(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】分散式の自動付加製造のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20230428BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20230428BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20230428BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20230428BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20230428BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230428BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20230428BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/129
B29C64/232
B29C64/236
B29C64/35
B33Y30/00
B33Y40/20
(21)【出願番号】P 2019568161
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(86)【国際出願番号】 SG2018050290
(87)【国際公開番号】W WO2018226164
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】10201704776W
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10201801184R
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】516142230
【氏名又は名称】ストラクト ピーティーイー.エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】STRUCTO PTE. LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エスブロエック、フベルトゥス テオドルス ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】スウォノ ボイル
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、ハーシュ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-315985(JP,A)
【文献】特開平06-315986(JP,A)
【文献】特開平07-060843(JP,A)
【文献】特開2006-043953(JP,A)
【文献】特開2016-065284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0295212(US,A1)
【文献】米国特許第07556490(US,B2)
【文献】米国特許第08801418(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷すべき物品についてのデータを受け取るように構成されたコントローラと、
前記物品の印刷のための材料を提供するように構成された樹脂源を備えるサブ装置と、
前記物品の印刷のための放射線を導くように構成された放射源と、
前記物品の印刷が行われる印刷タンクと、前記印刷された物品を清浄化するための少なくとも1つの清浄化ステーションと、前記印刷された物品の硬化を少なくとも部分的に完了させるように構成された硬化ステーションとを含む複数のステーションであって、該複数のステーションが、垂直に直線状に配置されている、複数のステーションと、
前記物品が印刷されるべく配置されるビルド表面と、
前記ビルド表面を垂直方向に移動させて、前記複数のステーションに含まれるあるステーションから別のステーションへと順次に届けるように構成されているリニアアクチュエータであって、前記ビルド表面を前記複数のステーションに含まれる任意のステーションから取り出すことができる、水平方向に伸び、引っ込み、あるいは移動することが可能なアームを備えているリニアアクチュエータと
を備えており、
前記コントローラは、前記ビルド表面および前記複数のステーションをお互いに対して移動させるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記複数のステーションは、後硬化ステーション、第2の清浄化ステーション、および完成した印刷された物品を解放する解放ステーションからの任意の1つまたは組み合わせを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のステーションは、可動トレイ上に位置する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のステーションは、垂直または水平な向きにおいてお互いに対して空間的に固定され、前記ビルド表面は、垂直方向の直線スライド上に位置し、前記ビルド表面は、前記スライド上を垂直に移動するときに前記関連のステーションへと前記物品を順次に届けるように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記ビルド表面は、印刷サイクルの開始時にプラットフォームプレートに取り付けられるように構成されている、請求項1または2に記載の
装置。
【請求項6】
前記ビルド表面は、印刷、洗浄、硬化、または後硬化のサイクルの終了時にプラットフォームプレートを解放するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
前記印刷タンクは、半透明または透明な底壁表面を有する樹脂容器を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記印刷タンクは、樹脂容器を含み、前記樹脂容器は、外部容器を備える、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項9】
前記印刷タンクは、前記外部容器の内側の内部容器をさらに含む、請求項8に記載の付加製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の付加製造装置において使用するための内部樹脂容器であって、
前記外部樹脂容器から選択的に取り外すことができるように構成されている、内部樹脂容器。
【請求項11】
重合可能な材料を収容するように構成されている、請求項10に記載の内部樹脂容器。
【請求項12】
底壁の内面のコーティング
を含む、請求項10または11に記載の内部樹脂容器。
【請求項13】
請求項1に記載の付加製造装置において使用するための内部清浄化容器であって、
前記少なくとも1つの清浄化ステーションから選択的に取り外すことができるように構成されている、内部清浄化容器。
【請求項14】
前記印刷された物品を清浄化するための清浄化液を収容するように構成された、請求項13に記載の内部清浄化容器。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置を用いて付加製造プロセスにより物品を印刷するための方法であって、
a)前記物品の3Dスキャンデータを集めるステップと、
b)前記3Dデータを中央集中場所へとデジタル的に転送するステップと、
c)前記中央集中場所において、前記物品の印刷を制御するためのデジタルファイルを作成するステップと、
d)前記デジタルファイルを前記中央集中場所から付加製造装置へとダウンロードするステップと、
e)前記ダウンロードの結果として、前記物品を印刷するステップと
を含む方法。
【請求項16】
f)前記物品を洗浄するステップと、
g)前記物品を後硬化させるステップと、
h)印刷された物品を解放するステップと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記中央集中場所は、外部の施設、データ/情報サポートサービス、ウェブポータル、エリアネットワーク(ローカルまたはその他)、またはクラウドベースのサービスのうちの1つである、請求項15または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理作業を中央に集中させつつ自動付加製造を分散化するための方法、ならびにこの方法を容易にするための統合および自動化された後処理を含む付加製造が可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の技術水準において、ステレオリソグラフィ(SLA)プロセス(ただし、これに限定されない)などの付加製造プロセスが、典型的には3つの段階(すなわち、設計および前処理、3D印刷、ならびに後処理)で構成され、各段階が膨大な量の人間の関与、尽力、および貢献を必要とすることが一般的である。
【0003】
最初の段階、すなわち設計および前処理は、デジタルファイルの準備に不可欠なコンピュータ支援設計(CAD)およびコンピュータ支援製造(CAM)の両方の工程を含む。第1のCAD工程は、付加製造プロセスのためのデジタル3Dファイルを設計および最適化する。第2のCAM工程は、利用予定の特定の3Dマシンにおける印刷のための3Dモデルを作成するが、3Dモデルの向き(XYZの配置および回転)を最適化し、特定のマシンのビルド可能空間内に配置し、モデルを複数の部分へと分割または切断し、モデルの印刷を容易にするための犠牲支持構造を生成する、などの面倒かつ時間のかかる手順を含む。デジタルファイルの準備は、3D印刷のプロセス全体のうちで、きわめて重要かつ多くの場合に困難な工程であり、高度に複雑な3Dオブジェクトの印刷には、ますます高度なノウハウが必要である。例えば歯科分野などの一部の業界においては、歯冠およびブリッジなどの複雑な3Dオブジェクトを特定の具体的なやり方で印刷しなければならず、デジタルファイルがどのように準備されるかが、3Dオブジェクトが最終的に上手く正確に印刷されるかどうかを決定する。製造プロセスとしての3D印刷が、これらの業界において既存の製造プロセスの改善をもたらすことができる一方で、ファイルの準備は、3D印刷のユーザが実行しなければならない必要であるが付加価値をもたらさない活動である。さらに、前処理タスクは、典型的には、(a)高価で複雑なソフトウェアプログラム、および(b)典型的には製造方法のプロセスに精通したエンジニアリング経歴または他の必要な専門知識を有する熟練または経験豊富なユーザが必要である。例えば、デジタル歯科において、個人に合わせた歯科用オブジェクトを得るための典型的なワークフローでは、納期が数日ではなく数週間に及ぶため、患者の歯科治療が遅れ、複数回の診察または訪問が必要になる。従来のデジタル歯科のワークフローは、(a)診療所におけるスキャン、(b)ソフトウェアに基づくファイルの処理、および(c)所望の器具の製作または製造という3つの段階で構成される(
図1を参照)。典型的には、最初に臨床医が患者の歯、歯肉、および咬合の3Dスキャンデータをキャプチャし、次いで外部の研究室または施設へと送信し、そこでさらなる処理が行われる。臨床医は、患者の身体構造を物理的な型(例えば、アルギン酸塩を使用)でキャプチャし、この型を外部の研究室へと物理的に届けて、3Dスキャンを行うことを選択してもよい。また、型を石または石膏モデル(型の反転)の注型に使用し、このモデルを診療所または外部の研究所のいずれかで3Dスキャンしてもよい。
【0004】
研究所において、(口腔内スキャンまたは型もしくはモデルの3Dスキャンからの)スキャンデータが、患者の口腔の身体構造の仮想モデルへと処理される。この仮想モデルを使用して、所望の部品または器具(例えば、歯冠)を、CADソフトウェアを使用して設計することができる。ひとたびCADプロセスが完了すると、所望の部品または器具の仮想の設計を、典型的にはSTL形式または3Dデジタルデータをキャプチャする他の形式でエクスポートすることができる。その後に、このデータが印刷準備ソフトウェアにインポートされ、ユーザが、利用可能な印刷空間における所望の位置、向き、および随意による他のオブジェクトとの重なり合いを決定し、随意により犠牲支持構造を生成することができる。次いで、得られた印刷設定を、gコードなどのマシンコードまたは印刷設定に沿ってさまざまな高さで取得された断面画像(典型的にはDLP、SLA、またはMSLA 3D印刷プロセスで使用されるスライス画像として知られる)の形態をとってよい印刷可能形式でエクスポートすることができる。CADソフトウェアおよび印刷準備ソフトウェアは、場合によっては、単一のサプライヤからの同じプログラムの機能であってよい。
【0005】
次いで、エクスポートされた印刷可能データを3Dプリンタにロードし、オブジェクトを、典型的にはフォトポリマーである所望の材料で、物理オブジェクトへと製造することができる。3D印刷の後に、オブジェクトに後処理手順が施されるが、これらは、3D印刷されたオブジェクトを溶剤で洗浄したり、最終硬化のためにさらなる光に曝したりするなど、きわめて時間がかかるが付加価値をもたらさないプロセスである。後処理手順の完了後に、3Dオブジェクトを外部の施設から物理的に送り出して、診療所へと届けることができ、診療所において最終的に患者の身体構造へと埋め込み、あるいは与えることができる。
【0006】
別の現時点における臨床の実務では、臨床医またはそのスタッフが、必要なプロセスの各々を診療所の現場で実施し、これは、一般に、「チェアサイド印刷」と呼ばれる(
図2を参照)。しかしながら、スペースおよび資金の制約ゆえに、臨床医は、典型的には、コンパクトなマシンを利用して各々の製造工程を実行する。一般に、この目的に使用されるマシンは、Formlabs、Asiga、およびBegoなどのプリンタ、ならびに対応する小型/安価な超音波清浄化装置および光硬化装置である。さらに、チェアサイド印刷は、多数の手順を含むがゆえに、いずれも臨床環境において典型的に望まれる仕事の範囲を超えて広がるCADおよび印刷ソフトウェア、マシンの動作、ならびに種々の化学物質の取り扱いについて詳細な知識が必要になるため、大部分の臨床医にとって理想的なワークフローではない。しかしながら、納期が数時間で済み、1回の来院で患者へと即日適用できるという利点により、この目的のためにコンパクトな3D印刷装置の使用を選択する積極的傾向が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、印刷すべき物品についてのデータを受け取るように構成されたコントローラと、前記物品の印刷のための材料を提供するように構成された樹脂源を備えるサブ装置と、前記物品の印刷のための放射線を導くように構成された放射源と、前記物品の印刷が行われる印刷タンク、前記印刷された物品を清浄化するための少なくとも1つの清浄化ステーション、および前記印刷された物品の硬化を少なくとも部分的に完了させるように構成された硬化ステーションを含む複数のステーションと、前記物品が印刷されるべく配置されるビルド表面とを備えており、コントローラは、前記ビルド表面および前記複数のステーションをお互いに対して移動させるように構成されている、装置を提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、付加製造プロセスを使用して物品を印刷するための方法であって、
a)前記物品の3Dスキャンデータを集めるステップと、
b)前記3Dデータを中央集中場所へとデジタル的に転送するステップと、
c)前記中央集中場所において、前記物品の印刷を制御するためのデジタルファイルを作成するステップと、
d)前記デジタルファイルを前記中央集中場所から付加製造装置へとダウンロードするステップと、
e)前記ダウンロードの結果として、前記物品を印刷するステップと
を含む方法を提供する。
【0009】
本発明は、ファイル準備の工程が臨床医のワークフローから削除され、代わりに遠方で実行される方法に関する。これは、臨床医が口腔内3Dスキャンデータなどのファイルを遠方からアップロードでき、印刷すべき最終製品の要件および/または仕様の指定ももたらすことができるシステムを導入することによって、達成される。したがって、このワークフローにおいて、ファイルは、臨床医から離れて、多数の同様の臨床医にサービスを提供する1つ以上の中央集中場所において処理される。ファイルの処理は、これらに限られるわけではないが、ラフトもしくはラベルまたは必要とされる追加の特徴の追加、ファイルの修正(破損または逆三角形メッシュ、スキャンデータの穴、およびデータレベルでの他の一般的な欠陥)、支持物の生成(自動または手動)、部品の配置および重ね合わせ、ならびに印刷可能ファイルへのスライスなどのファイル準備工程を含む。ソフトウェア準備段階のさまざまな段階において、臨床医は、(CAD)で設計された器具または遠方で処理された後の印刷可能ファイルの状態について、フィードバックを提供することができる。臨床医と中央集中ファイル準備オペレータまたは人工知能との間の1つ以上の往復通信を含む反復的な設計および準備プロセスが存在できる。臨床医は、最終的な印刷可能出力ファイルをダウンロードすることができ、あるいは最終的な印刷可能出力ファイルをリモートアクセスおよびインターネット接続を介して直接3Dプリンタへとアップロードすることを選択することもできる。
【0010】
さらに、本発明は、3D印刷によるオブジェクトの後処理の自動化に関し、これは、印刷、清浄化、および後硬化の工程、ならびに3Dプリンタ自体での特定のオブジェクトの作成に必要とされ得る任意の他の工程(すなわち、後処理活動)の各々を組み合わせ、統合し、自動化することによって達成される。このワークフローは、印刷および後処理の工程からすべての人間の労力を取り除き、臨床医のシームレスなエクスペリエンスを生み出し、入力(3D身体構造スキャン)および出力(埋め込み用のオブジェクト)は、従来からの外注による外部研究所のワークフローと同じである。本発明の自動付加製造装置は、すぐに使用することができる最終的なオブジェクトを生成するために必要なすべての動作および処理を引き受ける。
【0011】
これにより、所望の3Dオブジェクトまたは器具の開始から最終的な完了までの作業プロセスの全体が、完全に自動化され、臨床医の時間をまったく、またはほとんど必要としない。このようにして、3D印刷とは無関係な業界からの臨床医が、自身の業界にとって重要な活動に集中できるため、臨床医は、ワークフローの一部を形成する実際の技術プロセスに関する徹底的な訓練および詳細な知識をさらに必要とせずに、外部の施設への作業の外注に関連する使いやすさを維持しつつ、チェアサイド印刷に関連する迅速な納期を達成することができる。臨床医の観点からすると、本発明の装置は、必ずしも3Dプリンタまたは付加製造装置でなく、むしろカスタマイズされ、あるいは身体構造に関して患者固有に作られたオブジェクトを診療所へと直接「届ける」だけのブラックボックスである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を、本発明について考えられる構成を示している添付の図面を参照して、さらに説明することが好都合であろう。本発明について、他の構成も可能であり、したがって、添付の図面の詳細を、本発明の上述の説明の一般性を奪うものと理解してはならない。
【0013】
【
図1】従来のデジタル歯科に関するワークフローを示している。
【
図2】チェアサイド印刷に関するワークフローを示している。
【
図4】自動付加製造装置のカルーセルシステムの概略図である。
【
図5】印刷されたオブジェクトが可動トレイの回転時に印刷樹脂タンクから清浄化、洗浄、または回収容器へと移される自動付加製造装置のカルーセルシステムの概略図である。
【
図6】自動付加製造装置のカルーセルシステムの概略の断面図である。
【
図7A】可動トレイが直線方向に移動し、ビルド表面に印刷によるオブジェクトを付着させた直線運動装置を手助けする自動付加製造装置の直線システムの概略図である。
【
図7B】ビルド表面に印刷による部品を付着させた垂直および水平直線運動装置が双方向に直線的に移動する自動付加製造装置の直線システムの概略図である。
【
図8A】印刷エリアのz軸アクチュエータからプラットフォームプレートまたはビルドプラットフォームを取り出すことができるアームを備える自動付加製造装置の別個のリニアアクチュエータの概略図である。
【
図8B】別個のリニアアクチュエータのアームが、内部サブシステム構成要素のいずれかとの接触または衝突を回避するために、印刷エリアからビルドプラットフォームまたはプラットフォームプレートに到達するようにx-y方向に伸び、引っ込み、あるいは移動することが可能であってよいことを示している。
【
図9】ロボットアーム機構を備えた自動付加製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図3を参照すると、本発明は、口腔内スキャンにより、あるいはやはり3Dスキャンを行うことができる物理的な型を生成することにより、臨床医が歯科医院において通常行うやり方と同じやり方で、まずは患者の身体構造をキャプチャすることを含む。その後に、3Dデータは、外部の施設、データ/情報サポートサービス、Webポータル、エリアネットワーク(ローカルまたはその他)、あるいはクラウドベースのサービスへと送信され、したがって実際の作業を世界中のあらゆる場所から実行することができる。さらに、作業は、これらに限られるわけではないがファイルの修正、支持体の生成(自動または手動)、部品の配置、印刷可能ファイルへのスライス、CAD設計、デジタルデータのエクスポート、前処理印刷、または印刷可能データのエクスポートなどの外注によるソフトウェア処理を、クラウドにホストされた人工知能または機械知能、外部の施設、データ/情報サポートサービス、Webポータル、またはエリアネットワーク(ローカルまたはその他)によって効果的かつ自動的に実行できるように、部分的に自動化されても、完全に自動化されても、まったく自動化されなくても(すなわち、1つ以上の場所に集中していても、分散していてもよいバックエンドにおいて、人間によって操作されても)よい。
【0015】
3DデータがインターフェースとしてのWebポータルを介してユーザによって送信され、あるいはユーザがスキャンしたファイルをエクスポートしてウェブブラウザを介してポータルへとアップロードしなくてもよいように、3Dデータがスキャナ(口腔内またはその他)とクラウドサービスとの直接接続を介してアップロードされ得る実施形態において、おそらくは離れた場所に居る別の者が、入力ファイルを受け取り、相応に処理し、同じWebポータルを介してユーザへと適切に返す。ファイルをユーザにダウンロードさせるのではなく、接続された3Dプリンタへとファイルを直接転送することが好ましい。別の実施形態において、ユーザは、別の人間および/または人工知能がファイルを処理するウェブポータルにアクセスすることができる。このようなタスクまたはプロセスの実行を、上述のタスクの一部またはすべてを自動的に実行する人工知能/機械知能、あるいは人間の努力および人工知能/機械知能の両方の組み合わせの形態で実行することができ、後者の程度は、人工知能の成熟度に依存する。
【0016】
設計および前処理の工程(すなわち、上述のプロセス)を自動化することにより、印刷可能データを届けるための迅速な納期を、患者の身体構造の3Dスキャンデータを使用した入力に基づいて達成することができる。臨床医が、外部の外注ソフトウェア処理サービスが作成したCAD設計案または治療計画案について、意見、決定、または承認の形態のさらなるフィードバックを提供する必要があり、あるいはそのように求められる1つまたは複数の中間段階が存在するかもしれない。印刷可能データが臨床医へとエクスポートされ、あるいは届けられた後で、臨床医は、自動付加製造装置を使用した3Dオブジェクトの3D印刷を続け、あるいは開始して、シームレスかつ自動的なデジタル歯科のプロセスを合理化することができる。あるいは、クラウドベースのサービス、外部の施設、データ/情報サポートサービス、ウェブポータル、またはエリアネットワーク(ローカルまたはその他)からのエクスポートされた印刷可能データを、インターネット接続、無線通信、またはリモートアクセスを介して自動付加製造装置へと直接アップロードすることで、ワークフロー全体をシームレス、手間要らず、かつ自動的にすることができる。アップロードのプロセスを、同じ人物または人工知能が行うことができる。
【0017】
本発明の一実施形態においては、自動付加製造装置が、
図4および
図5に示されるように、取り付けられたビルド表面101をz軸に沿って上下の垂直直線運動にて動かすことができる垂直直線運動装置100を備える。垂直直線運動装置は、リニアモータ、ボールねじ、送りねじ、ステッピングモータもしくはサーボモータを備えるベルトおよびプーリからなるシステム、油圧もしくは空気圧などの任意の他のリニアアクチュエータ、これらの組み合わせ、またはビルド表面をz軸に沿って充分な精度および速度で動かすことができる任意の他の手段を備えることができる。ビルド表面101は、各々の容器または装置に面しており、3D印刷されるオブジェクト110を付着させることができる表面を有するプラットフォームプレートを備えることができ、3Dオブジェクトが層ごとのやり方で印刷され、次いで一連の容器および装置から移されて、洗浄、硬化または後硬化、ならびに3D印刷されたオブジェクトの回収のプロセスに曝されるときに、垂直に移動する。広く利用可能になっており、当業者に知られている3D印刷または付加製造のさまざまな技術および方法を、自動付加製造装置において使用することができる。国際公開第2015/072921号および国際公開第2016/122408号に開示されている付加製造装置などの付加製造装置、または、SLAもしくはDLPを、使用することができる。プラットフォームプレートは、例えば、鋼、アルミニウム、ガラス、もしくは3D印刷可能なポリマーが付着することができる任意の他の材料で作られてよく、さらには/または或る材料と、印刷が行われる表面の別の材料のコーティングとで構成されてもよい。プラットフォームプレートは、プリンタ床から部分的に分離可能または完全に分離可能であってよく、磁気解放機構または他の解放機構の使用をさらに含むことができる。電磁機構などの磁気解放機構あるいは他の種類の解放機構を使用することで、ビルド表面は、シームレスなプロセスにて、さまざまなプラットフォームプレートを選び取り、もしくは付着させ、変更し、解放することができる。一例においては、印刷サイクルの開始時に、ビルド表面は、清浄なプラットフォームプレートの積み重ねを含んでいる容器または装置から清浄なプラットフォームプレートを選び取り、あるいは選択し、印刷、洗浄、硬化、または後硬化の各々のサイクルの後に回収容器または装置へと各々のプラットフォームプレートを解放する。
【0018】
さらに、装置100は、3D印刷物110を収容または保持するための印刷タンク102などの樹脂容器を備え、3D印刷物110は、フォトポリマー材料などの材料で作られ、樹脂容器102またはその内部容器に収容されたフォトポリマーを照明源103からの適切な波長の光で照射することによって生成される。樹脂容器102は、フォトポリマー樹脂へと向けられる照明を下方から通過させることができる実質的に半透明または透明な下部壁表面を有することができる。好ましくは、樹脂容器102は、材料の迅速かつ容易な交換を促進するために、外部容器122と内部容器121とで構成される。外部容器が、鋼、アルミニウム、またはエンジニアリングプラスチックで作られ、堅固かつ恒久的であってよい一方で、内部容器は、フォトポリマーと反応しない低コストのプラスチック材料で作られた使い捨ての容器であってよい。さらに、内部容器121は、下方の底部内面に、印刷時の層の剥離を促進するためのコーティングまたはフィルムを有してもよい。外部容器122は、内部容器の底面がフォトポリマー材料と下方の照明源103との間の唯一の境界となるように、底壁表面を欠いてもよい。内部容器121は、剥離、切断、または他の破壊手段によって取り除くことができるシール、あるいは取り外し可能な蓋またはカバーを備えた事前に密閉された容器またはカプセルとして提供されてもよい。内部容器は、特定の用途に必要な適切な量のフォトポリマーを収容する事前に充てんされた容器またはカプセルとして提供されてもよい。そのような実施形態において、実質的に半透明な底面を、収容されたフォトポリマーが環境または他の照明源によって半透明な底面を通して恒久的に重合させられてしまうことがないように、外部の取り外し可能な蓋もしくはカバー、または剥離もしくは切断によって取り除くことができるシールで覆ってもよい。照明装置103(
図6に示されるとおり)は、付随の光学系を有するレーザダイオードを備えるが、DLPプロジェクタシステム、あるいはフォトポリマー材料を重合させることができる波長の光を発する1つ以上の光源であってもよい。像または他の照明を樹脂容器内のポリマー材料へと投影する光源103が機能しているときの光路113が示されている。照明装置103を、ビルドエリアの領域または樹脂容器102の底面の領域を選択的に狙い、あるいは露光するように装備することができる。
図6に示されるように、自動付加製造装置を、3Dオブジェクトの印刷または処理における外部要因からの汚染または干渉を最小限にするために、小個室、筐体、または区画に収容することができる。さらに、装置の外部本体は、臨床環境における清浄かつ安全な動作を促進するために、理想的には気密であるべきであり、樹脂および/または溶剤からの臭気または蒸気が周囲の空気と交換されることがないように保証する空気ろ過システムを含むことができる。
【0019】
装置100は、好ましくは回転方向に可動であり、あるいは一連の所望の位置へと可動である可動トレイ104をさらに備え、可動トレイ104に複数のステーションを恒久的または非恒久的に取り付けることができ、垂直直線運動装置100に位置する(仮想の)軸に対して回転させることにより、垂直に移動するビルド表面101の経路へと向けることができる。これらのステーションは、関連する上述の機能のための容器および/または装置を備えることができる。あるいは、垂直ステージを、例えば角など、回転円の外側に取り付けることができ、正方形の外部本体を、プリンタの周りに構築することができる。この配置では、ステージがマシンの中心にある必要がないため、回転軸をマシンの中心に一致させる必要がない。可動トレイは、堅固であってよく、ビルドプレート表面と樹脂容器の内部底部印刷表面との位置合わせを容易にするために充分な剛性および平坦性を有することができる。
図4および
図5の可動トレイに取り付けられて示されているように、ステーションは、樹脂容器102と、2つの清浄化容器107および111と、UV硬化装置105とを含むが、設けられる容器または装置は、より多くても、より少なくてもよい。この実施形態において、容器または装置を含む複数のステーションを空間内に固定することができる一方で、垂直直線運動装置100およびビルド表面101は、各々の容器または装置に対する所望の位置へと(好ましくは、回転方向に)移動可能であるように、可動トレイ104上に取り付けられる。典型的な例において、可動トレイ104は、
図4および
図5に示されるように90度刻みで回転させられており、結果として、ビルド表面101を印刷プロセス後の樹脂容器102への出入りから洗浄のための清浄化容器111への出入りへと効果的に移行させる。洗浄は、典型的には、イソプロピルアルコールなどの溶剤中で行われ、同じ溶剤もしくは別の溶剤または水による第2の洗浄段階も実施することができる。可動トレイの動きは、3D印刷によるオブジェクトの処理および準備に必要な洗浄または硬化の工程および手順のさまざまな連続に応じた動きであってよい。
【0020】
別の実施形態においては、可動トレイ104を、上述のような回転方向とは反対に、直線的なやり方で配置することができる。この直線配置において、
図7Aを参照すると、可動トレイ104は、直線的なやり方で移動し、双方向であってよく、したがって垂直直線運動装置100(z軸)への複数の容器または装置の移動を容易にする。別の実施形態においては、直線可動トレイが静止したままであり、直線運動装置100が、ビルド表面101の移動の軸に垂直な軸にて移動する垂直および水平直線運動装置200で置き換えられる(
図7B)。垂直および水平直線運動装置200は、双方向に水平に移動すると同時に、取り付けられたビルド表面101を直線トレイの種々の部分に沿って運ぶことにより、3D印刷によるオブジェクトの処理および準備に必要な種々の一連の洗浄または硬化の工程および手順を施す。他の実施形態において、自動付加製造装置は、印刷ならびに3D印刷によるオブジェクトに必要な種々の一連の洗浄または硬化の工程および手順を促進するために、可動式トレイならびに垂直および水平直線運動装置の両方を備えてもよい。垂直直線運動装置100(z軸)の存在下で可動トレイ104が移動する実施形態が、垂直直線運動装置が1つの軸だけを移動する場合に垂直直線運動装置の容易な位置合わせを促進するため、より好都合であると考えられる。
【0021】
別の実施形態においては、印刷、洗浄、硬化、および後硬化の容器を、垂直に直線状に配置することができる。この実施形態においては、別個のリニアアクチュエータ300が、(
図8Aおよび
図8Bに示されるように)z方向に垂直に移動し、リニアモータ、ボールねじ、送りねじ、ステッピングモータもしくはサーボモータを備えるベルトおよびプーリからなるシステム、油圧もしくは空気圧などの任意の他のリニアアクチュエータ、これらの組み合わせ、またはビルド表面もしくはプラットフォームプレートをz軸に沿って充分な精度および速度で動かすことができる任意の他の手段の形態であってよい。別個のリニアアクチュエータは、印刷エリア内のz軸アクチュエータからプラットフォームプレートまたはビルドプラットフォームを取り出すことができるアーム301を備える。アーム301は、内部サブシステム構成要素のいずれかとの接触または衝突を回避するために、印刷エリアからビルドプラットフォームまたはプラットフォームプレートに到達するようにx-y方向に伸び、引っ込み、あるいは移動することが可能であってよい。プラットフォームプレートまたはビルド表面の迅速な固定および解放を、電磁的手段またはそのような効果を達成できる任意の他の手段によって行うことができ、あるいは先行発明者の特許出願に開示されているとおりに行うことができる。ビルド表面は、1つ以上のプラットフォームプレートで構成されてもよい。次いで、アームは、洗浄容器、硬化容器、および/または後硬化容器であってよい次の容器へと垂直に移動する(
図8Bに示されるとおり)。印刷、洗浄、および後硬化の全プロセスの完了後に、アームは、印刷された部品を含む完成したビルドプラットフォームまたはプラットフォームプレートを排出および/または回収することができる送出エリアへと移動する。このような実施形態の利点は、とりわけ、小さな設置面積が達成されることであり、これは、歯科医のオフィスできわめて有用になることができ、固定された整列ゆえにマシンの安定性および再現性に役立つ固定印刷ステーションを提供する。
【0022】
UV硬化装置105は、印刷されるフォトポリマー材料を重合させることができる波長を放出するダイオードまたは他の種類の電球であってよい少なくとも1つ、好ましくは複数の発光体を有する容器を備える。さらに、装置105は、とくには洗浄処理後に装置内に位置する物品の温度を上昇させるために、熱または赤外線の放射体を備えることができる。UV硬化装置は、装置内に収容された物品へと向けられる照明を下方から通過させることができる実質的に半透明または透明な下面を有することができる。さらに、装置105は、内壁の迅速かつ容易な清浄化を促進するために、外部容器と内部容器106とで構成されてもよい。外部容器は、内部容器の底面がフォトポリマーと下方の照明源との間の唯一の境界となるように、底面を欠いてもよい。
【0023】
清浄化容器107および111のそれぞれは、アルコールまたは他の清浄化液を収容するための容器を備える。容器を、アルコールまたは他の清浄化液の迅速かつ容易な交換を促進するために、外部容器および内部容器108または112で構成することができる。清浄化容器は、清浄化容器またはその内部容器内に置かれた物品のより徹底的かつ迅速な清浄化を保証するために、超音波処理装置または清浄化液を攪拌する他の手段を装備しても、装備しなくてもよい。内部容器108または112は、剥離、切断、または他の破壊手段によって取り除くことができるシールを備えた事前に密閉された容器として提供されてもよい。内部容器は、特定の用途に必要な適切な量のフォトポリマーを収容する事前に充てんされた容器またはカプセルとして提供されてもよい。さらに、印刷プロセスの最中に、ユーザは、LCDまたはOLED方式のディスプレイであってよく、タッチ画面制御の機能を備えることができる外部ディスプレイ120を介して、自動付加製造装置のインターフェースと対話することができる。外部ディスプレイは、外注のソフトウェア処理からの印刷可能データのアップロードを支援するオペレーティングシステムで構成され、印刷によるオブジェクトの印刷および処理の進行について最新情報をユーザにもたらすことができる。さらに、ユーザは、外部ディスプレイを介して自動付加製造マシンの操作システムにおいて指示を設定することもできる。また、内部電子システムと、この外部ディスプレイ(UI)ならびに実際の内部可動部品および照明または投影システムの両方を制御するオペレーティングシステムも存在できる。
【0024】
ここで
図9を参照すると、自動付加製造装置は、関節アームを備えることができ、この関節アーム400は、このアームの端部に位置するエンドエフェクタに至るまでに6つの自由度を含むことができる。このエンドエフェクタは、関節アームがいくつかの自由度を提供するビルド表面であってもよい。例えば、関節アームは、このビルド表面について、3つの主軸に沿った並進およびこれら3つの主軸の周りの回転を含む最大6つの自由度を有する動きを提供することができる。したがって、一実施形態において、関節アームは、着脱可能なビルド表面またはプラットフォームプレート401をロボットアームの周りに配置された種々のセクションへと運ぶ新規なクイックリリース機構などを有する6軸ロボットアームであってよい。これらのセクションのそれぞれは、VAT/タンク402、洗浄エリア403、後硬化404、および/もしくは取り出し405、または印刷による3Dオブジェクトの製作に必要な他の3D処理手順を実行するためのエリアで構成されてよい。アームは、例えば樹脂容器の内部底壁上の印刷面から印刷された層をより徐々に取り外すように剥離作用を可能にするための回転運動コンポーネントなど、3D印刷プロセスにおける層の解放を容易にするためのさらなる運動度を含む種々のセクションの完全に自由な配置および構成を可能にする複数の軸を有するロボットアームであってよい。
【0025】
自動付加製造装置における3D印刷によるオブジェクトの洗浄ならびに硬化または後硬化のプロセスの完了後に、カスタマイズされた患者固有の3Dオブジェクトを、患者の治療処置の一部としてすぐに使用し、あるいは埋め込むことができる。
【0026】
特定の実施形態を本明細書において説明および図示したが、当業者であれば、上述の実施形態の特徴のさまざまな修正および組み合わせが、それらの精神または本質的特徴から逸脱することなく可能であることを、理解できるであろう。例えば、本発明は、歯科または口腔衛生の用途に限定されず、他の分野にも適用可能であり、したがって「3Dオブジェクトまたは3D印刷によるオブジェクト」という用語は、他の分野における応用からもたらされるあらゆる3D部品または器具も包含することができる。さらに、臨床医という用語は、医師だけに限られず、臨床の環境において働くすべての者、検査技師、臨床技師、看護師、または自動付加製造の装置および/もしくはワークフローのユーザも含む。したがって、上述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するのではなく、あらゆる点で例示と見なされるべきであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示される。