(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】カプセル選別装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/07 20060101AFI20230428BHJP
B07C 5/06 20060101ALI20230428BHJP
B07B 13/04 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61J3/07 R
B07C5/06
B07B13/04 A
(21)【出願番号】P 2020178951
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】朝井 英治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誉将
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-15454(JP,A)
【文献】特開2005-162484(JP,A)
【文献】特開2002-128267(JP,A)
【文献】特開2000-226097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/07
B07C 5/06
B07B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径のボディ(20)に大径のキャップ(21)を嵌着したカプセル(8)を搬送する搬送部(10)から前記カプセルが搬送される選別部(11)と、
前記搬送部および前記選別部に連続して形成され、前記カプセルを長手方向を搬送方向とし横臥姿勢で移動をガイドするV溝(12)と、
少なくとも前記搬送部および前記選別部を振動させて前記カプセルを前記V溝に沿って移動させる振動部(6)と、
前記選別部の前記V溝の中途に設けられ前記V溝の溝底(16)を貫通して形成される長溝(22)と、
前記V溝の溝底を貫通して形成され前記カプセルの移動方向の下流側で前記長溝に連通し接続する貫通穴(23)と、
を備え、
前記ボディの外径である前記小径がCb、前記キャップの外径である前記大径がCc、前記長溝の溝幅がMb、前記貫通穴の径がMcであるとき、Cb<Mb<Cc<Mcの寸法関係を満たすことを特徴とするカプセル選別装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカプセル選別装置であって、
複数本の前記V溝が平行に配置され、
それぞれの前記V溝における選別部には前記長溝および前記貫通穴を備えることを特徴とするカプセル選別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカプセル選別装置であって、
前記選別部が、前記搬送部に対して着脱自在に連結されることを特徴とするカプセル選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不良カプセルを排除するカプセル選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等を充填するために用いられる円筒形のボディとキャップからなるツーピースタイプのカプセルは、ボディに対しキャップが外嵌されたものであり、順次内容物である粉末状薬剤等の充填ヘッドに送られる間に整列させられる。この整列工程の際、規格外の不良カプセルが混入していると、充填作業を行うためのカプセルテーブルに対しカプセルが正しく装填されない状態で工程が進んでしまい、以降の工程に支障を来すことになる。このようなカプセルを供給する途中において、不良カプセルを効果的に除去し得る不良カプセル除去装置が下記特許文献1にある。
【0003】
この不良カプセル除去装置は、振動する選別板を備え、この選別板にはカプセル直径よりも大きな直径を有する排除孔をほぼ上下方向に向かって多数設けるとともに、この排除孔の周縁には前記選別孔の上面を凹陥させて成る選別案内部を形成し、且つこの選別案内部の外周端からその中心線上においてこの外周端と対向する前記選別案内部の内周端までの寸法を、カプセルの重心位置からカプセルの前端または後端までの寸法のいずれか小さい値に設定して成る分離カプセル選別装置を備えている。
【0004】
この不良カプセル除去装置によれば、正常なカプセルは排除孔側に落ち込むような姿勢にならずにこれを通過し、順次次工程に送られる。そしてカプセルがボディとキャップとに分離した状態で選別案内部に至った場合には選別案内部の窪みにボディまたはキャップが落ち込むようになり、最終的には排除孔から下方に落下して選別回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の不良カプセル除去装置は、ボディのみやキャップのみの不良カプセルは除去できるものである。
ところで、カプセルは、粉末状薬剤等の充填後、ボディにキャップが取り付けられて完成品となり、その後、計量が行われ、すなわち、カプセル内に薬剤等が規定範囲内の重量を充填されているか計測が行われて、規定範囲内の重量である良品(OK品)と規定範囲を外れ軽量や過重量である不良品(NG品)とを選別している。
【0007】
ところが、完成品となっているカプセルには、何らかの不具合で紛れ込むキャップのみが、ボディ部分にかぶさる所謂ダブルキャップになることが起こり得る。このようなダブルキャップは、計量の際、充填後に内容物が少ない軽量NGである場合、キャップの重さが加わることで、重量としてOK品となってしまう不具合を発生させる。
一般的に計量装置では、充填済カプセルの重さのみを測り、OK/NGの判断、すなわち規定範囲内の重量であるOK品、期待範囲外の重量であるNG品の選別を行っていることから、外形状がNGであるダブルキャップを見抜くことができず、排除することができない。
また、このダブルキャップは、計量後にキャップが外れれば、キャップ分の重量が減ることから軽量NG品となる。さらに、外れたキャップは、他の自動化工程等でエラーの原因ともなる虞がある。このような事情から計量する以前にダブルキャップを排除したい要請があった。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ダブルキャップとなったNG品を排除可能なカプセル選別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のカプセル選別装置1は、小径のボディ20に大径のキャップ21を嵌着したカプセル8を搬送する搬送部10から前記カプセル8が搬送される選別部11と、
前記搬送部10および前記選別部11に連続して形成され、前記カプセル8を長手方向を搬送方向とし横臥姿勢で移動をガイドするV溝12と、
少なくとも前記搬送部10および前記選別部11を振動させて前記カプセル8を前記V溝12に沿って移動させる振動部6と、
前記選別部11の前記V溝12の中途に設けられ前記V溝12の溝底16を貫通して形成される長溝22と、
前記V溝12の溝底16を貫通して形成され前記カプセル8の移動方向の下流側で前記長溝22に連通し接続する貫通穴23と、
を備え、
前記ボディ20の外径である前記小径がCb、前記キャップ21の外径である前記大径がCc、前記長溝22の溝幅がMb、前記貫通穴23の径がMcであるとき、Cb<Mb<Cc<Mcの寸法関係を満たすことを特徴とする。
【0010】
このカプセル選別装置1では、振動部6が駆動されると、搬送部10および選別部11が振動し、カプセル8が搬送部10のV溝12から選別部11のV溝12へと移動する。カプセル8は、長手方向、すなわち両端がドーム状となった有底筒の軸線の方向がV溝12の延在方向と平行となった寝たままの姿勢、いわゆる横臥姿勢で搬送される。すなわち、カプセル8は、円筒部分の一対の母線部分がV溝12の両側の内壁面に接して移動する。
選別部11のV溝12を移動するカプセル8は、長溝22に到達すると、長溝22の溝幅Mbよりもボディ20の小径Cbが小さい(Cb<Mb)ため、ボディ20が長溝22に落ち込む。一方、カプセル8は、キャップ21の大径Ccが長溝22の溝幅Mbよりも大きいので、キャップ21が長溝22に引っ掛かり支持される。そのため、カプセル8は、長溝22を振動により移動する際に、寝た状態(横臥姿勢)からキャップ21が上側でボディ20が下側の立ち上がった姿勢、すなわち起立姿勢となる。長溝22は、カプセル8の進行方向に、カプセル8が回転して立つ十分なスペースがある。立ち上がった姿勢のカプセル8は、選別部11におけるV溝12の長溝22において、起立姿勢のまま下流側へ移動する。
長溝22の下流側に移動したカプセル8は、貫通穴23に到達すると、今度はキャップ21の大径Ccよりも貫通穴23の径Mcが大きいため(Cc<Mc)、長溝22による支持が解除されて、キャップ21が貫通穴23を通過可能となり、カプセル8が落下する。その結果、貫通穴23では、ダブルキャップ24を除くOK品のカプセル8が選別される。
これに対し、ダブルキャップ24は、キャップ21が既に嵌着しているボディ20のドーム側に、さらに他のキャップ21が被せられているため、ボディ20の小径Cbが存在せず、外径がキャップ21の大径Ccのみとなる。このため、ダブルキャップ24は、長溝22に到達しても、ボディ20が長溝22に落ち込むことがないことから、横臥姿勢のままV溝12を移動する。横臥姿勢のダブルキャップ24は、貫通穴23上を通過し貫通穴23からは落ちずにV溝12を真っ直ぐに進む。ダブルキャップ24の外径は大径Ccであり、貫通穴23の径Mcよりも小さいが、貫通穴23では起立姿勢へ回転するための十分なスペースが無いので、立ち上がれない。横臥姿勢でV溝12を搬送されたダブルキャップ24は、選別部11の終端部分へ搬送され、NG品として排除される。
【0011】
本発明の請求項2記載のカプセル選別装置1は、請求項1に記載のカプセル選別装置であって、
複数本の前記V溝12が平行に配置され、
それぞれの前記V溝12における選別部11には前記長溝22および前記貫通穴23を備えることを特徴とする。
【0012】
このカプセル選別装置1では、V溝12が複数本平行に配置される。それぞれのV溝12は、選別部11の中途に長溝22および貫通穴23を備える。すなわち、搬送部10および選別部11には、V溝12、長溝22および貫通穴23からなる複数の搬送路(搬送レーン)13が平行に設けられる。搬送レーン13は、搬送部10から選別部11に渡って設けられる。搬送部10に並んだ複数の搬送レーン13のそれぞれには、カプセル8が連続して並ぶ。
搬送部10および選別部11は、一体となって振動部6により振動されるので、搬送部10から搬送された各搬送レーン13のカプセル8は、連続する選別部11のV溝12へ移動する。
選別部11のそれぞれのV溝12に移動したカプセル8は、終端近傍において、長溝22および貫通穴23により上述した作用によってOK品と、ダブルキャップ24のNG品とに選別される。つまり、このカプセル選別装置1では、同一の振動系(振動フィーダー3)において、搬送レーン13の数だけ選別処理量を増やすことができ、OK品とNG品との同時選別が実行可能となる。
【0013】
本発明の請求項3記載のカプセル選別装置1は、請求項1または2に記載のカプセル選別装置1であって、
前記選別部11が、前記搬送部10に対して着脱自在に連結されることを特徴とする。
【0014】
このカプセル選別装置1では、異なるサイズのカプセル8に対応する長溝22,貫通穴23を備えた選別部11を、搬送部10に対して着脱自在に設けている。カプセル8は、充填量(容量)に対応して長さや外径の違いで規格化されている。カプセル8には、約10種類の外形状、長さや外径があり、その大きさは号数で表せられる。それぞれの種類,号数毎に対応させた長溝22、貫通穴23を備える選別部11を複数用意することにより、各号数毎のカプセル8に対応が可能となる。つまり、振動系(振動フィーダー3)の一部分である選別部11だけを交換することにより、各号・各種サイズのカプセル8にカプセル選別装置1を簡単に対応させることができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載のカプセル選別装置によれば、複数のOK品の中からNG品であるダブルキャップを、重量ではなく、外形状で選別し、排除することができ、より高精度にOK品を後段の自動化工程へ供給することができる。
【0016】
本発明に係る請求項2記載のカプセル選別装置によれば、単一の振動系により駆動される複数の搬送路において同時にダブルキャップを多数選別でき、簡素な機構で高い選別能力を得ることができるとともに、処理量の増強を図ることができる。
【0017】
本発明に係る請求項3記載のカプセル選別装置によれば、選別部のみを交換可能とすることで、複数の異なるサイズのカプセルにも容易な対応が可能となり、装置としての汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るカプセル選別装置の外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した振動フィーダーの平面図である。
【
図3】(a)は
図2のA-A断面図、(b)は
図2のB-B断面図、(c)は選別部をカプセル搬送方向の下流側から見た正面図である。
【
図4】
図1に示したカプセル選別装置の側面図である。
【
図5】
図2に示した選別部の要部拡大平面図である。
【
図6】(a)は正常なカプセルの平面図、(b)はボディにキャップが被さったダブルキャップ示した平面図である。
【
図7】振動フィーダーにおけるカプセルの搬送状況を表した斜視図である。
【
図8】選別方向を示す振動フィーダーの側面図である。
【
図9】(a)(b)(c)はボディが搬送方向前側の時の立ち上がりを説明する作用図、(d)(e)(f)はキャップが搬送方向前側の時の立ち上がりを説明する作用図である。
【
図10】選別部における選別状況を表す要部平面図である。
【
図11】
図10に示した選別部をV溝部分で切り欠いた側断面図である。
【
図13】(a)は選別部におけるダブルキャップの移動状況を示す説明図、(b)は同平面図である。
【
図14】搬送部との連結が解除されて振動フィーダーから取り外された異なる種類の選別部を表す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカプセル選別装置1の外観斜視図である。
本実施形態に係るカプセル選別装置1は、架台2の上部に、振動フィーダー3が設けられる。振動フィーダー3の上方には、架台2に支持される供給部4が配置される。
【0020】
架台2には振動部6が固定される。振動部6は、例えば、電磁石を駆動源とした機構や電動モータを用いた機構など図示しない機構よりなる。振動部6は、これらの機構により振動フィーダー3の一対の平行な側部フレーム7を、カプセル8(
図6参照)の進行方向20°斜め上方向とその反対方向の往復方向a(
図8参照)に移動させて振動させる。これにより、振動フィーダー3は、個々のカプセル8を同時に振動させ、それぞれのカプセル8を一方向へ進ませる移動エネルギーを付与する。
【0021】
振動フィーダー3には、一対の側部フレーム7の間に、カプセル8の搬送方向上流側から、一時貯留部9と、搬送部10と、選別部11とがカプセル8の搬送方向下流側に向かって順に連結されている。すなわち、振動フィーダー3は、一時貯留部9に供給されたカプセル8を、振動により搬送部10へ移動させ、搬送部10に移動したカプセル8をさらに選別部11へ移動させるように構成されている。なお、振動部6は、少なくとも搬送部10および選別部11を振動させてカプセル8をV溝12に沿って移動させるものであればよい。
【0022】
一時貯留部9の上方に位置する供給部4にはホッパー5が配置される。ホッパー5は、上部の投入開口部14から投入された多数のカプセル8のうち、適量を供給口15から一時貯留部9へ供給できるように、供給口15の位置および開口面積等が設定されている。
【0023】
図2は、
図1に示した振動フィーダー3の平面図である。
一時貯留部9、搬送部10および選別部11は、同一幅の板状部材が略同一平面となるように連結される。搬送部10および選別部11の上面には、カプセル8の移動をガイドする直線状のV溝12が両部材に渡って連続して形成される。本実施形態において、カプセル8は、上記の振動部6により
図2の左側から右側へと移動される。V溝12は、延在方向に直交する断面がV字状に形成される。すなわち、対向する一対の溝内壁面は、溝幅の中央に向かって互いに下り傾斜して溝底16で交わる(
図3(c)参照)。
【0024】
本実施形態において、V溝12は、延在方向に水平とされ、振動フィーダー3の側部フレーム7と平行に複数本が配置される。複数のV溝12のそれぞれは、カプセル8の搬送路となる搬送レーン13を構成する。本実施形態において、振動フィーダー3は、10本の搬送レーン13を備えている。搬送部10および選別部11において、隣接するV溝12の間は、平坦な路側面17となっている。
【0025】
搬送部10には、カプセル8の搬送方向終端近傍に、第1トラップ穴18が形成される。第1トラップ穴18は、それぞれの路側面17に、合計11箇所設けられている。第1トラップ穴18は、隣接するV溝12の溝内壁面を切り欠いて、V溝12の延在方向に長い略矩形状に形成される。第1トラップ穴18のカプセル搬送方向の長さは、カプセル8の軸線C(
図6参照)に沿う方向の長さ(長軸長さ)よりも長く設定される。また、第1トラップ穴18に挟まれるV溝12は、溝底16を残し、且つカプセル8の搬送が可能となる溝幅に設定されている。一時貯留部9から搬送部10に移動されたカプセル8は、V溝12および路側面17を選別部11へ向かって移動する。V溝12を移動するカプセル8は、軸線CがV溝12の延在方向と略平行となった寝た姿勢すなわち横臥姿勢で移動する。また、路側面17を移動するカプセル8も軸線CがV溝12の延在方向に概ね平行となった姿勢で移動する。第1トラップ穴18は、路側面17上を移動したカプセル8を落下回収する。これにより、第1トラップ穴18は、一時貯留部9からのカプセル8の過剰な供給分を減らし、V溝12のみを用いて選別部11へ適量を搬送する作用を有する。
【0026】
また、搬送部10と選別部11との境における路側面17には、第2トラップ穴19が形成される。第2トラップ穴19は、隣接するV溝12の間の路側面17において、一つおきに合計5箇所設けられている。第2トラップ穴19は、隣接するV溝12の片側の溝内壁面を切り欠いて、V溝12の延在方向に直交する方向に長い矩形状に形成される。第2トラップ穴19のカプセル搬送方向の長さは、後述するカプセル8のボディ20またはキャップ21のいずれかの軸線方向の寸法よりもやや長く設定される。また、第2トラップ穴19のカプセル搬送方向の長さは、カプセル8の軸線方向の寸法よりも短く設定される。第2トラップ穴19は、V溝12を移動したボディ20のみまたはキャップ21のみを落下回収する。これにより、第2トラップ穴19は、ボディ20のみまたはキャップ21のみを排除して正常に組み立てられたカプセル8のみを選別部11のV溝12へ供給する作用を有する。選別部11に移動したカプセル8は、選別部11のV溝12に形成される長溝22および貫通穴23へと進むことになる。
【0027】
図3(a)は、
図2のA-A断面図、(b)は、
図2のB-B断面図、(c)は、選別部11をカプセル搬送方向の下流側から見た正面図である。
図3(a)に示すように、選別部11のV溝12の中途には、長溝22と貫通穴23とが形成される。選別部11において、V溝12は、複数の搬送レーン13を構成し、それぞれの搬送レーン13における終端近傍に長溝22および貫通穴23を備えている。
【0028】
なお、図例では、貫通穴23が長溝22の終端に設けられているが、貫通穴23は、長溝22の延在方向中央部よりも下流側の終端側に配置されていればよい。
【0029】
図3(b)に示すように、長溝22は、選別部11におけるV溝12の溝底16を貫通して穿設される。貫通穴23は、長溝22の終端近傍に設けられ、同様にV溝12の溝底16を貫通して穿設される。すなわち、貫通穴23は、カプセル8の移動方向の下流側で長溝22に連通し接続する。選別部11の終端部には、再びV溝12が形成される。つまり、選別部11をカプセル搬送方向の下流側から見ると、10本のV溝12の溝端がV字状となって開放している(
図3(c)参照)。選別部11は、搬送部10から搬送されたカプセル8を正常なカプセル8(
図6(a)参照)と、ダブルキャップ24(
図6(b)参照)とに選別する。
【0030】
図4は、
図1に示したカプセル選別装置1の側面図である。
搬送部10、選別部11を備えた振動フィーダー3は、第1トラップ穴18と、第2トラップ穴19と、貫通穴23と、V溝終端部25とにより、供給されるカプセルを選別して落下可能としている。すなわち、第1トラップ穴18は、過剰供給された未選別のカプセル8を排出回収する。第2トラップ穴19は、ボディ20のみまたはキャップ21のみのNG品を第1排出路26へ排出する。貫通穴23は、OK品のみを第2排出路27へ排出する。V溝終端部25は、NG品であるダブルキャップ24を第3排出路28へ排出する。
【0031】
図5は、
図2に示した選別部11の要部拡大平面図である。
長溝22は、V溝12に沿う長円形状で形成される。V溝12は、溝底16を挟んで両側の溝内壁面が対称に形成される。長溝22は、溝幅Mbの中心が溝底16に一致してV溝12を貫通して穿設され。長溝22の溝幅Mbは、V溝12の溝幅よりも小さく設定される。これにより、カプセル8は、長溝22の形成されているV溝12においても、V溝12の残された溝内壁面によりガイドが可能となっている。長溝22の終端には、貫通穴23がV溝12を貫通して穿設される。貫通穴23は、中心が溝底16に一致する。貫通穴23の径Mcは、溝幅Mbよりも大きい。貫通穴23は、半円よりも少し大きい円弧で長溝22に連通し、長溝22の終端を閉じた状態で形成される。
【0032】
図6(a)は、正常なカプセル8の平面図、(b)は、ボディ20にキャップ21が被さったダブルキャップ24の平面図である。
図6(a)に示すように、カプセル8は、小径Cbのボディ20の開口側に、大径Ccのキャップ21を嵌着して組み立てられる。正常に組み立てられたカプセル8は、小径Cbおよび大径Ccの2つの外径を有する。カプセル8は、両端が半球状となった長尺で、中央近傍に、キャップ21の開口部分が被さることで形成された段部29を有する両端が有底の段付円柱体となる。
【0033】
カプセル8の原料としては、ゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いることができる。カプセル8には、薬剤等が封入される。カプセル8は、薬剤等が封入された状態において、重心が段部29の近傍に位置する。カプセル8は、水平なV溝12に、軸線CがV溝12の延在方向と略平行となって寝た姿勢で移動される。この際、カプセル8は、振動フィーダー3により加振されて移動するので、ボディ20およびキャップ21の軸線Cを挟む両側がV溝12の溝内壁面に接触して移動される。換言すれば、カプセル8は、段部29があることで、キャップ21のみがV溝12の溝内壁面に支持されて移動することはなく、つまりカプセル8の軸線CとV溝12の溝底16とが完全に平行ではなく、ボディ20も溝内壁面に接しており、キャップ21よりもボディ20が下向きにわずかに傾斜する(
図9(b),(e)参照)。
【0034】
一方、ダブルキャップ24は、キャップ21が既に嵌着しているボディ20のドーム側(底側)に、さらに他のキャップ21が被せられている。このため、ボディ20の小径Cbが存在せず、外径がキャップ21の大径Ccのみとなる。
【0035】
ここで、長溝22、貫通穴23、ボディ20、キャップ21のサイズは、定められた大小関係を有している。すなわち、ボディ20の外径である小径がCb、キャップ21の外径である大径がCc、長溝22の溝幅がMb、貫通穴23の径がMcであるとき、Cb<Mb<Cc<Mcの寸法関係を満たすものとなっている。
【0036】
本発明のカプセル選別装置1は、例えば計量装置(カプセルチェッカー)の前段工程に配置される。この計量装置は、充填済カプセルの重さを測り、OK品またはNG品の判断、選別を行う。
【0037】
図7は、振動フィーダー3におけるカプセル8の搬送状況を表した斜視図である。
ホッパー5からカプセル8が供給された一時貯留部9では、振動フィーダー3により加振されたカプセル8が、徐々に搬送部10に移動される。搬送部10に移動されたカプセル8は、それぞれのV溝12に横臥姿勢で移動される。V溝12に移送されないカプセル8やV溝12から飛び出して移動するカプセル8は、搬送部10の終端側に設けられた第1トラップ穴18に落ちて回収される。なお、この回収されたカプセル8は、再びホッパー5の投入開口部14に戻される。
【0038】
また、V溝12を進むボディ20のみまたはキャップ21のみのNG品は、搬送部10と選別部11の間に設けられている第2トラップ穴19に落ちて回収され、廃棄若しくは再びカプセル組立工程へ戻される。
選別部11のV溝12に移動した正常なカプセル8は、長溝22に到達すると、振動フィーダー3により加振されていることで、ボディ20側が長溝22に落ち込む方向に回転し、キャップ21が段部29で引っ掛かった状態で起立する。カプセル8は、この起立姿勢のまま長溝22を振動によって進み、下流側に位置する貫通穴23に到達する。貫通穴23に到達したカプセル8は、キャップ21の支持が解除され、貫通穴23から落下してOK品として選別される。一方、選別部11のV溝12に寝た姿勢で送られたダブルキャップ24は、長溝22に到達しても小径Cbのボディ20が表出していないので、長溝22に落ち込むことがなく、寝た姿勢のまま長溝22および貫通穴23上を通過する。貫通穴23を通過したダブルキャップ24は、V溝終端部25から落下し、NG品として選別される。
【0039】
図8は、選別方向を示す振動フィーダー3の側面図である。
このようにして、カプセル選別装置1は、振動フィーダー3の搬送部10の終端側以降で、先ず、V溝12から溢れたカプセル8とボディ20のみまたはキャップ21のみのNG品が選別され、この下流でOK品が選別され、さらにその下流でダブルキャップ24となったNG品が順次に選別されて行くことになる。
【0040】
なお、本実施形態では、薬剤等の充填されたカプセル8をカプセル選別装置1に通す場合を例に説明したが、カプセル選別装置1は、空のカプセル8を送れないわけではない。カプセル選別装置1は、充填機の前に置いて選別することも可能となるが、上述のように、薬剤等の充填後、カプセル8の計量の前段に設けるのが最も効果的な運用となる。
【0041】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0042】
本実施形態に係るカプセル選別装置1では、振動部6が駆動されると、搬送部10および選別部11が振動し、カプセル8が搬送部10のV溝12から選別部11のV溝12へと移動する。カプセル8は、両端がドーム状となった有底筒の軸線CがV溝12の延在方向と略平行となった横臥姿勢で搬送される。すなわち、カプセル8は、円筒部分の一対の母線部近傍がV溝12の両側の内壁面に接して(
図12(a)参照)移動する。
【0043】
図9(a),(b),(c)は、ボディ20が搬送方向前側の時の立ち上がりを説明する作用図、(d),(e),(f)は、キャップ21が搬送方向前側の時の立ち上がりを説明する作用図である。
選別部11のV溝12を移動するカプセル8は、長溝22に到達すると、長溝22の溝幅Mbよりもボディ20の小径Cbが小さい(Cb<Mb)ため、ボディ20が長溝22に落ち込む。一方、カプセル8は、キャップ21の大径Ccが長溝22の溝幅Mbよりも大きいので、キャップ21が段部29によって長溝22に引っ掛かり支持される。そのため、カプセル8は、長溝22を振動により移動する際に、寝た状態(横臥姿勢)からキャップ21が上側、ボディ20が下側の立ち上がった姿勢(起立姿勢)となる。長溝22のその長さは、カプセル8の進行方向に、カプセル8が回転して立つ十分なスペースとなる。この長溝22のスペースは、カプセル8を起立させて配置する所謂バッファとなる。立ち上がった姿勢のカプセル8は、選別部11におけるV溝12の長溝22において、起立姿勢のまま下流側へ移動する。
【0044】
なお、長溝22におけるカプセル8の立ち上がり動作は、ボディ20が移動方向前側のカプセル8の場合には、
図9(a)に示す時計回りにカプセル8が回転して立ち上がる。この動作は、まず、
図9(b)に示すように、カプセル8の軸線CはV溝12に対し、ボディ20側がわずかに下向きとなるやや傾斜した横臥姿勢で搬送される。
図9(c)に示すように長溝22の端部において、この長溝22の溝幅Mbがボディ20の小径Cbよりも大きいことで、ボディ20側が振動によって進みながら落下方向へと傾き、これにより、ボディ20を下側に、キャップ21を上側に時計回りに回転となって、立ち上がることとなる。
また、キャップ21が移動方向前側のカプセル8の場合には、
図9(d)に示す反時計回りにカプセル8が回転して立ち上がる。この動作は、まず、
図9(e)に示すように、カプセル8の軸線CはV溝12に対し、ボディ20側がわずかに下向きとなるやや傾斜した横臥姿勢でキャップ21を前向きに搬送される。この状態(姿勢)では、長溝22の端部においても横臥姿勢であり、
図9(f)に示すように長溝22の端部にボディ20の端部側が到達した際に、この長溝22の溝幅Mbがボディ20の小径Cbよりも大きいことで、ボディ20側が振動によって落下方向へと傾き、これにより、ボディ20を下側に、キャップ21を上側に反時計回りに回転となって、立ち上がることとなる。
【0045】
図10は、選別部11における選別状況を表す要部平面図、
図11は、
図10に示した選別部11をV溝部分で切り欠いた側断面図、
図12(a)は、
図11のC-C断面図、(b)は、
図11のD-D断面図、(c)は、
図11のE-E断面図、
図13(a),(b)は、選別部におけるダブルキャップの移動状況を示す説明図である。
図10に示すように、長溝22の下流側に移動した起立姿勢のカプセル8は、貫通穴23に到達すると、今度はキャップ21の大径Ccよりも貫通穴23の径Mcが大きいため(Cc<Mc)、
図12(b)に示す長溝22による支持が解除される。そして、
図11、
図12(c)に示すように、キャップ21が貫通穴23を通り、カプセル8が起立姿勢のまま落下する。その結果、貫通穴23では、ダブルキャップ24を除くOK品のカプセル8が選別される。
【0046】
これに対し、ダブルキャップ24は、キャップ21が既に嵌着しているボディ20のドーム側に、さらに他のキャップ21が被せられているため、ボディ20の小径Cbが存在せず、外径がキャップ21の大径Ccのみとなる。このため、ダブルキャップ24は、長溝22に到達しても、ボディ20が長溝22に落ち込まず、
図13(b)に示すように寝たままの横臥姿勢でV溝12を移動する。横臥姿勢のダブルキャップ24は、
図13(a)に示すように、貫通穴23からは落ちずにV溝12を真っ直ぐに進む。ダブルキャップ24の外径は大径Ccであり、貫通穴23の径Mcよりも小さいが、貫通穴23では起立姿勢へ回転(図中24a)するための十分なスペースが無いので、立ち上がれない。また、ダブルキャップ24が貫通穴23上に到達してすぐに貫通穴23の周縁が位置することとなるので、ダブルキャップ24は貫通穴23に進入する以前にV溝12上へと移動する。さらに、その後ろから後続のカプセル8が移動してくることからも、貫通穴23への落下が行われないダブルキャップ24はV溝12へ進むこととなる。その結果、横臥姿勢でV溝12を搬送されたダブルキャップ24は、
図10,
図11に示すように、選別部11の終端部分から落下し、NG品として排除される。
【0047】
そして、カプセル選別装置1は、カプセル8の計量を行う計量装置の供給部分に組み込む、或いは供給部分へ前段工程として接続することで、計量の直前でダブルキャップ24を排除でき、計量装置へ外形状としてOK品を確実に供給できる。これにより、計量後の正しいOK品を後段工程へ送ることができ、OK品、すなわちカプセル8の信頼精度をより高めることができる。
【0048】
また、このカプセル選別装置1では、V溝12が複数本平行に配置される。それぞれのV溝12は、選別部11の中途に長溝22および貫通穴23を備える。すなわち、搬送部10および選別部11には、V溝12、長溝22および貫通穴23からなる複数の搬送路(搬送レーン)13が平行に設けられる。搬送レーン13は、搬送部10から選別部11に渡って設けられる。搬送部10に並んだ複数の搬送レーン13のそれぞれには、カプセル8が連続して並ぶ。
【0049】
搬送部10および選別部11は、一体となって振動部6により振動されるので、搬送部10から搬送された各搬送レーン13のカプセル8は、連続する選別部11のV溝12へ移動する。
【0050】
選別部11のそれぞれのV溝12に移動したカプセル8は、V溝12の終端近傍において、長溝22および貫通穴23により、上述した作用によってOK品と、ダブルキャップ24のNG品とに選別される。つまり、このカプセル選別装置1では、同一の振動系(振動フィーダー3)において、搬送レーン13の数だけ処理量を増やし、OK品とNG品との同時選別が実行可能となる。その結果、単一の振動系により駆動される複数の搬送路13において同時にダブルキャップ24を選別、排除でき、簡素な機構で高い選別能力を得ることができる。
【0051】
次に、上記構成の変形例を説明する。
【0052】
図14は、搬送部10との連結が解除されて振動フィーダー3から取り外された異なる種類の選別部11を表す分解斜視図である。
変形例に係るカプセル選別装置1は、選別部11が、搬送部10に対して着脱自在に連結される。連結構造は、例えば振動フィーダー3の一対の側部フレーム7に固定孔30を形成し、この固定孔30に通した固定ビス31を用いて選別部11の両側端面32に設けたねじ穴33を螺着する。選別部11は、長溝22の溝幅および貫通穴23の径以外の外形状は、同一に形成しておく。これにより、選別部11と、他の選別部34とが容易に交換可能となる。
【0053】
このカプセル選別装置1では、異なるサイズのカプセル8に対応する長溝22、貫通穴23を備えた選別部11を、搬送部10に対して着脱自在に設けている。カプセル8は、充填量(容量)に対応して長さや外径の違いで規格化されている。カプセル8には、約10種類の外形状、長さや外径があり、その大きさは号数で表せられる。それぞれの種類,号数毎に対応させた長溝22の溝幅、貫通穴23の径を備える選別部11を複数用意することにより、各号数毎のカプセル8に対応が可能となる。つまり、振動系(振動フィーダー3)の一部分である選別部11だけを交換することにより、各号・各種サイズのカプセル8にカプセル選別装置1を簡単に対応させることができるようになる。その結果、カプセル選別装置1は、選別部11のみを交換可能とすることで、複数の異なるサイズ,号数のカプセル8にも容易な対応が可能となり、汎用性を高めることができるようになる。
【0054】
従って、本実施形態に係るカプセル選別装置1によれば、複数のOK品の中からNG品であるダブルキャップ24を選別し排除することができ、より高精度にOK品を後段の自動化工程へ供給することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…カプセル選別装置
6…振動部
8…カプセル
10…搬送部
11…選別部
12…V溝
16…溝底
20…ボディ
21…キャップ
22…長溝
23…貫通穴
Cb…小径(ボディの外径)
Cc…大径(キャップの外径)
Mb…溝幅
Mc…径