(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】クッション体の製造方法、製造装置、およびクッション体
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20230428BHJP
D04H 3/14 20120101ALI20230428BHJP
B29D 28/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A47C27/12 F
D04H3/14
B29D28/00
(21)【出願番号】P 2019216564
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌和
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125497(WO,A1)
【文献】特開2017-160553(JP,A)
【文献】特開2018-000667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/12
D04H 3/14
B29D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間体に変形加工を施して、上側の使用者を支持するクッション体を製造する製造方法であって、
前記中間体は、
第1低反発層と、第1低反発層に連接し第1低反発層よりも反発力が高い第1高反発層と、第2低反発層と、第2低反発層に連接し第2低反発層よりも反発力が高い第2高反発層と、を有し、これらが第1高反発層、第1低反発層、第2低反発層、第2高反発層の順に層方向へ配置されたフィラメント3次元結合体であり、
前記変形加工は、
第1低反発層および第2低反発層の少なくとも一方が上部層として上方に露出し、前記上部層の下側に第1高反発層および第2高反発層の少なくとも一方が下部層として配置された状態へ、前記中間体を変形させる加工であることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記変形加工は、
第1低反発層と第2低反発層の間の一部が分離して対向する前記中間体に対して、当該対向する部分の少なくとも一部を上方に露出させる加工であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記変形加工は、
第1高反発層と第2高反発層を対向させるように前記中間体を曲げて、第1低反発層と第2低反発層の一方を上方に露出させ他方を下方に露出させる加工であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記中間体は、
層方向と直交する所定方向に視て、低反発層の外周全体を覆うように当該低反発層よりも反発力が高い高反発層が設けられており、
当該低反発層が第1低反発層と第2低反発層を含み、当該高反発層が第1高反発層と第2高反発層を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション体の製造方法、製造装置、およびクッション体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットレスやソファー用クッション等に用いられるクッション体(上側の使用者を支持するクッション体)が広く利用されている。このようなクッション体としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、熱可塑性樹脂からなるフィラメントを3次元的に融着結合させて得られるフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)により形成されるものがある。
【0003】
特許文献1によれば、水平に配置された複数のノズルから溶融状態のポリエチレン樹脂を鉛直方向下向きに押し出した後、直径が1mm前後の溶融フィラメントを冷却水中に落下させて、水の浮力で溶融フィラメントのループを形成させると同時に、複数の溶融フィラメントどうしを3次元的に融着結合させることで、空隙率が90%を超える極めて風通しのよいフィラメント3次元結合体を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/122370号
【文献】特開2010-154965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マットレス等に用いられるクッション体は、一般的に反発力が低い方が使用者に柔らかい使用感を与えることができ、また、例えば寝たきりの患者等に対しては褥瘡の発生を出来るだけ予防する効果が期待できる。但し、クッション体の反発力が全体的に低すぎると、クッション体の下の床等に体が当たる状態、或いはこれに近い状態となり、底突き感が生じたり褥瘡を誘発したりする虞がある。
【0006】
この点を考慮し、クッション体は上側部分(使用者に近い部分)について反発力を低くしつつも、その下側の反発力を比較的高めとすることにより、柔らかい使用感を極力維持しながらも底突き感を抑えることができ、褥瘡の予防にも効果的となる。クッション体は、このように使用者にとって適切な反発力を有するように形成されることが望まれる。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る製造方法は、中間体に変形加工を施して、上側の使用者を支持するクッション体を製造する製造方法であって、前記中間体は、第1低反発層と、第1低反発層に連接し第1低反発層よりも反発力が高い第1高反発層と、第2低反発層と、第2低反発層に連接し第2低反発層よりも反発力が高い第2高反発層と、を有し、これらが第1高反発層、第1低反発層、第2低反発層、第2高反発層の順に層方向へ配置されたフィラメント3次元結合体であり、前記変形加工は、第1低反発層および第2低反発層の少なくとも一方が上部層として上方に露出し、前記上部層の下側に第1高反発層および第2高反発層の少なくとも一方が下部層として配置された状態へ、前記中間体を変形させる加工である方法とする。
【0009】
本製造方法によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる。また上記製造方法において、前記変形加工は、第1低反発層と第2低反発層の間の一部が分離して対向する前記中間体に対して、当該対向する部分の少なくとも一部を上方に露出させる加工である方法としてもよい。なお本願におけるクッション体に関する「上側」とは、使用者を支持する側(使用者に近い側)を便宜的に示すものに過ぎない。
【0010】
また上記製造方法において、前記変形加工は、第1高反発層と第2高反発層を対向させるように前記中間体を曲げて、第1低反発層と第2低反発層の一方を上方に露出させ他方を下方に露出させる加工である方法としてもよい。
【0011】
また上記製造方法において、前記中間体は、層方向と直交する所定方向に視て、低反発層の外周全体を覆うように当該低反発層よりも反発力が高い高反発層が設けられており、当該低反発層が第1低反発層と第2低反発層を含み、当該高反発が第1高反発層と第2高反発層を含む方法としてもよい。
【0012】
また本発明に係る製造装置は、上記製造方法において用いられる前記中間体を製造する製造装置であって、溶融フィラメント群を鉛直方向下方へ排出する溶融フィラメント供給部と、前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部と、を有し、前記融着結合形成部は、前記排出された溶融フィラメント群の下方視外縁全周部分に接触し、当該部分を中央側へ導く受け部を有する構成としてもよい。
【0013】
また上記構成において、前記溶融フィラメント供給部は、前記溶融フィラメント群を排出する複数の開口部が形成されたノズル部を有し、前記ノズル部は、中央領域において前記開口部の形成が省略された非排出領域を有する構成としてもよい。
【0014】
また本発明に係る製造装置は、上側の使用者を支持するクッション体であって、低反発層と当該低反発層よりも反発力が高い高反発層とが連接したフィラメント3次元結合体により形成されており、上方に露出させた前記低反発層の下側に前記高反発層が配置されている構成としてもよい。
【0015】
また上記構成において、前記フィラメント3次元結合体は、第1低反発層と、第1低反発層に連接し第1低反発層よりも反発力が高い第1高反発層と、第2低反発層と、第2低反発層に連接し第2低反発層よりも反発力が高い第2高反発層と、を有し、第1低反発層および第2低反発層の一方が上方に、他方が下方にそれぞれ露出し、第1低反発層と第2低反発層の間に、第1高反発層および第2高反発層が配置された構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る製造方法によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フィラメント3次元結合体の製造装置の概念図である。
【
図4】ノズル部の一例を下方から視た底面図である。
【
図4A】空洞形成部材を設けた例に関する説明図である。
【
図6】中間体に切込みを入れた状態を示す図である。
【
図7】クッション体の第1実施形態を示す側面図である。
【
図8】クッション体の第2実施形態を示す側面図である。
【
図9】クッション体の第3実施形態を示す側面図である。
【
図10】マットレスの一構成例を示す概略的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について各図面を参照しながら説明する。
【0019】
1.中間体の製造装置および製造方法について
本発明に係るクッション体は、後述するように、中間体に変形加工を施して製造されるものであり、ここではまず、上記中間体を製造するための製造装置について説明する。当該製造装置は、中間体であるフィラメント3次元結合体を製造する装置である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置1の概念図である。また、
図2は、
図1に示すA-A’断面の矢視図である。なお、製造装置1の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、各図に示すとおりである。これらの各方向は、鉛直方向が上下方向となり、後述する一対の受け板30同士の対向向きが前後方向となるように、便宜的に定めたものに過ぎない。
【0021】
フィラメント3次元結合体の製造装置1は、直径が0.5mm~3mmの複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFを鉛直方向下方へ排出する溶融フィラメント供給部10と、溶融フィラメント群MFを3次元的に絡め合わせて接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体3DFを形成する融着結合形成部20を備える。
【0022】
溶融フィラメント供給部10は、加圧溶融部11(押出機)とフィラメント排出部12(ダイ)を含む。加圧溶融部11は、材料投入部13(ホッパー)、スクリュー14、スクリュー14を駆動するスクリューモーター15、スクリューヒーター16、および不図示の複数の温度センサーを含む。加圧溶融部11の内部には、材料投入部13から供給された供給された熱可塑性樹脂をスクリューヒーター16により加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー11aが形成されている。
【0023】
シリンダー11a内には、スクリュー14が回転可能に収容されている。シリンダー11aの下流側端部には、熱可塑性樹脂をフィラメント排出部12に向けて排出するためのシリンダー排出口11bが形成されている。スクリューヒーター16の加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部10に設けた温度センサーの検知信号に基づいて制御される。
【0024】
フィラメント排出部12は、ノズル部17、ダイヒーター18、および図示しない複数の温度センサーを含み、内部にはシリンダー排出口11bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル部17に導く導流路12aが形成されている。
【0025】
ノズル部17は、複数の開口部が形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路12aの最下流部にあたるフィラメント排出部12の下部に設けられている。なお、ノズル部17に形成される複数の開口部については、後ほど
図4を用いて説明する。
【0026】
ダイヒーター18は、左右方向に複数個(
図2に示す例では6個)が設けられており、フィラメント排出部12を加熱する。ダイヒーター18の加熱温度は、例えばフィラメント排出部12に設けた温度センサーの検知信号に基づいて制御される。
【0027】
フィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0028】
材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー11a内で加熱溶融され、例えばスクリュー14により押し出されるようにして、溶融熱可塑性樹脂としてシリンダー排出口11bからフィラメント排出部12の導流路12aに供給される。その後、ノズル部17の複数のノズル(開口部)それぞれから下方へ並進するように、複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFが排出される。
【0029】
融着結合形成部20は、冷却水槽23、一対のコンベア24、複数の搬送ローラ25a~25h、および、受け部300を含む。受け部300は、第1受け板31と第2受け板32を含む。第1受け板31(前側の受け板30)と第2受け板32(後側の受け板30)は前後一対の受け板30として設けられており、フィラメント3次元結合体3DFの厚みを規制すると同時に、これに高反発層を形成する役割を果たす。
【0030】
冷却水槽23は、冷却水Wを溜めておくための水槽である。冷却水槽23の内部には、一対のコンベア24と、複数の搬送ローラ25a~25hが配設されている。一対のコンベア24a、24bおよび複数の搬送ローラ25a~25hは、不図示の駆動モーターにより駆動される。
【0031】
図3は、受け部300の概略的な斜視図である。受け部300は、第1受け板31と、第2受け板32と、第3受け板33と、第1側面板34と、第4受け板35と、第2側面板36と、を有する。
【0032】
第1受け板31は、後方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜部31Aと、当該傾斜面31Aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直部31Bを含む屈曲部を有する金属板である。第2受け板32は、前方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜部32Aと、当該傾斜部32Aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直部32Bを含む屈曲部を有する金属板である。これらの鉛直部31B,32Bは互いに平行であり、前後方向に対向している。
【0033】
第3受け板33は、傾斜部31A,32Aの左端に溶接等により固定される金属板であり、右方に向けて下り傾斜となる平板状を有する。第1側面板34は、鉛直部31B,32Bの左端および第3受け板33の下端に溶接等により固定される金属板である。
【0034】
第4受け板35は、傾斜部31A,32Aの右端に溶接等により固定される金属板であり、左方に向けて下り傾斜となる平板状を有する。第2側面板36は、鉛直部31B,32Bの右端および第4受け板35の下端に溶接等により固定される金属板である。鉛直部31B,32B、第1側面板34、および第2側面板36により直方体状の筒部300Aが形成される。
【0035】
図4は、ノズル部17を下方から視た底面図である。ノズル部17には、溶融フィラメント群を排出する複数の開口部171が形成されている。開口部171は、左右方向に配列されて1列を形成し、当該1列が前後方向に配列され、全体として千鳥配列となっている。開口部171の断面形状は、例えば内径1mmの円形である。なお、
図4に示す開口部171の個数や配列形態等は一例に過ぎない。
【0036】
図4に点線で示す投影領域17Aは、
図3に示す傾斜部31A,32Aの下端縁、第3受け板33の下端縁、および第4受け板35の下端縁で形成される投入口3001(すなわち筒部300Aの上端開口)を上方へ投影した領域である。
図4において投影領域17Aの外側に位置する開口部171から下方へ排出される溶融フィラメントは、受け部300における傾斜部31A,32A、第3受け板33、および第4受け板35に接触し、投入口3001へ導かれる。すなわち、受け部300は、ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFの下方視外縁全周部分に接触し、当該部分を中央側へ導く。これにより、溶融フィラメント群MFの下方視外縁全周の近傍はフィラメントがより密集した状態となり、この領域に対応する中間体の部分(後述する高反発層5Bに相当する)は、その分だけ高い反発力を有することになる。
【0037】
図4において投影領域17Aの内側に位置する開口部171から下方へ排出される溶融フィラメントは、受け部300に接触することなく、投入口3001内へ導かれる。溶融フィラメント群MFの下方視中央寄りの部分は、溶融フィラメント群MFの受け部300への接触の影響を殆ど受けず、この領域に対応する中間体の部分(後述する低反発層5Aに相当する)は、高反発層5Bに比べると低い反発力を有することになる。
【0038】
また
図4に別の点線で示す非排出領域17Bは、投影領域17A内の中央の一部領域(ノズル部17の中央領域)であり、非排出領域17Bにおける開口部171は、栓部材により栓をされており、溶融フィラメントを排出不可としている。なお、非排出領域17B内には開口部171をそもそも設けないようにして、溶融フィラメントが排出されないようにしてもよい。このようにノズル部17は、中央領域において開口部171の形成が省略された非排出領域17Bを有している。そのため、この領域に対応する中間体の部分は、空洞(後述する貫通孔51に相当する)、または、フィラメント量が少なく切込み処理を行い易い状態となる。なお、
図4に示す投影領域17Aおよび非排出領域17Bの範囲は一例に過ぎず、また、諸事情に応じて非排出領域17Bを設定せずに、ノズル部17の中央領域からも溶融フィラメントが排出されるようにしても構わない。
【0039】
また上記の空洞が確実に形成されるように、
図4Aに例示するとおり、非排出領域17Bの下側に略板状の空洞形成部材38を設けるようにしても良い。
図4Aに例示する空洞形成部材38は、受け部300の内側に配置されており、非排出領域17Bよりも前後方向に少し大きめに形成されている。
【0040】
空洞形成部材38の上部には前後方向中央から外側に向けて下り傾斜となる斜面が形成されており、上方から空洞形成部材38に当たる溶融フィラメントは当該斜面を滑るようにして下方へ進む。そのためノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFについて、傾斜部31A,32Aに当たる部分を、
図4Aに着色矢印で示すように前後方向内向き(中央寄り)に導くとともに、空洞形成部材38の上部に当たる部分を、本図に白抜き矢印で示すように前後方向外向きに導くことが可能である。
【0041】
なおこのように空洞形成部材38を設ける場合は、先述した非排出領域17Bを設けなくても、上記の空洞を形成することが可能である。また、空洞形成部材38の上部に当たる溶融フィラメントの量を多くすれば、
図4Aに白抜き矢印で示すように導かれる溶融フィラメントの量が多くなり、上述した空洞の表面近傍の反発力を高めることが出来る。またこのようにして、当該空洞の表面近傍の反発力(空洞形成部材38に接して形成される表面の近傍の反発力)は、受け部300に接して形成される表面の近傍の反発力より高くなるようにすることも可能である。この場合は、後述する中間体を裏返す処理等を行わなくても、内部に高反発力である層を有したクッション体を得ることができる。
【0042】
ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFは、受け部300を介して冷却水槽23へ進み、冷却水槽23内の冷却水Wの浮力作用によって撓み、ランダムなループを形成する。ランダムなループは隣接するランダムなループと3次元的に溶融状態で絡み合い、接触点が融着結合して3次元的なフィラメントの結合体が形成される。
【0043】
その後、コンベア24と複数の搬送ローラ25a~25hによって、冷却水槽23内の冷却水Wで冷却されながら搬送されることによって、当該結合体はフィラメント3次元結合体3DFとして冷却水槽23外へ排出される。このようにして搬送方向へ連続的に形成されるフィラメント3次元結合体3DFを、所定長さごとに切断することにより、後述する中間体が得られることになる。
【0044】
2.中間体の構成について
次に、上述した製造装置1により製造される中間体5の構成について説明する。
図5は、当該中間体5の一例を示す斜視図である。
図5では、上下方向および左右方向に直交する特定方向(本発明に係る「所定方向」に相当する)も示されており、この特定方向は、中間体5の元となるフィラメント3次元結合体3DFについての、製造時における搬送方向と同じである。
【0045】
図5に示すように、中間体5は、低反発層5Aと高反発層5Bとからなる。低反発層5Aは、環状面が特定方向に延びて形成される。高反発層5Bは、低反発層5Bよりも反発力が高く、低反発層5Aの環状面の外周を覆う環状面が特定方向に延びて形成される。低反発層5Aは、内側に特定方向に延びる貫通孔51を有する。特定方向の一方から見て、中間体5は上下方向よりも左右方向の寸法が大きく、貫通孔51は左右に伸びている。
【0046】
なお、中間体5の上側部分にある高反発層5Bの部分(第1高反発層H1)は、本発明に係る第1高反発層に相当し、その下側に連接する低反発層5Aの部分(第1低反発層L1)は、本発明に係る第1低反発層に相当する。一方、中間体5の下側部分にある高反発層5Bの部分(第2高反発層H2)は、本発明に係る第2高反発層に相当し、その上側に連接する低反発層5Aの部分(第2低反発層L2)は、本発明に係る第2低反発層に相当する。そのため中間体5は、これらの層が第1高反発層H1、第1低反発層L1、第2低反発層L2、第2高反発層H2の順に層方向(上下方向)へ配置されたフィラメント3次元結合体に相当する。
【0047】
また、先述したノズル部17の非排出領域17Bからは溶融フィラメントが排出されないため、中間体5には貫通孔51(隙間)が形成されている。なお、初めは中間体5に貫通孔51が形成されていなくても、低反発層5Aの中央近傍に貫通孔51の代わりとなる切込み等を入れることにより、貫通孔51に準じたものを形成することができる。
【0048】
なお、例えば、
図3に示す受け部300を第1受け板31および第2受け板32のみから構成して、低反発層5Aの上下のみに高反発層5Bが形成されるような中間体を製造してもよい。この場合であっても当該中間体は、第1高反発層H1、第1低反発層L1、第2低反発層L2、第2高反発層H2がこの順に層方向(上下方向)へ配置されたフィラメント3次元結合体に相当する。
【0049】
3.クッション体の製造について
先述した構成の中間体5に変形加工を施すことによりクッション体が製造される。ここでは、当該クッション体の製造方法について説明する。
【0050】
図7は、中間体5に変形加工を施して製造されるクッション体の第1実施形態を概略的に示す図である。
図7では、クッション体61を上下方向および左右方向に直交する特定方向に視た図である。この特定方向は、紙面に垂直な方向であり、後述する
図8、
図9についても同様である。
【0051】
クッション体61を製造するために、
図6に示すように、中間体5に対して切込みCを入れる。切込みCは、貫通孔51(或いは貫通孔51の代わりとなる切込み等)の左端から高反発層5Bの外縁まで延びる線分を特定方向に延ばして形成される切断面である。なお、中間体5に貫通孔51が形成されていないような場合、貫通孔51の代わりとなる切込みと上記の切込みCを、中間体5へ同時に設けるようにしても良い。
【0052】
切込みCを中間体5に入れた状態で、切込みCより上部を180°右側へ折り返すことで、
図7に示すクッション体61が製造される。これにより、クッション体61は、左右方向に延びる高反発層5Bと、左右方向に延びて高反発層5Bの上側に配置される低反発層5Aと、を有する構成となる。すなわち、中間体5に施す変形加工としては、上方に露出させた低反発層5Aの下側に高反発層5Bが配置された状態へ中間体5を変形させる加工となる。また、中間体5の貫通孔51(或いは貫通孔51の代わりとなる切込み等)の壁面の全体がクッション体61における低反発層5Aの上面として上方に露出する。
【0053】
図8は、中間体5に変形加工を施して製造されるクッション体の第2実施形態を概略的に示す図である。
図8に示すクッション体62は、切込みCを中間体5に入れた状態(
図6を参照)で、切込みCより上部を360°右側へ折り返すことで製造される。すなわち、クッション体62は、
図7に示すクッション体61の右部をさらに下方へ折り返したものとなる。
【0054】
これにより、クッション体62は、特定方向に視てコの字状の高反発層5Bの外周にコの字状の低反発層5Aが配置される構成となり、上側より順に、第2低反発層L2、第2高反発層H2、第1高反発層H1、および第1低反発層L1が積層される構成となる。すなわち、中間体5に対してクッション体62を製造するために行う変形加工は、上下の高反発層5B同士を対向させ、貫通孔51(或いは貫通孔51の代わりとなる切込み等)の壁面の一部を上方に露出させ、当該壁面の別の一部を下方に露出させる加工となる。
【0055】
図9は、中間体5に変形加工を施して製造されるクッション体の第3実施形態を概略的に示す図である。
図9に示すクッション体63は、
図6のように切込みCを設けることなく製造される。
【0056】
すなわち、クッション体63は、
図5に示す状態の中間体5の外周面と内周面とを入れ替えるように中間体5を裏返すことにより製造される。これにより、クッション体63は、特定方向から視て環状の高反発層5Bの外周に環状の低反発層5Aが配置される構成となる。クッション体63は、特定方向に延びる貫通孔631を有する。
【0057】
中間体5に対してクッション体63を製造するために行う変形加工も、クッション体62の場合と同様に、上下の高反発層5B同士を対向させ、貫通孔51(或いは貫通孔51の代わりとなる切込み等)の壁面の一部を上方に露出させ、当該壁面の別の一部を下方に露出させる加工となる。
【0058】
図7~
図9に示した各実施形態のクッション体の使用形態としては、当該クッション体の上面に使用者の身体の一部が直接的に或いはカバー等を介して間接的に接触し、使用者がクッション体により支持される格好となる。このとき、クッション体61~63においては、上方に露出された低反発層5Aの下側に高反発層5Bが配置されている。このように、クッション体の上側部分(使用者に近い部分)について反発力を低くしつつも、その下側の反発力を比較的高めとすることにより、柔らかい使用感を極力維持しながらも底突き感を抑えることができ、褥瘡の予防にも効果的となる。つまり各実施形態のクッション体は、使用者にとって適切な反発力を有するように形成されている。
【0059】
従って、例えばクッション体をベッドマットレスに用いた場合は、マットレスにより支持される使用者の褥瘡を抑制しつつ、底突き感を解消することができる。なお、クッション体61~63は、マットレス以外にも、例えばソファー用のクッション、枕、座布団などに用いることができる。
【0060】
また、特に第2或いは第3実施形態のクッション体62,63(
図8、
図9を参照)については、上下を逆向きとしても、上方に露出された低反発層の下側に高反発層が配置される形態となる。そのため、上下を逆にしても同様に利用することが可能なリバーシブル仕様とすることができ、例えば、使用中に上側表面が汚れた際には、一時的に上下を引っ繰り返し、汚れていない下側表面を上に向けて清潔に使用するといった使い方が可能となる。
【0061】
なお
図10は、第2実施形態に係るクッション体62(
図8を参照)を用いて製造したマットレスの一例を概略的に示す図である。
図10に示すマットレス7は、クッション体62を複数並べて形成される。より具体的には、1個1個のクッション体62を布等から形成されるカバー71で包んだものを並べている。これにより、マットレス7により支持される使用者Pの身長に応じてクッション体62を並べる個数を変えることが可能である。なお、複数並べたクッション体62を1枚のカバー71で包んでマットレスを構成してもよい。
【0062】
また、マットレス7を構成するのに、第1、第3実施形態に係るクッション体61,63を並べても構わないことは当然である。上述したように、本実施形態に係るクッション体を用いて、マットレス等の各種製品を製造することが可能である。
【0063】
4.その他
以上に説明したとおり、各実施形態に係るクッション体を製造する製造方法は、中間体5に変形加工を施して、上側の使用者を支持するクッション体を製造する方法となっている。また、当該中間体5は、第1低反発層L1と、第1低反発層L1に連接し第1低反発層L1よりも反発力が高い第1高反発層H1と、第2低反発層L2と、第2低反発層L2に連接し第2低反発層L2よりも反発力が高い第2高反発層H2と、を有し、これらが第1高反発層H1、第1低反発層L1、第2低反発層L2、第2高反発層H2の順に層方向へ配置されたフィラメント3次元結合体である。更に当該変形加工は、第1低反発層L1および第2低反発層L2の少なくとも一方が上部層として上方に露出し、前記上部層の下側に第1高反発層H1および第2高反発層H2の少なくとも一方が下部層として配置された状態へ、中間体5を変形させる加工である。
【0064】
当該製造方法によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる。すなわち、外周側を低反発層としてその内側に高反発層が連接したようなフィラメント3次元結合体を得ることは容易ではない。一方で、本実施形態の中間体のように外周側を高反発層としてその内側に低反発層が連接したフィラメント3次元結合体については、既に説明したとおり、例えば受け部300を設けた製造装置1で製造可能であり、このような中間体を得ることは比較的容易である。
【0065】
そのため本実施形態に係るクッション体の製造方法によれば、このように比較的容易に得られる中間体を用いて、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体、つまり上側部分(使用者に近い部分)について反発力を低くしつつも、その下側の反発力を比較的高めとしたクッション体を製造することが可能である。なお、第1低反発層L1と第1高反発層H1は、互いに連接している(元々離れていた層同士を接合したようなものではなく、連続的に繋がっている)ため、これらの層同士が分離する虞もなく、これらの境界部で素材特性が大きく変わること等による違和感も生じない。この点は、第2低反発層L2と第2高反発層H2についても同様である。
【0066】
また前記変形加工は、より具体的に説明すると、第1低反発層L1と第2低反発層L2の間の一部が分離して対向する(つまり貫通孔51或いはその代わりとなる切込み等を介して対向する)中間体5に対して、当該対向する部分の少なくとも一部を上方に露出させる加工となっている。そのため、第1~第3実施形態のクッション体を容易に形成することが可能である。なお、第2実施形態のクッション体を形成するための前記変形加工は、第1高反発層H1と第2高反発層H2を対向させるように中間体5を曲げて、第1低反発層L1と第2低反発層L2の一方を上方に露出させ他方を下方に露出させる加工である。
【0067】
また本実施形態の中間体5は、特定方向(層方向と直交する所定方向)に視て、低反発層5Aの外周全体を覆うように、当該低反発層5Aよりも反発力が高い高反発層5Bが設けられている。更に当該低反発層5Aが第1低反発層L1と第2低反発層L2を含み、当該高反発層5Bが第1高反発層H1と第2高反発層H2を含む。そのため、高反発層5Bにおいて第1高反発層H1と第2高反発層H2を途切れることなく設け、例えば第1実施形態のクッション体を形成する場合に、高反発層を5Bを一端から他端まで連続した構成とすることが可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えばマットレス、ソファー用クッション等に用いられるクッション体の製造などに利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 フィラメント3次元結合体の製造装置
10 溶融フィラメント供給部
11 加圧溶融部
11a シリンダー
11b シリンダー排出口
12 フィラメント排出部
12a 導流路
13 材料投入部
14 スクリュー
15 スクリューモーター
16 スクリューヒーター
17 ノズル部
17A 投影領域
17B 非排出領域
171 開口部
18 ダイヒーター
20 融着結合形成部
23 冷却水槽
24 コンベア
25a~25h 搬送ローラ
300 受け部
31 第1受け板
32 第2受け板
33 第3受け板
34 第1側面板
35 第4受け板
36 第2側面板
38 空洞形成部材
5 中間体
5A 低反発層
5B 高反発層
51 貫通孔
61~63 クッション体
631 貫通孔
7 マットレス
71 カバー
100 クッション体
101 クッション体カバー
101A、101B 開口部
105 カバー付きクッション体
106 袋体
106A 挿入口
110 マットレス
C 切込み