(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】電気機械的点分離システム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/64 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B64G1/64 100
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019096516
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516257464
【氏名又は名称】アリアーヌグループ ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー アベンスール
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-510351(JP,A)
【文献】特表2015-501406(JP,A)
【文献】特開平04-108100(JP,A)
【文献】特開2006-193019(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01245969(GB,A)
【文献】Xiaoyong Zhang, Xiaojun Yan, Qiaolong Yang,Design and Experimental Validation of Compact, Quick-Response Shape Memory Alloy Separation Device,Jounal of Mechanical Design,Vol.136,Amerian Society of Mechanial Engineers,2014年01月,011009-1~011009-8,https://www.researchgate.net/publication/275379215_Design_and_Experimental_Validation_of_Compact_Quick-Response_Shape_Memory_Alloy_Separation_Device
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの分離可能な機械要素を電気機械的に点分離するシステムであって、
前記システム(S)が、前記分離可能な機械要素(E1,E2)のうち第1の機械要素(E1)と一体の接続ねじ(2)を有する保持デバイス(1)を有し、前記接続ねじ(2)が、前記接続ねじ(2)と外殻(5)との間に配置された複数の部分(4n)を有するセグメントナット(3)により保持され、前記外殻(5)が、前記分離可能な機械要素(E1,E2)のうち第2の機械要素(E2)と一体であり、
前記システム(S)が、作動可能な力発生器(6)も有し、前記力発生器(6)は、前記2つの分離可能な機械要素(E1,E2)を分離するために、いわゆる長手方向(X-X)に推力(F)を発生することが可能であり、それにより、前記部分(4n)のそれぞれと前記外殻(5)との間の協働形状と連動して、前記接続ねじ(2)を前記セグメントナット(3)から解放するように、前記セグメントナット(3)の前記部分(4n)のそれぞれを前記接続ねじ(2)から前記外殻(5)に向かって、前記長手方向に垂直ないわゆる径方向に変位させることを可能にする
システム(S)において、
前記力発生器(6)が、
前記推力(F)を発生させることが可能な、コロイド(9)を備えた少なくとも1つのシールドチャンバ(8)を有する機械的エネルギーアキュムレータ(7)であって、前記コロイド(9)が多孔質マトリックス(10)と液体(11)とから形成され、前記チャンバ(8)がそれ自体前記長手方向(X-X)に変形可能であり、それにより前記コロイド(9)の圧縮状態から展開状態への変化にそれ自体適応し、前記コロイド(9)の状態が、前記チャンバ(8)に適用される機械的圧力によって決まり、前記チャンバ(8)の前記長手方向(X-X)の変形が前記推力(F)を発生させる、アキュムレータ(7)と、
前記チャンバ(8)上に配置される作動可能な作動要素(12)であって、
前記コロイド(9)を前記圧縮状態に維持するために所定の機械的圧力を前記チャンバ(8)に適用するように、又は、
その作動中、前記コロイド(9)の前記圧縮状態から前記展開状態への変化を可能とするために前記所定の機械的圧力を前記チャンバ(8)に適用しないように
設計された作動可能な作動要素(12)と
を有することを特徴とする、システム(S)。
【請求項2】
前記力発生器(6)が、前記コロイド(9)を以下のうち一方又は他方の状態にするように、すなわち
前記チャンバ(8)が第1の所定の圧力閾値以上の機械的圧力を受けたときの前記圧縮状態であって、前記液体(11)の少なくとも一部が前記多孔質マトリックス(10)の細孔内に侵入して前記コロイド(9)の前記圧縮状態を発生させる、前記圧縮状態と、
前記チャンバ(8)が第2の所定の圧力閾値以下の圧力を受けたときの前記展開状態であって、前記多孔質マトリックス(10)の前記細孔内前記液体(11)の少なくとも一部が押し出されて前記コロイド(9)の前記展開状態を発生させる、前記展開状態と
のうち一方又は他方の状態にするように設計され、また
前記第1の所定の圧力閾値が前記第2の所定の圧力閾値より大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記変形可能なシールドチャンバ(8)が、金属及びエラストマーのいずれかの材料で作られたベローズ(24)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記変形可能なシールドチャンバ(8)がアクチュエータ(18)のチャンバ(8)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記多孔質マトリックス(10)の表面が、疎液性の化学剤層で覆われていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コロイド(9)が複数の個別の殻に包含され、前記個別の殻が、前記チャンバ(8)内に含まれる流体に浸漬されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記保持デバイス(1)が、第1に前記力発生器(6)と、第2に前記接続ねじ(2)と、そして前記セグメントナット(3)の前記複数の部分(4n)との間に配置された支持要素(13)も有し、
前記支持要素(13)は、前記力発生器(6)の発生した前記推力(F)を受けて前記接続ねじ(2)及び前記複数の部分(4n)に伝達し、それにより前記接続ねじ(2)の前記長手方向(X-X)の変位及び前記部分(4n)のそれぞれの前記径方向の変位の両方を生じさせるように設計されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記セグメントナット(3)の前記部分(4n)のそれぞれが、前記接続ねじ(2)と協働するように設計された形状の径方向内側面(3a)を備え、また前記外殻(5)と協働するように設計された形状の径方向外側面(3b)を備え、それにより前記推力の伝達に、そして前記接続ねじ(2)の解放に関与することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記保持デバイス(1)が、
平面状中央部分(13a)及び環状部分(13b)を備えた円錐形状の前記支持要素(13)と、
円形状断面の前記接続ねじ(2)であって、前記接続ねじ(2)は第1の面(2b)によって前記支持要素(13)の前記平面状中央部分(13a)上に配置され、且つ第2の面(2a)によって前記第1の分離可能な機械要素(E1)と一体であり、また前記第2の面が前記第1の面(2b)の反対側にある、前記接続ねじ(2)と、
前記接続ねじ(2)の前記円形状断面より大きい円形状断面の前記外殻(5)であって、前記支持要素(13)の前記環状部分(13b)の端部が載置される屈曲端部(23)を備えた前記外殻(5)と、
前記支持要素(13)の前記環状部分(13b)に依存する、前記接続ねじ(2)と前記外殻(5)との間に配置された前記複数の部分(4n)で形成された前記セグメントナット(3)であって、前記接続ねじ(2)にもたれた第1の載置位置から、前記接続ねじ(2)が解放される第2の位置に向かって、前記支持要素(13)の前記環状部分(13b)に沿って径方向に移動することが可能な前記セグメントナット(3)と
を有することを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の点分離システム(S)を複数有することを特徴とする、少なくとも2つの分離可能な機械要素を電気機械的に分離するデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械的な点分離(ポイントセパレーション)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には、他を排除するものではないが、本発明は、特に複数の連続する落下可能な推進段と、キャップの下に配置できるペイロードとを備える(宇宙)ランチャーに適用できる。ペイロードは、例えば人工衛星や宇宙探査機とすることができる。ランチャーの離陸は推進段を連続的に点火することによって実現される。段は、燃料が無くなりもはやランチャーに推進力を与えることができなくなるとランチャーから分離され、そしてランチャーの飛行フェーズ中その軌道の邪魔とならないように落下させられる。ペイロードを地球の周囲又は惑星間空間の軌道上に配備するのに必要な高度にランチャーが到達するまで、次の推進段が引き継ぐ。適切な時間に、キャップ、そしてペイロードが、ランチャーから分離される。航空宇宙の制約があるため、ランチャーのコンポーネントの各分離は、極めて迅速でなければならない。
【0003】
2つの要素を分離するシステムには多くの種類があり、それらは、2つの要素を分離するのに十分な力を発生させるそれらの方式によって区別できる。
【0004】
従って、火薬(pyrotechnic load)の燃焼に基づく火工品分離システム(爆発分離システム)は、コンパクト且つ軽量で、膨大な力を瞬時に発生できるため、このシステムは航空学及び航空宇宙の部門において多く使用されている。しかし、火工品分離システムの組み立ては、不注意で火薬が発火するというリスクがあるため、甚大な安全上の制約が生まれる。こうした安全上の制約により、膨大な組み立てコストが発生する。
【0005】
電熱、電気機械、又は電空型としうる非火工品分離システムを使用することも可能である。例として、接続ねじとセグメントナットとを分離するデバイスが、非特許文献1により知られている。
【0006】
この種の非火工品システムを組み立てる間の安全上の制約はより低い。しかし、これらのシステムは一般に火工品分離システムよりも重く嵩張り、分離にかかる時間がより長い(数百ミリ秒~数秒程度)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第0 791 139号明細書
【文献】欧州特許第1 250 539号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】「Design and Experimental Validation of Compact,Quick-Response Shape Memory Alloy Separation Device」,published in 「Journal of Mechanical Design」,vol.136,January 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、これらの欠点を改善することである。本発明は、少なくとも2つの分離可能な機械要素を電気機械的に点分離するシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、電気機械的点分離システムは、分離可能な機械要素のうち第1の機械要素と一体の接続ねじを備える保持デバイスを備え、接続ねじが、その接続ねじと外殻との間に配置された複数の部分を備えるセグメントナットにより保持され、外殻が、分離可能な機械要素のうち第2の機械要素と一体であり、システムは、2つの分離可能な機械要素を分離するために、長手方向に推力を発生させることによって、部分のそれぞれと外殻との協働する形状と連動して、接続ねじから外殻に向かって長手方向に対して垂直ないわゆる径方向にセグメントナットの部分のそれぞれを変位させて、接続ねじをセグメントナットから解放することが可能な作動可能な力発生器も備える。
【0011】
また、本発明によれば、力発生器は、
推力を発生させることが可能な機械的エネルギーアキュムレータであって、コロイドが供給された少なくとも1つのシールドチャンバを備え、コロイドが、多孔質マトリックス及び液体で形成され、チャンバが、自身をいわゆる長手方向に変形させて、コロイドの圧縮状態から展開状態への変化に自身を適応させることが可能であり、コロイドの状態が、チャンバに付与される機械的圧力によって決まり、チャンバの長手方向の変形が、推力を発生させる、アキュムレータと、
チャンバ上に配置され、
コロイドを圧縮状態に維持するように所定の機械的圧力をチャンバに付与する、又は、
その動作中、コロイドの圧縮状態から展開状態への変化を可能とするように所定の機械的圧力をチャンバに付与しない
ように設計された作動可能な作動要素とを
備える。
【0012】
これにより、本発明によれば、コロイドの圧縮状態から展開状態への変化及びそれに伴うチャンバの変形によって、力発生器は、非常に短い時間で高い力を発生させることができる。また、チャンバやコロイド、作動可能な作動要素等の力発生器を形成する要素は嵩張らず、これにより力発生器をコンパクト且つ軽量なものにできる。従って、この電気機械的点分離システムによって、上述の欠点のうち少なくとも幾つかを改善することが可能になる。
【0013】
更に、力発生器の動力源は、変形可能なチャンバに含まれるコロイドの状態の可逆な変化に基づくため、力システムが適切に機能していることを、その使用前に検証することができる。
【0014】
有利には、力発生器は、コロイドを、
チャンバが第1の所定の圧力閾値より大きい又は等しい値の機械的圧力を受けて、液体の少なくとも一部が多孔質マトリックスの細孔内に侵入することによって、コロイドの圧縮状態を発生させる、圧縮状態と、
チャンバが第2の所定の圧力閾値より小さい又は等しい値の圧力を受けて、液体の少なくとも一部が多孔質マトリックスの細孔から押し出されることによって、コロイドの展開状態を発生させる、展開状態と
のうち一方又は他方の状態にするように設計され、
第1の所定の圧力閾値は、第2の所定の圧力閾値より大きい。
【0015】
本発明の文脈において、チャンバは、様々な方法で製造できる。
【0016】
第1の実施例において、変形可能なシールドチャンバは、金属及びエラストマーのいずれかの材料で作られたベローズを備える。
【0017】
第2の実施例において、変形可能なシールドチャンバは、アクチュエータのチャンバである。
【0018】
更に、本発明の文脈において、上述の性質を特徴とする任意のコロイドを使用できる。
【0019】
好ましくは、コロイドの多孔質マトリックスは、粒子で構成される粉体、ビーズで構成されるゲル、のいずれかの材料で構成される。
【0020】
更に、有利には、多孔質マトリックスの表面は、疎液性の化学剤層で被覆される。
【0021】
また、液体は、水、ガリウム、インジウム及びスズの合金のいずれかに対応している。
【0022】
更に、特定の実施例において、コロイドは、チャンバに含まれる流体に浸漬された複数の個別の殻に含まれる。
【0023】
例として、疎液性不均質システム(lyophobic heterogeneous system)と称されるこの種類のデバイスは、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0024】
有利には、保持デバイスは、第1に力発生器及び第2に接続ねじと、セグメントナットの複数の部分との間に配置された支持要素も備え、支持要素が、力発生器により発生した推力を受け取り、それを接続ねじ及び複数の部分に伝達して、接続ねじの長手方向の変位及び部分のそれぞれの径方向の変位の両方を生じさせるように設計されている。
【0025】
好ましくは、セグメントナットの部分のそれぞれには、接続ねじと協働するように設計された形状をもつ径方向内側面が設けられると共に、外殻と協働するように設計された形状をもつ径方向外側面が設けられて、推力の伝達、ひいては接続ねじの解放において働くようになっている。
【0026】
有利には、保持デバイスは、
平面状中央部分及び環状部分が設けられた、円錐形状の支持要素と、
第1の面を介して支持要素の平坦な部分上に配置され、且つ、第2の面を介して第1の分離可能な機械要素と一体であり、第2の面が第1の面の反対側にある、円形状断面の接続ねじと、
接続ねじの円形状断面より大きい円形状断面の外殻であって、支持要素の環状部分の端部が上に配置される屈曲端部が設けられた外殻と、
接続ねじと外殻との間に配置された複数の部分で形成され、支持要素の環状部分上に載せられたセグメントナットであって、接続ねじに対する第1の載置位置から、接続ねじが解放される第2の位置に向かって、支持要素の環状部分に沿って径方向に移動することが可能なセグメントナットとを備える。
【0027】
更に、保持デバイスは、少なくとも2つのばねも備え、それら少なくとも2つのばねの一方は、チャンバと支持要素の平面状中央部分との間に配置され、少なくとも2つのばねの他方は、外殻の下側部分に対して配置される。
【0028】
本発明は、上述のような電気機械的点分離システムを複数備える、少なくとも2つの分離可能な機械要素を電気機械的に分離するデバイスにも関する。
【0029】
また、本発明は、上述のような電気機械的分離デバイス及び/又は電気機械的点分離システムを備えるランチャーに関する。
【0030】
添付の図面は、本発明がどのように実施されるかを示す。図面において、同様の要素には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの概略縦断面図である。
【
図2a】コロイドの2つの異なる状態の一方を示す、第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図2b】コロイドの2つの異なる状態の他方を示す、第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図3a】コロイドの2つの異なる状態の一方を示す、第2の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図3b】コロイドの2つの異なる状態の他方を示す、第2の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図4a】分離中の異なる連続する状態の一つにおける、第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図4b】分離中の異なる連続する状態の一つにおける、第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図4c】分離中の異なる連続する状態の一つにおける、第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【
図4d】分離中の異なる連続する状態の一つにおける、第1の実施例に係る電気機械的点分離システムの部分概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1にその一実施例を概略的に示す電気機械的点分離システムS(以下、「システムS」と称する)は、少なくとも2つの分離可能な機械要素E1及びE2(
図1に部分的且つ非常に概略的に示す)を分離することを意図したものである。「点」という用語は、分離可能な要素間の特定の領域における、システムSの位置を指す。
【0033】
システムSは、保持デバイス1と、力発生器6とを備える。保持デバイス1は、一方では、2つの分離可能な機械要素E1及びE2をそれらの分離前に保持するとともに、他方では、力発生器6により発生した推力によるそれらの分離を許容するように設計されている。
【0034】
保持デバイス1は、第1の分離可能な機械要素E1と一体の、いわゆる長手方向に沿う細長い形状をもつ接続ねじ2を備える。接続ねじ2は、そのねじの周囲に配置されたナット3によって保持されている。このナット3は、いわゆるセグメント化されており、接続ねじ2と外殻5との間に配置された複数の別個の部分4nで構成されている。この外殻5は、第2の分離可能な機械要素E2と一体である。
【0035】
力発生器6は、作動させて長手方向に推力を発生させることが可能であり、それにより、以下に具体的に示すように、部分4nのそれぞれと外殻5との協働する形状と連動して、セグメントナット3の部分4nのそれぞれを、長手方向に対して垂直ないわゆる径方向に、接続ねじ2から外殻5に向けて変位させることを可能にする。この径方向における変位の機能は、2つの分離可能な機械要素E1及びE2を分離するために、セグメントナット3から接続ねじ2を解放することである。
【0036】
この目的のために、力発生器6は、
図1に表されるように、
-推力を発生させることが可能な機械的エネルギーアキュムレータ7であって、コロイド9が供給された少なくとも1つのシールドチャンバ8を備え、このコロイド9が、多孔質マトリックス10と液体11とから形成され、また、コロイド9が、圧縮状態から展開状態へ、又はその逆に、状態を変化させることを可能とする性質を特徴とし、チャンバ8が、自身を長手方向に変形させて、圧縮状態から展開状態へのコロイド9の変化に自身を適応させることが可能であり、コロイド9の状態が、チャンバ8に付与される機械的圧力によって決まり、チャンバ8の長手方向の変形が、力発生器6の推力を発生させる、アキュムレータ7と、
-チャンバ8上に配置され、
・所定の機械的圧力をチャンバ8に付与してコロイド9を圧縮状態に維持する、又は、
・その作動中、コロイド9の圧縮状態から展開状態への変化を可能とするように所定の機械的圧力をチャンバ8に付与しない
ように設計された作動可能な作動要素12と
を備える。
【0037】
以下の説明において、システムSと対応付けられた座標系を使用する。この座標系は、接続ねじ2の長手方向における配置に対応するいわゆる長手方向軸X-X(例えば、後者の対称軸)と、その長手方向軸X-Xに対して垂直で且つ径方向を備える横断面Tとに応じて規定される。形容詞「より大きい」は、長手方向において、推力を発生させる方向(特に、
図1において矢印Fで表される)に規定される。形容詞「より小さい」は、長手方向において、矢印Fで表される方向とは反対の方向に規定される。径方向に関しては、横断面Tにおける長手方向軸X-Xの位置を表す中心から、長手方向軸X-Xを横断する断面(横断面Tに対応)において放射状に規定される。形容詞「内側」及び「外側」はそれぞれ、径方向に関連して、長手方向軸X-Xに向かう方向及びその反対方向に規定される。
【0038】
図1に表されるように、接続ねじ2は、円形状断面を有し、長手方向軸X-Xに沿って配置される。接続ねじ2の第1の面、いわゆる上面2aは、分離可能な機械要素E1の一方と一体である。接続ねじ2は、その外周表面、いわゆる径方向表面に、環状切り欠き14を備えることができる。接続ねじ2は、長手方向において上面2aとは反対側の第2の面、いわゆる下面2bを介して、支持要素13上に載置される。
【0039】
図2a、2b、3a、3b、4a、4b、4c及び4dに表されるように、支持要素13は、円錐形状を有し、平面状中央部分13aと、平面状中央部分13aに対して径方向外方に配置された環状部分13bとを備える。平面状中央部分13a及び環状部分13bはそれぞれ、上面21a、22aと、下面21b、22b(
図2a及び2b)とを備える。接続ねじ2の下面2bは、同一の表面である支持要素13の平面状中央部分13aの上面21a上に載置される。支持要素13は、長手方向軸X-Xに対して垂直な横断面Tに配置される。
【0040】
保持デバイス1は、接続ねじ2の周囲に配置され且つ複数の部分4n(n=1,...,N、Nは正の整数)で形成されたセグメントナット3も備える。部分4nのそれぞれは、長手方向軸X-Xに沿う細長い形状を有し、接続ねじ2と外殻5との間において、横断面T上の円の弧を表す。部分4nのそれぞれは、以下に具体的に示すように、力発生器6によって発生された推力のインパルス下で、径方向に移動可能である。
【0041】
図2a、2b、3a、3b、4a、4b、4c及び4dに表されるように、部分4nのそれぞれは、支持要素13の環状部分13bの上面22a上に載置される下面3cを備える。また、部分4nのそれぞれには、接続ねじ2に対向する面。いわゆる径方向内側面3aと、径方向内側面3aとは反対側の面、いわゆる径方向外側面3bとが設けられている。特定の実施例において、ナット3の部分4nのそれぞれの径方向内側面3aは、接続ねじ2の径方向表面に作られた環状切り欠き14の部分と協働することが可能な突起15を備える。ナット3の部分4nのそれぞれの径方向外側面3bは、歯16を有する。部分4nのそれぞれの径方向外側面3bは、外殻5の面、いわゆる径方向内側面5aに対向するように配置される。
【0042】
外殻5は、接続ねじ2及びセグメントナット3の周囲に配置された円筒状部品である。外殻5は、分離可能な機械要素E2と一体である。更に、外殻5は、長手方向軸X-Xに沿って配置されたいわゆる長手方向部分を備え、その径方向内側面5aには、部分4nのそれぞれの歯16と協働することが可能な溝17が設けられている。外殻5は、横断面Tに配置され且つ長手方向部分に接続された基部23も備える(長手方向部分と共にこの基部23は屈曲を形成する)。この屈曲は、矢印F(
図1、2a及び2b)で表される推力の方向の反対方向に支持要素13が移動するのを防止するように設計されている。
【0043】
上で提示したように、力発生器6は、機械的エネルギーアキュムレータ7と、作動可能な作動要素12とを備える。機械的エネルギーアキュムレータ7は、シールドチャンバ8を備える。チャンバ8には、矢印Fの方向に沿って長手方向にチャンバ8を変形させるのを可能にするように設計された上面8aを除いて、剛性面が設けられている。
【0044】
チャンバ8には、コロイド9が供給されている。コロイドは、エネルギー蓄積構造を表す疎液性で不均質な構造である。コロイド9は、チャンバ8に付与される機械的圧力に応じて、圧縮状態から展開状態に、又はその逆に移行するように設計されている。コロイド9は、多孔質マトリックス10と液体11とから形成されている。液体11は、多孔質マトリックス10に対して90度より大きいぬれ角を特徴とする。液体11は、異なる種類とすることができる。
【0045】
特定の実施例において、液体11は、水とすることができる。他の実施例において、液体11は、ガリウム、インジウム及びスズの合金である。
【0046】
好ましくは、多孔質マトリックス10は、シリケート系の材料からなる。多孔質マトリックス10は、直径が数マイクロメートルの粒子を含む粉体である。粒子間の空間は、ナノメートル単位の大きさの細孔群を形成している。例えば、多孔質マトリックス10を構成する粉体は、ゼオライトである。変形例において、多孔質マトリックス10は、これも直径が数マイクロメートルのビーズを含むゲルである。例として、多孔質マトリックス10を構成するゲルは、シリカゲルとすることができる。
【0047】
図2a~4dに表される好ましい実施例において、多孔質マトリックス10は、液体11に対して疎液性の材料で形成される。
【0048】
変形例において、多孔質マトリックス10の疎液特性は、そのマトリックスを形成するグラフト型の材料を化学処理することで得られる。より詳細には、多孔質マトリックス10の表面は、疎液性の化学剤層で被覆されている。多孔質マトリックス10の表面は、細孔の表面に対応する外側表面及び内側表面を含む。
【0049】
好ましい実施例(図面に示す)において、多孔質マトリックス10と液体11とで形成されたコロイド9は、チャンバ8内に直接含まれる。
【0050】
他の不図示の実施例において、コロイド9は、複数の個別の殻内に含まれる。これら複数の個別の殻は、チャンバ8内に含まれる流体に浸漬される。例として、この流体は、油である。
【0051】
更に、力発生器6の作動要素12は、コロイドを圧縮状態に維持するように、チャンバ8を介してコロイド9に対して所定の機械的圧力を付与するように設計されている。
【0052】
図2a及び2bに示される第1の実施例において、チャンバ8は、金属で作られたベローズ24である。ベローズ24は、エラストマーで作ることもできる。また、作動可能な作動要素12は、その端部の一方で外殻5の基部23に固定され、且つ、チャンバ8の上側部分の補強部に係合して、ベローズ24の延伸を防止するようになっている電気機械フィンガー12aである。制御ユニット(不図示)により自動的に生成される(電気的な)命令によるその作動中(通常の仕方で実施される)、電気機械フィンガー12aは、チャンバ8を介して機械的圧力をコロイド9に付与しなくなるように、径方向に移動する。
【0053】
変形例において、作動要素12を作動させると、径方向における変位の代わりに、その回転移動を生じさせることができる。他の変形例において、作動要素12は、ボールである。作動要素12を作動させることで、チャンバ8上に設けられたハウジングからそれを解放させる。
【0054】
図3a及び3bに示す第2の実施例において、力発生器6は、アクチュエータ18を備える。アクチュエータ18は、下側部分にチャンバ8と、上側部分に長手方向に移動することが可能なピストン19とを備える。アクチュエータは、チャンバ8の封止を確実にするようにアクチュエータ18の径方向外側に配置されたシール25も備える。この第2の実施例において、作動可能な作動要素12は、アクチュエータ18のチャンバ8に設けられた補強部に配置された電気機械弁12bに対応している。電気機械弁12bは、コロイド9を圧縮状態に維持するように、チャンバ8を介してコロイド9に所定の機械的圧力を付与するように設計されている。作動させると、電気機械弁12bは開弁してその所定の機械的圧力を付与しなくなり、これによりコロイド9は、アクチュエータ18のチャンバ8内において展開状態へと移行することができる。
【0055】
更に、システムSには、複数のばね20a、20bが設けられている。ばね20aは、チャンバ8又はピストン19の上面8aと、支持要素13の平面状中央部分13aの下面21bとの間に配置されている。他方のばね20bは、外殻5の基部23に対して配置できる。ばね20a及び20bは、機械要素を分離する前の、システムSの様々な要素の相対的安定性を維持するように配置される。ばね20a及び20bは、作動前に保持デバイス1及び力発生器6が受けうる振動を減衰する機能も有する。
【0056】
そして、システムSは、非常に高いエネルギー及び出力密度を蓄積することが可能な機械的エネルギーアキュムレータ7(すなわち、分子ばね)を備える。アキュムレータ7は、分子ばねとも称される。そして、システムSは、軽量で嵩張ることなく高レベルの力を伝達することが可能であるという利点を特徴としている。また、このシステムSは、分離可能な機械要素E1及びE2を非常に短い時間で分離するのを可能にする。実際、システムSによるこれらの要素の分離時間は、数十ミリ秒程度である。
【0057】
上述した点分離システムSの動作モードを、第1の実施例を示す
図4a~4dを参照して以下に示す。第2の実施例におけるシステムSの動作モードも同様である。
【0058】
その使用前である力発生器6のセットアップ中、侵入圧力(intrusion pressure)より大きい又は等しい必要のある所定の機械的圧力をチャンバ8に付与することによって、コロイド9を圧縮状態にする。この侵入圧力は、システムが存在する温度における液体11の表面張力と、液体11のぬれ角と、多孔質マトリックス10の細孔の配置とによって決まる。従って、これは、液体11の選択及び多孔質マトリックス10の材料の選択によって決定される。侵入圧力は、コロイド9の液体11が水の場合、約1110バールとできる。
【0059】
侵入圧力より大きい又は等しい所定の機械的圧力をチャンバ8に付与することによって、液体11の少なくとも一部が多孔質マトリックス10の細孔内に侵入する。侵入中、液体11と固体の多孔質マトリックス10とが分離した表面が増大して、それと共にコロイド9中にエネルギーが蓄積する。例として、圧縮状態にあるコロイド9は、1立方センチメートル当たり5~500ジュールを蓄積できる。
【0060】
図4aに表されるように、チャンバ8に所定の機械的圧力を付与することによりコロイド9を圧縮状態に維持するために、この例ではフィンガー12aの形態に設計された作動要素が設置される。
【0061】
システムSを使用する前、接続ねじ2は、部分4nのそれぞれの内側面3aに配置された突起15によって、セグメントナット3bと一体となっている。これらの突起15は、接続ねじ2に作られた環状切り欠き14内に載置される。部分4nのそれぞれは、それら部分4nのそれぞれの径方向外側面3bに設けられた歯16によっても、安定した位置に保持される。各歯16は、外殻5の径方向内側面5aに対して当接して配置される。また、支持要素13とチャンバ8との間に配置されたばね20a、及び、外殻5の基部23に対して配置されたばね20bが、特にシステムSがその使用前に受けうる振動移動を吸収することによって、システムSの安定性に寄与する。
【0062】
通常の(電気)作動信号による力発生器の自動作動中、作動要素12が、チャンバ8の凹部から係合解放される。チャンバ8による所定の機械的圧力はもはやコロイド9に付与されなくなる。押出圧力がかかることによって、多孔質マトリックス10の細孔内に位置していた液体11の一部が、毛細管作用によりこれら細孔の外へ放出される。例として、押出圧力は、コロイド9の液体11が水の場合、1000バールとしうる。これは、侵入圧力の90%超に相当する。細孔の大きさが非常に小さい場合、ヒステリシスは非常に少ない。侵入圧力及び押出圧力は、非常に似た値を特徴とする。液体11の押出によって、蓄積されたエネルギーが放出されることで、コロイド9の状態が圧縮状態から展開状態に変化する。展開状態でコロイド9の容積が増大し、長手方向におけるチャンバ8の変形を生じさせる。
【0063】
図4b、4c及び4dに表されるように、押出圧力によってチャンバ9が長手方向に変形して、推力を発生し、それが保持デバイス1に伝達される。推力が、支持要素13及び接続ねじ2並びに支持要素13上に載置されたナット3の部分4nのそれぞれの、矢印Fの方向における変位を生じさせる。部分4nは、外殻5に対して相対移動する(
図4b)。
【0064】
部分4nのそれぞれの径方向外側面3bの歯16が外殻5の溝17に対向すると、部分4nのそれぞれの長手方向の変位が、径方向の変位に変換される。部分4nのそれぞれの径方向の変位は、接続ねじ2に当接する第1の位置から外殻5に向かう、支持要素13の環状部分13bの上面22a上における摺動に対応する。径方向の変位は、歯16の形状と溝17の形状との協働によっても促進される。この形状による協働によって、歯16は、溝17内へ摺動する。径方向の変位によって、部分4nのそれぞれは接続ねじ2から離れるように移動し、径方向内側面3aの突起15を、接続ねじ2の切り欠き14から解放する。そして、接続ねじ2が、ナット3から解放される(
図4c)。また、力発生器6が、支持要素13の変位を介して、インパルスを接続ねじ2に供給する。このインパルスによって、接続ねじ2は、その解放後も引き続き矢印Fにより示される方向に移動して、機械要素E1及びE2を完全に分離できるようになっている。
【0065】
図4dに表されるように、部分4nのそれぞれの径方向の変位は、部分4nのそれぞれの径方向外側面3bの歯16が外殻5の溝17に係合するまで続く。この係合によって、部分4nのそれぞれの長手方向及び径方向のいかなる移動も阻止することが可能となる。接続ねじ2は、圧縮状態から展開状態に移行している間、コロイド9により供給される押出圧力に比例する速度で移動し続ける。
【0066】
上述のような電気機械的点分離システムSは、電気機械的分離デバイスの一部とすることができる。この電気機械的分離デバイスは、2つの分離可能な機械要素E1、E2の分離を最適化するように、これら2つの機械要素E1及びE2間の異なる位置に配置された複数のM個のシステムSを備える。例として、数字Mは、2~12とすることができる。
【0067】
更に、この分離デバイス及び/又はシステムSは、多くの様々な用途に使用できる。
【0068】
非限定的に、分離デバイス及び/又はシステムSは、航空機から、例えばハッチを介して、爆弾や任意の他の物体を分離し落下させることに寄与するように使用できる。分離デバイス及び/又はシステムSは、ミサイルによる物体の分離及び落下に使用することもできる。
【0069】
更に、分離デバイス及び/又はシステムSは、衛星や宇宙探査機のソーラーパネルやラジエータ、アンテナといった様々な要素の分離及び設置の文脈において使用できる。
【0070】
一特定の用途において、分離デバイス及び/又はシステムSは、特に、複数の連続する落下可能な推進段と、キャップの下に配置できるペイロード(人工衛星や宇宙探査機)とを備える(宇宙)ランチャーであって、そのランチャーの推進力が連続する段によって確保される、ランチャーに統合される。分離デバイス及び/又はシステムSを使用することで、1つ以上の推進段がランチャーに推進力を与えることができなくなったときに、それを分離し落下させることができる。更に、このような分離デバイス(及び/又はシステムS)をキャップの高さに配置することで、そのランチャーのキャップ及びペイロードを落下させることができる。