(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】NOx吸着触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230428BHJP
B01J 27/232 20060101ALI20230428BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230428BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/021 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230428BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J27/232 A
B01J35/04 301E
B01J35/04 301Z
B01D53/94 222
F01N3/021
F01N3/10 A
F01N3/08 A
F01N3/28 301P
F01N3/08 B
F01N3/24 E
F01N3/28 301B
F01N3/28 301C
F01N3/28 301G
(21)【出願番号】P 2019553186
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 GB2018050839
(87)【国際公開番号】W WO2018178686
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ラドクリフ, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】リード, スチュアート デーヴィッド
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111555(WO,A1)
【文献】特表2016-503725(JP,A)
【文献】特開2008-253921(JP,A)
【文献】特表2016-504183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/021,3/08,3/10,3/24,3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンNO
xトラップ触媒であって、
i)1つ又は複数の白金族金属、第一のセリア含有材料及び第一の無機酸化物を含む、第一の層、
ii)1つ又は複数の貴金属、第二のセリア含有材料及び第二の無機酸化物を含む、第二の層、
を含み、
第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物は、希土類ドーパントを含み、第二の層が、第一の層に堆積されており、希土類ドーパントが、セリウムを含まず、第一の層が、バリウムを実質的に含まず、第一及び第二の層が、ロジウムを実質的に含まない、リーンNO
xトラップ触媒。
【請求項2】
リーンNO
xトラップ触媒であって、
i)1つ又は複数の白金族金属、第一のセリア含有材料及び第一の無機酸化物を含む、第一の層、
ii)1つ又は複数の貴金属、第二のセリア含有材料及び第二の無機酸化物を含む、第二の層、
を含み、
第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物は、希土類ドーパントを含み、第二の層が、第一の層に堆積されており、希土類ドーパントが、セリウムを含まず、第一の層が、バリウムを実質的に含まず、第一及び第二の層が、ロジウムを実質的に含まず、第一のセリア含有材料の合計ローディングが、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも大きい、リーンNO
xトラップ触媒。
【請求項3】
リーンNO
xトラップ触媒であって、
i)1つ又は複数の白金族金属、第一のセリア含有材料及び第一の無機酸化物を含む、第一の層、
ii)1つ又は複数の貴金属、第二のセリア含有材料及び第二の無機酸化物を含む、第二の層、
を含み、
第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物は、希土類ドーパントを含み、第二の層が、第一の層に堆積されており、希土類ドーパントが、セリウムを含まず、第一の層が、バリウムを実質的に含まず、第一及び第二の層が、ロジウムを実質的に含まず、第一のセリア含有材料の合計ローディングの比が、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも大きく、w/w基準で少なくとも2:1である、リーンNO
xトラップ触媒。
【請求項4】
希土類ドーパントが、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、又はこれらの金属酸化物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項5】
希土類ドーパントが、ランタン、ネオジム、又はこれらの金属酸化物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項6】
希土類ドーパントが、ランタンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項7】
第一の層における1つ又は複数の白金族金属の合計ローディングが、第二の層における1つ又は複数の貴金属の合計ローディングよりも低い、請求項1から6のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項8】
第二の層における1つ又は複数の貴金属の合計ローディングの、第一の層における1つ又は複数の白金族金属の合計ローディングに対する比が、w/w基準で少なくとも2:1である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項9】
第一のセリア含有材料の合計ローディングが、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも大きい、請求項1及び4から8のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項10】
第一のセリア含有材料の合計ローディングの比が、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも大きく、w/w基準で少なくとも2:1である、請求項1及び4から8のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項11】
1つ又は複数の白金族金属が、パラジウム、白
金及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項12】
1つ又は複数の白金族金属が、白金とパラジウムとの混合物、又は白金とパラジウムとの合金である、請求項1から11のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項13】
1つ又は複数の白金族金属が、第一のセリア含有材料に担持されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項14】
第一のセリア含有材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物から成る群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項15】
第一のセリア含有材料が、バルク状セリアを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項16】
第一の無機酸化物が、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又はこれらの複合酸化物から成る群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項17】
第一の無機酸化物が、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項1から16のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項18】
1つ又は複数の貴金属が、パラジウム、白金
、銀、金、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項19】
1つ又は複数の貴金属が、白金とパラジウムとの混合物、又は白金とパラジウムとの合金である、請求項1から18のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項20】
第二の層における白金の、パラジウムに対する比が、w/w基準で2:1~10:1である、請求項19に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項21】
第二の層における白金の、パラジウムに対する比が、w/w基準で5:1である、請求項19又は20に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項22】
1つ又は複数の貴金属が、第二のセリア含有材料に担持されている、請求項1から21のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項23】
第二の無機酸化物が、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又はこれらの複合酸化物から成る群から選択される、請求項1から22のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項24】
第二の無機酸化物が、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項1から23のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項25】
第二の無機酸化物が、アルミナである、請求項1から24のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項26】
第二のセリア含有材料が、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物から成る群から選択される、請求項1から25のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項27】
第二のセリア含有材料が、バルク状セリアを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項28】
軸長Lを有する金属基材又はセラミック基材をさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項29】
基材が、フロースルーモノリス又はフィルターモノリスである、請求項28に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項30】
第一の層が、金属基材又はセラミック基材に直接、担持/堆積されている、請求項28又は29に記載のリーンNO
xトラップ触媒。
【請求項31】
第一の層が、フロースルー基材又はフィルター基材を形成するために、押出成形されている、請求項1から27のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒の製造方法。
【請求項32】
請求項1から30のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒を含む、燃焼排ガスの流れを処理するための排出処理システム。
【請求項33】
選択的触媒還元触媒システム、パティキュレートフィルタ、選択的触媒還元フィルタシステム、受動的NO
x吸着材、三元触媒系、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項3
2に記載の排出処理システム。
【請求項34】
内燃機関からの排ガスを処理する方法であって、排ガスを、請求項1から30のいずれか一項に記載のリーンNO
xトラップ触媒と、又は請求項32
又は33に記載の排出処理システムと接触させることを含む、方法。
【請求項35】
排ガスが、150~300℃の温度である、請求項
34に記載の内燃機関からの排ガスを処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンNOxトラップ触媒、内燃機関からの排ガスを処理する方法、及びリーンNOxトラップ触媒を含む、内燃機関用の排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、政府の法規制の対象である窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素、及び未燃焼炭化水素を含む多種多様な汚染物質を含有する排気ガスを発生させる。国家及び地方での厳しい法律によってますます、上記ディーゼル又はガソリンエンジンから放出され得る汚染物質の量は、低減してきている。排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広範に利用されており、典型的には、排出制御システムがその運転温度(典型的には200℃以上)に到達すると、非常に高い効率を実現する。しかし、これらのシステムは、その動作温度を下回ると(「低温始動」期間)比較的非効率である。
【0003】
排ガスを浄化するために利用される排ガス処理成分の1つが、NOx吸着触媒(又はNOxトラップ)である。NOX吸着触媒は、NOXをリーン排気条件下で吸着し、吸着したNOXをリッチ条件下で放出し、かつ放出されたNOXを還元してN2を生成するデバイスである。NOX吸着触媒は通常、NOX吸蔵のためのNOX吸着剤と酸化/還元触媒を含む。
【0004】
NOx吸着成分は通常、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属、又はこれらの組合せである。これらの金属は、通常、酸化物の形態で見られる。酸化/還元触媒は、典型的に、1つ又は複数の貴金属、好ましくは白金、パラジウム、及び/又はロジウムである。典型的に、白金は酸化機能を実施するために含まれ、ロジウムは還元機能を実施するために含まれる。酸化/還元触媒及びNOx吸着剤は通常、排出システム内で使用するために担体物質(例えば無機酸化物)にローディングされる。
【0005】
NOx吸着触媒は、3つの機能を担っている。第一に、酸化窒素が酸化触媒の存在下で酸素と反応して、NO2が生成される。第二に、無機硝酸塩の形態のNOx吸着剤によって、NO2が吸着される(例えば、BaO又はBaCO3はNOx吸着剤でBa(NO3)2に変換される)。最後に、エンジンがリッチ条件下で作動する場合、吸蔵された無機硝酸塩が分解されてNO又はNO2が生成され、これがその後、還元触媒の存在下で、一酸化炭素、水素、及び/又は炭化水素との反応によって(又は、NHx若しくはNCO中間体を経由して)還元されてN2が生成される。通常、窒素酸化物は、熱の存在下では窒素、二酸化炭素及び水に、排気流内では一酸化炭素と炭化水素に、変換される。
【0006】
PCT国際出願WO2004/076829は、SCR触媒の上流に配置されたNOx吸蔵触媒を含む、排ガス浄化システムを開示している。NOx吸蔵触媒は、少なくとも1つのアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属を含み、これらの金属は、少なくとも1つの白金族金属(Pt、Pd、Rh、又はIr)でコーティング又は活性化されている。特に好ましいNOx吸蔵触媒は、白金でコーティングされた酸化セリウムと、それに加えて、酸化アルミニウムを基とする担体上の酸化触媒としての白金とを含むと、考えられる。EP第1027919号は、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、チタニア及び/又はランタナといった多孔性担体材料と、少なくとも0.1重量%の貴金属(Pt、Pd及び/又はRh)とを含むNOx吸着性材料を開示している。アルミナに担持された白金が例示されている。
【0007】
米国特許第5,656,244号及び米国特許第5,800,793号は、NOx吸蔵/放出触媒と、三元触媒とを組み合わせるシステムを開示している。NOx吸着材は、アルミナ、ムライト、コーディエライト、又は二酸化ケイ素に担持されたクロム、銅、ニッケル、マンガン、モリブデン又はコバルトの酸化物を、その他の金属に加えて含むことが、教示されている。
【0008】
国際出願WO 2009/158453号は、NOxトラップ成分(例えばアルカリ金属元素)を含有する少なくとも1つの層と、セリアを含有するとともにアルカリ金属土類元素を実質的に含有しないもう1つの層とを含む、リーンNOxトラップ触媒を開示している。この構成は、LNTの低温性能、例えば約250℃未満での性能を改善することが意図されている。
【0009】
米国特許第2015/0336085号は、担体上の少なくとも2つの触媒活性コーティングから構成される窒素酸化物吸蔵触媒を開示している。下側のコーティングは、酸化セリウムと、白金及び/又はパラジウムとを含有する。下側のコーティングの上に配置された上側のコーティングは、アルカリ土類金属化合物、混合酸化物、及び白金及びパラジウムを含有する。窒素酸化物吸蔵触媒は、200~500℃でのリーン燃焼エンジン(例えばディーゼルエンジン)からの排ガスにおけるNOx変換に、特に適していると述べられている。
【0010】
従来のNOxトラップ触媒はしばしば、活性化された状態と失活した状態で、活性レベルが著しく異なっていた。これにより、触媒の寿命にわたって、また排ガス組成において短い期間での変化に応答して、触媒性能が一貫しなくなることがあり得る。このことは、エンジン較正にとって難題であり、触媒性能が変化する結果、より悪い排出特性につながり得る。
【0011】
どのような自動車システム及びプロセスでも、排ガス処理システムの更なる改善を、なおも達成することが望ましい。我々は、NOx吸蔵特性及びNOx変換特性が改善されているとともに、CO変換も改善されている、新規のNOx吸着触媒組成物を発見した。意外なことに、これらの改善した触媒特性は、活性状態及び失活状態の双方で観察されることが判明した。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第一の態様では、リーンNOxトラップ触媒が提供され、この触媒は、
i)1つ又は複数の白金族金属、第一のセリア含有材料及び第一の無機酸化物を含む、第一の層、
ii)1つ又は複数の貴金属、第二のセリア含有材料及び第二の無機酸化物を含む、第二の層、
を含み、
ここで第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物は、希土類ドーパントを含む。
【0013】
本発明の第二の態様では、先に既定したリーンNOxトラップ触媒を含む、燃焼排ガスの流れを処理するための排出処理システムが提供される。
【0014】
本発明の第三の態様では、排ガスを、先に既定したリーンNOxトラップ触媒と接触させることを含む、内燃機関からの排ガスを処理する方法が提供される。
【0015】
定義
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野ではよく知られており、通常は触媒の製造中に基材に塗布される接着性コーティングを指す。
【0016】
本明細書で用いられる頭字語「PGM」とは、「白金族金属」をいう。「白金族金属」という用語は、一般的に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から成る群から選択される金属、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、及び白金から成る群から選択される金属をいう。一般に、「PGM」という用語は、好ましくは、ロジウム、白金、及びパラジウムからなる群より選択された金属のことをいう。
【0017】
本明細書で「貴金属」という用語は一般的に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金及び金から成る群から選択される金属をいう。一般に、「PGM」という用語は好ましくは、ロジウム、白金、パラジウム及び金からなる群から選択された金属をいう。
【0018】
本明細書で用いられる「混合酸化物」という用語は通常、当該技術分野で従来から知られているような、単一相の酸化物の混合物をいう。本明細書で用いられる「複合酸化物」という用語は、通常、当技術分野で従来から知られているような、二相以上の相を有する酸化物の組成物のことをいう。
【0019】
本明細書で使用する「希土類ドーパント」という用語は、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びイットリウム(Y)の塩、酸化物、又はその他のあらゆる化合物(金属自体を含む)をいう。疑義が生じるのを避けるため、本明細書で使用する「希土類ドーパント」とは、ドーパントとしてのセリウム(Ce)を排除する。よって例えば、セリア含有材料が存在し、かつこのセリア含有材料がさらに希土類ドーパントを含む実施態様では、この希土類ドーパント自体は、セリウム(Ce)ではあり得ない。言い換えると、セリア含有材料が希土類ドーパントを含む実施態様では、希土類ドーパントが、先に列挙した希土類金属(又はその塩、酸化物、又はその他の化合物)から選択されなければならない。この定義はまた、第一の無機酸化物(例えばアルミナ)におけるドーパントとしてのセリウム(Ce)の存在も、排除する。本明細書で使用するように、「ドーパント」という用語は、希土類が、材料の格子構造に存在し得ること、材料の表面に存在し得ること、若しくは材料の細孔に存在すること、又はこれらのあらゆる組み合わせを意味する。
【0020】
材料について本明細書で使用するように「実質的に含まない」という表現は、材料が、僅かな量、例えば≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%、存在し得ることを意味する。表現「~を実質的に含まない」は、表現「~を含まない」を包含する。
【0021】
本明細書で用いる「ローディング(loading)」とは、金属重量を基準にしてg/ft3の単位での測定をいう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のリーンNOxトラップ触媒は、
i)1つ又は複数の白金族金属、第一のセリア含有材料及び第一の無機酸化物を含む、第一の層、
ii)1つ又は複数の貴金属、第二の無機酸化物、及び第二のセリア含有材料を含む、第二の層
を含み、
ここで第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物は、希土類ドーパントを含む。
【0023】
1つ又は複数の白金族金属は好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物から成る群から選択される。特に好ましくは、1つ又は複数の白金族金属は、白金とパラジウムとの混合物、又は白金とパラジウムとの合金であり、好ましくは白金の、パラジウムに対する比が、w/w基準で2:1から12:1、特に好ましくはw/w基準で約5:1である。
【0024】
リーンNOXトラップ触媒は、好ましくは0.1から10重量パーセントのPGM、より好ましくは0.5から5重量パーセントのPGM、最も好ましくは1から3重量パーセントのPGMを含む。PGMは好ましくは、1~100g/ft3、より好ましくは10~80g/ft3、最も好ましくは20~60g/ft3の量で存在する。
【0025】
1つ又は複数の白金族金属は、ロジウムを含まないか、又はロジウムから成らない。言い換えると、第一の層は好ましくは、ロジウムを実質的に含まない。
【0026】
1つ又は複数の白金族金属は一般的に、第一のセリア含有材料と接触している。1つ又は複数の白金族金属は好ましくは、第一のセリア含有材料に担持されている。代替的に、又はさらに、1つ又は複数の白金族金属は、第一の無機酸化物に担持されている。
【0027】
第一のセリア含有材料は好ましくは、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物から成る群から選択される。第一のセリア含有材料は好ましくは、バルク状セリアを含む。第一のセリア含有材料は、酸素吸蔵材料として機能し得る。或いは、又は代替的に、第一のセリア含有材料は、NOx吸蔵材料として機能することができ、かつ/又は1つ又は複数の白金族金属のための担持材料として、機能することができる。
【0028】
第一の無機酸化物は好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族の元素の酸化物である。第一の無機酸化物は好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又はこれらの複合酸化物から成る群から選択される。特に好ましくは、第一の無機酸化物は、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい無機酸化物は、アルミナである。
【0029】
第一の無機酸化物は、1つ又は複数の白金族金属のための、及び/又は第一のセリア含有材料のための、担持材料であり得る。
【0030】
好ましい第一の無機酸化物は好ましくは、表面積が10~1500m2/gの範囲にあり、孔容積が0.1~4mL/gの範囲にあり、かつ孔径が約10~1000オングストロームである。表面積が80m2/gより大きい高表面積の無機酸化物が特に好ましく、これは例えば、高表面積のセリア又はアルミナである。その他の好ましい第一の無機酸化物には、マグネシア/アルミナ複合酸化物が含まれ、これは任意でさらに、セリウム含有成分(例えばセリア)を含む。このような場合にはセリアが、マグネシア/アルミナ複合酸化物の表面に、例えばコーティングとして存在し得る。
【0031】
1つ又は複数の貴金属は好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、銀、金及びこれらの混合物から成る群から選択される。特に好ましくは、1つ又は複数の貴金属は、白金とパラジウムとの混合物、又は白金とパラジウムとの合金であり、好ましくは白金の、パラジウムに対する比が、w/w基準で2:1から10:1、特に好ましくはw/w基準で約5:1である。
【0032】
1つ又は複数の白金族金属は好ましくは、ロジウムを含まないか、又はロジウムから成らない。言い換えると、第二の層は好ましくは、ロジウムを実質的に含まない。よって幾つかの実施態様では、第一及び第二の層が好ましくは、ロジウムを実質的に含まない。ロジウムはその他の触媒金属(例えば白金、パラジウム、又はこれらの混合物及び/若しくは合金)の触媒活性に対して否定的な影響を与え得るので、このことは、有利であり得る。
【0033】
1つ又は複数の貴金属は一般的に、第二のセリア含有材料と接触している。1つ又は複数の貴金属は好ましくは、第二のセリア含有材料に担持されている。第二のセリア含有材料と接触していることに加えて、又はこれに代えて、1つ又は複数の貴金属が、第二の無機酸化物と接触していてよい。
【0034】
第二の無機酸化物は好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族の元素の酸化物である。第二の無機酸化物は好ましくは、アルミナ、セリア、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又はこれらの複合酸化物から成る群から選択される。特に好ましくは、第二の無機酸化物は、アルミナ、セリア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第二の無機酸化物は、アルミナ、例えばランタンをドープしたアルミナである。
【0035】
第二の無機酸化物は、1つ又は複数の貴金属のための担持材料であり得る。
【0036】
好ましい第二の無機酸化物は好ましくは、10~1500m2/gの範囲の表面積、0.1~4mL/gの範囲の孔容積、及び約10~1000オングストロームの孔径を有することが好ましい。表面積が80m2/gより大きい高表面積の無機酸化物が特に好ましく、これは例えば、高表面積のセリア又はアルミナである。その他の好ましい第二の無機酸化物には、マグネシア/アルミナ複合酸化物が含まれ、これは任意でさらに、セリウム含有成分(例えばセリア)を含む。このような場合にはセリアが、マグネシア/アルミナ複合酸化物の表面に、例えばコーティングとして存在し得る。
【0037】
第二のセリア含有材料は好ましくは、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物から成る群から選択される。第二のセリア含有材料は好ましくは、バルク状セリアを含む。第二のセリア含有材料は、酸素吸蔵材料として機能し得る。或いは、又は代替的に、第二のセリア含有材料は、NOx吸蔵材料として機能することができ、かつ/又は1つ又は複数の貴金属のための担持材料として、機能することができる。
【0038】
第二の層は、酸化層として機能することができ、例えば炭化水素のCO2及び/若しくはCOへの酸化に適した、並びに/又はNOのNO2への酸化に適した、ディーゼル酸化触媒層として、機能することができる。
【0039】
本発明による幾つかの好ましいリーンNOxトラップ触媒では、第一の層における1つ又は複数の白金族金属の合計ローディングが、第二の層における1つ又は複数の貴金属の合計ローディングよりも低い。このような触媒では好ましくは、第二の層における1つ又は複数の貴金属の合計ローディングの、第二の層における1つ又は複数の白金属金属の合計ローディングに対する比が、w/w基準で少なくとも2:1である。
【0040】
本発明による幾つかのさらに好ましいリーンNOxトラップ触媒では、第一のセリア含有材料の合計ローディングが、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも大きい。このような触媒では好ましくは、第一のセリア含有材料の合計ローディングの比が、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも、w/w基準で少なくとも2:1、好ましくはw/w基準で少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも5:1、特に好ましくは少なくとも7:1、大きい。
【0041】
意外なことに、第一の層における1つ又は複数の白金族金属合計ローディングが、第二の層における1つ又は複数の貴金属の合計ローディングよりも低いリーンNOxトラップ、及び/又は第一のセリア含有材料の合計ローディングが、第二のセリア含有材料の合計ローディングよりも大きいリーンNOxトラップは、改善された触媒性能を有することが判明した。このような触媒は、従来のリーンNOxトラップと比べて、より多くのNOx吸蔵特性及びCO酸化活性を示すことが判明した。
【0042】
さらに意外なことに、セリア含有材料(例えばセリア)が第二の層に存在する本明細書に記載のリーンNOxトラップは、第二の層にセリア含有材料を含有しない同等の触媒に比して、改善された性能を有することが判明した。この知見は、第二の層内にセリア含有材料(例えばセリア)が存在することによって、セリアが逆反応を触媒することが予測されるため(すなわち、NO2を還元)、NOのNO2への酸化減少につながることが予測されるという点で、特に意想外である。しかしながら本発明者らは意外なことに、この予測に反して、本明細書に記載のリーンNOxトラップは、リーン条件下とリッチ条件下の双方で改善された性能を示すことを見出した。
【0043】
理論に縛られることは望まないが、第一の層における1つ又は複数の白金族金属合計ローディングが、第二の層における1つ又は複数の貴金属の合計ローディングよりも低い、本明細書に記載の配置構成、及び/又は第一のセリア含有材料の(すなわち第一の層における)合計ローディングが、第二のセリア含有材料の(すなわち第二の層における)合計ローディングよりも大きい、本明細書に記載の配置構成により、リーンNOxトラップのNOx吸蔵と、酸化機能とが、別個の層に分離されると考えられる。こうすることによって、分離された機能がそれぞれ個々に、酸化機能とNOx吸蔵機能が同じ層内に位置している同等の触媒よりも、改善された性能を有する相乗効果が存在する。
【0044】
本発明の好ましいリーンNOxトラップ触媒では、希土類ドーパントが、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、又はこれらの金属酸化物を含む。好ましい希土類ドーパントには、ランタン、ネオジム又はこれらの金属酸化物が含まれる。特に好ましい希土類ドーパントには、ランタンが含まれ、例えばランタンから実質的に成るか、又はランタンから成る。
【0045】
本発明の好ましい触媒では、第一の層が、バリウムを実質的に含まない。特に好ましい触媒は、バリウムを実質的に含まないものであり、すなわち、第一の層、第二の層、及びあらゆるさらなる層が、バリウムを実質的に含まない。特に好ましい第一の層、第二の層、さらなる層、及びリーンNOxトラップ触媒もまた、アルカリ金属、例えばカリウム(K)及びナトリウム(Na)を実質的に含まない。
【0046】
よって、本発明の幾つかの触媒は、希土類ドーパントを含む第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物を含む、バリウム不含のNOxトラップ触媒である。このような触媒では、希土類ドーパントを含む第一のセリア含有材料又は第一の無機酸化物が、NOx吸蔵材料として機能し得る。
【0047】
NOx吸蔵材料として,バリウムを実質的に含まない、又はバリウムを含まない、本発明の触媒(例えばバリウム不含のNOxトラップ触媒)は、特に有利であり得る。このような触媒は、180、200、250又は300℃を超える温度で、好ましくは約300℃を超える温度で、同等のバリウム含有触媒よりも、NOxの吸蔵が少ないからである。言い換えると、NOx吸蔵材料として、バリウムを実質的に含まない、又はバリウムをNOx吸蔵材料として含まない、本発明の触媒は、180、200、250又は300℃を超える温度で、好ましくは約300℃を超える温度で、同等のバリウム含有触媒よりも、改善されたNOx放出特性を有する。このような触媒はまた、同等のバリウム含有触媒に比べて、改善された硫黄許容性を有することができる。この文脈において、「改善された硫黄許容性」とは、バリウムを実質的に含まない本発明の触媒が、同等のバリウム含有触媒に比べて、硫黄に対してより耐性であるか、若しくは低温で熱により脱硫可能であるか、又はこれら両方であることを意味する。
【0048】
本発明のリーンNOxトラップ触媒はさらに、当業者に知られた成分を含むことができる。例えば、本発明の組成物はさらに、少なくとも1つのバインダ及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を含むことができる。バインダが存在する場合、分散可能なアルミナバインダが好ましい。
【0049】
本発明によるリーンNOxトラップ触媒は、好ましくはさらに、軸長Lを有する金属基材又はセラミック基材を備えることができる。基材は好ましくは、フロースルーモノリス又はフィルターモノリスであるが、フロースルーモノリス基材であるのが好ましい。
【0050】
フロースルーモノリス基材は、第一の端面及び第二の端面の間の縦方向を規定する、第一の端面及び第二の端面を有する。フロースルーモノリス基材は、第一の端面及び第二の端面の間に延びる複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延び、複数の内部表面(例えば各チャネルを規定する壁表面)をもたらす。複数のチャネルはそれぞれ、第一の端面における開口部と、第二の端面における開口部とを有する。疑義が生じるのを避けるため、フロースルーモノリス基材は、ウォールフローフィルタではない。
【0051】
第一の端面は通常、基材の入口端部にあり、第二の端面は、基材の出口端部にある。
【0052】
チャネルは、一定の幅であってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0053】
好ましくは、縦方向に直交する平面内で、モノリス基材は1平方インチ当たり100から500チャネル、好ましくは200から400チャネルを有する。例えば、第一の端面上で、開口第一チャネル及び閉鎖第二チャネルの密度は、1平方インチ当たり200から400チャネルである。チャネルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又はその他多角形の断面を有しうる。
【0054】
モノリス基材はまた、触媒材料を保持するための担体としても機能する。モノリス基材を形成するのに適した材料には、セラミック様の材料、例えば、コーディエライト、α-アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア若しくはケイ酸ジルコニウム、又は多孔質、耐火性金属が含まれる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野でよく知られている。
【0055】
本明細書で記載するフロースルーモノリス基材は、単一の構成要素(すなわち単一のブリック)であることに留意すべきである。それにもかかわらず、排出処理システムを形成するとき、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって、又は本明細書に記載されるような複数の小さなモノリスを一緒に接着することによって形成されうる。そのような技術は、当該技術分野においてよく知られており、排出処理システムの適切なケーシング及び構成も同様である。
【0056】
NOxトラップ触媒がセラミック基材を含む実施態様において、セラミック基材は、あらゆる適切な耐火性材料から作製されていてよく、この耐火性材料は例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(例えばコーディエライト及びスポジュメン)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物である。コーディエライト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及び炭化ケイ素が特に好ましい。
【0057】
リーンNOxトラップ触媒が金属基材を含む実施態様において、金属基材モノリスは、あらゆる適切な金属、特に耐熱性の金属及び金属合金で作製することができ、これは例えば、チタン及びステンレス鋼、並びに、鉄、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムを、その他の微量金属に加えて含有するフェライト合金である。
【0058】
本発明のリーンNOXトラップ触媒は、あらゆる好適な手段によって調製することができる。例えば、第一の層は、1つ又は複数の白金族金属と、第一のセリア含有材料と、第一の無機酸化物とをあらゆる順序で混合することによって調製できる。添加のやり方及び順序は、特に重要ではないと考えられる。例えば、第一の層の各成分は、その他の1つ又は複数のあらゆる成分に同時に添加することができるか、又はあらゆる順序で連続的に添加することができる。第一の層の各成分は、第一の層のその他のあらゆる成分に、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス若しくは析出などによって、又はこの分野で一般的に知られたあらゆるその他の手段によって、添加することができる。
【0059】
第二の層は、1つ又は複数の貴金属と、第二のセリア含有材料と、第二の無機酸化物とをあらゆる順序で混合することによって調製できる。添加のやり方及び順序は、特に重要ではないと考えられる。例えば、第二の層の各成分は、その他のあらゆる1つ又は複数の成分に同時に添加することができるか、又はあらゆる順序で連続して添加することができる。第二の層の各成分は、第二の層のその他のあらゆる成分に、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス若しくは析出などによって、又はこの分野で一般的に知られたあらゆるその他の手段によって、添加することができる。
【0060】
本明細書に記載するリーンNOxトラップ触媒は好ましくは、リーンNOxトラップ触媒をウォッシュコート手順により基材上に堆積することによって、調製される。ウォッシュコート手順を用いるリーンNOxトラップ触媒を調製する代表的な方法が、以下に開示される。下記のプロセスは、本発明の種々の実施態様に従って変更可能であることが理解されよう。
【0061】
ウォッシュコートは、適切な溶媒中、好ましくは水中で、先に既定したリーンNOxトラップ触媒の成分の微細に分割された粒子をまずスラリー化し、スラリーを形成することによって行うのが好ましい。スラリーは、5から70重量パーセントの固体を含むことが好ましく、より好ましくは10から50重量パーセントの固体を含む。好ましくは、スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均直径で20ミクロン未満の粒径を有することを確実にするために、粒子をミリングか又は別の粉砕プロセスに供する。さらなる成分、例えば安定剤、バインダ、界面活性剤、又は促進剤も、水溶性又は水分散性の化合物又は錯体の混合物として、スラリー内に組み込むことができる。
【0062】
基材は、リーンNOXトラップ触媒の望ましいローディングが基材に堆積されるように、スラリーで一回又は複数回、コーティングすることができる。
【0063】
第一の層は好ましくは、金属基材又はセラミック基材に直接、担持/堆積される。「直接」とは、第一の層と、金属基材若しくはセラミック基材との間に介在する層、又はこれらの間に存在する下層が無いことを意味する。
【0064】
第二の層は好ましくは、第一の層上に堆積される。第二の層は特に好ましくは、第一の層上に直接、堆積される。「直接」とは、第二の層と第一の層との間に介在する層又はこれらの間に存在する下層が無いことを意味する。
【0065】
よって、本発明による好ましいリーンNOxトラップでは、第一の層が金属基材又はセラミック基材に直接、堆積されており、第二の層が、第一の層に堆積されている。
【0066】
第一の層、及び/又は第二の層は好ましくは、基材の軸長Lの少なくとも60%、より好ましくは基材の軸長Lの少なくとも70%、特に好ましくは基材の軸長Lの少なくとも80%に、堆積されている。
【0067】
特に好ましい本発明のリーンNOxトラップ触媒では、第一の層及び第二の層は、基材の軸長Lの少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%に堆積されている。
【0068】
リーンNOxトラップ触媒は好ましくは、基材と、該基材上の少なくとも1つの層とを含む。少なくとも1つの層は好ましくは、先に記載した第一の層を含む。これは、上述のウォッシュコート手順によって製造できる。1つ又は複数のさらなる層を、前述のようにNOx吸蔵触媒組成物の1つの層(例えば第二の層)に添加することができるが、これに限られない。
【0069】
さらなる層が、前述の第一の層、及び第二の層に加えて存在する実施態様では、1つ又は複数のさらなる層は、前述の第一の層、及び第二の層とは異なる組成を有する。
【0070】
1つ又は複数のさらなる層は、1つのゾーン又は複数のゾーン(例えば2つ以上のゾーン)を有することができる。1つ又は複数のさらなる層が複数のゾーンを有する場合、これらのゾーンは好ましくは、長手方向のゾーンである。複数のゾーン、又は個々のゾーンはそれぞれ、勾配として存在していてよい。すなわち、1つのゾーンは、その全長にわたって均一な厚さではなく、勾配を形成していてよい。或いは、1つのゾーンは、その全長にわたって均一な厚さであり得る。
【0071】
幾つかの好ましい実施態様では、1つのさらなる層、例えば第一のさらなる層が存在する。
【0072】
通常、第一のさらなる層は、白金族金属(PGM)(以下では、「第二の白金族金属」という)を含む。第一のさらなる層が、第二の白金族金属(PGM)を、唯一の白金族金属として含む(すなわち、先に特定した以外のPGMは、触媒材料に存在しない)ことが、一般的には好ましい。
【0073】
第二のPGMは、白金、パラジウム、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせ又は混合物からなる群より選択される。白金族金属は好ましくは、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせ又は混合物からなる群より選択される。白金族金属はより好ましくは、白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせ又は混合物からなる群より選択される。
【0074】
第一のさらなる層は、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を酸化するためのものである(すなわち、このために調合される)ことが、一般的に好ましい。
【0075】
第一のさらなる層は好ましくは、パラジウム(Pd)及び任意で白金(Pt)を、1:0(例えばPdのみ)から1:4の重量比で含む(これは、Pt:Pdの重量比が4:1から0:1であることに相当する)。より好ましくは、第二の層は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を、<4:1の重量比、例えば≦3.5:1の重量比で含む。
【0076】
白金族金属が、白金とパラジウムとの組み合わせ又は混合物である場合、第一のさらなる層は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を、5:1から3.5:1、好ましくは2.5:1から1:2.5、より好ましくは1:1から2:1の重量比で含む。
【0077】
第一のさらなる層は通常、担持材料(以下では「第二の担持材料という」)をさらに含む。一般的には第二のPGMが、第二の担持材料に配置又は担持される。
【0078】
第二の担持材料は好ましくは、耐火性酸化物である。耐火性酸化物が、アルミナ、シリカ、セリア、シリカ-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア、及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、耐火性酸化物は、アルミナ、セリア、シリカ-アルミナ、及びセリア-ジルコニアからなる群から選択される。さらにより好ましくは、耐火性酸化物は、アルミナ又はシリカ-アルミナであり、特にシリカ-アルミナである。
【0079】
特に好ましい第一のさらなる層は、シリカアルミナ担体、白金、パラジウム、バリウム、モレキュラーシーブ、及びアルミナ担体上の白金族金属(PGM)、例えば希土類安定化されたアルミナを含む。特に好ましくは、この第一のさらなる層は、シリカアルミナ担体、白金、パラジウム、バリウム、モレキュラーシーブを含む第一のゾーンと、アルミナ担体上の白金族金属(PGM)、例えば希土類安定化されたアルミナを含む第二のゾーンとを含む。この好ましい第一のさらなる層は、酸化触媒(例えばディーゼル酸化触媒(DOC))としての活性を有することができる。
【0080】
さらに好ましい第一のさらなる層は、アルミナ上の白金族金属を含むか、又は実質的にこれから成る。この好ましい第二の層は、酸化触媒(例えばNO2マーカー触媒)としての活性を有することができる。
【0081】
さらに好ましい第一のさらなる層は、白金族金属、ロジウム、及びセリア含有成分を含む。
【0082】
別の好ましい実施態様では、前述の好ましい第一のさらなる層のうち1つより多くが、リーンNOxトラップ触媒に加えて、存在している。このような実施態様では、1つ又は複数のさらなる層が、あらゆる構成で存在していてよく、これにはゾーン化された構成が含まれる。
【0083】
第一のさらなる層は好ましくは、リーンNOxトラップ触媒に配置又は担持されている。
【0084】
第一のさらなる層は、さらに、又は代替的に、基材に(例えば、フロースルーモノリス基材の複数の内部表面に)配置又は担持されていてよい。
【0085】
第一のさらなる層は、基材若しくはリーンNOxトラップ触媒の全長に、配置又は担持されていてよい。或いは、第一のさらなる層は、基材又はリーンNOxトラップ触媒に部分的に、例えば5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%、配置又は担持されていてよい。
【0086】
或いは、第一の層、及び/又は第二の層を押出成形して、フロースルーモノリス基材又はフィルターモノリス基材を形成することができる。このような場合、リーンNOxトラップ触媒は、前述の第一の層及び/又は第二の層を含む、押出成形されたリーンNOxトラップ触媒である。
【0087】
本発明のさらなる態様は、先に既定したリーンNOxトラップ触媒を含む、燃焼排ガスの流れを処理するための排出処理システムを提供する。好ましいシステムでは、内燃機関が、ディーゼルエンジンであり、好ましくは軽量(light duty)ディーゼルエンジンである。リーンNOxトラップ触媒は、閉鎖結合された位置、又は床下位置に置くことができる。
【0088】
排出処理システムは通常、さらに排出制御装置を含む。
【0089】
排出制御装置は好ましくは、好ましくはリーンNOxトラップ触媒の下流にある。
【0090】
排出制御装置の例には、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、リーンNOxトラップ(LNT)、リーンNOx触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSCTM)、及びこれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。このような排出制御装置は、当該技術分野でよく知られている。
【0091】
前述の排出制御装置の幾つかはフィルター過基材を備える。フィルタリング基材を有する排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、触媒化スートフィルター(CSF)、及び選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒から成る群より選択され得る。
【0092】
排出処理システムは、NOxトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択された排出制御装置を含むことが、好ましい。さらに好ましくは、排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される。さらにより好ましくは、排出制御装置は、選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒である。
【0093】
本発明の排出システムが、SCR触媒又はSCRFTM触媒を含む場合、排出処理システムはさらに、窒素系還元剤、例えばアンモニア又はアンモニア前駆体(尿素若しくはギ酸アンモニウム)、好ましくは尿素を排ガスに、リーンNOxトラップ触媒の下流で、またSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流で噴射するためのインジェクタを備えることができる。
【0094】
このようなインジェクタは、窒素系還元剤前駆体の供給源(例えばタンク)に流体連結することができる。前駆体の排気ガスへのバルブ制御された投入は、適切にプログラミングされたエンジン管理手段及び排気ガスの組成を監視するセンサーによって供給される閉ループ又は開ループフィードバックによって調節することができる。
【0095】
アンモニアはまた、カルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することによって生成されてもよく、生成されたアンモニアは排気ガス中に噴射することができる。
【0096】
インジェクタの代わりに、又はインジェクタに加えて、アンモニアをin situで(例えばSCR触媒又はSCRFTM触媒(例えば本発明のリーンNOxトラップ触媒)の上流に配置されているLNTのリッチ再生の間に)、生成することができる。よって、排出処理システムはさらに、炭化水素により排ガスをリッチにする(enrich)ためのエンジン管理手段を備えていてもよい。
【0097】
SCR触媒又はSCRFTM触媒は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド、及びVIII族遷移金属(例えばFe)のうち少なくとも1つからなる群より選択された金属を含んでいてもよく、この金属は、耐火性酸化物又はモレキュラーシーブに担持されている。金属は、好ましくはCe、Fe、Cu及びこれらのいずれか2種以上の組み合わせから選択され、さらに好ましくは金属はFe又はCuである。
【0098】
SCR触媒又はSCRFTM触媒用の耐火性酸化物は、Al2O3、TiO2、CeO2、SiO2、ZrO2、及びそれらの2つ以上を含む混合酸化物からなる群より選択され得る。非ゼオライト触媒は、タングステン酸化物(例えば、V2O5/WO3/TiO2、WOx/CeZrO2、WOx/ZrO2、又はFe/WOx/ZrO2)も含み得る。
【0099】
SCR触媒、SCRFTM触媒、又はそれらのウォッシュコートが、少なくとも1つのモレキュラーシーブ(例えばアルミノシリケートゼオライト又はSAPO)を含む場合が、特に好ましい。少なくとも1つのモレキュラーシーブは、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブでありうる。本明細書において「小細孔モレキュラーシーブ」とは、最大環サイズが8のモレキュラーシーブ(例えばCHA)を意味し;本明細書において「中細孔モレキュラーシーブ」とは、最大環サイズが10のモレキュラーシーブ(例えばZSM-5)を意味し;本明細書において「大細孔モレキュラーシーブ」とは、最大環サイズが12のモレキュラーシーブ(例えばβ)を意味する。小細孔モレキュラーシーブはSCR触媒における使用にとって潜在的に有利である。
【0100】
本発明の排出処理システムにおいて、SCR触媒又はSCRFTM触媒にとって好ましいモレキュラーシーブは、AEI、ZSM-5、ZSM-20、ERI(ZSM-34を含む)、モルデナイト、フェリエライト、BEA(βを含む)、Y、CHA、Nu-3を含むLEV、MCM-22、及びEU-1(好ましくはAEI又はCHA)からなる群より選択された合成アルミノシリケートゼオライトモレキュラーシーブであり、シリカ対アルミナの比は、約10対約50(例えば約15対約40)である。
【0101】
第一の排出システムの実施態様において、排出システムは、本発明のリーンNOxトラップ触媒、及び触媒化スートフィルター(CSF)を備える。典型的には、リーンNOxトラップ触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)が続く(例えば、触媒はCSFの上流にある)。よって例えば、リーンNOxトラップ触媒の出口は、触媒化スートフィルターの入口に接続されている。
【0102】
第二の排出システムの実施態様は、本発明のリーンNOxトラップ触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、及び選択的触媒還元(SCR)触媒を備える排出処理システムに関する。
【0103】
典型的には、リーンNOxトラップ触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)が続く(例えば、触媒はCSFの上流にある)。典型的には、触媒化スートフィルターの後に選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、CSFはSCR触媒の上流にある)。窒素系還元剤のインジェクタは、触媒化スートフィルター(CSF)と選択的触媒還元(SCR)触媒の間に配置されうる。よって、触媒化スートフィルター(CSF)の後に窒素系還元剤の噴射装置が続いてもよく(例えば、CSFは噴射装置の上流にある)、窒素系還元剤の噴射装置の後に選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、噴射装置はSCR触媒の上流にある)。
【0104】
第三の排出システムの実施態様において、排出システムは、本発明のリーンNOxトラップ触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒、及び触媒化スートフィルター(CSF)又はディーゼル微粒子フィルター(DPF)のいずれかを備える。
【0105】
第三の排出処理システムの実施態様では、典型的には本発明のリーンNOxトラップ触媒の後に、選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、触媒はSCRの上流にある)。窒素還元剤のインジェクタは、酸化触媒と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置されてもよい。よって、触媒化モノリス基材の後に、窒素系還元剤のインジェクタが続いてもよく(例えば、モノリス基材はインジェクタの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクタの後に選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクタはSCR触媒の上流にある)。選択的触媒還元(SCR)触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)又はディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)が続く(例えば、SCRはCSF又はDPFの上流にある)。
【0106】
第四の排出処理システムの実施態様は、本発明のリーンNOxトラップ触媒と、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒とを含む。本発明のリーンNOxトラップ触媒の後に、典型的に選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続く(例えば、触媒はSCRFTM触媒の上流にある)。
【0107】
窒素還元剤のインジェクタは、リーンNOxトラップ触媒と選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒との間に配置され得る。したがって、リーンNOxトラップ触媒の後に窒素還元剤のインジェクタが続いてもよく(例えば、触媒はインジェクタの上流にある)、窒素還元剤のインジェクタの後に選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクタはSCRFTMの上流にある)。
【0108】
排出処理システムが、例えば上述の第二から第四の排出システムの実施態様のように、選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒を含む場合、ASCは、SCR触媒又はSCRFTM触媒の下流に(すなわち別個の基材モノリスとして)配置することができるか、又はより好ましくは、SCR触媒を備えたモノリス基材の下流の区域又は終端を、ASCのための担体として使用できる。
【0109】
本発明の別の態様は自動車に関する。自動車は、内燃機関、好ましくはディーゼルエンジンを含む。内燃機関は、好ましくはディーゼルエンジンであり、本発明の排出処理システムに結合されている。
【0110】
ディーゼルエンジンは、≦50ppmの硫黄、より好ましくは、≦15ppmの硫黄、例えば≦10ppmの硫黄、さらにより好ましくは≦5ppmの硫黄を含む燃料、好ましくはディーゼル燃料で動作するよう構成又は適合されている。
【0111】
車両は、米国又は欧州の法律で規定されているような、軽量ディーゼル車両(LDV)であってよい。軽量ディーゼル車両は、典型的には<2840kgの重量、さらに好ましくは<2610kgの重量を有する。米国では、軽量ディーゼル車(LDV)とは、≦8500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車を指す。欧州では、軽量ディーゼル車両(LDV)という用語は、(i)運転席の他に8席以下の座席を備え、5トン以下の最大質量を有する乗用車、及び(ii)12トン以下の最大質量を有する貨物輸送車両を指す。
【0112】
あるいは、自動車は、米国の法律で規定されている、>8500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車のような大型ディーゼル車(HDV)であってもよい。
【0113】
本発明のさらなる態様は、排ガスを、前述のリーンNOxトラップ触媒と、又は前述の排出処理システムと接触させることを含む、内燃機関からの排ガスを処理する方法である。好ましい方法では排ガスが、リッチガス混合物である。さらなる好ましい方法では、排ガスが、リッチガス混合物と、リーンガス混合物との間で循環する(cycle)。
【0114】
内燃機関からの排ガスを処理する幾つかの好ましい方法では、排ガスが、約150~300℃の温度である。
【0115】
内燃機関からの排ガスを処理する幾つかのさらなる好ましい方法では、排ガスを、前述のリーンNOxトラップ触媒に加えて、1つ又は複数のさらなる放出制御装置と接触させる。1つ又は複数の排出制御装置は好ましくは、リーンNOxトラップ触媒の下流にある。
【0116】
排出制御装置のさらなる例には、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、NOx吸蔵触媒(NSC)、リーンNOX触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)、コールドスタート触媒(dCSC)、及びこれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。このような排出制御装置は、当該技術分野でよく知られている。
【0117】
前述の排出制御装置の幾つかはフィルター基材を備える。フィルタリング基材を有する排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、触媒化スートフィルター(CSF)、及び選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒から成る群より選択され得る。
【0118】
本方法は、排気を、リーンNOxトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼル微粒子フィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群より選択される排出制御装置と接触させることを含むのが、好ましい。さらに好ましくは、排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される。さらにより好ましくは、排出制御装置は、選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒である。
【0119】
本発明の方法が、排気をSCR触媒又はSCRFTM触媒と接触させることを含む場合、この方法はさらに、窒素系還元剤(例えばアンモニア)、アンモニア前駆体(例えば尿素又はギ酸アンモニウム)、好ましくは尿素を、リーンNOxトラップ触媒の下流、及びSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流で、排ガスに噴射することを含むことができる。
【0120】
このような噴射は、インジェクタによって行うことができる。このインジェクタは、窒素系還元剤前駆体の供給源(例えばタンク)に流体連結することができる。前駆体の排気ガスへのバルブ制御された投入は、適切にプログラミングされたエンジン管理手段及び排気ガスの組成を監視するセンサーによって供給される閉ループ又は開ループフィードバックによって調節することができる。
【0121】
アンモニアはまた、カルバミン酸アンモニウム(固体)を加熱することによって生成されてもよく、生成されたアンモニアは排気ガス中に噴射することができる。
【0122】
インジェクタの代わりに、又はインジェクタに加えて、アンモニアをin situで(例えば、SCR触媒又はSCRFTM触媒の上流に配置されているLNTのリッチ再生の間に)生成することができる。よって、この方法はさらに、炭化水素により排ガスをリッチにすることを含み得る。
【0123】
SCR触媒又はSCRFTM触媒は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド、及びVIII族遷移金属(例えばFe)のうち少なくとも1つからなる群より選択された金属を含んでいてもよく、この金属は、耐火性酸化物又はモレキュラーシーブに担持されている。金属は、好ましくはCe、Fe、Cu及びこれらのいずれか2種以上の組み合わせから選択され、さらに好ましくは金属はFe又はCuである。
【0124】
SCR触媒又はSCRFTM触媒用の耐火性酸化物は、Al2O3、TiO2、CeO2、SiO2、ZrO2、及びそれらの2つ以上を含む混合酸化物からなる群より選択され得る。非ゼオライト触媒は、タングステン酸化物(例えば、V2O5/WO3/TiO2、WOx/CeZrO2、WOx/ZrO2、又はFe/WOx/ZrO2)も含み得る。
【0125】
SCR触媒、SCRFTM触媒、又はそれらのウォッシュコートが、少なくとも1つのモレキュラーシーブ(例えばアルミノシリケートゼオライト又はSAPO)を含む場合が、特に好ましい。少なくとも1つのモレキュラーシーブは、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブでありうる。本明細書において「小細孔モレキュラーシーブ」とは、最大環サイズが8のモレキュラーシーブ(例えばCHA)を意味し;本明細書において「中細孔モレキュラーシーブ」とは、最大環サイズが10のモレキュラーシーブ(例えばZSM-5)を意味し;本明細書において「大細孔モレキュラーシーブ」とは、最大環サイズが12のモレキュラーシーブ(例えばβ)を意味する。小細孔モレキュラーシーブはSCR触媒における使用にとって潜在的に有利である。
【0126】
本発明の排気システムにおいて、SCR触媒又はSCRFTM触媒にとって好ましいモレキュラーシーブは、AEI、ZSM-5、ZSM-20、ERI(ZSM-34を含む)、モルデナイト、フェリエライト、BEA(βを含む)、Y、CHA、LEV(Nu-3を含む)、MCM-22、及びEU-1(好ましくはAEI又はCHA)からなる群より選択された合成アルミノシリケートゼオライトモレキュラーシーブであり、シリカ対アルミナの比は、約10対約50(例えば約15対約40)である。
【0127】
第一の実施態様において本方法は、排気を、本発明のリーンNOxトラップ触媒、及び触媒化スートフィルター(CSF)と接触させることを含む。典型的には、リーンNOxトラップ触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)が続く(例えば、触媒はCSFの上流にある)。よって例えば、リーンNOxトラップ触媒の出口は、触媒化スートフィルターの入口に接続されている。
【0128】
排ガスを処理する方法の第二の実施態様は、排ガスを、本発明のリーンNOxトラップ触媒、触媒化スートフィルター(CSF)及び選択的触媒還元(SCR)触媒と接触させることを含む、方法に関する。
【0129】
典型的には、リーンNOxトラップ触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)が続く(例えば、触媒はCSFの上流にある)。典型的には、触媒化スートフィルターの後に選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、CSFはSCR触媒の上流にある)。窒素系還元剤のインジェクタは、触媒化スートフィルター(CSF)と選択的触媒還元(SCR)触媒の間に配置されうる。よって、触媒化スートフィルター(CSF)の後に窒素系還元剤の噴射装置が続いてもよく(例えば、CSFは噴射装置の上流にある)、窒素系還元剤の噴射装置の後に選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、噴射装置はSCR触媒の上流にある)。
【0130】
排ガスを処理する方法の第三の実施態様において、本方法は、排ガスを、本発明のリーンNOxトラップ触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒、並びに触媒化スートフィルター(CSF)又はディーゼル微粒子フィルター(DPF)のいずれかと接触させることを含む。
【0131】
排ガスを処理する第三の実施態様では、典型的には本発明のリーンNOxトラップ触媒の後に、選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、触媒はSCRの上流にある)。窒素還元剤のインジェクタは、触媒と選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置されてもよい。したがって、酸化触媒の後に窒素還元剤のインジェクタが続いてもよく(例えば、酸化触媒はインジェクタの上流にある)、窒素還元剤のインジェクタの後に選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクタはSCR触媒の上流にある)。選択的触媒還元(SCR)触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)又はディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)が続く(例えば、SCRはCSF又はDPFの上流にある)。
【0132】
排ガス処理方法の第四の実施態様は、本発明のリーンNOxトラップ触媒と、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒とを含む。本発明のリーンNOxトラップ触媒の後に、典型的に選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続く(例えば、触媒はSCRFTM触媒の上流にある)。
【0133】
窒素還元剤のインジェクタは、リーンNOxトラップ触媒と選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒との間に配置され得る。したがって、リーンNOxトラップ触媒の後に窒素還元剤のインジェクタが続いてもよく(例えば、触媒はインジェクタの上流にある)、窒素還元剤のインジェクタの後に選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒が続いてもよい(例えば、インジェクタはSCRFTMの上流にある)。
【0134】
排出システムが、上述の第二から第四の方法の実施態様のような、選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒を含む場合、ASCは、SCR触媒又はSCRFTM触媒の下流に(すなわち別個の基材モノリスとして)配置することができる、又は、さらに好ましくはSCR触媒を備えた基材モノリスの下流の区域又は終端はASCのための担体として使用することができる。
【0135】
実施例
以下では本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0136】
材料
特に記載しない限り、全ての材料は市販で手に入り、知られた供給元から得られた。
【0137】
一般的な調製1
Al2O3.CeO2.MgO-BaCO3複合材材料は、Al2O3(56.14%).CeO2(6.52%).MgO(14.04%)を酢酸バリウムで含浸し、得られたスラリーを噴霧乾燥することによって形成した。それからこれを、650℃で1時間、か焼した。目標とするBaCO3濃度は、23.3重量%である。
【0138】
一般的な調製2
903gのLa(NO3)3を、3583gの脱イオン水に溶解させた。1850gの抗表面積CeO2を粉末形態で添加し、この混合物を60分間、撹拌した。こうして得られたスラリーを、向流モードの噴霧乾燥機で噴霧乾燥した(二流体、ファウンテンノズル、内部温度設定300℃、外部温度設定110℃)。こうして得られた粉末を、サイクロンで回収した。この粉末を、650℃で1時間、据置型の炉内でか焼した。
【0139】
実施例の調製
[Al2O3.CeO2.MgO.Ba].Pt.Pd.CeO2の調製:組成物A
2.07g/in3の[Al2O3.CeO2.MgO.BaCO3](上記一般手順1に従って調製)を、蒸留水によってスラリーにし、それからミリングして、平均粒径を減少させた(d90=13~15μm)。このスラリーに、30g/ft3のマロン酸Pt溶液、及び6g/ft3の硝酸Pd溶液を添加し、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを担体に1時間、吸着させた。このスラリーに、2.1g/in3の事前にか焼したCeO2を添加し、それから0.2g/in3のアルミナバインダを添加した。
【0140】
[Al2O3.LaO].Pt.Pd.CeO2の調製:組成物B
マロン酸Pt(65gft-3)及び硝酸Pd(13gft-3)を、[Al2O3(90.0%).LaO(4%)](1.2gin-3)を水に入れたスラリーに添加した。Pt及びPdは、CeO2(0.3gin-3)を添加する前に1時間、アルミナ担体に吸着させた。こうして生じたスラリーをウォッシュコートにし、天然増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース)で粘稠化した。
【0141】
[Al2O3.LaO].Pt.Pdの調製:組成物C
マロン酸Pt(65gft-3)及び硝酸Pd(13gft-3)を、[Al2O3(90.0%).LaO(4%)](1.2gin-3)を水に入れたスラリーに添加した。Pt及びPdをアルミナ担体に1時間、吸着させた。こうして生じたスラリーをウォッシュコートにし、天然増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース)で粘稠化した。
【0142】
[CeO2].Rh.Pt.Al2O3の調製:組成物D
硝酸Rh(5gft-3)を、CeO2(0.4gin-3)を水に入れたスラリーに添加した。Rh吸着を促進させるためにNH3水溶液を、pH6.8になるまで添加した。続いて、マロン酸Pt(5gft-3)をこのスラリーに添加し、アルミナ(ベーマイト、0.2gin-3)及びバインダ(アルミナ、0.1gin-3)を添加する前に1時間、担体に吸着させた。こうして生じたスラリーを、ウォッシュコートにした。
【0143】
触媒1
ウォッシュコートA、C及びDをそれぞれ、セラミックモノリス又は金属モノリス上に順次、標準的なコーティング手順を用いてコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間、か焼した。
【0144】
触媒2
ウォッシュコートA、B及びDをそれぞれ、セラミックモノリス又は金属モノリス上に順次、標準的なコーティング手順を用いてコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間、か焼した。
【0145】
触媒3:La 800g/ft3
Al2O3 PGMの調製[CeO2.La(13.1重量%)]
1.2g/in3のAl2O3を、蒸留水に入れてスラリーにし、それから13~15μmのd90にミリングした。それからこのスラリーに、50g/ft3のマロン酸Pt溶液、及び10g/ft3の硝酸Pd溶液を添加し、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを担体に1時間、吸着させた。これに、3g/in3の[CeO2.La(13.1重量%)](上記一般調製2に従って製造)、及び0.2g/in3のアルミナバインダを添加し、均質になるまで撹拌し、ウォッシュコートを形成した。それからこのウォッシュコートを、セラミックモノリス又は金属モノリス上に、標準的な手順を用いてコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間、か焼した。
【0146】
0.75g/in3で4%のランタンドープアルミナを、蒸留水に入れてスラリーにし、それから13~15μmのd90にミリングした。それからこのスラリーに、50g/ft3のマロン酸Pt溶液、及び50g/ft3の硝酸Pd溶液を添加し、均質になるまで撹拌した。Pt/Pdを担体に1時間、吸着させた。それからこれに、0.75g/in3の高表面積Ceを添加し、均質になるまで撹拌して、ウォッシュコートを形成した。それからこのウォッシュコートを、セラミックモノリス又は金属モノリス上に、標準的な手順を用いてコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間、か焼した。
【0147】
0.4g/in3の高表面積Ceを、蒸留水に入れてスラリーにした。それからこのスラリーに、5g/ft3の硝酸Rh溶液、及び5g/ft3のマロン酸Pt溶液を添加し、均質になるまで撹拌した。Rh/Ptを担体に1時間、吸着させた。それからこれに、0.3g/in3のAl2O3バインダを添加し、均質になるまで撹拌して、ウォッシュコートを形成した。それからこのウォッシュコートを、セラミックモノリス又は金属モノリス上に、標準的な手順を用いてコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間、か焼した。
【0148】
実験結果
触媒1及び2は、10%のH2O、20%のO2及び残部のN2から成るガス流中、800℃で16時間、水熱的にエージングした。これらについての性能試験は、定常状態の放出サイクル(300秒のリーンと、10秒のリッチというサイクル3回、目標NOx暴露は1g)によって、1.6リットルのベンチを搭載したディーゼルエンジンを用いて行った。排出は、触媒の前と後で測定した。
【0149】
実施例1
触媒のNOx吸蔵性能は、NOx吸蔵効率をNOx吸蔵の関数として測定することにより、評価した。150℃での1つの代表的なサイクル(これに失活予備条件が続く)からの結果が、以下の表1に示されている。
【0150】
【0151】
表1の結果からは、Ceを含有する中層を含む触媒2が、Ceを含有する中層を含まない触媒1に比べて、高いNOx吸蔵効率を有することが分かる。
【0152】
実施例2
触媒のNOx吸蔵性能は、NOx吸蔵効率をNOx吸蔵の関数として測定することにより、評価した。150℃での1つの代表的なサイクル(これに実施例1よりも多い活性化予備条件が続く)からの結果が、以下の表2に示されている。
【0153】
【0154】
表2の結果からは、上記実施例1と同様に、Ceを含有する中層を含む触媒2が、Ceを含有する中層を含まない触媒1に比べて、高いNOx吸蔵効率を有することが分かる。
【0155】
実施例3
触媒のNOx吸蔵性能は、NOx吸蔵効率をNOx吸蔵の関数として測定することにより、評価した。200℃での1つの代表的なサイクル(これに失活予備条件が続く)からの結果が、以下の表3に示されている。
【0156】
【0157】
表3の結果からは、Ceを含有する中層を含む触媒2が、Ceを含有する中層を含まない触媒1に比べて、高いNOx吸蔵効率を有することが分かる。
【0158】
実施例4
触媒のNOx吸蔵性能は、NOx吸蔵効率をNOx吸蔵の関数として測定することにより、評価した。200℃での1つの代表的なサイクル(これに失活予備条件が続く)からの結果が、以下の表4に示されている。
【0159】
【0160】
表4の結果からは、Ceを含有する中層を含む触媒2が、Ceを含有する中層を含まない触媒1に比べて、高いNOx吸蔵効率を有することが分かる。
【0161】
実施例5
触媒のCO酸化性能を、CO変換を経時的に測定することによって評価した。175℃での1つの代表的なサイクル(これに定常状態試験条件活性化が続く)からの結果が、以下の表5に示されている。
【0162】
【0163】
表5の結果からは、Ceを含有する中層を含む触媒2が、Ceを含有する中層を含まない触媒1に比べて、CO変換効率を有することが分かる。
【0164】
これはさらに、それぞれの触媒について175℃で25%及び50%のCO変換効率に達するまでにかかった時間によって、実証される。触媒1は、25%のCO変換効率を108秒後に達成し、50%のCO変換効率を、121秒後に達成した。触媒2は、25%のCO変換効率を85秒後に達成し、50%のCO変換効率を、110秒後に達成した。よって触媒2は、触媒1よりも素早いCOライトオフを達成する。
【0165】
実施例6
触媒のCO酸化性能を、CO変換を経時的に測定することによって評価した。200℃での1つの代表的なサイクル(これに定常状態試験条件活性化が続く)からの結果が、以下の表6に示されている。
【0166】
【0167】
表6の結果からは、Ceを含有する中層を含む触媒2が、Ceを含有する中層を含まない触媒1に比べて、CO変換効率を有することが分かる。
【0168】
これはさらに、それぞれの触媒について200℃で25%及び50%のCO変換効率に達するまでにかかった時間によって、実証される。触媒1は、25%のCO変換効率を97秒後に達成し、50%のCO変換効率を、118秒後に達成した。触媒2は、25%のCO変換効率を76秒後に達成し、50%のCO変換効率を、99秒後に達成した。よって触媒2は、触媒1よりも素早いCOライトオフを達成する。
【0169】
実施例7
触媒2及び3は、10%のH2O、20%のO2及び残部のN2から成るガス流中、800℃で16時間、水熱的にエージングした。これらについての性能試験は、定常状態の放出サイクル(300秒のリーンと、10秒のリッチというサイクル3回、目標NOx暴露は1g)によって、1.6リットルのベンチを搭載したディーゼルエンジンを用いて行った。排出は、触媒の前と後で測定した。
【0170】
触媒のNOx吸蔵性能は、NOx変換を温度の関数として測定することにより、評価した。代表的な1つのサイクルからの結果を、以下の表7に示す。
【0171】
【0172】
表7における上記結果から分かるように、第一の層が希土類含有成分(すなわちCeO2-La)を含む触媒3は、従来のバリウム含有触媒である触媒2よりも著しく低い温度(すなわち、250℃未満)で、NOx変換性能を示す。