(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20230428BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B60C11/01 B
B60C11/13 B
(21)【出願番号】P 2019091135
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吹田 晴信
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079767(JP,A)
【文献】特開2018-083560(JP,A)
【文献】特開2014-213835(JP,A)
【文献】特開2012-162135(JP,A)
【文献】特開2008-265368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド面に、タイヤ周方向に延びるショルダー陸部と、前記ショルダー陸部の接地端よりもタイヤ赤道側にてタイヤ周方向に延び、前記ショルダー陸部をタイヤ赤道側のメイン陸部と接地端側のサブ陸部とに区分する細溝と、を有する空気入りタイヤにおいて、
前記細溝の外側側壁は、前記サブ陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部と、前記直線部に滑らかに接続される第一円弧部と、前記細溝の溝底に
、直線を挟むことなく接続点を介して滑らかに接続される第二円弧部とを含み、
前記第一円弧部は前記外側側壁よりもタイヤ赤道側に円弧の中心を有し、前記第二円弧部は、前記外側側壁よりもタイヤ幅方向外側に円弧の中心を有することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第一円弧部及び前記第二円弧部の曲率半径は、それぞれ、3mmより大きく12mmより小さい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記溝底は単一の円弧からなる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記細溝の内側側壁は、前記メイン陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部を含み、
前記外側側壁の直線部と前記内側側壁の直線部との間隔をL1とし、前記溝底のタイヤ幅方向における最大空間寸法をL2とするとき、
1.5≦L2/L1≦2.3である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記細溝の内側側壁は、前記メイン陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部と、一端が前記直線部に滑らかに接続され他端が前記溝底に滑らかに接続される第三円弧部と、から構成され、
前記第三円弧部の曲率半径は、前記第一円弧部の曲率半径及び前記第二円弧部の曲率半径よりも小さい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側側壁は、一端において前記第一円弧部に滑らかに接続され、他端において前記第二円弧部に滑らかに接続される中間直線部を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド面のショルダー陸部の接地端近傍に細溝が設けられた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の空気入りタイヤでは、一般に、トレッド面のショルダー陸部の接地端近傍において、接地圧が高くなる傾向がある。その結果、トレッド面の他の陸部に比べて、ショルダー陸部の接地端近傍での摩耗量が大きくなる偏摩耗が問題となることがある。このような偏摩耗を防止する方法として、トレッド面のショルダー陸部の接地端近傍に、その接地端よりもタイヤ幅方向内側にてタイヤ周方向に延びる細溝(「ディファレンシャルグルーブ」とも言われる)を設けることが、広く行われている。
【0003】
特許文献1~3には、それぞれ、このような細溝をショルダー陸部に有する空気入りタイヤが開示されている。これらの文献に開示される細溝は、ショルダー陸部を、タイヤ赤道側のメイン陸部と接地端側のサブ陸部とに区分するとともに、当該細溝の溝底が、タイヤ幅方向内側に向かって膨出する形状を有する。これにより、メイン陸部の細溝に近い部分での接地圧を低減し、メイン陸部内の接地圧の均一化を図ってショルダー陸部の偏摩耗を抑制する。
【0004】
しかしながら、ショルダー陸部にタイヤ周方向に延びる細溝を設けると、タイヤの使用に伴い、細溝の溝底付近からクラックが形成されることがある。このクラックは溝底クラックと呼ばれる。溝底クラックには、大別して、溝底付近からタイヤ径方向内側に向かって延びる溝底クラックと、溝底付近からタイヤ幅方向外側(ウォール側)に向かってサブ陸部を横断するように形成される溝底クラックとがある。
【0005】
図4に、従来の細溝の一例がタイヤ幅方向に沿う断面で示されている。細溝90は、ショルダー陸部83を、タイヤ赤道側のメイン陸部81と接地端TE側のサブ陸部82とに区分している。細溝90は、相対的にタイヤ幅方向内側に位置する内側側壁91と、相対的にタイヤ幅方向外側に位置する外側側壁92と、一端が内側側壁91に接続され、他端が外側側壁92に接続される溝底93と、から構成される。外側側壁92は略直線により形成され、溝底93は複数の円弧を組み合わせた曲線により形成されており、略直線の外側側壁92が曲線の溝底93に接続される接続点94は、曲がり開始点といえる。
【0006】
直線が曲線に接続される曲がり開始点は、走行時に歪みが集中しやすくクラックの起点となりやすい。よって、
図4の細溝90では、タイヤの使用に伴い、直線が曲線に接続される曲がり開始点である接続点94から、タイヤ幅方向外側に向かって延びる溝底クラックCRが発生している。溝底クラックCRが発生すると、走行中に受ける変形によってサブ陸部82が欠けてしまい、細溝90による偏摩耗抑制効果が失われることがある。
【0007】
また、細溝は、タイヤを加硫成型する際に、金型に設けられた突起によって形成される。そのため、細溝90のようにタイヤ幅方向内側に向かって溝底が膨出する形状を有する場合は、タイヤから金型を引き抜く脱型時に、細溝90から突起を引抜く際の抵抗が大きくなり、それによって突起が変形したり損傷したりするなどの問題があった。したがって、かかる形状の細溝においては、脱型性を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-213835号公報
【文献】国際公開第2008/111582号
【文献】特開2018-079767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、トレッド面のショルダー陸部の接地端近傍に細溝が設けられた空気入りタイヤにおいて、当該細溝からの脱型性を維持しつつ、当該細溝の溝底付近から発生する溝底クラックの低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、以下の特徴を有する。すなわち、トレッド面に、タイヤ周方向に延びるショルダー陸部と、前記ショルダー陸部の接地端よりもタイヤ赤道側にてタイヤ周方向に延び、前記ショルダー陸部をタイヤ赤道側のメイン陸部と接地端側のサブ陸部とに区分する細溝と、を有する空気入りタイヤにおいて、
前記細溝の外側側壁は、前記サブ陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部と、前記直線部に滑らかに接続される第一円弧部と、前記細溝の溝底に滑らかに接続される第二円弧部とを含み、
前記第一円弧部は前記外側側壁よりもタイヤ赤道側に円弧の中心を有し、前記第二円弧部は、前記外側側壁よりもタイヤ幅方向外側に円弧の中心を有する。
【0011】
上記の構成を備える本発明によれば、細溝の外側側壁が、溝底に滑らかに接続される第二円弧部を有するため、外側側壁が溝底に接続される接続点は、曲がり開始点ではない。そのため、走行時に細溝に作用する歪みが分散しやすく、外側側壁が溝底に接続される接続点を起点としてタイヤ幅方向外側に向かって延びる溝底クラックの低減を図ることができる。また、外側側壁よりもタイヤ幅方向外側に円弧の中心を有する第二円弧部により、第二円弧部の深さ付近でのサブ陸部のタイヤ幅方向における幅が大きくなり、サブ陸部の剛性が高くなり、タイヤ幅方向外側に向かって延びる溝底クラックの発生が抑制できる。
【0012】
さらに、上記の構成を備える本発明によれば、細溝の外側側壁が、サブ陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部に滑らかに接続される第一円弧部を有するため、第一円弧部での深さ位置における溝幅を拡大して、細溝からの脱型性を維持することができる。
【0013】
前記第一円弧部及び前記第二円弧部の曲率半径は、それぞれ、3mmより大きく12mmより小さいとよい。第一円弧及び前記第二円弧の曲率半径が上記範囲にあるとき、細溝からの脱型性を効果的に維持しつつ、前記細溝の外側側壁に作用する歪みを適切に分散させて溝底クラックの低減効果を良好に得ることができる。
【0014】
前記溝底は、単一の円弧からなるとよい。単一の円弧を有する溝底は、一定で大きな曲率半径を採るため、歪みの分散効果が高い。よって、溝底クラックの低減を図ることができる。
【0015】
前記細溝の内側側壁は、前記メイン陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部を含み、前記外側側壁の直線部と前記内側側壁の直線部との間隔をL1とし、前記溝底のタイヤ幅方向における最大空間寸法をL2とするとき、1.5≦L2/L1≦2.3であるとよい。細溝がこの数値範囲を満たすとき、当該細溝からの脱型性を維持しつつ、前記細溝の溝底に作用する歪みを適切に分散させて、溝底クラックの低減効果を良好に得ることができる。
【0016】
前記細溝の内側側壁は、前記メイン陸部の外周面からタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部と、一端が前記直線部に滑らかに接続され他端が前記溝底に滑らかに接続される第三円弧部と、から構成され、前記第三円弧部の曲率半径は、前記第一円弧部の曲率半径及び前記第二円弧部の曲率半径よりも小さいとよい。第三円弧部の曲率半径を、第一円弧部の曲率半径及び第二円弧部の曲率半径よりも小さくすることで、第三円弧部の深さ位置における溝幅を拡大し、細溝からの脱型性を向上させることができる。さらに、溝底の曲率半径を拡大できるので、主に溝底付近からタイヤ径方向内側に向かって延びる溝底クラックの低減を図ることができる。
【0017】
前記外側側壁は、一端において前記第一円弧部に滑らかに接続され、他端において前記第二円弧部に滑らかに接続される中間直線部を有していても構わない。これにより、脱型性を維持しつつ、溝底クラックの発生を抑制するための設計の自由度が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。
【
図3】中間直線部を有する細溝の一例を示す断面図である。
【
図4】従来の溝底が膨出する細溝形状の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態の空気入りタイヤの一例を、タイヤ幅方向に沿う子午線半断面で示している。空気入りタイヤの主な形状がタイヤ赤道CLに対する両側で同様であるので、タイヤ赤道CLに対して一方側のみ図示している。タイヤは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備える。トレッド部3の外周面であるトレッド面30には、トレッドパターンが形成されている。このトレッドパターンは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝(31,32)と、主溝(31,32)及び接地端TEによって区切られた複数の陸部(33~35)とを備えている。
【0020】
主溝(31,32)の溝幅は、例えば、6mm~14mmである。溝幅の値は、トレッド面30における開口部で測定される。複数の陸部(33~35)には、リブやブロック等、様々な形状を採用できる。複数の陸部(33~35)のうち、最もタイヤ幅方向外側に位置する主溝31と接地端TEとに挟まれた陸部33は、ショルダー陸部である。ショルダー陸部33の接地端TEの近傍であって、接地端TEよりもタイヤ幅方向内側には、タイヤ周方向に延びる細溝36が設けられている。細溝36の溝幅は、最もタイヤ幅方向外側に位置する主溝31の溝幅よりも小さい。
【0021】
図2は、
図1における細溝36の拡大図である。細溝36は、タイヤ周方向に延びるショルダー陸部33を、細溝36よりもタイヤ赤道CL側のメイン陸部11と、細溝36よりも接地端TE側のサブ陸部12と、に区分する。サブ陸部12の外周面12sは、メイン陸部11の外周面11sをタイヤ幅方向外側に延長した延長線ELよりもタイヤ径方向内側にあってもよく、延長線EL上にあってもよい。本実施形態では、外周面12sが延長線ELよりもタイヤ径方向内側に位置するように設計することで、メイン陸部11とサブ陸部12との間での接地圧の均一化が図られている。
【0022】
細溝36は、タイヤ幅方向に沿うタイヤ子午線断面で見たとき、メイン陸部11を構成する内側側壁13と、サブ陸部12を構成する外側側壁14と、溝底15とに区分される。内側側壁13は、相対的にタイヤ幅方向内側に位置し、外側側壁14は、相対的にタイヤ幅方向外側に位置する。内側側壁13は、メイン陸部11の外周面11sと溝底15との間を連ねる。外側側壁14は、サブ陸部12の外周面12sと溝底15との間を連ねる。溝底15の一端は内側側壁13に接続され、溝底15の他端は外側側壁14に接続される。本実施形態では、細溝36の溝底15が、タイヤ赤道CL側に向かって膨出する形状を有する。
【0023】
外側側壁14は、サブ陸部12の外周面12sからタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部14aと、直線部14aに滑らかに接続される第一円弧部14bと、溝底15に滑らかに接続される第二円弧部14cとを含む。本実施形態において、直線部14aは、タイヤの回転軸に垂直をなす方向に延びている。しかしながら、直線部14aが外周面12sに垂直に交わる方向など、直線部14aは、タイヤ径方向内側に向けて延びておれば、タイヤの回転軸に垂直をなす方向でなくてもよい。
【0024】
第一円弧部14bは、外側側壁14よりもタイヤ赤道側に円弧の中心を有する。すなわち、第一円弧部14bは、タイヤ幅方向外側に凸となるように湾曲している。第二円弧部14cは、外側側壁14よりもタイヤ幅方向外側に円弧の中心を有する。すなわち、第二円弧部14cは、タイヤ幅方向内側に凸となるように湾曲している。第一円弧部14b及び第二円弧部14cは、それぞれ直線部14a(のタイヤ径方向内側への延長線)よりもタイヤ幅方向内側に位置している。
【0025】
外側側壁14は、接続点21において溝底15に滑らかに接続される端部を有し、この端部は、第二円弧部14cで構成されている。よって、外側側壁14と溝底15との接続点21は、直線が曲線に接続される曲がり開始点ではなく、曲がる方向の変化する変曲点にすぎない。そのため、走行時に細溝36の溝底15に作用する歪みが、接続点21に集中せずに分散しやすい。また、第二円弧部14cを設けることにより、溝底15の曲率半径を拡大できる。
【0026】
さらに、第一円弧部14bは、外側側壁14よりもタイヤ赤道側に円弧の中心を有するので、第一円弧部14bを設けることにより第一円弧部14bでの深さ位置における溝幅を拡大して、細溝36からの脱型性を維持できる。
【0027】
第一円弧部14b及び第二円弧部14cの曲率半径は、それぞれ、3mmより大きいと好ましい。これにより、細溝36からの脱型性を効果的に維持しつつ、第一円弧部14b及び第二円弧部14cにおける歪みの集中を良好に緩和できる。
【0028】
第一円弧部14bの曲率半径は、12mmより小さいとより好ましい。これにより、細溝36からの脱型性を適切に向上させることができる。さらに、溝底15付近におけるサブ陸部12の厚みWを拡大し、サブ陸部12の剛性を向上させるとともに、歪みを分散できる。付随して、細溝36をタイヤ径方向に対して湾曲させるから、細溝36に入り込んだ石の溝底15への侵入を妨げる効果(耐石噛み性の向上効果)が得られる。
【0029】
第二円弧部14cの曲率半径は12mmより小さいと好ましい。これにより、第二円弧部14cと溝底15との接続点21に集中する歪みを効果的に分散できる。
【0030】
第一円弧部14bの曲率半径と第二円弧部14cの曲率半径とは、互いに近い値であることが好ましく、例えば、第一円弧部14bの曲率半径と第二円弧部14cの曲率半径との差が1.2mm以下であるとよい。
【0031】
本実施形態では、溝底15が単一の円弧で形成されている。即ち、溝底15は、円弧の中心及び曲率半径が同じである単一の円弧から構成されている。単一の円弧から構成されることにより、溝底15に作用する歪みを良好に分散できる。溝底15を構成する単一の円弧は、半周以上の長さを有しているとよい。
【0032】
内側側壁13は、メイン陸部11の外周面11sからタイヤ径方向内側に向けて延びる直線部13aを含む。外側側壁14の直線部14aと内側側壁13の直線部13aとのタイヤ幅方向における間隔をL1とし、溝底15のタイヤ幅方向における最大空間寸法(半周以上の長さを有する単一の円弧の場合は、当該円弧の直径に該当する)をL2とするとき、L2/L1が1.5以上であると好ましく、2.3以下であると好ましい。L2/L1が上記数値範囲にあるとき、細溝36からの脱型性を維持しつつ、溝底15に作用する歪みを適切に分散できる。
【0033】
本実施形態において、内側側壁13は、直線部13aと、一端が直線部13aに滑らかに接続され他端が溝底15に滑らかに接続される第三円弧部13bと、から構成されている。第三円弧部13bの円弧の中心は、内側側面よりもタイヤ赤道側に位置している。そのため、第三円弧部13bはタイヤ幅方向外側に凸となるように湾曲している。内側側壁13の溝底15への接続を円弧形状にすることで、第三円弧部13bに作用する歪みを分散できる。
【0034】
第三円弧部13bの曲率半径は、第一円弧部14bの曲率半径及び第二円弧部14cの曲率半径よりも小さくするとよい。これにより、第三円弧部13bの深さ位置における溝幅を拡大し、細溝36からの脱型性を向上させることができる。さらに、第三円弧部13bが溝底15に接続される接続点を、タイヤ幅方向内側(タイヤ赤道側)にシフトさせることができ、溝底15の曲率半径を拡大できる。また、第三円弧部13bの円弧の中心は、第一円弧部14bの円弧の中心よりもタイヤ径方向外側に位置するとよい。これにより、溝底15の曲率半径を拡大できる。溝底15の曲率半径が拡大されると、溝底クラックの低減を図ることができるとともに、細溝36からの脱型性が向上する。
【0035】
図2の細溝36では、第一円弧部14bと第二円弧部14cとは直接に接続される。よって、溝底15から第二円弧部14cまで直線を挟まないため、より効果的な歪みの分散を図ることができる。
【0036】
他方、
図3の細溝36では、第一円弧部14bと第二円弧部14cとの間に、中間直線部14dを有している。中間直線部14dを有していても、第二円弧部14cが溝底15に接続されているため、従来の細溝に比べて良好な歪み分散効果が得られる。また、中間直線部14dを有することにより、細溝の設計に関する制約が小さくなって、よりタイヤ径方向内側に溝底15を移動させたり、溝底15の空間をさらに拡大させたりできるなど、溝底クラックの発生を抑制し、脱型性を維持するための設計の自由度が拡大する。中間直線部14dの長さは、例えば1.5mm以下に設定されるとよく、中間直線部14dは、第三円弧部13bの円弧の中心よりもタイヤ径方向内側に配置されているとよい。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
11 :メイン陸部
11s :(メイン陸部の)外周面
12 :サブ陸部
12s :(サブ陸部の)外周面
13 :内側側壁
13a :直線部
13b :第三円弧部
14 :外側側壁
14a :直線部
14b :第一円弧部
14c :第二円弧部
14d :中間直線部
15 :溝底
21 :接続点
30 :トレッド面
31,32:主溝
33 :ショルダー陸部
36 :細溝
CL :タイヤ赤道
TE :接地端