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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ルーバー及びルーバーを備える構造物
(51)【国際特許分類】
   E04F 10/08 20060101AFI20230428BHJP
   E06B 9/01 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
E04F10/08
E06B9/01 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019134008
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021017736
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.設置日 平成30年 9月 5日 2.設置場所 東京都新宿区霞ヶ丘町4番2号 JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE 3.公開者 株式会社大林組 [刊行物等] 1.内覧会開催日 平成31年 4月28日 2.内覧会開催場所 東京都新宿区霞ヶ丘町4番2号 JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE 3.公開者 株式会社大林組 [刊行物等] 1.内覧会開催日 令和 1年 5月16日 2.内覧会開催場所 東京都新宿区霞ヶ丘町4番2号 JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE 3.公開者 公益財団法人日本スポーツ協会
(73)【特許権者】
【識別番号】301042686
【氏名又は名称】株式会社三菱地所設計
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】朴 成洙
(72)【発明者】
【氏名】小林 はるか
(72)【発明者】
【氏名】森本 順子
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017448(JP,A)
【文献】特開2006-090116(JP,A)
【文献】特開2015-007365(JP,A)
【文献】特開2002-242551(JP,A)
【文献】特開2008-150858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 10/00-10/10
E06B 9/01
E06B 9/24
E04D 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面と組み合わされるルーバーであって、
前記外壁面に対向する基部と、
前記基部の反対側に位置する先端部と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、太陽光が直接的に入射する入射面と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、前記入射面の反対側に位置する出射面と、
前記入射面から前記出射面に至るように前記ルーバーを貫通する貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記入射面から前記出射面に至るよう広がる側面を含み、
前記ルーバーの間を通って前記建物の前記外壁面に直接的に到達できる太陽光の傾斜角度の最大値を臨界傾斜角度と称する場合、前記臨界傾斜角度で前記貫通孔に入射した光が前記貫通孔の側面によって少なくとも1回は反射されるように、前記ルーバーの貫通孔が構成されるとともに前記ルーバーが前記建物の前記外壁面に組み合わされ、
前記貫通孔の側面は、前記先端部側に位置する第1側面と、前記基部側に位置する第2側面と、を含み、
前記第2側面の前記入射面側の端部と前記第1側面の前記出射面側の端部とを結ぶ直線の傾斜角度が、前記臨界傾斜角度よりも小さい、ルーバー。
【請求項2】
前記貫通孔の側面の長さは、前記貫通孔の開口の幅よりも大きい、請求項1に記載のルーバー。
【請求項3】
前記入射面は、前記貫通孔が形成されている第1入射面と、前記第1入射面と前記基部との間に位置する第2入射面と、を含み、
前記第2入射面の傾斜角度は、前記第1入射面の傾斜角度よりも小さい、請求項1又は2に記載のルーバー。
【請求項4】
前記出射面の傾斜角度は、前記第1入射面の傾斜角度よりも小さい、請求項3に記載のルーバー。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記基部側から前記先端部側に向かって凸となる開口形状を有する第1貫通孔と、前記先端部側から前記基部側に向かって凸となる開口形状を有する第2貫通孔と、を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のルーバー。
【請求項6】
ステンレス、アルミニウム、ガラス繊維補強セメント又はプレキャストコンクリートを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のルーバー。
【請求項7】
建物と、
前記建物の外壁面と組み合わされている複数のルーバーと、を備え、
前記ルーバーは、
前記外壁面に対向する基部と、
前記基部の反対側に位置する先端部と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、太陽光が直接的に入射する入射面と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、前記入射面の反対側に位置する出射面と、
前記入射面から前記出射面に至るように前記ルーバーを貫通する貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記入射面から前記出射面に至るよう広がる側面を含み、
複数の前記ルーバーの間を通って前記建物の前記外壁面に直接的に到達できる太陽光の傾斜角度の最大値を臨界傾斜角度と称する場合、前記ルーバーの貫通孔は、前記臨界傾斜角度で前記貫通孔に入射した光が前記貫通孔の側面によって少なくとも1回は反射されるよう構成されており、
前記貫通孔の側面は、前記先端部側に位置する第1側面と、前記基部側に位置する第2側面と、を含み、
前記第2側面の前記入射面側の端部と前記第1側面の前記出射面側の端部とを結ぶ直線の傾斜角度が、前記臨界傾斜角度よりも小さい、構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁面と組み合わされるルーバーに関する。また本発明は、建物と、建物の外壁面と組み合わされている複数のルーバーと、を備える構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、建物の外壁面に取り付けられるルーバーが知られている。ルーバーは、細長い板状の部材であり、水平方向又は上下方向に間隔を空けて建物に取り付けられる。このようなルーバーを設けることにより、建物の室内への太陽光の入射量を調整したり、通風量を調整したりすることができる。また、ルーバーは、建物の外観の意匠性を高めるという役割も発揮し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-20311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の室内から外を見た場合に、外の景色の見え方とルーバーの見え方との明暗比が高いと、室内の照度が十分な場合であっても、人が室内を暗く感じることがある。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、人が室内を暗く感じることを抑制することができるルーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の外壁面と組み合わされるルーバーであって、
前記外壁面に対向する基部と、
前記基部の反対側に位置する先端部と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、太陽光が直接的に入射する入射面と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、前記入射面の反対側に位置する出射面と、
前記入射面から前記出射面に至るように前記ルーバーを貫通する貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記入射面から前記出射面に至るよう広がる側面を含む、ルーバーである。
【0007】
本発明によるルーバーにおいて、前記貫通孔の側面の長さは、前記貫通孔の開口の幅よりも大きくてもよい。
【0008】
本発明によるルーバーにおいて、前記入射面は、前記貫通孔が形成されている第1入射面と、前記第1入射面と前記基部との間に位置する第2入射面と、を含み、
前記第2入射面の傾斜角度は、前記第1入射面の傾斜角度よりも小さくてもよい。
【0009】
本発明によるルーバーにおいて、前記出射面の傾斜角度は、前記第1入射面の傾斜角度よりも小さくてもよい。
【0010】
本発明によるルーバーにおいて、前記貫通孔は、前記基部側から前記先端部側に向かって凸となる開口形状を有する第1貫通孔と、前記先端部側から前記基部側に向かって凸となる開口形状を有する第2貫通孔と、を含んでいてもよい。
【0011】
本発明によるルーバーは、ステンレス、アルミニウム、ガラス繊維補強セメント又はプレキャストコンクリートを含んでいてもよい。
【0012】
本発明は、建物と、
前記建物の外壁面と組み合わされている複数のルーバーと、を備え、
前記ルーバーは、
前記外壁面に対向する基部と、
前記基部の反対側に位置する先端部と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、太陽光が直接的に入射する入射面と、
前記基部と前記先端部との間に広がり、前記入射面の反対側に位置する出射面と、
前記入射面から前記出射面に至るように前記ルーバーを貫通する貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、前記入射面から前記出射面に至るよう広がる側面を含む、構造物である。
【0013】
本発明による構造物において、複数の前記ルーバーの間を通って前記建物の前記外壁面に直接的に到達できる太陽光の傾斜角度の最大値を臨界傾斜角度と称する場合、前記ルーバーの貫通孔は、前記臨界傾斜角度で前記貫通孔に入射した光が前記貫通孔の側面によって少なくとも1回は反射されるよう構成されていてもよい。例えば、前記貫通孔の側面が、前記先端部側に位置する第1側面と、前記基部側に位置する第2側面と、を含み、前記第2側面の前記入射面側の端部と前記第1側面の前記出射面側の端部とを結ぶ直線の傾斜角度が、前記臨界傾斜角度よりも小さくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、人が室内を暗く感じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ルーバーを備える構造物の一例を示す斜視図である。
図2図1の構造物をII-II線に沿って見た場合を示す横断面図である。
図3図2のルーバーを拡大して示す横断面図である。
図4図3のルーバーを拡大して示す横断面図である。
図5】貫通孔が形成されているルーバーを室内から見た場合を示す図である。
図6】貫通孔が形成されていないルーバーを室内から見た場合を示す図である。
図7】ルーバーの一変形例を示す横断面図である。
図8】ルーバーの一変形例を示す図である。
図9】実施例におけるルーバーを室内から見た場合を示す図である。
図10図9のルーバーの輝度分布を測定した結果を示す図である。
図11図10の測定結果の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図6を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0017】
構造物
図1は、本実施の形態による構造物を示す図である。構造物は、建物1と、建物1の外壁面2と組み合わされている複数のルーバー10と、を備える。ルーバー10は、建物1の外壁面2に取り付けられていてもよい。若しくは、ルーバー10は、建物1の外壁面2に沿って自立するように、建物1以外の構造に、例えば地面に固定されていてもよい。
【0018】
建物1は、外壁面2に面する窓3を備える。ルーバー10は、窓3に部分的に重なるように外壁面2に取り付けられている。本実施の形態においては、上下方向に延びる複数のルーバー10が、水平方向に間隔を空けて建物1に取り付けられている。図示はしないが、水平方向に延びる複数のルーバー10が、上下方向に間隔を空けて建物1に取り付けられていてもよい。
【0019】
ルーバー10は、建物1の外壁面2のうち、太陽光が直接的に窓3に入射し得る面に設けられる。本実施の形態において、ルーバー10は、南西方向を向く外壁面2に設けられている。
【0020】
ルーバー
以下、ルーバー10について詳細に説明する。図2は、図1の構造物をII-II線に沿って見た場合を示す横断面図である。ルーバー10は、窓3が設けられている外壁面2に対向する基部11と、基部11の反対側に位置する先端部12と、基部11と先端部12との間に広がる入射面13及び出射面14と、を備える。入射面13は、太陽光が直接的に入射する側に位置しており、出射面14は、入射面13の反対側に位置している。外壁面2が南西面である場合、入射面13は南側を向いており、出射面14は北側を向いている。また、ルーバー10は、入射面13から出射面14に至るようにルーバー10を貫通する貫通孔15を備えている。貫通孔15は、入射面13から出射面14に至るように広がる側面を含んでいる。
【0021】
図2において、符号L1~L3が付された矢印はそれぞれ太陽光を表す。符号L1及びL2で示すように、太陽光L1,L2がある程度大きな入射角度θ1,θ2を有する時間帯においては、太陽光L1,L2は、窓3に到達するよりも前にルーバー10に到達する。例えば太陽光L1のように、ルーバー10の入射面13に到達して反射される。また、太陽光L2のように、ルーバー10の貫通孔15に到達する。入射面13側から貫通孔15に入射した太陽光L2は、貫通孔15の側面で反射された後、出射面14側へ出射する。
【0022】
このように、外壁面2にルーバー10を設けることにより、太陽光が直接的に窓3に入射することを防ぐことができ、これにより、太陽光に起因して室内4の温度が上昇することを抑制することができる。このため、日射熱負荷を低減することができる。また、ルーバー10に貫通孔15を設けることにより、入射面13に到達した太陽光の一部を、貫通孔15を介して出射面14側へ抜けさせることができる。出射面14は、室内4に居る人から視認され得る。太陽光の一部を、貫通孔15を介して出射面14側へ抜けさせることにより、室内4からの外の景色の見え方とルーバー10の出射面14の見え方との明暗比を低下させることができる。これにより、人が室内4を暗く感じることを抑制することができる。
【0023】
一方、太陽光L3の入射角度θ3が小さい時間帯においては、図2に示すように、太陽光L3がルーバー10に到達することなく直接的に窓3に入射し得る。仮に、このような太陽光L3が直接的に窓3に入射することを防ごうとすると、水平方向におけるルーバー10の配列ピッチPを小さくする必要があり、この結果、室内4からの視界の大部分がルーバー10によって遮られることになる。この点を考慮し、直接的に窓3に入射する太陽光L3を許容するようルーバー10の配列や形状を設計してもよい。この場合、ルーバー10以外の手段で太陽光L3を遮ってもよい。例えば、太陽光L3の入射角度θ3が小さい時間帯においては、室内4に設けられたブラインドを使用することによって太陽光L3を遮ってもよい。
【0024】
なお、「太陽光の入射角度」とは、外壁面2の法線方向Nと太陽光の方向とが成す角度を意味する。
【0025】
次に、図3を参照して、ルーバー10について詳細に説明する。図3は、図2のルーバー10を拡大して示す横断面図である。
【0026】
図3に示すように、入射面13は、貫通孔15が形成されている第1入射面131と、第1入射面131と基部11との間に位置する第2入射面132と、を含んでいてもよい。図3において、符号θ11は、第1入射面131の傾斜角度を表し、符号θ12は、第2入射面132の傾斜角度を表す。また、符号θ13は、出射面14の傾斜角度を表す。「傾斜角度」とは、外壁面2の法線方向Nに対してルーバー10の面が成す角度であり、法線方向Nに対して出射面14側へ傾斜している場合を正の値とする。第2入射面132の傾斜角度θ12は、第1入射面131の傾斜角度θ11と同一であってもよい。若しくは、第2入射面132の傾斜角度θ12は、第1入射面131の傾斜角度θ11と異なっていてもよい。例えば図3に示すように、第2入射面132の傾斜角度θ12は、第1入射面131の傾斜角度θ11よりも小さくなっていてもよい。傾斜角度θ12と傾斜角度θ11とが異なる場合、第2入射面132によって反射された太陽光と、第1入射面131によって反射された太陽光とは、異なる方向に進む。このため、第1入射面131及び第2入射面132を含む入射面13によって反射された光の分布が均一化され易くなる。これにより、入射面13によって反射された光によって、隣接するルーバー10の出射面14や室内をより均一に照らすことができる。
【0027】
入射面13の第1入射面131の傾斜角度θ11及び第2入射面132の傾斜角度θ12は、少なくとも0°以上であり、外壁面2の向きやルーバー10の寸法に応じて適宜定められる。好ましくは、第1入射面131の傾斜角度θ11は、出射面14の傾斜角度θ13以上であり、傾斜角度θ13よりも大きくてもよい。傾斜角度θ11が傾斜角度θ13よりも大きい場合、第1入射面131と出射面14との間の間隔が、基部11側から先端部12側に向かうにつれて小さくなる。なお、ルーバー10の製造上の観点からは、先端部12の幅が80mm以上であることが好ましい。従って、傾斜角度θ11の上限値は、先端部12の幅が80mm以上になるよう設定されることが好ましい。
【0028】
出射面14の傾斜角度θ13は、ルーバー10によって室内への直達日射が、特に夏場の直達日射が適切に防がれるように設定される。これにより、建物1の日射熱負荷を低減することができる。出射面14の傾斜角度θ13は、好ましくは0°以上35°以下であり、15°以上25°以下であってもよく、例えば20°であってもよい。
【0029】
次に、貫通孔15の構成について説明する。図3に示すように、貫通孔15は、先端部12側に位置する第1側面151と、基部11側に位置する第2側面152と、を含んでいる。貫通孔15は、好ましくは、臨界傾斜角度θ0以上の傾斜角度を有する太陽光が貫通孔15に入射した場合に、太陽光が出射面14側へ抜けるよりも前に第1側面151によって少なくとも1回は反射されるよう、構成されている。
【0030】
臨界傾斜角度θ0とは、複数のルーバー10の間を通って建物1の外壁面2に直接的に到達できる太陽光L0の傾斜角度の最大値である。図3に示す例において、臨界傾斜角度θ0は、1つのルーバー10の出射面14の先端側の端部と、当該ルーバー10の出射面14側において隣接する他のルーバー10の入射面13の基部11側の端部とを通る太陽光L0の傾斜角度である。なお、図示はしないが、建物1に庇などのその他の遮光物が形成されている場合、臨界傾斜角度θ0は、1つのルーバー10の出射面14の先端側の端部と、当該ルーバー10の出射面14側に位置する庇の端部とを通る太陽光L0の傾斜角度として定められてもよい。
【0031】
ルーバー10に貫通孔15が形成されていないと仮定すると、臨界傾斜角度θ0以上の傾斜角度を有する太陽光は必ずルーバー10の入射面13によって反射される。仮に、臨界傾斜角度θ0以上の傾斜角度を有する太陽光が、第1側面151によって反射されることなく貫通孔15を出射面14側へ抜けることができる場合、貫通孔15に起因して、窓3に直接的に到達する太陽光が生じることになる。このような現象が生じることを防ぐため、上述のように、臨界傾斜角度θ0以上の傾斜角度を有する太陽光が貫通孔15に入射した場合、第1側面151によって少なくとも1回は反射されることが好ましい。例えば、図3において符号Mが付された点線で示す、第2側面152の入射面13側の端部と第1側面151の出射面14側の端部とを結ぶ直線の傾斜角度θmが、臨界傾斜角度θ0よりも小さいことが好ましい。
【0032】
次に、図4を参照して、ルーバー10の寸法及び形状について詳細に説明する。図4は、図3のルーバー10を拡大して示す横断面図である。
【0033】
図4において、符号S1は、外壁面2の法線方向における、窓3とルーバー10の基部11との間の距離を表す。また、符号S2は、外壁面2の法線方向におけるルーバー10の寸法を表す。距離S1は、例えば約100mmである。寸法S2は、好ましくは350mm以上800mm以下であり、例えば約400mmである。
【0034】
次に、ルーバー10の貫通孔15の配置及び形状について説明する。図4において、符号Laは、室内4のブラインドが使用されておらず、且つ、ルーバー10の貫通孔15に太陽光が到達し始める時間における太陽光の一例を表している。また、符号Lbは、室内4のブラインドが使用され始める時間における太陽光の一例を表している。ルーバー10の貫通孔15は、太陽光Laから太陽光Lbまでの範囲内の太陽光が入射面13側から貫通孔15に入射した場合に、第1側面151又は第2側面152で反射させながら太陽光を出射面14側へ出射させるよう構成されていることが好ましい。
【0035】
図4に示す例において、符号S3は、出射面14が広がる方向における、先端部12と貫通孔15の入射面13側の開口までの距離を表す。ルーバー10の強度上の観点から、距離S3は、ルーバー10を構成する材料に応じて定まる下限値以上であることが好ましい。例えば、ルーバー10を構成する材料が、ガラス繊維補強セメント(GRC)又はプレキャストコンクリート(PC)である場合、距離S3は100mm以上であることが好ましい。また、ルーバー10を構成する材料が、ステンレス、アルミニウムなどの金属である場合、距離S3は50mm以上であることが好ましい。
【0036】
図4に示す例において、符号S4は、出射面14が広がる方向における、貫通孔15の入射面13側の開口の寸法を表し、符号S5は、出射面14が広がる方向における、貫通孔15の出射面14側の開口の幅を表す。開口の幅S4,S5は、図3に示す直線Mの傾斜角度θmが臨界傾斜角度よりも小さくなるという条件下において、可能な限り大きいことが好ましい。これにより、図3の太陽光L0が窓3に直接的に到達することを防ぎながら、より多くの太陽光を貫通孔15の内部に入射させることができる。開口の幅S4,S5は、例えば40mm以上であることが好ましい。
【0037】
図4に示す例において、符号S11及びS12はそれぞれ、貫通孔15の第1側面151の長さ及び第2側面152の長さを表す。第1側面151の長さS11及び第2側面152の長さS12は、貫通孔15の入射面13側の開口の幅S4及び出射面14側の開口の幅S5よりも大きいことが好ましい。これにより、貫通孔15に入射した太陽光が側面151,152によって反射され易くなる。
【0038】
図4に示す例において、符号θ14は、出射面14と貫通孔15の第1側面151とが成す角度を表す。角度θ14は、40°以上であることが好ましい。これにより、貫通孔15に対応する突起を有する型を用いてルーバー10を成形する工程において、突起からルーバー10を引き抜き易くなる。
【0039】
貫通孔15の配置及び形状は、上述の条件を満たしながら、太陽光によって照らされる貫通孔15の側面151,152及び出射面14の面積が大きくなるように設計されることが好ましい。
【0040】
次に、ルーバー10の製造方法の一例について説明する。ルーバー10は、ステンレス、アルミニウム、ガラス繊維補強セメント(GRC)、プレキャストコンクリート(PC)などの材料を、型を用いて成形することによって作製され得る。このような製造方法を採用することにより、入射面13側から出射面14側へ連続的に広がる第1側面151及び第2側面152を有する貫通孔15を有するルーバー10を、無垢の状態で、すなわち繋ぎ目のない状態で製造することができる。
【0041】
(ルーバーの作用)
次に、ルーバー10の作用について、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6はいずれも、ルーバー10を図2に示す矢印Aに沿って建物1の室内4から見た場合を示す図である。図5は、貫通孔15が形成されているルーバー10を室内4から見た場合の例を示している。図6は、比較のため、貫通孔15が形成されていないルーバー10を室内4から見た場合の例を示している。
【0042】
ルーバー10に貫通孔15が形成されていない場合、ルーバー10の出射面14には太陽光の反射光が到達し難い。このため、図6に示すように、ルーバー10の基部11及び出射面14は、室内の内壁面5と同様に、室内に居る人には暗く見える。この場合、外の景色の見え方とルーバー10の見え方との明暗比が高くなり、人が室内を暗く感じてしまうと考えられる。
【0043】
これに対して、本実施の形態によれば、ルーバー10に貫通孔15が形成されているので、貫通孔15を通った太陽光が出射面14側へ抜けることができる。このため、図5に示すように、ルーバー10の出射面14のうち貫通孔15の部分及び貫通孔15の周囲の部分が、室内に居る人にはほのかに明るく見える。これにより、外の景色の見え方とルーバー10の見え方との明暗比を低下させることができる。このため、人が室内4を暗く感じることを抑制することができる。
【0044】
(変形例)
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0045】
図7は、変形例に係るルーバー10を示す横断面図である。図7に示すように、ルーバー10の入射面13は部分的に湾曲していてもよい。例えば、入射面13の第2入射面132は、隣接するルーバー10の出射面14に向かって凸となるよう湾曲していてもよい。この場合、図7に示すように、第2入射面132に入射する太陽光L1を様々な方向へ反射することができる。これにより、入射面13によって反射された光の分布をより均一にすることができ、隣接するルーバー10の出射面14や室内をより均一に照らすことができる。
【0046】
図8は、他の変形例に係るルーバー10を出射面14側から見た場合を示す図である。図8に示すように、ルーバー10の貫通孔15は、部分的に湾曲した輪郭を有していてもよい。この場合、貫通孔15は、基部11側から先端部12側に向かって凸となる開口形状を有する第1貫通孔153と、先端部12側から基部11側に向かって凸となる開口形状を有する第2貫通孔154と、を含んでいてもよい。図8に示す例においては、第1貫通孔153と第2貫通孔154とが上下方向に交互に並んでいる。貫通孔15が部分的に湾曲した輪郭を有することにより、ルーバー10の意匠性を高めることができる。
【実施例
【0047】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0048】
貫通孔15が形成されている上述のルーバー10を、建物1の南西方向を向く外壁面2に取り付けた。図9は、ルーバー10を図2に示す矢印Aに沿って建物1の室内4から撮影した場合を示す写真である。撮影日時は、2019年2月20日である。この際の直達日射照度は72,590lxであり、散乱日射照度は7,949lxであった。
【0049】
図10は、外の景色及びルーバー10の輝度分布を室内4から測定した結果を示す図である。図10に示すように、外の景色の輝度の最大値は2000cd/m以上であった。また、ルーバー10の基部11の輝度は数百cd/m以下であった。
【0050】
図11は、図10の測定結果の一部を拡大して示す図である。図11に示すように、出射面14側から見える貫通孔15の輝度の最大値は2000cd/m以上であった。また、貫通孔15の周囲の出射面14の輝度は部分的に1000cd/m以上であった。このように、ルーバー10に貫通孔15を形成することにより、ルーバー10の出射面14の輝度を部分的に高めることができた。これにより、外の景色の見え方とルーバー10の見え方との明暗比を低下させることができた。
【符号の説明】
【0051】
1 建物
2 外壁面
3 窓
4 室内
5 内壁面
10 ルーバー
11 基部
12 先端部
13 入射面
131 第1入射面
132 第2入射面
14 出射面
15 貫通孔
151 第1側面
152 第2側面
153 第1貫通孔
154 第2貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11