(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵システムのための偏差検出システム
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20230428BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230428BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
G01D21/00 Q
H02J7/00 Y
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020053007
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519123825
【氏名又は名称】トランスポーテーション アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プレスマン,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アジス クッタナー
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-076746(JP,A)
【文献】特開2011-050155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 18/00-21/02
H02J 7/00-7/12,7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
複数のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第1のグループであって、前記第1のグループの前記センサが、前記エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表わす、センサ測定値を生成するように構成される、センサの第1のグループ、および、
1つ以上のプロセッサを含む制御回路であって、前記制御回路は、前記センサによって生成される前記センサ測定値を受け取り、且つ、(i)前記第1のグループのセンサの少なくとも2つのセンサにより生成され、および、エネルギー貯蔵モジュールのエネルギー貯蔵デバイスの少なくとも2つのエネルギー貯蔵デバイスに対応するセンサ測定値に少なくとも部分的に基づく経時的な1つ以上のパラメータの特定のパラメータの基準値、または、(ii)前記第1のグループのセンサの前記少なくとも2つのセンサにより生成され、および、前記エネルギー貯蔵モジュールの前記少なくとも2つのエネルギー貯蔵デバイスに対応する前記センサ測定値に少なくとも部分的に基づく経時的な前記1つ以上のパラメータの前記特定のパラメータの基準ばらつき、の1つ以上を判定するように構成され、
前記制御回路は、前記特定のパラメータのモニタリングされた値の1つ以上を、前記第1のグループの前記センサによって生成される前記センサ測定値に基づいて、前記特定の基準値と比較するか、または、前記特定のパラメータのモニタリングされたばらつきを、前記第1のグループの前記センサによって生成された前記センサ測定値に基づいて、基準ばらつきと比較し、および、(i)前記モニタリングされた値の変化率であって、基準値の変化率から指定許容差よりも大きく異なっている、前記モニタリングされた値の変化率、または、(ii)前記特定のパラメータの2つの前記モニタリングされた値の間の前記モニタリングされたばらつきであって、基準ばらつきを前記指定許容差よりも大きく超過している、前記モニタリングされたばらつきの、1つ以上に応じた偏差状態を検出し、ここでモニタリングされたばらつきを定義する前記2つのモニタリングされた値は、前記第1のグループの2つの異なるセンサによって生成されたセンサ測定値に基づき、かつ偏差状態の検出に対応し、前記制御回路は、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件を変更するように構成された制御信号を生成するように構成され、ここでエネルギー貯蔵モジュールの作動条件は、制御信号に基づいて変更される、制御回路を含む、システム。
【請求項2】
前記制御回路が、前記特定のパラメータの前記基準値または前記基準ばらつきを、前記エネルギー貯蔵モジュールに関連する前記センサの第1のグループによって生成される、前記センサ測定値、および、(i)別の、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第2のグループによって生成されるセンサ測定値、(ii)前記エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性、(iii)前記エネルギー貯蔵モジュールの作動条件、または(iv)前記エネルギー貯蔵モジュールに関する、または、他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報の、1つ以上に基づいて判定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記偏差状態の検出に応じて、前記制御回路が、偏差する前記モニタリングされた値または偏差する前記モニタリングされたばらつきの1つ以上が基づくセンサ測定値を生成した、前記第1のグループの特定のセンサを識別するように構成され、そして、前記制御回路が、前記特定のセンサによって生成される前記センサ測定値を、前記第1のグループの他のセンサによって生成されるセンサ測定値、または、別の、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連する第2のグループの他のセンサによって生成されるセンサ測定値と比較することによって、前記偏差の原因を推定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導を阻害すること、前記エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導の0以外の比率を調整すること、前記エネルギー貯蔵モジュールを囲む環境温度を調整すること、前記エネルギー貯蔵モジュールの周りの温度条件比率を調整すること、前記エネルギー貯蔵モジュールに指定の負荷を誘導すること、アクティブ冷却を開始すること、鎮火を開始すること、または、前記エネルギー貯蔵モジュールに修繕のためのフラグを立てることの1つ以上によって、前記制御信号が、前記エネルギー貯蔵モジュールの前記作動条件を変更するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御回路が、偏差する前記モニタリングされた値または偏差する前記モニタリングされたばらつきが基づくセンサ測定値を生成した、前記第1のグループの特定のセンサを識別するように構成され、且つ、前記制御回路は、前記エネルギー貯蔵モジュールの前記作動条件を変更した後、決定された時間帯の間に、前記特定のセンサによって生成される追加的なセンサ測定値をモニタリングするように構成され、前記制御回路は、前記偏差の原因を、前記決定された時間帯の間に、前記特定のセンサによって生成される前記追加的なセンサ測定値に、少なくとも部分的に基づいて推定するよう構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御回路は、事前設定された閾値を超える前記センサ測定値のいずれにも依存することなく、前記偏差状態を検出するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記エネルギー貯蔵モジュールは、互いに直列接続される複数の電池のアセンブリ、または、互いに並列に接続される複数の電池のアセンブリを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記特定のパラメータが、温度、電圧、電流、電力、充電状態、電荷容量、圧力、冷却液流速、または抵抗のうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御回路が、前記エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性、前記エネルギー貯蔵モジュールの作動条件、および、前記エネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報を組み込む物理学ベースのモデルに基づいて、前記特定のパラメータの前記基準値または前記参照ばらつきを判定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御回路が、少なくとも部分的に、前記特定のパラメータの前記基準値または前記基準ばらつきを、前記特定のパラメータを表わす前記センサ測定値であって、前記第1のグループの前記少なくとも2つのセンサによって生成され、および前記エネルギー貯蔵モジュールの前記少なくとも2つのエネルギー貯蔵デバイスに対応する、センサ測定値を、コンパイルすることによって判定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御回路および前記センサの第1のグループが、少なくとも部分的に、前記エネルギー貯蔵モジュールによって推進される車両に搭載配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
方法であって、
エネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値を取得する工程であって、前記エネルギー貯蔵モジュールが複数のエネルギー貯蔵デバイスを含み、前記センサ測定値が、前記エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表す工程、
(i)前記第1のグループの前記センサの少なくとも2つにより生成され、および、前記エネルギー貯蔵モジュールの前記エネルギー貯蔵デバイスの少なくとも2つに対応するセンサ測定値に少なくとも部分的に基づく経時的な1つ以上のパラメータの特定のパラメータの基準値、または、(ii)第1のグループのセンサの少なくとも2つにより生成され、および、エネルギー貯蔵モジュールのエネルギー貯蔵デバイスの前記少なくとも2つに対応するセンサ測定値に少なくとも部分的に基づく経時的な前記1つ以上のパラメータの前記特定のパラメータの基準ばらつき、の1つ以上を判定する、工程、
前記特定のパラメータのモニタリングされた値の1つ以上を、前記センサの第1のグループによって生成される前記センサ測定値に基づいて、前記特定の基準値と比較するか、または、前記特定のパラメータのモニタリングされたばらつきを、前記センサの第1のグループによって生成された前記センサ測定値に基づいて、基準ばらつきと比較する、工程、
(i)モニタリングされた値の変化率であって、基準値の変化率から指定許容差よりも大きく異なっている、前記モニタリングされた値の変化率、または、(ii)前記特定のパラメータの2つのモニタリングされた値の間のモニタリングされたばらつきであって、基準ばらつきを前記指定許容差よりも大きく超過している、モニタリングされたばらつきの、1つ以上に応じた偏差状態を検出する工程であって、ここで前記モニタリングされたばらつきを定義する前記2つのモニタリングされた値は、第1のグループの2つの異なるセンサによって生成されたセンサ測定値に基づく、工程、
および、前記偏差状態の検出に応じて、前記エネルギー貯蔵モジュールの作動条件を変更するように構成された制御信号を生成する、工程、を含み、
ここでエネルギー貯蔵モジュールの作動条件は、制御信号に基づいて変更される、方法。
【請求項13】
前記作動条件を変更する前に前記センサの第1のセンサによって生成された前記エネルギー貯蔵モジュールの前記センサ測定値を、前記作動条件を変更した後に前記第1のセンサによって生成されるセンサ測定値と比較することによって、前記偏差状態の原因を推定する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御信号が、前記エネルギー貯蔵モジュールを囲む環境温度を調整すること、前記エネルギー貯蔵モジュールの周りの温度条件比率を調整すること、前記エネルギー貯蔵モジュールに指定負荷を誘導すること、前記センサの少なくとも1つを置き換えること、前記エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導動作を阻害すること、前記エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導の0以外の比率を調整すること、アクティブ冷却を開始すること、鎮火を開始すること、または、前記エネルギー貯蔵モジュールに修繕のためのフラグを立てること、の1つ以上によって、前記作動条件を変更するように構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のグループの前記センサの第1のセンサによって生成された、偏差する前記モニタリングされた値または偏差する前記モニタリングされたばらつきが基づく前記センサ測定値を、前記第1のグループの他のセンサによって生成された測定値と、または、別の、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第2のグループによって生成されたセンサ測定値と比較することによって、偏差状態の原因を推定する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記特定のパラメータは、温度、電圧、電流、電力、充電状態、電荷容量、圧力、冷却液流速、または、抵抗のうちの1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
システムであって、
前記システムは、1つ以上のプロセッサを含む制御回路を含み、前記制御回路は、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサのグループによって生成されるセンサ測定値を取得するように構成され、前記センサ測定値は、前記エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表し、前記制御回路は、前記1つ以上のパラメータの特定のパラメータを表す前記センサ測定値を、前記特定のパラメータの基準値または前記特定のパラメータの基準ばらつきの1つ以上と比較するように構成され、ここで前記
基準値と前記基準ばらつきの各々は、前記グループの少なくとも2つの前記センサによって生成された前記センサ測定値に少なくとも部分的に基づき、且つ少なくとも2つの前記エネルギー貯蔵デバイスに対応し、前記制御回路は、(i)前記特定のパラメータの前記センサ測定値の変化率であって、前記基準値の変化率から指定許容差よりも大きく異なる、変化率
の1つ以上、または、(ii)前記特定のパラメータの前記センサ測定値のうちの2つ間のばらつきであって、前記第1のグループの2つの異なるセンサによって生成され、指定許容差よりも大きく前記基準ばらつきを超過する、ばらつきの1つ以上
、に基づいて
偏差状態を検出するように構成され、および、
前記偏差状態の検出に応じて、前記制御回路は、前記基準値または前記基準ばらつきから偏差する前記センサ測定値の1つ以上を生成した前記グループの第1のセンサを識別し、前記第1のセンサによって生成された前記センサ測定値に少なくとも部分的に基づいて偏差の原因を推定し、および前記エネルギー貯蔵モジュールの冷却を修正するための制御信号を生成するように構成され、ここで前記エネルギー貯蔵モジュールの前記冷却は、前記制御信号に基づいて変更される、システム。
【請求項18】
前記制御回路は、前記グループの前記少なくとも2つのセンサによって生成され、および前記エネルギー貯蔵モジュールの前記少なくとも2つのエネルギー貯蔵デバイスに対応する、前記特定のパラメータを表わす前記センサ測定値をコンパイルすることによって、および、コンパイルされたセンサ測定値の統計的測定基準を計算することによって、前記基準値を判定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御回路は、前記特定のパラメータの前記モニタリングされたばらつきを前記特定のパラメータの前記基準ばらつきと比較し、前記特定のパラメータの前記2つのモニタリングされた値の間の前記モニタリングされたばらつきに応じて偏差状態を検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記偏差状態は、前記特定のパラメータの前記2つのモニタリングされた値の間の前記モニタリングされたばらつきであって、前記基準ばらつきを前記指定許容差よりも大きく超過する、前記モニタリングされたばらつきに応じて検出される、請求項12に記載の方
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述される発明主題は、エネルギー貯蔵システムについて使用される偏差検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵システムは多数の電池を利用することがあり、管理およびモニタリングするのに困難となり得る。1つの電池における、または、複数の電池から成るモジュールにおける故障は望ましくなく、同一または異なるモジュール内の他の電池に二次損傷を引き起こす可能性がある。エネルギー貯蔵システムをモニタリングするための既知のシステムは、センサ測定値を、事前設定された絶対的限界または閾値と比較し、もしセンサ測定値の1つ以上が、事前設定された温度閾値などの、対応する事前設定された限界を超える場合は、措置条件/警報条件を始動する。しかし、既知のシステムは、事前設定された限界を超えるまで故障を検出できないため、潜在的な故障の検出が比較的不正確、および/または、比較的遅くなる可能性がある。さらに、既知のシステムは、修理の提供や貯蔵システムの影響箇所の隔離を目的とした、故障の場所(例えば、数千のうちのどの電池が影響を受けているか)、故障の種類(例えば、発火、溶接不良、センサ機能不全等)などの、損傷を低減するために使用できる追加的な情報を、たとえそれがあったとしても、ほとんど提供できない可能性がある。エネルギー貯蔵システムを保護し二次損傷を低減するために、故障およびその故障に関する追加的な情報を、早期に検出するための方法および/またはシステムを有することが望ましいかもしれない。
【発明の概要】
【0003】
1つ以上の実施形態では、センサの第1のグループと、1つ以上のプロセッサを含む制御回路とを含むシステムが提供される。センサの第1のグループは、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵モジュールに関連する。第1のグループのセンサは、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上パラメータを表わす、センサ測定値を生成するように構成される。制御回路は、センサによって生成されるセンサ測定値を受け取り、且つ、エネルギー貯蔵モジュールに関連する特定のパラメータの基準値または基準ばらづきの1つ以上を、センサ測定値に少なくとも部分的に基づいて、判定するように構成される。制御回路は、特定のパラメータについてモニタリングされた値またはモニタリングされたばらつきを、第1のグループのセンサによって生成されるセンサ測定値に基づいて、特定のパラメータの基準値または基準ばらつきと比較し、指定許容差より大きい偏差を検出するように構成される。
【0004】
1つ以上の実施形態では、エネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値を取得する工程を含む方法が、提供される。エネルギー貯蔵モジュールは、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含む。センサ測定値は、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表わす。方法は、エネルギー貯蔵モジュールに関係する特定のパラメータの、モニタリングされた値またはモニタリングされたばらつきの1つ以上を、特定のパラメータの基準値または基準ばらつきの1つ以上と比較する工程を含む。モニタリングされた値またはモニタリングされたばらつきの1つ以上、および基準値または基準ばらつきの1つ以上は両方とも、センサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値に少なくとも部分的に基づく。方法は、基準値または基準ばらつきから、指定許容差より大きく偏差する、モニタリングされた値またはモニタリングされたばらつきの1つ以上に応じた偏差状態を検出する工程を含む。方法はさらに、モニタリングされた偏差している値またはモニタリングされた偏差しているばらつきの1つ以上が基づく、センサ測定値を生成する第1のグループの第1のセンサを識別する工程、および、第1のセンサによって生成されるセンサ測定値に少なくとも部分的に基づいて、偏差状態の原因を推定する工程を含む。
【0005】
1つ以上の実施形態では、1つ以上のプロセッサを有する制御回路を含むシステムが提供される。制御回路は、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵モジュールに関連する、センサの第1のグループによって生成される、センサ測定値を取得するように構成される。センサ測定値は、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表わす。制御回路は、1つ以上のパラメータの特定のパラメータを表わすセンサ測定値を、特定のパラメータの基準値または特定のパラメータの基準ばらつきの1つ以上と比較するように構成される。制御回路は、センサ測定値の1つ以上が、基準値または基準ばらつきから、指定許容差より大きく偏差していることを検出すると、それに応じて、1つ以上の偏差するセンサ測定値の、少なくともいくつかを生成する第1のグループの第1のセンサを識別し、第1のセンサによって生成されるセンサ測定値に少なくとも部分的に基づいて偏差の原因を推定し、且つ、推定原因に基づいて1つ以上の是正措置を開始する制御信号を生成するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
ここで、添付図面を簡単に参照する:
【
図1】開示の実施形態に従う、偏差検出システムの概略図である;
【
図2】1つの実施形態に従う、偏差検出システムを組込む車両システムの概略図である;
【
図3】1つの実施形態に従う、偏差検出システムの制御回路の作動を図示するブロックフロー図である;
【
図4】1つの実施形態に従う、エネルギー貯蔵モジュールに関連する温度センサによって生成される、センサ測定値をプロットしているグラフである;および、
【
図5】1つの実施形態に従う、エネルギー貯蔵システムにおける偏差状態を検出し、それに対応するための方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記述される1つ以上の実施形態は、エネルギー貯蔵システムの作動中の偏差検出のためのシステムおよび方法を提供する。本明細書に記載されるいくつかの偏差検出システムおよび方法は、エネルギー貯蔵モジュールの予期される(または基準となる)挙動をモデル化/観察すること、および、エネルギー貯蔵モジュールの観察される挙動と予期される挙動との間の偏差に基づく、偏差状態を検出することに基づき得る。予期される挙動は、パラメータ値、経時的パラメータ値(例えばプロットライン)、経時的パラメータ値の変化(例えば斜線)、パラメータ値のばらつき(例えば範囲)などの形式で、判定され得る。予期される挙動を表すために使用されるパラメータは、センサによって直接測定され得る測定パラメータ、および/または、センサ測定値の関数として導出され得る、導出パラメータまたは変換パラメータであり得る。本明細書に使用される通り、予期される挙動を表わすパラメータ値およびパラメータばらつきは、基準値および基準ばらつきと呼ばれる。
【0008】
同様の作動条件にさらされる、グループ内のいくつかのアイテムは、同様に動作することが期待され得る。例えば、同じモジュール中の異なる電池の温度をモニタリングする温度センサは、同様の温度測定値を生成すると期待され得る。さらに、同様の環境条件、充電状態および電力負荷にさらされ得る、異なるモジュール中の温度センサは、同様の温度測定値を生成すると期待され得る。逆に、もし共通の車両の2つのエネルギー貯蔵モジュールが、作動条件において既知の差異にさらされると、2つのエネルギー貯蔵モジュールの間の予期される(または基準となる)温度差が判定され得る。したがって、もし温度センサの少なくとも1つが、期待され得るものから偏差する温度測定を記録すると、この不一致は、電池、センサまたはエネルギー貯蔵システムの別の構成要素に関連する機能不全が存在する可能性を示す。これらの例においては絶対温度が言及されるかもしれないが、本明細書の実施形態においては、温度の変化率を含む、温度に基づく導関数もまた考慮され得る。さらに、本明細書に開示される実施形態はまた、電圧、電力、電流等など、温度に加えて他のパラメータを考慮する。
【0009】
事前設定された絶対的限界または閾値を超えるパラメータの測定値に基づいて、警報条件を検出する既知のエネルギー貯蔵モニタリングシステムとは対照的に、偏差状態は、予期される(または基準となる)挙動からの過度の偏差に基づいて検出され得る。本明細書に開示される偏差検出システムは、潜在的故障の検出を、既知のシステムより早期に提供し得る。例えば、既知のシステムが摂氏40度(℃)の事前設定温度閾値を有する場合、既知のシステムは、センサが少なくとも40℃であり得る温度測定を生成して初めて、潜在的故障を検出する。しかし、本明細書に記載される偏差検出システムは、温度が40℃を超える前に、潜在的故障を検出することができる可能性がある。例えば、測定温度値が、温度の基準(例えば予期される)値または基準ばらつき(分散)から指定許容差を超えて偏差すると、たとえ測定温度値は40℃未満であっても、偏差検出システムは、偏差状態を検出する。早期検出によって、偏差検出システムは、発火または熱暴走などの1つ以上の電池の故障、および/または、センサなどの他の構成要素の故障によって引き起こされる損傷を防ぎ得る、または少なくとも、損傷の程度を軽減し得る。
【0010】
エネルギー貯蔵システムの潜在的故障の早期検出を提供することに加え、本明細書に開示される偏差検出システムは、損傷と遅延の場所をつきとめ、損傷と遅延を診断し、損傷と遅延を緩和するのに有用な追加的情報を提供し得る。例えば、偏差検出システムは、偏差状態を引き起こした、偏差するセンサ測定値を生成した1つ以上の個別のセンサを識別することが可能で、潜在的故障の正確な位置特定を可能にする。さらに、偏差検出システムは、発火や熱暴走などからの損傷の広がりを防ぐ、または、少なくとも緩和するために、偏差状態を検出するとすぐに、1つ以上の対応処置または是正処置を自動的に開始し得る。対応措置は、エネルギー貯蔵モジュール間の電流伝達を阻害することにより1つ以上のエネルギー貯蔵モジュールを隔離すること、アクティブ冷却を開始すること、鎮火を開始することなどを含み得る。偏差検出システムはさらに、偏差状態の原因を推定するために、別の、特定の不良状態に関連して予期される挙動に基づく同じパラメータおよび/または別のパラメータを表わすセンサ測定値を使って、偏差するセンサ測定値を分析し得る。例えば、エネルギー貯蔵デバイスは、偏差状態が、機能不全状態のエネルギー貯蔵デバイス(例えば電池)、機能不全状態のセンサ、溶接不良、短絡、機能不全状態の冷却システム、2つのエネルギー貯蔵デバイスを接続する故障したタブ等によって引き起こされ得ると推定し得る。
【0011】
偏差状態の原因の推定は、偏差検出システムに、故障特有の是正措置を講じること、または少なくとも、提案することを可能にする。例えば、原因が機能不全状態のセンサであると推定され得る場合は、偏差検出システムは、センサに修理または交換のフラグを立て、および/または、センサからのその後の測定値を無視、または、置き換え得る。他方、原因が発火または熱暴走にさらされた(または、さらされる危険性のある)機能不全状態の電池であると推定され得る場合は、偏差検出システムは、電池からの2次損傷の広がりを防ぐために、電池を隔離する、アクティブ冷却を開始する等を行い得る。したがって、本明細書に記載される偏差検出システムは、一旦絶対的限界または閾値が超えられた可能性がある場合、単に一般的な警報を提供する代わりに、異常の早期発見および、異常の位置、推定される種類と原因などの追加的情報を提供することができ、それらは、エネルギー貯蔵システムの保護と操作を強化するために使用され得る。
【0012】
1つ以上の実施形態では、システムは、偏差状態を検出するとすぐ、最悪のシナリオを仮定し、1つ以上の即時の暫定措置を自動的に講じ得る。例えば、最悪のシナリオは、エネルギー貯蔵モジュールが発火したり、および/または、熱暴走にさらされたりする可能性がある。したがって、システムは、偏差状態の原因を推定する前に、発火および/または熱暴走からの潜在的損傷を緩和するために、鎮火を実施する、エネルギー貯蔵モジュールを電気的に隔離する、車両の性能を抑える等によってなどの、即時の措置を講じ得る。もし、偏差状態の原因がその後、機能不全状態のセンサ、または、最悪のシナリオほど厳しいわけではないかもしれない別の原因であり、発火または熱暴走などの可能性は無いと判断された場合、システムは、最悪のシナリオの仮定に基づき得る暫定措置を、停止および/または修正し得る。例えば、原因として発火および/または熱暴走を除外した後すぐに暫定措置を修正することによって、システムは、エネルギー貯蔵デバイスへの負荷を増加させる、車両の作動を維持させる等が可能になる。他方、エネルギー貯蔵モジュールが不良状態にあると判定され得る場合、システムは暫定措置を維持し得る。原因の推定に基づいて処置を維持および/または変更するという偏差検出システムの能力は、既知のシステムより有利であり得る。例えば、既知のシステムが偏差を検出すると、エネルギー貯蔵モジュール、車両等の作動を自動的にシャットダウンし、他の追加的な作動を可能にする前に、オペレータによる点検を要求し、それが、効率を低下させ、挙げられているタスクの作動速度を著しく低下させる。
【0013】
1つの実施形態によれば、偏差検出システムは、アルゴリズムによって作動する。アルゴリズムの最初の部分は、それぞれの電池、電池のグループ、センサ、および/または、センサのグループが、同時に故障しないという想定の下で、予期される挙動を判定することであり得る。予期される挙動は、作動条件と組み合わされた物理学ベースのモデルを通して発展され得る。例えば、充電状態や電池の内部インピーダンスなどの、エネルギー貯蔵モジュールの任意のある特性を与えられると、エネルギー貯蔵モジュールの基準電圧が判定され得る。貯蔵される電流の(例えば、単位アンペア時間ごとの)ある変化に対しては、予期される電圧変化がある程度生じる可能性がある。予期される挙動をモデル化することに加え、または、予期される挙動をモデル化することに代わる選択肢として、予期される挙動は、貯蔵モジュールの履歴および作動を、経時的に追跡することを通して判定され得る。また、予期される行動は、エネルギー貯蔵デバイス(例えば電池)のパラメータを、同じモジュールおよび/または他のモジュール中の、他のエネルギー貯蔵デバイスと比較することに基づいて判定され得る。直列接続されている電池にはすべて、任意の単位あたりのアンペア時間の変化に対して、同じ方向の電圧変化が起こるはずであると予期され得る。第1の非限定的な例において、もし、電圧が1つの電池に対して低下するが、他の直列接続されている全てのセルに対して増加し得る場合、問題が存在すると演繹的に推測し得る。別の非限定的な例において、電圧が1つのセルに対して、同じモジュール内の他の全てのセルに対するよりもはるかに速く増加し得る場合、偏差検出システムは、溶接破損を偏差の原因として識別し得る。電圧に加えて、温度、電力等などの他のパラメータは、偏差検出システムの同じ例または別の例にて利用され得る。
【0014】
アルゴリズムは、偏差状態の原因を推定するために、複数の異なるパラメータを利用し得る。例えば、溶接破損を伴う状態では、電圧増加の速度が速いだけでなく、溶接破損を伴うセルの抵抗および温度は、同じモジュール中の別のセル、または、同様の電流を流す別のモジュール中のセルより大きくなるはずである。本明細書に開示される偏差検出システムは、物理学ベースのモデルを比較を通じた予想と組み合わせ、センサ故障と不正確なモデルを区別することが可能である。現実とモデルとの間のいくらかの誤差は、許容可能であり得る。したがって、偏差検出システムは、指定許容差の形で、予期される偏差も包含する。予期される偏差は、センサの不確かさや、温度勾配などの設計ばらつきが原因である可能性がある。内部抵抗が経時的に変化し得るので、予期される偏差も、電池の運用寿命の経過を通じて変化し得る。パラメータの予期される挙動および予期される偏差を判定することにより、偏差検出システムは、問題が起きた時には検出し、問題の根本原因を判定し、且つ、適切な処置を講じることができる。
【0015】
図1は、開示の実施形態に従う、偏差検出システム(100)の概要図であり得る。偏差検出システムは、複数のセンサ(103)、および、センサ(103)に操作可能に接続される制御回路(104)を含む。センサは、エネルギー貯蔵システム(102)の様々なパラメータをモニタリングする。センサによって測定されるパラメータは、温度、電圧、充電状態、電荷容量、抵抗、圧力、冷却液流速等を含み得る、冷却液は、空気または液体などの流体であり得る。
【0016】
上にリストされる異なるパラメータは、検出システムによる使用のための、1つ以上の特定のパラメータをモニタリングするためにそれぞれ特別に構築された異なるセンサによって、測定され得る。例えば、温度は、サーミスタ、熱電対、抵抗温度検出器(RTD)等の、1つ以上温度センサによってモニタリングされ得る。温度パラメータは、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスの温度、または、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイス近傍の環境温度を表し得る。電圧は、非接触電圧検出器などの、1つ以上の電圧センサによってモニタリングされ得る。電圧パラメータは、エネルギー貯蔵モジュールの電圧供給を表し得る。電流はホール効果センサ、フラックスゲート変圧器センサ等などの、1つ以上の電流センサによってモニタリングされ得る。電流パラメータは、エネルギー貯蔵モジュールに流入および/またはエネルギー貯蔵モジュールから流出する電気エネルギーを表し得る。充電状態は、電気エネルギーモジュール(またはそのデバイス)内に実際に存在する、電気エネルギーの量を表し得る。電荷容量は、電気エネルギーモジュール(またはそのデバイス)内に貯蔵され得る、電気エネルギーの量を表し得る。充電状態、および/または、電荷容量は、内蔵されるバッテリーテスターによって、または、電圧センサおよび電流センサからのセンサ出力に基づいて、測定され得る。例えば、充電状態、および/または、電荷容量は、測定される電流および電圧の出力に基づき計算され得る。抵抗は、電気エネルギーモジュール(またはその装置)を通る電流の流れに対する阻害を表し得る。抵抗は、オームの法則を利用することにより、電圧センサおよび電流センサからの、センサ出力に基づいて測定され得る。電流センサと電圧センサは、抵抗を測定するために、マルチメーターへ統合され得る。圧力は、エネルギー貯蔵モジュールの周りの環境圧力を指す可能性があり、圧力変換器、圧電素子等などの、圧力センサによって測定され得る。冷却液流速は、空気、冷媒、液体、(空気以外の)ガス等などの冷却液の流速を指し、それは、1つ以上の電気エネルギーモジュールによって生成される熱を吸収および放散するために、1つ以上の電気エネルギーモジュールを横切って流れるように指向される。冷却液流速は、回転式ベーンメータ、熱線マスフローセンサ、冷線マスフローセンサ、膜センサ等などの、流量センサによって測定され得る。
【0017】
エネルギー貯蔵システムは、車両を推進させるためなど、仕事を提供する際に使用されるエネルギーを貯蔵する。エネルギー貯蔵システムは、複数のエネルギー貯蔵モジュール(106)を含む。エネルギー貯蔵モジュールはそれぞれ、1台以上のエネルギー貯蔵デバイス(108)((
図1の「ESD」)を含む。エネルギー貯蔵デバイスは、電池、コンデンサー等である可能性がある。それぞれのモジュールにおけるエネルギー貯蔵デバイスは、直列関係または並列関係などで、相互に電気的に接続され得る。図示される実施形態では、2つのエネルギー貯蔵モジュール(106A、106B)が示されることができ、且つ、エネルギー貯蔵モジュール(106A、106B)のそれぞれが、3つのエネルギー貯蔵デバイスのアセンブリを有する。エネルギー貯蔵モジュールは、わずか1つのエネルギー貯蔵デバイス、6つのエネルギー貯蔵デバイス、10のエネルギー貯蔵デバイス等など、他の実施形態では3つより多いまたは少ないエネルギー貯蔵デバイスを含み得る。2つのエネルギー貯蔵モジュールが示されるかもしれないが、エネルギー貯蔵システムは、10のエネルギー貯蔵モジュール、25のエネルギー貯蔵モジュール等など、追加のエネルギー貯蔵モジュールを含み得る。異なるエネルギー貯蔵モジュールは、ストリングを定義するために、直列関係または並列関係などで、相互に電気的に接続され得る。あるいは、エネルギー貯蔵モジュールは、相互に電気的に隔離され得る。代替的な実施形態では、エネルギー貯蔵システムがわずか1つのエネルギー貯蔵モジュールを有することがあり、且つ、単一のエネルギー貯蔵モジュールが複数のエネルギー貯蔵デバイスを含むことがある。
【0018】
偏差検出システムは、センサによって生成されるセンサ測定値を分析することにより、エネルギー貯蔵システムの作動をモニタリングし得る。例えば、センサは、第1のグループ(110)および第2のグループ(112)に配置され得る。第1のグループは、第1のエネルギー貯蔵モジュール(106A)に関連する可能性があり、且つ、第2のグループ(112)は第2のエネルギー貯蔵モジュール(106B)に関連する可能性がある。例えば、第1のグループのセンサは、第1のエネルギー貯蔵モジュールの様々なパラメータをモニタリングする。第1のエネルギー貯蔵モジュールの様々なパラメータは、第1のエネルギー貯蔵モジュールのエネルギー貯蔵デバイスのそれぞれのパラメータを含む。図示される実施形態では、第1のグループのセンサは、温度センサ(114)、電圧センサ(116)および電流センサ(118)を含む。異なる1組の温度センサは、エネルギー貯蔵デバイスの各々の温度を測定することができ、その結果、第1のグループには、3つのエネルギー貯蔵デバイスの温度を測定する6つの温度センサが存在する可能性がある。第1のグループは3つの電圧センサを含み、それらの各電圧センサは、3つのエネルギー貯蔵デバイスのうちの異なる1つ(または、並列配置の場合は、1つのエネルギー貯蔵デバイス群)にわたる電圧を測定するように構成される。第1のグループは、第1のエネルギー貯蔵モジュールを通る電流伝導を測定する、単一の電流センサを有する。第2のエネルギー貯蔵モジュールは、
図1の第1のエネルギー貯蔵モジュールのレプリカである可能性があり、且つ、センサの第2のグループは、第1のグループのレプリカである可能性がある。センサのタイプ、センサの数、および/または、センサの配置は、用途に特有のパラメータに基づき選択され得る。例えば、第1のグループおよび/または第2のグループは、抵抗、充電状態、電荷容量、圧力、冷却液流速等を測定するセンサを含み得る。適切なセンサは、エネルギー貯蔵システムのエネルギー貯蔵モジュールの少なくとも1つに関連し得る。センサの隣接性、間隔、感度、およびタイプは、本発明のシステムの態様を支持するための用途にて活用され得る。
【0019】
制御回路(104)は、エネルギー貯蔵システムの作動をモニタリングし、且つ、損傷を限定的なものにとどめるように機能不全および/または故障に対処するための効率的で迅速な是正を講じる目的で、エネルギー貯蔵システムに関連するセンサによって生成されるセンサ測定値を取得、且つ、分析することができる。制御回路は、プログラムされた指示の1つ以上のセット(例えばソフトウェア)に基づく作動を実行する、コンピュータプロセッサまたは他のロジックベースのデバイスなどの、1つ以上のプロセッサ(120)と関連する電気回路を含む。制御回路が作動するプログラムされた命令は、メモリ(122)などの、有形で非一時的な(例えば一時的な信号ではない)コンピュータが読取り可能な貯蔵媒体上に保存され得る。メモリは、1つ以上のコンピュータハードドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、EEPROM等を含み得る。あるいは、制御回路(104)の作動を命じる命令は、プログラマブルゲートアレイ(fpga)、結合プログラマブルロジックデバイス(cpld)、および/または、他のハードウェアで形成される有線接続ロジックによってなど、制御回路のロジックへ有線接続され得る。ある実施形態では、制御回路は、電気ケーブル(124)、接触器、光ケーブル、サーキットトレース等などの導電経路を経由してセンサに導電接続されることが可能で、制御回路は導電経路経由でセンサ測定値を取得する。随意に、センサの少なくともいくつかは、制御回路に無線で接続されることが可能で、センサ測定値を無線で制御回路(104)に伝達することができる。制御回路は、第1のエネルギー貯蔵モジュールに関連した第1のグループ、および第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連した第2のグループの、両方のセンサによって生成されるセンサ測定値を取得する。
【0020】
制御回路は、センサによって生成されるセンサ測定値に基づいて、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを判定する。特定のパラメータは、温度、電圧、電流等などの、エネルギー貯蔵モジュールに関連する1つ以上のセンサによって直接測定され得る、測定パラメータであり得る。随意に、特定のパラメータは、センサのいずれによっても直接測定されたものではなく、むしろ1つ以上のセンサ測定値の関数として導出され得る、導出パラメータ、または、変形パラメータであり得る。導出パラメータの第1の非制限的な例は電力である可能性があり、電力は、電流および電圧センサの測定値から導出され得る。導出パラメータはまた、測定パラメータ(例えば温度の平均)または他の導出パラメータ(例えば電力の平均)についての、平均、中央値、最頻値、等などの、統計的測定基準を含み得る。特定のパラメータに関する他の非制限的な例は、RMS(二乗平均平方根)、電流、高調波電流、充電状態、容量、抵抗などを含み得る。本明細書には、単一の特定のパラメータについての基準値および/または基準ばらつきが記載されているかもしれないが、制御回路は、偏差状態を判定するために、複数の異なる、特定のパラメータのそれぞれの基準値および/または基準ばらつきを判定し得ることが認識され得る。
【0021】
本明細書により詳細に記載される通り、基準値および/または基準ばらつきは、第1のエネルギー貯蔵モジュールをモニタリングする第1のグループのセンサのセンサ測定値、第2のエネルギー貯蔵モジュールをモニタリングする第2のグループのセンサのセンサ測定値(およびエネルギー貯蔵システムに関連する任意の追加的センサ測定値)、エネルギー貯蔵システムの作動パラメータ、貯蔵モジュールのエネルギー貯蔵デバイス(例えば電池の化学的性質)の固有の特性、エネルギー貯蔵についての履歴情報(例えば運用年数、健全性など)、および/または、他のエネルギー貯蔵モジュールから観察される履歴情報(例えばトレンド)に基づき得る。基準値および/または基準ばらつきは、経時的に変化し得る。
【0022】
あるパラメータに対する基準値が判定され得る方法はいくつかあり得るが、それらは、同じモジュール内、同じストリング内、別のストリング中のパラメータを比較すること、別の推進力、および、物理または組み合わせによってなどを含むが、これに限定されない。制御回路は、これらの方法の1つ以上を用いて、同じパラメータに対する複数の基準値を判定し得る。これらの基準値の各々が、関連する値、分散および/または信頼区間を有するであろう。例えば、モジュール内のセルの温度は、センサが同じ実装に含まれていることにより、ストリング全体のセルの温度より分散が少ないと期待され得る。同じパラメータおよびそれらの関連する分散/信頼区間のための基準値の各々は、伝達関数を通じて、単一の基準値および基準分散/信頼区間へと統合され得る。そのような伝達関数の1例は、より小さい分散を有する基準値により大きな重みを割り当てることができたり、または、ソースに基づいてより大きな重み付けをする、加重平均であり得る。例えば、モジュール内のデータから導出される基準値は、ストリング内の他のモジュールからのデータから導出される基準値に比べ、高い重み付けがなされ得る。同様に、(モジュールがその中に存在する)ストリング内のデータから導出される基準値は、隣接するストリングのモジュールおよび/またはストリングからのデータから導出される基準値に比べ、高い重み付けがなされ得る。
【0023】
第1のエネルギー貯蔵モジュールの作動をモニタリングするために、制御回路は第1のグループのセンサからセンサ測定値を受け取り、これらのセンサ測定値に基づき、特定のパラメータについての、モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきを判定する。例えば、特定のパラメータにおける基準値および/または基準ばらつきが制御変数を表わす場合、モニタリングされた値および/またはモニタリングさえたばらつきは、実験変数を表わす。基準値および/または基準ばらつきと同様に、特定のパラメータについてのモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきは、直接測定されたセンサ測定値であったり、または、直接測定されたセンサ測定値に基づいて導出された計算値であり得る。ある非限定的な例では、特定のパラメータが温度であり得る場合、制御回路は、第1のグループ内の対応する温度センサのすべてによって生成される温度測定値として、モニタリングされた値を判定し得る。別の非限定的な例では、特定のパラメータが電力であり得る場合、制御回路は、電流測定値に電圧測定値を乗じてることにより導出される電力計算値として、モニタリングされた値を判定し得る。モニタリングされたばらつきは、複数のモニタリングされた値における差異を表す。例えば、モニタリングされたばらつきは、異なる電圧および電流測定値に基づき得るエネルギー貯蔵モジュールの2つの異なる電力計算値を、等しいものとし得る。
【0024】
モニタリングされた値および/またはばらつきを判定した後、制御回路はモニタリングされた値および/またはばらつきを、特定のパラメータの基準値および/またはばらつきと比較し得る。例えば、特定のパラメータが温度であり得る場合、制御回路は、第1のグループの温度センサによって生成される温度測定値のすべてを、基準値および/または基準ばらつきと比較し得る。モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきの少なくとも1つが、基準値および/または基準ばらつきから、指定許容差または許容範囲を越えて偏差する場合、制御回路は偏差状態を検出する。偏差状態は、潜在的故障が検出され得る状態を表す。潜在的故障という用語は、機能不全状態のセンサ、エネルギー貯蔵デバイスを接続する故障または破損したタブ、溶接不良、機能不全状態の冷却システム、機能不全状態のエネルギー貯蔵デバイス(発火または熱暴走にさらされ得る)等などの、異なる重症度のシナリオの広いカテゴリーを表し得る。偏差状態を検出する際は、制御回路は、偏差状態の原因が判定され、且つ、偏差状態が是正され得るまで少なくとも一時的に、オペレータに知らせる、および/または、エネルギー貯蔵モジュール間の電流伝導を阻むことによって、エネルギー貯蔵モジュールを隔離するなどの、プログラムされた指示に応じて1つ以上の対応措置を講じることが可能である。
【0025】
随意に、制御回路は、制御回路およびセンサを有する偏差検出システムの構成要素を意味する通信デバイス(126)に、操作可能に接続され得る。制御回路は、車両コントローラ、人間オペレータ等などの意図される受信者へ、通信デバイスによって伝達され得る、1つ以上の制御信号を生成し得る。通信デバイスは、トランシーバー(または、個別の送信器および受信機の構成要素)、アンテナ(128)、および、コマンドメッセージ、リプライメッセージ、ステータスメッセージ等などの様々な種類のメッセージの、無線の双方向コミュニケーションのための関連する電気回路を含み得る。通信デバイスは、特定の指定受信者および/または一斉メッセージに対して、メッセージを送信し得る。随意に、通信デバイスは、同じ車両における、または電気的に接続されている別の車両間における、複数のエネルギー貯蔵システム間などの、有線接続によるメッセージ通信のための電気回路を含み得る。
【0026】
図2は、ある実施形態に従って偏差検出システム(100)を組み込む車両システム(200)の概略図である。車両システムは、ルート(204)に沿って移動する。図示される実施形態における車両システムは、車両編成を表す。適切な車両編成は、駆動力生成車両(206)(例えば、車両206A-C)、および、カプラー(210)で機械的に接続される(そして、随意に電気コネクタを含み得る)非駆動力生成車両(208)(例えば車両208A-B)の両方を有する鉄道車両編成(例えば電車)を含み得る。この例において、駆動力生成車両は機関車であるかもしれず、非駆動力生成車両は鉄道車両であるかもしれない。
【0027】
他の適切な車両編成は、通信でリンクされた路上走行の車グループを含み得る。1つの実施形態では、車両はリモートコントロールされるか、または、自走する。車両システムは、相互に物理的に離れているかもしれないが、ロジック上結び付けられ得るいくつかの車両から形成されることが可能で、その結果、車両間のコミュニケーションが、他車両に対する各車両の動きを調整できるようにする。追加的に、適切な車両システムは、複数の車両(駆動力生成型か否かにかかわらない)の代わりに、駆動力生成型の単一の車両から形成され得る。
【0028】
適切な駆動力生成型の車両は、ルートに沿って車両システムを推進させるための牽引力を生成する、個別の駆動システム(212)を含み得る。各駆動システムは、車両の異なる車軸(214)および/または車輪(216)と作動可能に結合された1つ以上のトラクションモータ(213)を有し得る。トラクションモータは、車軸および/または車輪と、1つ以上のギア、ギアセット、または他の機械装置を通して接続されることが可能で、その結果、トラクションモータによって生成される回転運動を、車軸および/または車輪の回転に変換する。異なるトラクションモータが、異なる車軸および/または車輪と作動可能に接続されることが可能で、それにより、停止している可能性のある(例えばOFF状態の)トラクションモータが対応する車軸および/または車輪を回転させない一方で、作動している(例えばON状態の)トラクションモータが対応する車軸および/または車輪を回転させる。各駆動システムはさらに、トラクションモータに電力を供給するエネルギー貯蔵システム(202)を含む。駆動力生成型の各車両上のエネルギー貯蔵システムは、同じか、または、
図1に示されるエネルギー貯蔵システム(102)に類似し得る。例えば、駆動状態にあるトラクションモータは、エネルギー貯蔵システムによってトラクションモータに提供される電流によって駆動され得る。回生制動状態では、トラクションモータは、車輪および/または車軸の回転に基づいて生成される電流を、エネルギー貯蔵システムへ供給することが可能で、そこのエネルギー貯蔵デバイス(例えば電池など)を充電する。
【0029】
センサおよび制御回路(両方とも
図1に示される)を含む偏差検出システムは、エネルギー貯蔵システムの作動をモニタリングするために、駆動力生成型車両の各々に搭載配置され得る。随意に、異なる個別の偏差検出システムが、3台の駆動力生成型車両の各々に搭載配置され得る。あるいは、車両システムに搭載されている単一の制御回路(例えば主制御回路)は、エネルギー貯蔵システムのすべてをモニタリングするために、異なる車両に搭載配置されるセンサからのセンサ測定値を取得し得る。
【0030】
図2が鉄道車両編成上に組み込まれる偏差検出システムを図示する一方で、本明細書に記載される実施形態は、他の種類の車両編成および/または、オフハイウェイ車両(例えば採鉱用車両、または、公道走行用に設計または許可されていない他の車両)、艦船、自動車等などの、鉄道車両以外の車両に適用され得る。さらに、本明細書に記載される偏差検出システムは、任意の大型のエネルギー貯蔵システムをモニタリングするために、移動を伴わない産業の非車両用の用途においてでも、利用され得る。
【0031】
図3は、1つの実施形態に従う、偏差検出システムの制御回路の作動を図示するブロックフロー図である。(302)で、制御回路は、特定のパラメータについての、基準値および/または基準ばらつきを判定する。基準値および/またはばらつきは、モニタリングされている可能性のあるエネルギー貯蔵モジュール(または、それのエネルギー貯蔵デバイス)の、予期される挙動を表わす。同様の作動条件にさらされる同じエネルギー貯蔵システム(または、異なるエネルギー貯蔵システムであっても)の中のエネルギー貯蔵モジュールは、同様に動作し、負荷や、エネルギー貯蔵モジュールに印加する電流の需要などの、共通の刺激に対して、同様のレスポンスを有すると予期され得る。同じエネルギー貯蔵モジュール内にある、且つ、異なるエネルギー貯蔵モジュールにわたる、エネルギー貯蔵デバイスは、同一または同様の特性を有し得る。これらの特性は、電池の化学的性質、容量、タイプ、年数/使用/健全性、ロット番号等を含み得る。基準値および/または基準ばらつきは、予期される挙動の数値表現であり得る。
【0032】
基準値は、単一の数値、経時的数値(例えば、プロットラインとしてグラフ上にプロットすることができる)、経時的数値の変化(例えば傾斜)、経時的数値の変化率等であり得る。例えば、基準値が経時的温度を表わす場合、温度センサのセンサ測定値は、任意の時刻において予期される温度のそれぞれの値、または、その近似であると予期されるであろう。ある実施形態では、基準ばらつきは、2つ以上のデータポイント間の計算された差異を表わし得る。例えば、10度の基準ばらつきは、同じエネルギー貯蔵モジュールに関連する温度センサのグループが、相互に10度を超えて異なる温度測定値を生成するはずがないことを示し得る。したがって、最低温度測定値は、最高温度測定値に対して、基準ばらつき(例えば10度)内であるはずである。基準ばらつきは、経時的に変化し得る。基準ばらつきは、システム中の異なる位置、デバイス中の異なる電圧等などの、作動条件に依存し得る。例えば、エネルギー貯蔵デバイスが、冷却液の流れに対して異なる位置にあることが知られている場合は、温度の基準ばらつきは、全てのデバイスが等しく、または、ほぼ等しく冷却液の流れにアクセスできる場合に比べて、より大きくなり得る。冷却液の流れに近いデバイスは、冷却液の流れから遠いデバイスより、低い温度を有すると予期されるであろう。別の実施形態では、基準ばらつきは、ある範囲の値を表わし得る。例えば、基準ばらつきは、上限と下限を表す2つの設定ポイント、設定ラインまたは設定面で定義される範囲であり得る。上限と下限の1つまたは両方の位置は経時的に変化する可能性があり、上限と下限の間の範囲の大きさも同様である。
【0033】
基準値および/または基準ばらつきは、制御回路によって受け取られる、または、制御回路がアクセス可能な、様々な入力データに基づき得る。例えば、第1のエネルギー貯蔵モジュールの特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを判定するのに使用される入力データは、局所的なセンサ測定値(304)、他のエネルギー貯蔵モジュールからのセンサ測定値(306)、作動条件(308)、エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性(310)、第1のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報(312)、および/または、他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報(314)を含み得る。
【0034】
局所的なセンサ測定値(304)は、第1のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサによって生成される生データを表わす。随意に、制御回路は、信号対ノイズの比率が低いもの、または、明らかに誤った読み取り値(例えば、他のセンサから、温度が変化し得るとわかり得る一方で、長期間にわたって変化しない、あるセンサからの温度測定値)など、質の低いセンサ測定値のいくつかを、除外または置き換え得えることができる。特定のパラメータが温度であり得る場合、制御回路は、
図1に示される第1のエネルギー貯蔵モジュールに関連する温度センサの6つすべてからのセンサ測定値を利用し得る。
【0035】
他のエネルギー貯蔵モジュールからのセンサ測定値(306)は、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連する、センサの第2のグループからのセンサ測定値を指し、また、同一のまたは異なるエネルギー貯蔵システムの他のエネルギー貯蔵モジュールからのセンサ測定値をも指し得る。例えば、温度の基準値および/または基準ばらつきを判定するために、制御回路は、温度測定値を、エネルギー貯蔵システム全体の温度センサの全て(または大部分)から、取得およびコンパイルし得る。
【0036】
作動条件(308)は、第1のエネルギー貯蔵モジュールの、目下の環境条件および作動を示す。例えば、作動条件は、第1のエネルギー貯蔵モジュールを囲む環境の、温度、気流、圧力、湿度等、を含み得る。作動条件はさらに、アクティブ冷却および/または加熱の比率を含み得る。バッテリー状態はもう1つの作動条件である可能性があり、モジュールの各エネルギー貯蔵デバイスの充電状態、電流を供給することまたは電流を受け取ることなどの、目下のモジュールの電荷移動運転、そして/または、目下のモジュールにおける負荷または電流需要を指し得る。エネルギー貯蔵モジュールにおける負荷は、エネルギー貯蔵モジュールが、電流をトラクションモータまたは補助モータに供給する割合(例えば、アンペア時間の比率)を表し得る。別の作動条件は、偏差検出システムが配置される車両が制動、惰走、加速、停車、停止等の最中であるか否かを指し得る、車両状態(例えば、鉄道車両用途における推進力の状態)である。
【0037】
エネルギー貯蔵モジュールの特性(310)は、エネルギー貯蔵デバイスの化学的性質(例えば電池の化学的性質)、エネルギー貯蔵デバイスのタイプおよび/またはモデル、エネルギー貯蔵デバイスのモデル化された熱特性等などの、固有の物理学ベースの特性を指す。モデル化された熱特性は、作動中に生じた熱を指すことがある。
【0038】
エネルギー貯蔵デバイスに関する履歴情報(312)は、エネルギー貯蔵デバイスおよび/またはエネルギー貯蔵デバイスの健全性を定義する、エネルギー貯蔵デバイス(108)の運用年数を指すことがある。例えば、エネルギー貯蔵デバイスの抵抗は、運用寿命にわたって徐々に増加すると予期され得る。健全性は、エネルギー貯蔵デバイスの状態を指すことがあり、これは運用寿命、エネルギー貯蔵デバイスの電荷容量、エネルギー貯蔵デバイスの目下の充電状態等を考慮し得る。例えば、完全に充電されたエネルギー貯蔵デバイスは、貯蔵エネルギーがより大きいために、部分的に電力消費されたエネルギー貯蔵デバイスに比べて、熱暴走に見舞われる可能性が高くなり得る。
【0039】
他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報(314)は、同じエネルギー貯蔵システムのものであろうと、第1のエネルギー貯蔵モジュールとは異なるエネルギー貯蔵システムのものであろうと、エネルギー貯蔵モジュールの性能に基づく、観察および傾向を指し得る。他のエネルギー貯蔵モジュールは、第1のモジュールのエネルギー貯蔵デバイスと同じ数および/または同じタイプのエネルギー貯蔵デバイスを含むなど、第1のエネルギー貯蔵モジュールに類似し得る。一例として、情報は、環境条件およびエネルギー貯蔵モジュールにかけられる負荷などの、特定の刺激に応答して観察される、他のエネルギー貯蔵モジュールの熱暖気率を含み得る。
【0040】
制御回路は、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを判定するために、入力データ(304)、(306)、(308)、(310)、(312)、(314)のすべてを利用し得る。例えば、制御回路は物理学ベースの計算上のモデルに、作動条件、エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性、および、エネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報を差し込み得る。物理学ベースの計算上のモデルは、入力データを変数として利用し複数の計算を含むアルゴリズムに基づいて、特定のパラメータにおける基準値および/または基準ばらつきを生成する、コンピュータプログラムであり得る。物理学ベースのモデルはさらに、局所的なセンサ測定値、他のエネルギー貯蔵モジュールからのセンサ測定値、および/または、他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報等の、追加情報を利用し得る。
【0041】
上に記述されるように、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきは、1つ以上の関数および1つ以上の測定値に基づく他の既知の関係から導出されることが可能で、その結果、基準値および/または基準ばらつきは、センサによって直接的に測定されるパラメータではなくなり得る。導出された特定のパラメータについての非制限的な例は、電力、RMS電流、高調波スペクトル、バイアス、抵抗、統計的測定基準(例えば、平均、中央値、最頻値、標準偏差、等)などを含む。非限定的な例において、特定のパラメータは統計的測定基準を表すことがあり、また、制御回路は、エネルギー貯蔵システム上に組み込まれたセンサによって生成される任意のパラメータを表わすセンサ測定値をすべてコンパイルし得る。したがって、温度パラメータについては、制御回路は、システムにおけるエネルギー貯蔵モジュールのすべてに関連する温度センサによって生成されるセンサ測定値を、コンパイルし得る。随意に、制御回路は、同じエネルギー貯蔵モジュールまたは同じエネルギー貯蔵デバイスに関連する、特定のセンサによって生成されるセンサ測定値にコンパイルされる、センサ測定値の範囲を狭める可能性がある。制御回路は、コンパイルされたセンサ測定値について統計学的計算を実施することによって、基準値および/または基準ばらつきを判定し得る。例えば、制御回路は、温度の基準値を、コンパイルされる温度測定値についての平均(average)(例えば平均(mean))、中央値、または他の指定値として、計算し得る。さらに、制御回路は、分散するセンサ測定値を低から高への分布で配置することが可能で、また、分布の指定パーセンタイルでの測定値を、分布の境界を定義する上限および下限として選択することにより、特定のパラメータの基準ばらつき(または範囲)を判定し得る。例えば、指定のパーセンタイルが40%および60%かであり得る場合、制御回路は、40パーセンタイルを表す分布のセンサ測定値を下限として指定することができ、60パーセンタイルを表す分布をのセンサ測定値を上限として指定することができる。制御回路は、他の実施形態の他の処理によって、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを判定し得る。
【0042】
制御回路は、エネルギー貯蔵モジュールの複数の異なる特定のパラメータのおのおのに対して、基準値および/または基準ばらつきを判定し得る。例えば、制御回路は、温度に関する基準値および/または基準ばらつき、電力に関する異なる基準値および/または基準ばらつき、RMS電流に関する異なる基準値および/または基準ばらつき等を判定し得る。
【0043】
(315)で、特定のパラメータのモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきが、判定され得る。モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきは、分析されている特定のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの、局所的なセンサ測定値((304)の)に基づき得る。上に記述されるように、特定のパラメータは、温度、電流、電圧等などの測定されたパラメータ、または、電力、平均温度、抵抗、RMS電流等などの導出されたパラメータを表し得る。作動条件、履歴情報、および他のエネルギー貯蔵モジュールからのセンサ測定値などの外部ソースは、モニタリングされる値および/またはモニタリングされるばらつきを判定するのに使用できない。
【0044】
(316)で、制御回路は、偏差の程度と比率を判定するために、モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきを、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきと比較する。比較は、電池の発火または熱暴走の発生など、構成要素の故障を示し得るセンサ測定値の異常値を検出することを目的として実施され得る。エネルギー貯蔵モジュールのモニタリングされた挙動は、センサによって生成される実測値に基づいて、予期される挙動と比較され得る。
【0045】
比較は、センサの精度による相違、センサのさまざまな経年による相違、実装状態のずれ、および/または、エネルギー貯蔵デバイスの位置による傾斜、 電池間の接続の品質の相違等を調製するように設計されているであろう、指定許容差を組み込む。指定許容差は、基準値の+/-2%、5%または10%などの固定の事前設定範囲、または、基準値からの標準偏差の事前設定度数(例えば、2度の標準偏差内)であり得る。温度パラメータについては、指定許容差は、パーセント、または、基準値から+/-2度、4度、6度または10度などの温度の単位の数値で設定され得る。随意に、指定許容差は動的で、電流、年数等の他の条件の関数であり得る。例えば、許容差は、エネルギー貯蔵モジュールを通る電流量に基づいて、変化および適応し得る。低電流率下では高電流率下に比べ、抵抗など電流に影響され得る変数のせいで、許容差が狭くなり得る。他の例においては、エネルギー貯蔵デバイスは、寿命後期に比べて寿命初期においての方が、予期されるものにより近い挙動をすると予期されるので、指定許容差は、エネルギー貯蔵モジュールが年数を経るにつれて経時的に増加し得る。
【0046】
指定許容差はまた、随意に、基準ばらつきにもあてはまる。例えば、温度測定間値間の基準ばらつきが10℃であり得る場合、指定許容差は、ばらつきの許容範囲を、11℃または12℃に広げ得る。したがって、2つの温度測定値間の相違が10.5℃であり得る場合、制御回路は、差異が基準ばらつきに抵触しないと判定し得る。たとえ記述された比較が、個々のセンサ値または個々の変換値に関し得るとしても、二次または三次元のベクトル比較(線または面のような)も検討され得ると理解され得る。
【0047】
(318)で、制御回路が、1つ以上の異常値または逸脱するモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきを検知することに応じて偏差状態を検知する。偏差するモニタリングされた値および/またはばらつきは、基準値および/または基準ばらつきからの指定許容差以上に偏差するモニタリングされた値および/またはばらつき(第1のエネルギー貯蔵モジュールに関連した1つ以上のセンサによって生成された局所的センサ測定値(304)に基づく)を表わす。これらの偏差するモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきが予めフィルタリングされたおよび/または置き換えられたセンサデータを含まないことは認識され得る。
【0048】
偏差状態が検知され得た後、制御回路は1つ以上の対応措置(320)を開始する。対応措置(320)は、他のモジュール(例えば第2のモジュール)からエネルギー貯蔵モジュールを隔離するために、エネルギー貯蔵モジュールへの及びからの電流伝導を阻害するなど、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件を少なくとも一時的に変更することを含む場合がある。例えば、エネルギー貯蔵モジュールが発火しているか、または、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスで熱暴走が起こっているもしれない場合、エネルギー貯蔵モジュールを隔離することは、他のエネルギー貯蔵モジュールに、熱暴走などの損傷の広がりを防ぐのに役立つであろう。対応措置はまた、モジュールの電流伝導の0以外の比率を調整する工程、モジュールに対して適用された指定負荷を生じさせる工程、モジュールの周辺の周囲温度を調整する工程、モジュールのまわりの空気流比率を調整する工程、アクティブ冷却を開始する工程、発火抑制を開始する工程、修繕および/または交換のためにモジュールにフラグを立てる工程、エネルギー貯蔵システムが設置されうる車両の出力を下げるか、さもなければ作動を変更する工程、または人間のオペレータに通知する工程、などを含んでもよい。制御回路は、偏差状態の検知に際して1つ以上のこれらの対応措置を開始するために自動的に制御信号を生成し得る。
【0049】
制御回路は、偏差状態の検知に際して、最悪のシナリオに基づいた1つ以上の暫定措置を自動的に始める場合がある。ある実施形態において、最悪のシナリオはエネルギー貯蔵デバイスに対する熱暴走および/または発火であり、それは同じ又は異なるモジュールの中の他のデバイスに広がり、重大な持続的損害および損傷の危険を生じる可能性を有する。従って、制御回路は、実際の原因が同程度に深刻でない場合でさえ、偏差状態の検知に際して熱暴走および/または発火に関連した1つ以上の暫定措置を開始し得る。暫定措置は、アクティブ冷却を強化する工程、を含むかもしれない、発火抑制を開始する工程、電気的にエネルギー貯蔵モジュールを他のモジュールから隔離する工程、エネルギー貯蔵システムの負荷を軽減する工程、車両の牽引力を下げる工程、オペレータに通知する工程、などを含む場合がある。
【0050】
ある実施形態において、制御回路は、どのセンサが偏差するモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきが基づくセンサ値を生成したかを判定し、および、これらのセンサにフラグを立てる場合がある。さらに、制御回路は、これらの特定のセンサによって生成されたセンサ測定値に少なくとも部分的に基づいた偏差状態の原因を評価し得る。本明細書に使用されるように、偏差状態の原因は、構成要素の識別および/または構成要素の状態を含む場合がある。例えば、制御回路は、1つ以上の溶接不良、機能不全状態のエネルギー貯蔵デバイス、機能不全状態のセンサ、2つのエネルギー貯蔵デバイスを接続する故障したタブ、などの原因を識別する場合がある。原因を推定した後に、制御回路は特定の推定原因に基づいた対応措置を調整し得る。例えば、推定原因が機能不全状態のセンサである場合、制御回路は、修繕または交換のためにそのセンサにフラグを立てる、オペレーターに通知する、センサを置き換える、など行う場合がある。加えて、制御回路は、機能不全状態のセンサが最悪のシナリオではないために、最悪のシナリオに基づいた一時的是正処置の実行を止める場合がある。例えば、制御回路は、エネルギー貯蔵システムの負荷を増加させる、車両の増加した性能を可能にする、アクティブ冷却を遅くする又は止める、鎮火を停止する、など行う場合がある。別の具体例において、推定原因が機能不全状態のエネルギー貯蔵デバイスかもしれない場合、発火または熱暴走による二次損傷の広がりを防ぐ又は妨げるために、制御回路は、エネルギー貯蔵デバイスおよび/またはモジュールの電気的隔離を維持する、アクティブ冷却を維持する、鎮火を維持する、などの、最悪のシナリオに基づいた一時的是正処置の実行を延長する場合がある。
【0051】
図4は、1つの実施形態に従う、エネルギー貯蔵モジュールに関連する温度センサ(例えば
図1に示される温度センサ(114))によって生成されたセンサ測定値を容易な理解のためにプロットするグラフ(400)の場合がある。グラフは、摂氏度の単位で温度を表わす垂直軸(402)、および秒の単位で時間を表す水平軸(404)、を含む。グラフは、エネルギー貯蔵モジュールに関連する6つの温度センサそれぞれによって生成されたセンサ測定値の具体例を表わす、6つのプロットライン(406A-F)を含む。エネルギー貯蔵モジュールは、
図1の中に示される第1または第2のエネルギー貯蔵モジュール(106A)、(106B)、のどちらかであってよい。第1のプロットライン(406A)は、モジュールの第1のエネルギー貯蔵デバイスに関連する温度センサのうちの1つによって生成された温度測定を表わし、および、第2のプロットライン(406B)は、第1のエネルギー貯蔵デバイスに関連する別の温度センサによって生成された温度測定を表わす。第3のプロットライン(406C)は、第2のエネルギー貯蔵デバイスに関連する温度センサのうちの1つによって生成された測定を表わし、および、第4のプロットライン(406D)は、第2のエネルギー貯蔵デバイスに関連する別の温度センサによって生成された温度測定を表わす。第5と第6のプロットライン(406E)、(406F)は、第3のエネルギー貯蔵デバイスに関連する2つの温度センサによって生成された測定を表わす。
【0052】
グラフ(400)は、基準(または期待)温度(例えば値)を経時的に表わすプロットライン(408)を含む。基準温度ラインは指定許容差(410)によって上下に隣接されるかもしれない。指定許容差(410)は、基準温度ラインの上に、上方にあるライン412まで、および、基準温度ラインの下に、下方にあるライン414まで、広がる。例示された実施形態において、指定許容差は基準温度ラインから+/-3度であってよい。例えば、基準温度ラインが400秒付近で22℃の場合、上方のラインは25℃であってよく、および、下方のラインは19℃であってよい。指定許容差は例示されたグラフにおいて静的かもしれないが、上述されたように、許容差は、作動条件、年数、などによって動的且つ経時的に異なる場合がある。さらに、許容差はグラフにおいて二次元のプロットラインによって表わされ得るが、許容差が多数のパラメータの関数であるなどの場合、平面に沿った三次元において表わされ得る。
【0053】
グラフにおいて示されるように、100秒において、6つの全測定(406A-F)が基準温度値について指定許容差内にあり得る。500秒において、何かが第3のプロットライン(406C)にかなり一貫した温度増加を示させ、それは他のプロットラインおよび基準温度ラインと異なる。第3のプロットライン(406C)は、900秒付近で32℃の温度に指定された絶対閾値(416)に交差する。従来の電池監視システムは、第3のプロットラインが閾値に交差するのに応じて900秒の時間において偏差を検知するかもしれない。本明細書に開示される偏差検出システムは、偏差についてより早い検出を提供し得る。例えば、制御回路は、第3のプロットラインが基準温度ラインから指定許容差より更に偏差するに応じて偏差状態を検知する場合があり、それは600秒またはその付近において第3のプロットラインが上方のラインに交差する時に生じる。従って、制御回路は、偏差する温度測定値が指定閾値を越える数分前に、偏差状態を検知し、および、対応措置を開始する場合があり、それは、処置を講ずるに先立ち閾値が交差されるまで待つことに比べ、損傷の広がりを防ぐか又は減らす場合がある。加えて、偏差は、本明細書に記載された偏差検出システムによって、表わされた温度の変化率が基準値の変化率から指定閾値マージンより大きく異なると判定されることにより、第3のプロットラインが上方にあるラインに交差する前にさえ、検知されることがあり得る。例えば、時間500~600秒の間のプロットラインの傾きは、指定閾値マージンより更に基準温度ラインの傾きから偏差する場合があり、および、偏差状態として制御回路によって検知され得る。
【0054】
グラフ(400)は、650秒またはその付近で第1のプロットライン(406A)の傾きが変化し、および、基準温度ラインの傾きから偏差することも示す。例えば、第1のプロットラインは基準温度ラインより速い温度増加を示す。第1のプロットラインは基準温度ラインから指定許容差より大きくは偏差しないが、制御回路は、第1のプロットラインと基準温度ラインとの間の傾きにおける偏差に基づき、偏差状態を検知し得る。さらに、またはその代わりに、制御回路は、第1のプロットラインと1つ以上の他のプロットライン-Fとの間の、基準ばらつきを超過するばらつきに基づいた偏差状態を検知し得る。例えば、制御回路は、同じエネルギー貯蔵デバイスに関連する温度センサのセンサ測定値の間の3℃の基準ばらつきを判定し得る(いかなる指定許容差も組み入れて)。第1と第2のプロットライン(406A)、(406B)は、同じエネルギー貯蔵デバイスに関連する2つの温度センサのセンサ測定値を表わす。グラフは、第1のプロットラインが、800~900秒の間のある時点において、3℃以上、第2のプロットラインから異なることを示す。従って、制御回路は、第1と第2のプロットラインとの間のばらつきが基準ばらつきを超過するのに応じて偏差状態を検知し得る(たとえ、第1のプロットラインが基準温度ラインの指定許容差内にとどまっても)。
【0055】
グラフは、偏差状態が、値、値における変化(例えば傾き)、値における変化率、センサ測定値におけるばらつき、などの、センサ測定値の経時的な諸特性に基づいて検知され得ることを示す。偏差状態は、グラフにおいて示される閾値などの事前設定される閾値を越えるいかなるセンサ測定値からも独立して検知され得る。例えば、代替的な実施形態における第3のプロットラインが上にあるラインを超過した後に、ラインが閾値を越えずに水平になるとしても、偏差検出システムは、温度の絶対値、プロットラインの傾き、プロットラインと他のモニタリングされた温度プロットラインとの間のばらつき、などに基づいて、偏差状態を検知することができる場合がある。偏差検出システムは、測定値に基づいて、ノイズが多いセンサ、および/または、故障したセンサを検知するように構成され得る。例えば、ノイズの多いセンサからの測定値に基づいて生成されたプロットラインは、より正確なセンサからの測定値に基づいたプロットラインよりも変動し得る。加えて、故障したセンサは、グラフ中で水平線として図示されるであろう、一定で、不変の測定値を提供し得る。ノイズの多いセンサ、および/または、壊れたセンサの検知に応じて、制御装置はこれらのセンサを無視、および/または置き換える場合がある。
【0056】
グラフは温度センサによる測定値をプロットするが、偏差状態は、温度に加えて又は代わりに、電流、電圧、充電状態、電荷容量、圧力、冷却液流速、および、いずれかの導出された又は変換された測定値(例えば、電力、RMS電流、抵抗、等)などの他のタイプのパラメータに基づいて、検知できることは理解されよう。
【0057】
図5は、1つの実施形態に従う、エネルギー貯蔵システムにおいて偏差状態を検知し、反応するための方法(500)であってよい。方法は、全体において、または一部において、
図1で、1つ以上プロセッサを含めて示される、制御回路(104)によって行なわれる場合がある。随意に、方法は追加の工程、より少数の工程および/または絵入りのフローチャートで例示されたものとは異なる工程を含む場合がある。
【0058】
さらに
図1~4によると、方法は(502)において始まり、そこでエネルギー貯蔵モジュールのパラメータを表わすセンサ測定値が得られる場合がある。センサ測定値は、エネルギー貯蔵モジュールに関連する第1のセンサのグループによって生成され得る。エネルギー貯蔵モジュールは、電池などの、しかしそれに限定されない、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含む。センサ測定値は、センサから直接、または、メモリやサーバなどの電子蓄積デバイスからセンサデータにアクセスすることにより、得られる場合がある。
【0059】
(504)においては、諸パラメータの中の特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきが判定され得る。例えば、特定のパラメータは、温度、電流、電圧、抵抗、充電状態、容量などの場合がある。基準値、および/または、基準ばらつきは、エネルギー貯蔵モジュールに関連する第1のセンサのグループによって生成されたセンサ測定値、少なくとも異なる第2のエネルギー貯蔵モジュール(106)に関連する第2のセンサのグループによって生成されたセンサ測定値、エネルギー貯蔵モジュール(およびそのデバイス)の固有の特性、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件、および/または、エネルギー貯蔵モジュールまたは他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報、に基づいて判定され得る。
【0060】
(506)においては、エネルギー貯蔵モジュールに関連する第1のグループの中のセンサから得られたセンサ測定値に基づく場合がある特定のパラメータを表わすモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきは、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきと比較され得る。第1のグループの中の関連する個々のセンサのセンサ測定値に基づいたモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきは、個別に基準値および/または基準ばらつきと比較され得る。例えば、特定のパラメータが電圧である場合、第1のグループの中の個々の電圧センサの電圧測定値が、基準値および/または基準ばらつきと比較され得る。別の具体例において、特定のパラメータが電力である場合、電圧センサと電流センサの電圧と電流の測定値が、基準の電力値および/またはばらつきと各々比較され得る電力値および/またはばらつきを抽出するために、使用され得る。
【0061】
(508)においては、特定のパラメータを表わすモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきのすべては、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきの指定許容差内にあるかどうかを判定され得る。上述のいずれのモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきも基準値および/または基準ばらつきから指定許容差より大きく偏差しない場合、応答は「はい」であり、および、方法は(502)にもどる場合がある。他方、および/または少なくとも1つのモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきが、基準値から許容差より大きく偏差する場合、応答は「いいえ」であり、および、方法は(510)に続く場合がある。
【0062】
(510)においては、偏差状態は、モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきの1つ以上が、基準値および/または基準ばらつきから許容差より大きく偏差している値および/またはばらつきであることを判定することに応じて検知され得る。偏差状態は、起こりうる故障または機能不全が1つ以上の構成要素、例えば、エネルギー貯蔵デバイス、センサ、溶接、エネルギー貯蔵デバイスを接続するタブなどに、存在し得ることを示す。(512)においては、第1のグループの1つ以上のセンサは、偏差するモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきが基づくセンサ測定値の少なくとも幾つかを生成したと識別され得る。例えば、センサ測定値は、測定値のソース(例えば、測定値を生成したセンサ)を示すデータタグを有する場合がある。第1のセンサは、偏差するモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきに関連するデータタグに基づいて識別され得る。偏差するモニタリングされた値および/またはばらつきが異なるセンサによって生成された測定値に基づくかもしれない場合、多数のセンサが識別され得る。
【0063】
(514)においては、偏差状態の原因が推定され得る。偏差状態の原因は、第1のセンサと他の識別されたセンサによって生成されたセンサ測定値に対して少なくとも部分的に推定され得る。例えば、偏差状態の原因は、(i)第1のグループの中の他のセンサによって生成された同じパラメータを表わすセンサ測定値、(ii)第1のグループの中の他のセンサによって生成された別のパラメータを表わすセンサ測定値、および/または、(iii)異なるエネルギー貯蔵モジュールに関連する、異なるセンサのグループによって生成された(同じパラメータおよび/または異なるパラメータを表わす)センサ測定値、の分析により推定され得る。例えば、温度が特定のパラメータである場合、第1のグループの中の1つ以上温度センサによって生成された異常を示す温度測定値は、第1のグループの中の他の温度センサによって生成された異常を示さない温度測定値、第1のグループの中の電圧センサによって生成された電圧測定値、第1のグループの電流センサによって生成された電流測定値、および/または、異なる第2のグループのセンサによって生成された温度、電圧および電流の測定値と共に分析され得る。偏差状態の原因は、更に詳細に本明細書に記載されるように、分析されうる諸センサ測定値において観察された傾向と関係性に基づいて推定され得る。
【0064】
随意に、偏差状態の原因は、(516)において暫定措置をとることにより、および、暫定措置の効果を観察することにより推定され得る。暫定措置は、少なくとも指定された期間、エネルギー貯蔵モジュールの少なくとも1つの作動条件を変更することを含む場合がある。制御回路は、作動条件を変更するために制御信号を生成することにより、暫定措置を開始し得る。制御信号は通信デバイスによって指定受信者に伝えられ得る。例えば、暫定措置は、エネルギー貯蔵モジュール間の電流伝導を阻害ことにより、エネルギー貯蔵システムにおいてエネルギー貯蔵モジュールを他のモジュールから電気的に隔離することを含んでもよい。エネルギー貯蔵モジュールは、そのモジュールと隣接したモジュールとの間の導電経路を断ち切るために、電気的なスイッチを開くことにより隔離され得る。モジュールの隔離は、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスが発火または熱暴走を生じているかもしれないと判明した場合に、損傷の広がりを阻むことに役立ち得る。一旦エネルギー貯蔵モジュールが他のモジュールから隔離されれば、モジュールの1つ以上エネルギー貯蔵デバイスの温度が環境温度に近づくと期待できる。
【0065】
別の暫定措置は、環境温度を変更するために、空調などの媒体の冷却または温めを開始する、停止する、および/または、調整する、ことであり得る。エネルギー貯蔵デバイスが負荷の下にない場合、デバイスは時間経過に従い新しい環境温度に接近するであろう。しかし、別の随意の暫定措置は、ファンまたはポンプの動作をオンにする、オフにする、または加減するなどの、モジュール周辺の空気流比率を調整することであり得る。エネルギー貯蔵デバイスが負荷の下にある間、ファンおよび/またはポンプをオフにすることは、デバイスの温度の上昇をもたらすに違いなく、および、ファンおよび/またはポンプをオンにすることは、(環境温度が機構の温度より低いかもしれない場合)温度の低下をもたらすに違いない。
【0066】
さらに他の暫定措置は、エネルギー貯蔵モジュールに指定負荷を生じさせること、および/または、エネルギー貯蔵モジュールの中への、またはエネルギー貯蔵モジュールからの電流伝導の0以外の比率を調整することを含む場合がある。暫定措置は、5分、30分などの事前設定され得る、指定の長さの時間行われる場合がある。随意に、偏差状態の原因が推定されるまで、指定の長さの時間は延長され得る。例えば、原因が不良なセンサであると推定される場合、不良なセンサによる発火またはエネルギー貯蔵デバイスの過熱の危険は、あり得るとしても、ほとんどあり得ないため、アクティブ冷却を提供する暫定措置は止められる場合がある。
【0067】
(518)においては、識別されたセンサ(それはモニタリングされた値の異常な値および/またはばらつきを生成した)によって生成されたセンサ測定値が暫定措置をとった後にモニタされ得る。これらのセンサの、続いてなされるこれらの措置後の測定の値は、センサ測定値において暫定措置の効果を判定するために、暫定措置をとる前にセンサによって生成された措置前のセンサ測定値と比較され得る。例えば、措置後の測定値が措置前の測定値と一致している場合、たとえ暫定措置を構成する作動条件の変化が測定値を変化させると期待されたとしても、偏差状態の原因は機能不全状態のセンサであり得る。従って、温度センサの測定値が、モジュールを冷やすと期待されるモジュールのアクティブ冷却および/または隔離の実行下において経時的に変化しない場合、制御回路は温度センサが機能不全状態であり得ると推定し得る。
【0068】
別の具体例において、識別されたセンサの措置後の測定値は、適切に機能していると見なされる他のセンサの測定値と比較され得る。措置後の測定値が他のセンサの測定値と一致している場合、識別されたセンサは適切に機能しており、故にエネルギー貯蔵デバイスまたは関連する構成要素が機能不全状態、故障中、または欠陥を有するかもしれないと推定され得る。偏差状態の原因を推定するための追加のシナリオが下記に記述され得る。
【0069】
(520)においては、偏差状態の原因を推定した後、推定原因に基づく是正処置が開始され得る。例えば、センサが不良である可能性があると推定される場合、制御回路は、そのセンサに交換のためのフラグを立てるために、続く監視を行なう時にそのセンサを置き換えるために、センサが機能不全状態で(例えば、および、エネルギー貯蔵デバイスは適切に機能している)可能性があるとオペレータに通知するために、エネルギー貯蔵モジュールのアクティブ冷却および/または隔離などの、熱に関係する損傷を制限するためにとられた暫定措置を止めるために、制御信号を生成し得る。別の具体例において、モジュールのエネルギー貯蔵デバイスが機能不全状態の可能性があると推定される場合、制御回路は、熱に関係する損傷を制限するためにとられた暫定措置の実行を延長し、モジュールにそれが含む1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスの交換のためフラグを立て、オペレータに通知し、エネルギー貯蔵システムを組み入れる車両の性能を抑える、鎮火を開始する、などのために、制御信号を生成する場合がある。
【0070】
どのように制御回路がセンサ測定値の分析に基づいて偏差状態の原因を推定し得るかを示す様々な非限定的な具体例のシナリオが下記に提供され得る。下記の具体例は電池を指すが、実施形態は本明細書に記載される電池に制限されない。
【0071】
第1の温度の具体例において、1つの電池温度センサだけが一貫してその電池のための他の温度センサより昇温状態にある場合、制御回路は、偏差の原因が溶接不良であり得ると推定する場合がある。これを受けて、制御回路は、溶接不良の深刻さに応じて、溶接不良を無視する、オペレータに通知する、作動し続ける、エネルギー貯蔵システムの性能を抑える、および/または、エネルギー貯蔵システムをシャットダウンする、場合がある。
【0072】
第2の温度の具体例において、制御回路が、1つの電池温度センサが範囲外の高温であり得ることを検知し、および、近隣のセンサが正常範囲内であり得る場合、制御回路は、モジュールに対する負荷をなくすよう、モジュールを隔離する場合がある。1つのセンサによって生成された温度測定値がモジュールを隔離した後に範囲外の高温にとどまる場合、そのセンサは機能不全状態であり得る。これを受けて、制御回路は、後のモニタするアルゴリズムにおいて、そのセンサの測定値を無視するか、または、そのセンサを置き換える場合がある。
【0073】
第3の温度の具体例において、2つ以上の温度センサにおいて予期しない上昇が生じる場合、および/または、通気口ダクトにおける温度においてスパイクがある場合、制御回路は、1つ以上の電池が昇温状態であり得ると推定する場合がある。深刻さに応じて、制御回路は温度上昇を無視する、オペレータに警告する、作動を継続する、エネルギー貯蔵システムの出力を抑える、エネルギー貯蔵システムをシャットダウンする、1つ以上電池に交換のためのフラグを立てる、鎮火を開始する、および/または、アクティブ冷却を開始する、場合がある。
【0074】
第4の温度の具体例において、断熱された空間において、温度センサによって生成された測定値が、一般的な傾向として、(例えば、冷却/熱媒体に基づいて)設定された環境温度から遠ざかって移動している場合、冷却/熱媒体は機能不全状態であり得る。これを受けて、制御回路は、冷却/熱媒体が適切に機能していない可能性があるとオペレータに通知する、および、シャットダウンして冷却/熱媒体のさらなる使用を防ぐ、場合がある。
【0075】
第5の温度の具体例において、中間モジュールの温度および電池グループの温度が経時的に(例えば履歴上)一貫して閾値を超える値に達している場合、制御回路は、エネルギー貯蔵モジュールが寿命末期にある可能性があると推定し得る。これを受けて、制御回路はモジュールの交換の予定を立てる、および、それのさらなる使用を防ぐ場合がある。
【0076】
第1の電圧の具体例において、電圧センサによって生成された電圧測定に基づいて、1つの電池のモニタリングされた電圧が、負荷の下で、他の電池より速く増加または減少する場合、制御回路は、電池/タブが故障している、または、損傷を受けていると推定し得る。これを受けて、制御回路は故障した電池/タブを無視する、エネルギー貯蔵モジュールの出力を下げる、および/または、エネルギー貯蔵モジュールをシャットダウンする、場合がある。
【0077】
第2の電圧の具体例において、機能不全状態のセンサは、モジュールの1つの電圧測定値をモジュールの個々の電池の電圧測定値と比較すること、および、不一致または偏差を識別することにより、検知することができる。これを受けて、機能不全状態のセンサによる測定値は追加のモニタするアルゴリズムにおいて無視される、または、置き換えられる場合がある。
【0078】
第3の電圧の具体例において、1つのモジュールまたは一連のモジュールの測定値をそこに含まれる電池の電圧の和と比較すること、および、不一致を識別することにより、制御回路は故障した測定カードを検知し得る。これを受けて、1つ以上のモジュールに交換のためのフラグが立てられ得る。
【0079】
第4の電圧の具体例において、電池の電圧の最大から最小の範囲が、所与のモジュールまたは一連の複数のモジュールについて大きい場合、不均衡があり得る。これを受けて、制御回路は、エネルギー貯蔵システムの性能を抑え、および/または、電池の均衡化を行う、場合がある。
【0080】
第5の電圧の具体例において、過度の放電は、モジュールが無負荷の下にあり得る間に電圧測定値の傾きを追跡することにより検知することができる。エネルギー貯蔵システムをオフにする前に、電圧、温度、および時間が記録され得る。前記エネルギー貯蔵システムがオンラインに戻るに際して、同じモジュールの電圧、温度、および時間は、過度の放電があり得るかどうかを判定するために記録値と比較され得る。過度の放電がある場合、交換のためのフラグがモジュールに立てられ得る。
【0081】
第6の電圧の具体例において、エネルギー貯蔵システムがオフラインであり得る間に、共通の期間に、近隣の電池またはモジュールが1つの増加と他の減少などの異なる電圧を持っている場合、制御回路は短絡を検知し得る。これを受けて、制御回路はオペレータに通知する、または、機械的に電池またはモジュールを隔離する、および/または、置換のために電池かモジュールにフラグを立てる、場合がある。
【0082】
第7の電圧の具体例において、障害を起こした、ヒューズ、接続デバイス、電流センサ、または他の構成要素が検知され得る。電流センサによって生成された電流測定値が比較的高い場合、および、ストリングモジュールまたは一連のモジュールのモニタリングされた電圧が急に0に落ちる場合、制御回路は障害を起こしたヒューズを検知し得る。電圧測定値が、期待された時に増加または減少しなければ、障害を起こした接続デバイスが検知され得る。電圧測定値が、期待された時に増加および/または減少するが、電流センサが0を表示する場合、機能不全状態の電流センサが検知され得る。さらに、電圧測定値が安定している間に、電流測定値の大きさが比較的高いかもしれない場合、機能不全状態の電流センサが検知され得る。あらゆる障害を起こした構成要素を検知することに応じて、制御回路は、特定のモジュールを隔離する、モジュール(あるいはそのいくつかの内部構成要素)にメンテナンスのためのフラグを立てる、および/または、可能であれば作動を継続する、場合がある。
【0083】
第8の電圧の具体例において、切迫した熱暴走は、経時的な電圧測定値において、増加の後まもなく減少するなどのハンプ型に応じて検知することができる。これを受けて、制御回路はモジュールを隔離する、オペレータに通知する、鎮火またはアクティブ冷却を起動する、および/または、モジュールに交換のためのフラグを立てる、場合がある。
【0084】
第9の電圧の具体例において、電圧測定が、セルが電荷を保持することに失敗、および/または、放電の間に電圧減損が速い可能性があると示す場合、セルは排除され得る。これを受けて、制御回路はオペレータに通知する、モジュールを接続解除または絶縁する、および/または、モジュールに交換のためのフラグを立てる、場合がある。
【0085】
第10の電圧の具体例において、充電中に速い電圧降下が検知される場合、制御回路は内部短絡を検知し得る。これを受けて、制御回路は、オペレータに通知する、モジュールを接続解除または隔離する、および/または、モジュールに交換のためのフラグを立てる、場合がある。
【0086】
第11の電圧の具体例において、誤配線は、モジュールに部分的な接続をしているワイヤーシャーシに関する基準電圧測定値中の偏差に応じて検知され得る。これを受けて、メンテナンスのためのフラグが配線に立てられる、可能であれば作動を継続する、および/または、モジュールまたは一連のモジュールを隔離する、場合がある。
【0087】
第12の電圧の具体例において、地絡は、一連のモジュールに関連した電圧測定値の変化に応じて検知され得る。前記モジュールを通じた電圧測定値の和は、変化を確認するために判定され得る。これを受けて、制御回路は、一連のモジュールを隔離する、作動を継続する、オペレータに通知する、および/または、メンテナンスの予定を立てる、場合がある。
【0088】
本明細書に記載される偏差検出システムおよび方法の1つ以上実施形態の技術的な効果は、機能不全状態の、および、故障した構成要素の早期発見を含む場合があり、それは機能不全と故障によって引き起こされる損傷を防止および/または減少させるための早期の是正処置を可能にする。例えば、エネルギー貯蔵デバイスにおける発火および/または熱暴走の早期発見は、早期の措置が他のエネルギー貯蔵デバイスへの発火と熱暴走の広がりを妨げ、それにより機能するエネルギー貯蔵デバイスを維持し、および、その寿命を延長することを可能にし得る。偏差検出システムと方法の別の技術的な効果は、検知された異常に対して、自動化され、原因に特異的な対応を提供する性能を含み得る。例えば、センサ測定値の解析に基づいた異常の原因の推定によって、制御回路は、推定原因に対して具体的に調整され得る措置を開始する場合があり、それは、すべての検知された偏差に対して同じ対応措置を提供する既知の監視システムよりも性能を向上し、エネルギー貯蔵システムへのよりよい支援を供給する。例えば、制御回路が、偏差の原因が故障したセンサなどの些細なものであり得ると推定する場合、制御回路は、自動的にエネルギーシステムをシャットダウンして発火および/または熱暴走の最悪のシナリオに向かうよりもむしろ、エネルギー貯蔵システムに作動の継続を許可し、それにより有益な実行出力を提供し得る。
【0089】
ある実施形態では、システムは、センサの第1のグループ、および、1つ以上プロセッサを含む制御回路を含む。センサの第1のグループは、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵モジュールに関連する。第1のグループのセンサは、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上パラメータを表わす、センサ測定値を生成するように構成される。制御回路は、センサによって生成されるセンサ測定値を受け取り、かつ、エネルギー貯蔵モジュールに関連する特定のパラメータの基準値および/または基準ばらづきを、センサ測定値に少なくとも部分的に基づいて、判定するように構成される。制御回路は、特定のパラメータのモニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきを、第1のグループのセンサによって生成されるセンサ測定値に基づいて、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきと比較し、指定許容差より大きい偏差を検出するように構成される。
【0090】
随意に、制御回路は、エネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値、および、(i)別の、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第2のグループによって生成されるセンサ測定値、(ii)エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性、(iii)エネルギー貯蔵モジュールの作動条件、または、(iv)エネルギー貯蔵モジュール、または他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報、の1つ以上に基づいて、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを判定するように構成される。
【0091】
随意に、指定許容差より大きい偏差の検出に応じて、制御回路は、偏差しているモニタリングされた値または偏差しているモニタリングされたばらつきが基づくセンサ測定値を生成した、第1のグループの特定のセンサを識別するように構成される。制御回路は、特定のセンサによって生成されるセンサ測定値を、第1のグループの他のセンサによって生成される、または、別の、第2のエネルギーモジュールに関連する第2のグループの他のセンサによって生成されるセンサ測定値と比較することによって、偏差の原因を推定するよう構成される。
【0092】
随意に、指定許容差より大きい偏差の検出に応じて、制御回路は、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件の1つ以上を変更するように構成される制御信号を生成するように構成される。随意に、制御信号は、(i) エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導を阻害すること、(ii)エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導の0以外の割合を調整すること、(iii)エネルギー貯蔵モジュールを囲む環境温度を調整すること、(iv)エネルギー貯蔵モジュールのまわりの温度条件を調整すること、(v)指定負荷をエネルギー貯蔵モジュールに誘導すること、(vi)アクティブ冷却を開始すること、(vii)鎮火を開始すること、または、(viii)エネルギー貯蔵モジュールに修繕のためのフラグを立てること、の1つ以上によって、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件の1つ以上を変更するように構成される。
【0093】
随意に、制御回路は、偏差しているモニタリングされた値または偏差しているモニタリングされたばらつきが基づく、センサ測定値を生成した第1のグループの特定のセンサを識別するように構成される。制御回路は、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件の1つ以上を変更した後、決定された時間帯の間に、特定のセンサによって生成される追加的なセンサ測定値をモニタリングするように構成される。制御回路は、偏差の原因を、決定された時間帯の間に、特定のセンサによって生成される追加的センサ測定値に、少なくとも部分的に基づいて推定するよう構成される。
【0094】
随意に、制御回路はさらに、事前設定された閾値を超えるセンサ測定値のいずれにも依存することなく、指定許容差より大きい偏差を検出するように構成される。
【0095】
随意に、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上エネルギー貯蔵デバイスは、バッテリーである。エネルギー貯蔵モジュールは、単一の電池、互いに直列接続される複数の電池のアセンブリ、または、互いに並列に接続される複数の電池のアセンブリの1つ以上を表す。
【0096】
随意に、特定のパラメータは、温度、電圧、電流、電力、充電状態、電荷容量、圧力、冷却液流速、または、抵抗のうちの1つである。
【0097】
随意に、制御回路は、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを、エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性、エネルギー貯蔵モジュールの作動条件、および、エネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報を組み込む、物理学ベースのモデルに基づいて、判定するように構成される。
【0098】
随意に、制御回路は、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを、少なくとも部分的に 第1のグループのセンサによって生成されるセンサ測定値をコンパイルすることによって、判定するように構成される。
【0099】
随意に、制御回路およびセンサの第1のグループは、エネルギー貯蔵モジュールによって少なくとも部分的に推進される車両に搭載配置される。
【0100】
ある実施形態では、方法は、エネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値を取得する工程を含む。エネルギー貯蔵モジュールは、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含む。センサ測定値は、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表わす。方法は、エネルギー貯蔵モジュールと関係する特定のパラメータに関する、モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきを、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきと比較する工程を含む。モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつき、および、基準値および/または基準ばらつきの両方は、、センサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値に、少なくとも部分的に基づく。方法は、基準値および/または基準ばらつきから、指定許容差より大きく偏差する、モニタリングされた値および/またはモニタリングされたばらつきの、1つ以上に応じた偏差状態を検出する工程を含む。方法はさらに、モニタリングされた偏差する値および/またはモニタリングされた偏差するばらつきの1つ以上が基づく、センサ測定値を生成する第1のグループの、第1のセンサを識別する工程、および、第1のセンサによって生成されるセンサ測定値に少なくとも部分的に基づいて、偏差状態の原因を推定する工程を含む。
【0101】
随意に、偏差状態を検出する工程に応じて、方法はさらに、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上の作動条件を変更するための、制御信号を生成する工程を含む。随意に、偏差状態の原因は、少なくとも部分的に、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上の作動パラメータを変更する前に第1のセンサによって生成されるセンサ測定値を、1つ以上の作動パラメータを変更した後に第1のセンサによって生成されるセンサ測定値と比較することによって、推定される。
【0102】
随意に、制御信号は、(i)エネルギー貯蔵モジュールを囲む環境温度を調整すること、(ii)、エネルギー貯蔵モジュールのまわりの温度条件を調整すること、(iii)エネルギー貯蔵モジュールに指定負荷を誘導すること、(iv)第1のセンサを置き換えること、(v)エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導動作を阻害すること、(vi)エネルギー貯蔵モジュールの電流伝導の0以外の比率を調整すること、(vii)アクティブ冷却を開始すること、(viii)鎮火を開始すること、または、(ix)エネルギー貯蔵モジュールに修繕のためのフラグを立てること、の1つ以上によって、1つ以上の作動条件を変更するように構成される。
【0103】
随意に、方法はさらに、エネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第1のグループによって生成されるセンサ測定値、および、(i)別の、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第2のグループによって生成されるセンサ測定値、(ii)エネルギー貯蔵モジュールの固有の特性、(iii)エネルギー貯蔵モジュールの作動条件、または、(iv)エネルギー貯蔵モジュール、または他のエネルギー貯蔵モジュールに関する履歴情報、の1つ以上に基づいて、特定のパラメータの基準値および/または基準ばらつきを判定する工程を含む。
【0104】
随意に、偏差状態の原因は、第1のセンサによって生成されるセンサ測定値を、(i)第1のグループの他のセンサによって生成されるセンサ測定値、または、(ii)別の、第2のエネルギー貯蔵モジュールに関連するセンサの第2のグループによって生成されるセンサ測定値、の1つ以上と比較することによって推定される。
【0105】
随意に、特定のパラメータは、温度、電圧、電流、電力、充電状態、電荷容量、圧力、冷却液流速、または、抵抗のうちの1つである。
【0106】
ある実施形態では、システムは、1つ以上のプロセッサを有する制御回路を含む。制御回路は、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵モジュールに関連する、センサの第1のグループによって生成される、センサ測定値を取得するように構成される。センサ測定値は、エネルギー貯蔵モジュールの1つ以上のパラメータを表わす。制御回路は、1つ以上のパラメータの特定のパラメータを表わすセンサ測定値を、特定のパラメータの基準値、および/または、特定のパラメータの基準ばらつきと比較するように構成される。制御回路は、センサ測定値の1つ以上が、基準値および/または基準ばらつきから、指定許容差以上偏差していることを検出すると、それに応じて、少なくとも1つ以上の偏差するセンサ測定値の、少なくともいくつかを生成する第1のグループの第1のセンサを特定し、第1のセンサによって生成されるセンサ測定値に少なくとも部分的に基づく偏差の原因を推定し、且つ、推定原因に基づいて1つ以上の是正措置を開始する制御信号を生成するように構成される。
【0107】
上の記述は説明的なものであり、限定的なものではない。例えば、上に記述の実施形態(および/またはその態様)は、相互に組み合わされた状態で使用され得る。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明主題の教示に対して、特定の状況または素材を採用するために、多くの修正を行うことができる。本明細書に記述の素材の寸法および種類は、発明主題のパラメータを定義するように意図されているが、それらは決して限定的なものではなく、典型的な実施形態である。上記の記述を見直せば、当業者には他の多くの実施形態は明らかであろう。したがって、本発明主題の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、特許請求の範囲が享受する等価物の全範囲とともに、決定されるべきである。
【0108】
この書面による記述では、例を使用して本発明主題のいくつかの実施形態を開示し、また、当業者が本発明主題の実施形態を実践することを可能にし、任意のデバイスまたはシステムの作成と使用、および、包含される方法の実施を含む。本発明主題の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が考えつく他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字言語と異ならない構造的要素を有する場合、または、それらが特許請求の範囲の文字言語と実質的に異なることの無い構造的要素の等価性を含む場合、特許請求の範囲の範囲内にあるものと意図される。
【0109】
本発明主題の特定の実施形態に関する前述の記述説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。図が様々な実施形態の機能ブロックについての略図を示している範囲において、機能ブロックは必ずしも、ハードウェア回路間に区切りがあることを示すものではない。したがって、例えば、1つ以上の機能ブロック(例えば、プロセッサまたはメモリ)を、単一のハードウェア(例えば、汎用シグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、ランダムアクセスメモリ、ハードディスク等)に実装できる。同様に、プログラムは、独立型プログラムであったり、オペレーティングシステムにサブルーチンとして組み込まれていたり、インストールされたソフトウェアパッケージの機能であることが可能である。様々な実施形態は、図面に示される配置および手段に限定されない。
【0110】
本明細書で使用される場合、単数で列挙され、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語が前に置かれる要素または工程は、そうでない旨が明示的に述べられない限り、複数の当該要素または工程を除外しないと理解されるべきである。さらに、本発明主題の「1つの実施形態(one embodiment)」への言及は、同様に列挙されている特徴を含む、追加の実施形態の存在を排除すると解釈されることを意図していない。その上、そうでない旨が明示的に述べられていない限り、特定の特性を有する1つの要素または複数の要素を「含んでいる(comprising)」または「含んでいる(including)」または「有している(having)」実施形態は、当該特性を有さない追加的要素を含み得る。添付の特許請求の範囲において、用語「含んでいる(including)」および「そこで(in which)」はそれぞれ、「含んでいる(comprising)」および「そこで(wherein)」の平易な英語の同義語として使用される。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」および「第3」等の用語は、単にラベルとして使用され、それらのオブジェクトに数値要件を課すことを意図しない。以下の特許請求の範囲の制限は、「手段プラス機能」の形式で書かれてはおらず、そのような請求項の範囲の限定が、 明示的に「~のための手段(means for)」という句を使用しその後に機能に関する説明が続き、その後にさらなる構造を伴わない限り、または、その後にさらなる構造を伴うまでは、35U.S.C.§112(f)に基づいて解釈されることを意図していない。