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  • 特許-感熱記録体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B41M5/42 221
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019052113
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020151936
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 佑香
(72)【発明者】
【氏名】緑川 佳美
(72)【発明者】
【氏名】平井 健二
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-025150(JP,A)
【文献】特開平03-176192(JP,A)
【文献】特開平01-040374(JP,A)
【文献】特開平03-187780(JP,A)
【文献】特開平03-193486(JP,A)
【文献】特開平03-197079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層並びに該感熱記録層上にバインダー及び顔料から成る保護層を有する感熱記録体において、該保護層が顔料として、レーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)が~10μmの非晶質シリカ、及びレーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)が3μm以上の炭酸カルシウムを含有し、該炭酸カルシウムが紡錘形凝集体である、感熱記録体。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムの体積50%平均粒子径(D50)が3~10μmである請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記保護層中の前記炭酸カルシウム及び前記非晶質シリカを合計した含有量(固形分)が40~65重量%である請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記保護層中の前記炭酸カルシウム及び前記非晶質シリカの重量比が20/80~80/20である請求項1~3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低温環境下における画像精細性、特にバーコード読み取り適性が良好である感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録体は無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう。)と電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう。)とを含有する塗工液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工して感熱記録層を設けたものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。感熱記録体は、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンター、自動券売機、計測用レコーダー、スーパーマーケットやコンビニなどのレシート等の記録媒体として広範囲に使用されている。
近年、プリンターの小型化、携帯化が進み、屋外で印字されることも多くなっているが、冬季等の低温環境下で画像を印字した場合、画像がゆがんでしまい精細性を欠くことがある。特に低温環境下でバーコードを印字した場合に、目視は可能であっても読み取り機で読み取ることができず、バーコード読み取り適性が不十分になるという問題があった。
このような印字画像の画質等を改善するために、感熱記録層に複数種の顔料を採用すること等が行われてきた(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-190908
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年感熱記録体について、低温環境下における画像精細性、特にバーコード読み取り適性が求められている。本発明において低温環境とは、0℃~-20℃をいう。
なお、実務上、バーコードが印字された感熱記録体のバーコードは、ヒトの目視ではなく、バーコード読み取り機(バーコード検証機)で機械的に読み取られる。したがって、本発明において、感熱記録体にバーコードが適正に印字されたかどうか(バーコード読み取り適性)は、ヒトの目視ではなく、バーコード読み取り機(バーコード検証機)を用いて評価する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、様々な材料を検討した結果、感熱記録体(特許文献1等)で用いられていた顔料について、ロイコ染料と顕色剤とを必須に含む感熱記録層上に、バインダー及び顔料から成り、ロイコ染料と顕色剤とを含まない保護層を設け、この保護層に顔料として、特定範囲の粒子径を有する非晶質シリカ及び炭酸カルシウムを含有させることにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層並びに該感熱記録層上にバインダー及び顔料から成る保護層を有する感熱記録体において、該保護層が顔料として、レーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)が4~10μmの非晶質シリカ、及びレーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)が3μm以上の炭酸カルシウムを含有する感熱記録体である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例の感熱記録体の-10℃環境下における印字物を示す。Aは実施例1、Bは比較例5の物を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の感熱記録体は、支持体上に、ロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を有する。この感熱記録層は、更に任意に、増感剤、バインダー、顔料、架橋剤、画像安定剤、その他の成分を含有してもよい。
この支持体は、所望する感熱記録体の品質に合わせて、紙、再生紙、合成紙、フィルム、プラスチックフィルム、発泡プラスチックフィルム、不織布など、従来公知の支持体から適宜選択可能であり、特に限定されるものではない。また、これらを組み合わせた複合シートを支持体として使用してもよい。
【0008】
本発明で使用するロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色のロイコ染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0009】
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3、3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕;3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド;〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0010】
<フルオラン系ロイコ染料>
3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o、p-ジメチルアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアミノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ベンジルアミノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-p-メチルアニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン; 3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン; 3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン; 3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔a〕フルオラン; 3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔c〕フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o、p-ジメチルアニリノ)フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-クロロフルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン; 3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-p-メチルアニリノフルオラン; 3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン; 3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン; 3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン; 3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-キシルアミノ)-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン; 3-(N-エチル-p-トルイディノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン; 2-(4-オキサヘキシル)-3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 2-(4-オキサヘキシル)-3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 2-(4-オキサヘキシル)-3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン; 2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-メトキシ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-クロロ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-ニトロ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-アミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2-ヒドロキシ-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2、4-ジメチル-6-〔(4-ジメチルアミノ)アニリノ〕-フルオラン
【0011】
<フルオレン系ロイコ染料>
3、6、6'-トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9、3´-フタリド〕; 3、6、6'-トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9、3´-フタリド〕
【0012】
<ジビニル系ロイコ染料>
3、3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4、5、6、7-テトラブロモフタリド; 3、3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4、5、6、7-テトラクロロフタリド; 3、3-ビス-〔1、1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4、5、6、7-テトラブロモフタリド; 3、3-ビス-〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4、5、6、7-テトラクロロフタリド
【0013】
<その他>
3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド; 3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド; 3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド; 3、3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド; 3、6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(3´-ニトロ)アニリノラクタム; 3、6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(4´-ニトロ)アニリノラクタム; 1、1-ビス-〔2'、2'、2''、2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2、2-ジニトリルエタン; 1、1-ビス-〔2'、2'、2''、2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2-β-ナフトイルエタン; 1、1-ビス-〔2'、2'、2''、2''-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2、2-ジアセチルエタン; ビス-〔2、2、2'、2'-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-メチルマロン酸ジメチルエステル
【0014】
本発明の感熱記録体に使用することのできる顕色剤としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウムなどの無機酸性物質、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-n-プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4'-メチルジフェニルスルホン、4-ヒドロキシフェニル-4'-ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4'-メチルフェニルスルホン、1-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]-4-[4-(4-イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタン、特開2003-154760号公報記載のフェノール縮合組成物、特開平8-59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4-ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5-ジ(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3-オキサペンタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[α-メチル-α-(4'-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3-ビス[α-メチル-α-(4'-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、2,2'-チオビス(3-tert-オクチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-tert-オクチルフェノール)、WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、WO02/081229号あるいは特開2002-301873号公報記載の化合物、またN,N'-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p-クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4-[2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4-[3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5-[p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、及びこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。これらの顕色剤は、単独で又は2種以上混合して使用することもできる。1-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]-4-[4-(4-イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタンは、例えば、三菱ケミカル株式会社製商品名TOMILAC214として入手可能であり、特開2003-154760号公報記載のフェノール縮合組成物は、例えば、三菱ケミカル株式会社製商品名TOMILAC224として入手可能であり、国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物は、日本曹達株式会社製商品名D-90として入手可能である。また、WO02/081229号等に記載の化合物は、日本曹達株式会社製商品名NKK-395、D-100として入手可能である。
【0015】
本発明の感熱記録体に使用することのできる増感剤としては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、1,2-ジ-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-ベンジルビフェニル、β-ベンジルオキシナフタレン、4-ビフェニル-p-トリルエーテル、m-ターフェニル、1,2-ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-α-ナフチルカーボネート、1,4-ジエトキシナフタレン、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニルエステル、o-キシレン-ビス-(フェニルエーテル)、4-(m-メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4'-エチレンジオキシ-ビス-安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2-(4-メトキシ-フェノキシ)エチル]エーテル、p-ニトロ安息香酸メチル、p-トルエンスルホン酸フェニルなどを例示することができるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの増感剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0016】
本発明で使用可能なバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロースエーテル及びその誘導体、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉などの澱粉類、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドなどのポリアクリルアミド類、ポリエステルポリウレタン系樹脂、ポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系アイオノマー樹脂などのウレタン系樹脂、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル共重合体などのスチレン-ブタジエン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、アラビヤゴム、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
本発明で使用可能な顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの無機又は有機充填剤などを例示することができる。これらは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
【0018】
本発明で使用可能な架橋剤としては、グリオキザール、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウム剤などを例示することができる。
【0019】
また、本発明においては、前記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、記録画像の耐油性効果などを示す画像安定剤として、4,4'-ブチリデン(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチル-4,4'-スルホニルジフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4-ベンジルオキシ-4'-(2,3-エポキシ-2-メチルプロポキシ)ジフェニルスルホン等を使用することもできる。
このほかにベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、滑剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0020】
本発明の感熱記録体に使用する電子供与性ロイコ染料、電子受容性顕色剤、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、電子供与性ロイコ染料1重量部に対して電子受容性顕色剤0.5~10重量部、増感剤0.5~10重量部程度が使用される。
その他の任意成分である、バインダー、顔料、架橋剤、画像安定剤、その他の成分の種類及び量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、バインダーは感熱記録層(固形分)100重量部に対し固形分で5~50重量部程度、顔料は感熱記録層(固形分)100重量部に対し固形分で0~50重量部程度が適当である。滑剤を使用する場合には、滑剤の含有量は感熱記録層(固形分)100重量部に対し固形分で5~10重量部程度が適当である。
【0021】
本発明の感熱記録体は、この感熱記録層上に保護層を有し、この保護層は、バインダー並びに特定範囲の粒子径を有する非晶質シリカ及び炭酸カルシウムを含有する。
【0022】
本発明で用いる非晶質シリカの体積50%平均粒子径(D50)は4~10μmであり、好ましくは5~10μmである。この体積50%平均粒子径(D50)は、レーザー回折/散乱法で測定する。
レーザー回折/散乱法の測定装置としては、例えば、堀場製作所社の粒子径分布測定装置「Partica」、マルバーン社の粒度分布測定装置「MASTER SIZER S」などがある。
更に、この非晶質シリカのレーザー回折/散乱法で測定した体積90%平均粒子径(D90)を15μm以下にすることにより、印字画像の精細性が更に良好となる。
【0023】
本発明において、非晶質シリカの吸油量は150ml/100g以上であることが好ましく、150~400ml/100gであることがより好ましい。また、非晶質シリカの被表面積は250m/g以下であることが好ましい。
非晶質シリカの吸油量の測定はJIS K5101に従って行ない、比表面積の測定はBET法に従って行なう。
このような非晶質シリカとしては、例えば、カープレックス101(DSLジャパン社製)、ミズカシルP526(水澤化学社製)などが挙げられる。
【0024】
本発明で用いる炭酸カルシウム(以下「炭カル」ともいう。)の体積50%平均粒子径(D50)は3μm以上であり、好ましくは3~10μmである。この体積50%平均粒子径(D50)は、上記と同様にレーザー回折/散乱法で測定する。
このような炭酸カルシウムとしては、例えば、白艶華PZ(白石カルシウム社製、立方型炭酸カルシウム凝集体)、PC/PCX(同、紡錘型炭酸カルシウム)、カルライトSA(同、アラゴナイト型炭酸カルシウム)、ツネックスE(同、紡錘型炭酸カルシウム凝集体)などが挙げられる。
本発明では、低温環境下における画像精細性、特にバーコード読み取り適性が良好であるため紡錘形凝集体である炭酸カルシウムが好ましい。この紡錘型炭酸カルシウム凝集体は、紡錘状の炭酸カルシウムの1次粒子が凝集した形状であるため、粒子内部の空隙が大きく、また印字時には感熱プリンターの印字ヘッドと適度な密着性を保つことが可能である。
【0025】
本発明では、優れた低温環境下における画像精細性、特にバーコード読み取り適性を得るため、保護層に特定範囲の粒子径を有する非晶質シリカと炭酸カルシウムとを含有する。
保護層中の非晶質シリカ及び炭酸カルシウムを合計した含有量(固形分)は好ましくは40~65重量%であり、より好ましくは45~60重量%である。
非晶質シリカ/炭酸カルシウムの重量比は、好ましくは20/80~80/20、より好ましくは40/60~60/40である。
【0026】
保護層に使用するバインダーとしては、上記の感熱記録層に使用可能なバインダーの中で、ポリビニルアルコール類及びアクリル系樹脂が好ましい。
ポリビニルアルコール類としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好ましい。
このアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分を含み、(メタ)アクリル酸がアクリル系樹脂100重量部中1~10重量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸は、アルカリ可溶性であり、中和剤の添加によりアクリル系樹脂を水溶性樹脂にする特性を有している。アクリル系樹脂を水溶性樹脂に変化させることによって、特に保護層中に顔料を含有する場合、顔料への結合性が著しく向上し、多量の顔料含有下でも優れた強度を有する保護層を形成することができる。(メタ)アクリル酸と共重合可能な成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどのアクリル酸アルキル樹脂及びエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、スチレン又はその誘導体によって変性された上記アクリル酸アルキル樹脂などの変性アクリル酸アルキル樹脂、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステルを例示できるが、特に(メタ)アクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチルを配合することが好ましい。(メタ)アクリロニトリルは非コアシェル型アクリル系樹脂100部中15~70部配合することが好ましい。また、メタクリル酸メチルは非コアシェル型アクリル系樹脂100部中20~80部含むことが好ましい。(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルを含む場合、(メタ)アクリロニトリルを非コアシェル型アクリル系樹脂100部中15~18部、メタクリル酸メチルを非コアシェル型アクリル系樹脂100部中20~80部配合することが好ましい。アクリル系樹脂は、好ましくは非コアシェル型アクリル系樹脂である。
このアクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、好ましくは95℃以下であり、更に好ましくは50℃より高い。このTgは示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0027】
また、保護層は、耐水性等を改善するために、好ましくはバインダーとしてカルボキシル基含有樹脂を含有し、更にエピクロロヒドリン系樹脂及び/又はポリアミン/ポリアミド系樹脂(エピクロロヒドリン系樹脂に含まれるものを除く。)を含有してもよい。
このカルボキシル基含有樹脂としては、上記のカルボキシ変性ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0028】
このカルボキシ変性ポリビニルアルコールは、例えば、ポリビニルアルコールとフマル酸、無水フタル酸、無水メリト酸、無水イタコン酸などの多価カルボン酸との反応物、あるいはこれらの反応物のエステル化物、さらに酢酸ビニルとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸、メタアクリル酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合物の鹸化物として得られる。具体的な製造方法としては、例えば特開昭53-91995号公報などに例示されている方法が挙げられる。また、カルボキシ変性ポリビニルアルコールの鹸化度は72~100mol%であることが好ましく、重合度は500~2400、より好ましくは1000~2000である。
【0029】
このエピクロロヒドリン系樹脂は、分子中にエポキシ基を含有していることを特徴とする樹脂であり、例えば、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などを挙げることができ、これらを単独又は併用することができる。また、エピクロロヒドリン系樹脂の主鎖に存在するアミンとしては第1級から第4級までのものを使用することができ、特に制限はない。さらに、耐水性が良好なことから、カチオン化度および分子量はカチオン化度5meq/g・Solid以下(pH7での測定値)、分子量50万以上が好ましい。エピクロロヒドリン系樹脂の具体例としては、スミレーズレジン650(30)、スミレーズレジン675A、スミレーズレジン6615(以上、住友化学社製)、WS4002、WS4020、WS4024、WS4030、WS4046、WS4010、CP8970(以上、星光PMC社製)などが挙げられる。
【0030】
このポリアミン/ポリアミド系樹脂は、分子中にエポキシ基を有さず、例えば、ポリアミド尿素樹脂、ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミド樹脂、ポリアミンポリ尿素樹脂、変性ポリアミン樹脂、変性ポリアミド樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂、ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂などを挙げることができ、これらを単独又は併用することができる。ポリアミン/ポリアミド系樹脂の具体例としては、スミレーズレジン302(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素樹脂)、スミレーズレジン712(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素樹脂)、スミレーズレジン703(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素樹脂)、スミレーズレジン636(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素樹脂)、スミレーズレジンSPI-100(住友化学社製:変性ポリアミン樹脂)、スミレーズレジンSPI-102A(住友化学社製:変性ポリアミン樹脂)、スミレーズレジンSPI-106N(住友化学社製:変性ポリアミド樹脂)、スミレーズレジンSPI-203(50)(住友化学社製)、スミレーズレジンSPI-198(住友化学社製)、プリンティブA-700、プリンティブA-600(以上、旭化成社製)、PA6500、PA6504、PA6634、PA6638、PA6640、PA6644、PA6646、PA6654、PA6702、PA6704(以上、星光PMC社製:ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂)、CP8994(星光PMC社製:ポリエチレンイミン樹脂)などが挙げられる。特に制限はないが、印字濃度が良好なことから、ポリアミン系樹脂(ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアミンポリ尿素樹脂、変性ポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂、ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂)を使用することが好ましい。
【0031】
本発明の保護層は、これらの他に、上記の感熱記録層に使用可能な架橋剤、必要に応じて界面活性剤や粘度調整剤等のその他の成分を所望の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。
【0032】
保護層中のバインダーと顔料の総量は、固形分で、通常80~100重量%、好ましくは90~100重量%であり、顔料100重量部に対してバインダーは30~300重量部程度であることが好ましい。
バインダー及び顔料以外の成分は、それぞれ保護層中15重量%、好ましくは10重量%を超えない。
【0033】
本発明の感熱記録体は、任意に、支持体と感熱記録層との間に下塗り層を有してもよく、また、支持体の感熱記録層とは反対面にバックコート層を設けてもよい。その他これらの層間に使用目的に応じて適宜構成した塗工層を設けてもよい。
【0034】
感熱記録層や保護層以外の任意に設けられる各塗工層は、上記のバインダー、顔料、架橋剤、その他の成分を所望の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0035】
感熱記録層、保護層、その他の塗工層の塗工方法は特に限定されるものではなく、カーテン塗工法、エアーナイフ塗工法、バーブレード塗工法、ロッドブレード塗工法、ベントブレード塗工法、ベベルブレード塗工法、ロール塗工法、スプレー塗工法など、従来公知の方法を採用することができる。
【0036】
感熱記録層、保護層、その他の塗工層の塗工量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、例えば、感熱記録層の一般的な塗工量は固形分で2~12g/m程度であり、保護層の一般的な塗工量は固形分で1~5g/m程度である。
また、各層の塗工後にスーパーカレンダー掛けなどの平滑化処理を施すなど、感熱記録体分野における各種公知の技術を必要適宜付加することができる。
【実施例
【0037】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0038】
各分散液と塗工液を以下のように調製した。
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、下塗り層用塗工液を調製した。
下塗り層用塗工液
焼成カオリン(BASF社製、商品名:アンシレックス90)
100.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン株式会社製、
商品名:ST5526、固形分48%) 10.0部
水 50.0部
【0039】
下記配合の顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)、増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5μmになるまで湿式磨砕を行い、調製した。
【0040】
顕色剤分散液(A液)
4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン
(三菱ケミカル株式会社製、商品名:NYDS) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117、固形分10%)
5.0部
水 1.5部
【0041】
ロイコ染料分散液(B液)
3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン
(山本化成株式会社製、商品名:ODB-2) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
【0042】
増感剤分散液(C液)
ジフェニルスルホン(Volant社製、商品名:DPS) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
【0043】
次いで、下記の割合で各分散液を混合して感熱記録層用塗工液1~2を調製した。
<感熱記録層用塗工液1>
顕色剤分散液(A液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 25.0部
【0044】
<感熱記録層用塗工液2>
顕色剤分散液(A液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液(白石カルシウム社製、商品名:
ツネックスE、D50:5.8μm、固形分50%) 9.0部
非晶質シリカ分散液(DSLジャパン社製、商品名:カープレックス101、
D50:6.5μm、固形分25%) 22.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 25.0部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製、商品名:ハイドリンZ-7-30、
固形分30%) 2.0部
【0045】
次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層用塗工液1~2を調製した。
<保護層用塗工液1>
紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液(ツネックスE) 9.0部
非晶質シリカ分散液(カープレックス101) 22.0部
アクリル系樹脂(三井化学社製、商品名:ASN1004K、
固形分18%) 30.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 2.0部
【0046】
<保護層用塗工液2>
紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液(ツネックスE) 6.6部
非晶質シリカ分散液(カープレックス101) 10.8部
カルボキシ変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:
KL318、固形分10%) 50.0部
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC社製、商品名:
WS4030、固形分25%) 4.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 2.0部
【0047】
<保護層用塗工液3>
紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液(ツネックスE) 9.0部
非晶質シリカ分散液(カープレックス101) 22.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 50.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 2.0部
【0048】
[実施例1]
支持体(坪量47g/mの上質紙)の片面に、下塗り層用塗工液を、固形分で塗工量10.0g/mとなるようにベントブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、下塗り層塗工紙を得た。
この下塗り層塗工紙の下塗り層上に、感熱記録層用塗工液1を、固形分で塗工量6.0g/mとなるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、感熱記録層塗工紙を得た。
この感熱記録層塗工紙の感熱記録層上に、保護層用塗工液1を、固形分で塗工量3.0g/mとなるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、スーパーカレンダーで平滑度が100~500秒になるように処理して感熱記録体を作製した。
[実施例2]
保護層用塗工液1において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液の配合量を8.0部、非晶質シリカ分散液の配合量を14.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例3]
保護層用塗工液1を保護層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例4]
保護層用塗工液1において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液の配合量を11.2部、非晶質シリカ分散液の配合量を28.8部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例5]
保護層用塗工液2において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液の配合量を4.2部に変更し、非晶質シリカ分散液の配合量を7.2部に変更した以外は、実施例3と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例6]
保護層用塗工液1を保護層用塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0049】
[比較例1]
保護層用塗工液1において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液を配合せず、水酸化アルミニウム分散液(マーティンスベルグ社製、商品名:マーティフィンOL、D50:1.5μm、固形分50%)を12.0部配合し、非晶質シリカ分散液の配合量を40.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例2]
保護層用塗工液1において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液の配合量を20.0部に変更し、非晶質シリカ分散液を配合しない以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例3]
保護層用塗工液1において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液を配合せず、非晶質シリカ分散液をの配合量40.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0050】
[比較例4]
感熱記録層用塗工液1を感熱記録層塗工液2に変更し、保護層を設けない以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例5]
感熱記録層塗工液2において、紡錘凝集状炭酸カルシウム分散液の配合量を27.0部に変更し、非晶質シリカ分散液の配合量を66.0部に変更した以外は、比較例4と同様にして感熱記録体を作製した。
【0051】
作製した感熱記録体について、下記評価を行った。
<発色性能(印字濃度)>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH-PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.35mJ/dot、印字速度50mm/secで市松模様を印字した。印字部の印字濃度をマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定し、発色性能(印字濃度)を評価した。
【0052】
<バーコード読み取り適性>
作製した感熱記録体について、ゼブラ社製ラベルプリンタ140XiIIIを用い、下記2つの環境条件下で印字レベル+10、印字速度15.2cm/秒(6インチ/秒)で、バーコード(CODE39)を縦方向(プリンタヘッドの移動方向とバーコードが直交)に印字した後、印字されたバーコードをバーコード検証機(Honeywell社製、QCPC600、光源640nm)で読み取り試験を実施し、バーコード読み取り適性を評価した。評価結果をANSI規格のシンボルグレードで記した。
(1)23℃
(2)-10℃
シンボルグレードは、バーコードをバーと垂直方向に10分割して、各箇所1回ずつ読み取り試験を実施し、その平均値を(優)A、B、C、D、F(劣)の5段階評価で表したものである。
なお、図1に感熱記録体の(2)-10℃環境下における印字物を示す(A:実施例1、B:比較例5)。なお、上記のように、バーコード読み取り適性は、ヒトの目視で評価することは適当ではなく、バーコード読み取り機(バーコード検証機)を用いて評価される。
【0053】
結果を下表に示す。
【表1】
図1