(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】廃液濃縮装置及び廃液濃縮方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/02 20230101AFI20230428BHJP
B01D 3/42 20060101ALI20230428BHJP
B01D 3/10 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C02F1/02 F
B01D3/42
B01D3/10
(21)【出願番号】P 2019020871
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 博年
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-259701(JP,A)
【文献】特開2001-276809(JP,A)
【文献】特開平04-045801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/02- 1/18
B01D 1/00- 8/00
B01J 4/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被蒸留処理液が貯留された処理液貯留槽と、
前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の導電率を測定する導電率測定手段と、
前記処理液貯留槽から供給される前記被蒸留処理液を加熱する加熱手段を備えた蒸留釜と、
前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液の液量を検出する液量検出手段と、
前記処理液貯留槽から前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量を調整する調整手段と、
前記蒸留釜内に吸引作用して蒸気を除去し、前記蒸留釜内を減圧する吸引手段と、
制御手段とを備え
、
前記制御手段は、前記処理液貯留槽から前記蒸留釜に供給された前記被蒸留処理液を加熱し、前記蒸留釜内の蒸気を除去して、前記蒸留釜内に供給された前記被蒸留処理液を、前記蒸留釜内の液量が予め定められた目標液量となるまで濃縮する廃液濃縮処理運転を行わせる、廃液濃縮装置であって、
前記制御手段は、
予め定められた前記被蒸留処理液の含水率と前記導電率との相関関係、及び前記導電率測定手段で測定される導電率を基にして、前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の含水率を算出する含水率算出部と、
前記含水率算出部で算出された含水率に基づいて、前記蒸留釜内に供給する前記被蒸留処理液の供給量を、前記液量検出手段により検出される液量が予め定められた
前記目標液量となるまで濃縮した後の前記被蒸留処理液の含水率が予め定められた目標範囲内に収まるような供給量に決定する供給量決定部と、
前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定部で決定された供給量となるように、前記調整手段の作動を制御する調整手段制御部と
を備え、
前記処理液貯留槽から前記蒸留釜内に供給される前記被蒸留処理液の含水率は、予め定められた前記目標範囲内の含水率よりも高く設定されており、
前記制御手段は、前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定部で決定された供給量になり且つ前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液が前記目標液量になると前記廃液濃縮処理運転を終了させ、その後、前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液を排出する濃縮液回収処理を実行させる、廃液濃縮装置。
【請求項2】
前記目標範囲は、60%~70%である請求項1に記載の廃液濃縮装置。
【請求項3】
処理液貯留槽から蒸留釜に供給された被蒸留処理液を加熱し、前記蒸留釜内の蒸気を除去して、前記蒸留釜内に供給された前記被蒸留処理液を、前記蒸留釜内の液量が予め定められた目標液量となるまで濃縮する
廃液濃縮処理運転を行う、廃液濃縮方法であって、
前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の導電率を測定する導電率測定工程と、
予め定められた前記被蒸留処理液の含水率と前記導電率との相関関係、及び前記導電率測定工程で測定された導電率を基にして、前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の含水率を算出する含水率算出工程と、
前記含水率算出工程で算出した含水率に基づいて、前記蒸留釜内に供給する前記被蒸留処理液の供給量を、前記蒸留釜内の液量が前記目標液量となるまで濃縮した後の前記被蒸留処理液の含水率が予め定められた目標範囲内に収まるような供給量に決定する供給量決定工程と、
前記蒸留釜へ前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定工程で決定された供給量となるように、前記蒸留釜へ前記被蒸留処理液を供給する供給工程とを行
い、
前記処理液貯留槽から前記蒸留釜内に供給される前記被蒸留処理液の含水率は、予め定められた前記目標範囲内の含水率よりも高く設定されており、
前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定工程で決定された供給量になり且つ前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液が前記目標液量になると前記廃液濃縮処理運転を終了し、その後、前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液を排出する濃縮液回収処理を実行する、廃液濃縮方法。
【請求項4】
前記目標範囲は、60%~70%である請求項3に記載の廃液濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液を加熱して蒸留対象成分を蒸発させ、廃液を濃縮する廃液濃縮装置及び廃液濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃液濃縮装置は、例えば、水分を含む廃液から水分を蒸留液として蒸留分離処理して廃液を濃縮し、廃棄量を減量化したり、廃液中の溶剤を再利用したりする用途で用いられるものである。
【0003】
この種の廃液濃縮装置は、蒸留釜に貯留されている被蒸留処理液(廃液)を加熱手段により加熱するとともに、蒸留釜内に吸引手段を吸引作用させることにより、被蒸留処理液中に含まれる蒸留分離対象成分を蒸発させて、その蒸留分離対象成分の蒸気を濃縮器において液化させ、蒸留分離対象成分を蒸留液として分離し、蒸留釜内の被蒸留処理液を濃縮するようになっている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1記載の装置には、ユーザにより廃棄された被蒸留処理液を一時的に貯留する処理液貯留槽が設けられており、この装置では、処理液貯留槽から蒸留釜へと被蒸留処理液が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような廃液濃縮装置を用いた廃液濃縮処理においては、蒸留釜内の被蒸留処理液の含水率が低くなり過ぎて流動性が悪くなるのを防止するとともに、廃棄量の減量化を図るために、蒸留釜内の濃縮後の被蒸留処理液の含水率を適度な範囲内に収めることが求められる。
【0006】
濃縮後の被蒸留処理液の含水率を適度な範囲内に収める方法の一つとしては、蒸留釜内の被蒸留処理液の含水率を逐次測定し、含水率が所定範囲内に収まっているかを確認する方法が考えられる。しかしながら、廃液濃縮処理中においては、蒸留釜の内部を減圧する必要があるため、気密性を確保しつつ蒸留釜内の被蒸留処理液の含水率を測定することは技術上容易ではなく、また、被蒸留処理液が高温に加熱された状態であることから、含水率を精度良く測定することも技術上困難である。
【0007】
そこで、現状では、処理液貯留槽に貯留された被蒸留処理液の含水率をある所定の含水率であると一律に仮定し、仮定した含水率を基にして、濃縮後の被蒸留処理液の含水率が適度な範囲内に収まるような濃縮倍率となるように、蒸留釜へ供給する被蒸留処理液の量を変えて廃液濃縮処理を行っている。
【0008】
しかしながら、ユーザの元で発生する被蒸留処理液の含水率は、被蒸留処理液を発生させることになった処理の内容に応じて変化するものであるから、処理液貯留槽に貯留された被蒸留処理液の含水率も常に同じであるとは限らない。そのため、処理液貯留槽内の被蒸留処理液の含水率をある所定の含水率であると一律に仮定していたのでは、濃縮後の被蒸留処理液の実際の含水率が適度な範囲内に収まらない場合も生じ得る。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、処理液貯留槽内の被蒸留処理液の含水率を迅速且つ簡便に取得でき、取得した含水率を基にして、濃縮後の含水率が所定の目標範囲に収まるように、被蒸留処理液を濃縮できる廃液濃縮装置及び廃液濃縮方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る廃液濃縮装置の特徴構成は、
被蒸留処理液が貯留された処理液貯留槽と、
前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の導電率を測定する導電率測定手段と、
前記処理液貯留槽から供給される前記被蒸留処理液を加熱する加熱手段を備えた蒸留釜と、
前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液の液量を検出する液量検出手段と、
前記処理液貯留槽から前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量を調整する調整手段と、
前記蒸留釜内に吸引作用して蒸気を除去し、前記蒸留釜内を減圧する吸引手段と、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記処理液貯留槽から前記蒸留釜に供給された前記被蒸留処理液を加熱し、前記蒸留釜内の蒸気を除去して、前記蒸留釜内に供給された前記被蒸留処理液を、前記蒸留釜内の液量が予め定められた目標液量となるまで濃縮する廃液濃縮処理運転を行わせる、廃液濃縮装置であって、
前記制御手段は、
予め定められた前記被蒸留処理液の含水率と前記導電率との相関関係、及び前記導電率測定手段で測定される導電率を基にして、前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の含水率を算出する含水率算出部と、
前記含水率算出部で算出された含水率に基づいて、前記蒸留釜内に供給する前記被蒸留処理液の供給量を、前記液量検出手段により検出される液量が予め定められた前記目標液量となるまで濃縮した後の前記被蒸留処理液の含水率が予め定められた目標範囲内に収まるような供給量に決定する供給量決定部と、
前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定部で決定された供給量となるように、前記調整手段の作動を制御する調整手段制御部とを備え、
前記処理液貯留槽から前記蒸留釜内に供給される前記被蒸留処理液の含水率は、予め定められた前記目標範囲内の含水率よりも高く設定されており、
前記制御手段は、前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定部で決定された供給量になり且つ前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液が前記目標液量になると前記廃液濃縮処理運転を終了させ、その後、前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液を排出する濃縮液回収処理を実行させる点にある。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る廃液濃縮方法の特徴構成は、
処理液貯留槽から蒸留釜に供給された被蒸留処理液を加熱し、前記蒸留釜内の蒸気を除去して、前記蒸留釜内に供給された前記被蒸留処理液を、前記蒸留釜内の液量が予め定められた目標液量となるまで濃縮する廃液濃縮処理運転を行う、廃液濃縮方法であって、
前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の導電率を測定する導電率測定工程と、
予め定められた前記被蒸留処理液の含水率と前記導電率との相関関係、及び前記導電率測定工程で測定された導電率を基にして、前記処理液貯留槽内の前記被蒸留処理液の含水率を算出する含水率算出工程と、
前記含水率算出工程で算出した含水率に基づいて、前記蒸留釜内に供給する前記被蒸留処理液の供給量を、前記蒸留釜内の液量が前記目標液量となるまで濃縮した後の前記被蒸留処理液の含水率が予め定められた目標範囲内に収まるような供給量に決定する供給量決定工程と、
前記蒸留釜へ前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定工程で決定された供給量となるように、前記蒸留釜へ前記被蒸留処理液を供給する供給工程とを行い、
前記処理液貯留槽から前記蒸留釜内に供給される前記被蒸留処理液の含水率は、予め定められた前記目標範囲内の含水率よりも高く設定されており、
前記蒸留釜への前記被蒸留処理液の供給量が前記供給量決定工程で決定された供給量になり且つ前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液が前記目標液量になると前記廃液濃縮処理運転を終了し、その後、前記蒸留釜内の前記被蒸留処理液を排出する濃縮液回収処理を実行する点にある。
【0012】
上記両特徴構成によれば、処理液貯留槽内の被蒸留処理液の導電率を測定し、予め定められた被蒸留処理液の含水率と導電率との相関関係、及び測定した導電率を基にして、処理液貯留槽内の被蒸留処理液の含水率を算出することができる。
そして、このようにして取得(算出)した含水率に基づいて、蒸留釜内の被蒸留処理液を、予め定められた目標液量となるまで濃縮した後の被蒸留処理液の含水率が目標範囲内に収まるような供給量を、蒸留釜へ供給する被蒸留処理液の供給量として決定し、処理液貯留槽から蒸留釜へと決定した供給量の被蒸留処理液を供給することができる。
【0013】
このように、被蒸留処理液の含水量を迅速且つ容易に取得でき、この取得した被蒸留処理液の含水率を基に濃縮後の被蒸留処理液の含水率が目標範囲内に収まるような供給量の被蒸留処理液を蒸留釜へと供給して廃液濃縮処理を行うことができる。したがって、従来のように、処理液貯留槽の含水率をある所定の含水率であると一律に仮定する場合とは異なり、濃縮後の被蒸留処理液の実際の含水率が目標範囲内に収まらないという問題が生じ難い。
【0014】
尚、本願において、「被蒸留処理液」とは、水分を含み、導電率と含水率との間に相関関係がある溶液をいうものとする。
【0015】
また、本発明に係る廃液濃縮装置の更なる特徴構成は、前記目標範囲は、60%~70%である点にある。
同様に、本発明に係る廃液濃縮方法の更なる特徴構成は、前記目標範囲は、60%~70%である点にある。
【0016】
濃縮後の被蒸留処理液の含水率が70%を超えるような供給量を被蒸留処理液の供給量とした場合には廃棄量の減量化が図れなくなり、60%を下回るような供給量を被蒸留処理液の供給量とした場合には、廃液濃縮処理を行っている最中に被蒸留処理液の流動性が低下し、蒸留分離対象成分が蒸発し難くなる。したがって、濃縮後の被蒸留処理液の含水率が60%~70%となるような供給量を被蒸留処理液の供給量として決定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る廃液濃縮装置の概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る廃液濃縮装置の制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係る廃液濃縮装置を用いて、被蒸留処理液を濃縮する一連のフローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る廃液濃縮装置及び廃液濃縮方法について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態における廃液濃縮装置Cは、被蒸留処理液Sが貯留された処理液貯留槽1や、処理液貯留槽1内の被蒸留処理液Sの導電率を測定する導電率センサ2(導電率測定手段)、処理液貯留槽1から供給される被蒸留処理液Sを加熱する加熱部K(加熱手段)を備えた蒸留釜3、当該蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液面レベルを検出する液面レベルセンサ8、処理液貯留槽1から蒸留釜3への被蒸留処理液Sの供給量を調整するための処理液供給用電磁弁V1(調整手段)、蒸留釜3に接続される蒸気排出路L1に吸引作用して蒸留釜3内を減圧する吸引装置30(吸引手段)、廃液濃縮装置Cの運転を制御する制御装置40(制御手段)などを備えるとともに、蒸気排出路L1を通して流動する蒸気からミストを蒸気との比重差により分離する気液分離部15、蒸気排出路L1に外気を導入する外気導入手段I、蒸気排出路L1を流通する蒸気を冷却水による冷却により液化する凝縮手段20や、当該凝縮手段20にて凝縮された蒸留液を貯留するバッファタンク25、蒸留釜3に消泡剤を供給する消泡剤供給手段D、制御装置40に各種制御情報を送信する操作盤55などを備えている。
【0020】
処理液貯留槽1は、有底円筒状の容器であり、所定の処理を行ったことによってユーザの元で発生した被蒸留処理液Sが貯留されている。
【0021】
導電率センサ2は、ヘッド部が処理液貯留槽1内に貯留された被蒸留処理液Sの液面よりも下方に位置するように配設されており、被蒸留処理液Sの導電率を検出し、検出情報を制御装置40に送信するように構成されている。
【0022】
蒸留釜3は、有底円筒状の釜本体部3aと、当該釜本体部3aの開口部を閉じる釜蓋体3bとを備えており、釜本体部3aの軸心が上下方向を向く姿勢で配置されている。また、釜本体部3aの上部には、一端が処理液貯留槽1に接続された処理液供給路L2の他端が連通接続されており、処理液供給路L2には、蒸留釜3への被蒸留処理液Sの供給を断続して供給量を調整するための処理液供給用電磁弁V1が設けられている。更に、釜本体部3aの底部には、濃縮液排出路L3が接続されており、当該濃縮液排出路L3には、蒸留釜3内で濃縮された被蒸留処理液Sを強制的に排出する濃縮液排出用ポンプ4、及び濃縮液排出路L3を開閉する濃縮液排出用電磁弁V2が設けられている。
【0023】
加熱部Kは、蒸留釜3内に設けられて温水を流通させるコイル状加熱管5と、蒸留釜3の外周を全周にわたって囲むジャケット状に設けられて温水を流通させる加熱ジャケット6とからなる。
【0024】
コイル状加熱管5は、ステンレス鋼で形成されており、各巻き部の径が略一定なコイル状部5aと、コイル状部5aの一端から蒸留釜3内側に向けて水平に延びた後、蒸留釜3の上側に向けてコイル状部5aの軸心方向に沿って延びる供給側直管状部5bと、コイル状部5aの他端からその軸心方向に沿ってコイル状部5aの存在側とは反対側、即ち、供給側直管状部5bと同方向に延びる排出側直管状部5cとからなる。このコイル状加熱管5においては、温水を供給側直管状部5bから供給して、コイル状部5aを上向きに流通させて、排出側直管状部5cから排出させる形態で温水が流通する。
【0025】
加熱ジャケット6は、蒸留釜3の釜本体部3aの外周に螺旋状に巻き付けられた螺旋状案内体6aと、螺旋状案内体6aに当接した状態で、蒸留釜3の釜本体部3aの円筒状周壁の外周をその全周及び長手方向の略全長にわたって囲むように設けられたジャケット形成体6bとからなり、ジャケット形成体6bには、その下端部に、加熱ジャケット6に温水を供給するためのジャケット供給口6cが設けられ、上端部に、加熱ジャケット6から温水を排出させるためのジャケット排出口6dが設けられている。この加熱ジャケット6においては、温水をジャケット供給口6cから供給し、螺旋状案内体6aの案内にて上向きに螺旋状に通流させて、ジャケット排出口6dから排出させる形態で温水が流通する。
【0026】
また、本実施形態の加熱部Kでは、温水供給源7から温水が供給される温水供給路L4が、コイル状加熱管5の供給側直管状部5b及び加熱ジャケット6のジャケット供給口6cに並列接続されるとともに、温水供給源7に温水を回収するための温水回収路L5が、コイル状加熱管5の排出側直管状部5c及び加熱ジャケット6のジャケット排出口6dに並列接続されている。尚、温水供給路L4には、コイル状加熱管5及び加熱ジャケット6への温水の供給を断続する温水供給用電磁弁V3が設けられている。
【0027】
斯くして、本実施形態においては、温水供給源7から供給される温水がコイル状加熱管5及び加熱ジャケット6に流通して、蒸留釜3及び蒸留釜3内に供給された被蒸留処理液Sを加熱し、コイル状加熱管5及び加熱ジャケット6を流通した温水が温水供給源7に回収される。
【0028】
次に、液面レベルセンサ8について説明する。この液面レベルセンサ8は、蒸留釜3内に供給された被蒸留処理液Sの液面レベルを検出し、検出情報を制御装置40に送信する。詳細は後述するが、制御装置40の液量算出部44では、この液面レベルセンサ8から送信された検出情報を基に液量が算出されるようになっており、液面レベルセンサ8と液量算出部44とが液量検出手段として機能する。
【0029】
蒸気排出路L1は、蒸留釜3の上端部に接続されており、当該蒸気排出路L1の途中には、蒸留釜3側から順に、気液分離部15、凝縮手段20、バッファタンク25、吸引装置30が設けられている。また、蒸気排出路L1における凝縮手段20とバッファタンク25との間の箇所、及び、バッファタンク25と吸引装置30の真空ポンプ31との間の箇所にはそれぞれ逆止弁CVが設けられ、外気導入手段Iは、蒸気排出路L1における気液分離部15と凝縮手段20との間の箇所から蒸気排出路L1に外気を導入するように設けられている。
【0030】
気液分離部15は、その全体が蒸留釜3における蒸気排出路L1の接続位置よりも上方に位置し且つ気液分離部15にて分離されたミストが液状になった液分が自重により蒸留釜3に戻るように設けられている。具体的に、気液分離部15は、軸心方向を上下方向に向けて配置された概ね円筒状の箱体であり、蒸留釜3で発生した蒸気が下部から流入して上部から流出するように蒸気排出路L1の途中に設けられており、分離されたミストが液状になった液分を気液分離部15の下部から蒸留釜3に戻すことができるようになっている。
【0031】
また、蒸気排出路L1における蒸留釜3と気液分離部15との間には、蒸留釜3内にて発生した被蒸留処理液Sの泡の存在を検出するための泡検出用光センサ16が設けられている。この泡検出用光センサ16は、発光部と受光部との間に設定された検出域に、蒸留釜3内で発生した泡が流動してきた場合に、受光部の受光量が減少することに基づいて、泡の存在を検出するように構成されており、検出情報を制御装置40に送信する。
【0032】
外気導入手段Iは、蒸気排出路L1における気液分離部15と凝縮手段20との間の箇所から分岐された外気導入路L6と、当該外気導入路L6を開閉する外気導入用電磁弁V4とから構成されている。尚、外気導入路L6との接続箇所よりも凝縮手段20側の蒸気排出路L1には、蒸気排出路用電磁弁V5が設けられている。詳細は後述するが、制御装置40の電磁弁制御部48により、蒸気排出路用電磁弁V5を閉じ且つ外気導入用電磁弁V4を開弁することにより、外気導入路L6を通じて外気を蒸気排出路L1に導入するとともに、導入外気を凝縮手段20側に向かって流れるのを阻止して、蒸留釜3側に向かってのみ流すことができるようになっている。
【0033】
凝縮手段20は、蒸気排出路L1を流通する蒸気を冷却水で冷却する蒸気用熱交換器21と、蒸気用熱交換器21に冷却水を供給する冷却水供給源22とからなり、冷却水供給源22から冷却水が供給される冷却水供給路L7が、蒸気用熱交換器21に接続されるとともに、冷却水供給源22に冷却水を回収するための冷却水回収路L8が、蒸気用熱交換器21に接続されている。
【0034】
バッファタンク25は、上部に気相部を形成する状態で蒸留液を貯留するように構成されており、当該バッファタンク25の気相部には、蒸気排出路L1が接続されている。また、バッファタンク25の下端には、蒸留液排出路L9が接続されており、当該蒸留液排出路L9には、蒸留液を排出するための蒸留液排出用ポンプ26、及び蒸留液排出路L9を開閉する蒸留液排出用電磁弁V6が設けられている。更に、バッファタンク25には、貯留される蒸留液の液面を検出する液面レベルセンサ27が設けられており、液面レベルセンサ27は、検出情報を制御装置40に送信するように構成されている。
【0035】
吸引装置30は、所謂水封式ポンプであって、蒸気排出路L1によってバッファタンク25の気相部に接続された真空ポンプ31と、蓋付有底の円筒状容器であり、真空ポンプ31から送られる気液混合物を液体と気体とに分離するセパレータとして役割を担う封水タンク32と、封水を冷却するための封水用熱交換器33とから構成されている。封水タンク32の下部には、一端が真空ポンプ31に接続された気液排出路L10が接続され、封水タンク32の上部には、一端が封水用熱交換器33を介して真空ポンプ31に接続された封水供給路L11が接続されている。尚、真空ポンプ31から送られた気液混合物中の気体成分は、封水タンク32における封水供給路L11の接続部よりも上側から排気されるようになっている。また、封水用熱交換器33には、冷却水供給路L7及び冷却水回収路L8がそれぞれ接続されており、冷却水供給源22から冷却水が供給されるとともに、供給された冷却水が冷却水供給源22に回収されるようになっている。
【0036】
したがって、本実施形態に係る廃液濃縮装置Cにおいては、処理液供給用電磁弁V1が開状態にある場合、蒸留釜3内が真空ポンプ31により減圧されることによる吸引力により、処理液供給路L2を通じて、処理液貯留槽1に貯留されている被蒸留処理液Sが蒸留釜3に供給される。尚、詳細については後述するが、本実施形態においては、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sが、所定の上限限界液量と所定の下限限界液量との間の液量となるように、制御装置40の電磁弁制御部48によって処理液供給用電磁弁V1の開閉状態が制御されるようになっている。
【0037】
消泡剤供給手段Dは、シリコン系消泡剤等の消泡剤が貯留された消泡剤タンク35と、当該消泡剤タンク35と蒸留釜3とを接続する消泡剤供給路L12と、消泡剤供給路L12を開閉する消泡剤供給用電磁弁V7と、消泡剤供給路L12を通じて消泡剤タンク35内の消泡剤を蒸留釜3に圧送する消泡剤供給用ポンプ36とからなる。この消泡剤供給手段Dによれば、制御装置40からの適宜指令に応じて、所定の設定時間の間、消泡剤供給用電磁弁V7が開状態となり、且つ、所定回転速度にて消泡剤供給用ポンプ36が作動することで、所定量の消泡剤が蒸留釜3内に供給される。
【0038】
次に、制御装置40について説明する。
図2に示すように、制御装置40は、入力受付部41、情報取得部42、含水率算出部43、液量算出部44、液量判定部45、供給量決定部46、供給回数決定部47、電磁弁制御部48(調整手段制御部)及びポンプ制御部49を備えるとともに、各種情報が記憶される記憶部50を備えている。
【0039】
入力受付部41は、操作盤55からの入力を受け付ける機能部であり、例えば、ユーザが廃液濃縮処理を開始するための所定の操作を操作盤55に対して行った場合に、操作盤55からの入力として運転開始指令を受け付ける。
【0040】
情報取得部42は、導電率センサ2、液面レベルセンサ8,27及び泡検出用光センサ16から送信される検出情報を取得する機能部である。
【0041】
含水率算出部43は、処理液貯留槽1内の被蒸留処理液Sの含水率を算出する機能部である。具体的に、含水率算出部43は、情報取得部42で取得された導電率センサ2の検出情報たる導電率、及び予め定められた被蒸留処理液Sの含水率と導電率との相関関係を基にして、処理液貯留槽1内に貯留されている被蒸留処理液Sの含水率を算出する。尚、被蒸留処理液Sの含水率と導電率との相関関係は、被蒸留処理液となる希釈前の溶液を所定の倍率で希釈してその都度導電率を測定し、縦軸を含水率、横軸を導電率として、測定結果をプロットすることで予め得られるものである。
【0042】
液量算出部44は、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量を算出する機能部である。具体的に、液量算出部44は、情報取得部42で取得された液面レベルセンサ8の検出情報たる蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液面レベル、及び記憶部50に記憶されている、液面レベルと液量との対応関係を基にして、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量を算出する。尚、液面レベルと液量との対応関係については、蒸留釜3の形状を基に予め決定されるものである。
【0043】
液量判定部45は、液量算出部44で算出された液量が上記上限限界液量又は下限限界液量であるか否かを判定する機能部である。
【0044】
供給量決定部46は、処理液貯留槽1から蒸留釜3へと供給すべき被蒸留処理液Sの供給量を決定する機能部である。具体的に、供給量決定部46は、含水率算出部43で算出された含水率に基づいて、蒸留釜3内に供給する被蒸留処理液Sの供給量を決定する。供給量の決定に際しては、液量算出部44で算出される液量が予め定められた目標液量(本実施形態においては、液面レベルセンサ8の検出結果が下限限界液面となる下限限界液量)となるまで濃縮した後の蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの含水率が予め定められた目標範囲内に収まるような供給量を決定する。尚、目標範囲は、例えば、60%~70%である。
【0045】
供給回数決定部47は、処理液貯留槽1から蒸留釜3への被蒸留処理液Sの供給回数を決定する機能部である。具体的に、本実施形態においては、供給量決定部46で決定された供給量から上記上限限界液量を引いた残りの供給量を、最終的に蒸留釜3内に決定された供給量が供給されるように、所定量ずつ複数回に分けて供給するための供給回数を決定する。例えば、供給量決定部46で決定された供給量がXL、上限限界液量がXmaxL、下限限界液量XminLである場合、供給回数は、(X-Xmax)/(Xmax-Xmin)となり、より具体的な例としては、決定された供給量Xが300L、上限限界液量Xmaxが50L、下限限界液量Xminが45Lである場合、供給回数は50回となる。
【0046】
電磁弁制御部48は、各電磁弁V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7の開閉状態を制御する機能部であり、ポンプ制御部49は、各ポンプ4,26,31,36の作動を制御する機能部である。
【0047】
具体的に、本実施形態に係る廃液濃縮装置Cにより廃液濃縮処理運転を行う場合、濃縮液排出用電磁弁V2を閉弁した状態で、温水供給用電磁弁V3、処理液供給用電磁弁V1及び蒸気排出路用電磁弁V5を開弁した状態となるように、電磁弁制御部48が各電磁弁V1,V2,V3,V5の開閉状態を制御するとともに、濃縮液排出用ポンプ4が停止した状態で、真空ポンプ31が作動した状態となるように、ポンプ制御部49が各ポンプ4,31の作動を制御する。
【0048】
これにより、蒸留釜3内が減圧され、その減圧による吸引力により、処理液供給路L2を通じて、蒸留釜3内に被蒸留処理液Sが供給されるとともに、加熱ジャケット6、コイル状加熱管5に温水が通流されて、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sが加熱される。そして、蒸留釜3内が減圧されるとともに、被蒸留処理液Sが加熱されることで、被蒸留処理液Sから蒸留分離対象成分(即ち、水)が蒸発して、その水の蒸気が気液分離部15にてミストが除去されながら蒸気排出路L1を通流し、その蒸気排出路L1を通流する水の蒸気が凝縮手段20にて冷却水により冷却されて液化し、この液化した蒸留液がバッファタンク25内に貯留され、被蒸留処理液Sから水が蒸留分離されて蒸留釜3内の被蒸留処理液Sが濃縮されることになる。
【0049】
また、廃液濃縮処理運転中において、電磁弁制御部48は、液量判定部45での判定結果を基に、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量を上限限界液量と下限限界液量との間の範囲に維持するように、処理液供給用電磁弁V1の開閉状態を制御する。即ち、電磁弁制御部48は、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が上限限界液量であると液量判定部45で判定された場合、処理液供給用電磁弁V1を閉弁にし、一方、水の蒸発によって蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が減少した結果、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が下限限界液量であると判定された場合、処理液供給用電磁弁V1を開弁する。
【0050】
更に、電磁弁制御部48及びポンプ制御部49は、バッファタンク25に設けられた液面レベルセンサ27での検出情報に基づいて、バッファタンク25における蒸留液の貯留レベルを所定の設定範囲内に維持するように、蒸留液排出用電磁弁V6の開閉状態及び蒸留液排出用ポンプ26の作動状態を制御する。即ち、バッファタンク25の貯留レベルが上限値を超えると、蒸留液排出用電磁弁V6が開弁され、且つ、蒸留液排出用ポンプ26が作動されて、バッファタンク25から蒸留液が排出され、その排出に伴って、バッファタンク25の貯留レベルが下限値に達すると、蒸留液排出用電磁弁V6が開弁され、且つ、蒸留液排出用ポンプ26が停止されて、バッファタンク25からの蒸留液の排出が停止される。
【0051】
また、電磁弁制御部48は、処理液貯留槽1から蒸留釜3への被蒸留処理液Sの供給回数が、供給回数決定部47で決定された回数に達し、且つ蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が下限限界液量となった場合に、温水供給用電磁弁V3を閉弁した状態となるように、温水供給用電磁弁V3の開閉状態を制御する。更に、ポンプ制御部49は、温水供給用電磁弁V3が閉弁した状態となった後、所定時間経過した時点で、真空ポンプ31が停止した状態となるように、ポンプ制御部49が真空ポンプ31の作動を制御する。
【0052】
また、廃液濃縮処理運転終了後に、蒸留釜3内で濃縮された被蒸留処理液Sを回収する場合には、濃縮液排出用電磁弁V2を開弁した状態となるように電磁弁制御部48が濃縮液排出用電磁弁V2の開閉状態を制御するとともに、濃縮液排出用ポンプ4を作動した状態となるようにポンプ制御部49が濃縮液排出用ポンプ4の作動を制御する。これにより、蒸留釜3内から濃縮液が強制的に排出される。尚、濃縮液の回収は、ユーザが操作盤55を操作することで、濃縮液回収処理運転が行われるようにしても良いし、廃液濃縮処理運転の終期を検出する手段を設け、廃液濃縮処理運転が終期に達した時点で、自動的に濃縮液回収処理運転が行われるようにしても良い。
【0053】
記憶部50は、含水率算出部43での処理に用いられる被蒸留処理液Sの含水率と導電率との相関関係や、液量算出部44での処理に用いられる液面レベルと液量との対応関係、情報取得部42で取得される各種検出情報などが記憶される機能部である。
【0054】
次に、以上の構成を備えた廃液濃縮装置Cにおける廃液濃縮処理の一連のフローについて、
図3を参照しつつ説明する。
【0055】
まず、工程#10において、入力受付部41が運転開始指令を受け付けた場合には、工程#11へ移行し、運転開始指令を受け付けていない場合には、工程#10を繰り返す。
【0056】
次に、工程#11において、導電率センサ2が処理液貯留槽1内の被蒸留処理液Sの導電率を検出し(導電率測定工程)、情報取得部42が導電率センサ2から送信される検出情報を取得し、含水率算出部43が処理液貯留槽1内に貯留されている被蒸留処理液Sの含水率を算出し(含水率算出工程)、工程#12へ移行する。
【0057】
工程#12において、供給量決定部46が含水率算出部43で算出された含水率に基づいて、蒸留釜3内に供給すべき被蒸留処理液Sの供給量を決定し(供給量決定工程)、工程#13へ移行する。
【0058】
ついで、工程#13において、供給回数決定部47が処理液貯留槽1から蒸留釜3への被蒸留処理液Sの供給回数を決定し、工程#14へ移行する。
【0059】
そして、工程#14において、電磁弁制御部48及びポンプ制御部49が上記各電磁弁V1,V2,V3,V5の開閉状態を制御するとともに、各ポンプ4,31の作動を制御することで、廃液濃縮処理運転を開始し、工程#15へ移行する。
【0060】
次に、工程#15において、液量判定部45が蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が上限限界液量に到達したか否かを判定し、到達した場合には工程#16へ移行し、到達していない場合には工程#15を繰り返す。
【0061】
工程#16では、電磁弁制御部48が処理液供給用電磁弁V1を閉弁した状態となるように当該処理液供給用電磁弁V1の開閉状態を制御し、工程#17へ移行する。
【0062】
ついで、工程#17において、液量判定部45が蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が下限限界液量に到達したか否かを判定し、到達した場合には工程#18へ移行し、到達していない場合には工程#17を繰り返す。
【0063】
工程#18では、処理液貯留槽1から蒸留釜3への被蒸留処理液Sの供給回数が、供給回数決定部47で決定された供給回数に達したか否かを判定し、達している場合には工程#20へ移行し、達していない場合には工程#19へ移行し、工程#19において、電磁弁制御部48が処理液供給用電磁弁V1を開弁した状態となるように当該処理液供給用電磁弁V1の開閉状態を制御し、工程#15に戻る。このように、供給回数決定部47で決定された供給回数となるまで工程#15から工程#19を繰り返す工程が供給工程に相当する。尚、被蒸留処理液Sの供給回数が供給回数決定部47で決定された供給回数に達したか否かは、例えば、電磁弁制御部48が廃液濃縮処理運転を開始してから終了するまでの間の処理液供給用電磁弁V1の積算開弁回数をカウントするように構成され、電磁弁制御部48が現時点での積算開弁回数を基に判断できる。
【0064】
そして、工程#20において、電磁弁制御部48が温水供給用電磁弁V3を閉弁した状態となるように当該温水供給用電磁弁V3の開閉状態を制御するとともに、ポンプ制御部49が真空ポンプ31を停止した状態となるように、当該真空ポンプ31の作動を制御することで、廃液濃縮処理運転を停止する。
【0065】
このように、本実施形態に係る廃液濃縮装置Cによれば、処理液貯留槽1に貯留された被蒸留処理液Sの導電率を基に、当該被蒸留処理液Sの含水率を迅速且つ容易に取得することができ、この取得した被蒸留処理液Sの含水率を基に、蒸留釜3内の濃縮後の被蒸留処理液Sの含水率が目標範囲内に収まるような供給量の被蒸留処理液Sを蒸留釜3へと供給して廃液濃縮処理を行うことができる。よって、従来のように、処理液貯留槽1の含水率をある所定の含水率であると一律に仮定する場合とは異なり、濃縮後の被蒸留処理液Sの実際の含水率が目標範囲内に収まらないという問題が生じ難い。
【0066】
〔別実施形態〕
〔1〕上記実施形態においては、供給量決定部46で決定した量の被蒸留処理液Sを蒸留釜3内に供給するために、制御装置40の供給回数決定部47によって被蒸留処理液Sの供給回数を決定し、この決定された供給回数だけ処理液貯留槽1から蒸留釜3へ被蒸留処理液Sを供給するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、処理液貯留槽1から蒸留釜3へ供給される被蒸留処理液Sの量を計測する手段を設け、供給量を計測しながら、総供給量が決定した供給量となるように被蒸留処理液Sを供給するようにしても良い。尚、この場合、必ずしも上限限界液量に到達した時点で被蒸留処理液Sの供給を停止し、下限限界液量に到達した時点で被蒸留処理液Sの供給を開始する必要はなく、蒸留釜3内の被蒸留処理液Sの液量が上限限界液量と下限限界液量との間の範囲に維持するようにすればよい。
【0067】
〔2〕上記実施形態では、廃液濃縮処理運転の開始前に、処理液貯留槽1内の被蒸留処理液Sの導電率を測定するとともに、測定した導電率を基に供給量を決定し、この決定した供給量となるように被蒸留処理液Sを蒸留釜3内に供給して被蒸留処理液Sを濃縮する場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、廃液濃縮処理運転中に処理液貯留槽1内の被蒸留処理液Sの導電率を測定し、測定した導電率を基に供給量を再度決定するようにすれば、再度決定した供給量から導電率測定時までの総供給量を差し引いた分を、その後に供給することで、廃液濃縮処理運転中に処理液貯留槽1内の被蒸留処理液Sの含水率が変化した場合であっても、濃縮後の被蒸留処理液Sの実際の含水率が目標範囲内に収まらないという問題を生じ難くできる。
【0068】
〔3〕上記実施形態(別実施形態を含む)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、水分を含有する被蒸留処理液を濃縮する廃液濃縮装置に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 処理液貯留槽
2 導電率センサ(導電率測定手段)
3 蒸留釜
8 液面レベルセンサ(液量検出手段)
30 吸引装置(吸引手段)
40 制御装置(制御手段)
43 含水率算出部
44 液量算出部44(液量検出手段)
45 供給量決定部
48 電磁弁制御部(調整手段制御部)
K 加熱部(加熱手段)
V1 処理液供給用電磁弁(調整手段)