁石と第2磁石の間に環状のシールド部材を配置することによって第1磁石と第2磁石との磁気干渉を抑制する。特許文献1には、磁石を保持する磁性材を備えており、磁性材にシールド部材および磁石を固定した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5666886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、磁石を保持する磁性材とシールド部材が別体であるため、磁石に対するシールド壁の位置精度が低い。従って、シールド壁が第1磁石および第2磁石より突出した構造では、磁石と感磁素子とのギャップを小さくすることができず、エンコーダの分解能を高めることができない。一方、シールド壁を第1磁石および第2磁石より低くすれば、磁石と感磁素子とのギャップを小さくすることができるが、第1磁石と第2磁石の磁気干渉抑制効果が低下する。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、第1磁石と第2磁石の磁気干渉を抑制し、且つ、磁石と感磁素子とのギャップを小さくして角度検出の精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のエンコーダは、回転軸と一体に回転する磁石ホルダと、前記磁石ホルダに固定される第1磁石および第2磁石と、を備える磁石組立体と、前記第1磁石に対向する第1感磁素子および前記第2磁石に対向する第2感磁素子、ならびに、前記第1感磁素子および前記第2感磁素子の信号が入力されるエンコーダ回路が設けられた基板を備える回路基板組と、前記回路基板組が載る基準面、および、前記磁石組立体が配置される磁石配置孔を備えたエンコーダホルダと、を有し、前記第1磁石は、周方向にN極とS極が1極ずつ着磁され、前記第2磁石は、N極とS極が周方向に交互に複数着磁され、前記第1磁石と前記第2磁石は、径方向に離間し、前記磁石ホルダは、前記第1磁石と前記第2磁石の間に位置するシールド部を備えた磁性材からなり、前記第1磁石の着磁面は、前記シールド部の先端面よりも凹んだ位置にあり、前記基準面と前記第2磁石の着磁面とが同一面上に位置し、前記回路基板組は、前記基板に対して前記磁石と同じ側に配置される基板ホルダを備え、前記基板ホルダが前記基準面に当接する当接面を備え、前記第2感磁素子は、前記磁石と対向するセンサ面を備え、前記センサ面と前記基板ホルダに設けられたセンサ基準面とが同一面上に位置することを特徴とする。
【0008】
本発明では、このように、第1磁石および第2磁石が固定される磁石ホルダにシールド部が設けられている。従って、シールド部と磁石との位置精度を高めることができ、感磁素子と第1磁石および第2磁石とのギャップを精度良く管理できる。従って、検出精度を高めることができる。また、第1磁石の着磁面をシールド部の先端面より低くしているので、第1磁石と第2磁石との磁気干渉を効果的に抑制できる。従って、磁気干渉による検出精度の低下を抑制できる。また、このようにすると、平板状の治具を用いて、磁石組立体とエンコーダホルダとを位置決めしてエンコーダを組み立てることができる。従って、エンコーダホルダと磁石ホルダの寸法精度が低くても、基準面に対して着磁面を精度良く位置決めできるため、磁石と感磁素子のギャップを精度良く管理することができる。また、治具を単純な形状にすることができるため、安価な治具を使用してエンコーダを組み立てることができる。さらに、感磁素子と磁石の位置決めの基準となる基準面に対する感磁素子の位置精度を高めることができる。従って、磁石と感磁素子のギャップを精度良く管理することができる。
【0009】
本発明において、前記第2磁石の着磁面は、前記シールド部の先端面と同一面上、もしくは、前記先端面よりも突出した位置にあることが好ましい。このようにすると、第2磁石の着磁面が最も突出した位置にあるので、第2磁石の着磁面を基準にして、磁石組立体の位置決めを行うことができる。従って、第2磁石と第2感磁素子とのギャップを精度良く管理できるため、角度検出の精度を高めることができる。また、第2磁石を磁石ホルダに固定後に着磁することもできる。
【0010】
本発明において、前記磁石ホルダは、前記第2磁石に対して前記第2感磁素子とは反対側に位置するヨーク部を備えることが好ましい。第2磁石の背面側にヨーク部を配置することにより、第2磁石を磁石ホルダに固定した状態で第2磁石に着磁する際、着磁用の磁束を第2磁石の背面側へ飛ばすことができる。従って、第2磁石を磁石ホルダに固定した状態で着磁できるため、第2磁石の磁極位置が第2磁石の取付時にずれることを回避できる。すなわち、着磁前の第2磁石を固定した状態で第2磁石の位置がずれたとしても、固定後に着磁することで、第2磁石の着磁中心と磁石ホルダ中心を合わせることができ、着磁の偏芯を抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記シールド部は、前記回転軸の軸線方向の高さが径方向の幅より小さいことが好ましい。このようにすると、第1磁石と第2磁石の間に必要な隙間を確保できる。
【0012】
本発明において、前記シールド部は、前記第1磁石および前記第2磁石と径方向に接していることが好ましい。このようにすると、第1磁石と第2磁石との間にシールド部を隙間なく配置することができ、第1磁石と第2磁石の間に必要な隙間を確保できる。また、第1磁石および第2磁石とシールド部とを接触させて位置決めできるため、第1磁石および第2磁石の位置決めが容易である。
【0016】
本発明において、前記磁石ホルダは、前記回転軸が配置される軸孔と、前記軸孔を囲む部分を貫通する孔を備え、前記エンコーダホルダは、前記磁石配置孔を囲む部分を径方向に貫通する貫通部を備えることが好ましい。このようにすると、エンコーダホルダの高さの範囲内での作業によってエンコーダホルダの内周側へドライバなどの固定用工具を用いてアクセスできるため、エンコーダホルダの高さの範囲内で磁石ホルダの固定作業を行うことができる。従って、固定作業を行うスペースを確保するために、エンコーダが大型化することを抑制できる。
【0018】
次に、本発明のエンコーダ付きモータは、上記のエンコーダと、前記回転軸を備えたモータと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1磁石および第2磁石が固定される磁石ホルダにシールド部が設けられている。従って、シールド部と磁石との位置精度を高めることができ、感磁素子と第1磁石および第2磁石とのギャップを精度良く管理できる。従って、検出精度を高めることができる。また、第1磁石の着磁面をシールド部の先端面より低くしているので、第1磁石と第2磁石との磁気干渉を効果的に抑制できる。従って、磁気干渉による検出精度の低下を抑制できる。また、平板状の治具を用いて、磁石組立体とエンコーダホルダとを位置決めしてエンコーダを組み立てることができる。従って、エンコーダホルダと磁石ホルダの寸法精度が低くても、基準面に対して着磁面を精度良く位置決めできるため、磁石と感磁素子のギャップを精度良く管理することができる。加えて、治具を単純な形状にすることができるため、安価な治具を使用してエンコーダを組み立てることができる。さらに、感磁素子と磁石の位置決めの基準となる基準面に対する感磁素子の位置精度を高めることができる。従って、磁石と感磁素子のギャップを精度良く管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用したエンコーダを備えたエンコーダ付きモータの外観斜視図である。
図2】エンコーダ、第1軸受ホルダ、および回転軸の断面図(図1のA-A断面図)およびその部分拡大図である。
図3】エンコーダ、第1軸受ホルダ、および回転軸の断面図(図1のB-B断面図)である。
図4】エンコーダ、第1軸受ホルダ、および回転軸を反出力側から見た分解斜視図である。
図5】エンコーダ、第1軸受ホルダ、および回転軸を出力側から見た分解斜視図である。
図6】エンコーダケースを取り外したエンコーダおよび第1軸受ホルダの斜視図である。
図7】エンコーダケースを取り外したエンコーダおよび第1軸受ホルダの分解斜視図である。
図8】回路基板組を反出力側から見た分解斜視図である。
図9】回路基板組を出力側から見た分解斜視図である。
図10】磁石組立体の分解斜視図である。
図11】第1磁石と第2磁石の着磁分極線の位置を示す説明図である。
図12】磁石組立体の製造方法のフローチャートである。
図13】磁石組立体および回路基板組の位置決め構造を示す部分分解断面図である。
図14】磁石組立体および回路基板組の組立方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したエンコーダおよびエンコーダ付きモータの実施形態を説明する。図1は本発明を適用したエンコーダ10を備えたエンコーダ付きモータ1の外観斜視図である。図2はエンコーダ10、第1軸受ホルダ42A、および回転軸2の断面図(図1のA-A断面図)およびその部分拡大図であり、図3はエンコーダ10、第1軸受ホルダ42A、および回転軸2の断面図(図1のB-B断面図)である。また、図4図5はエンコーダ10、第1軸受ホルダ42A、および回転軸2の分解斜視図であり、図2は反出力側L2から見た分解斜視図、図3は出力側L1から見た分解斜視図である。
【0022】
エンコーダ付きモータ1は、回転軸2を備えるモータ3と、回転軸2の回転を検出するエンコーダ10を備える。本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向であり、これら3方向の一方側をそれぞれX1、Y1、Z1とし、他方側をそれぞれX2、Y2、Z2とする。Z方向は回転軸2の中心軸線Lと平行であり、X方向およびY方向は中心軸線Lと直交する。
【0023】
(モータ)
モータ3は、ロータおよびステータ(図示省略)を収容するモータケース4を備える。ロータは回転軸2と一体に回転し、ステータはモータケース4に固定される。モータケース4から外部へ突出する回転軸2の端部には、被駆動部材が連結される。本明細書において、モータケース4から回転軸2が突出する方向を出力側L1とし、出力側L1の反対側を反出力側L2とする。エンコーダ10は、モータ3の反出力側L2の端部に固定される。
【0024】
図1に示すように、モータケース4は、中心軸線L方向に延びる筒状ケース41と、筒状ケース41の反出力側L2の端部に固定される第1軸受ホルダ42Aと、筒状ケース41の出力側L1の端部に固定される第2軸受ホルダ(図示省略)を備える。エンコーダ10は、第1軸受ホルダ42Aに対して反出力側L2から固定される。図4に示すように、第1軸受ホルダ42Aは、出力側L1に凹む円形凹部44と、円形凹部44の外周側に拡がるフランジ45と、円形凹部44の縁に沿って反出力側L2に突出する環状壁46を備える。
【0025】
図2図4に示すように、円形凹部44の底部中央には軸受43が保持される。軸受43は、回転軸2の反出力側L2の端部を回転可能に支持する。また、円形凹部44の底部には、軸受43の外周部分を反出力側L2から押さえるように環状のプレート47が取り付けられる。回転軸2は、プレート47の中心に設けられた貫通孔48に通され、軸受43に支持される。プレート47は、3本のねじによって円形凹部44の底部に固定される。
【0026】
本形態では、プレート47は磁性材からなり、モータ3側からエンコーダ10側へ侵入する磁気ノイズを遮蔽する。プレート47の外周縁には、等角度間隔の3箇所に切り欠き471が形成されている。切り欠き471には、後述するエンコーダホルダ14の脚部150が配置される。
【0027】
(エンコーダ)
図2図5に示すように、エンコーダ10は、第1軸受ホルダ42Aに固定されるエンコーダケース11と、エンコーダケース11の内側に配置されるエンコーダカバー12と、エンコーダカバー12の内側に配置される回路基板組13と、回路基板組13が固定さ
れるエンコーダホルダ14と、エンコーダホルダ14の内周側に配置される磁石組立体15と、エンコーダケース11とエンコーダカバー12の間に配置されるケーブル案内部材20を備える。
【0028】
磁石組立体15は、反出力側L2の面に配置される磁石16を備えており、回転軸2の反出力側L2の先端に固定される。従って、磁石16は回転軸2と一体に回転する。回路基板組13は、基板ホルダ50と、基板ホルダ50に固定される基板60とを備える。回路基板組13は、回転軸2に固定された磁石16と対向する感磁素子17を備えており、感磁素子17の信号は、基板60上のエンコーダ回路に入力される。本形態では、感磁素子17としてMR素子を用いる。
【0029】
(エンコーダケース)
エンコーダケース11は、中心軸線L方向に見た場合に略矩形の端板部111と、端板部111の外周縁から出力側L1へ延びる筒状の側板部112を備える。図1に示すように、側板部112のX1側を向く側面には、エンコーダケーブル5を通すための配線取り出し部113が設けられている。図4図5に示すように、配線取り出し部113は、側板部112に形成された切り欠き部117と、切り欠き部117に取り付けられる保持部材118と、保持部材118および切り欠き部117を覆うエンコーダケーブルホルダ119を備える。
【0030】
エンコーダケース11と第1軸受ホルダ42Aは、側板部112の出力側L1の端面とフランジ45との間にシール部材114を介在させて、4箇所の角部に固定ねじを締め込むことによって固定される。本形態では、エンコーダケース11およびモータケース4はアルミなどの非磁性材からなる。
【0031】
(エンコーダホルダ)
図4図5に示すように、エンコーダホルダ14は、円形の磁石配置孔141が形成された胴部140と、胴部140から外周側に突出する3本の脚部150を備える。図5に示すように、脚部150の出力側L1の端面は、胴部140の出力側L1の端面よりも出力側L1に突出している。脚部150は、第1軸受ホルダ42Aの円形凹部44の内側に配置され、プレート47の外周縁に形成された切り欠き471に配置されて、円形凹部44の底面に当接する。脚部150には、ホルダ固定ねじ145を通す固定孔147が設けられている。エンコーダホルダ14は、3本のホルダ固定ねじ145によって脚部150が円形凹部44の底面にねじ止めされることにより、第1軸受ホルダ42Aに固定される。エンコーダホルダ14を第1軸受ホルダ42Aに固定すると、磁石配置孔141の中央に、回転軸2および磁石組立体15が配置される。
【0032】
エンコーダホルダ14には、回路基板組13が固定される。図4に示すように、エンコーダホルダ14は、胴部140の反出力側L2の端面である環状面143を備えており、環状面143から突出するボス部144を3箇所に備えている。回路基板組13は、3本の基板固定ねじ65によってボス部144にねじ止めされる。回路基板組13は、ボス部144の先端面である基準面Pに反出力側L2から当たることにより、中心軸線L方向に位置決めされる。エンコーダホルダ14に回路基板組13を固定することにより、回路基板組13に搭載された感磁素子17と、磁石組立体15の磁石16とが所定のギャップで対向する。
【0033】
エンコーダホルダ14は、磁石配置孔141を囲む胴部140を径方向に貫通する貫通部148を備える。貫通部148は、周方向に離間した2箇所に設けられている。本形態では、貫通部148は、胴部140を出力側L1の端部から反出力側L2に切り欠いた切り欠き部である。貫通部148を備えていれば、回転軸2の反出力側L2の端部に磁石組
立体15を固定する際、第1軸受ホルダ42Aに固定されたエンコーダホルダ14の外周側から、磁石配置孔141にドライバなどの固定用工具を用いてアクセスすることができる。
【0034】
エンコーダホルダ14に回路基板組13を固定する際、回路基板組13の周方向の位置決めは、位置決めピン66を用いて行われる。図5に示すように、回路基板組13は、位置決めピン66の端部が嵌まる2箇所の位置決め孔131を備える。位置決め孔131は、基板ホルダ50に設けられている。一方、図4に示すように、エンコーダホルダ14は、環状面143よりも反出力側L2に突出する凸部を2箇所に備えており、各凸部は、位置決めピン66の端部が嵌まる位置決め孔146を備える。エンコーダホルダ14と回路基板組13は、周方向に離間した2箇所において、2本の位置決めピン66の一端および他端をそれぞれエンコーダホルダ14の位置決め孔146と回路基板組13の位置決め孔131に嵌め込むことにより、周方向に位置決めされる。位置決めピン66はスプリングピンであるため、回路基板組13の周方向のがたつきを防止して位置決めを行うことができる。
【0035】
(エンコーダカバー)
図6は、エンコーダケース11を取り外したエンコーダ10および第1軸受ホルダ42Aの斜視図である。図7は、エンコーダケース11を取り外したエンコーダ10および第1軸受ホルダ42Aの分解斜視図である。図2図7に示すように、エンコーダカバー12は、回路基板組13に対して磁石16とは反対側(反出力側L2)から対向する端板部121と、端板部121の外周縁から出力側L1へ延びる側板部122を備える。図2図3に示すように、エンコーダカバー12は、回路基板組13を磁石16とは反対側(反出力側L2)から覆っている。側板部122は回路基板組13の外周側を囲んでおり、回路基板組13に搭載された感磁素子17の外周側を囲んでいる。側板部122の先端は、回路基板組13よりも出力側L1まで延びている。図3図6に示すように、エンコーダカバー12は、側板部122の先端がエンコーダホルダ14の環状面143に当接することにより、中心軸線L方向に位置決めされる。
【0036】
エンコーダカバー12は、配線取り出し部113とは反対側(X2側)を向く開口部123を備える。開口部123は、端板部121および側板部122の周方向の一部を径方向と直交する平面で直線状に切り欠いた切り欠き部である。回路基板組13は、X2側の端部がエンコーダカバー12の外部に配置される。従って、基板60は、開口部123の外側に配置される露出部分61Aと、エンコーダカバー12に収容される収容部分61Bを備える。回路基板組13は、基板60の露出部分61Aに配置されたコネクタ18を備える。コネクタ18をエンコーダカバー12の外側に配置することにより、エンコーダカバー12の高さを小さくすることができ、エンコーダ10の全体高さを小さくすることができる。
【0037】
図6に示すように、エンコーダカバー12の開口部123は、反出力側L2から見て回路基板組13と重なる直線部127を備える。直線部127は、端板部121の端部であり、Y方向に延びている。コネクタ18は、長手方向をY方向に向けて、直線部127の中央部分に沿って配置される。直線部127の中央には、端板部121のエッジをX1側へ折り曲げた折り曲げ部128が設けられている。後述するように、エンコーダカバー12とエンコーダケース11の間には、コネクタ18に接続されるエンコーダケーブル5が通るケーブル通路23が設けられている。ケーブル通路23はX方向に延びており、反出力側L2から見て直線部127の中央部分と重なっている。折り曲げ部128は、ケーブル通路23に面した範囲に設けられている。
【0038】
エンコーダカバー12は、導電性の固定部材125により、回路基板組13に固定され
る。図4に示すように、エンコーダカバー12には、端板部121を貫通する固定孔124が2箇所に設けられている。また、回路基板組13には、エンコーダカバー12の固定孔124と対向する2箇所に、固定孔132が設けられている。2本の固定部材125の一端を固定孔132に嵌め込み、他端をエンコーダカバー12の固定孔124に嵌め込むことにより、エンコーダカバー12が回路基板組13に対して固定される。固定孔124、132は、周方向に離間した2箇所に設けられている。固定部材125はスプリングピンであり、固定部材125の端部は、固定孔124、132に圧入される。固定部材125としてスプリングピンを用いることにより、エンコーダカバー12の周方向のがたつきが防止される。従って、固定部材125により、エンコーダカバー12の周方向の位置決めを行うことができる。
【0039】
固定部材125は導電性の金属(例えば、SUS)からなる導通部材である。固定孔132は基板60に設けられており、2箇所のうちの1箇所は、基板60上のエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続されるランドが設けられたグランドスルーホール133である。従って、2箇所の固定孔132に固定部材125を嵌め込むことにより、2本の固定部材125のうちの1本は、基板60上のエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続される。
【0040】
エンコーダカバー12は、導電性を有する磁性材からなり、シールド部材(第1シールド部材)として機能する。例えば、エンコーダカバー12は鉄、パーマロイなどで形成されている。本形態では、エンコーダカバー12は、SPCCやSPCEなどの磁性金属板をプレス加工して形成されている。このように、磁性材で形成されたエンコーダカバー12によって感磁素子17を備えた回路基板組13を覆うことにより、磁性材によって外乱磁界などの磁気ノイズおよび電磁波ノイズを吸収し、感磁素子17およびエンコーダ回路を磁気ノイズおよび電磁波ノイズから遮蔽することができる。また、エンコーダカバー12は、2本の固定部材125のうちの1本を介して、エンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続される。このように、シグナルグランド電位の部材によって回路基板組13を覆うことにより、感磁素子17およびエンコーダ回路をモータケース4からのフレームグランドノイズなどの電気的ノイズから遮蔽することができる。
【0041】
また、後述するように、回路基板組13は、基板60を出力側L1から覆う基板ホルダ50を備えており、基板ホルダ50には、感磁素子17を覆うようにシールド部材80(第2シールド部材)が取り付けられている。基板ホルダ50およびシールド部材80は、導電性の金属、例えばアルミからなり、エンコーダ回路のシグナルグランドと接続されている。従って、感磁素子17およびエンコーダ回路は、磁石16側からも電気的ノイズから遮蔽されているため、開口部123を除く全方位で電気的ノイズから遮蔽されている。
【0042】
(防塵部材)
図2に示すように、エンコーダカバー12と基板60との間には、開口部123を塞ぐ防塵部材126が配置される。防塵部材126は弾性部材からなり、回路基板組13に対してエンコーダカバー12を固定した状態では、エンコーダカバー12の端板部121と基板60との間で圧縮されている。図5図7に示すように、防塵部材126は直線状の部材であり、開口部123の縁に沿って直線状に延びている。開口部123に防塵部材126を配置することにより、導電性の異物が基板60上へ侵入することを抑制することができる。
【0043】
図6に示すように、防塵部材126は、開口部123の直線部127に沿ってY方向に延びている。図5に示すように、防塵部材126は、X方向の幅およびZ方向の高さが一定の直方体状の部材である。防塵部材126の配置領域C(図2参照)は、基板60の中心よりも開口部123側(X2側)である。後述するように、感磁素子17は、基板60
の中心に搭載された第1感磁素子171と、基板ホルダ50のX1側の縁に配置された第2感磁素子172を備える。2つの感磁素子のうち、最もコネクタ18側に配置される感磁素子は第1感磁素子171であり、防塵部材126は、第1感磁素子171の中心に対して開口部123側(X2側)に位置する。第2感磁素子172は、基板60の中心に対して防塵部材126が配置される側とは反対側の端部に配置され、反出力側L2から見て防塵部材126と全く重ならない位置に配置されている。
【0044】
防塵部材126は絶縁性の多孔体である。例えば、防塵部材126は、ゴムやウレタン等の絶縁材料からなる発泡体である。本形態では、防塵部材126は半独立半連続気泡体であり、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)からなる。このように、防塵部材126はスポンジ状の柔らかい弾性部材であるため、基板60とエンコーダカバー12との間で両部材に密着する形状に変形して、開口部123を塞いでいる。防塵部材126は、組立前の形状はエンコーダカバー12と基板60との隙間より大きく、組み立てることによって圧縮されている。
【0045】
なお、防塵部材126として多孔体を用いる代わりに、絶縁性の充填剤をエンコーダカバー12と基板60との隙間に注入して隙間を塞いでもよい。例えば、充填剤として、常温で硬化するシリコーンゴム系の弾性接着剤を用いることができる。
【0046】
(ケーブル案内部材)
図2図5に示すように、エンコーダケース11とエンコーダカバー12の間には、同一形状の2個のケーブル案内部材20が配置される。ケーブル案内部材20は、XZ面と平行な案内面21と、案内面21とは反対側を向く円弧面22を備える。2個のケーブル案内部材20は、円弧面22が同一円上に位置し、且つ、案内面21がY方向に対向するように位置決めされて、エンコーダケース11に固定される。エンコーダケース11の端板部111には、2個のケーブル案内部材20を図2図3に示す配置で位置決めするための位置決め部が設けられている。
【0047】
図3に示すように、エンコーダケース11は、端板部111から出力側L1へ突出する円弧状のリブ115と、リブ115の内周側に設けられた凸部116を備える。リブ115および凸部116は、ケーブル案内部材20を位置決めするための位置決め部である。リブ115は、ケーブル案内部材20の円弧面22と接触し、凸部116は、ケーブル案内部材20を貫通する位置決め孔24に配置される。ケーブル案内部材20は、例えば、接着剤によって端板部111に固定される。
【0048】
ケーブル案内部材20は、弾性部材からなり、エンコーダカバー12の端板部121とエンコーダケース11の端板部111との間で圧縮される。ケーブル案内部材20は、防塵部材126と同様に、絶縁性の多孔体である。本形態では、防塵部材126は独立気泡体であり、マイクロセルポリマーシートからなる。エンコーダカバー12は、ケーブル案内部材20の弾性復帰力により、エンコーダホルダ14に押し付けられる。従って、振動等によってエンコーダカバー12が回路基板組13から外れるおそれを少なくすることができる。
【0049】
2個のケーブル案内部材20の間の空間は、X方向に延びるケーブル通路23となる。図2に示すように、回路基板組13は、基板60の中心を挟んで配線取り出し部113とは反対側の端部(X2側の端部)にコネクタ18が配置され、コネクタ18の差し込み口181は、配線取り出し部113とは反対側(X2側)を向いている。図2図6に示すように、エンコーダケーブル5の先端に設けられたケーブル側コネクタ6は、配線取り出し部113とは反対側からコネクタ18の差し込み口181に接続される。エンコーダケーブル5は、コネクタ18からX2側へ引き出され、コネクタ18のX2側でX1側へ折
り返す形状に屈曲させられ、ケーブル通路23を通って配線取り出し部113へ引き回される。従って、エンコーダケーブル5は、コネクタ18から配線取り出し部113とは反対側へ引き出されて配線取り出し部113の側へ折り返される第1部分5Aと、ケーブル案内部材20に沿って配線取り出し部113の側へ直線状に延びる第2部分5Bを備える。
【0050】
上記のように、エンコーダカバー12の開口部123は、ケーブル通路23に面した範囲に折り曲げ部128が設けられている。従って、エンコーダケーブル5は端板部121のエッジに接触することはなく、折り曲げ部128に接触するので、エンコーダケーブル5が損傷するおそれが少ない。
【0051】
(回路基板組)
図8は回路基板組13を反出力側L2から見た分解斜視図であり、図9は回路基板組13を出力側L1から見た分解斜視図である。図8図9に示すように、回路基板組13は、基板ホルダ50と、基板ホルダ50に対して反出力側L2から当接する基板60と、基板ホルダ50に対して基板60を固定する導電性の固定部材70と、基板ホルダ50に出力側L1から固定されるシールド部材80を備える。基板60は、中心軸線L方向に見て略円形であり、X2側の縁にコネクタ18が搭載されている。コネクタ18は、基板60の縁を直線状に切り欠いた直線部61に沿って配置されている。基板ホルダ50は、中心軸線L方向に見て基板60と略同一形状であり、基板60と基板ホルダ50は、中心軸線L方向に当接する。
【0052】
基板60には、基板ホルダ50に対する固定用の固定孔62が2箇所に形成されている。2箇所の固定孔62は、基板ホルダ50の中心を挟んで反対側に配置されている。また、2箇所の固定孔62のうちの一方は、基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続されたグランドスルーホール621である。なお、2箇所の固定孔62のどちらをグランドスルーホール621にしても良い。また、固定孔62を3か所以上設け、3か所で基板60と基板ホルダ50を固定してもよい。
【0053】
基板ホルダ50は、基板60と対向する平面部53と、平面部53の外周縁から反出力側L2に立ち上がる縁部54を備える。平面部53には、基板60の固定孔62と対向する2箇所に固定孔51が形成されている。固定部材70の一端および他端を、それぞれ、基板60の固定孔62と基板ホルダ50の固定孔51に嵌め込むことにより、基板ホルダ50に基板60が固定される。固定部材70はスプリングピンである。固定部材70としてスプリングピンを用いることにより、基板ホルダ50に対する基板60のがたつきが防止される。また、上記のように、固定部材70は導電性の金属、例えばSUSで形成された導通部材であり、固定孔62のうちの1つはグランドスルーホール621であるため、固定部材70を介して基板ホルダ50に基板60が取り付けられると、固定部材70およびグランドスルーホール621を介して、基板ホルダ50が基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続される。なお、固定部材70を半田接合により固定孔62に固定してもよい。
【0054】
基板ホルダ50には、エンコーダホルダ14のボス部144に対応する3か所に基板固定ねじ65を通すためのボス部52が形成されている。本形態では、ボス部52の反出力側L2の先端面が、基板60と当接する当接面となっている。また、ボス部52の出力側L1の端面は、エンコーダホルダ14と当接する当接面となっている。
【0055】
基板60には、ボス部52と対向する3か所に固定孔63が形成されている。回路基板組13は、3本の基板固定ねじ65をそれぞれ基板60の固定孔63および基板ホルダ50のボス部52に通して、その先端をエンコーダホルダ14のボス部144にねじ止めす
ることにより、エンコーダホルダ14に固定される。エンコーダホルダ14は樹脂などの絶縁材からなる。従って、エンコーダホルダ14を介して第1軸受ホルダ42Aに回路基板組13を固定すると、基板ホルダ50は第1軸受ホルダ42Aから絶縁される。
【0056】
基板60は、反出力側L2を向く反出力側基板面60a、および、出力側L1を向く出力側基板面60bを備える。反出力側基板面60aには、エンコーダ回路を構成する回路素子、エンコーダケーブル5を接続するためのコネクタ18、および、接続端子173などが搭載されている。接続端子173は、基板60の外周縁に配置され、基板60の中心を挟んでコネクタ18とは反対側に配置されている。基板60の外周縁には、接続端子173の径方向外側に切り欠き部64が形成されている。図9に示すように、感磁素子17は、出力側基板面60bの中央に配置される第1感磁素子171、および、フレキシブル配線基板174を介して接続端子173と接続される第2感磁素子172を備える。フレキシブル配線基板174は、基板60の切り欠き部64を通り、基板60の出力側L1に引き回されている。第1感磁素子171および第2感磁素子172は、それぞれ、基板60上に構成されたエンコーダ回路のシグナルグランドと接続されるグランド端子(図示省略)を備える。また、出力側基板面60bには、第1感磁素子171の近傍に2つのホール素子175が搭載されている。2つのホール素子175は、感磁素子17の位置を基準として90度離れた角度位置に配置されている。
【0057】
基板ホルダ50の平面部53の中央には、円形の貫通孔56が形成されている。また、平面部53の出力側L1の面には、出力側L1に突出する段差部57が形成されている。段差部57は、貫通孔56を囲む領域から平面部53の外周縁に向かって帯状に延びている。段差部57には、略矩形の貫通孔58が形成されている。基板ホルダ50に基板60を固定したとき、貫通孔56に第1感磁素子171およびホール素子175が配置される。また、貫通孔58には、フレキシブル配線基板174を介して基板60上の接続端子173と接続された第2感磁素子172が配置される。第2感磁素子172は、貫通孔58の縁に固定され、基板ホルダ50に搭載されている。
【0058】
後述するように、磁石組立体15の反出力側L2の先端には、円形の第1磁石161、および、第1磁石161と同軸に配置される環状の第2磁石162が配置される。回路基板組13をエンコーダホルダ14に対して固定すると、図2図3に示すように、第1感磁素子171と第1磁石161が対向し、第2感磁素子172と第2磁石162が対向する。エンコーダ10は、第1感磁素子171の出力側L1の表面と第1磁石161との間、および、第2感磁素子172の出力側L1の表面と第2磁石162の間に所定のギャップが形成されるように組み立てられている。後述するように、本形態では、エンコーダホルダ14の基準面Pを基準として磁石組立体15および回路基板組13を位置決めすることにより、感磁素子17と磁石16とのギャップを精度良く管理する。
【0059】
第1感磁素子171およびその近傍に配置される2個のホール素子175と第1磁石161は、1回転で得られる第1感磁素子171の出力の周期を2個のホール素子175により判別することでアブソリュートエンコーダとして機能する。一方、第2感磁素子172と第2磁石162は、1回転で複数周期の出力が得られるため、インクリメンタルエンコーダとして機能する。エンコーダ10は、これらの2組のエンコーダの出力を処理することにより、高分解能で、且つ、高精度な位置検出を行うことができる。
【0060】
(シールド部材)
シールド部材80は、基板ホルダ50の段差部57に出力側L1から取り付けられている。シールド部材80は可撓性のシート材であり、段差部57に形成された貫通孔56および貫通孔58を完全に塞ぐ大きさである。段差部57は出力側L1を向くシールド取付面59を備えており、シールド部材80は、導電性接着剤を介してシールド取付面59に
固定される。上記のように、シールド部材80は、基板ホルダ50と同様に、導電性の非磁性金属、例えばアルミで形成されている。このため、シールド部材80は、基板ホルダ50を介して、基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続される。
【0061】
シールド部材80は、貫通孔56に配置された第1感磁素子171、および、貫通孔58に配置された第2感磁素子172を覆っている。従って、第1感磁素子171および第2感磁素子172は、シールド部材80を介して第1磁石161および第2磁石162と対向する。基板ホルダ50にシールド部材80を取り付けたことにより、第1感磁素子171と第2感磁素子172は、シグナルグランド電位の部材(基板ホルダ50およびシールド部材80)によってモータ3から遮蔽される。従って、第1磁石161および第2磁石162との隙間から回り込んでくるフレームグランドノイズや電源ノイズなどを効果的に遮蔽できる。なお、第1感磁素子171と第2感磁素子172は、シールド部材80を介して第1磁石161および第2磁石162と対向するが、シールド部材80は非磁性金属であるため、電磁波ノイズについては良好に遮蔽しつつ、磁気式のエンコーダとしての機能が損なわれることはない。
【0062】
(磁石組立体)
図10は、磁石組立体の分解斜視図である。磁石組立体15は、磁石ホルダ19と、磁石ホルダ19に保持される磁石16を備える。図10に示すように、磁石ホルダ19は、略円板状の磁石保持部191と、磁石保持部191の中心から出力側L1へ突出する筒状の軸部192を備える。軸部192には、回転軸2の先端が圧入、接着剤、および止めねじの何れか、あるいは、これらを併用して固定される。図2図3に示すように、本形態では、軸部192を径方向に貫通するねじ孔195に止めねじ196が締め込まれ、軸部192の中心を通る軸孔197に配置される回転軸2を側面から固定する。図10に示すように、磁石16は、磁石保持部191の中央に形成された凹部に嵌合する円形の第1磁石161、および、磁石保持部191の外周縁に形成された段部に嵌合する環状の第2磁石162を備える。
【0063】
磁石ホルダ19は鉄などの磁性材からなる。磁石保持部191は、第1磁石161と第2磁石162の磁気干渉を抑制するためのシールド部193と、第2磁石162の出力側L1に位置するヨーク部194を備える。磁石組立体15において、第1磁石161と第2磁石162は径方向に離間しており、シールド部193は、第1磁石161と第2磁石162の間に配置される。シールド部193は、反出力側L2に突出する環状凸部であり、ヨーク部194は、第2磁石162の出力側L1において径方向外側へ環状に延びている。
【0064】
第1磁石161は、反出力側L2を向く着磁面161aを備えており、着磁面161aは、シールド部193の先端面193aより出力側L1に凹んだ位置に位置する(図13参照)。また、第2磁石162は、反出力側L2を向く着磁面162aを備えており、着磁面162aは、シールド部193の先端面193aより反出力側L2(第2感磁素子172側)へ突出した位置に位置する(図13参照)。第1磁石161と第2磁石162は、シールド部193と径方向に接している。また、シールド部193は、中心軸線L方向(すなわち、回転軸2の軸線方向)の高さが径方向の幅より小さい幅広の凸部である。
【0065】
図11は、第1磁石161と第2磁石の着磁分極線の位置を示す説明図であり、磁石組立体15を反出力側L2から見た平面図である。第1磁石161は周方向にN極とS極が1極ずつ着磁されている。一方、第2磁石162はN極とS極が周方向に交互に複数極ずつ着磁されている。図11に示す例では、第2磁石162には、64の磁極対が設けられている。なお、磁極対の数は64に限定されない。また、第2磁石162の磁極は、N極
とS極が周方向に交互に並ぶと共に、N極とS極が径方向に交互に並んでいる。すなわち、第2磁石162は、N極とS極が周方向に交互に並ぶ第1磁極群と、第1磁極群の内周側でN極とS極が周方向に交互に並ぶ第2磁極群を備えており、第1磁極群におけるN極の角度位置は、第2磁極群におけるS極の角度位置と一致し、第1磁極群におけるS極の角度位置は、第2磁極群におけるN極の角度位置と一致する。言い換えれば、第2磁石162は、N極とS極が千鳥状に並ぶように着磁されている。
【0066】
磁石組立体15は、第1磁石161と第2磁石162の着磁分極線の位置が一致していない。図11に示すように、第1磁石161の着磁分極線M1は、第2磁石162のN極領域もしくはS極領域の周方向の中央(すなわち、周方向で隣り合う着磁分極線M2の中間点)と同一の角度位置に位置する。磁石ホルダ19は、着磁分極線M1、M2の位置を目標位置に合わせるための位置基準を備える。本形態では、位置基準となる目印を備えており、目印は、シールド部193の先端面193aに設けられたケガキ線198である。ケガキ線198は径方向に延びており、径方向で反対側の2箇所に設けられている。ケガキ線198の角度位置は、第1磁石161の着磁分極線M1の目標位置と一致する。
【0067】
なお、着磁分極線M1、M2の位置を合わせるために磁石ホルダ19に設ける位置基準は、ケガキ線198とは異なるものでもよい。例えば、凹部や凸部、あるいは切り欠きを位置基準とすることができる。また、第1磁石161の側に位置基準と嵌合する形状を設けることにより、機械的な嵌め合いによって位置決めを行うことができる。
【0068】
(磁石組立体の製造方法)
図12は、磁石組立体15の製造方法のフローチャートである。磁石組立体15は、着磁分極線M1、M2の角度位置が一致しない位置関係となるように第1磁石161と第2磁石162の磁極の目標位置を設定して製造される。図11に示すように、第1磁石161の目標位置は、着磁分極線M1とケガキ線198(位置基準となる目印)の角度位置が一致する位置である。また、第2磁石162の目標位置は、N極領域もしくはS極領域の周方向の中央(周方向で隣り合う着磁分極線M2の中間点)とケガキ線198の角度位置とが一致する位置である。
【0069】
図12に示すように、ステップST11では、磁石ホルダ19に対して着磁済みの第1磁石161を位置決めして固定する。このとき、ケガキ線198を基準として、第1磁石161の着磁分極線M1とケガキ線198の角度位置とを一致させることにより第1磁石161の周方向の位置決めを行うと共に、第1磁石161の着磁面161aが、シールド部193の先端面193aよりも出力側L1に凹んだ位置に配置されるように、中心軸線L方向の位置決めを行う。磁石保持部191に対する第1磁石161の固定は、圧入、接着剤等の方法で行う。
【0070】
次に、第2ステップST12では、着磁前の第2磁石162を磁石保持部191の外周縁の段部に固定する。このとき、第2磁石162は着磁前であるため周方向の位置決めは行わないが、反出力側L2の表面(着磁面162aとなる面)が、シールド部193の先端面193aよりも反出力側L2へ突出した位置に配置されるように、第2磁石162の中心軸線L方向の位置決めを行って固定する。磁石保持部191に対する第2磁石162の固定は、圧入、接着剤等の方法で行う。
【0071】
続いて、第3ステップST13では、磁石保持部191に固定された第2磁石162を着磁機にセットし、ケガキ線198を基準として、着磁分極線M2の位置が図11に示す配置となるように、第2磁石162を着磁する。すなわち、周方向で隣り合う着磁分極線M2の中間点が着磁分極線M1の角度位置と一致するように、第2磁石162を着磁する。このように、位置基準となるケガキ線198を設けておくことにより、着磁分極線M1
、M2の位置精度を高めることができる。
【0072】
(感磁素子と磁石とのギャップ管理)
図13は、磁石組立体15および回路基板組13の位置決め構造を示す部分分解断面図であり、図6のD-D位置で切断した部分分解断面図である。エンコーダ10は、感磁素子17と磁石16とのギャップを精度良く管理するため、エンコーダホルダ14に設けられた基準面Pを基準として、磁石組立体15と回路基板組13が組み立てられている。上記のように、基準面Pは、回路基板組13が当接するボス部144の先端面である。図7に示すように、基準面Pは、周方向に離間した3箇所に設けられている。
【0073】
図13に示すように、磁石組立体15は、第1磁石161の着磁面161aの位置H1と、シールド部193の先端面193aの位置H2と、第2磁石162の着磁面162aの位置H3とが中心軸線L方向で異なる。磁石組立体15において、最も反出力側L2に位置する面は、第2磁石162の着磁面162aである。磁石組立体15は、基準面Pと第2磁石162の着磁面162aとが中心軸線L方向で所定の位置関係となる位置に位置決めされて、回転軸2に固定される。本形態では、基準面Pと着磁面162aとが同一面上に位置する位置関係となる位置に磁石組立体15が位置決めされて回転軸2に固定される。
【0074】
このように、基準面Pと着磁面162aとを同一面上に配置した後、基準面Pに回路基板組13のボス部52を当接させて固定する場合には、第2感磁素子172のセンサ面172aと着磁面162aとのギャップGは、図13に示すように、回路基板組13におけるボス部52の先端面とセンサ面172aとの高低差と一致する。第2感磁素子172は、基板ホルダ50のシールド取付面59とセンサ面172aとを同一面上に位置決めして取り付けられている。つまり、回路基板組13において、シールド取付面59は、基板ホルダ50に設けられたセンサ基準面である。従って、センサ面172aと着磁面162aとのギャップGは、基板ホルダ50におけるシールド取付面59(センサ基準面)とボス部52の先端面との高低差であるため、ギャップGの管理は、基板ホルダ50の寸法精度を管理することにより行うことができる。本形態では、基板ホルダ50はアルミ製であるため、容易に加工精度を高めることができる。従って、ギャップGを精度良く管理することができる。
【0075】
図14は、磁石組立体15および回路基板組13の組立方法のフローチャートである。図14に示すように、ステップST22では、エンコーダホルダ14をモータケース4(第1軸受ホルダ42A)に対して固定する。次に、ステップST12では、エンコーダホルダ14に設けられた基準面Pと第2磁石162の着磁面162aとが所定の位置関係となる位置に磁石組立体15を位置決めする。本形態では、平板状の治具100を用いてこの位置決めを行う。例えば、治具100に設けられた位置決め面101を基準面Pに当接させると共に、第2磁石162の着磁面162aを位置決め面101に当接させる。
【0076】
続いて、ステップST23では、磁石組立体15を回転軸2に固定する。本形態では、エンコーダホルダ14の貫通部148から、ドライバなどの固定用工具を用いて磁石ホルダ19の軸部192に設けられたねじ孔195にアクセスして、止めねじ196をねじ孔195に締め込む。これにより、止めねじ196の先端によって回転軸2が磁石ホルダ19の軸孔197の内周面に押し付けられ、磁石ホルダ19が回転軸2に固定される。ねじ孔195は、周方向に離間した2か所に設けられ、各ねじ孔195に止めねじ196がねじ止めされる。そのため、エンコーダホルダ14には、磁石ホルダ19に設けられた2か所のねじ孔195の角度間隔と同一の角度間隔で、2か所に貫通部148が設けられている。
【0077】
次に、ステップST24では、回路基板組13をエンコーダホルダ14に固定する。このとき、エンコーダホルダ14に設けられた3箇所の基準面Pに対して回路基板組13のボス部52を当接させて中心軸線L方向の位置決めを行う。また、周方向の位置決めは、上記の位置決めピン66によって行う。位置決め後、基板固定ねじ65(図4参照)によって、回路基板組13をエンコーダホルダ14に固定する。これにより、第2磁石162の着磁面162aと、第2感磁素子172のセンサ面172aとが所定のギャップGで対向するとともに、第2磁石162の着磁面162aと、第2感磁素子172のセンサ面171aとが所定のギャップで対向する。
【0078】
(ターミナル部材)
エンコーダケーブル5は、複数の信号線を金属製の網状のシールドで覆ったシールドケーブルである。エンコーダケーブル5の端部には、信号線から絶縁されて信号線を覆うシールドと接続されたフレームグランド線が複数の信号線と並んで引き出されている。フレームグランド線は、基板60上にエンコーダ回路と絶縁されて設けられたパターンおよびターミナル部材9を介して、モータ3のフレームグランド電位と電気的に接続される。
【0079】
図6図7に示すように、エンコーダホルダ14を第1軸受ホルダ42Aに固定する3本のホルダ固定ねじ145のうちの1本は、エンコーダホルダ14の脚部150とターミナル部材9とを重ねて固定するターミナル固定ねじ145Aとなっている。エンコーダホルダ14の胴部140のX2側の部分には、出力側L1へ凹んだ形状の切り欠き部149が設けられている。切り欠き部149の外周側には3箇所の脚部150のうちの1つが配置され、ターミナル部材9は切り欠き部149および脚部150と重なっている。
【0080】
ターミナル部材9は導電性の板金部材であり、本形態では、銅製である。ターミナル部材9は、エンコーダホルダ14の切り欠き部149から脚部150の上へ延びる固定部91と、固定部91から回路基板組13の側へ延びる腕部92を備える。固定部91には、脚部150に設けられた固定孔147(図5参照)と重なる長孔93が設けられている。固定部91は、導電性の固定部材であるターミナル固定ねじ145Aの頭部と脚部150との間に挟まれ、ターミナル固定ねじ145Aによって脚部150と共に第1軸受ホルダ42Aにねじ止めされる。従って、ターミナル部材9は、ターミナル固定ねじ145Aを介してモータケース4のフレームグランドと電気的に接続される。
【0081】
基板60には、コネクタ18と周方向で並ぶ位置に第1貫通孔7が形成されている。また、基板ホルダ50には、基板60の第1貫通孔7と中心軸線L方向で重なる位置に第2貫通孔8が形成されている。ターミナル部材9の腕部92は、固定部91から周方向に延びる第1部分94と、第1部分94に対して略直角に屈曲して反出力側L2へ延びる第2部分95を備える。回路基板組13をエンコーダホルダ14に固定すると、第2部分95の先端部96が第1貫通孔7および第2貫通孔8に配置される。第2部分95の先端部96を第1貫通孔7に半田付けすると、ターミナル部材9は、第1貫通孔7の縁に設けられたランド7aと電気的に接続される。
【0082】
図2図6に示すように、エンコーダケーブル5の端部には、基板60上のコネクタ18に接続されるケーブル側コネクタ6が設けられている。ケーブル側コネクタ6は、複数の信号線およびフレームグランド線のそれぞれに対応する端子を備える。
【0083】
図8に示すように、基板60上のコネクタ18には、複数の端子接続部182がコネクタ18の幅方向に一列に並んで設けられている。複数の端子接続部182のうちの1箇所の端子接続部182bは、基板60に設けられたパターンを介して、第1貫通孔7の縁に設けられたランド7aと電気的に接続されている。また、他の端子接続部182aの一部あるいは全部が、基板60上に設けられたエンコーダ回路と接続されている。ここで、ラ
ンド7aと端子接続部182bとを接続するパターンは、エンコーダ回路および他の端子接続部182aからは絶縁され、エンコーダ回路のシグナルグランドとは絶縁されている。なお、第1貫通孔7は、パターンと電気的に接続されたスルーホールであってもよい。
【0084】
ケーブル側コネクタ6を基板60上のコネクタ18に接続すると、エンコーダケーブル5のフレームグランド線に対応する端子は、ランド7aと電気的に接続されている端子接続部182bと接続される。従って、エンコーダケーブル5のフレームグランド線は、ランド7aおよび基板60上のパターンを介して、第1貫通孔7に半田付けされたターミナル部材9と電気的に接続され、ターミナル部材9を介して、モータケース4のフレームグランドと接続される。一方、基板ホルダ50に形成された第2貫通孔8は基板60の第1貫通孔7より一回り大きく、ターミナル部材9は第2貫通孔8の縁とは接触しない。従って、基板ホルダ50は、ターミナル部材9を介してモータケース4のフレームグランドと電気的に接続されることはない。
【0085】
このように、本形態では、エンコーダケーブル5を基板60に接続する際に、ケーブル側コネクタ6を基板60上のコネクタ18に差し込むだけで、エンコーダケーブル5がモータケース4のフレームグランドと電気的に接続される。エンコーダケーブル5をモータケース4のフレームグランドと電気的に接続することにより、エンコーダケーブル5の外部から侵入する電気的ノイズの遮蔽効果を高めることができる。従って、エンコーダ10のノイズ耐性を高めることができる。
【0086】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のエンコーダ10は、磁石組立体15と、第1感磁素子171および第2感磁素子172を備える回路基板組13と、エンコーダホルダ14を有する。磁石組立体15は、回転軸2と一体に回転する磁石ホルダ19と、磁石ホルダ19に固定される第1磁石161および第2磁石162と、を有し、第1磁石161は、周方向にN極とS極が1極ずつ着磁され、且つ、第1感磁素子171に対向し、第2磁石162は、N極とS極が周方向に交互に複数着磁され、且つ、第2感磁素子172に対向する。磁石ホルダ19は、径方向に離間した第1磁石161と第2磁石162の間に位置するシールド部193を備えた磁性材からなり、第1磁石161の着磁面161aは、シールド部193の先端面193aよりも凹んだ位置にある。
【0087】
本形態では、このように、シールド部193が磁石ホルダ19と一体の磁性材であるため、シールド部193と第1磁石161および第2磁石162との位置精度を高めることができる。従って、第1感磁素子171および第2感磁素子172と第1磁石161および第2磁石162とのギャップを精度良く管理できる。従って、角度検出の精度を高めることができる。また、第1磁石161の着磁面161aをシールド部193の先端面193aより低くしているので、第1磁石161と第2磁石162との磁気干渉を効果的に抑制できる。従って、磁気干渉による角度検出の精度低下を抑制できる。
【0088】
本形態では、第2磁石162の着磁面162aは、シールド部193の先端面193aよりも突出した位置にある。従って、第2磁石162の着磁面162aが磁石組立体15の中で最も反出力側L2に突出した位置にあるので、第2磁石162の着磁面162aを基準にして、磁石組立体15の位置決めを行うことができる。これにより、第2磁石162と第2感磁素子172とのギャップを精度良く管理できるため、角度検出の精度を高めることができる。また、第2磁石を磁石ホルダに固定後に着磁することもできる。
【0089】
なお、着磁面162aは、シールド部193の先端面193aと同一面上であってもよい。着磁面162aと先端面193aが同一面上であっても、着磁面162aが最も反出力側L2に突出した位置にあることに変わりはない。従って、着磁面162aを基準にし
て、磁石組立体15の位置決めを行うことができる。よって、第2磁石162と第2感磁素子172とのギャップを精度良く管理できるため、角度検出の精度を高めることができる。
【0090】
本形態では、磁石ホルダ19は、第2磁石162に対して第2感磁素子172とは反対側に位置するヨーク部194を備える。第2磁石162の背面側にヨーク部194を配置することにより、第2磁石162を磁石ホルダ19に固定した状態で第2磁石162に着磁する際、着磁用の磁束を第2磁石162の背面側へ飛ばすことができる。従って、第2磁石162を磁石ホルダ19に固定した状態で着磁できるため、第2磁石162の磁極位置が第2磁石162の取付時にずれることを回避できる。すなわち、着磁前の第2磁石を固定した状態で第2磁石の位置がずれたとしても、固定後に着磁することで、第2磁石の着磁中心と磁石ホルダ中心を合わせることができ、着磁の偏芯を抑制することができる。
【0091】
本形態では、シールド部193は、中心軸線L方向の高さが径方向の幅より小さい幅広の形状であるため、第1磁石161と第2磁石162の間に必要な間隔を確保できる。また、シールド部193は、第1磁石161と第2磁石162との間に隙間なく配置でき、第1磁石161および第2磁石162と径方向に接している。従って、第1磁石161および第2磁石162とシールド部193とを接触させて位置決めできるため、第1磁石161および第2磁石162の位置決めが容易である。
【0092】
本形態では、磁石組立体15を製造する際、着磁前の第2磁石162を磁石ホルダ19に固定した後、第2磁石162の着磁面162aにN極とS極を周方向に交互に複数着磁する。このように、磁石ホルダ19への取付後に着磁することにより、第2磁石162の磁極位置が第2磁石162の取付時にずれることを回避できる。
【0093】
本形態では、エンコーダホルダ14に設けられた基準面Pと第2磁石162の着磁面162aとが所定の位置関係(例えば、同一面上)に位置するように磁石組立体15が位置決めされて回転軸2に固定される。また、回路基板組13は、エンコーダホルダ14の基準面Pに当接して固定される。従って、エンコーダホルダと磁石ホルダ19の寸法精度が低くても、基準面に対して着磁面162aを精度良く位置決めできるため、磁石16と感磁素子17のギャップを精度良く管理することができる。また治具を単純な形状にすることができるため、安価な治具を使用してエンコーダを組み立てることができる。
【0094】
本形態では、磁石ホルダ19は、回転軸2が配置される軸孔197と、軸孔197を囲む部分を貫通するねじ孔195を備える。また、エンコーダホルダ14は、磁石ホルダ19が配置される磁石配置孔141を囲む胴部140を径方向に貫通する貫通部148を備える。従って、エンコーダホルダ14の高さの範囲内での作業によってエンコーダホルダ14の内周側へアクセスできるため、エンコーダホルダ14の高さの範囲内で磁石ホルダ19の固定作業を行うことができる。従って、固定作業を行うスペースを確保するために、エンコーダ10が大型化することを抑制できる。
【0095】
本形態では、回路基板組13は、基板60に対して磁石16と同じ側に配置される基板ホルダ50を備えており、基板ホルダ50を基準面Pに当接させて、回路基板組13をエンコーダホルダ14に固定する。また、基板ホルダ50に設けられたセンサ基準面であるシールド取付面59に対して第2感磁素子172のセンサ面17aが位置決めされる。例えば、本形態では、センサ面17aとシールド取付面59とが同一面上に配置されるように回路基板組13が組み立てられている。従って、基板ホルダ50に対する第2感磁素子172の位置精度が高いため、基板ホルダ50が当接する基準面Pに対する第2感磁素子172の位置精度が高い。よって、第2磁石162と第2感磁素子172とのギャップGを精度良く管理することができる。

【0096】
(変形例)
(1)上記形態では、回路基板組13が基板60と基板ホルダ50を備えており、第1感磁素子171は基板60に搭載され、第2感磁素子172は基板ホルダ50に固定されてフレキシブル配線基板174によって基板60に接続されているが、回路基板組13は、基板ホルダ50を備えていない構成であってもよい。例えば、第1感磁素子171および第2感磁素子172を基板60に搭載し、エンコーダホルダ14に基板60を当接させて固定する構造を採用してもよい。
【0097】
(2)第2磁石162の着磁を磁石ホルダ19に固定する前に行い、ケガキ線198と着磁分極線M2の周方向の位置が一致しないように第2磁石162の周方向の位置決めを行い、第2磁石162を磁石ホルダ19に固定する製造方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…エンコーダ付きモータ、2…回転軸、3…モータ、4…モータケース、5…エンコーダケーブル、5A…第1部分、5B…第2部分、6…ケーブル側コネクタ、7a…ランド、7…第1貫通孔、8…第2貫通孔、9…ターミナル部材、10…エンコーダ、11…エンコーダケース、12…エンコーダカバー、13…回路基板組、14…エンコーダホルダ、15…磁石組立体、16…磁石、17…感磁素子、18…コネクタ、19…磁石ホルダ、20…ケーブル案内部材、21…案内面、22…円弧面、23…ケーブル通路、24…位置決め孔、41…筒状ケース、42A…第1軸受ホルダ、43…軸受、44…円形凹部、45…フランジ、46…環状壁、47…プレート、48…貫通孔、50…基板ホルダ、51…固定孔、52…ボス部、53…平面部、54…縁部、56…貫通孔、57…段差部、58…貫通孔、59…シールド取付面、60…基板、60a…反出力側基板面、60b…出力側基板面、61…直線部、61A…露出部分、61B…収容部分、62、63…固定孔、64…切り欠き部、65…基板固定ねじ、66…位置決めピン、70…固定部材、80…シールド部材、90…折り曲げ位置、91…固定部、92…腕部、93…長孔、94…第1部分、95…第2部分、96…先端部、100…治具、101…位置決め面、111…端板部、112…側板部、113…配線取り出し部、114…シール部材、115…リブ、116…凸部、117…切り欠き部、118…保持部材、119…エンコーダケーブルホルダ、121…端板部、122…側板部、123…開口部、124…固定孔、125…固定部材、126…防塵部材、127…直線部、128…折り曲げ部、131…位置決め孔、132…固定孔、133…グランドスルーホール、140…胴部、141…磁石配置孔、143…環状面、144…ボス部、145…ホルダ固定ねじ、145A…ターミナル固定ねじ、146…位置決め孔、147…固定孔、148…貫通部、149…切り欠き部、150…脚部、161…第1磁石、161a…着磁面、162…第2磁石、162a…着磁面、171…第1感磁素子、171a…センサ面、172…第2感磁素子、172a…センサ面、173…接続端子、174…フレキシブル配線基板、175…ホール素子、181…差し込み口、182、182a、182b…端子接続部、191…磁石保持部、192…軸部、193…シールド部、193a…先端面、194…ヨーク部、195…ねじ孔、196…止めねじ、197…軸孔、198…ケガキ線、471…切り欠き、621…グランドスルーホール、C…防塵部材の配置領域、G…ギャップ、L…中心軸線、L1…出力側、L2…反出力側、M1…第1磁石の着磁分極線、M2…第2磁石の着磁分極線、P…基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14