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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】口唇化粧料塗布装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20230428BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A45D34/04 510B
A45D34/04 515C
A45D34/04 515D
B65D83/00 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019046351
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020146238
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤下 実奈
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532122(JP,A)
【文献】特開2007-160116(JP,A)
【文献】特開2012-217697(JP,A)
【文献】意匠登録第1484369(JP,S)
【文献】意匠登録第1584030(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を口唇に塗布するための塗布部、及び先端に該塗布部が連結された支持軸を有する化粧料塗布用具と、該化粧料を収容するための容器とを備え、該塗布用具の前記塗布部が該容器の口部から該容器内に出入自在な口唇化粧料塗布装置であって、
前記塗布部は、1パーツからなり且つ軸方向に沿って延びる2本以上の稜線を有する芯体を有し、2本の前記稜線は、該芯体の最大径部における横断面の最大長さ方向の両端に位置しており、
前記最大径部における前記横断面の輪郭が、外方に向けて凸の曲線のみからなるか、又は外方に向けて凸の曲線と直線との組み合わせからなる、口唇化粧料塗布装置。
【請求項2】
前記最大径部における前記横断面の輪郭は、前記最大長さ方向の両端を結ぶ線分を境とする一方と他方とで、該線分からの最大距離が異なる、請求項1に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項3】
前記最大径部における前記横断面の輪郭は、前記最大長さ方向の両端を結ぶ線分を境とする両側のうち、該線分からの最大距離が長い方の輪郭が、外方に向かって凸の曲線のみからなる、請求項2に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項4】
前記最大径部における前記横断面の輪郭において、前記最大長さ方向の両端を結ぶ線分を境とする両側のうち、該線分からの最大距離が長い方の輪郭に、前記最大長さ方向の両端の前記稜線以外の稜線が位置している、請求項3に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項5】
前記最大径部の前記最大長さ方向の長さが前記支持軸の外径よりも長い、請求項1~4の何れか1項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項6】
前記容器の口部又はその近傍に、しごき孔を有するしごき弁が設けられており、
前記芯体は、前記最大径部の前記最大長さ方向の長さが、前記しごき孔の内径よりも長い、請求項1~5の何れか1項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項7】
前記容器の口部又はその近傍に、しごき孔を有するしごき弁が設けられており、
前記しごき弁は、前記芯体より変形しやすい、請求項1~6の何れか1項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項8】
前記芯体は、その先端域の縦断面の形状が、角が丸みを帯びた三角形である、請求項1~7の何れか1項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項9】
前記塗布用具が前記容器内に挿入された状態において、前記最大径部における前記横断面の両端を結ぶ線分を境とする両側のうち、該線分から前記輪郭までの最大距離が長い方が、該容器の底部側を向くように、前記塗布部が該支持軸の軸方向に対して傾斜している、請求項1~8の何れか1項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項10】
前記塗布部は、前記芯体の表面を覆う植毛を備えている、請求項1~9の何れか1項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅及びリップグロス等の口唇化粧料を塗布するために好適に用いられる口唇化粧料塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップグロス等の口唇化粧料を塗布するための口唇化粧料塗布装置として、支持軸の先端に塗布部を備えた塗布用具と、該塗布用具を収容可能な容器とを具備するものが一般に利用されている。塗布部は、化粧料を保持し、該化粧料を口唇に塗布する部分である。本出願人は先に、塗布部の中央部に窪み部が形成された凹面を有する塗布用具を提案している(特許文献1及び2)。斯かる構成を具備する塗布用具を用いると、塗布部の凹面を口唇にフィットさせて化粧料を塗布することができるとともに、塗布部の窪み部に保持した多量の化粧料を口唇に塗布することができる。これにより、化粧料を塗布した口唇が、艶やかで潤いのある仕上がりとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-131329号公報
【文献】特開2011-131043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、艶を抑えた質感である、いわゆるマットな仕上がりが求められている。マットな仕上がりは、口唇に薄く且つ均一に化粧料を塗布することでより艶を抑えることができ、艶のある通常の仕上がりと差別化して実現することができるが、特許文献1及び2に記載の塗布用具では、口唇に多量の化粧料が塗布されるので、マットな仕上がりを実現し難い。
【0005】
したがって本発明の課題は、上述した従来技術が有する課題を解消し得る口唇化粧料塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化粧料を口唇に塗布するための塗布部、及び先端に該塗布部が連結された支持軸とを有する化粧料塗布用具と、該化粧料を収容するための容器とを備え、該塗布用具の前記塗布部が該容器の口部から該容器内に出入自在な口唇化粧料塗布装置であって、
前記塗布部は、軸方向に沿って延びる2本以上の稜線を有する芯体を有し、2本の前記稜線は、該芯体の最大径部における横断面の最大長さ方向の両端に位置しており、
前記最大径部における前記横断面の輪郭が、外方に向けて凸の曲線のみからなるか、又は外方に向けて凸の曲線と直線との組み合わせからなる、口唇化粧料塗布装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、口唇に薄く且つ均一に化粧料を塗布することができ、艶を抑えたマットな仕上がり等を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の化粧料塗布装置の一実施形態を示す一部破断正面図である。
図2図2は、図1に示す化粧料塗布用具における塗布部を拡大して示す斜視図である。
図3図3(a)は、図2に示す芯体の正面図であり、図3(b)は、同芯体の背面図である。図3(c)は、図3(a)におけるII-II線断面図である。図3(d)は、芯体の先端域の縦断面図である。
図4図4は、図3(c)に示す最大径部の横断面の輪郭を示す模式図である。
図5図5(a)は、図2に示す塗布部をしごき弁によってしごく状況を説明する略示正面図であり、図5(b)は、同塗布部を省略して示すしごき弁の略示底面図である。
図6図6は、本発明の口唇化粧料塗布装置の別の実施形態を示す一部破断正面図である。
図7図7は、図6に示す化粧料塗布用具における塗布部を拡大して示す斜視図である。
図8図8(a)は、図6に示す芯体の正面図であり、図8(b)は、同芯体の側面図である。図8(c)は、図8(a)におけるIII-III線断面図である。
図9図9は、図8(c)に示す最大径部の横断面の輪郭を示す模式図である。
図10図10(a)は、図6に示す塗布部をしごき弁によってしごく状況を説明する略示正面図であり、図10(b)は、同略示側面図であり、図10(c)は、同塗布部を省略して示すしごき弁の略示底面図である。
図11図11(a)~(g)は、しごき弁のしごき孔の平面視形状のバリエーションを示す平面図である。
図12図12は、図6に示す塗布部の通過前及び通過中における、しごき孔の平面視形状の変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の口唇化粧料塗布装置を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図示する実施形態の口唇化粧料塗布装置は、本発明の好ましい形態の一例を示すものであって、本発明はこの図面に限定されるものではない。図1には、本発明の口唇化粧料塗布装置の第1の実施形態の正面図が、一部破断した状態で示されている。同図に示す本実施形態の口唇化粧料塗布装置1aは、塗布用具2と、化粧料5を収容するための容器4とを備えている。以下、塗布用具2及び容器4についてそれぞれ説明する。
【0010】
まず、容器4について説明すると、容器4は有底の細長い円筒状のものである。容器4は、その内部に液状化粧料5を収容可能な容器本体40と、該容器4の底部47と対向して口部44を有している。口部44は上方に向けて開口している。口部44の外周面にはネジ部(不図示)が設けられている。このネジ部は、後述する塗布用具2の蓋体21の内周面に設けられたネジ部(不図示)と螺合可能になっている。本実施形態では、容器を有底の細長い円筒状に形成したが、容器は、例えば、口部44以外の形状を有底の四角柱等の角柱形状や多角錐形状としてもよい。
【0011】
容器4における口部44又はその近傍には、しごき弁41が設けられている。しごき弁41は、容器4の口部44から底部47に向けて縮径した漏斗状の形状をしており、その下方端部に塗布部当接部41aと、該塗布部当接部41aにより形成されたしごき孔42とを有している。塗布部当接部41aは環状構造を有し、該環状構造の内部が容器4における化粧料5を収容する空間と連通している。しごき孔42は、後述する塗布用具2における塗布部3a及び支持軸23の通過が自在になっている。しごき孔42は、容器4の横断面視において、しごき弁41の略中央部に形成されている。本実施形態のしごき孔42の平面視形状は円孔となっているが、該平面視形状はこれに限られない。しごき孔42は、塗布用具2の先端に位置する塗布部3aを容器4内に挿入し、また容器4内から抜き出すことが可能な大きさを有している。しごき弁41は、塗布用具2の塗布部3aや支持軸23に付着した過剰量の化粧料5を適度にしごき取るために用いられる。この目的のために、しごき弁41はゴム等の弾性変形可能な材料から構成されている。なお図1においては、しごき弁41は、口部44から若干離れた下方寄りに位置しているが、これに代えて、口部44の位置にしごき弁41を配置してもよい。容器本体40の口部44の近傍部分には、口部44から若干離れた箇所から口部44までの部分が含まれる。
【0012】
容器4に収容される化粧料5としては、使用環境下において流動性を有する口唇化粧料や、しごき動作や塗布動作により変形可能な硬度を有する口唇化粧料が用いられる。そのような化粧料は、当該技術分野においてよく知られたものである。化粧料としては、各種口紅、リップグロスやリップカラー等と称される仕上げ用の化粧料等が挙げられる。後述する利点の観点から、化粧料5としては、各種口紅を好適に用いることができる。
【0013】
容器4と組み合わせて用いられる塗布用具2は、化粧料を口唇に塗布するための塗布部3a、及び先端に該塗布部3aが連結された支持軸23とを有している。これらの部材は、容器4の口部44から該容器4内に出入自在となっている。塗布部3aは化粧料5を口唇等に塗布するために用いられる。支持軸23は、その先端において塗布部3aと連結している。塗布部3aと支持軸23とは同一材料から一体的に構成されていてもよく、あるいは予め製造された2つ以上の部材を所定の手段によって結合させて構成されていてもよい。
【0014】
塗布部3aと支持軸23を別々に製造して結合させる場合、両者を嵌合させて結合することが好ましい。結合の方法としては、ポンチ打ちなどで塗布部3a又は支持軸23を塑性変形させて固定する方法が挙げられる。また、接着剤による接着など公知の技術を適宜採用してもよい。
【0015】
塗布用具2は、更に蓋体21を有している。蓋体21は、支持軸23の後端と連結している。蓋体21は、上述のとおり、その内周面にネジ部(不図示)を有している。このネジ部は、上述した容器4の口部44の外周面に設けられたネジ部と螺合可能になっている。蓋体21が容器4のネジ部と螺合した状態においては、塗布装置1aは略円柱状の形状となる。この状態においては、塗布部3aは容器4の底部47よりも若干上方に位置している。蓋体21は、塗布用具2を使用する際に使用者が把持する把持部としても機能する。把持部として機能させる観点から、蓋体21は、指先で握りやすい形状とすることが好ましい。例えば蓋体21は、有底の四角柱等の角柱形状や多角錐形状であってもよい。
【0016】
塗布部3aは、後述する芯体30aと、該芯体30aの表面を覆う植毛31とを備えている。即ち、芯体30aの表面には植毛処理が施されている。植毛処理に用いられる繊維は、長さが0.1~3mmで、太さが0.5~5dtexのものが好ましい。長さ及び太さがこの範囲のなかで、異なる2種以上の繊維を組み合わせて用いることも可能である。繊維の材質は、塗布時に求められる感触に応じ、適切なものが選択される。一般にはポリアミド樹脂を用いることで、好ましいソフトな感触を得ることができる。塗布部の表面に植毛処理を施すためには、静電植毛法等の公知の技術を適宜採用すればよい。
【0017】
図2及び図3には塗布部3aの拡大図が示されている。図1図2では、塗布部3aの上下関係を逆転させて示している。図3(a)~(c)では、説明の便宜上、植毛31の図示を省略している。
塗布部3aは、図2に、支持軸の延びる方向と一致する縦方向Xと、該縦方向Xと直交する横方向Yとを有する縦長の形状である。前記縦方向Xは、支持軸23の軸方向と一致する。塗布部3aは、支持軸23の先端に設けられた芯体30aを備えている。芯体30aは、その立体形状が略紡錘形状をなしており、これにより塗布部3aが支持軸23よりも幅広な略紡錘形状をなしている(図2参照)。
【0018】
芯体30aは、図3(a)及び(b)に示すように、縦方向Xに沿って延びる稜線32を2本以上有している。本実施形態の芯体30aは、縦方向Xに延びる複数の曲面33a,33b,33c,33dを有し、隣り合う曲面どうし間に前記稜線32を有している。芯体30aは、縦方向Xに延びる曲面と、同方向Xに沿って延びる平面とを組み合わせて有していてもよい。この場合、稜線32は、隣り合う曲面どうし間又は隣り合う曲面と平面との間に位置する。
【0019】
芯体30aは、図3(a)に示すように、横方向Yの断面である横断面において、該横断面の最大長さが最長となる最大径部35aを有している。即ち、最大径部35aは、縦方向Xにおいて塗布部3aの径が最大となる位置の部位である。図3(c)には、最大径部35aの横断面が示されている。以下、横断面において、最大径部35aの長さが最大となる最大長さ方向を幅方向Dともいう。横断面における最大径部35aの長さは、該最大径部35aの横断面の輪郭上に位置する2点の離間距離である。後述するように、芯体30aは、最大径部35aの長さが最大となる長さ方向を複数有していてもよい。
【0020】
図4には、最大径部35aの横断面の輪郭が示されている。芯体30aが有する稜線32のうち、2本の稜線32が最大径部35aの幅方向Dの両端に位置している。本実施形態の最大径部35aは、図4に示すように、横断面において最大長さとなる線分f1,f2、即ち幅方向Dに沿う線分f1,f2を2本有しており、これら線分f1,f2の両端それぞれに稜線32a,32bが位置している。芯体30aが最大径部35aの長さが最大となる長さ方向を複数有している場合、何れかの長さ方向の両端それぞれに稜線32が位置していればよい。芯体30aは、最大径部35aにおいて幅方向Dの両端にのみ稜線32を有していてもよく、該幅方向Dの両端以外にも稜線32を有していてもよい。本実施形態の芯体30aは、図4に示すように、最大径部35aの横断面の輪郭が4本の曲線a1,b1,c1,d1からなる。これら曲線a1,b1,c1,d1は、前述した縦方向Xに延びる曲面33a,33b,33c,33dに対応している。芯体30aは、前記横断面の輪郭において隣り合う曲線a1,b1,c1,d1どうしが交わる頂点を4点有しており、これら頂点それぞれに稜線32が位置し、且つこれら頂点が幅方向Dの両端と一致している。
【0021】
芯体30aは、図4に示すように、最大径部35aにおける横断面の輪郭が、外方に向けて凸の曲線a1,b1,c1,d1のみからなる。これに代えて、最大径部35aにおける横断面の輪郭は、外方に向けて凸の曲線と直線との組み合わせからなってもよい。
【0022】
最大径部35aの横断面の輪郭は、稜線32が位置する、曲線と該曲線と交わる他の曲線との間、又は曲線と該曲線と交わる直線との間に角度を有している。即ち、前記輪郭において隣り合う曲線間の部分、又は曲線と直線との間の部分は、角張った形状をなしており、非R形状となっている。例えば、本実施形態では、最大径部35aの横断面の輪郭において、互いに交わる曲線a1,d1間に角度θ1、曲線a1,b1間に角度θ2、曲線b1,c1間に角度θ3、及び曲線c1,d1間に角度θ4を有している。これに代えて、前記輪郭をなす曲線又は直線のうち、互いに交わる曲線と直線との間に角度を有していてもよい。即ち、前記輪郭をなす曲線又は直線のうち、前記稜線32を挟む両側において、前記輪郭をなす曲線と直線とが角度を有するように互いに交わっているか、又は前記輪郭をなす曲線と他の曲線とが角度を有するように互いに交わっている。以下、稜線32において互いに交わる曲線と他の曲線との間の角度、及び稜線32において互いに交わる曲線と直線との間の角度を、纏めて「稜線における角度」ともいう。
【0023】
稜線における角度が、互いに交わる曲線と他の曲線との間の角度である場合、これら両曲線がなす角の二等分線を設定し、該二等分線に対する両曲線それぞれの角度の合計を、稜線における角度とする。両曲線がなす角の二等分線に対する曲線の角度は、曲線の接線と該二等分線との間の角度である。この場合の接線は、横断面の内方側において該二等分線上に稜線との離間距離が0.5mmとなる離間点と、当該離間点を通り且つ前記二等分線と直交する直交直線とを設定したとき、該直交直線が前記曲線と交わる交点における接線である。前記二等分線に対する曲線の角度は、好ましくは40以上88°以下、より好ましくは45°以上85°以下である。
稜線における角度が、互いに交わる曲線と直線との間の角度である場合、該直線に対する曲線の角度を、稜線における角度とする。直線に対する曲線の角度は、該曲線の接線と該直線との間の角度である。この場合の接線は、横断面の内方側において前記直線上に稜線との離間距離が0.5mmとなる離間点と、当該離間点を通り且つ前記直線と直交する直交方向とを設定したとき、該直交直線と曲線とが交わる交点における接線である。直線に対する曲線の角度は、好ましくは40以上88°以下、より好ましくは45°以上85°以下である。
【0024】
稜線における角度は、特に制限されないが、後述する効果をより確実に奏させる観点から、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上であり、また好ましくは175°以下、より好ましくは170°以下であり、また好ましくは80°以上175°以下、より好ましくは90°以上170°以下である。上記と同様の観点から、最大径部35aの横断面の幅方向Dの両端に位置する稜線32a,32bにおける角度は、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上であり、また好ましくは175°以下、より好ましくは165°以下であり、また好ましくは80°以上175°以下、より好ましくは90°以上165°以下である。前記輪郭における稜線の角度は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0025】
図5(a)及び(b)には、塗布部3aをしごき弁41によってしごく状態が示されている。説明の便宜上、図5において植毛31の図示を省略する。本実施形態の化粧料塗布装置1では、塗布用具2を容器4から抜き出す際、該塗布用具2の先端に設けられた塗布部3aに付着した化粧料5が、しごき弁41によってしごき落とされ、適量の化粧料5が塗布部3a表面に保持された状態となる。図5(a)及び図5(b)において、a-1、b-1は、塗布部3aが化粧料5内に浸っている状態から引き上げられて、しごき弁41に当接し始めた状態である。この状態においては、しごき弁41の塗布部当接部41aにおける上端部の開口形状、及び下端部の開口形状は、いずれも変形することなく円形を保持している。
【0026】
図5(a)、及び図5(b)において、a-2、b-2は、塗布部3aを更に引き抜いて、最大径部35aが、塗布部当接部41aの内側に配置された状態であり、a-3、b-3及びa-4、b-4は、塗布部3aを更に引き抜いた状態である。芯体30aの最大径部35aの幅方向Dの長さは、しごき弁41のしごき孔42の内径よりも大きくなっているので、塗布部3aは、芯体30の稜線32にてしごき孔42を押し拡げつつ、しごき孔42、より具体的には塗布部3aが当接する塗布部当接部41aの開口形状を、最大径部35aの横断面の輪郭形状に応じた形状に変形させる〔図5のa-2参照〕。しごき孔42は、稜線32によって押し拡げられて幅方向Dに大きく変形するが、稜線32間の部分は、変位しないか、芯体30aに近づくように変位し、塗布部当接部41aの内周縁と塗布部3aとの間に、径方向の長さが比較的均一の隙間が形成される。また、稜線32でしごき孔42を押し拡げることによって、稜線32間における前記隙間は、塗布部3aの周方向の長さが長いものとなり、保持した化粧料5がしごき落とされる範囲が最小限となる。そして、塗布部3aがしごき孔42を通過する過程において、塗布部3aに保持された化粧料5は、前記隙間を通過するとともに、塗布部3aの縦方向Xに沿って塗り拡げられることによって、該塗布部3aに薄く且つ均一に分布した状態となる。斯かる塗布部3aで口唇に化粧料5を塗布すると、口唇に薄く且つ均一に化粧料を塗布することができ、それにより艶を抑えたマットな仕上がりや、化粧感を抑えた自然な仕上がり等を容易に実現することができる。本実施形態において、最大径部35aの横断面における輪郭は、外方に向けて凸の曲線のみからなるが、前記輪郭が外方に向けて凸の曲線と直線との組み合わせからなるものであっても、上記と同様の効果が奏される。
一方、横断面の輪郭が稜線を有しない円弧状の曲線からなる芯体では、塗布部当接部の内周縁と塗布部との間に塗布部の周方向に長い隙間が生じ難く、該曲線に対応する部分に付着した化粧料が過度にしごき落とされ、該芯体に必要量の化粧料を付着させることが困難となる。
【0027】
上述した効果をより確実に奏させる観点から、芯体30aが有する稜線32は、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上であり、また好ましくは9本以下、より好ましくは7本以下であり、また好ましくは2本以上9本以下、より好ましくは3本以上7本以下である。
【0028】
塗布部3aに化粧料5をより均一に保持させる観点から、最大径部35aにおける幅方向Dの長さL1は、該幅方向Dと直交する方向の長さに対して好ましくは100%以上、より好ましくは110%以上であり、また好ましくは600%以下、より好ましくは400%以下であり、また好ましくは100%以上600%以下、より好ましくは110%以上400%以下である。最大径部35aが最大長さ方向(幅方向D)を複数有している場合、何れかの最大長さ方向の長さに対する前記直交する方向の長さの割合が前記の範囲内であることが好ましい。幅方向Dと直交する方向は、後述する直交方向Eである。
上記と同様の観点から、最大径部35aの横断面における輪郭を構成する曲線a1,b1,c1,d1の曲率半径は、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上であり、また好ましくは2000mm以下、より好ましくは1000mm以下であり、また好ましくは1mm以上2000mm以下、より好ましくは5mm以上1000mm以下である。なお、曲率半径が2000mm超の線は直線とする。
【0029】
塗布用具2を引き抜く際に、塗布部3aが付着した化粧料5をより効果的に落とす観点から、最大径部35aの幅方向Dの長さL1(図4参照)が支持軸23の外径d5〔図3(a)参照〕よりも長いことが好ましい。上記と同様の観点から、最大径部35aの幅方向Dの長さL1(図4参照)は、支持軸23の外径d5〔図3(a)参照〕に対して好ましくは103%以上、より好ましくは105%以上であり、また好ましくは400%以下、より好ましくは300%以下であり、また好ましくは103%以上400%以下、より好ましくは105%以上300%以下である。
【0030】
塗布用具2を用いて口唇に化粧料5を塗布する操作をより簡便に行う観点から、最大径部35aの幅方向Dの長さL1(図4参照)は、支持軸23の外径d5よりも長いことを条件として、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また好ましくは12mm以下、より好ましくは9mm以下であり、また好ましくは2mm以上12mm以下、より好ましくは3mm以上9mm以下である。
上記と同様の観点から、支持軸23の外径d5〔図3(a)参照〕は、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下であり、また好ましくは2mm以上10mm以下、より好ましくは2.5mm以上7mm以下である。
【0031】
口唇に化粧料5を塗布する操作性をより向上させる観点から、芯体30aの縦方向Xの長さL5〔図3(a)参照〕は、好ましくは5mm以上、より好ましくは9mm以上であり、また好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下であり、また好ましくは5mm以上25mm以下、より好ましくは9mm以上20mm以下である。
【0032】
図3(d)には、芯体30aの先端域における縦断面が示されている。芯体30aは、その先端に向かって先端に向かって横断面積が漸次減少しており、先端域の縦断面が先端に向かって先細りになる形状を有している。これにより、塗布部3aを口唇にフィット性を向上させることができる。縦断面は、縦方向Xに沿う断面である。前記の先細り形状としては、例えば紡錘形、砲弾形、円錐や多角錐等の錐体状等が挙げられる。塗布部3aが保持した化粧料5をより容易に口唇に転写する観点から、芯体30aの先端域の縦断面の形状は、角が丸みを帯びた三角形をなしていることが好ましい。
【0033】
図6には、本発明の本発明の口唇化粧料塗布装置の第2の実施形態を示す一部破断正面図が示されている。第2実施形態については、図1図5に示す第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0034】
第2実施形態の口唇化粧料塗布装置1bにおいて、塗布部3bは、支持軸23に対して所定の角度をもって傾斜した部分を有している。詳細には、塗布用具2が容器4内に挿入された状態において塗布部3bを縦方向Xに沿って視たとき、芯体30bは、支持軸23側に縦方向Xに沿って延びた垂直部37と、該垂直部37の先端側に隣接し、且つ支持軸23の軸方向に対して所定の角度で屈曲した部分38とを有している。以下、芯体30bにおいて支持軸23の軸方向に対して所定の角度で屈曲している部分を屈曲部38ともいう。芯体30bは、垂直部37と屈曲部38とを有していてもよく、屈曲部38のみを有していてもよい。芯体30bが屈曲部38を有することにより、塗布用具2を用いた化粧料5の塗布を容易に行うことができる。
【0035】
図7には、第2実施形態における塗布部3bの斜視図が示されており、図8(a)及び(b)には、同塗布部3bにおける芯体30bの正面図と側面図とが示されている。塗布部3bは、正面視において、その立体形状が略紡錘形状をなしている。本実施形態の芯体30bは、縦方向Xに延びる複数の曲面34a,34b,34c,34dを有し、隣り合う曲面どうし間に稜線32を有している。本実施形態では、縦方向Xにおいて芯体30bの最大径部35bが屈曲部38に位置しているが、最大径部35bは、垂直部37に位置していてもよい。
【0036】
口唇に塗布部3bをよりフィットさせる観点から、屈曲部38の縦方向Xの長さL7〔図8(b)参照〕は、芯体30bの縦方向Xの長さL6〔図8(b)参照〕に対して好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下であり、また好ましくは30%以上100%以下、より好ましくは40%以上95%以下である。上記と同様の観点から、屈曲部38の縦方向Xの長さL7〔図8(b)参照〕は、好ましくは5mm以上、より好ましくは9mm以上であり、また好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下であり、また好ましくは5mm以上25mm以下、より好ましくは9mm以上20mm以下である。
芯体30bが屈曲部38を有する形態においても、芯体30bの縦方向Xの長さL6は、上述した第1実施形態における芯体30aの縦方向Xの長さL5の範囲内であることが好ましい。
【0037】
図8(c)には、第2実施形態における塗布部3bの最大径部35bの横断面が示されており、図9には、同最大径部35bの横断面の輪郭が示されている。図9においては、幅方向Dと直交する方向である直交方向Eが図示されている。本実施形態の芯体30bは、図9に示すように、最大径部35bの横断面の輪郭が4本の曲線a2,b2,c2,d2からなる。これら曲線a2,b2,c2,d2は、前述した縦方向Xに延びる曲面34a,34b,34c,34dに対応している。本実施形態の芯体30bは、最大径部35bの横断面において、幅方向Dに沿う線分f1を1本有し、該幅方向Dの両端それぞれと、該幅方向Dの両端以外に稜線32を有している。
【0038】
本実施形態において、最大径部35bにおける横断面の輪郭は、図9に示すように、幅方向Dの両端を結ぶ線分f1を境とする両側36a,36bそれぞれが、互いに離れる方向に、即ち外方に向かって凸の部分をなしている。これら両側36a,36bは、前記線分f1からの最大距離が互いに異なっている。以下、これら両側36a,36bのうち、前記線分f1からの最大距離が長い方の部分を第1部36a、該第1部36aに比して前記線分f1からの最大距離が短い方の部分を第2部36bともいう。最大径部35bの横断面の輪郭において、第1部36aの輪郭を構成する曲線a2,b2と、第2部36bの輪郭を構成するc2,d2とは曲率半径が互いに異なっている。本実施形態のように、最大径部35bにおける横断面の輪郭が第1及び第2部36a,36bを有している場合、第1部36aを口唇に主に当接させる面、即ち主塗布面とすることが好ましい。塗布部3bの第1部36aに対応する部分は、第2部36bに対応する部分に比して表面積が大きいので、1回の塗布操作によって口唇に化粧料5をより容易に塗布することができる。上記の効果をより確実に奏させる観点から、最大径部35bにおける横断面の輪郭は、前記第1部36aの輪郭が、外方に向かって凸の曲線のみからなっていることが好ましい。この第1部36aに対応する部分は湾曲部分となるので、口唇に第1部36aに対応する部分を当接させながら、支持軸23の軸方向に回転させることにより、化粧料5を口唇に容易に転写することができる。
【0039】
本実施形態の最大径部35bの横断面の輪郭において、第1部36aの輪郭では、幅方向Dの中央部に稜線32が位置している。このように、最大径部35bにおける横断面の輪郭において、第1部36aの輪郭に幅方向Dの両端の稜線32a,32b以外の稜線32が位置していることが好ましい。斯かる構成により、幅方向Dの両端の稜線a,32b以外の稜線32にてしごき孔42を幅方向Dとは異なる方向に押し拡げることになるため、稜線32間の部分は、変位しないか、芯体30aに近づくように変位し、塗布部当接部41aの内周縁と塗布部3aとの間に、径方向の長さが比較的均一の隙間が形成される。これにより、第1部36aに対応する部分に化粧料5をより効果的に薄く且つ均一に分布させることができる。上記の効果をより向上させる観点から、幅方向Dの両端の稜線32a,32bにおける角度は、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上であり、また好ましくは175°以下、より好ましくは165°以下であり、また好ましくは80°以上175°以下、より好ましくは90°以上165°以下である。上記と同様の観点から、幅方向Dの両端の稜線32a,32b以外の稜線における角度は、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上であり、また好ましくは175°以下、より好ましくは170°以下であり、また好ましくは80°以上175°以下、より好ましくは90°以上170°以下である。
【0040】
塗布部3bに化粧料5をより効果的に薄く且つ均一に分布させる観点から、最大径部35bの横断面の輪郭において、幅方向Dの両端を結ぶ線分f1と第1部36aの輪郭との最大離間距離L10(図9参照)は、前記線分f1と第2部36bの輪郭との最大離間距離L11(図9参照)に対して好ましくは600%以下、より好ましくは400%以下であり、また好ましくは110%以上600%以下、より好ましくは120%以上400%以下である。上記と同様の観点から、幅方向Dの両端を結ぶ線分f1と第1部36aの輪郭との最大離間距離L10(図9参照)は、好ましくは1.1mm以上、より好ましくは1.8mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下であり、また好ましくは1.1mm以上10mm以下、より好ましくは1.8mm以上8mm以下である。上記と同様の観点から、幅方向Dの両端を結ぶ線分f1と第2部36bの輪郭との最大離間距離L11(図9参照)は、好ましくは0.9mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下であり、また好ましくは0.9mm以上5mm以下、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0041】
本実施形態の芯体30bは、屈曲部38が、縦方向Xに対して第2部36b側に偏るように傾斜している。即ち、塗布用具2が容器4内に挿入された状態において、第1部36a側が、該容器4の高さ方向における底部47側を向くように、塗布部3bが該支持軸23の軸方向に対して傾斜している。斯かる構成により、塗布用具2を用いた化粧料5の塗布を容易に行うことができると共に、主塗布面として使用しない第2部36bの剤をより効率的にしごき取ることができる。上記の効果をより確実に奏させる観点から、支持軸23の軸方向に対する屈曲部38の傾斜角度θ10(図6参照)は、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であり、また好ましくは60°以下、より好ましくは40°以下であり、また好ましくは5°以上60°以下、より好ましくは10°以上40°以下である。
【0042】
図10(a)~(c)には、塗布部3bをしごき弁41によってしごく状態が示されている。説明の便宜上、図10においても植毛31の図示を省略する。本実施形態の化粧料塗布装置1bにおいても、前述した第1実施形態のように、塗布用具2を容器4から抜き出す際、塗布部3bに付着した化粧料5が、しごき弁41によってしごき落とされる。図10(a)、図10(b)及び図10(c)において、a-1、b-1、c-1は、塗布部3aが化粧料5内に浸っている状態から引き上げられて、しごき弁41に当接し始めた状態である。この状態においては、しごき弁41の塗布部当接部41aにおける上端部の開口形状、及び下端部の開口形状は、いずれも変形することなく円形を保持している。
【0043】
図10(a)、図10(b)及び図10(c)において、a-2、b-2、c-2は、塗布部3bを更に引き抜いて、最大径部35bが、塗布部当接部41aの内側に配置された状態であり、a-3、b-3、c-3及びa-4、b-4、c-4は、塗布部3aを更に引き抜いた状態である。塗布部3bは、前記幅方向Dの両端の稜線32a,32bにてしごき孔42を押し拡げつつ、しごき孔42及びこれを形成する塗布部当接部41aの開口形状を、最大径部35bの横断面の輪郭形状に沿って変形させる。第1実施形態と同様に、本実施形態における塗布部3bにおいても、塗布部3bを上方に引き抜く過程で、塗布部当接部41bの内周縁と塗布部3bとの間に、塗布部3bの周方向に長い隙間が形成され、該隙間に保持された化粧料5が該塗布部3bに薄く且つ均一に分布した状態となる。本実施形態の塗布部3bは、芯体30bが、支持軸23の軸方向に対して第2部36bに偏って傾斜する屈曲部38を有しているので、しごき孔を通過する過程で、第1部36a側よりも第2部36b側に付着した化粧料5がよりしごき落される〔図10(b)参照〕。これにより、塗布部3bに付着する化粧料5をより制御することができる。
【0044】
次にしごき孔42及びしごき弁41について詳述する。
図11には、しごき孔42の平面視形状のバリエーションが示されている。上述した実施形態においてしごき孔42の平面視形状は円形であったが〔図11(a)参照〕、これに限定されず、五角形、六角形等の多角形であってもよく〔図11(b)~(d)参照〕、六芒星形等の星形形状であってもよい〔図11(e)及び(f)参照〕。また、しごき弁41の輪郭を構成する線は、直線であってもよく、曲線であってもよい。しごき孔42の平面視形状は、塗布部当接部41aの環状構造の形状を調整することにより、形成することができる。また、しごき孔42は、中央に向かって突出する突起43を周縁に複数有するものであってもよい〔図11(g)参照〕。図11(g)に示すしごき孔42gは、その周縁に放射状に配置された複数の突起43を有する。
【0045】
塗布部3aに付着する化粧料5の量をより制御する観点から、芯体30は、最大径部35の幅方向Dの長さL1(図4図9参照)が、しごき孔42の内径d3〔図11(a)参照〕よりも長いことが好ましい。上記と同様の観点から、芯体30における最大径部35の幅方向Dの長さL1(図4図9参照)は、しごき孔42の内径に対して、好ましくは103%以上、より好ましくは105%以上であり、また好ましくは400%以下、より好ましくは300%以下であり、また好ましくは103%以上400%以下、より好ましくは105%以上300%以下である。しごき孔42の内径d3は、塗布部3の通過によって変形する前の内径である。上記と同様の観点から、しごき孔42の内径d3〔図11(a)参照〕は、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下であり、また好ましくは2mm以上10mm以下、より好ましくは2.5mm以上7mm以下である。
【0046】
図12には、第2実施形態の塗布部3bの通過前及び通過中における、図11(f)に示すしごき孔42fの平面視形状の変化が、最大径部35bとともに示されている。図12に示す符号42fが、塗布部3bの通過前におけるしごき孔の平面視形状であり、符号42f´が、塗布部3bの通過中におけるしごき孔の平面視形状である。しごき孔42fは、図12に示すように、芯体の稜線32部分によって押し拡げられている。特に幅方向Dの両端の稜線32a,32b部分の位置で、しごき孔42fが幅方向Dに拡大し、且つ最大径部35bの横断面の輪郭形状に応じて変形している。
一方、図11(b)及び(c)に示すしごき孔42a,42bは、その輪郭が直線によって形成されている。芯体の稜線32部分によってしごき孔が過度に押し拡げられることを効果的に抑制して、塗布部の稜線32付近に化粧料をより容易に薄く且つ均一に保持させる観点から、塗布部がしごき孔を通過する際、稜線32が、しごき孔42の輪郭を形成する直線部分と当接した状態となることが好ましい。
【0047】
塗布部3に付着した化粧料5をより効果的にしごく観点から、しごき弁41は、芯体30より変形しやすいことが好ましい。これにより、しごき孔42の変形量が増大し、該しごき孔42を通過する過程でより均一にしごき取ることができ、塗布部3に付着する化粧料5の量をより制御し易くなる。前記の「変形」とは、所定の負荷を加えると元の形状が変形し、該負荷が除かれると元の形状に戻ることを意味する。上記の効果をより確実に奏させる観点から、しごき弁41の変形度は、芯体30の変形度よりも大きいことが好ましい。
しごき弁41又は芯体30の変形度は、以下の方法により測定される。図5(a-2)又は図10(a-2)に示すように、最大径部35が塗布部当接部41aの内側に配置された状態における、しごき孔42の内径d3´と、塗布部3の最大径部35´の幅方向Dの長さL1´とを測定する。測定したしごき孔42の内径d3´と初期状態のしごき孔42の内径d3との比(内径d3´/内径d3)を算出して、これをしごき弁41の変形度とする。また、測定した最大径部35´の幅方向Dの長さL1´と初期状態の最大径部35の幅方向Dの長さL1との比(L1/L1´)を算出して、これを芯体30の変形度とする。「初期状態」とは、塗布部3がしごき孔42を通過する前の状態であり、例えば図5(a-1)又は図10(a-1)に示す状態である。
【0048】
上記と同様の観点から、しごき弁41の変形度は、芯体30の変形度よりも大きいことを条件として、好ましくは1.02以上、より好ましくは1.04以上であり、また好ましくは4以下、より好ましくは3以下であり、また好ましくは1.02以上4以下、より好ましくは1.04以上3以下である。上記と同様の観点から、芯体30の変形度は、好ましくは1以上、より好ましくは1.01以上であり、また好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下であり、また好ましくは1以上1.5以下、より好ましくは1.01以上1.4以下である。
【0049】
前記変形度は例えば、しごき弁41及び芯体30の各硬度や、しごき弁41の肉厚等によって制御される。しごき弁41を芯体30よりも変形し易くする観点から、しごき弁41の硬度は、芯体30の硬度よりも低いことが好ましい。上記と同様の観点から、しごき弁41の硬度は、芯体30の硬度よりも低いことを条件として、Aスケール硬度で好ましくは30°以上、より好ましくは40°以上であり、また好ましくは90°以下、より好ましくは80°以下であり、また好ましくは30°以上90°以下、より好ましくは40°以上80°以下である。特に、塗布部当接部41aの硬度が前記の範囲内であることが好ましい。上記と同様の観点から、芯体30の硬度は、Aスケール硬度で好ましくは45°以上、より好ましくは50°以上であり、また好ましくは100°以下、より好ましくは90°以下であり、また好ましくは45°以上100°以下、より好ましくは50°以上90°以下である。
【0050】
しごき弁41の変形度をより大きくする観点から、しごき弁41の厚みは、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、また好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下であり、また好ましくは0.2mm以上4mm以下、より好ましくは0.3mm以上3mm以下である。特に、塗布部当接部41aの厚みが前記の範囲内であることが好ましい。上記と同様の観点から、塗布部当接部41aは、しごき孔42の周縁に放射状に形成されたスリットを有していることが好ましい。
【0051】
芯体30の形成材料は、特に制限されないが、熱可塑性プラスチックからなることが好ましい。熱可塑性プラスチックとしては、例えば熱可塑性ポリエステル/エステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテル/エステルエラストマー、アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー(ABS)、ポリオキシメチレン(POM)又はポリブチルテレフタレート(PBT)等が挙げられる。ポリオキシメチレンは、オキシメチレン(-CH2O-)を単位構造にもつポリマーであり、ホルムアルデヒドのみが重合した ホモポリマーでもよく、オキシエチレン単位を含むコポリマーでもよい。
支持軸23の形成材料は、芯体30の形成材料と同じものを用いることができる。
【0052】
植毛31の形成材料には、前述したポリアミド樹脂等の合成樹脂を用いることができる。合成樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド、PET、PBT等のポリエステル樹脂、レーヨン、絹、綿等のセルロース繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、またはそれらが混合された繊維などが挙げられる。
【0053】
しごき弁41は弾性変形可能な材料であることが好ましい。そのような形成材料としてとしては例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂やポリウレタンなどの各種エラストマーを用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを使用すると、射出成形によって製造することができる点で好ましい。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず、適宜変更可能である。例えば、上述した実施形態では、芯体の最大径部の横断面において、幅方向D又は直交方向Eに2本の稜線32が互いに対向するように位置していたが、幅方向Dの両端の稜線32a,32b以外の稜線32は、幅方向D又は直交方向Eにおいて互いに対向しないように位置していてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 口唇化粧料塗布装置
2 塗布用具
3a,3b 塗布部
4 容器
5 化粧料
21 蓋体
23 支持軸
30,30a,30b 芯体
32 稜線
35,35a,35b 最大径部
41 しごき弁
41a 塗布部当接部
42 しごき孔
D 幅方向
X 縦方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12