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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】排ガス処理装置及び排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20230428BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20230428BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01D53/64 100
F23J15/00 J ZAB
B01D53/83
B01D53/82
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019105980
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020199425
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】福田 尚倫
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亮
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177046(JP,A)
【文献】特表2017-508603(JP,A)
【文献】米国特許第08080088(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85、
53/92、53/96、
53/02-53/18
F23J 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに含まれるダストを捕捉する第1集塵器と、
前記ダストが低減された前記排ガスと、添着活性炭及びこれとは異なる粒状の分散剤とが合流する合流部と、
前記排ガスに含まれる前記添着活性炭及び前記分散剤を捕捉して、前記第1集塵器に導入される前記排ガスよりも水銀が低減された処理ガスを得る第2集塵器と、を備え
前記合流部で前記排ガスに合流する前記添着活性炭及び前記分散剤の平均粒径は互いに異なっており、
前記第2集塵器で捕捉された前記添着活性炭及び前記分散剤が導入される分級部を備える、排ガス処理装置。
【請求項2】
前記分散剤は前記添着活性炭よりも小さい平均粒径を有する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記合流部で前記排ガスと合流する、前記添着活性炭に対する前記分散剤の比率は、0.2~2である、請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記分級部で得られた前記分散剤を含む粉体を前記合流部で前記排ガスと合流させる流路を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記第1集塵器よりも上流側に、前記排ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ添加部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
排ガスに含まれるダストを捕捉する第1集塵工程と、
前記ダストが低減された前記排ガスと、添着活性炭及びこれとは異なる粒状の分散剤とが合流する合流工程と、
前記排ガスに含まれる前記添着活性炭及び前記分散剤を捕捉して、前記第1集塵工程で処理される前記排ガスよりも水銀が低減された処理ガスを得る第2集塵工程と、を有し、
前記合流工程で前記排ガスに合流する前記添着活性炭及び前記分散剤の平均粒径は互いに異なっており、
前記第2集塵工程で捕捉された前記添着活性炭及び前記分散剤を分級する分級工程を有する、排ガス処理方法。
【請求項7】
前記分散剤は前記添着活性炭よりも小さい平均粒径を有する、請求項6に記載の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記合流工程で前記排ガスと合流する、前記添着活性炭に対する前記分散剤の比率は、0.2~2である、請求項6又は7に記載の排ガス処理方法。
【請求項9】
前記第1集塵工程の前に、前記排ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ添加工程を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス処理装置及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の設備等で発生する排ガスには、水銀、硫黄酸化物、塩化水素、及びダイオキシン等の有害成分が含まれる場合がある。これらのうち、水銀については水俣条約が2013年に採択され、大気への排出量を低減するための取り組みが世界的に進められている。2018年4月には、大気汚染防止法の改正法が施行され、焼却設備等からの排ガスに含まれる水銀を低減するための技術開発が進められている。
【0003】
排ガスに含まれる有害成分の吸着材として活性炭が用いられる。特許文献1では、水銀吸着性能に優れた高価な添着活性炭と、通常の活性炭とを併せて用いることによって、排ガス処理費用を抑制しながら排ガス中の水銀を吸着除去する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-185510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃棄物等を焼却する設備では、廃棄物の種類及びプロセスの変動等の影響によって排ガスに含まれる有害物質の成分及び量が変動する。例えば、水銀成分としては、塩化第二水銀(HgCl)と金属の水銀(Hg)が含まれ得る。このうち、水銀(Hg)は、通常の活性炭では殆ど吸着できないため、添着活性炭を用いる必要がある。しかしながら、添着活性炭は通常の活性炭よりも高価である。このため、排ガス処理コストの観点からは、添着活性炭の使用量を低減することが可能な技術が求められる。
【0006】
そこで、本開示は、排ガス処理コストと排ガスに含まれる水銀を十分に低減することが可能な排ガス処理装置を提供する。また、排ガス処理コストと排ガスに含まれる水銀を十分に低減することが可能な排ガス処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る排ガス処理装置は、排ガスに含まれるダストを捕捉する第1集塵器と、ダストが低減された排ガスと、添着活性炭及びこれとは異なる粒状の分散剤とが合流する合流部と、排ガスに含まれる添着活性炭及び分散剤を捕捉して、第1集塵器に導入される排ガスよりも水銀が低減された処理ガスを得る第2集塵器と、を備える。
【0008】
上記排ガス処理装置では、排ガスと水銀(Hg)を十分に吸着できる添着活性炭及び粒状の分散剤が合流する合流部を備える。この合流部では、分散剤は、排ガス及び添着活性炭の流動の外乱要因となり、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭との接触頻度の増加に寄与する。また、第2集塵器で排ガスが固形分(分散剤及び添着活性炭)と分離される際にも、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭とが接触する機会が増加する。これらの要因によって、排ガスに含まれる水銀(Hg)が効率よく添着活性炭に吸着されることとなる。したがって、排ガスに対する添着活性炭の割合を少なくしても、排ガスに含まれる水銀を十分に低減することができる。
【0009】
また、ダストを捕捉する第1集塵器を備えていることから、第2集塵器で捕捉される添着活性炭及び分散剤にダストが混入することを抑制できる。このため、添着活性炭及び分散剤を再利用することが可能となる。したがって、添着活性炭及び分散剤の使用量を減らし、排ガス処理コストを低減することができる。
【0010】
合流部で排ガスに合流する添着活性炭及び分散剤の平均粒径は互いに異なっていてよい。上記排ガス処理装置は、第2集塵器で捕捉された添着活性炭及び分散剤が導入される分級部を備えていてよい。分級部において添着活性炭と分散剤とを分級すれば、吸着能力が飽和した添着活性炭を取り換えつつ、分散剤は循環使用を継続することができる。
【0011】
分散剤は添着活性炭よりも小さい平均粒径を有していてよい。これによって、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭との接触頻度を一層高めて、水銀(Hg)を一層効率よく吸着することができる。したがって、水銀が一層低減された処理ガスを得ることができる。
【0012】
合流部で排ガスと合流する、添着活性炭に対する分散剤の比率は、0.2~2であってよい。これによって、排ガス処理コストの低減と、排ガスに含まれる水銀(Hg)の低減とを、一層高い水準で両立することができる。
【0013】
上記排ガス処理装置は、第1集塵器よりも上流側に、排ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ添加部を備えていてよい。これによって、排ガスに含まれる水銀以外の有害成分もより一層低減することができる。
【0014】
本開示の一側面に係る排ガス処理方法は、排ガスに含まれるダストを捕捉する第1集塵工程と、ダストが低減された排ガスと、添着活性炭及びこれとは異なる粒状の分散剤とが合流する合流工程と、排ガスに含まれる添着活性炭及び分散剤を捕捉して、第1集塵工程で処理される排ガスよりも水銀が低減された処理ガスを得る第2集塵工程と、を有する。
【0015】
上記排ガス処理方法では、排ガスと水銀(Hg)を十分に吸着できる添着活性炭及び粒状の分散剤が合流する合流工程を有する。この合流工程では、分散剤は、排ガス及び添着活性炭の流動の外乱要因となり、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭との接触頻度の増加に寄与する。また、第2集塵工程で排ガスが固形分(分散剤及び添着活性炭)と分離される際にも、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭とが接触する機会が増加する。これらの要因によって、排ガスに含まれる水銀(Hg)が効率よく添着活性炭に吸着されることとなる。したがって、排ガスに対する添着活性炭の割合を少なくしても、排ガスに含まれる水銀を十分に低減することができる。
【0016】
また、ダストを捕捉する第1集塵工程を有することから、第2集塵工程で捕捉される添着活性炭及び分散剤にダストが混入することを抑制できる。このため、添着活性炭及び分散剤を再利用することが可能となる。したがって、添着活性炭及び分散剤の使用量を減らし、排ガス処理コストを低減することができる。
【0017】
合流工程で排ガスに合流する添着活性炭及び分散剤の平均粒径は互いに異なっていてよい。第2集塵工程で捕捉された添着活性炭及び分散剤を分級する分級工程を有していてよい。分級工程において添着活性炭と分散剤とを分級すれば、吸着能力が飽和した添着活性炭を取り換えつつ、分散剤は循環使用を継続することができる。
【0018】
合流工程で排ガスと合流する、添着活性炭に対する分散剤の比率は、0.2~2であってよい。これによって、排ガス処理コストの低減と、排ガスに含まれる水銀(Hg)の低減とを、一層高い水準で両立することができる。
【0019】
上記排ガス処理方法は、第1集塵工程の前に、排ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ添加工程を有していてよい。これによって、排ガスに含まれる水銀以外の有害成分もより一層低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一側面に係る排ガス処理装置によれば、排ガス処理コストと排ガスに含まれる水銀を十分に低減することができる。本開示の一側面に係る排ガス処理方法によれば、排ガス処理コストと排ガスに含まれる水銀を十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】排ガス処理装置の一実施形態を示す図である。
図2】排ガス処理装置が適用されるガス化溶融炉システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照して、本開示の幾つかの実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
図1は、一実施形態に係る排ガス処理装置を示す図である。図1の排ガス処理装置100は、排ガスに含まれるダストを捕捉する第1集塵器10と、第1集塵器10でダストが低減された排ガスと、添着活性炭及びこれとは異なる粒状の分散剤とが合流する合流部32と、排ガスに含まれる添着活性炭及び分散剤を捕捉して、第1集塵器10に導入される排ガスよりも水銀(Hg)が低減された処理ガスを得る第2集塵器20とを備える。
【0024】
排ガスは、特に限定されず、水銀等の有害物質を含み得る排ガスであればよい。排ガスは、塩化第二水銀(HgCl)及び金属の水銀(Hg)の他に、塩化水素、硫黄酸化物、ダイオキシン等の有害物質を含んでいてよい。水銀は、単体又は塩化物等の化合物として、ガス状で含まれていてもよいし、粒子状で含まれていてもよい。排ガスの具体例として、例えば廃棄物処理設備、火力発電所、及び各種工場で発生する排ガスが挙げられる。
【0025】
排ガスは、排ガス供給管12によって第1集塵器10に導入される。排ガス供給管12には排ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ添加部14が接続されている。すなわち、排ガスの流通方向に沿ってみたときに、第1集塵器10の上流側にアルカリ添加部14が設けられている。アルカリ剤としては、消石灰及び重曹等が用いられる。アルカリ剤を添加することによって、排ガスに含まれる硫黄酸化物及び塩化水素等が中和塩となって第1集塵器10で捕捉される。本実施形態ではアルカリ添加部14は排ガス供給管12に接続されているが、これに限定されない。例えば、アルカリ添加部14は第1集塵器10に接続されてもよい。また、アルカリ添加部14を備えることは必須ではなく、別の実施形態では、アルカリ添加部14はなくてもよい。さらに別の実施形態では、排ガス供給管12に、排ガスに粉末活性炭を添加する粉末活性炭添加部が接続されてもよい。
【0026】
第1集塵器10は、フィルタ11を備える。排ガスに含まれるダストを含む固形分は、フィルタ11に捕捉される。アルカリ剤を添加することによって生じた中和塩もフィルタ11で捕捉される。第1集塵器10は例えばろ過式集塵器である。フィルタ11で捕捉された固形分は、例えばガスの出口側から圧縮空気が吹き込まれることによって、フィルタ11から払い落とされる。これによって、第1集塵器10は継続的に排ガスに含まれる固形分を捕捉することができる。
【0027】
第1集塵器10において、ダスト等の固形分及び水銀(Hg)以外の有害物質が低減された排ガスは、流路30を流通して第2集塵器20に向かう。流路30には合流部32が設けられている。合流部32では、流路30に流路34及び流路36が連結されている。添着活性炭及び粒状の分散剤は、それぞれ流路34及び流路36を流通して合流部32において排ガスと合流する。
【0028】
添着活性炭としては、ハロゲン化合物、金属化合物及び硫黄等からなる群より選ばれる少なくとも一種が添着されたものが挙げられる。ハロゲン化合物としては、塩素、臭素及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む化合物が挙げられる。金属化合物としては、鉄、ニッケル及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む化合物が挙げられる。これらは、一般的に入手可能な市販品であってよい。添着活性炭の平均粒径は、排ガスとの接触効率を高くしつつ、フィルタ21での捕捉を容易にする観点から、1~100μmであってよく、5~40μmであってよい。
【0029】
粒状の分散剤としては、添着活性炭よりも低コストであるものを適宜用いることができる。例えば、添着されていない活性炭であってもよいし、分級によって添着活性炭との分離を容易にする観点から無機物であってもよい。無機物としては、耐熱性の向上とコスト低減の観点から酸化物であってもよい。酸化物としては、SiO、Al、及びZrO等が挙げられる。分散剤の平均粒径は、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭との接触頻度を一層高める観点から、添着活性炭の平均粒径よりも小さくてよい。同様の観点から、分散剤の平均粒径は、添着活性炭の平均粒径の1/2以下であってよい。分散剤の平均粒径は、排ガスとの接触効率を高くしつつ、フィルタ21での捕捉を容易にする観点から、0.5~200μmであってよく、1~100μmであってよい。
【0030】
本開示における添着活性炭及び分散剤の平均粒径は、JIS R1629の「ファインセラミックス原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法」によって測定される粒度分布の体積基準の積算分率における50%径である。
【0031】
合流部32では、排ガスと添着活性炭及び分散剤とが合流することによって、排ガス及び添着活性炭の流動が乱され、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭との接触頻度が高くなる。このため、添着活性炭が効率よく水銀(Hg)を吸着することができる。接触頻度を十分に高くしつつ、添着活性炭の使用量を減らして処理コストを一層低減する観点から、合流部32で排ガスと合流する、添着活性炭に対する分散剤の比率は、0.2~2であってよく、0.5~1.5であってよい。排ガスに対する添着活性炭の比率は、排ガスに含まれる水銀(Hg)の濃度、排ガスの流量、及び処理ガスの水銀(Hg)の上限濃度等に応じて適宜設定することができる。
【0032】
本実施形態では、添着活性炭及び分散剤を、それぞれ流路34,流路36から排ガス中に導入して排ガスと合流させているがこれに限定されない。例えば、添着活性炭及び分散剤の混合物を排ガス中に導入して合流させてもよい。
【0033】
排ガスは、合流部32において添着活性炭及び分散剤と合流した後、流路30を流通して第2集塵器20に導入される。第2集塵器20は例えばろ過式集塵器であり、フィルタ21を備える。排ガスに含まれる添着活性炭及び分散剤は、フィルタ21に捕捉される。添着活性炭は、合流後、流路30を流通する間に水銀(Hg)を吸着してもよいし、フィルタ21に捕捉された後に水銀(Hg)を吸着してもよい。
【0034】
フィルタ21では、添着活性炭は分散剤とともに捕捉される。このため、添着活性炭のみを用いる場合に比べて、フィルタ21で捕捉される固形分が増加し、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭とが接触する機会が増える。すなわち、フィルタ21上に添着活性炭を含む固形分が層状に形成されやすくなるため、水銀(Hg)が固形分の層中を流通する際に添着活性炭と接触するため、水銀(Hg)を効率よく吸着することができる。このようにして、排ガス中の水銀(Hg)を十分に低減することができる。
【0035】
第2集塵器20からは、排ガス中の水銀(Hg)が十分に低減された処理ガスが得られる。処理ガスにおける全水銀の濃度は、第1集塵器10に導入される排ガス及び第1集塵器10で得られるダストが低減された排ガスよりも低い。処理ガスにおける全水銀(ガス状水銀+粒子状水銀)の濃度は、例えば、50μg/Nm以下であってよく、30μg/Nm以下であってもよい。処理ガスは、後処理設備に導入してもよいし、規制値を満たすものであれば大気放出してもよい。
【0036】
フィルタ21で捕捉された固形分は、例えばガスの出口側から圧縮空気が吹き込まれることによって、フィルタ21から払い落とされる。これによって、第2集塵器20は継続的に排ガスに含まれる固形分を捕捉することができる。フィルタ21で捕捉された後、フィルタ21から払い落された添着活性炭及び分散剤を含む固形分は、分級部40に導入される。分級部40は、粒径又は密度等の物性の違いによって、フィルタ21から払い落とされた固形分を2種以上に分離可能なものを適宜用いることができる。例えば、サイクロンであってもよいし篩であってもよい。例えば、添着活性炭と分散剤の粒径が互いに異なっていれば、これらを分級部40で分けることができる。なお、分級部40における添着活性炭と分散剤の分離は、厳密である必要はない。例えば、主成分として添着活性炭を含む粉体(第1粉体)と、主成分として分散剤を含む粉体(第2粉体)とに分けてもよい。
【0037】
分級部40で得られた分散剤(第2粉体)は流路46及び流路36を介して合流部32において排ガスと再び合流させてもよい。このように分散剤(第2粉体)を循環使用すれば、排ガス処理コストを一層低減することができる。分級部40で得られた使用済みの添着活性炭(第1粉体)も、流路42を介して合流部32において排ガスと再び合流させてもよい。なお、使用済みの添着活性炭の吸着能力が飽和している場合には、合流部32への供給を一部又は全部停止し、排出部44から添着活性炭(第1粉体)を取り出す。取り出した添着活性炭の量に相当する量の新たな添着活性炭を、流路34から合流部32に導入すれば、引き続き排ガス中の水銀(Hg)を十分に低減することができる。添着活性炭の補充又は交換の量及び頻度は、分級部40で回収された添着活性炭に残存する吸着能力次第で適宜調整してよい。
【0038】
添着活性炭を再利用することは必須ではない。例えば、排ガスとの一回の接触で吸着能力が飽和した場合には、添着活性炭を循環せずにそのまま排出部44から取り出してもよい。この場合、流路34から継続して添着活性炭を合流部32に供給する。また、分級部40を設けることは必須ではない。この場合、使用済みの添着活性炭と分散剤を、混合物の状態のまま合流部32に戻してもよい。このように、混合物の状態で一定期間循環使用した後、これらを排出し、新たな添着活性炭と分散剤とを合流部32から排ガスに合流させるようにしてもよい。このようにすれば分級部40を設けずに排ガス処理を継続的に行うことができる。
【0039】
排ガス処理装置100では、排ガスと水銀(Hg)を十分に吸着できる添着活性炭及び粒状の分散剤が合流する合流部32を備える。この合流部32では、分散剤は、排ガスの流動の外乱要因となり、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭との接触頻度の増加に寄与する。また、第2集塵器20で排ガスが固形分(分散剤及び添着活性炭)と分離される際にも、排ガスに含まれる水銀(Hg)と添着活性炭とが接触する機会が増加する。これらの要因によって、排ガスに含まれる水銀(Hg)が効率よく添着活性炭に吸着されることとなる。したがって、排ガスに対する添着活性炭の割合を少なくしても、排ガスに含まれる水銀(Hg)を十分に低減することができる。排ガス処理装置100における水銀(Hg)除去率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。排ガス処理装置100における全水銀の除去率も、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0040】
また、ダストを捕捉する第1集塵器10を備えていることから、第2集塵器20で捕捉される添着活性炭及び分散剤にダストが混入することを抑制できる。このため、添着活性炭及び分散剤を循環して再利用することが可能となる。したがって、添着活性炭及び分散剤の使用量を減らし、排ガス処理コストを低減することができる。
【0041】
一実施形態に係る排ガス処理方法は、排ガスに含まれるダストを捕捉する第1集塵工程と、ダストが低減された排ガスと、添着活性炭及びこれとは異なる粒状の分散剤とが合流する合流工程と、排ガスに含まれる添着活性炭及び分散剤を捕捉して、第1集塵工程でダストが捕捉される前の排ガスよりも水銀が低減された処理ガスを得る第2集塵工程と、第2集塵工程で捕捉された添着活性炭及び分散剤を分級する分級工程と、を有する。第1集塵工程の前に、排ガスにアルカリ剤を添加するアルカリ添加工程を有してもよい。このような処理方法は上述の排ガス処理装置100を用いて行うことができる。したがって、各工程は上述の排ガス処理装置100の説明内容に基づいて行うことができる。
【0042】
図2は、排ガス処理装置が適用されるガス化溶融炉システムの一例を示す図である。ガス化溶融炉システム200は、ガス化溶融炉50と、二次燃焼炉60と、ボイラ70と、減温塔80と、排ガス処理装置100と、誘引通風機90と、煙突95と、を備える。
【0043】
ガス化溶融炉50には、ごみ等の廃棄物と、コークス等の固形燃料及び石灰石等の副資材とが装入される。ガス化溶融炉50は、廃棄物の乾燥、熱分解、燃焼及び溶融を行う。これによって、ガス化溶融炉50は、熱分解ガスを生成しつつ廃棄物を減容化する。ガス化溶融炉50の底部(出滓口)から、スラグ及びメタルを含む溶融物が排出される。炉外に排出された溶融物は、冷却凝固され、これからスラグとメタルとを回収することができる。
【0044】
ガス化溶融炉50の上部からは、可燃性ダストと熱分解ガスを含む可燃性ガスとが排出される。可燃性ガスは二次燃焼炉60に供給される。二次燃焼炉60は、可燃性ガスを燃焼するための燃焼炉である。可燃性ガスには、廃棄物をガス化する過程で副次的に発生するタール及びダストが含まれてもよい。
【0045】
二次燃焼炉60において可燃性ガスの燃焼により発生した熱は、ボイラ70において熱交換される。ボイラ70で熱回収された後の排ガスは、減温塔80に送られ、減温塔80において当該排ガスの温度が調整される。排ガスは、廃棄物及び燃料に由来する有害成分及びダスト(飛灰)を含有する。また、廃棄物に含まれる成分は大きく変動することから、減温塔80から排出される排ガスの有害成分及びダストの量も大きく変動する。
【0046】
排ガス処理装置100は、上述の構成を有することから、排ガス中の有害成分及びダストの量が大きく変動しても水銀(Hg)を含む有害成分を安定的に低減することができる。また、添着活性炭の使用量を低減できることから、低コストで排ガスを処理することができる。排ガス処理装置100で排ガスを処理して得られる処理ガスは、誘引通風機90により吸引され、例えば煙突95から排出される。
【0047】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、排ガス処理装置100は2つの集塵器を備えているが、集塵器の数は2つに限定されず、3つ以上であってよい。また、第1集塵器10と合流部32の間、及び合流部32と第2集塵器20との間に任意の設備が設けられてもよい。また、分級部40では、固形分を3つ以上に分けてもよい。例えば、添着活性炭又はこれを主成分として含む第1粉体、分散剤又はこれを主成分として含む第2粉体、及び、第1粉体及び第2粉体よりも小さい粒径を有する第3粉体とに分けてもよい。この場合、第2粉体のみ、又は第1粉体と第2粉体のみを排ガス処理装置において循環使用し、第3粉体のみを排出するようにしてもよい。
【実施例
【0048】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
市販の添着活性炭(添着物は臭化アンモニウム、平均粒径:14μm)と、粒状の分散剤として市販のSiO粉末(平均粒径:100μm)を準備した。添着活性炭とSiO粉末と市販のウールを密閉容器に入れて振り混ぜ、添着活性炭及びSiO粉末をウールに付着させた。ウール5gに対する添着活性炭とSiO粉末の付着量は表1に示すとおりであった。添着活性炭とSiO粉末が付着したウールを、貫通孔を有するガラス製のフィルタを支持体として、カラムクロマト管(内径:30mm,長さ:30cm)の内部に充填した。このとき、ガスの流通が妨げられないようにするため、ウールの隙間が保たれるように充填した。カラムクロマト管にヒータを巻き付けて、カラムクロマト管の内部を180~220℃に加熱した。
【0050】
水銀蒸気発生器を用いて空気に水銀蒸気を混入させて水銀濃度100μg/mの供給ガスを調製した。この供給ガスを160℃に加熱して上述のカラムクロマト管に供給してガス処理を行った。カラムクロマト管から排出される排ガス中の水銀(Hg)濃度を水銀測定装置(日本インスツルメンツ株式会社製、製品名:EMP-2)を用いて測定した。ガス処理と排ガス中の水銀(Hg)の濃度測定を約3時間継続して行った。供給ガス中の水銀(Hg)の濃度の平均値と排ガスに含まれていた水銀(Hg)の濃度の平均値の差から、以下の式によって水銀(Hg)の除去率を算出した。結果は表1に示すとおりであった。
【0051】
水銀(Hg)の除去率(%)=(供給ガス中の水銀濃度-排ガス中の水銀濃度)/供給ガス中の水銀濃度
【0052】
(実施例2,3)
粒状の分散剤として、表1に示す平均粒径を有するSiO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガス処理と排ガス中の水銀測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0053】
(実施例4)
ウールに付着させる分散剤の量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例3と同様にしてガス処理と排ガス中の水銀測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0054】
(比較例1)
分散剤を用いず、添着活性炭のみをウールに付着させた。ウールに付着させる添着活性炭の量は、実施例1~4の2倍とした。このこと以外は、実施例1と同様にしてガス処理と排ガス中の水銀測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すとおり、実施例1,2,4では、比較例1に対して添着活性炭の量を半減したにもかかわらず、水銀(Hg)を90%以上除去することができた。また、実施例3では、添着活性炭の量を比較例1の半分にしているにもかからず、比較例1と水銀除去率を同等にすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示の排ガス処理装置によれば、排ガス処理コストと排ガスに含まれる水銀を十分に低減することができる。本開示の排ガス処理方法によれば、排ガス処理コストと排ガスに含まれる水銀を十分に低減することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…第1集塵器、11,21…フィルタ、12…排ガス供給管、14…アルカリ添加部、20…第2集塵器、30,34,36,42,46…流路、32…合流部、40…分級部、44…排出部、50…ガス化溶融炉、60…二次燃焼炉、70…ボイラ、80…減温塔、90…誘引通風機、95…煙突、100…排ガス処理装置、200…ガス化溶融炉システム。
図1
図2