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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】自己励磁の電磁脱着アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 11/10 20060101AFI20230428BHJP
   F16D 27/115 20060101ALI20230428BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
F16D11/10 A
F16D27/115 Z
F16D48/06 101B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019566051
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018018946
(87)【国際公開番号】W WO2018156576
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/461,392
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518392026
【氏名又は名称】リナマー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】エコネン,トッド・アール
(72)【発明者】
【氏名】モンカバ,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ナンス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,マット
(72)【発明者】
【氏名】バービル,トッド
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187249(JP,A)
【文献】特開2000-046067(JP,A)
【文献】特開2017-007454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/10
F16D 27/00-28/00
F16D 48/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのシャフトを選択的に係合させたり切り離したりするための脱着システムであって、
入力シャフトと、
出力シャフトと、
第1のカム部材を有するカムスリーブ組立体であって、
前記第1のカム部材は、前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの一方に駆動可能に接続され、接続された前記入力シャフトまたは前記出力シャフトに対して軸方向に移動可能であるとともに接続された前記入力シャフトまたは前記出力シャフトと等しい速度で回転し、
前記第1のカム部材は、前記第1のカム部材の内径上に、前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの他方の外径上の第2スプライン歯に噛合するように構成された第1スプライン歯を備え、
前記第1のカム部材は、係合位置と切り離し位置とを有する双安定のカムプロフィールを備える第1カム機構を有する、
カムスリーブ組立体と、
前記第1のカム部材の前記第1カム機構と相互作用する第2カム機構を備えた、第2のカム部材であって、
前記第2のカム部材は、前記第1カム部材に駆動可能に接続されるとともに前記第1のカム部材に対して可変な速度で回転するように構成され、
前記第2カム機構が前記第1カム機構の前記係合位置または前記切り離し位置の一方と整列した状態で、前記第1のカム部材と前記第2のカム部材とが同一の速度で回転する場合、前記第1のカム部材は軸方向に変位せず、
前記第2のカム部材が前記第1のカム部材と異なる速度で回転し、前記第2カム機構が前記第1カム機構に対して回転している場合、前記第1のカム部材は、前記第2のカム部材によって軸方向に移動可能であり、前記第2カム機構は、前記係合位置または前記切り離し位置の他方と整列するように再配置される、
第2のカム部材と、
前記第2のカム部材に駆動可能に接続され、前記第1のカム部材に対する前記第2のカム部材の回転速度を変化させるように選択的に動作可能であり、前記第2カム機構を前記第1カム機構に対して選択的に回転させて前記第1のカム部材を前記係合位置と前記切り離し位置との間で軸方向に移動させる、少なくとも1つのクラッチと、
前記少なくとも1つのクラッチに駆動可能に接続され、前記少なくとも1つのクラッチを選択的に動作させて前記第2のカム部材の回転速度を変化させるコイルと
を備え、
前記第2カム機構が前記第1カム機構の前記係合位置と整列する場合、前記第1のカム部材は、前記係合位置へ再配置され、前記第1のカム部材上の前記第1スプライン歯を前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの他方上の前記第2スプライン歯に噛合させることにより、前記入力シャフトと前記出力シャフトとを結合して相互に回転させ、
前記第2カム機構が前記第1カム機構の前記切り離し位置と整列する場合、前記第1のカム部材は、前記第1のカム部材上の前記第1スプライン歯を前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの他方上の前記第2スプライン歯から切り離すことにより、前記出力シャフトを前記入力シャフトから切り離す、前記切り離し位置へ移動され、
前記コイルが選択的に励磁されたり励磁を断たれたりされ、前記コイルが前記少なくとも1つのクラッチを作動させ、前記少なくとも1つのクラッチが、前記第2のカム部材の回転運動を前記第1のカム部材の軸方向の運動に変換することを目的として、前記第1のカム部材を基準とした前記第2のカム部材の回転を選択的に係合させたり切り離したりし、前記第2のカム部材を基準とする前記第1のカム部材の回転が、前記出力シャフト及び前記入力シャフトを係合させたり切り離したりするように動作する、
脱着システム。
【請求項2】
前記コイルが電磁的に始動される、請求項1に記載の脱着システム。
【請求項3】
前記第1のカム部材と前記第2のカム部材とを共に付勢するための、前記第1カム部材及び前記第2のカム部材の少なくとも1つに動作可能に結合される付勢部材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の脱着システム。
【請求項4】
前記付勢部材がばねである、請求項3に記載の脱着システム。
【請求項5】
前記脱着システムが、前記脱着システムを少なくとも部分的に囲むハウジングをさらに備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載の脱着システム。
【請求項6】
前記コイルの選択的な励磁及び励磁の切断を制御するように構成される制御システムをさらに備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の脱着システム。
【請求項7】
前記出力シャフトがパワートレインユニットおよびアクスルのいずれか一方の出力装置である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の脱着システム
【請求項8】
前記第1のカム部材の前記軸方向の運動が戻り止め機構によって制御される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の脱着システム。
【請求項9】
前記戻り止め機構が、前記第1のカム部材と前記第2のカム部材との間の距離を横断する傾斜部を備える、請求項8に記載の脱着システム。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項の脱着システムを備える車両。
【請求項11】
2つのシャフトを選択的に係合させたり切り離したりするための脱着システムであって、
入力シャフトと、
出力シャフトと、
第1のカム部材を有するカムスリーブ組立体であって、
前記第1のカム部材は、前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの一方に駆動可能に接続され、接続された前記入力シャフトまたは前記出力シャフトに対して軸方向に移動可能であるとともに接続された前記入力シャフトまたは前記出力シャフトと等しい速度で回転し、
前記第1のカム部材は、前記第1のカム部材の内径上に、前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの他方の外径上の第2スプライン歯に噛合するように構成された第1スプライン歯を備え、
前記第1のカム部材は、係合位置と切り離し位置とを有する双安定のカムプロフィールを備える第1カム機構を有する、
カムスリーブ組立体と
前記第1のカム部材の前記第1カム機構と相互作用する第2カム機構を備えた、第2のカム部材であって、
前記第2のカム部材は、前記第1カム部材に駆動可能に接続されるとともに前記第1カム部材に対して可変な速度で回転するように構成され、
前記第2カム機構が前記第1カム機構の前記係合位置または前記切り離し位置の一方と整列した状態で、前記第1のカム部材と前記第2のカム部材とが同一の速度で回転する場合、前記第1のカム部材は軸方向に変位せず、
前記第2のカム部材が前記第1のカム部材と異なる速度で回転し、前記第2カム機構が前記第1カム機構に対して回転している場合、前記第1のカム部材は、前記第2のカム部材によって軸方向に移動可能であり、前記第2カム機構は、前記係合位置または前記切り離し位置の他方と整列するように再配置される、
第2のカム部材と、
前記第2のカム部材に駆動可能に接続され、前記第1のカム部材に対する前記第2のカム部材の回転速度を減少させるように選択的に動作可能であり、前記第2カム機構を前記第1カム機構に対して選択的に回転させて前記第1のカム部材を前記係合位置と前記切り離し位置との間で軸方向に移動させる、少なくとも1つのクラッチと、
前記少なくとも1つのクラッチに駆動可能に接続され、前記少なくとも1つのクラッチを選択的に動作させて前記第2のカム部材の回転速度を変化させる動力源であって、前記動力源が前記少なくとも1つのクラッチを作動させるとともに動作を停止させ、前記少なくとも1つのクラッチが、前記第1のカム部材を基準とした前記第2のカム部材の回転を選択的に係合させたり切り離したりして、前記第2のカム部材の回転運動を前記第1のカム部材の軸方向の運動に変換し、前記第2のカム部材を基準とする前記第1のカム部材の回転が、前記出力シャフト及び前記入力シャフトを係合させたり切り離したりするように動作する、動力源と
を備え、
前記第2カム機構が前記第1カム機構の前記係合位置と整列する場合、前記第1のカム部材は、前記係合位置へ再配置され、前記第1のカム部材上の前記第1スプライン歯を前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの他方上の前記第2スプライン歯に噛合させることにより、前記入力シャフトと前記出力シャフトとを結合して相互に回転させ、
前記第2カム機構が前記第1カム機構の前記切り離し位置と整列する場合、前記第1のカム部材は、前記第1のカム部材上の前記第1スプライン歯を前記入力シャフトまたは前記出力シャフトの他方上の前記第2スプライン歯から切り離すことにより、前記出力シャフトを前記入力シャフトから切り離す、前記切り離し位置へ移動される、
脱着システム。
【請求項12】
前記第1のカム部材と前記第2のカム部材とを共に付勢するための、前記第2のカム部材に動作可能に結合される付勢部材をさらに備える、請求項11に記載の脱着システム。
【請求項13】
前記第1のカム部材および前記第2のカム部材は、ボールカムおよびローラカムのうちの1つまたは複数である、請求項11または12に記載の脱着システム。
【請求項14】
記第1のカム部材および前記第2のカム部材の選択的な係合および切り離しを制御するように構成される制御システムをさらに備える、請求項11から13までのいずれか一項に記載の脱着システム。
【請求項15】
前記第1のカム部材の軸方向の運動が戻り止め機構によって制御される、請求項11から14までのいずれか一項に記載の脱着システム。
【請求項16】
請求項11から15までのいずれか一項に記載の脱着システムを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年2月21日に出願された米国仮特許出願第62/461,392号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本開示は、全輪駆動システムの構成要素を選択的に接続したり脱着したりするための脱着システムに関する。より詳細には、本開示は、1つまたは複数のカム部材と、全輪駆動システムの1つまたは複数の構成要素を選択的に係合させたり切り離したりするためのクラッチとを備える脱着システムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]全輪駆動(AWD:all-wheel drive)可能車両は、単一のアクスルのみに接続される動力伝達装置を備える車両に優る複数の利点を有する。具体的には、AWD可能車両は大きいトラクションを有する傾向を有し、単一のアクスルのみを使用して駆動される類似の車両に優る向上した運転性を有する傾向を有する。
【0004】
[0004]伝統的なAWD車両は、一般に、永久的に係合される前方駆動アクスルおよび後方駆動アクスルから構成され、ここでは、AWD動力伝達装置組立体の性能および恩恵が必要ない場合でも、第2の駆動アクスルおよび動力伝達装置の他の部分を含めた、AWD動力伝達装置組立体の特定の部品の連続的な回転が存在する。その結果、伝統的なAWS車両は、単一のアクスルのみを使用して駆動される車両と比較して、燃料を減少させ、全体の効率を低下させる傾向を有する。
【0005】
[0005]一部のAWD車両は、AWD脱着システムを組み込むことにより、これらの性能損失を低減する。AWD脱着システムは、AWD動力伝達装置組立体の主要な回転する動力伝達装置構成要素を脱着することにより、燃料を改善するように、およびAWD車両のための他の効率を改善するように、ならびにAWD動力伝達装置組立体の性能または恩恵を必要としない場合に車両をシングルドライブモード(single-drive mode)にするように、設計される。このような車両では、好適には、滑りやすい状態における車両の動作を改善することなどを目的として、AWD動力伝達装置組立体により可能性として性能利点が提供されるような場合にのみ、AWD動力伝達装置組立体が接続される。第2の駆動アクスルが脱着されると、第2の駆動アクスルにはトルクが伝達されない。その結果、第2の駆動アクスルおよび他の付随する動力伝達装置構成要素に関連する速度依存のロス(speed-dependent loss)が、それらをアイドル状態で維持するのを可能にすることにより、排除されることになる。
【0006】
[0006]車両が、脱着可能な動力伝達ユニット(PTU:power transfer unit)および後方動力伝達装置モジュールまたはユニット(RDM:rear driveline module/RDU:rear driveline unit)を有することができ、これらが、二輪駆動モードと四輪駆動モードとの間で車両の動作を切り換えるのを可能にする。二輪駆動モード中、RDMおよびPTUが脱着され得、それによりエネルギー損失を最小にし、より良好な燃料効率を実現する。
【0007】
[0007]副次的な動力伝達装置脱着システムがまた、副次的な動力伝達装置の係合および切り離しを実施することを目的として、通常はモータまたはカム駆動モータ(cam-driven motor)である、シフトスリーブを使用することができるか、あるいは電磁アクチュエータを利用することができる。通常、脱着システムが、脱着システムに動力供給するために、モータなどの外部動力源を使用する。このようなシステムのためのモータが、しばしば、高電流(30アンペアから40アンペアのオーダー)を必要とし、しばしば高価で複雑なものである。その理由は、脱着システムのための動力源が構成要素の残りの部分と同じ軸上にはない傾向を有するからである。さらに、このようなシステムはしばしば、脱着システムにさらに係合されるシフト機構にモータからの動力を伝達する必要があることを理由として、低速の応答時間を有する。既存のシステムのさらなる問題が、下記の、例示の実施形態の詳細な説明を考察することにより認識され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]電磁コイルまたは他の動力源と、クラッチと、1つまたは複数のカム部材とを備える脱着システムが開示される。電磁コイルまたは動力源がクラッチを作動させ、クラッチがさらに、AWDシステム内の構成要素の出力装置を脱着するために1つまたは複数のカム部材に選択的に係合される。脱着システムが車両からの動力を使用することができ、その結果、構成要素を脱着するのに外部動力源が必要なくなる。コイルおよびクラッチがカム部材のうちの1つのカムに選択的に係合されて保持するように構成され、動力伝達装置の他の構成要素からの動力が、コイルに係合されたカム部材を基準として脱着システムの残りの構成要素を回転させるのに使用される。
【0009】
[0009]広い一態様では、1つまたは複数のシャフトを選択的に係合させたり切り離したりするための脱着システムが開示される。脱着システムが、入力シャフトと、入力シャフトと等しい速度で回転するように構成される、入力シャフトに駆動可能に接続される少なくとも1つの第1のカム部材と、可変速度で回転するように構成される、少なくとも1つの第1のカム部材に駆動可能に接続される少なくとも1つ第2のカム部材と、入力シャフトおよび少なくとも1つの第2のカム部材に駆動可能に接続される少なくとも1つのクラッチと、を有する。システムが、少なくとも1つの第2のカム部材に駆動可能に接続される出力シャフトと、少なくとも1つの第2のカム部材に駆動可能に接続されるコイルとをさらに有し、ここではコイルが駆動シャフトの回転により選択的に励磁されたり動力源を断たれたりされ、コイルがクラッチを作動させ、クラッチが、少なくとも1つの第2のカム部材の回転運動を軸方向の運動に変換することを目的として、少なくとも1つの第1のカム部材を基準とした少なくとも1つの第2のカム部材の回転を選択的に係合させたり切り離したりし、入力シャフトが少なくとも第2のカム部材を基準として少なくとも1つの第1のカム部材を回転させ、それにより出力シャフトを係合させたり切り離したりする。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、コイルが電気機械的に始動される。いくつかの実施形態では、脱着システムが、クラッチに選択的に係合されるためにクラッチに動作可能に結合される付勢部材をさらに有する。いくつかの実施形態では、付勢部材がばねである。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、脱着システムが、脱着システムを少なくとも部分的に囲むハウジングを有することができる。
[0012]いくつかの実施形態では、脱着システムが、コイルの選択的な係合および切り離しを制御するように構成される制御システムを有する。
【0012】
[0013]いくつかの実施形態では、出力シャフトがパワートレインまたはアクスルの出力装置であり、いくつかの実施形態では、第2のカム部材の軸方向の運動が戻り止め機構によって制御され、いくつかの実施形態では、戻り止め機構が、第1および第2のカム部材の間の距離を横断する傾斜部を有する。
【0013】
[0014]いくつかの実施形態では、脱着システムが車両内で具現化され得る。
[0015]別の広い態様では、1つまたは複数のシャフトを選択的に係合させたり切り離したりするための脱着システムが開示される。脱着システムが、入力シャフトと、入力シャフトと等しい速度で回転するように構成される、入力シャフトに駆動可能に接続される少なくとも1つの第1のカム部材と、可変速度で回転するように構成される、少なくとも1つの第1のカム部材に駆動可能に接続される少なくとも1つ第2のカム部材と、を有する。脱着システムが、入力シャフトおよび少なくとも1つの第2のカム部材に駆動可能に接続される少なくとも1つのクラッチと、少なくとも1つの第2のカム部材に駆動可能に接続される出力シャフトと、少なくとも1つの第2のカム部材に駆動可能に接続される動力源と、をさらに有し、ここでは、動力源がクラッチを作動させ、クラッチが、少なくとも1つの第1のカム部材を基準とした少なくとも1つの第2のカム部材の回転を選択的に係合させたり切り離したりして、それにより少なくとも1つの第2のカム部材の回転運動を軸方向の運動に変換し、入力シャフトが少なくとも第2のカム部材を基準として少なくとも1つの第1のカム部材を回転させ、それにより出力シャフトを係合させたり切り離したりする。
【0014】
[0016]いくつかの実施形態では、脱着システムが、クラッチに選択的に係合されるためのクラッチに動作可能に結合される付勢部材をさらに有する。いくつかの実施形態では、付勢部材がばねである。
【0015】
[0017]いくつかの実施形態では、第1および第2のカム部材が、ボールカムおよびローラカムのうちの1つまたは複数である。
[0018]いくつかの実施形態では、脱着システムが、1つまたは複数の第1および第2のカム部材の選択的な係合および切り離しを制御するように構成される制御システムを有する。
【0016】
[0019]いくつかの実施形態では、出力シャフトがパワートレインまたはアクスルの出力装置であり、いくつかの実施形態では、第2のカム部材の軸方向の運動が戻り止め機構によって制御される。
【0017】
[0020]いくつかの実施形態では、脱着システムが車両内で具現化される。
[0021]添付図面に関連させて考察して以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解され得ることから、本開示の利点が容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0022]本開示の実施形態による脱着組立体を有する車両動力伝達装置組立体を示す図である。
図2A】[0023]第1の切り離し位置にある本開示の実施形態による脱着システムを示す断面図である。
図2B】[0024]第2の係合位置にある、本開示の実施形態による脱着システムを示す断面図である。
図3】[0025]本開示の実施形態による脱着システムを示す分解図である。
図4】[0026]図3の組み立てられた脱着システムを示す図である。
図5A】[0027]本開示の別の実施形態による、脱着システムを示す分解図である。
図5B】[0028]図5Aの脱着システムを示す別の分解図である。
図5C】[0029]図5Aの脱着システムの一部分を示す組立図である。
図6A】[0030]図5Aの脱着システムを示す断面図である。
図6B】[0031]第1の係合位置にある、図5Aの脱着システムを示す断面図である。
図6C】[0032]第2の切り離し位置にある、図5Aの脱着システムを示す断面図である。
図6D】[0033]本開示の別の例示の実施形態による脱着システムを示す断面図である。
図7】[0034]図7Aは、本開示の脱着システムで使用され得る例示のカム部材を示す図である。図7Bは、本開示の脱着システムで使用され得る例示のカム部材を示す図である。図7Cは、本開示の脱着システムで使用され得る例示のカム部材を示す図である。
図8】[0035]図8Aは、第1の切り離し位置にある、本開示の別の実施形態による脱着システムを示す断面図である。[0036]図8Bは、第2の切り離し位置にある、本開示の別の実施形態による脱着システムを示す断面図である。
図9A】[0037]係合位置(右側)および切り離し位置(左側)にある図8Aの脱着システムの動作を示す図である。
図9B】[0038]図9Aの脱着システムの特性を示すグラフである。
図10】[0039]図10Aは、第1の切り離し位置にある、本開示の別の実施形態による脱着システムを示す断面図である。[0040]図10Bは、第2の切り離し位置にある、本開示の別の実施形態による脱着システムを示す断面図である。
図11】[0041]図11Aは、第1の切り離し位置にある、本開示の別の実施形態による脱着システムを示す断面図である。[0042]図11Bは、第2の係合位置にある、本開示の別の実施形態による脱着システムを示す断面図である。
図12】[0043]係合位置(右側)および切り離し位置(左側)にある図11Aおよび11Bの脱着システムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0044]同様の構成要素を示すのに、異なる図において同様の参照符号が使用されてよい。
[0045]本開示は、車両の動力伝達装置内に位置する脱着システムを対象とする。具体的には、本開示は、限定しないが動力伝達装置ユニット(PTU:powertrain unit)またはアクスルを含めたAWDシステム内の構成要素の出力装置を接続したり脱着したりするためのいくつかの実施形態において自己励磁電磁コイルまたは動力源であってよいコンパクトな脱着システムを対象とする。システムが、クラッチと、1つまたは複数のカム部材を備えるカムシステムとをさらに有する。一実施形態によると、入力シャフトの回転によって発生される一時的な低レベル電流が電磁クラッチカムシステムを作動させるのに使用され、それにより、入力シャフトの動力伝達装置の回転をカム部材のうちの少なくとも1つのカム部材の軸方向(線形)のモーションに変換し、それにより入力シャフトを出力シャフトに係合させたり入力シャフトを出力シャフトから切り離したりする。入力シャフトがAWDシステムのリアホイールに接続され得、したがって車両の全輪の構成要素を係合させたり切り離したりする。
【0020】
[0046]図1が、車両の第1のつまり主要なセットのホイール12および第2のつまり副次的なセットのホイール14にトルクを伝達するための全輪駆動機能を有する例示の車両動力伝達装置組立体10を示す。動力伝達装置組立体10が、主要なつまり前方動力伝達装置16および副次的なつまり後方動力伝達装置18を有する。前方動力伝達装置16が、複数の構成要素の中でもとりわけ、エンジン20と、トランスミッション22と、動力伝達装置ユニット24(PTU:power train unit)とを有する。PTU24が、本明細書で説明されるように副次的な駆動ユニットを選択的に係合させたり切り離したりすることを目的として、リアホイール14および本開示の実施形態による脱着システム32を駆動するために、副次的な駆動ユニットにおよび具体的には後方駆動ユニットまたはモジュール30(RDU:rear drive unit/RDM:rear drive module)にプロペラシャフト28を通してトルクを伝えるための出力装置26を有する。制御装置(図示せず)が前方動力伝達装置16および後方動力伝達装置18の中の構成要素に連通され得、さらに車両全体に位置する1つまたは複数のセンサに連通され得る。
【0021】
[0047]脱着システム32の断面図が図2Aおよび2Bに示される。図2Aおよび2Bに示される実施形態では、脱着システム32が、AWD脱着システムのPTU24の出力装置26を接続したり脱着したりするのに使用される自己励磁のコンパクトな脱着アクチュエータである。
【0022】
[0048]図2から4を参照すると、脱着システム32が、電磁コイル36を含めた、脱着システム32の構成要素のうちの1つまたは複数の構成要素を受けて収容するハウジング34を有し、ハウジング34が脱着システム32を車両に設置するのを容易にすることができる。少なくとも一部の例示の実施形態では、脱着システム32がPTU24などのPTU内に位置する。
【0023】
[0049]コイル36が選択的に励磁され、それにより脱着システム32の1つまたは複数の構成要素を係合させたり切り離したりする。コイル組立体が複数の巻線またはスプール(図6Dに示されるスプール63など)を備えることができ、1つまたは複数のコイルワイヤ(図6Dに示されるコイルワイヤ64など)、およびコイル36の構成要素を保護するためのコイルポッティング72(図6D)をさらに有することができる。脱着システム32がパイロットクラッチ38を有し、パイロットクラッチ38が1つまたは複数の内側プレート39および外側プレート41を備えることができ、アーマチュア37内に収容され得る。脱着システム32が1つまたは複数のカム部材40、42をさらに有し、カム部材40、42がシフトスリーブ組立体54内に収容され得る。パイロットクラッチ38の内側プレート39がクラッチカム部材40のスプラインに合わせられ、クラッチカムクラッチ40がいくつかの実施形態では回転クラッチカムであってよい。パイロットクラッチ38の外側プレート41がハウジング34のスプラインに合わせられる。クラッチの入ったカム部材(下側カム)40がカムスリーブ組立体(上側カム)42の面上のカムプロフィールに接触する。動作中、カムスリーブ組立体42に接続されているときのクラッチカム40の回転を制動(または停止)することで、カムスリーブ組立体42の回転モーションがカムスリーブ組立体42の軸方向(線形)のモーションへと変換される。カムスリーブ組立体42が出力シャフト46に動作可能に接続され、出力シャフト46と共に回転するが、出力シャフト46を基準として軸方向に運動するように構成される。カムスリーブ組立体42が、カムスリーブ組立体42の内径上にスプライン歯(図7Bに示される歯76など)を有し、入力シャフト48上に同様の歯形を有する外径スプライン歯と対合し、入力シャフト48がカムスリーブ組立体42に動作可能に接続される。
【0024】
[0050]カムスリーブ組立体42が付勢部材44に接続され、付勢部材44がいくつかの実施形態ではばねであってよい。同様の付勢作用を提供する他の付勢手段が使用されてもよいことを理解されたい。カムスリーブ組立体42が軸方向に移動するときに付勢部材44が圧縮される。脱着システム32がセンサ50をさらに有し、センサ50がいくつかの実施形態ではホール効果トランスデューサまたは線形位置トランスデューサであってよい。センサ50が、カムスリーブ組立体42の位置および脱着システム32の係合状態または切り離し状態を監視する、制御ユニット(図示せず)の一部分であり、図3に示されるセンサリング51などのセンサリング内に収容され得る。制御ユニットが、上側カムが接続されているかまたは脱着されているかのいずれかを監視および決定することを含めて車両の全輪駆動組立体の接続状態を決定するための制御装置を有することができる。制御装置が、メモリと、無線通信サブシステムと、脱着システムを係合させるかまたは切り離すための、車両操作者によるコマンド、制御装置から受信されるデータ、または少なくとも1つのセンサ50から受信されるデータ(駆動環境の外部条件に関するデータなど)、あるいはその組み合わせ、に応答して一連の命令を実行するように構成されるプロセッサと、を含めた複数の構成要素を有することができる。電磁コイル36が制御ユニットに連通され、制御ユニットが、電磁コイル36の動作を制御する命令を実行するように構成される。脱着システム32が、種々の構成要素の間での回転を可能にするために脱着システム32の構成要素のうちの1つまたは複数の構成要素に接触する、1つまたは複数のスラスト軸受52と、1つまたは複数のスラストワッシャ53とをさらに有する。いくつかの実施形態では、スラストワッシャ53が付勢部材44のためのバッキングプレートとして機能する。
【0025】
[0051]動作中、脱着システム32が、入力シャフト48からカムスリーブ組立体42が切り離されている2Bに示される切り離し状態から、入力シャフト48に対してカムスリーブ組立体42が係合されている係合位置まで、移動するように構成される。
【0026】
[0052]PTU24が切り離されている接続状態では(図2Aに示される)が、電磁コイル36が、入力シャフト48または出力シャフト46のうちの1つまたは複数のシャフトの回転作用により励磁される。励磁状態では、パイロットクラッチ38の内側プレートおよび外側プレートが一体に付勢され、それにより内側プレートと外側プレートとの間に抗力を発生させる。車両の動作中、前方動力伝達装置16および後方動力伝達装置18ならびにトランスミッション42を含んでよい動力伝達装置の残りの部分を通して出力シャフト46が接続されていることにより、出力シャフト46が回転する。クラッチの入ったカム部材40がカムスリーブ組立体42に接続され、カムスリーブ組立体42自体が出力シャフト46に接続される。したがって、クラッチの入ったカム部材40が出力シャフト46に駆動可能に接続され、出力シャフト46と等しい速度で回転する。クラッチカム40が、パイロットクラッチ38を介することを除いて、脱着システム32の回転する構成要素には一切接続されない。パイロットクラッチ38の内側プレートおよび外側プレートの運動によりパイロットクラッチ38内に抗力が発生すると、クラッチカム40の回転速度が低下し、それによりカムスリーブ組立体42に対してクラッチカム40が相対的に回転するようになる。カム組立体42を基準としてクラッチの入ったカム部材40の回転が低速となることにより、カム組立体42が軸方向に移動し、それにより付勢部材44を一方向に付勢し(圧縮する)、それにより出力シャフト46を入力シャフト48から切り離す。
【0027】
[0053]次のステップ(図2Bに示される)で、入力シャフト46および出力シャフト48が接続される。PTU24を接続するために、RDM30内の調整クラッチ(modulating clutch)が作動され、それにより動力伝達装置の脱着部分を同期させ、入力シャフト48の速度に適合させる。この同期中、PTU24内の出力シャフト48が回転してこの速度に達する。本明細書で説明されるように電磁コイル36が励磁され、それによりパイロットクラッチ38の内側プレートおよび外側プレートが互いの方に移動する。この作用によりパイロットクラッチ38の表面全体に抗力が発生する。パイロットクラッチ38内に抗力が発生すると、クラッチカム40の回転の速度が低下し、それによりカムスリーブ組立体42に対してのクラッチカム40が相対的に回転するようになる。カムスリーブ組立体42を基準としたクラッチカム部材40の回転の違いにより、カムスリーブ組立体42が軸方向に移動し、それにより、圧縮された付勢部材44を軸方向の第2の方向に付勢し(解放し)、それにより出力シャフト46を入力シャフト48に係合させる。
【0028】
[0054]図3および4が脱着システム32の分解図および組立図をそれぞれ示している。見られ得るように、脱着システムがコンパクトであり、同軸である。見られ得るように、脱着システム32が、外部モータまたは他の動力源を必要とすることなく車両動力または慣性を利用して車両の1つまたは複数のシャフトを係合させ、それにより、システムのコスト、複雑さ、および表面積が低減される。表面積が低減されることで、システムの応答時間を70ミリ秒未満まで短縮することができ、さらにそれにより、車両の速度が増大してカム40、42のうちの1つまたは複数のカムの回転が増大するときのスピンロスが低減される。シフティングを取り扱うカムスリーブ組立体42が高速でこのシフトを行うことができる。したがって、車両の速度が増すと、脱着システム32がより迅速に係合されたり切り離されたりされ得るようになる。さらに、動力源のための別個の平行な軸が存在しないことを理由として、およびシフトフォークが排除されることを理由として、システムの内部が同軸となり、それによりパッケージのスペースが低減される。また、システムは、PMギアおよび傾斜部を利用することで、精密な公差のアクメねじを必要としない。
【0029】
[0055]別の利点には、車両駆動シャフトからの動力を再利用することを理由としておよび全輪駆動システムを接続したり脱着したりするのにコイルを使用することを理由として、このシステムでは消費電力が低減される(ミリ秒のインターバルで3アンペアから4アンペアのオーダー)、ということが含まれる。システムが、中間的な係合位置を有することなく、係合位置または切り離し位置のいずれかを有する。その結果、作動プロセス中の動力損失によりカム部材40、42が係合位置または切り離し位置のいずれかを初期状態に設定し、ここではデテント位置74などのデテント位置がカム40、42を係合位置または切り離し位置のいずれかで保持し、ここでは脱着構成要素を特定の状態で保持するためのモータブレーキまたは電流が必要ない。クラッチ38を使用することで、トルクによる捕捉の問題(torque trap issue)が軽減され、デルタシフト(delta shift)中の耐久性が向上する。少なくとも一部の実施形態では、脱着システム32が、シャフトの係合および接続を強化するためのバックテーパ状の歯をクラッチ38上で使用することができる。これらのおよび他の利点は、本開示の追加の実施形態にも適用可能である。
【0030】
[0056]次に図5から7を参照すると、脱着システム32の別の実施形態が開示されている。図5から7に示される実施形態が、図2Aに示される特徴または機能的に等しい特徴を有する。等しい特徴または非常に類似する特徴を示すのに等しい参照符号が使用される。図5Bに見られるように、脱着システム32が、トランスミッション22の一部であってよい、1つまたは複数のはすば歯車58および保持リング60をさらに有する。
【0031】
[0057]図6Aおよび6Dが、本発明の別の実施形態による脱着システム32の断面図を示す。脱着システム32が、入力シャフト46に動作可能に接続され得るトランスミッション入力装置56を有する。システム32が、車両のリアホイールに接続される出力(または、被駆動)シャフトをさらに有する。入力シャフト48および出力シャフト46が互いに永久的には接続されないことから、連結部が入力シャフト48と出力シャフト46との間に配置され得る。いくつかの実施形態ではカムスリーブ組立体42と機能的に等しい上側カム42が、いくつかの実施形態では1つまたは複数の機能を果たすことができるスプラインカムである。少なくともいくつかの例示の実施形態では、上側カム42が係合されて上側カム42が入力シャフト48および被駆動シャフト46を結合させるときに、上側カム42が入力シャフト48および出力シャフト46をつないでいる。いくつかの実施形態では、上側カム42が1つまたは複数のコネクタ66(図6Dに示される)により入力シャフト48に接続される。動作中、これにより、上側カム42が、係合位置および切り離し位置の両方を有する双安定のプロフィールを有するようになる。図6Aに示される実施形態では、シャフト46、48の両方が固定され、上側カム42に係合されることにより動作可能に接続されることを除いて互いに独立して動作する。
【0032】
[0058]上側カム42が、下側カム40にインターフェース接続されるカム部材上に位置するカム機能をさらに有することができ、このカム機能がいくつかの実施形態ではクラッチの入ったカム部材42と機能的に等しい。上側カム部材42および下側カム部材40が互いに静止しているが、入力シャフト48と共に回転する。
【0033】
[0059]上側カム42が軸方向に移動して出力シャフト46に係合されるとき、係合または切り離しが行われる。カムプロフィールが上側カム42の軸方向の運動を駆動し、カム部材42および40の相対的な回転がカム組立体の全体の運動を駆動する。
【0034】
[0060]脱着システム32が、上述したものと等しいクラッチ機能を果たす内側クラッチプレート39および外側クラッチプレート41を備えるパイロットクラッチ38と、アーマチュア37とをさらに有する。図6Aに示される実施形態では、脱着システム32が、コイル36の少なくとも一部分を収容することができるコイルハウジング55を有する。いくつかの実施形態では、脱着システム32が、コイル36の種々の構成要素を接続するコイルコネクタサブ組立体62(図6D)をさらに有することができる。
【0035】
[0061]動作中、上側カム42が入力シャフト48と等しい速度で回転する。下側カム40が可変速度で回転する。下側カム40が、上側カム40の係合中および切り離し中を除いて、入力シャフト46と等しい速度で回転する。回転から軸方向の運動へのこのシフトを容易にするためには、カム部材42、40の相対的な回転が必要である。下側カム40に選択的に係合されるために電磁コイル36によって作動されるパイロットクラッチ38により、下側カム40の回転の速度が低下させられる。下側カム40に対してのクラッチ38による下側カム40の選択的な係合が、下側カム40の回転を低下させる。次いで、下側カム40の回転運動が軸方向の運動へと変換され、この軸方向の運動が、入力シャフト48との組み合わせで、下側カム40を基準として上側カム42を回転させ、それにより入力シャフト48および出力シャフト46を係合させたり切り離したりし、それによりADW組立体を選択的に接続したり脱着したりする。いくつかの実施形態では、電磁コイル36がカム部材40、42のうちの一方を直接に選択的に係合させたり切り離したりするためのパイロットクラッチとして動作し、それによりカム部材40、42の回転運動を軸方向の運動へと変換する。
【0036】
[0062]図6Bに示される係合位置では、上側カム42が入力シャフト48および出力シャフト46の両方のスプラインに合わせられ、入力シャフト48および被駆動シャフト46をつなぎ、それにより例えばフロントホイール12およびリアホイール14などの車両のフロントホイールおよびリアホイールに動力供給する。いくつかの実施形態では、これにより全輪駆動動作となる。図6Bに示される係合位置では、上側カム42が入力シャフトおよび主要な被駆動シャフトの両方のスプラインに合わせられ、それによりカム40、42の両方が等しい速度で動作する。
【0037】
[0063]図6Cに示される切り離し位置では、上側カム42が入力シャフト48および被駆動シャフト46から脱着され、それにより入力シャフト48と被駆動シャフト46との間の接続を切断し、全輪駆動を脱着する。いくつかの実施形態では、全輪駆動システムの脱着時に入力シャフト48がリアホイール14に接続され得、後輪駆動となる。切り離し位置では、上側カム42のスプラインが出力シャフト46から切り離され、それによりクラッチが下側カムに係合され、それにより下側カム40の回転速度を低下させる。
【0038】
[0064]動作中、図6Cに示される切り離し状態では、コイル36がクラッチプレート39、41のうちの1つまたは複数のクラッチプレートに接触することによりクラッチ38に係合され、下側カム40の回転を制動する。この作用により、上側カム42および下側カム40から構成されるシフトスリーブ組立体54が付勢部材(ばね)44の方に付勢され、付勢部材44が上述した手法と同様の手法で車両からエネルギーをチャージされ、付勢部材44が上側カム42に係合されることにより出力シャフト46を入力シャフト48から切り離す。少なくともいくつかの実施形態では、車両からのエネルギーが入力シャフト48からの回転エネルギーの形態である。図6Bに示される、次の係合サイクルで、コイル36が再び作動され、それにより付勢部材44が解放され、上側カム42に係合される。次いで、上側カム42が入力シャフト48および出力シャフト46をつなぎ、それにより入力シャフト448および出力シャフト46を係合する。
【0039】
[0065]係合位置から切り離し位置まで移動するためには、上側カム42が傾斜部分を横断しなければならない。これが上側カム42のための作り付けのデテントを提供し、上側カム42が傾斜部を横断するためには、上側カム42と下側カム40との間の物理的なバリアに打ち勝つためのトルクが必要となる。
【0040】
[0066]図5Cは脱着システム32の組立図であり、上側カム42およびスラストワッシャ53が、下側カム40および上側カム42の中心を通って延びる入力シャフト48のスプラインに合わされているのをより明瞭に示している。上側カム42およびスラストワッシャが、スプラインを有して固定される接続部を介することを含めた多数の手法で入力シャフト48のスプラインに合わされ得る。図3に示されるように、下側カム40が、入力シャフト48に対しての内径パイロット接続部と、パイロットクラッチ38の内側クラッチプレート39に対しての外径スプライン接続部とを有する。したがって、下側カム40およびパイロットクラッチ38が入力シャフト48のスプラインに合わされないが、代わりに入力シャフト48まで誘導される。動作中、入力シャフト48が脱着システム32の構成要素の回転を駆動する。入力シャフト48による電磁コイル36の励磁が、クラッチプレート39、41の間に抗力を発生させるか、またはパイロットクラッチ38により上側カム42が付勢部材44を圧縮してそれにより本明細書で説明されるように出力シャフト46を入力シャフト48から切り離す。クラッチプレート39、41のうちの1つまたは複数のクラッチプレートが固定されてハウジング34を脱着する。上述したように次いでコイルを励磁することにより上側カム42が同様に一定量だけ回転させられ、それにより付勢部材44を解放し、入力シャフト48および出力シャフト46が係合される。
【0041】
[0067]本明細書で説明されるように、この実施形態では、脱着システム32が、図2Aに示されるセンサ50などのセンサを有する。センサ50が、同様に、上側カム42が接続されているかまたは脱着されているかを決定するために上側カム42の位置を監視する制御システム(図示せず)の一部分であってよい。上側カム42上の位置センサ50が、コイル36が励磁されるかどうかを制御するのにおよび上側カム42の係合の継続時間を制御するのに使用される。制御システムが、全輪駆動組立体の接続状態を決定するための制御装置(図示せず)を有することができる。制御装置が、メモリと、無線通信サブシステムと、駆動環境の外部条件に応答して車両の全輪駆動組立体の全輪駆動状態を接続したり脱着したりするように構成されるプロセッサと、を含めた複数の構成要素を有することができる。
【0042】
[0068]次に図7Aから7Cを参照すると、上側カム42および下側カム40の図が開示されている。上側カム42および下側カム40が約4.5mmの軸方向の運動を行うように設計される。係合プロフィール(例えば、係合プロフィールの例が図9Aに示される)が、迅速なシフトのための急斜面である。切り離しプロフィールは、迅速な切り離しを必要しないことを理由として、緩やかな傾斜である。いくつかの実施形態では、上側カム42および下側カム40を一体に保持することを目的としてならびにカム部材42、40のうちの1つまたは複数のカム部材のモーションを防止することを目的として、正方向の荷重構成(positive load configuration)のために、デテントがカム部材の頂部のところに含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるように、作り付けのデテントが1つまたは複数のカム部材のモーションを制御するのに使用され得る。
【0043】
[0069]次に図8Aおよび8Bを参照すると、脱着システム80の別の実施形態の断面図が開示されている。図9Aに見られるように、この実施形態では、車両のモーションがボールランプを回転させ、それにより1つまたは複数のシャフトを係合させたりまたは切り離したりする。PTU24などのPTU内に位置する、脱着システム80が、AWD脱着システムのPTU24などのPTUの出力装置を接続したり脱着したりするのに使用される自己励磁コイル82を備える。
【0044】
[0070]パイロットクラッチ81の内側プレート(この実施形態では図示されないが、内側プレート39に類似してよい)が、カムスリーブ組立体(上側カム)42と同様の機能を果たす回転カム84に接続される。パイロットクラッチ81の外側プレート(この実施形態では図示されないが、外側プレート41に類似してよい)が、パイロットドラム99の端部に接続される。パイロットドラム99の第2の端部がアクチュエータスライド86に接続されてアクチュエータスライド86と共に回転するが、アクチュエータスライド86と共に軸方向には移動しない。アクチュエータスライド86が、クラッチの入ったカムおよび下側カム40と同様の機能を果たす。面上にボールまたはローラを有することができる回転カム84がアクチュエータスライド86の面上のカムプロフィールに接触する。アクチュエータスライド86に接続される回転カム84が、回転カム84の回転モーションをアクチュエータスライド86の軸方向のモーションへと変換する。同様に、アクチュエータスライド86が、アクチュエータスライド86が軸方向に移動するときに圧縮されるばね94などの付勢部材に接続される。また、アクチュエータスライド86がハウジング98を基準として回転しないように固定されるが、ハウジング98に対して摺動するように構成される。クラッチスライド90がアクチュエータスライド86に接続され、アクチュエータスライド86と共に軸方向に運動するが、アクチュエータスライド86を基準として自由に回転することが可能である。クラッチスライド90がメインシャフト92(入力シャフト48と同様の機能を果たす)に接続され、メインシャフト92と共に回転するが、メインシャフト92を基準として軸方向に運動することが可能である。クラッチスライド90が面上にギア歯(図示されないが、歯76に類似してよい)を有するが、トランスミッション出力装置97上の同様の歯形と対合する。少なくとも一部の例示の実施形態では、脱着システム80が線形位置トランスデューサ96をさらに有し、いくつかの実施形態では、線形位置トランスデューサが、メインシャフト92の回転モーションをコイル82に動力供給するための対応する電気信号へと変換する線形可変差動変圧器(LVDT:linear variable differential transformer)であってよい。トランスデューサ96がアクチュエータスライド86上の傾斜機能に接触する(図9Aを参照されたい)。傾斜のプロフィールと、コイル電流と、デルタ速度(delta speed)と、アクチュエータスライド86の位置とを示すグラフが図9Bに示されている。
【0045】
[0071]動作中、メインシャフト92を出力装置97から脱着するために、コイル82が励磁され、パイロットクラッチ81の内側プレートおよび外側プレートが一体に付勢され、それにより内側プレートと外側プレートとの間に抗力を発生させる。車両の動作中、メインシャフト92が、動力伝達装置およびトラスミッションの残りの部分を通して接続されていることから、回転する。パイロットドラム99がアクチュエータスライド86に接続され、アクチュエータスライド86がメインシャフト92に接続され、その結果、パイロットドラム99がメインシャフト92と等しい速度で回転する。回転カム84が、パイロットクラッチ81を通して接続されることを除いて、回転構成要素には一切接続されない。パイロットクラッチ81内に抗力が発生すると、パイロットドラムからの回転が回転カム84に伝達され、それにより回転カム84がアクチュエータスライド86に逆らって回転する。カム84の回転がアクチュエータスライド86を軸方向に移動させ、それによりばね94が圧縮され、さらにメインシャフト92が出力シャフト97から切り離される。
【0046】
[0072]PTU24を接続するために(つまり、メインシャフト92を出力装置97に接続するために)、RDM30内の調整クラッチ(図示せず)が作動され、それにより動力伝達装置の脱着部分を同期させ(前方動力伝達装置16または後方動力伝達装置18のいずれか)、それによりトラスミッション出力装置97の速度に適合させる。この同期中、PTU24内のメインシャフト92が回転してこの速度に達する。コイル82が励磁され、パイロットクラッチ81の内側プレートおよび外側プレートが一体にパイロットクラッチ81を跨る抗力を発生させる。パイロットドラム99がクラッチスライド90に接続され、クラッチスライド90がメインシャフト92と共に回転する。パイロットドラム99の回転がパイロットクラッチ81を跨るようにして伝達され、回転カム84を回転させる。回転カム84が回転すると、アクチュエータスライド86上の対合するカム面が鋭利な移行部分に到達し、それによりばね94からのばねエネルギーを解放し、アクチュエータスライド86をトランスミッション出力装置97の方に移動させ、シャフト92、97の面上のギア歯を通してメインシャフト92および出力シャフト97を接続する。
【0047】
[0073]少なくとも一部の実施形態では、脱着システムが、入力シャフトおよび出力シャフトを係合させたりまたは切り離したりするために、1つまたは複数のカム上に配置されるボールまたはローラを使用することができる。図12に見られるように、この実施形態では、車両のモーションがボールランプを回転させ、それにより1つまたは複数のシャフトを係合させたりまたは切り離したりする。図10から12を参照すると、脱着システム100の別の実施形態が開示されている。脱着システム100が同様にPTU24などのPTU内に位置してよく、AWD脱着システムのPTU24の出力装置26などの出力装置を接続したり脱着したりするのに使用される。
【0048】
[0074]図10Aから11Bに示される実施形態では、脱着システム100が、メインシャフト104を駆動することができるモータ102によって動力供給される。モータ102が駆動ギア106に接続され、駆動ギア106が一定のギア比で回転カム108に接続される。回転カム108が外周上のギア機能を収容し、駆動ギア106に噛合される。回転カム108の面上にボール(図10Aおよび10B)またはローラ(図11Aおよび11B)を有することができる回転カム108が、アクチュエータスライド110の面上のカムプロフィールに接触する。回転カム108がアクチュエータスライド110に接続され、回転カム108の回転モーションをアクチュエータスライド110の軸方向のモーションへと変換する。アクチュエータスライド110が、付勢部材(ばね)112に接続され、アクチュエータスライド110が軸方向に移動するときに圧縮される。また、アクチュエータスライド110がハウジング114に対してのスプラインを有する接続部により回転しないように固定されるが、ハウジング114を基準として軸方向に移動することが可能である。クラッチスライド116がアクチュエータスライド110に接続され、アクチュエータスライド110と共に軸方向に移動するが、アクチュエータスライド110を基準として自由に回転することが可能である。クラッチスライド116がメインシャフト104に接続され、メインシャフト104と共に回転するが、メインシャフト104を基準として軸方向に移動することが可能である。クラッチスライド116が面上にギア歯を有し、トランスミッション出力装置118上の同様の歯形と対合する。脱着システム100が、トランスデューサ96と同様の線形位置トランスデューサ118をさらに有し、線形位置トランスデューサ118がアクチュエータスライド110上の傾斜機能に接触する。
【0049】
[0075]他の実施形態と同様に、接続状態において、モータ102が回転すると、回転カム108が駆動ギア106とのその接続を介して回転させられる。回転カム108が、アクチュエータスライド110に接触した状態で、その回転モーションを、アクチュエータスライド110のカムプロフィールに従ってアクチュエータスライド110の軸方向のモーションへと変換する。アクチュエータスライド110が軸方向に移動すると、アクチュエータスライド110のカムプロフィールがデテント位置に入るまで、ばね112または同様の付勢部材が圧縮する。この位置では、ばね112が完全に圧縮される。ばねの圧縮時にクラッチスライド116がアクチュエータスライド110と共に移動し、トラスミッション出力装置118との対合から外すように面クラッチ歯(face clutch teeth)を切り離し、PTU24をトラスミッション22から脱着する。
【0050】
[0076]PTU24を接続するために、モータ102が回転してさらに回転カム108をアクチュエータスライド110上のカムプロフィールを基準として回転させて、急激な運動の移行の起こり得る脱着システム32の領域に入れる。回転カム108がこのプロフィールまで移動すると、圧縮されたばね112からエネルギーが迅速に解放されることを理由として、急激な移行部によりアクチュエータスライド110が回転カム108の方に迅速に移動することが可能となる。アクチュエータスライド110が回転カム108の方に移動すると、クラッチスライド116がアクチュエータスライド110と共に移動し、クラッチスライド116の面上のギア歯をトランスミッション出力装置9に係合させる。トランスデューサ120が、アクチュエータスライド110の位置および係合状態を決定することを目的としてフィードバック制御のために使用される。
【0051】
[0077]AWD脱着システムに関連させて本発明を説明してきた。しかし、本発明は、前方アクスルの脱着の他の脱着システムのためにも使用され得る。本発明は例示的な形で説明されるが、使用される用語が、限定的ではなく、本質的に用語を説明することを意図されることを理解されたい。上記の教示に照らして、本発明の多くの修正形態および変形形態が可能である。種々の実施形態および下位の実施形態が組み合わされ得る。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明が、具体的に説明される手法以外の手法でも実施され得ることを理解されたい。本明細書および列挙される特許請求の範囲で説明される主題は、テクノロジーにおけるあらゆる適切な変化もカバーして包含することを意図される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12