(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵デバイスの電極を製造する方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20230428BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230428BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20230428BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230428BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230428BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20230428BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20230428BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230428BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/139
H01M4/1391
H01M4/88 K
H01G13/00 381
H01G11/86
H01G11/38
H01M4/1393
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2019511881
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(86)【国際出願番号】 US2017049664
(87)【国際公開番号】W WO2018045198
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-20
(32)【優先日】2016-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル ポーター
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】クローフォード ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サイディ ムハンマド-ヤジド
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/126665(WO,A1)
【文献】特開2005-044794(JP,A)
【文献】特開2009-289601(JP,A)
【文献】特開平10-116607(JP,A)
【文献】特開平10-055802(JP,A)
【文献】特開平11-031500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 4/88
H01G 13/00
H01G 11/86
H01G 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を形成する装置であって、
第1の供給源と、第2の供給源と、流動層コーティング装置とを備え、
前記第1の供給源はポリマー分散物を含み、
前記ポリマー分散物は液体およびポリマーを含み、
前記ポリマーはエネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分であり、
前記第2の供給源は、前記エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第2の成分を含み、
前記流動層コーティング装置は、コーティング室と、第1の入口と、第2の入口とを備え、前記ポリマー分散物を前記第1の供給源から前記第1の
入口を介して前記コーティング室内に受け入れるとともに、前記第2の成分を前記第2の供給源から前記第2の入口を介して前記コーティング室内に受け入れ、前記コーティング室内で前記電極膜混合物を形成するように構成され、前記第1の供給源と前記第2の供給源は異なる供給源である、装置。
【請求項2】
前記流動層コーティング装置はさらに、
前記ポリマー分散物の液体を蒸発させて乾燥ポリマーを形成し、
前記コーティング室内において前記第2の成分で流動層を形成するとともに、前記乾燥ポリマーで前記第2の成分を覆うように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の成分は、乾燥粒子を含み、
前記流動層コーティング装置はさらに、前記コーティング室内において前記乾燥粒子から流動層を形成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の成分は、前記電極膜混合物の活性電極成分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の成分は、リチウム金属酸化物を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の成分は、炭素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の成分は、黒鉛を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記液体は、水を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の成分は、乾燥粒子を含み、
前記流動層コーティング装置は、前記第2の入口を介して前記乾燥粒子を前記コーティング室内で受け取り、前記乾燥粒子から流動層を形成するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記流動層コーティング装置はさらに、前記水を蒸発させて、前記乾燥粒子上に乾燥ポリテトラフルオロエチレン被膜をもたらすように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記流動層コーティング装置はさらに、前記コーティング室内において、連続した量の気体を供給して前記第2の成分で流動層を形成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
回転子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を調整する方法であって、
流動層コーティング装置の第1の入口に、液体と前記エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分であるポリマーとを含むポリマー分散物を第1の供給源から供給する工程と、
前記第1の入口とは別個の入口である、前記流動層コーティング装置の第2の入口に、前記エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第2の成分を第2の供給源から供給する工程と、
前記ポリマー分散物の液体部分を前記流動層コーティング装置のコーティング室内で蒸発させて乾燥ポリマーを形成する工程と、
前記乾燥ポリマーの流動層および前記電極膜混合物の第2の成分を前記コーティング室内で形成して電極膜混合物を形成する工程とを備える、方法。
【請求項15】
前記ポリマー分散物を供給する工程は、水とポリテトラフルオロエチレンとを含む分散物を供給することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の成分を供給する工程は、乾燥粒子を供給することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の成分を供給する工程は、前記電極膜混合物の活性電極成分を供給することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の成分を供給する工程は、炭素を供給することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素を供給することは、黒鉛を供給することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の成分を供給する工程は、リチウム金属酸化物を供給することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー分散物の液体部分を蒸発させる工程は、前記ポリマー分散物を前記流動層コーティング装置のスプレーノズルに通すことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティング室内で前記第2の成分を前記乾燥ポリマーで覆う工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の成分を供給する工程は、前記ポリマー分散物を供給する前に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
電極膜を形成する方法であって、
請求項14に記載の方法を用いてエネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を形成する工程と
前記電極膜混合物を圧延して電極膜を形成する工程とを備える、方法。
【請求項25】
前記電極膜混合物を圧延する工程は、前記ポリマーを繊維化することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記電極膜は、自立性電極である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電極膜混合物を受け入れて電極膜を形成するように構成されたカレンダー装置を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
電極膜ドライ装置を含まない、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記コーティング室が高剪断装置を含まない、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記電極膜混合物を形成する工程は、前記コーティング室内の前記乾燥ポリマーおよび前記電極膜混合物の前記第2の成分に高剪断力を加えることを含まない、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、2016年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/382,675号の利益を主張する。これにより、この内容全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、エネルギー貯蔵デバイスに関し、特に、エネルギー貯蔵デバイスの電極を製造する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えばコンデンサ、バッテリー、コンデンサとバッテリーとの混成物、および燃料電池などの電子装置に電力を供給するためには、種々のエネルギー貯蔵デバイスを使用することができる。こうしたエネルギー貯蔵デバイスは、1つまたは複数の電極膜を含むアノードおよびカソードを有する可能性がある。電極膜は、ポリマーバインダーおよび1つまたは複数の活性電極成分を含み得る。エネルギー貯蔵デバイスの電気的性能は、バインダーおよび活性電極成分の1つまたは複数の特性に依存する可能性がある。エネルギー貯蔵デバイスの所望の電気的性能は、バインダーや活性電極成分の種類、および/または電極膜の製造に用いるプロセスを選択することにより獲得され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エネルギー貯蔵デバイスの製造には、多大なコストがかかる可能性がある。特に、仕様に合わせた電極製造には、実質的なリソースが必要となる可能性がある。1つの難題として、製造後に溶剤および他の処理添加物を電極膜から除去することが挙げられる。ウェット電極の製造において、溶剤除去には多大な動力と時間が必要であり、その間、貴重な製造リソースが独占されてしまう可能性がある。製造技術を改善すれば、例えば、活性バインダー材料をより均一に分散させることによって、より高性能な電極が得られる。従来のドライ電極製造技術は、こうした課題の一部を回避する一方、本明細書にさらに記載される他の課題の発生を伴う。したがって、電極製造技術の改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態は、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を形成する装置を提供する。この装置は、ポリマー分散物を含む第1の供給源を備える。ポリマー分散物は、液体およびポリマーを含む。ポリマーは、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分である。この装置は、第2の供給源をさらに備える。第2の供給源は、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第2の成分を含む。この装置は、流動層コーティング装置をさらに備える。流動層コーティング装置は、第1の供給源からポリマー分散物を受け取るように構成された第1の入口と、第2の供給源から電極膜混合物の第2の成分を受け取るように構成された第2の入口とを備える。
【0006】
さらなる実施形態は、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を調整する方法を提供する。この方法は、流動層コーティング装置の第1の入口に、ポリマー分散物を供給する工程を含む。ポリマー分散物は、液体およびポリマーを含む。ポリマーは、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分である。この方法は、流動層コーティング装置内に、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第2の成分を供給する工程をさらに含む。この方法は、ポリマー分散物の液体部分を流動層コーティング装置内で蒸発させて乾燥ポリマーを形成する工程をさらに含む。この方法は、電極膜混合物の第2の成分を含む流動層を流動層コーティング装置内で形成する工程をさらに含む。
【0007】
第1の態様において、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を形成する装置が提供される。この装置は、第1の供給源と、第2の供給源と、流動層コーティング装置とを備える。第1の供給源は、ポリマー分散物を含む。ポリマー分散物は、液体およびポリマーを含む。ポリマーは、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分である。第2の供給源は、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第2の成分を含む。流動層コーティング装置は、電極膜混合物を形成するために、第1の供給源からポリマー分散物を受け取るように構成された第1の入口と第2の供給源から第2の成分を受け取るように構成された第2の入口とを備える。
【0008】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、装置は、分散物の液体を蒸発させて乾燥ポリマーを形成するとともに、第2の成分で流動層を形成し、乾燥ポリマーで第2の成分を覆うように構成されている。
【0009】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分は乾燥粒子を含み、流動層コーティング装置は、この乾燥粒子から流動層を形成するように構成されている。
【0010】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分は、電極膜混合物の活性電極成分を含む。
【0011】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分は、リチウム金属酸化物を含む。
【0012】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分は、炭素を含む。
【0013】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分は、黒鉛を含む。
【0014】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0015】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、液体は、水を含む。
【0016】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分は乾燥粒子を含み、流動層コーティング装置は、第2の入口を介して乾燥粒子を受け取り、その乾燥粒子から流動層を形成するように構成されている。
【0017】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、流動層コーティング装置は、水を蒸発させ、乾燥粒子上に乾燥ポリテトラフルオロエチレン被覆をもたらすように構成されている。
【0018】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、流動層コーティング装置は、連続した量の気体を供給することにより、第2の成分で流動層を形成するように構成されている。
【0019】
第1の態様に係るいくつかの実施形態において、装置は、回転子を備える。
【0020】
第2の態様において、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を準備する方法が提供される。この方法は、流動層コーティング装置の第1の入口に、液体と前記エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分であるポリマーとを含むポリマー分散物を供給する工程と、前記流動層コーティング装置の第2の入口に、前記エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第2の成分を供給する工程と、前記ポリマー分散物の液体部分を前記流動層コーティング装置内で蒸発させて乾燥ポリマーを形成する工程と、前記乾燥ポリマーの流動層および前記電極混合物の第2の成分を前記流動層コーティング装置内で形成して電極膜混合物を形成する工程とを備える、方法。
【0021】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、ポリマー分散物を供給する工程は、水とポリテトラフルオロエチレンとを含む分散物を供給することを含む。
【0022】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分を供給する工程は、乾燥粒子を供給することを含む。
【0023】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分を供給する工程は、電極膜混合物の活性電極成分を供給することを含む。
【0024】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分を供給する工程は、炭素を供給することを含む。
【0025】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、炭素を供給することは、黒鉛を供給することを含む。
【0026】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分を供給する工程は、リチウム金属酸化物を供給することを含む。
【0027】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、分散物の液体を蒸発させる工程は、分散物を流動層コーティング装置のスプレーノズルに通すことを含む。
【0028】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、方法は、流動層コーティング装置内で第2の成分を乾燥ポリマーで覆う工程をさらに備える。
【0029】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、第2の成分を供給する工程は、ポリマー分散物を供給する前に行われる。
【0030】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、電極膜を形成する方法が提供される。この方法は、電極膜混合物を圧延して電極膜を形成する工程を備える。
【0031】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、電極膜混合物を圧延する工程は、ポリマーを繊維化することを含む。
【0032】
第2の態様に係るいくつかの実施形態において、電極膜は、自立性電極である。
【0033】
本発明と従来技術に対して達成された利点とを要約するために、特定の目的および利点が本明細書に記載されている。これらの目的または利点のうち、必ずしもすべてが特定の実施形態に従って達成されなければならないわけではないということは、当然に理解されるべきである。したがって、例えば、一つの利点または一群の利点が達成されるか最適化されるかして、その他の目的または利点が必ずしも達成されないようなやり方で、本発明を具現化または実施してもよいということを、当業者であれば理解するであろう。
【0034】
これらの実施形態はすべて、本明細書に開示された本発明の範囲内に含まれるものとして意図されている。これら実施形態およびその他の実施形態は、添付図面を参照した後段の詳述によって当業者には容易に明らかとなるであろう。本発明は、開示された実施形態のうち、特定のいずれのものにも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、特定の実施形態に係る図面を参照して説明される。これらの図面は、特定の実施形態を示すよう意図されており、本発明を限定するものではない。
【
図1】
図1は、1つまたは複数の電極膜を含むエネルギー貯蔵デバイスの概略図である。
【
図2】
図2は、電極膜混合物を形成するプロセスの一実施形態に係るプロセスフローチャートである。
【
図3】
図3は、電極膜混合物を製造する装置の一実施形態に係る概略図である。
【
図4】
図4は、電極膜混合物を製造する装置の一実施形態を示す図である。
【
図5】
図5は、流動層装置の一実施形態に係る断面図である。
【
図6】
図6は、回転子を備える流動層装置の一実施形態に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
特定の実施形態および例を以下に記載するが、当業者であれば、本発明が、具体的に開示された実施形態および/または使用法ならびに明らかな改良品およびその等価物に限定されないということを理解するであろう。したがって、本明細書に開示された本発明の範囲は、以下に記載する特定の実施形態のいずれにも限定されないということが意図されている。
【0037】
エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物を形成する装置および同プロセスを本明細書において提供する。装置またはプロセスは、電極膜混合物の第1の成分を提供してもよい。この第1の成分は、ポリマー分散物を含んでいてもよい。このポリマー分散物は、液体およびポリマーを含んでいてもよい。装置またはプロセスは、電極膜混合物の第2の成分をさらに提供してもよい。この第2の成分は、活物質を含んでいてもよい。装置またはプロセスは、ポリマー分散物を受け取るように構成された第1の入口と電極膜混合物の第2の成分を受け取るように構成された第2の入口とに流体連通する流動層をさらに提供してもよい。
【0038】
本明細書に記載の装置またはプロセスは、ウェット電極膜またはドライ電極膜を形成する従来の装置またはプロセス、またはこれらの膜を形成するために使用される原材料に対して1つまたは複数の利点を提供し得る。例えば、本明細書に記載の1つまたは複数の装置またはプロセスは、より厚い電極膜の形成を容易にすることにより、ウェットコーティングプロセスによって製造された電極膜と比べて、より高い装置エネルギー密度性能を提供し得る。さらなる例として、本明細書に記載の1つまたは複数の装置またはプロセスは、他の電極製造装置またはプロセスよりも製造コストを低減し得る。
【0039】
従来の電極膜プロセスの中には、ウェット原材料を用いてスラリーを形成し、その後そのスラリーを集電体に付与し、乾燥させて、電極膜を形成するものがある。これらのウェット電極膜を乾燥する速度は、ウェットコーティングプロセスで使用されるスラリーの1つまたは複数の溶剤の乾燥運動に影響を受け得る。電極膜を乾燥可能な速度は、電極膜の厚さにも影響を受け得る。例えば、より厚い電極膜を乾燥させる速度は、乾燥の不具合を低減または回避するために低下させられることがよくある。したがって、1つまたは複数の溶剤の蒸発運動は、電極膜を所望のとおり乾燥させるために用いられる乾燥工程の時間長に、および/または、これらの電極膜の乾燥に使用される乾燥器の物理的長さに影響を及ぼし得る。乾燥の時間長および乾燥器の長さがこれらの電極の製造コストに寄与し得る。より高い装置エネルギー密度を得るためにより厚い電極が望まれている一方、ある程度の厚さを超える電極膜を製造するコストは極めて高額となり得る。例えば、ウェット被覆電極膜の乾燥に用いられる機器のコストは、乾燥オーブンが長くなると共に、相応以上、例えば略指数関数的に増加し得る。したがって、ウェットコーティングプロセスを用いて製造された電極膜の厚さは、スラリーで使用される1つまたは複数の溶剤の乾燥運動によって、つまり、満足のいく結果を得るために必要な乾燥リソースによって制限され得る。本明細書において提供するのは、乾燥機器または別個の乾燥工程を使用しない、および/または電極膜を乾燥させる工程のない、リチウムイオン系エネルギー貯蔵デバイス用電極膜を製造する装置および方法である。
【0040】
従来のドライ電極膜プロセスは、乾燥した原材料を用いるため、上述のような、ウェット電極膜プロセスで求められる乾燥器の必要性が低減またはなくなる。こうしたドライ電極膜製造プロセスでは、ジェットミル等の高剪断機器やプロセスを用いて、寸法の減少および/またはバインダー材料の繊維化のための十分な剪断力が提供される。こうしたプロセスは、繊維化可能なバインダーのみを使用することに限定され得る。または、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の単一かつ特定のバインダーの使用のみにさらに限定され得る。例えば、PTFE等のバインダー材料と他の電極膜成分とを含む混合物は、ジェットミル工程により高い剪断力がもたらされてバインダー材料の凝集粒子が微細に分割された粒子へと分離され得る、および/またはバインダー材料が繊維化され得る。結果、このバインダー材料が残りの電極膜成分を覆い得る。得られた処理済乾燥粉末は、ロールミルを用いて熱および圧力により圧縮されることにより、膜のその他の成分に、例えば繊維化マトリックス状にPTFEが密着および付着した膜が形成される。膜厚は、ロールミルのロールギャップ、圧縮プロセス中に印加される圧力、および/または膜の圧縮回数によって異なり得る。乾燥製造プロセスは、電極膜が自立性電極膜となるような繊維化マトリックスをもたらし得る。本明細書に記載のとおり、「自立性」電極膜とは、電極膜が自立型の膜であり得るように膜を支持するとともにその形状を維持するのに十分なバインダーマトリックス構造を含む電極膜のことである。エネルギー貯蔵デバイスに採用される場合の自立性電極膜は、このようなバインダーマトリックス構造を取り入れたものである。一般に、および採用する方法によっては、このような自立性電極膜は、外部支持要素が無くてもエネルギー貯蔵デバイス製造プロセスで使用され得る程度に丈夫である。例えば、自立性電極膜は、追加の支持要素無しでも取り扱ったり巻いたりすることができる。
【0041】
しかし、典型的なドライ電極製造で使用されるこのような高剪断プロセスは、電極膜混合物の1つまたは複数の他の成分を損傷するおそれがある。この損傷により、これらの成分から形成された電極を有する装置の性能が低下し得る。例えば、高い剪断力を発揮してバインダー材料の凝集粒子を分離および/またはバインダー材料を繊維化するジェットミルプロセスを用いることにより、電極膜混合物の1つまたは複数の他の成分の面特性を意図せず劣化させ得る。高剪断プロセスで加わる力は、1つまたは複数の活物質の形態を変化させ得る、および/または活物質の面損傷を生じさせ得る。例えば、活物質の粒子は、こうした過程の間に壊れたり、溶けたり、剥がれたり、化学的に変化したりし得る。
【0042】
エネルギー貯蔵デバイスの電極に加えられた活物質は、被覆面および/または処理面を有し得る。例えば、炭素材料、特に黒鉛材料は、非晶質炭素で覆われていてもよい。代わりに、または加えて、黒鉛材料は、表面処理されることにより、固体電解質界面相の形成中の第1サイクルの非効率性を低減し、または電池のサイクル寿命を改善し得る。例えば、電極膜混合物内の炭素の1つまたは複数の面特性は、黒鉛粒子の非晶質炭素面コーティングが無い場合に劣化するおそれがある。こうした面特性の劣化は、エネルギー貯蔵デバイスの1つまたは複数の電気的特性に悪影響を及ぼし得る。
【0043】
理論によって限定されることを望むわけではないが、活物質面の組成は、エネルギー貯蔵デバイス内の(例えば、電解質およびその中の不純物の)劣化過程に影響を及ぼすとともに、固体-電解質界面相(SEI)層の形成に影響を及ぼすと考えられている。表面処理された活物質は、非処理面を有する活物質に比べて、エネルギー貯蔵デバイスの電極性能を高め得る。性能が高まる原因は、例えば、亀裂の形成および/またはクラッキング、集電体からの活物質の分離、電解質の分解、および/またはガスの発生が減少するからであると考えられる。したがって、本明細書に記載の1つまたは複数のプロセスによって作られたドライ電極膜材料を用いて製造したドライ電極膜は、例えば、電極膜の1つまたは複数の成分がより完全であることによって、改善された電気的特性を示し得る。
【0044】
本明細書に開示するのは、製造中の表面損傷が低減された活物質を提供する材料および方法である。本明細書に記載するエネルギー貯蔵デバイスの特定の実施形態は、加工後の黒鉛材料の表面損傷を低減し得る。特に、こうした活物質を含む自立性電極膜が提供される。本明細書に記載の1つまたは複数のプロセスでは、電極膜成分が高い剪断力に晒されることを回避することで、成分の無欠性を容易に保護し得る。いくつかの実施形態では、ジェットミルやその他の高剪断装置、および、例えばエアコンプレッサーなどの関連機器および/または関連ミキサーの使用を控えるか、または使用しない場合に、製造コストを低減し得る。
【0045】
さらに、高剪断プロセスを含んだ典型的なドライ電極製造プロセスを用いて製造された電極膜は、例えばPTFE等の、高い剪断力で繊維化可能なバインダー材料に限定され得る。したがって、典型的なドライ電極製造プロセスでは、バインダーの選択が制限される可能性があり、ひいてはエネルギー貯蔵デバイスで使用される材料が制限される可能性がある。一例として、PTFEバインダーを使用することによって、性能低下や、電池寿命の短縮や、特定種類のエネルギー貯蔵デバイスで使用される材料との不適合につながり得るし、例えば、特定の電極膜の1つまたは複数の他の成分との不適合にもつながり得る。例えば、PTFEは、リチウムイオンとの電位反応のせいで、特定の電極膜用途には不向きのバインダーであり得る。本明細書に記載の1つまたは複数のプロセスは、PTFE以外のバインダー材料に適用可能である。それにより、リチウムイオン系エネルギー貯蔵デバイス用電極を製造するうえでリチウムとより相性のいいバインダー材料を用いることが容易となる。したがって、本明細書では、PTFEの代替として使用されるバインダー、またはPTFEとの組み合わせにより使用されるバインダーに適合したドライ電極プロセスを提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物、およびこれらの電極膜混合物を調整するためのプロセスおよび装置を提供する。電極膜混合物は、第1の成分および第2の成分を含んでいてもよい。第1の成分は、ポリマー分散物を含んでいてもよい。第2の成分は、活物質を含んでもいてもよい。いくつかの実施形態では、電極膜混合物は、ポリマーバインダーで覆われた電極膜成分の粒子を含む。この電極膜成分は、ポリマーとは異なる材料である。例えば、ポリマーは、PTFE等のポリマーバインダーであってもよい。いくつかの実施形態では、電極膜成分は、活性電極材料を含み得る。いくつかの実施形態では、電極膜成分は、黒鉛、活性炭、軟質炭素、および/または硬質炭素等の炭素を含み得る。電極膜成分は、金属酸化物との炭素複合物を含み得る。いくつかの実施形態では、電極膜成分は、リチウム金属酸化物等のインターカレーション可能な金属酸化物を含み得る。電極膜成分は、非晶質炭素を含み得る。電極膜成分は、黒鉛状炭素および非晶質炭素等の2つ以上の炭素の複合物を含み得る。電極膜混合物は、PTFEで覆われた複数の黒鉛粒子を含み得る。ここで、「覆われた」という表現には、ポリマーバインダーの実質的に連続した膜が各電極膜成分(例えば、黒鉛等の活物質)の粒子を囲み覆うことが含まれ得る。このことは、例えば、誘起双極子相互作用および/またはロンドン力によって行われる。誘起双極子相互作用および/またはロンドン力によって、ポリマーは複数の粒子を形成し、これら粒子は、電極膜成分(例えば、黒鉛等の活物質)の粒子と合体しそれらを包囲する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の電極膜混合物を製造する装置は、第1の供給源と、第2の供給源と、流動層コーティング装置とを備える。第1の供給源は、例えば、ポリマーを含む分散物を含む電極膜混合物の第1の成分を供給するためのものである。第2の供給源は、電極膜混合物の第2の成分を含む。流動層コーティング装置は、分散物および電極膜混合物の第2の成分を受け取るように構成され得たものであれば、ワースター型加速器等の、当技術分野で知られているもののうちのいずれであってもよい。さらなる実施形態では、流動層コーティング装置は、円錐形の回転子処理装置を備えていてもよい。流動層コーティング装置は、ポリマー分散物を受け取る第1の入口と電極膜混合物の第2の成分を受け取る第2の入口とを備えていてもよい。さらなる実施形態では、電極膜混合物の第2の成分は、バッチ式で付与されてもよい。さらなる実施形態では、ポリマー分散物および電極膜混合物の第2の成分は、連続するフロー工程で付与されてもよい。本明細書において、いくつかの実施形態は、ワースター型加速器の範囲内で説明されているが、他の種類の流動層コーティング装置であっても、本発明の範囲内で実施可能であることが理解されるであろう。
【0048】
本明細書に記載するとおり、「分散物」は、「ポリマー分散物」も含め、液相で分散させた、固体または半固体の粒子を含む組成物である。固体または半固体の粒子は、本明細書に記載のポリマーであってもよい。本明細書に記載の分散物は、上記固体または半固体の溶液であってもよい。
【0049】
流動層コーティング装置は、1つまたは複数のスプレーノズルまたはスプレーガン、処理室、回転円板または回転子、定置型容器または固定子、および通風ダクトまたは通風口を例とする、一般的な部品を備え得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の電極膜混合物を調整するプロセスは、ポリマーを含む分散物を第1の供給源から流動層コーティング装置の第1の入口に供給することを含む。このプロセスは、流動層装置内に電極膜混合物の第2の成分を供給することを含み得る。例えば、電極膜混合物の第2の成分は、第2の供給源から流動層コーティング装置の第2の入口に供給され得る。いくつかの実施形態では、電極膜混合物の第2の成分は、連続した量の加熱気体または加熱空気で分散および流動化されることにより、流動層を形成し得る。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物の液体は、加熱空気により流動層コーティング装置内で蒸発することにより、乾燥ポリマーをもたらし得る。乾燥ポリマーおよび流動層は、電極膜混合物の第2の成分が乾燥ポリマーに覆われるように、流動層コーティング装置内で同時に供給され得る。例えば、PTFEを含む分散物は、流動層コーティング装置の第1の入口内へ供給され得る。また、黒鉛の乾燥粒子は、黒鉛粒子を含む流動層が形成されるように、流動層コーティング装置の第2の入口内へ供給され得る。ポリマー分散物の液体部分を流動層コーティング装置内で蒸発させることにより、乾燥PTFEが、膜として、および/または黒鉛面に付着する小さな粒子として、流動層コーティング装置内の黒鉛の乾燥粒子を覆うようにしてもよい。電極膜混合物の第2の成分は、ポリマー分散物を供給する工程前に流動層コーティング装置内に存在し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、バインダーは、PTFEではない。さらなる実施形態では、ポリマー分散物は、PTFEを含まない。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の電極膜混合物は、電極膜混合物の1つまたは複数の他の成分と混合された後に圧延されることにより、電極膜を形成し得る。上記他の成分は、例えば、電極膜混合物の第3の成分であり得る。電極膜混合物の第3の成分は、本明細書に記載のコーティングプロセス後に電極膜混合物と混合され得る。例えば、電極膜混合物の第3の成分は、電極膜混合物の第1の成分および第2の成分を含む電極膜混合物に添加され得る。代わりに、または加えて、電極膜混合物の第3の成分は、流動層装置内で混ぜ合わされる前に、第1の成分および/または第2の成分と混合され得る。非制限的な例として、電極膜混合物の第3の成分は、ポリマー分散物の液体内で分散され得る。
【0053】
電極膜混合物の第3の成分は、追加のバインダー材料を含み得る。この追加のバインダー材料は、ポリマー分散物に含まれるバインダー材料と同じであってもよいし異なっていてもよい。追加のバインダー材料は、本明細書に提供されるもののうちのいずれであってもよい。追加のバインダー材料は、例えば、PTFEであってもよいし、PTFEを含んでいてもよい。代わりに、または加えて、電極膜混合物の第3の成分は、例えば、追加の活物質を含み得る。この活物質は、本明細書に記載のもののうちいずれでもあり得る。例えば、炭素材料または金属酸化物であってもよい。代わりに、または加えて、電極膜混合物の第3の成分は、例えば、導電性の電極膜材料を含み得る。
【0054】
電極は、エネルギー貯蔵デバイス内で使用するためのアノードまたはカソードを形成するために使用され得る。例えば、電極膜は、積層プロセス等によってアノードまたはカソードの集電体に接続されていてもよい。本明細書に記載の電極膜は、バッテリー、コンデンサ、コンデンサとバッテリーの混成物、燃料電池、およびこれらの組み合わせ等のエネルギー貯蔵デバイスのアノードおよび/またはカソードを形成するために使用され得る。エネルギー貯蔵デバイスは、リチウムと動作してもよいし、リチウム無しで動作してもよい。いくつかの実施形態では、電極膜は、リチウムイオン電池等のバッテリー、または他の金属イオンバッテリーを製造するために使用され得る。いくつかの実施形態では、電極膜は、電気二重層コンデンサ(EDLC)等のウルトラキャパシターを製造するために使用され得る。いくつかの実施形態では、電極膜は、リチウムイオンコンデンサを製造するために使用され得る。電極膜は、本明細書に記載するような自立性電極膜であってもよい。
【0055】
図1は、エネルギー貯蔵デバイス100の一例に係る概略側断面図である。エネルギー貯蔵デバイス100は、リチウムイオンコンデンサ、リチウムイオン電池、または電気二重層コンデンサ等のエネルギー貯蔵デバイスのうち、いくつでもあり得る。当然、その他のエネルギー貯蔵デバイスは本発明の範囲内にあり、装置100は、その他の種類のコンデンサ、バッテリー、コンデンサおよびバッテリーの混成物、または燃料電池であってもよい。エネルギー貯蔵デバイス100は、第1の電極102と、第2の電極104と、第1の電極102と第2の電極104との間に位置するセパレータ106と、を有し得る。例えば、第1の電極102および第2の電極104は、セパレータ106の対向する面にそれぞれ隣接して配置され得る。第1の電極102がカソードを含み、第2の電極104がアノードを含み得るが、その逆であってもよい。エネルギー貯蔵デバイス100は、電解質を含むことで、エネルギー貯蔵デバイス100の電極102と電極104との間のイオンの移動を容易にすることができる。例えば、電解質は、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106と接し得る。電解質、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵デバイスの筐体120内に収容され得る。例えば、エネルギー貯蔵デバイスの筐体120が、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106の挿入、および、エネルギー貯蔵デバイス100への電解質の充填に続いて封止されることにより、第1の電極102、第2の電極104、セパレータ106、および電解質は、筐体外部の環境から物理的に封止され得る。
【0056】
セパレータ106は、セパレータ106の対向する側に隣接する2つの電極(例えば第1の電極102および第2の電極104)を、この隣接する2つの電極間のイオン移動を許しつつ電気的に絶縁するように構成され得る。セパレータ106は、種々の多孔質電気的絶縁材料または不織布電気的絶縁材料を含み得る。いくつかの実施形態では、セパレータ106は、ポリマー材料を含んでいてもよい。セパレータ106は、ポリマー材料の複合物を含み得る。セパレータ106は、1つまたは複数のポリマー材料とセラミックおよび/または金属酸化物との複合物を含み得る。セラミックまたは金属酸化物は、粉末であり得る。例えば、セパレータ106は、紙等のセルロース材料を含み得る。セパレータ106は、多孔質または不織布ポリエチレン(PE)材料を含み得る。セパレータ106は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン材料等のポリテトラフルオロエチレン材料を含み得る。セパレータ106は、多孔質PP材料または不織布PP材料等のポリプロピレン(PP)材料を含み得る。セパレータ106は、例えば、多孔質PP材料もしくは不織布PP材料上に、またはポリマー材料の複合物上に、ポリエチレン被覆を含み得る。
【0057】
図1に示すように、第1の電極102および第2の電極104は、第1の集電体108および第2の集電体110をそれぞれ含み得る。第1の集電体108および第2の集電体110は、対応する電極および外部回路(図示せず)間の電気的接続を容易にし得る。第1の集電体108および第2の集電体110は、1つまたは複数の導電性材料を含み得る。第1の集電体108および第2の集電体110は、種々の形状および/または寸法を有し得る。第1の集電体108および第2の集電体110は、対応する電極および外部回路間の電荷の移動を容易にするように構成し得る。例えば、第1の集電体108は、第1の接続部126を介して、電気的陽極の端子を例とする第1のエネルギー貯蔵デバイス端子122に電気的に接続され得る。第2の集電体110は、第2の接続部128を介して、電気的陰極の端子を例とする第2のエネルギー貯蔵デバイス端子124に電気的に接続され得る。第1のエネルギー貯蔵デバイス端子122および第2のエネルギー貯蔵デバイス端子124は、外部回路の各端子に電気的に接続されることにより、エネルギー貯蔵デバイス100を外部回路に接続し得る。
【0058】
集電体には、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、これらの合金、および/もしくは他の金属材料を含む材料を例とする金属材料、または、装置の電極電位に不活性で留まる黒鉛を例とする非金属材料が含まれ得る。第1の集電体108および/または第2の集電体110は、フォイルを含み得る。第1の集電体108および第2の集電体110は、矩形または実質的に矩形の形状を有し得る。対応する電極と外部電気回路との間に所望の電荷移動をもたらすように寸法決めされ得る。エネルギー貯蔵デバイス100は、多数の異なる構成のうちのいずれをも有することが可能であり、それによって、集電体108および集電体110をそれぞれ介して、電極102および電極104と外部電気回路との間の上述の電気通信を実現できる。例えば、上述の電荷移動は、集電体板および/または別のエネルギー貯蔵デバイス部品を介して可能となる。
【0059】
第1の電極102は、第1の集電体108の第1の面(例えば、第1の集電体108の上面)上に第1の電極膜112(例えば、上側電極膜)を有し得る。第1の電極102は、第1の集電体108の第2の反対面(例えば、第1の集電体108の底面)上に第2の電極膜114(例えば、下側電極膜)を有し得る。同様に、第2の電極104は、第2の集電体110の第1の面(例えば、第2の集電体110の上面)上に第1の電極膜116(例えば、上側電極膜)を有し得る。第2の電極104は、第2の集電体110の第2の反対面(例えば、第2の集電体110の底面上)上に第2の電極膜118を有し得る。例えば、第2の集電体110の第1の面は、第1の集電体108の第2の面と対向し得るため、セパレータ106は、第1の電極102の第2の電極膜114と第2の電極104の第1の電極膜116とに隣接している。
【0060】
電極膜112、114、116および/または118は、種々の好適な形状、寸法、および/または厚さを有し得る。例えば、電極膜は、約30ミクロン(μm)~約2000ミクロンの厚さを有し得る。この厚さは、約100ミクロン~約250ミクロンの範囲と、さらには約30ミクロン~約250ミクロンの範囲とを含む。電極膜112、114、116、および/または118は、それぞれに対して、同一または異なる厚さ、組成、および密度を有し得る。例えば、電極膜112および電極膜114は、電極膜116および電極膜118とは異なる厚さ、組成または密度を有し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵デバイスのアノードおよび/またはカソードの電極膜は、ポリマーバインダー材料を例とするポリマーと、1つまたは複数の他の成分とを含む電極膜混合物を含む。ポリマーは、一般用語であり、本明細書に記載するようなホモポリマー、共重合体、およびポリマー混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、アノードおよび/またはカソードの電極膜は、1つまたは複数の活性電極成分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、活性電極成分は、炭素系である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の活性電極成分は、活性炭等の多孔質炭素材料を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の活性電極成分は、黒鉛、軟質炭素および/または硬質炭素等の、リチウムイオンを可逆的にインターカレーションするように構成された炭素を含む。いくつかの実施形態では、活性電極成分は、リチウム金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、アノードおよび/またはカソードの電極膜は、導電率促進添加物またはイオン伝導率促進添加物等の、1つまたは複数の添加物を含み得る。いくつかの実施形態では、導電率促進添加物は、カーボンブラックであり得る。いくつかの実施形態では、電極膜混合物は、バインダー材料、1つまたは複数の活性電極成分、および/または1つまたは複数の導電率促進添加物を含む。いくつかの実施形態では、バインダー材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、本明細書に記載のバインダー、および/または他の好適な、必要に応じて繊維化可能な材料を例とする種々の好適なポリマー材料のうちの1つまたは複数を、単独でまたは組み合わせて含み得る。いくつかの実施形態では、活性電極成分は、リチウムイオンの豊富な供給源を採用する。これは、アノードを予めリチウム化し、第1サイクルの非効率性を有利に低減またはなくすためである。
【0062】
図2は、電極膜混合物を形成するプロセス200の一実施形態に係るプロセスフローチャートである。工程202において、ポリマー分散物等の電極膜混合物の第1の成分は、「噴霧乾燥機」としても知られ得る流動層被膜システムの第1の入口に供給される。工程202は、装置の噴霧室内に、例えばスプレーノズルを介して、ポリマー分散物を噴霧することを含み得る。ポリマー分散物は、液体と、この液体内で分散させた固体または半固体のポリマー粒子とを含むか、または実質的にこれらから成るか、またはこれらのみから成る。いくつかの実施形態では、この液体は、水を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成り得る。例えば、ポリマー分散物は、水性分散物であり得る。いくつかの実施形態では、この液体は、ポリマー溶液または分散物において一般的であって当業者に既知の1つまたは複数のその他の溶剤を含むか、または実質的にこれらから成るか、またはこれらのみから成り得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、電極膜バインダー材料を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成り得る。電極膜バインダー材料は、エネルギー貯蔵デバイスの動作中、電気化学的に不活性であり続ける材料を含み得る。電極膜バインダー材料は、キャリア流体内で微細粒子として分散されるか、または溶剤内に溶解されるか、または分散および溶解が組み合わされて行われ得る。電極膜バインダー材料は、エネルギー貯蔵活物質と混ぜ合わされると機械的に膜を形成し得る。使用可能なその他の種類のポリマーとして、熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはエラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーは、2つ以上のポリマーの混合物または共重合体であり得る。共重合体は、グラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかのポリマーには、本明細書に提供されているものが含まれる。具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンおよび共重合体、ポリフッ化ビニリデンおよびポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重の共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ならびにこれらの混合物および共重合体が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、PTFEを含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成り得る。例えば、ポリマー分散物は、PTFEを含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る水性分散物であり得る。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物は、PTFE粒子を含む市販の水性分散物である。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物は、懸濁液であり得る。さらなる実施形態では、ポリマー分散物は、溶液であり得る。さらなる実施形態では、ポリマーは、液体に溶解していなくてもよい。
【0063】
工程204において、電極膜混合物の第2の成分は、流動層コーティング装置内の電極膜混合物の第1の成分とは別個に供給される。工程204は、流動層コーティング装置の第2の入口と流動層コーティング装置内とに第2の成分を供給することを含み得る。したがって、電極膜混合物の第1の成分および電極膜混合物の第2の成分は、流動層コーティング装置のコーティング室内に入るまでは互いに分離した状態であり得る。一般に、第1の入口および第2の入口は、それぞれ、第1の供給源および第2の供給源より下流の部品であり、流動層装置のコーティング室との流体連通をもたらす。工程204は、工程202でポリマー分散物を供給する工程とは異なる時期(例えば前)に、または同時に、第2の成分を供給することを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の成分は、工程202のポリマー分散物とは異なる材料である。いくつかの実施形態では、第2の成分は、乾燥粒子状である。第2の成分は、活性電極材料を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成り得る。例えば、第2の成分は、活性電極材料の乾燥粒子を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成り得る。いくつかの実施形態では、第2の成分は、電気二重層コンデンサのカソードまたはアノードの活性電極材料を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る。いくつかの実施形態では、第2の成分は、リチウムイオンコンデンサのカソードまたはアノードの活性電極材料を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る。いくつかの実施形態では、第2の成分は、リチウムイオン電池等の電気化学バッテリーのカソードまたはアノードの活性電極材料を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る。いくつかの実施形態では、第2の成分は、炭素を含むか、実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る。いくつかの実施形態では、炭素は、黒鉛、軟質炭素および/もしくは硬質炭素を含むか、または実質的にこれらから成るか、またはこれらのみから成り得る。いくつかの実施形態では、炭素は、活性炭を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る。いくつかの実施形態では、第2の成分は、リチウム金属酸化物を含むか、または実質的にこれから成るか、またはこれのみから成る。例えば、第2の成分は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム鉄リン酸(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、または充電可能なリチウムイオン電池のカソードとしての使用に好適なその他のリチウム化金属酸化物材料のうち、1つまたは複数を含むか、または実質的にこれらから成るか、またはこれらのみから成り得る。
【0064】
工程206において、ポリマー分散物の液体部分は、流動層コーティング装置のコーティング室内で蒸発され得る。例えば、分散物の液体部分は、気化して乾燥ポリマーを形成し得る。いくつかの実施形態では、流動層コーティング装置は、流動層コーティング装置内にポリマー分散物を分散させるスプレーノズルを備える。噴霧化スプレーノズルまたは超音波スプレーノズル等のスプレーノズルは、ポリマー分散物の微細な液滴を流動層コーティング装置のコーティング室内に注入するように構成され得る。いくつかの実施形態では、加熱した流動化空気で流動層コーティング装置の1つまたは複数の構成要素を直接的または間接的に加熱することにより、ポリマー分散物の液体部分が所望通りに蒸発するように、液滴の露出温度を制御する。流動層コーティング装置の1つまたは複数の構成要素の温度は、コーティング室内の温度を調節するために制御され得る。いくつかの実施形態では、コーティング室の1つまたは複数の側壁を加熱してもよい。いくつかの実施形態では、スプレーノズルを加熱してもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物を、コーティング室への導入前に加熱してもよい。いくつかの実施形態では、活物質等の第2の成分をポリマー分散物の導入前に予熱し得る。こうすることで、ポリマー分散物の液体部分の蒸発率を制御する一助となり得る。液滴は、例えば、加熱されたスプレーノズルおよび/または加熱された流動化空気、またはコーティング室の1つまたは複数の加熱された側壁からの熱などの熱に晒され得る。結果として、ポリマー分散物の液体部分がコーティング室内で蒸発して乾燥ポリマーがもたらされる。したがって、蒸発工程206は、ポリマー分散物がコーティング室内に導入される(例えば、噴霧される)前に、その期間に、および/またはその後に、ポリマー分散物を加熱することを含み得る。ポリマー分散物を蒸発させるその他の方法(つまり、別の言い方をすると、プロセスに熱を加えるその他の方法)には、例えば、流動層コーティング装置のコーティング室の壁を直接的または間接的に加熱することが含まれる。例えば、蒸発させるために、加熱された気体が供給され得る。この加熱された気体は、後述するように、工程208で電極膜の第2の成分の粉末層をも流動化させる。ポリマー分散物それ自体を、および/またはスプレーノズルを、加熱し得る。マイクロ波発生装置、赤外ランプ、オーブン、またはその他の熱供給源を使用して、コーティング室への導入前に、ポリマー分散物および/またはエネルギー貯蔵デバイスの電極の第2の成分を予熱してもよい。これらの加熱供給源をすべて使用することで、ポリマー分散物の蒸発を容易にし、および/または、コーティングプロセスの開始前に全材料の温度を安定させることができる。その結果、被覆材料のスループットを改善および向上できる。
【0065】
工程208において、電極膜混合物の第2の成分を含むか、またはこれのみから成るか、または実質的にこれから成る流動層が、流動層コーティング装置内で形成され得る。いくつかの実施形態では、電極膜混合物の第2の成分を、流動層コーティング装置内に、乾燥粒子の状態で供給(つまり収容)し得る。流動層の形成工程は、第2の成分の乾燥粒子と圧縮空気等の圧縮気体とを、同時にまたは順次に、流動層コーティング装置のコーティング室内へ導入することを含み得る。例えば、第2の成分は、コーティング室内に収容されて材料の「層」を形成し得る。圧縮気体はその層を通過して「流動層」を形成し得る。
【0066】
蒸発工程206および流動層形成工程208を行ってポリマー分散物および電極膜の第2の成分がコーティング室内での流動すると、ドライ電極混合物が形成される。このドライ電極混合物は、ポリマー分散物の乾燥ポリマーバインダーで覆われた、電極膜の第2の成分の粒子を含む。例えば、第2の成分から流動層を形成する工程とポリマー分散物の液体部分を蒸発させる工程とは、流動層コーティング装置のコーティング室内で同時に行うことができる。その結果、コーティング室内で、第2の成分が乾燥ポリマーに覆われ得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、流動層コーティング装置内で第2の成分を供給する工程は、スクリューフィーダや、空気作用や、手動や、別の装置(第2の入口を介して粒子材料を供給するように構成されたもの)によって第2の成分を供給することを含む。
【0068】
本明細書に記載するとおり、いくつかの実施形態では、ポリマー分散物は、本明細書に記載するようなポリマー粒子を含む水性分散物である。さらなる実施形態では、ポリマーはPTFEである。ポリマー分散物は、ポリマー分散物の液滴が、流動層コーティング装置のコーティング室内で分散されるように流動層コーティング装置の第1の入口に供給され得る。本明細書に記載するとおり、いくつかの実施形態では、第2の成分は、黒鉛を含む。いくつかの実施形態では、黒鉛の乾燥粒子を含む乾燥粉末は、流動層コーティング装置の第2の入口に供給され得る。黒鉛を含む流動層は、流動層コーティング装置のコーティング室内で形成され得る。流動層コーティング装置の1つまたは複数の構成要素を加熱して、所望の乾燥度を有した黒鉛粒子がコーティング室内に供給されるように、また、ポリマー分散物の液体部分が所望の程度でコーティング室内で蒸発するようにしてもよい。例えば、水および/または他のポリマー分散物の液体成分が蒸発することで、流動層コーティング装置のコーティング室内で乾燥PTFEがもたらされる。黒鉛を含むエアロゾルと乾燥PTFEとは、流動層コーティング装置のコーティング室内に同時に存在し得る。これにより、黒鉛粒子がコーティング室内で乾燥PTFEに覆われ得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2の成分の乾燥粒子は、最小寸法よりも大きい。いくつかの実施形態では、乾燥粒子は、約3ミクロン(μm)以上の寸法(例えば、直径、長さ、または最長寸法等)を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の成分のおおよその粒子寸法は、0.01ミクロン、0.1ミクロン、0.2ミクロン、0.3ミクロン、0.5ミクロン、0.7ミクロン、1ミクロン、1.5ミクロン、2ミクロン、2.5ミクロン、3ミクロン、またはこれらの間の数値範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流動層コーティング装置内に存在するポリマー分散物液滴のポリマー粒子は、最大寸法よりも大きくはなり得ない。いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、噴霧化された粒子である。PTFE分散物の場合、粒子寸法は、典型的には1ミクロン未満であってもよく、典型的には0.1~0.2ミクロンであってもよい。ポリマーのその他の溶液または分散物の場合、粒子寸法は、より小さくなり得る。例えば、0.01~0.1ミクロン、またはさらに小さい可能性がある。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物のおおよその粒子寸法は、0.01ミクロン、0.03ミクロン、0.05ミクロン、0.1ミクロン、0.2ミクロン、0.3ミクロン、0.5ミクロン、0.7ミクロン、1ミクロン、またはこれらの間の数値範囲であり得る。ノズルは、粒子寸法を調節するように構成し得る。ポリマー粒子寸法に影響を及ぼし得る他の要因には、溶液または分散物の濃度が含まれる。分散物の場合には、分散物それ自体の粒子寸法も含まれる。
【0070】
図3は、電極膜混合物を製造する装置300の一例を示す概略図である。いくつかの実施形態では、
図2を参照して説明したプロセス200は、装置300を用いて実行することができる。
図3を参照すると、装置300は、ポリマー分散物の供給源302と、電極膜混合物の第2の成分の供給源304と、流動層コーティング装置306(コーティング室310を含む)と、集電容器308とを備え得る。ポリマー分散物の供給源302は、本明細書に記載するようなポリマーと液体とを含むポリマー分散物を含み得る。ポリマー分散物302は、必要に応じて、追加の混合物成分を含んでいてもよい。この追加の混合物成分は、例えば、本明細書において提供されているような電極膜混合物の第3の成分であり得る。電極膜混合物の第2の成分の供給源304は、本明細書に記載するような電極膜混合物の第2の成分を含み得る。ポリマー分散物は、ポリマー分散物供給源302から流動層コーティング装置306の第1の入口312に供給され得る。電極膜混合物の第2の成分は、開放された集電容器308にバッチ式で充填してもよいし、スクリューフィーダ等の粉末送達手段を用いて、第2の入口314等の開口を介して実質的に連続的に供給してもよい。ポリマー分散物は、ノズル316を介してコーティング室310内に供給され得る。ノズル316は、第1の入口312から分離してもよいし、または、一部品として含まれていてもよい。ノズル316は、図示の配向に加えて種々の配向でコーティング室310内に液体ポリマー分散物を導入するように構成され得る。例えば、ノズル316は、上下方向接線スプレーノズル、または他の配向であり得る。ノズル316は、上面噴霧、底面噴霧、接線、または他の噴霧配向の処理を行う。行うプロセスは、噴霧化プロセスであり得る。
【0071】
スクリューフィーダまたは他の部品を使用して、電極膜混合物の第2の成分を、第2の入口314からコーティング室310内にバッチ式で導入可能である。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物は、流動層コーティング装置306のコーティング室内で液滴として分散され得る。これにより、ポリマー分散物の液体部分が蒸発して、乾燥ポリマーまたはその粒子をもたらし得る。乾燥ポリマーが第2の成分の粒子を覆い得るように、電極膜混合物の第2の成分を含む流動層を、流動層コーティング装置306のコーティング室内で同時に形成可能である。いくつかの実施形態では、乾燥ポリマーで覆われた電極膜混合物の第2の成分の粒子が出口318を通って流動層コーティング装置306から出て集電容器308内に集められ得る。例えばコーティング室310内を流れる空気によって渦が形成され得る。この渦により、第2の電極成分がコーティング室内に引き込まれて、コーティングプロセスが可能となる。
【0072】
図4は、電極膜混合物を製造する装置400の実施形態を示す図である。装置400は、
図3を参照して説明した装置300、および/または
図2を参照して説明したプロセスと共に採用され得るいくつかの構成要素の例を示す。装置400は、ワースター型加速器等の流動層コーティング装置を備え得る。装置400は、集電容器402と、入口およびノズルを介して装置内にポリマー分散物を噴霧するためのポリマー分散物の供給源404および空気供給源406と、を備え得る。
【0073】
図5は、流動層装置500の一実施形態に係る断面図である。装置500は、
図4に示す装置400と同様か、またはこれを含み得る。
図5に示すように、ポリマー分散物501は、装置500のコーティング室503内に供給され得る。ポリマー分散物501は、液体およびポリマーを含み得る。このポリマーは、エネルギー貯蔵デバイスの電極膜混合物の第1の成分である。ポリマー分散物501は、例えば、入口504を介して装置500内に供給され得る。入口504は、ポリマー分散物501をコーティング室503内に注入および/または噴霧可能なノズル505を含み得るか、または、このノズル505と流体連通し得る。ノズル505は、微細に分割された(例えば、噴霧化された)ポリマー分散物501を供給し得る。入口504は、上流のポリマー分散物の供給源(図示せず)と流体連通が可能である。ポリマー分散物501は、直接的または間接的に加熱されることにより、装置500内において少なくともポリマー分散物の液体成分を蒸発させて、乾燥したポリマー、または実質的に乾燥したポリマーを形成し得る。
【0074】
電極膜混合物の第2の成分502は、例えば、バッチ式充填プロセスによりコーティング室503内に供給され得る。成分502は、例えば、入口(図示せず)を介して装置500内に供給され得る。第2の成分は、支持体506上に供給され得る。これにより材料の層が形成される。気体508は、加熱された気体であり得る。この気体508が材料の層を通過することにより、成分502の流動層が形成され得る。例えば、支持体506は、1つまたは複数の穴を含み得る。この穴により、空気等の気体508の流れが支持体506を通過して第2の成分502の層内に達し、結果として流動層が形成され得る。第2の成分502の流動層と、乾燥ポリマー等のポリマー分散物501の1つまたは複数の部分とは、コーティング室503内で流体連通が可能であり、結果として乾燥ポリマー等のポリマー分散物の一部が成分502を覆う。ポリマー分散物がノズル505を介して噴霧されるタイミングは、装置500内で計測された温度(例えば、混合物の第1の成分の温度、混合物の第2の成分の温度、壁の温度、および/または装置500の他の部品の温度)に基づいていてもよい。
【0075】
コーティング室503および支持体506は、その間に間隙507を生じさせるように構成され得る。気体508が支持体506を通過すると、第2の成分502の流動層が形成される。ポリマー分散物501が装置500内に噴霧されると、間隙507があることによって、装置500内の電極膜混合物成分のうち1つまたは複数が、図示された矢印方向に移動することが可能となり、結果として回転渦が形成される。このような流れが起きると、ポリマー分散物501中のポリマーによって第2の成分502上に形成された被膜の均一性が高められる。間隙507の高さおよび/またはコーティング室503の壁の高さを調節することによって、流量等の渦特性を制御し得る。コーティング室503、間隙507、および/またはノズル505の大きさおよび形状を調節することによっても、渦特性を制御し得る。こうした制御は被膜の均一性に影響を及ぼし得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、スプレーノズルは、流動層コーティング装置の下側末端部分に、またはこの下側末端部分に近接して(例えば上向きに)配置され得る。ポリマー分散物の液滴と、電極膜混合物の第2の成分を含む流動層とは、スプレーノズルの上方に配置された流動層コーティング装置のコーティング室内で形成され得る。流動層コーティング装置の1つまたは複数の構成要素は加熱され得る。この加熱により、ポリマー分散物の液体部分が所望通りに蒸発することが容易となり、および/または、電極膜混合物の第2の成分の所望の乾燥度が維持される。これらの部品には、流動層コーティング装置のスプレーノズルおよび/または1つまたは複数の側壁が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー分散物は、水と、ラテックスとしての水溶性ポリマーまたは水分散ポリマーとを含み得る。したがって、流動層コーティング装置内で水が蒸発することで乾燥ポリマーがもたらされる。いくつかの実施形態では、電極膜混合物の第2の成分は、黒鉛の乾燥粒子を含む。黒鉛を含む流動層を、流動層コーティング装置内で加熱気体または加熱空気を用いることにより形成する。噴霧化されたポリマー分散物の一部は渦巻く粒子上に付着し得るが、液体は、粒子が合体し得る前に気化し得る。乾燥PTFE等の乾燥ポリマーは、流動層コーティング装置のコーティング室内で、電極膜混合物の第2の成分の乾燥粒子(例えば黒鉛の乾燥粒子等)を覆い得る。
【0077】
図6は、流動層装置600の一実施形態に係る断面図である。
図6に示すように、ポリマー分散物は、装置600の定置型コーティング室612内に供給され得る。ポリマー分散物は、本明細書に記載されているとおりであってもよい。ポリマー分散物は、例えば、コーティング室612内にポリマー分散物を注入および/または噴霧可能なノズル608を介して装置600内に供給され得る。ノズル608は、微細に分割された(例えば、噴霧化された)ポリマー分散物を供給し得る。ノズル608は、上流のポリマー分散物の供給源(図示せず)と流体連通が可能である。ポリマー分散物は、直接的または間接的に加熱されることにより、装置内において少なくともポリマー分散物の液体成分を蒸発させて、乾燥したポリマー、または実質的に乾燥したポリマーを形成し得る。
【0078】
電極膜混合物の第2の成分は、コーティング室612内に供給され得る。例示した装置600には、回転子602が含まれている。回転子602は、例えば、平板回転子、湾曲回転子、または円錐形回転子であってもよい。回転子602は、平滑であってもよいし、何らかの質感を有していてもよい。電極膜混合物の第2の成分は、バッチ式で投入可能であり、および/またはノズル604を介して連続的に投入可能である。第2の成分は、コーティング室612内で流動化させて循環させ得る。気体(例えば加熱された気体)は、材料の層を通過して流れ、その結果、電極膜混合物の第2の成分の流動層が形成され得る。例えば、気体の流れは、回転子と同軸であり得る。気体は、乾燥した空気であり得る。気体は、回転子602と接してその周囲を通過し得る。電極膜混合物の第2の成分の流動層と、乾燥ポリマー等のポリマー分散物の1つまたは複数の部分とは、コーティング室612内で流体連通が可能であり、結果として乾燥ポリマー等のポリマー分散物の一部が電極膜混合物の第2の成分を覆う。ポリマー分散物および/または電極膜混合物の第2の成分がコーティング室612に投入されるタイミングは、装置600内で計測された温度(例えば、混合物の第1の成分の温度、混合物の第2の成分の温度、壁の温度、および/または装置600の他の部品の温度)に基づいていてもよい。
【0079】
コーティング室612および回転子602は、その間に間隙606を生じさせるように構成され得る。気体の流れにより、装置600内の電極膜混合物成分のうち1つまたは複数が、例えば、図示された矢印方向に移動することが可能となる。このような流れが起きると、ポリマー分散物中のポリマーによって電極膜混合物の第2の成分上に形成された被膜の均一性が高められる。コーティング室612の壁の寸法および形状と、ノズル604およびノズル608の形態および方向と、回転子602の形状および質感とを調節することにより、流量等の気体の流れ特性を制御可能である。当業者であれば、これらのパラメータを調整することにより所望の被膜特性が得ることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の電極膜混合物は、1つまたは複数の他の電極膜成分と組み合わされた後に圧延されることにより、電極膜を形成し得る。電極膜は、
図1を参照して説明した電極膜のうちの1つまたは複数であり得る。電極膜は、エネルギー貯蔵デバイスに内装され得る。
【0081】
特定の実施形態および実施例に関連付けて本発明を開示したが、当業者であれば、本発明は、具体的に開示した実施形態に加え、本発明に係る別の代替の実施形態および/または利用、それらの明らかな改良品及び等価物に及ぶことが理解されるであろう。さらに、本発明の実施形態のいくつかの変形例を詳細に図示および説明してきたが、本開示に基づけば、本発明の範囲内にある他の変更が当業者には容易に明らかとなるであろう。また、実施形態の具体的特徴および態様の種々の組合せまたは下位組合せを行ってもよく、それらが依然本発明の範囲内に含まれ得ることも考慮されたい。開示された実施形態の種々の特徴および態様が開示発明の種々の方式または実施形態を実現するために互い組み合わせられ、または代替できることを理解すべきである。したがって、上記の特定の実施形態によって、本明細書に開示された本発明の範囲は限定されるべきではない。
【0082】
本明細書の見出しは、もしある場合には、便宜のためにのみ提供されており、本明細書に開示された装置および方法の範囲または意義には必ずしも影響を及ぼさない。