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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】組積造建物の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
E04G23/02 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019029767
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133295
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】藤村 太史郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井之上 太
(72)【発明者】
【氏名】杉江 夏呼
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-324341(JP,A)
【文献】特開2012-026200(JP,A)
【文献】特開平09-273246(JP,A)
【文献】特開昭56-055646(JP,A)
【文献】実開昭61-173617(JP,U)
【文献】特開昭54-010514(JP,A)
【文献】特開2011-149265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 2/02
E04B 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の断面内部に設置された緊張材でプレストレスが付与される組積造建物の補強構造であって、
前記緊張材の上端部は、壁体の上部に設けられたコンクリート造の臥梁に定着されており、
前記壁体が直交する部分において、互いに直交する壁体同士をつなぐ平面視ひし形の平面ブレースが、前記臥梁に掛け渡されており、
前記臥梁の主筋は、肋筋の縦材に沿って配されていることを特徴とする組積造建物の補強構造。
【請求項2】
互いに平行する前記臥梁同士をつなぐ梁材が掛け渡されていることを特徴とする請求項1に記載の組積造建物の補強構造。
【請求項3】
前記緊張材は、付着力によって前記臥梁に定着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の組積造建物の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の補強に係り、特にレンガやブロック等を主体として構成される組積造建物の補強に好適な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
明治以降に建造されたレンガ造建物に代表される歴史的な組積造の構造物を、文化財として保存したり、新たな用途に供するために改修する場合がある。しかし、現在の耐震基準に従うと多くの組積造建物が既存不適格との診断になるため、再利用するためにはレンガ壁を耐震補強して耐力を高める必要がある。
【0003】
特許文献1には、既存の組積造建物の耐力とじん性を高めるために、上方から壁体断面を貫通して下端部が地盤中にグラウト固定された鋼棒に、緊張力を付与することによって圧縮力を付与し、組積造壁体のせん断抵抗と面外曲げに対する抵抗を高める方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2、3には、レンガ壁の上端と下端との間に貫通孔を形成し、その中に挿通した複数のPC鋼棒を壁体の上部から緊張することによって、レンガ壁の上端と下端との間に圧縮力を付与する補強法が提案されている。ここでは、既設のレンガ壁の基礎部分に形成した横穴からPC鋼棒の下端部に定着板を取り付けた後に、横穴に早強コンクリートを充填し、これが硬化した後にPC鋼棒を緊張して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭54-010514号公報
【文献】特開2010-281033号公報
【文献】特開2010-281034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されているような技術を用いれば、確かにレンガ壁の耐力を高めることができると考えられる。しかし、上述した特許文献に開示されている技術は、いずれも、レンガ壁の面内方向への耐力向上や、壁を構成するレンガがズレることに対する耐力の向上を図るものである。このため、レンガ壁の面外方向に対する耐力の向上については、充分な考慮がされていない。
【0007】
そこで本発明では、壁の面外方向への力に対する耐力も向上させることのできる組積造建物の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る組積造建物の補強構造は、壁体の断面内部に設置された緊張材でプレストレスが付与される組積造建物の補強構造であって、前記緊張材の上端部は、壁体の上部に設けられたコンクリート造の臥梁に定着されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造では、前記壁体が直交する部分において、互いに直交する壁体同士をつなぐ平面視ひし形の平面ブレースが、前記臥梁に掛け渡されていることを特徴とする。このような特徴を有することによれば、鉄骨により構成される臥梁と合わせて複合的な補強構造とすることができる。また、枠体構造とされる組積造建物の壁面を支持する平面ブレースを設置することで、面外方向の応力に対する耐力を効果的に高めることができる。
【0010】
また、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造では、互いに平行する前記臥梁同士をつなぐ梁材が掛け渡されていることを特徴とする。このような特徴を有することによれば、梁材により向かい合って配置されている壁体に設置されている臥梁同士をつなぐことで、各壁体に付与される面外方向の応力に対する耐力を高めることができる。
【0011】
また、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造において前記緊張材は、付着力によって前記臥梁に定着されていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、緊張材を臥梁内部に収めることができる。すなわち、臥梁の上部に緊張材を突出させない構造とすることができる。
【0012】
さらに、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造において前記臥梁の主筋は、肋筋の縦材に沿って配されていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、レンガ壁の面外方向に作用する力に対する臥梁の耐力を向上させることができる。そして臥梁は、緊張材を介してレンガ壁と接続されていることより、レンガ壁における面外方向の耐力も向上することとなる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造によれば、壁の面外方向への力に対する耐力も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るレンガ壁の構造と補強構造を説明するための正面イメージ図である。
図2】第1実施形態に係るレンガ壁の構造と補強構造を説明するための側面イメージ図である。
図3図2における臥梁部分の断面構造を示す部分拡大図である。
図4】枠体構造とされる組積造建物における補強構造を説明するための斜視図である。
図5図4中A-A断面の構成例を示す図である。
図6図4中B-B断面の構成例を示す図である。
図7図4中C-C断面の構成例を示す図である。
図8】隣接配置される臥梁間における主筋の連続配置について説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の組積造建物の補強構造に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、図1から図3を参照して、第1実施形態に係る組積造建物の補強構造について説明する。なお、図面において、図1は、第1実施形態に係るレンガ壁の構造と補強構造を説明するための正面イメージ図であり、図2は、同側面イメージ図である。また、図3に示す図面は、図2における臥梁部分の断面構造を示す部分拡大図である。
【0016】
本実施形態に係る補強構造による補強対象となる組積造建物10は、例えば図1図2に示すようなレンガ壁12を有する建物である。こうしたレンガ壁を有する建物としては、明治以降に建造された洋館や倉庫等を挙げることができる。レンガ壁12を構成するレンガの積み方としては、長手積や、小口積、イギリス積、およびフランス積などが知られているが、どのような積み方のレンガ壁にも対応することができる。図1図2に示す例は、組積造建物10として現存数の多いイギリス積によるレンガ壁を示している。
【0017】
このようなレンガ壁12は従来、一般的に、基礎14の上に積み上げられると共に、図示しない支柱が壁面に沿うように対を成して配置される。そして、支柱間に掛け渡された図示しない臥梁により上端部を抑えられることで、水平力に対する耐力の向上が図られている。
【0018】
[補強構造の概要・臥梁]
本実施形態に係る補強構造は、このような構成の壁体(一例としてレンガ壁12)の上部に作業スペースを確保する。具体的には、既設の臥梁を含む上部構造を撤去する。その後、レンガ壁12の上端に、鉄筋コンクリート製の臥梁16を配置する。臥梁16は、その断面を図2に示すように、面内方向に沿って複数(図3に示す例では6本)の主筋18と、複数の主筋18を囲うように肋筋20を配置する構造とされている。臥梁16を構成する主筋18は、肋筋20の囲繞範囲に対応した四隅の他、肋筋20の縦材に沿うように、面内方向に配置されている。一般的な梁では、主筋を肋筋の横材に沿って配置するのに対し、実施形態に係る臥梁16では肋筋20の縦材に沿って主筋18を配置する構成としたことで、臥梁16の面外方向の力に対する耐力を向上させている。また、このような配置によれば、詳細を後述する緊張材30を臥梁の幅方向中央に配置する場合であっても、緊張材30と主筋18との干渉を避けることができる。このため、施工性の向上を図ることができる。なお肋筋20は、面内方向に沿って複数、所定の間隔をあけて配置されている。
【0019】
このような構成の臥梁16は、レンガ壁12の上部にズレ防止アンカー22を打ち込む事で位置決めされている。ズレ防止アンカー22の配置間隔や配置数に規定は無く、臥梁16の位置決め(ズレ防止)ができれば良い。臥梁16とレンガ壁12との一体化は、詳細を後述する緊張材30により成されるからである。このような構成とすることで、レンガ壁12を鉛直方向に押えていただけの従来の臥梁と異なり、レンガ壁12に加えられる面外方向の力を臥梁16で受けることが可能となる。
【0020】
また、実施形態に係る臥梁16には、詳細を後述する緊張材30の配置位置に合わせ、割裂防止材24を配置している。割裂防止材24は、緊張材30に付与される緊張力に対するコンクリート26の耐力を向上させる役割を担う部材であり、例えば緊張材30の周囲を覆うように構成した螺旋状の鉄筋などであれば良い。
【0021】
また、実施形態に係る臥梁16は、レンガ壁12の上端幅と同等の幅となるように構成し、緊張材30をレンガ壁12における断面の中心位置に配置すると共に、緊張材30を基点として線対称となるようにズレ防止アンカー22を配置する構成としている。
【0022】
[貫通孔・横穴]
実施形態に係る組積造建物10の補強構造では、上記のようにして形成した臥梁16の上端部から基礎14にかけて形成した貫通孔28に緊張材30を挿通し、この緊張材30を介してレンガ壁12に圧縮方向の力(プレストレス)を付与する構成としている。貫通孔28は、緊張材30の配置数に合わせて面内方向に複数設けられている。なお、複数の貫通孔28の配置間隔は、レンガ壁12の規模や目標とする強度に基づいて、適宜定めるようにすれば良い。
【0023】
貫通孔28の形成は、地盤に埋設されている、あるいは一部露出している基礎14を露出させ、この基礎の側面に横穴14aを形成した上で行われる。すなわち貫通孔28は、臥梁16の上端から横穴14aまでの間に形成される。ここで、貫通孔28や、横穴14aの形成には、無水工法を採用することが望ましい。無水工法とは、切削、穿孔時に冷却水を用いず、切削、穿孔部に冷却ガスを吹き付けながら加工を行う工法である。無水工法を用いることで、レンガ壁12の内部や、目地内部を水で濡らすことが無く、浸潤による悪影響を防ぐことができる。また、無水工法時に切削、穿孔部を養生して集塵を行うことで、粉塵の飛散を防ぐこともできる。なお、横穴14aは有底で良く、好ましくは建物の内側に開口部を有するように形成すると良い。建物の外観に変化を生じさせないようにするためである。
【0024】
[緊張材]
上記のように設けられた貫通孔28に配置する緊張材30は、PC鋼棒やねじ鉄筋等の棒状部材とすれば良い。緊張材30は、臥梁16の上端部から横穴14aにまで挿通させる。緊張材30としてPC鋼棒やねじ鉄筋を採用する場合には、図示しないカプラ等を介して複数の棒状部材を接続し、所望する長さを確保するようにすれば良い。貫通孔28に配置される緊張材30の上端部と下端部には、それぞれ上側定着部材32と、下側定着部材34が設けられる。
【0025】
緊張材30の下端部側の定着部を構成する下側定着部材34は、横穴14aの内部に設けられる。下側定着部材34としては、例えばプレートナットなどであれば良く、これを緊張材30に螺合させれば良い。なお、横穴14aには臥梁16と同様に、緊張材30に対する緊張力を受け止めるための割裂防止材36を配置した上で、コンクリート等のグラウト材38が充填される。
【0026】
上側定着部材32は、臥梁16の内部に設けるようにしている。具体的には、臥梁16の内部に位置する緊張材30に、定着部材としてのプレートナットを螺合させることで、臥梁16の内部に上側定着部材32を配置することができる。このため、緊張材30は、臥梁16の内部に、付着力によって定着されることとなる。
【0027】
緊張材30に対する緊張力の付与は、下側定着部材34の定着が成された後に行われる。具体的には、臥梁16の上端に突出させた緊張材30の端部に引っ張り状態を維持するための仮設治具40を配置し、緊張材30の突出端部を図示しない牽引装置(例えばジャッキ)で牽引すれば良い。予め定められた牽引力で緊張材30を牽引し、仮設治具40で緊張材30が戻る事を抑制する。この状態で貫通孔28における緊張材30との隙間にモルタル等のグラウト材28aを充填する。
【0028】
このような構成とした場合、緊張材30は臥梁16の内部で定着されることとなる。このため、グラウト材38が硬化した後、仮設治具40と共に緊張材30の突出端部を撤去すれば、臥梁16の上部を平坦にすることができる(図3参照)。
【0029】
[作用・効果]
このような組積造建物10の補強構造によれば、面内方向や座屈に対する耐力だけでなく、面外方向の応力に対する耐力も向上させることができる。また、レンガ壁12の上端(臥梁16の上端)に突出部を生じさせることが無いため、補強前の棟構造をそのまま適用することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、緊張材30は、レンガ壁12における断面の中心位置に配置し、この緊張材30を基点として線対称となるようにズレ防止アンカー22を配置する旨記載した。しかしながら、緊張材30は、レンガ壁12に対してバランス良くプレストレスを付与することができれば、その配置位置や数を限定するものでは無い。例えば、レンガ壁12における断面の中心位置にズレ防止アンカー22を配置し、このズレ防止アンカー22を基点として線対称に緊張材30を配置するような構成であっても良い。
【0031】
[変形例]
上記実施形態では、レンガ壁12単体(一面のレンガ壁12)において、面外方向の応力に対する耐力を向上させる旨記載した。しかしながら、本発明に係る組積造建物10の補強構造は、角度を持って配置されている複合的な壁面に対する付加構造を適用することで、面外方向の応力に対する耐力をより高めることができる。
【0032】
例えば図4に示すように、枠状に構成されたレンガ壁12により構成される組積造建物10の場合、長手方向に向かい合う壁面間に梁50を配置すると共に、平面視した際、梁材54によって区分けされる空間それぞれに、レンガ壁12の壁面を支持するためのブレース(以下、平面ブレース70と称す)を配置すれば良い。
【0033】
[梁材の構造]
梁50は、向かい合うレンガ壁12(図4に示す例では、レンガ壁12aとレンガ壁12b)の上部に配置された臥梁16aと臥梁16bの間に掛け渡され、臥梁16同士を接続している(図4に示す例では臥梁16aと臥梁16b)。梁50の具体的な配置形態としては、次のようにすれば良い。すなわち、臥梁16a,16bの上端にガセットプレート52を設置し、このガセットプレート52を上下に挟み込むようにチャンネル材、あるいはL字鋼等の梁材54を配置すれば良い。
【0034】
ガセットプレート52は、臥梁16(図5に示す例では臥梁16b)の上端に、アンカー56を打ち込む事で固定すれば良い。また、必要に応じてガセットプレート52の下側に、補強板58を設けるようにしても良い。補強板58は、ガセットプレート52の板面に対して板面が直交するように配置されている板材であり、レンガ壁12(図5に示す例ではレンガ壁12b)の面外方向に延設されている。補強板58は、ガセットプレート52を基点としてレンガ壁12(図5に示す例ではレンガ壁12b)の面内方向に沿って配置された当て板58aに接続されることで、強度を高めることができる。
【0035】
本実施形態では梁50を構成する梁材54の中央部に、詳細を後述する平面ブレース70を配置するためのガセットプレート60を配置している。このガセットプレート60も、梁50の端部に設置したガセットプレート52と同様に、梁50を構成する梁材54により上下に挟み込む構成とすれば良い。このような構成とすることで、ガセットプレート60が梁材54の振れ止としての役割を担うこともできる。なお、必要に応じて梁材54の各所に、梁50の振れ止としての挟み板62を配置するようにしても良い。
【0036】
[平面ブレース構造]
本実施形態における平面ブレース70は、レンガ壁12(12a~12d)の面と面、および梁50に設けたガセットプレート60をつなぐように、臥梁16上に配置している。このため、平面ブレース70は、平面視した場合には、ひし形の体を成すこととなる。このような配置形態とすることで、角部同士をつなぐブレースに比べ、面外方向の応力に対するレンガ壁12の耐力を向上させることができるからである。
【0037】
平面ブレース70の具体的な配置方法は、基本的には、梁50の配置方法と同様である。すなわち、レンガ壁12(図4に示す例ではレンガ壁12aとレンガ壁12b)の上部に配置された臥梁16(図4に示す例では臥梁16aと臥梁16b)の上端に図6に示すようにガセットプレート72を固定し、このガセットプレート72を上下に挟み込むように、L字鋼やチャンネル材等のブレース材74を配置するというものである。臥梁16a,16bに対するガセットプレートの設置は、梁50を構成するガセットプレート52と同様に、臥梁16a,16bにアンカー78を打ち込む事で成せば良い。
【0038】
なお、本実施形態では、図4中、レンガ壁12cの臥梁16cに配置されたガセットプレート76と、レンガ壁12dの臥梁16dに配置されたガセットプレート76については、他のガセットプレート72と設置構造を異ならせている。
【0039】
具体的には、ガセットプレート76の端部にベース板76aを接続し、このベース板76aを臥梁16(図4に示す例では、臥梁16cと臥梁16d)の内側面に設置する構成としている。ガセットプレート76とベース板76aは、T字状に接続している。ベース板76aは、臥梁16c,16dの内側面に対してアンカー80を打ち込み、このアンカー80を介して固定すると共に、臥梁16c,16dとベース板76aとの隙間にグラウト材82を充填する構成としている。このため、ベース板76aの下端には、グラウト材82が漏れ出す事を防ぐ漏れ防止材84を備えるようにすると良い。
【0040】
ガセットプレート76をこのような設置構造とすることで、図4に示すように、レンガ壁12a,12bとレンガ壁12c,12dの上端部の高さが異なる場合であっても、ガセットプレート76の設置高さを調節することができる。よって、平面ブレース70を水平に配置することが可能となる。また、ガセットプレート76の水平位置を確保するために、ガセットプレート76を予めブレース材74に設置し、臥梁16c,16dに設置する工程を経る場合でも、臥梁16c,16dとベース板76aとの間に生じる隙間をグラウト材82により埋めることで、対応することができる。
【0041】
このような構成とすることで、レンガ等により構成される組積造建物10を複合的に補強することができ、面外方向の応力に対する耐力も高めることができる。
【0042】
[角部の主筋:臥梁]
また、図4に示すような枠状の組積造建物10では、臥梁16を構成する際、図8に示すように、隣接する臥梁16(図8に示す例では、臥梁16bと臥梁16c)との間で主筋18を連続的に配置する構成とすると良い。このような構成とすることで、臥梁16を構成する主筋18を枠体として構成することができ、面外方向の応力に対する耐力をより高めることができるからである。
【0043】
ここで、図8に示すように、隣接する臥梁16(16b,16c)間で連続配置される主筋18は、臥梁16を構成する主筋の一部であっても良い。このような構成とすることで、隣接配置される臥梁16の設置高さが異なる場合であっても、高さ方向に重複する範囲があれば、主筋18の一部を連続的に配置することが可能となり、臥梁16を構成する主筋18の枠体化を図ることが可能となるからである。
【符号の説明】
【0044】
10………組積造建物、12(12a,12b,12c,12d)………レンガ壁、14………基礎、14a………横穴、16(16a,16b,16c,16d)………臥梁、18………主筋、20………肋筋、22………ズレ防止アンカー、24………割裂防止材、26………コンクリート、28………貫通孔、30………緊張材、32………上側定着部材、34………下側定着部材、36………割裂防止材、38………グラウト材、40………仮設治具、50………梁、52………ガセットプレート、54………梁材、56………アンカー、58………補強板、58a………当て板、60………ガセットプレート、62………挟み板、70………平面ブレース、72………ガセットプレート、74………ブレース材、76………ガセットプレート、76a………ベース板、78………アンカー、80………アンカー、82………グラウト材、84………漏れ防止材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8