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特許7270596抗DOTA/抗腫瘍抗原二重特異性抗体による事前標的化放射免疫治療のためのDOTA-ハプテン組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】抗DOTA/抗腫瘍抗原二重特異性抗体による事前標的化放射免疫治療のためのDOTA-ハプテン組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20230428BHJP
   A61K 31/41 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230428BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20230428BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 33/245 20190101ALI20230428BHJP
   A61K 33/241 20190101ALI20230428BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230428BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230428BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230428BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230428BHJP
【FI】
C07D257/02 CSP
A61K31/41
A61K33/24
A61K33/244
A61K51/04 100
A61K33/245
A61K33/241
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K51/04
A61K47/68
A61K47/60
A61K47/54
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020500214
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040911
(87)【国際公開番号】W WO2019010299
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】62/529,363
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】チール サラ エム
(72)【発明者】
【氏名】マクデヴィット マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オウエルフェリ オウアセク
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン スティーヴン エム
(72)【発明者】
【氏名】ヤン グアンビン
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表平02-503910(JP,A)
【文献】特表平09-505831(JP,A)
【文献】米国特許第00656939(US,A)
【文献】国際公開第2015/171792(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 257/
A61K 31/
A61K 33/
A61K 51/
A61K 39/
A61K 47/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(I)
(式中、
1は、175Lu3+45Sc3+69Ga3+71Ga3+893+113In3+115In3+139La3+136Ce3+138Ce3+140Ce3+142Ce3+151Eu3+153Eu3+159Tb3+154Gd3+155Gd3+156Gd3+157Gd3+158Gd3+、または160Gd3+であり、
1、X2、X3、およびX4は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、
5、X6、およびX7は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、
1は、OまたはSであり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22であり、
ここで(i.)X1、X2、X3、およびX4のうち少なくとも2つは、各々独立して、孤立電子対であってもよく、または、(ii.)X1、X2、X3、およびX4のうち3つは、各々独立して、孤立電子対、残りのX1、X2、X3、またはX4は、Hであってもよい)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物および放射性核種カチオンを含むビスキレートであって、
式IIのビスキレートまたはその薬学的に許容される塩であってもよい、ビスキレート。
【化2】
(II)
(式中、
1は、175Lu3+45Sc3+69Ga3+71Ga3+893+113In3+115In3+139La3+136Ce3+138Ce3+140Ce3+142Ce3+151Eu3+153Eu3+159Tb3+154Gd3+155Gd3+156Gd3+157Gd3+158Gd3+、または160Gd3+であり、
2は、放射性核種カチオンであり、前記放射性核種は、68Ga、227Th、または64Cuであってもよく、
1、X2、X3、およびX4は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、
5、X6、およびX7は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、ここでX5、X6、およびX7のうち少なくとも2つは、各々独立して、孤立電子対であってもよく、
1は、OまたはSであり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22である)
【請求項3】
放射性核種カチオンが、二価カチオンまたは三価カチオンであり、
ここで前記放射性核種カチオンは、
アルファ粒子放出同位体、ここで前記アルファ粒子放出同位体は、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、および255Fmからなる群から選択されてもよく、
ベータ粒子放出同位体、ここで前記ベータ粒子放出同位体は、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、および67Cuからなる群から選択されてもよく、
オージェ放出体、ここで前記オージェ放出体は、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、および203Pbからなる群から選択されてもよく、または
それらのいずれか2種以上の組合せであってもよい、
請求項2に記載のビスキレート。
【請求項4】
請求項2~3のいずれか1項に記載のビスキレート、ならびに前記ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する抗DOTA二重特異性抗体を含む複合体
【請求項5】
前記腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Le y )抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の複合体を含む、それを必要とする対象における固形腫瘍の検出に用いるための組成物であって、前記検出は、
請求項4又は5に記載の複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の抗DOTA二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している固形腫瘍に局在するように構成されている、工程を含み、
ここで、対象における固形腫瘍の存在は、基準値よりも高い、複合体によって放出される放射能レベルを検出することによって検出される、組成物。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の複合体を含む、事前標的化放射免疫治療のための対象の選択に用いるための組成物であって、前記選択は、
請求項4又は5に記載の複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の抗DOTA二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している固形腫瘍に局在するように構成されている、工程と、
複合体によって放出される放射能レベルを検出する工程と、を含み、
ここで複合体によって放出される放射能レベルが基準値よりも高い場合に、事前標的化放射免疫治療のための対象が選択される、組成物。
【請求項8】
対象が、がんと診断されている、またはがんを有すると疑われており、ここで前記がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞癌、脳がん、肺がん、胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、黒色腫、肉腫、癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、神経膠芽細胞腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺癌、外陰部がん、陰茎癌、頭頸部がん、下垂体腺腫、髄膜腫、神経芽腫、および頭蓋咽頭腫からなる群から選択されてもよ、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項2または3に記載のビスキレートを含む、がんと診断された対象において放射線治療に対する腫瘍の感受性を高める方法に用いるための組成物であって、前記方法は、
(a)腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成された抗DOTA二重特異性抗体の有効量を対象に投与する工程と、
(b)抗DOTA二重特異性抗体に結合するように構成された、請求項2~3のいずれか1項に記載のビスキレートの有効量を対象に投与する工程と
を含、組成物。
【請求項10】
前記腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Le y )抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項4又は5に記載の複合体を含む、がんと診断された対象において放射線治療に対する腫瘍の感受性を高めるための方法に用いるための組成物であって、前記方法は、
請求項4又は5に記載の複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の抗DOTA二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成されている、工程
を含み、前記複合体は、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節包内、眼窩内、皮内、腹腔内、経気管的、皮下、脳室内、経口または鼻腔内投与用に製剤化されていてもよい、組成物。
【請求項12】
請求項2または3に記載のビスキレートを含む、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法に用いるための組成物であって、前記方法は、
(a)腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成された抗DOTA二重特異性抗体の有効量を対象に投与する工程と、
(b)抗DOTA二重特異性抗体に結合するように構成された、請求項2~3のいずれか1項に記載のビスキレートの有効量を対象に投与する工程と
を含む、組成物。
【請求項13】
前記方法が、ビスキレートの投与前にクリアリング剤の有効量を対象に投与する工程をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記方法が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモン拮抗薬、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN-38、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗有糸分裂薬、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテオソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサートおよびCPT-11からなる群から選択される少なくとも1種の化学療法剤の順次、別個、または同時投与をさらに含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
がんが、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞癌、脳がん、肺がん、胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、黒色腫、肉腫、癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、神経膠芽細胞腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺癌、外陰部がん、陰茎癌、および頭頸部がんからなる群から選択される、請求項9~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
(i)請求項1に記載の化合物または請求項2もしくは3に記載のビスキレート、
(ii)少なくとも1種の抗DOTA BsAb、および
(iii)使用説明書
を含むキットであって、
クリアリング剤および/または1種もしくは複数の放射性核種をさらに含んでもよく、ここで前記クリアリング剤は、500kDアミノデキストラン-DOTAコンジュゲートであってもよく、および/または、前記1種または複数の放射性核種は、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、255Fm、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、67Cu、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、203Pb、68Ga、227Th、および64Cuからなる群から選択されてもよい、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月6日に出願された米国仮特許出願第62/529,363号の利益および優先権を主張し、その全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本技術は、一般に、新規なDOTA-ハプテンを含む組成物、ならびに画像診断および事前標的化放射免疫治療においてそれを使用する方法に関する。
政府支援の記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所によって与えられたCA008748、およびCA086438に基づく政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
本技術の背景についての以下の説明は、単に本技術の理解の補助として提供されるものであり、本技術の先行技術を説明または構成すると認められるものではない。
【0003】
放射標識された薬剤は、電離放射線の特定の疾患部位への送達ビヒクルとして、50年超にわたって使用されている(Larson SM. Cancer 67:1253-1260 (1991);Britton KE. Nucl Med Commun. 18:992-1007 (1997))。放射性同位体の標的化送達のために、放射標識された抗体、抗体断片、改変足場(alterative scaffold)、および低分子を含む、多数の分子が検討されている(Tolmachev V, et al. Cancer Res. 67:2773-2782 (2007);Birchler MT, et al., Otolaryngol Head Neck Surg. 136:543-548 (2007);Reubi JC, Maecke HR. J Nucl Med. 49:1735-1738 (2008))。毒物を腫瘍に標的化するための抗体の使用、例えば、直接コンジュゲート抗体を用いた放射免疫治療(RIT)は、一つには最適でない腫瘍線量および治療指数(TI)に起因して困難であった。さらに、正常組織バイスタンダー毒性により、用量漸増は実行可能でなく、したがって、そのような治療は、限定された抗腫瘍効果を生じさせる。その上、抗体は、長い血中半減期を呈し、低い腫瘍対バックグラウンド比を生じさせる。抗体断片および他のより小さい結合足場は、より急速な血液クリアランスを呈するが、高い腎臓および/または肝臓内取り込みを生じさせる。放射標識された低分子リガンドは、一般に、抗体および抗体断片と比較してより迅速な血液クリアランスおよびより低いバックグラウンドを呈するが、通常は、所望の標的に対する相対的に低い親和性に起因して、不十分な特異性を生じさせる。
事前標的化放射免疫治療(PRIT)においては、腫瘍抗原および低分子ハプテンの両方に対する特異性を有する非放射性二機能性抗体(bifunctional antibody)を投与し、腫瘍に局在させる。抗体の十分な血液クリアランスの後に、放射標識された低分子を投与し、事前標的化された抗体によって捕捉する。しかしながら、PRITシステムにおいて使用される多くの低分子ペプチドおよび金属キレートハプテンは、著しい全身保持を呈し、これは、画像化の信号対バックグラウンド比を限定する望まれないバックグラウンド放射能を生じさせ、治療用途のための最大耐容用量を限定する非特異的放射の一因となる(Orcutt et al., Mol Imaging Biol 13:215-221 (2011))。
【発明の概要】
【0004】
したがって、(a)in vivoでの固形腫瘍の効率的な事前標的化放射免疫治療および(b)放射標識された低分子の非腫瘍組織からの迅速なクリアランスを可能にする新規分子が必要である。
【0005】
本技術の概要
一態様では、本開示は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩
【化1】
(I)
(式中、M1は、175Lu3+45Sc3+69Ga3+71Ga3+893+113In3+115In3+139La3+136Ce3+138Ce3+140Ce3+142Ce3+151Eu3+153Eu3+159Tb3+154Gd3+155Gd3+156Gd3+157Gd3+158Gd3+、または160Gd3+であり、X1、X2、X3、およびX4は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、X5、X6、およびX7は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、Y1は、OまたはSであり、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22である)
を提供する。ある特定の実施形態では、nは、3である。ある特定の実施形態では、nは、3である。ある特定の実施形態では、nは、3であり、Y1は、Sである。
【0006】
化合物のいくつかの実施形態では、X1、X2、X3、およびX4のうち少なくとも2つは、各々独立して、孤立電子対である。化合物のある特定の実施形態では、X1、X2、X3、およびX4のうち3つは、各々独立して、孤立電子対であり、残りのX1、X2、X3、またはX4は、Hである。
【0007】
別の態様では、本開示は、式Iの上記化合物のいずれかおよび放射性核種カチオンを含むビスキレートを提供する。いくつかの実施形態では、ビスキレートは、式IIのビスキレートまたはその薬学的に許容される塩
【化2】
(II)
(式中、M1は、175Lu3+45Sc3+69Ga3+71Ga3+893+113In3+115In3+139La3+136Ce3+138Ce3+140Ce3+142Ce3+151Eu3+153Eu3+159Tb3+154Gd3+155Gd3+156Gd3+157Gd3+158Gd3+、または160Gd3+であり、M2は、放射性核種カチオンであり、X1、X2、X3、およびX4は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、X5、X6、およびX7は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、Y1は、OまたはSであり、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22である)
である。ある特定の実施形態では、nは、3である。ある特定の実施形態では、nは、3であり、Y1は、Sである。
【0008】
ビスキレートのいくつかの実施形態では、X5、X6、およびX7のうち少なくとも2つは、各々独立して、孤立電子対である。追加的にまたは代替的に、ビスキレートのいくつかの実施形態では、放射性核種カチオンは、二価カチオンまたは三価カチオンである。放射性核種カチオンは、アルファ粒子放出同位体、ベータ粒子放出同位体、オージェ放出体、またはそれらのいずれか2種以上の組合せであり得る。アルファ粒子放出同位体の例は、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、および255Fmを含むがこれらに限定されない。ベータ粒子放出同位体の例は、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、および67Cuを含むがこれらに限定されない。オージェ放出体の例は、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、および203Pbを含む。ビスキレートのいくつかの実施形態では、放射性核種カチオンは、68Ga、227Th、または64Cuである。
【0009】
別の態様では、本開示は、式Iの化合物、ならびに該化合物および腫瘍抗原標的を認識し、結合する二重特異性抗体を含む複合体を提供する。本開示はまた、式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する二重特異性抗体を含む複合体を提供する。本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、二重特異性抗体は、無限バインダー(infinite binder)であり得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、C825(Cheal et al., Mol Cancer Ther. 13(7):1803-12 (2014)を参照されたい)または2D12.5(Corneillie et al., J. Inorganic Biochemistry 100:882-890 (2006))の抗原結合断片を含む。追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、二重特異性抗体は、G54C置換を有するC825の抗原結合断片を含む。追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、二重特異性抗体は、G54C置換を有する2D12.5の抗原結合断片を含む。
【0010】
本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(acetylglucoaminyltransferase)VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される。追加的にまたは代替的に、複合体のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、化合物またはビスキレートに、100nM~95nM、95~90nM、90~85nM、85~80nM、80~75nM、75~70nM、70~65nM、65~60nM、60~55nM、55~50nM、50~45nM、45~40nM、40~35nM、35~30nM、30~25nM、25~20nM、20~15nM、15~10nM、10~5nM、5~1nM、1nM~950pM、950pM~900pM、900pM~850pM、850pM~800pM、800pM~750pM、750pM~700pM、700pM~650pM、650pM~600pM、600pM~550pM、550pM~500pM、500pM~450pM、450pM~400pM、400pM~350pM、350pM~300pM、300pM~250pM、250pM~200pM、200pM~150pM、150pM~100pM、100pM~50pM、50pM~40pM、40pM~30pM、30pM~20pM、20pM~10pM、9pM、8pM、7pM、6pM、5pM、4pM、3pM、2.5pM、2pM、1.5pM、または1pM以下のKdで結合する。
【0011】
一態様では、本開示は、それを必要とする対象において固形腫瘍を検出するための方法であって、(a)式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している固形腫瘍に局在するように構成されている、工程と、(b)基準値よりも高い、複合体によって放出される放射能レベルを検出することによって、対象における固形腫瘍の存在を検出する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0012】
別の態様では、本開示は、対象を事前標的化放射免疫治療のために選択するための方法であって、(a)式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している固形腫瘍に局在するように構成されている、工程と、(b)複合体によって放出される放射能レベルを検出する工程と、(c)複合体によって放出される放射能レベルが基準値よりも高い場合に、対象を事前標的化放射免疫治療のために選択する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0013】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、複合体によって放出される放射能レベルは、陽電子放出断層撮影法または単光子放出コンピュータ断層撮影法を使用して検出される。追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、対象は、がんと診断されている、またはがんを有すると疑われている。がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞癌、脳がん、肺がん、胃がん(gastric or stomach cancer)、膵がん、甲状腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、黒色腫、肉腫、癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、神経膠芽細胞腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺癌、外陰部がん、陰茎癌、および頭頸部がんからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、脳がんは、下垂体腺腫、髄膜腫、神経芽腫、または頭蓋咽頭腫である。
追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、複合体は、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜下腔内に、関節包内に、眼窩内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、脳室内に、経口的にまたは鼻腔内に投与される。ある特定の実施形態では、複合体は、対象の脳脊髄液または血液中に投与される。
【0014】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、複合体によって放出される放射能レベルは、複合体が投与された後4~24時間の間に検出される。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、複合体によって放出される放射能レベルは、組織1グラム当たりの注射用量の百分率(%ID/g)として表される。いくつかの実施形態では、腫瘍組織と正常組織との放射能レベルの比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1である。
【0015】
別の態様では、本開示は、がんと診断された対象において放射線治療に対する腫瘍の感受性を高めるための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成された抗DOTA二重特異性抗体の有効量を対象に投与する工程と、(b)抗DOTA二重特異性抗体に結合するように構成された、式IIのビスキレートの有効量を対象に投与する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、ビスキレートの投与前に、クリアリング剤(clearing agent)の有効量を対象に投与する工程をさらに含む。クリアリング剤は、500kDアミノデキストラン-DOTAコンジュゲート(例えば、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y)、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Lu)、または500kDデキストラン-DOTA-Bn(In)等)であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0016】
追加的にまたは代替的に、方法のいくつかの実施形態では、腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される。
追加的にまたは代替的に、方法のいくつかの実施形態では、抗DOTA二重特異性抗体および/またはビスキレートは、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜下腔内に、関節包内に、眼窩内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、脳室内に、経口的にまたは鼻腔内に投与される。
【0017】
一態様では、本開示は、がんと診断された対象において放射線治療に対する腫瘍の感受性を高めるための方法であって、式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的を認識し、結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成されている、工程を含む方法を提供する。複合体は、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜下腔内に、関節包内に、眼窩内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、脳室内に、経口的にまたは鼻腔内に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0018】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成された抗DOTA二重特異性抗体の有効量を対象に投与する工程と、(b)抗DOTA二重特異性抗体に結合するように構成された、式IIのビスキレートの有効量を対象に投与する工程とを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ビスキレートの投与前に、クリアリング剤の有効量を対象に投与する工程をさらに含む。それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的を認識し、結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成されている、工程を含む方法もまた本明細書で提供される。
【0019】
がんを処置するための方法は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモン拮抗薬、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN-38、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗有糸分裂薬、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテオソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサートおよびCPT-11からなる群から選択される少なくとも1種の化学療法剤を対象に順次、別個に、または同時に投与する工程をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞癌、脳がん、肺がん、胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、黒色腫、肉腫、癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、神経膠芽細胞腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺癌、外陰部がん、陰茎癌、および頭頸部がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0020】
患者においてがんを処置または診断するのに好適な構成成分を含有するキットもまた本明細書に開示される。一態様では、キットは、本技術のDOTAハプテン組成物、少なくとも1種の抗DOTA二重特異性抗体、および使用説明書を含む。キットは、クリアリング剤(例えば、DOTAにコンジュゲートされた500kDaアミノデキストラン)および/または1種もしくは複数の放射性核種をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本技術のDOTA-ハプテン(別名プロテウス-DOTA)(化学式:C5080LuN11193-;精密質量:1345.48;分子量:1346.28)の構造を示す図である。分子の四角で囲まれた部分は、抗DOTA-ハプテン抗体一本鎖可変断片C825によってKd=10pMで認識される非放射性ベンジル-DOTA(Lu)ハプテンである。分子の空いている3アームのDOTA部分は、225Ac、68Ga、および64Cuを含む、治療および/または画像化に関連する多様な放射性金属を収容することができる。
図2】腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスにおける[225Acプロテウス-DOTA]と複合体化された二重特異性抗体(BsAb)抗HER2-C825または[225Acプロテウス-DOTA]ハプテン単独のいずれかの生体内分布を示す図である。225Ac-プロテウス-DOTAハプテンを外側尾静脈から静脈内注射し、臓器採取および放射能判定のために、4時間後に安楽死させた。アスタリスク(*)は、検出限界を下回るレベルを示す。皮下BT474腫瘍を有するヌードマウスの2つの群(各3匹のマウス)を、[225Acプロテウス-DOTA]のみ(0.51nmol/マウス;約30nCiの225Ac/マウス)またはPD10で精製された[抗HER2-C825/[225Acプロテウス-DOTA]複合体(推定1.79nmolの225Acプロテウス-DOTA/マウス、1.0nmolの抗体/マウス;100nCiの225Ac/マウス)のいずれかで処置し、ex vivoでの生体内分布アッセイのために、注射後4時間で屠殺した。組織サンプルを、平衡状態で翌日にガンマ計数器において読み取った。
図3】腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスにおける事前標的化された[225Acプロテウス-DOTA]ハプテンの生体内分布を示す図である。huGPA33-C825 BsAb、クリアリング剤および[225Acプロテウス-DOTA]ハプテンを静脈内注射(外側尾静脈から)した後に、動物を、臓器採取および放射能判定のために、24時間後に安楽死させた。アスタリスク(*)は、検出限界を下回るレベルを示す。
図4】ルテチウム-DOTAキレートの可能なジアステレオ異性体間の相互変換を示す図である。
図5】ビス-DOTAモノルテチウム錯体の合成スキームを示す図である。
図6】抗HER2-C825または抗HER2 IgGの[225Acプロテウス-DOTA]とのin vitroでの混合と、それに続くサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。点線は、カラム製造業者によって指定された空隙容量を示す。精製された[225Acプロテウス-DOTA]ハプテンを標準物質として使用した。
図7】t=0分で[68Ga-プロテウス-DOTA]を皮下投与したNCI-N87腫瘍を担持するヌードマウスからの動的PET(注射後0~15分)、静的PET(注射後51または56分)、およびex vivoでの生体内分布データ(注射後2時間)を示す図である。2匹の個々のマウスについて、減衰補正された血液および腎臓の時間-放射能曲線(TAC)を示す。動物の各々についての血液-TACを、別個に、非線形二相減衰方程式に曲線適合させた。マウス1/マウス2についての(i)急速相パーセント、(ii)半減期(緩徐相;分)、(iii)半減期(急速相;分)、および(iv)R2値は、それぞれ、46/56、13.2/13.7、1.4/0.94、および0.95/0.99であった。
図8】抗GD2-DOTA-PRITを用いた225Ac-DOTA-Bnおよび177Lu-DOTA-Bnの事前標的化の比較を示す図である。右側脇腹に皮下GD2発現IMR-32ヒト神経芽腫異種移植片を担持する雌の無胸腺ヌードマウスに、3種の別個の試薬:(1)hu3F8-C825(0.25mg、1.19nmol)[t=-28時間(h)]、続いて(2)0.1mgの500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y)(0.2nmolのCA;146のDOTA-Bn(Y)/1molのデキストラン、29nmolのDOTA-Bn(Y))[t=-4時間]、ならびに(3)等モル量の177Lu-または225Ac-DOTA-Bnのいずれか(それぞれ、50μCiおよび100μCiの177Luおよび225Ac、8~10pmol)[t=0時間]を外側尾静脈から静脈内(i.v.)注射した。マウスを、腫瘍および選択された正常組織の生体内分布アッセイのために、放射性トレーサーの注射後24時間で屠殺した。平均腫瘍質量は、以下のとおりであった(平均±SDとして提示されている):177Luおよび225Acコホートについて、それぞれ、0.77±0.62gおよび0.49±0.28g。放射能濃度データは、平均%ID/g±平均の標準誤差(SEM)として表される。腫瘍対組織比の誤差は、平均の標準誤差の幾何平均として算出される。太字で強調されたスチューデントのt検定のp値は、有意とみなされる(p<0.05)。
図9(A)】腫瘍のないヌードマウスにおける放射標識されたプロテウス-DOTAのin vivoでの生体内分布および薬物動態を示す図である。サロゲート[111In]プロテウス-DOTAの血中半減期を決定した。点線は、半減期を算出するために使用された非線形二相減衰解析(R2=0.913)を示す。データは、平均±SDとして提示されている。
図9(B)】腫瘍のないヌードマウスにおける放射標識されたプロテウス-DOTAのin vivoでの生体内分布および薬物動態を示す図である。放射標識されたプロテウス-DOTAトレーサーを、マウスの群に外側尾静脈から静脈内注射し、臓器採取および放射能のアッセイのために、1~4時間後に安楽死させた。データは、平均±SDとして提示されている。
図10】健康なヌードマウスにおける漸増用量の[225Ac]プロテウス-DOTAの毒物学研究を示す図である。最大耐容用量には到達しなかった。処置された動物の体重を、処置前のベースライン体重に対する百分率としてプロットした。アスタリスク(*)は、安楽死を必要とするまたは死亡して発見されたマウスを示す。データは、平均±SDとして提示されている。
図11】種々の用量レベルの[225Ac]プロテウス-DOTAで処置された腫瘍のない健康な雌の無胸腺ヌードマウスの剖検時に取得された145日での選択された臓器の質量を示す図である。臓器の質量に有意な群差は観察されなかった。
図12】腫瘍のない健康な無胸腺nu/nu雌マウスにおける注射後240分(n=5匹のマウス;静脈内に与えた)での[111In]プロテウス-DOTA(740kBq[20μCi]/3.38nmol)の生体内分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本方法のある特定の態様、方式、実施形態、変形形態および特徴は、本技術の実質的な理解を与えるために、下記に様々な詳細度で説明されることを認識すべきである。
【0023】
本方法の実施においては、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの従来の技法が使用される。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition;the series Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press);MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach;Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition;Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);およびHerzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunologyを参照されたい。
【0024】
本技術の組成物は、画像診断/線量測定およびPRIT(例えば、アルファ粒子放射免疫治療)において有用である新規なDOTA-ハプテンを含む。本明細書に開示される組成物は、標的化放射線治療のためのアクチニウム-225(225Ac)のin vivoでの効率的な抗DOTA二重特異性抗体媒介腫瘍事前標的化を可能にする。DOTA-PRITプラットフォームは、(1)抗腫瘍抗原抗体(IgG部分)およびpMの親和性の抗DOTA-ハプテン一本鎖可変断片scFv「C825」の抗体配列を含むIgG-一本鎖可変断片(scFv)二重特異性抗体構築物(IgG-scFv)、(2)500kDデキストラン-DOTA-ハプテンクリアリング剤、ならびに(3)本技術の放射標識されたDOTAハプテン組成物の投与を含む、3段階の事前標的化戦略を伴う。
【0025】
以前の研究は、GPA33発現結腸がん異種移植片を担持する無胸腺ヌードマウスのセラノスティックなベータ粒子放射免疫治療(RIT)またはin vivo陽電子放出断層撮影法(PET)のために、それぞれ、抗GPA33-DOTA-PRITを使用して、177Lu-または86Y-S-2-(4-アミノベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸キレート(DOTA-Bn)ハプテンを事前標的化できることを実証している。しかしながら、モデルPRITシステムを使用するin vivoでの225Ac-DOTA-Bnを用いた事前標的化は、注射後24時間で225Ac-DOTA-Bnの著明でない腫瘍内取り込み(<1%ID/g)をもたらした。図8を参照されたい。したがって、従来のDOTA-ハプテンは、225Ac等の高線エネルギー付与(LET)のアルファ粒子放出同位体を伴うDOTA-PRIT放射線治療用途に適していない。
【0026】
対照的に、本明細書に開示されるDOTAハプテン組成物は、(a)固形腫瘍の効率的なin vivoでの事前標的化アルファ粒子放射線治療を可能にし、(b)望まれない腎臓/全身保持なしに完全な腎クリアランスを呈し、かつ(c)抗DOTA二重特異性抗体(例えば、抗HER2-C825)に高親和性で結合することができる(すなわち、本技術のDOTAハプテン組成物のAc-225-DOTA部分は、DOTAハプテン組成物のルテチウム-DOTA部分と抗DOTA二重特異性抗体との相互作用を立体的に遮断しない)。
【0027】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、一般に、本技術が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1個の細胞」への言及は、2個以上の細胞の組合せを含むなどである。一般に、本明細書で使用される命名法、ならびに下記の細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学および核酸化学およびハイブリダイゼーションにおける実験室手順は、当技術分野で周知であり、かつ一般的に用いられるものである。
本明細書で使用される場合、数に関する「約」という用語は、一般に、別段の記載がない限りまたは文脈から別段に明らかでない限り、その数のいずれかの方向(それを超えるまたはそれ未満)での1%、5%、または10%の範囲内に入る数を含む(そのような数が可能値の0%未満となるまたは100%を超える場合を除く)と解釈される。
本明細書に記載された化合物の薬学的に許容される塩は、本技術の範囲内にあり、所望の薬理活性を保持し、かつ生物学的に望ましくないものでない酸または塩基付加塩を含む(例えば、塩は、過度に毒性、アレルギー性、または刺激性でなく、生物学的に利用可能である)。本技術の化合物が、例えば、アミノ基等の塩基性基を有する場合、薬学的に許容される塩は、無機酸(塩酸、ヒドロホウ酸(hydroboric acid)、硝酸、硫酸、およびリン酸等)、有機酸(例えば、アルギネート、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)または酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸等)と形成することができる。本技術の化合物が、例えば、カルボン酸基等の酸性基を有する場合、これは、アルカリおよびアルカリ土類金属等の金属(例えば、Na+、Li+、K+、Ca2+、Mg2+、Zn2+)、アンモニアもしくは有機アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)または塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リシンおよびオルニチン)と塩を形成することができる。そのような塩は、化合物の単離および精製の間にin situで、または精製された化合物をその遊離塩基もしくは遊離酸形態でそれぞれ好適な酸もしくは塩基と別個に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、薬剤または薬物の対象への「投与」は、化合物をその意図された機能を果たすために対象に導入または送達する任意の経路を含む。投与は、任意の好適な経路によって、例えば経口的に、鼻腔内に、非経口的に(静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、もしくは皮下に)、直腸に、または局所的に行うことができる。投与は、自己投与および他者による投与を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を総称的に指し、例として、限定はしないが、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、それらの組合せ、ならびに任意の脊椎動物において、例えば、ヒト、ヤギ、ウサギおよびマウス等の哺乳動物、およびサメ免疫グロブリン等の非哺乳動物種において免疫応答の間に産生される類似の分子を含む。本明細書で使用される場合、「抗体」(「無傷の免疫グロブリン」を含む)および「抗原結合断片」は、他の分子への結合を実質的に排除して、目的の分子(または目的の高度に類似した分子の群)に特異的に結合する(例えば、目的の分子に対して、生体サンプル中の他の分子に対する結合定数よりも約103-1倍大きい、約104-1倍大きいまたは約105-1倍大きい結合定数を有する抗体および抗体断片)。「抗体」という用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(二重特異性抗体等)等の遺伝子操作された形態を含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.);Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997も参照されたい。
【0030】
より詳細には、抗体は、抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する、少なくとも軽鎖免疫グロブリン可変領域または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを指す。抗体は、重鎖および軽鎖から構成され、それらは各々、可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域と称される可変領域を有する。併せて、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識される抗原の結合を担う。典型的に、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。軽鎖には2つのタイプ、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)が存在する。抗体分子の機能活性を決定する5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域(領域は「ドメイン」としても知られている)を含有する。組み合わさって、重鎖および軽鎖可変領域は、抗原に特異的に結合する。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は定義されている(参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照されたい)。Kabatデータベースは、現在オンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で相対的に保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、大部分がβシート配座をとり、CDRは、βシート構造を接続し、いくつかの場合にはβシート構造の一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合的相互作用によってCDRを正しい配向に位置させることを可能にする足場を形成するように作用する。
【0031】
CDRは、主として、抗原のエピトープへの結合を担う。各鎖のCDRは、典型的に、N末端から順に番号付けされてCDR1、CDR2、およびCDR3と称され、また、典型的に、特定のCDRが位置する鎖によって特定される。したがって、VH CDR3は、それが存在する抗体の重鎖の可変ドメインに位置するのに対し、VL CDR1は、それが存在する抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。標的タンパク質(例えば、HER2)または分子(例えば、DOTA)に結合する抗体は、特異的なVH領域およびVL領域配列を有し、したがって、特異的なCDR配列を有する。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる組合せ部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体によって変化するのはCDRであるが、CDR内の限定された数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。抗体の例は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、および抗体断片を含む。抗体は、抗原に特異的に結合する。
【0032】
「二重特異性抗体」は、2種の異なる抗原に同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(BsAb)および二重特異性抗体断片(BsFab)は、例えば、腫瘍関連抗原(例えば、HER2)に特異的に結合する少なくとも1つのアーム、および治療または診断剤を担持する標的化可能なコンジュゲート(例えば、プロテウス-DOTA)に特異的に結合する少なくとも1つの他のアームを有し得る。多様な異なる二重特異性抗体構造が当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体における各結合部分は、異なるモノクローナル抗体由来のVHおよび/またはVL領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、第1のモノクローナル抗体由来のCDRを含有するVHおよび/またはVL領域を有する免疫グロブリン分子、ならびに第2のモノクローナル抗体由来のCDRを含有するVHおよび/またはVL領域を有する抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fd、Fv、dAB、scFv等)を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片であって、同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VHL)を含む断片を指す。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、それらのドメインが別の鎖の相補的ドメインとの対合を強いられ、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;および30 Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により詳細に記載されている。
【0034】
本明細書で使用される場合、「一本鎖抗体」または「一本鎖Fv(scFv)」という用語は、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHの抗体融合分子を指す。一本鎖抗体分子は、いくつかの個々の分子を含むポリマー、例えば、ダイマー、トリマーまたは他のポリマーを含み得る。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、組換え方法を使用して、VLおよびVH領域が対合して一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている)を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって、それらを連結することができる。Bird et al. (1988) Science 242:423-426およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad Sci. USA 85:5879-5883。そのような一本鎖抗体は、組換え技法または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって調製することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「無傷の抗体」または「無傷の免疫グロブリン」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖ポリペプチドおよび2つの軽(L)鎖ポリペプチドを有する抗体または免疫グロブリンを意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略称する)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略称する)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシル末端へ以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、抗体が選択的に結合することができる分子を指す。標的抗原は、タンパク質(例えば、抗原ペプチド)、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するもしくは合成の化合物であり得る。抗原はまた、対象において免疫応答を発生させるために動物対象に投与され得る。
本明細書で使用される場合、「抗原結合断片」という用語は、抗原への結合を担うポリペプチドの一部を保有する全免疫グロブリン構造の断片を指す。本技術において有用な抗原結合断片の例は、scFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab’およびF(ab’)2、ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0037】
「結合親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との非共有結合的相互作用の合計の強度を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されたものを含む、当技術分野で知られている標準的な方法によって測定することができる。低親和性複合体は、一般に抗原から容易に解離する傾向がある抗体を含有するのに対し、高親和性複合体は、一般により長い持続期間にわたって抗原に結合したままである傾向がある抗体を含有する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「クリアリング剤」は、対象の血液区画内に存在する過剰の二機能性抗体に結合して、腎臓による迅速なクリアランスを容易にする薬剤である。ハプテン投与前のクリアリング剤の使用は、PRITシステムにおけるより良好な腫瘍対バックグラウンド比を容易にする。クリアリング剤の例は、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y)(Orcutt et al., Mol Cancer Ther. 11(6): 1365-1372 (2012))、500kDアミノデキストラン-DOTAコンジュゲート、事前標的化抗体に対する抗体等を含む。
本明細書で使用される場合、「対照」は、実験において比較目的で使用される代替サンプルである。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が特定のタイプの疾患または状態の処置に対する治療剤の効力の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を呈することが知られている化合物または組成物)および陰性対照(治療を受けないまたはプラセボを受ける対象またはサンプル)が典型的に用いられる。
【0039】
本明細書で使用される場合、組成物の「有効量」という用語は、所望の予防または治療効果を達成するのに十分な分量であり、例えば、処置されている疾患、例えば、標的ポリペプチドに関連する疾患または医学的状態(例えば、乳がん、結腸直腸がん、脳がん等)に関連する症状の減少を生じさせる量である。対象に投与される本技術の組成物の量は、疾患の程度、タイプおよび重症度ならびに個体の特徴、例えば全般的な健康状態、年齢、性別、体重および薬物への耐性によって決まる。当業者は、これらのおよび他の因子に応じて適切な投与量を決定することができる。本技術の組成物はまた、1種または複数の追加の治療化合物と組み合わせて投与することができる。
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合が可能な抗原決定基を意味する。エピトープは、通常は、分子の化学的に活性な表面基からなり、通常は、特定の3次元構造特徴、および特定の電荷特徴を有する。
本明細書で使用される場合、「無限バインダー」は、結合の際に二重特異性抗体と金属キレートとの高度に特異的な永久的結合を形成することによって特徴付けられる抗金属キレート二重特異性抗体を指す。Corneillie et al., J. Inorganic Biochemistry 100:882-890 (2006)を参照されたい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、対象または単離された微生物から取得された臨床サンプルを指す。ある特定の実施形態では、サンプルは、対象から採取された組織、体液、または微生物等の、生物学的供給源から取得される(すなわち、「生体サンプル」)。サンプル供給源は、粘液、痰、気管支肺胞洗浄液(BAL)、気管支洗浄液(BW)、全血、体液、脳脊髄液(CSF)、尿、血漿、血清、または組織を含むがこれらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「別個の」治療的使用という用語は、少なくとも2種の活性成分を、異なる経路によって、同時にまたは実質的に同時に投与することを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「順次の」治療的使用という用語は、少なくとも2種の活性成分を、異なる時点で投与することを指し、投与経路は同一であるかまたは異なる。より詳細には、順次使用は、活性成分の1種を、他の活性成分の投与が開始する前に全部投与することを指す。したがって、活性成分の1種を、他の活性成分を投与する前に数分、数時間、または数日にわたって投与することが可能である。この場合、同時の処置は存在しない。
本明細書で使用される場合、「同時の」治療的使用という用語は、少なくとも2種の活性成分を、同じ経路によって、かつ同時にまたは実質的に同時に投与することを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」は、分子(例えば、抗体)が、別の分子(例えば、抗原)を認識し、結合するが、その他の分子を実質的に認識し、結合しないことを指す。本明細書で使用される「特異的結合」、特定の分子(例えば、抗原、または抗原上のエピトープ)「に特異的に結合する」、または「に特異的」であるという用語は、例えば、それが結合する分子に対して約10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12MのKdを有する分子によって表され得る。
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、区別なく使用され、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、またはヒトを指す。ある特定の実施形態では、個体、患者または対象は、ヒトである。
本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、有効量で存在する場合に、それを必要とする対象に対して所望の治療効果を生じる化合物を意味することが意図されている。
【0043】
本明細書で使用される「処置する」または「処置」は、対象、例えばヒトにおける本明細書に記載された疾患または障害の処置を包含し、(i)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること;(ii)疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち、障害の退行を引き起こすこと;(iii)障害の進行を緩徐化すること;および/または(iv)疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状を阻害し、軽減し、もしくはその進行を緩徐化することを含む。「がんを処置する」とは、がんに関連する症状が、例えば、緩和され、低減され、治癒し、または寛解の状態に置かれることを意味する。
本明細書に記載された疾患の様々な処置方式は、完全な処置を含むが完全に満たない処置も含む「実質的な」処置であって、何らかの生物学的にまたは医学的に関連する結果が達成されるものを意味することが意図されていることもまた認識すべきである。処置は、慢性疾患の継続的な長期処置、または急性状態の処置のための単回、もしくは数回の投与であり得る。
【0044】
事前標的化放射免疫治療(PRIT)
事前標的化は、骨髄等の正常組織に対する望ましくない毒性の一因となる、腫瘍標的化抗体の緩徐な血液クリアランスを解決する多段階プロセスである。事前標的化においては、放射性核種または他の診断または治療剤を低分子ハプテンに付着させる。ハプテンおよび標的抗原に対する結合部位を有する事前標的化二重特異性抗体を最初に投与する。次いで、非結合抗体を循環から排出させ、その後、ハプテンを投与する。
DOTA-PRITは、ベータ放出放射性同位体(例えば、ルテチウム-177)をGD2またはGPA33発現ヒト癌異種移植片に有効に標的化し、それにより、骨髄および腎臓等の正常組織に対する毒性を低減するために使用されている。ベータ粒子放出(例えば、177Lu-DOTA-Bnハプテンからの)は、1~10nmおよび0.1~1MeVのエネルギーの範囲を有する低線エネルギー付与であると考えられる。DOTA-PRITは、ルテチウムおよびイットリウムのベータ粒子放出放射性同位体(それぞれ、177Luおよび90Y)の標的化に最適に適しており、その理由は、抗DOTA C825(抗DOTA scFv)は、そのような放射性ランタニドを含有するDOTA錯体にpMの親和性で結合するからである。
【0045】
しかしながら、固形腫瘍は、一般に、放射線耐性である。他方で、アルファ粒子放射線治療(例えば、225Ac-DOTA-ハプテンを用いる)は、50~80μmおよび5~8MeVのエネルギーの範囲を有する高線エネルギー付与のアルファ粒子放出によって、最小限の二次的損傷で高度に強力な殺細胞活性を生じさせる。より長い距離にわたってそのエネルギーを与えることができるベータ粒子とは異なり、アルファ粒子放射線治療は、がん再発の主要な原因となり得る微小残存病変を含む、小体積の腫瘍に対して高い治療可能性を有する。したがって、ベータ粒子と比較してより大きい治療可能性を有する、アルファ粒子放出体を用いたDOTA-PRIT放射線治療の有効性を高めることが必要である。
【0046】
C825の固有の限定は、scFvが様々な抗DOTA-ハプテンに対して有する結合親和性の変化であり、これは、三価希土類のイオン半径に高度に依存する。以前のモデル化研究は、100pMのハプテン結合親和性が、PRITにおける電離放射線の効率的な送達のために必要とされ(高い抗原密度および飽和BsAb用量の条件を想定する)、具体的には血管腫瘍および微小転移における最大限に近いハプテン保持を達成するために必要とされることを実証している。C825は、Y、Lu、またはGdのDOTA-Bn[S-2-(4-アミノベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸キレート]錯体に、それぞれ、15.4±2.0pM、10.8±2.5pM、または34.0±5.3pMのKd(平衡解離定数、平均±SDとして)で結合することが示された。対照的に、InまたはGaを含有するDOTA-Bn錯体に対するKdは、1.01±0.04nMまたは52±12nMであった。したがって、DOTA-PRITは、ベータ粒子放出体であるイットリウム-90およびルテチウム-177の標的化によく適しているが、アルファ粒子放出体(例えば、アクチニウム同位体)に適合する可能性は低い。
【0047】
225Acに対するKdはin vitroで特徴付けられなかったが、予備実験は、モデルDOTA-PRITシステム(抗GD2-DOTA-PRIT)を使用するin vivoでの225Ac-DOTA-Bnを用いた事前標的化が、等モルの投与された177Lu-DOTA-Bnと比較して、注射後24時間で225Ac-DOTA-Bnの統計的に有意(p≦0.005;対応のない両側のスチューデントのt検定)かつ著明でない腫瘍内取り込み(%ID/gとして;平均±標準偏差(SD);225Ac-DOTA-Bn(n=5)について:0.82±0.17;177Lu-DOTA-Bn(n=5)について:10.29±2.87)をもたらしたことを示している。図8を参照されたい。血液または腎臓等の正常組織において大きな差は観察されず(血液について:225Ac-または177Lu-DOTA-Bnについて、それぞれ、0.33±0.03または0.49±0.09;腎臓について:225Ac-または177Lu-DOTA-Bnについて、それぞれ、0.65±0.15または0.83±0.10;いずれもp>0.05)、これは、2種のトレーサーのin vivo結果が類似しており、in vivoでの安定性が腫瘍局在の限定因子ではなかった可能性が高いことを示唆している。
【0048】
本技術の組成物
DOTAは、生理学的条件下で不可逆的である安定な金属錯体を形成する大環状キレート剤である。DOTAは、405ダルトンの分子量を有し、迅速な拡散および腎クリアランスを呈する。DOTAおよびそのバリアントは、常磁性金属および放射性核種を含む広範な金属をキレートする。例示的な金属は、イットリウム、インジウム、ガリウム、ガドリニウム、ユウロピウム、テルビウム、ルテチウム、銅、ビスマス、アクチニウムおよびすべてのランタニド金属を含む。
【0049】
一態様では、本開示は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩
【化3】
(I)
(式中、M1は、175Lu3+45Sc3+69Ga3+71Ga3+893+113In3+115In3+139La3+136Ce3+138Ce3+140Ce3+142Ce3+151Eu3+153Eu3+159Tb3+154Gd3+155Gd3+156Gd3+157Gd3+158Gd3+、または160Gd3+であり、X1、X2、X3、およびX4は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、X5、X6、およびX7は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、Y1は、OまたはSであり、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22である)
を提供する。ある特定の実施形態では、nは、3である。ある特定の実施形態では、nは、3であり、Y1は、Sである。
【0050】
化合物のいくつかの実施形態では、X1、X2、X3、およびX4のうち少なくとも2つは、各々独立して、孤立電子対である。化合物のある特定の実施形態では、X1、X2、X3、およびX4のうち3つは、各々独立して、孤立電子対であり、残りのX1、X2、X3、またはX4は、Hである。
【0051】
別の態様では、本開示は、式Iの上記化合物のいずれかおよび放射性核種カチオンを含むビスキレートを提供する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、放射性核種カチオンに、約1pM~1nM(例えば、約1~10pM;1~100pM;5~50pM;100~500pM;または500pM~1nM)のKdで結合することができる。いくつかの実施形態では、Kdは、約1nM~約1pMの範囲内、例えば、約1nM、950pM、900pM、850pM、800pM、750pM、700pM、650pM、600pM、550pM、500pM、450pM、400pM、350pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、90pM、80pM、70pM、60pM、50pM、40pM、30pM、20pM、10pM、9pM、8pM、7pM、6pM、5pM、4pM、3pM、2.5pM、2pM、または1pM以下である。いくつかの実施形態では、ビスキレートは、式IIのビスキレートまたはその薬学的に許容される塩
【0052】
【化4】
(II)
(式中、M1は、175Lu3+45Sc3+69Ga3+71Ga3+893+113In3+115In3+139La3+136Ce3+138Ce3+140Ce3+142Ce3+151Eu3+153Eu3+159Tb3+154Gd3+155Gd3+156Gd3+157Gd3+158Gd3+、または160Gd3+であり、M2は、放射性核種カチオンであり、X1、X2、X3、およびX4は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、X5、X6、およびX7は、各々独立して、孤立電子対(すなわち、酸素アニオンを与える)またはHであり、Y1は、OまたはSであり、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22である)
である。ある特定の実施形態では、nは、3である。ある特定の実施形態では、nは、3であり、Y1は、Sである。
【0053】
ビスキレートのいくつかの実施形態では、X5、X6、およびX7のうち少なくとも2つは、各々独立して、孤立電子対である。追加的にまたは代替的に、ビスキレートのいくつかの実施形態では、放射性核種カチオンは、二価カチオンまたは三価カチオンである。放射性核種カチオンは、アルファ粒子放出同位体、ベータ粒子放出同位体、オージェ放出体、またはそれらのいずれか2種以上の組合せであり得る。アルファ粒子放出同位体の例は、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、および255Fmを含むがこれらに限定されない。ベータ粒子放出同位体の例は、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、および67Cuを含むがこれらに限定されない。オージェ放出体の例は、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、および203Pbを含む。ビスキレートのいくつかの実施形態では、放射性核種カチオンは、68Ga、227Th、または64Cuである。
【0054】
いくつかの実施形態では、放射性核種カチオンは、20~6,000keVの範囲内の崩壊エネルギーを有する。崩壊エネルギーは、オージェ放出体については60~200keV、ベータ放出体については100~2,500keV、およびアルファ放出体については4,000~6,000keVの範囲内であり得る。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、20~5,000keV、100~4,000keV、または500~2,500keVの範囲であり得る。有用なオージェ放出体の崩壊エネルギーは、<1,000keV、<100keV、または<70keVであり得る。有用なアルファ粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは、2,000~10,000keV、3,000~8,000keV、または4,000~7,000keVの範囲であり得る。
【0055】
別の態様では、本開示は、式Iの化合物、ならびに該化合物および腫瘍抗原標的を認識し、結合する二重特異性抗体を含む複合体を提供する。本開示はまた、式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する二重特異性抗体を含む複合体を提供する。本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、二重特異性抗体は、無限バインダー(infinite binder)であり得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、C825(Cheal et al., Mol Cancer Ther. 13(7):1803-12 (2014)を参照されたい)または2D12.5(Corneillie et al., J. Inorganic Biochemistry 100:882-890 (2006))の抗原結合断片を含む。追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、二重特異性抗体は、G54C置換を有するC825の抗原結合断片を含む。追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、二重特異性抗体は、G54C置換を有する2D12.5の抗原結合断片を含む。
【0056】
本明細書に開示される複合体の上記実施形態のいずれかでは、腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(acetylglucoaminyltransferase)VイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される。追加的にまたは代替的に、複合体のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、化合物またはビスキレートに、100nM~95nM、95~90nM、90~85nM、85~80nM、80~75nM、75~70nM、70~65nM、65~60nM、60~55nM、55~50nM、50~45nM、45~40nM、40~35nM、35~30nM、30~25nM、25~20nM、20~15nM、15~10nM、10~5nM、5~1nM、1nM~950pM、950pM~900pM、900pM~850pM、850pM~800pM、800pM~750pM、750pM~700pM、700pM~650pM、650pM~600pM、600pM~550pM、550pM~500pM、500pM~450pM、450pM~400pM、400pM~350pM、350pM~300pM、300pM~250pM、250pM~200pM、200pM~150pM、150pM~100pM、100pM~50pM、50pM~40pM、40pM~30pM、30pM~20pM、20pM~10pM、9pM、8pM、7pM、6pM、5pM、4pM、3pM、2.5pM、2pM、1.5pM、または1pM以下のKdで結合する。
【0057】
本技術の診断および治療方法
一態様では、本開示は、それを必要とする対象において固形腫瘍を検出するための方法であって、(a)式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している固形腫瘍に局在するように構成されている、工程と、(b)基準値よりも高い、複合体によって放出される放射能レベルを検出することによって、対象における固形腫瘍の存在を検出する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0058】
別の態様では、本開示は、対象を事前標的化放射免疫治療のために選択するための方法であって、(a)式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的に結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している固形腫瘍に局在するように構成されている、工程と、(b)複合体によって放出される放射能レベルを検出する工程と、(c)複合体によって放出される放射能レベルが基準値よりも高い場合に、対象を事前標的化放射免疫治療のために選択する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0059】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、複合体によって放出される放射能レベルは、陽電子放出断層撮影法または単光子放出コンピュータ断層撮影法を使用して検出される。追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、対象は、がんと診断されている、またはがんを有すると疑われている。がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞癌、脳がん、肺がん、胃がん(gastric or stomach cancer)、膵がん、甲状腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、黒色腫、肉腫、癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、神経膠芽細胞腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺癌、外陰部がん、陰茎癌、および頭頸部がんからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、脳がんは、下垂体腺腫、髄膜腫、神経芽腫、または頭蓋咽頭腫である。
追加的にまたは代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、複合体は、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜下腔内に、関節包内に、眼窩内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、脳室内に、経口的にまたは鼻腔内に投与される。ある特定の実施形態では、複合体は、対象の脳脊髄液または血液中に投与される。
【0060】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、複合体によって放出される放射能レベルは、複合体が投与された後4~24時間の間に検出される。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、複合体によって放出される放射能レベルは、組織1グラム当たりの注射用量の百分率(%ID/g)として表される。基準値は、非腫瘍(正常)組織中に存在する放射能レベルを測定し、非腫瘍(正常)組織中に存在する平均放射能レベル±標準偏差を計算することによって算出され得る。いくつかの実施形態では、基準値は、標準取り込み値(SUV)である。Thie JA, J Nucl Med. 45(9):1431-4 (2004)を参照されたい。いくつかの実施形態では、腫瘍組織と正常組織との放射能レベルの比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1である。
【0061】
別の態様では、本開示は、がんと診断された対象において放射線治療に対する腫瘍の感受性を高めるための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成された抗DOTA二重特異性抗体の有効量を対象に投与する工程と、(b)抗DOTA二重特異性抗体に結合するように構成された、式IIのビスキレートの有効量を対象に投与する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。抗DOTA二重特異性抗体は、それが腫瘍細胞を飽和するのに十分な条件下でかつ十分な期間にわたって(例えば、投薬レジメンに従って)投与される。いくつかの実施形態では、抗DOTA二重特異性抗体の投与の後に、非結合の抗DOTA二重特異性抗体が血流から除去される。いくつかの実施形態では、式IIのビスキレートは、非結合の抗DOTA二重特異性抗体のクリアランスを可能にするのに十分であり得る期間の後に投与される。
【0062】
ビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後1分~4日以上の間の任意の時点で投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、ビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間、7.5時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、48時間、72時間、96時間、またはその中の任意の範囲で投与される。代替的に、ビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体の投与から4日以上後の任意の時点で投与され得る。
【0063】
追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態では、方法は、ビスキレートの投与前に、クリアリング剤の有効量を対象に投与する工程をさらに含む。クリアリング剤は、C825-ハプテンとコンジュゲートすることができる任意の分子(デキストランまたはデンドリマーまたはポリマー)であり得る。いくつかの実施形態では、クリアリング剤は、2000kD、1500kD、1000kD、900kD、800kD、700kD、600kD、500kD、400kD、300kD、200kD、100kD、90kD、80kD、70kD、60kD、50kD、40kD、30kD、20kD、10kD、または5kD以下である。いくつかの実施形態では、クリアリング剤は、500kDアミノデキストラン-DOTAコンジュゲート(例えば、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y)、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Lu)、または500kDデキストラン-DOTA-Bn(In)等)である。
【0064】
いくつかの実施形態では、クリアリング剤および式IIのビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体をさらに投与することなく投与される。例えば、いくつかの実施形態では、抗DOTA二重特異性抗体は、(i)抗DOTA二重特異性抗体を(任意に関連する腫瘍細胞が飽和されるように)投与すること、(ii)式IIのビスキレートおよび任意にクリアリング剤を投与すること、(iii)抗DOTA二重特異性抗体を追加投与することなく、式IIのビスキレートおよび/またはクリアリング剤を任意に追加投与することの少なくとも1サイクルを含むレジメンに従って投与される。いくつかの実施形態では、方法は、複数のそのようなサイクル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超えるサイクル)を含み得る。
【0065】
追加的にまたは代替的に、方法のいくつかの実施形態では、腫瘍抗原標的は、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、Ki-67、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される。
追加的にまたは代替的に、方法のいくつかの実施形態では、抗DOTA二重特異性抗体および/またはビスキレートは、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜下腔内に、関節包内に、眼窩内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、脳室内に、経口的にまたは鼻腔内に投与される。
【0066】
一態様では、本開示は、がんと診断された対象において放射線治療に対する腫瘍の感受性を高めるための方法であって、式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的を認識し、結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成されている、工程を含む方法を提供する。複合体は、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜下腔内に、関節包内に、眼窩内に、皮内に、腹腔内に、経気管的に、皮下に、脳室内に、経口的にまたは鼻腔内に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0067】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、(a)腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成された抗DOTA二重特異性抗体の有効量を対象に投与する工程と、(b)抗DOTA二重特異性抗体に結合するように構成された、式IIのビスキレートの有効量を対象に投与する工程とを含む方法を提供する。抗DOTA二重特異性抗体は、それが腫瘍細胞を飽和するのに十分な条件下でかつ十分な期間にわたって(例えば、投薬レジメンに従って)投与される。いくつかの実施形態では、抗DOTA二重特異性抗体の投与の後に、非結合の抗DOTA二重特異性抗体が血流から除去される。いくつかの実施形態では、式IIのビスキレートは、非結合の抗DOTA二重特異性抗体のクリアランスを可能にするのに十分であり得る期間の後に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、ビスキレートの投与前に、クリアリング剤の有効量を対象に投与する工程をさらに含む。ビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後1分~4日以上の間の任意の時点で投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、ビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体の投与後、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、6.5時間、7時間、7.5時間、8時間、8.5時間、9時間、9.5時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、48時間、72時間、96時間、またはその中の任意の範囲で投与される。代替的に、ビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体の投与から4日以上後の任意の時点で投与され得る。
【0069】
クリアリング剤は、500kDアミノデキストラン-DOTAコンジュゲート(例えば、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y)、500kDデキストラン-DOTA-Bn(Lu)、または500kDデキストラン-DOTA-Bn(In)等)であり得る。いくつかの実施形態では、クリアリング剤および式IIのビスキレートは、抗DOTA二重特異性抗体をさらに投与することなく投与される。例えば、いくつかの実施形態では、抗DOTA二重特異性抗体は、(i)抗DOTA二重特異性抗体を(任意に関連する腫瘍細胞が飽和されるように)投与すること、(ii)式IIのビスキレートおよび任意にクリアリング剤を投与すること、(iii)抗DOTA二重特異性抗体を追加投与することなく、式IIのビスキレートおよび/またはクリアリング剤を任意に追加投与することの少なくとも1サイクルを含むレジメンに従って投与される。いくつかの実施形態では、方法は、複数のそのようなサイクル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超えるサイクル)を含み得る。
【0070】
それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、式IIのビスキレート、ならびに該ビスキレートおよび腫瘍抗原標的を認識し、結合する二重特異性抗体を含む複合体の有効量を対象に投与する工程であって、複合体が、複合体の二重特異性抗体によって認識される腫瘍抗原標的を発現している腫瘍に局在するように構成されている、工程を含む方法もまた本明細書で提供される。そのような複合体の治療有効性は、曲線下面積(AUC)腫瘍:AUC正常組織比を計算することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、複合体は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1のAUC腫瘍:AUC正常組織比を有する。
【0071】
がんを処置するための方法は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモン拮抗薬、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN-38、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗有糸分裂薬、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテオソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサートおよびCPT-11からなる群から選択される少なくとも1種の化学療法剤を対象に順次、別個に、または同時に投与する工程をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、肝細胞癌、脳がん、肺がん、胃がん、膵がん、甲状腺がん、腎臓または腎がん、前立腺がん、黒色腫、肉腫、癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜がん、神経膠芽細胞腫、扁平上皮がん、星細胞腫、唾液腺癌、外陰部がん、陰茎癌、および頭頸部がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0072】
キット
本技術は、患者においてがんを処置または診断するのに好適な構成成分を含有するキットを提供する。一態様では、キットは、本技術のDOTAハプテン、少なくとも1種の抗DOTA BsAb、および使用説明書を含む。キットは、クリアリング剤(例えば、DOTAにコンジュゲートされた500kDaアミノデキストランもしくは500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y))および/または1種もしくは複数の放射性核種をさらに含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の抗DOTA BsAbは、GPA33、HER2/neu、GD2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、MUM-1、CDK4、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、p15、gp75、ベータ-カテニン、ErbB2、がん抗原125(CA-125)、癌胎児性抗原(CEA)、RAGE、MART(黒色腫抗原)、MUC-1、MUC-2、MUC-3、MUC-4、MUC-5ac、MUC-16、MUC-17、チロシナーゼ、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺がんpsm、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1~6、p53、肺耐性タンパク質(LRP)Bcl-2、前立腺特異性抗原(PSA)、およびKi-67からなる群から選択される腫瘍抗原標的に結合する。追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態では、少なくとも1種の抗DOTA BsAbは、CEACAM6、結腸特異性抗原p(CSAp)、HLA-DR、CD40、CD74、CD138、EGFR、EGP-1、EGP-2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子(ILGF)、テネイシン、血小板由来成長因子、IL-6、CD20、CD19、PSMA、CD33、CD123、MET、DLL4、Ang-2、HER3、IGF-1R、CD30、TAG-72、SPEAP、CD45、L1-CAM、ルイスY(Ley)抗原、E-カドヘリン、V-カドヘリン、およびEpCAMからなる群から選択される腫瘍抗原標的に結合する。少なくとも1種の抗DOTA BsAbは、抗体の滅菌液体製剤または滅菌凍結乾燥調製物を含有する充填済みシリンジまたは自己注射ペンの形態で提供され得る(例えば、Kivitz et al., Clin. Ther. 28:1619-29 (2006))。
【0074】
追加的にまたは代替的に、本技術のキットのいくつかの実施形態では、1種または複数の放射性核種は、213Bi、211At、225Ac、152Dy、212Bi、223Ra、219Rn、215Po、211Bi、221Fr、217At、および255Fmの中から選択される。追加的にまたは代替的に、ある特定の実施形態では、1種または複数の放射性核種は、86Y、90Y、89Sr、165Dy、186Re、188Re、177Lu、67Cu、111In、67Ga、51Cr、58Co、99mTc、103mRh、195mPt、119Sb、161Ho、189mOs、192Ir、201Tl、203Pb、68Ga、227Th、および64Cuからなる群から選択される。
キット構成成分が経口投与用に製剤化されていない場合、キット構成成分を他の何らかの経路によって送達することが可能なデバイスが含まれ得る。そのようなデバイスの例は、(非経口投与用の)シリンジまたは吸入デバイスを含む。
【0075】
キット構成成分は、一緒に包装されるかまたは2つ以上の容器に分離され得る。いくつかの実施形態では、容器は、復元に好適なDOTAハプテンおよび/またはBsAb組成物の滅菌凍結乾燥製剤を含有するバイアルであり得る。キットはまた、他の試薬の復元および/または希釈に好適な1種または複数の緩衝液を含有し得る。使用され得る他の容器は、パウチ、トレイ、箱、チューブなどを含むがこれらに限定されない。キット構成成分は、容器内に包装され、滅菌状態で維持され得る。
【実施例
【0076】
(実施例1)
本技術の組成物を作製するための材料および方法
全般。DOTA-Bn-イソチオシアネート(p-SCN-Bn-DOTA)は、Macrocyclics,Inc.(Plano、TX)から購入し、アミン-PEG4-DOTAは、CheMatech(Dijon、フランス)から購入した。Optima(商標)グレード塩酸は、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。Chelex-100樹脂、200~400メッシュは、Bio-Rad Laboratories(Hercules、CA)から購入した。PD-10ゲル濾過サイズ排除カラム(8.3mLのSephadex(商標)G-25樹脂/カラムを含有する)は、GE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh、PA)から購入した。他のすべての試薬および合成グレードの化学物質は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)から購入し、さらに精製することなく使用した。HPLC分析(HPLCグレード)および化合物精製に使用するすべての溶媒もまた、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。すべての緩衝液および溶液は、超純水(18MΩ-cmの抵抗率)を使用して調製した。
【0077】
すべての液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)データは、以下の機器:2767 Sample Manager、2545 Binary Gradient Module、System Fluidics Organizer、2424 Evaporative Light Scattering Detector、2998 Photodiode Array Detector、3100 Mass Detectorを含む、Waters Autopureシステム(Milford、MA)を使用して取得した。HPLC溶媒(溶媒A、水中0.05%TFA;溶媒B、アセトニトリル中0.05%TFA)は、使用前に濾過した。分析方法は、10分間で5~25%の溶媒B、1.2mL/分の流速であった。分析カラム:Waters XBridge BEH300(Milford、MA)、C4、3.5μm、4.6×50mmおよびC18、4μm、4.6×50mm。分取方法:30分間で5~25%の溶媒B、20mL/分の流速。分取カラム:Waters XBridge Prep(Milford、MA)C18、4μm、Optimum Bed Density、19×150mm。
【0078】
すべてのNMRデータは、Bruker AV500またはAV600機器(Bruker、Billerica、MA)のいずれかを用いて周囲温度で取得した。以下の略語を使用した:一重線(s)、広幅一重線(bs)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)、五重線(pentet)(p)、二重線の二重線(dd)、多重線(m)。
すべてのPET画像化実験は、Focus 120 MicroPETカメラ(Siemens、Knoxville、TN)専用小動物スキャナーで実行した。
合成。DOTA錯体等の金属がロードされた有機錯体は、異性を呈する場合がある(Aime et al., Inorg Chem. 36(10):2059-2068 (1997))。この現象は、ルテチウム-DOTA錯体に存在する。図4に示すように、2種の単離された異性体は、錯体の正四角反柱形の(square antiprismatic)ジアステレオ異性体間の相互変換に起因し得る。2種のルテチウム-DOTA異性体はまた、クロマトグラフデータおよびプロトンNMRデータの差を呈した。本明細書に記載された実験では、主要な異性体(図4中の構造Iに対応する)のみを生物学的活性について判定した。
【0079】
ビス-DOTAモノルテチウム錯体の合成。DOTA-Bn-イソチオシアネートを、金属ローディングならびに後続の精製および凍結乾燥の間のその相対的安定性により、合成のための出発試薬として選択した。加水分解された可能性があるイソチオシアネート誘導体を最適化または再利用する試みはなされなかった(図5)。DOTA等の高い金属錯化能を有する分子を伴うすべての実験は、無金属HClで予備洗浄し、高純度水(例えば、ガラス蒸留水)ですすぎ、かつオーブン乾燥したガラス器具内で実行した。クロマトグラフィーは、錯化剤への金属カラム壁から浸出または抽出された金属のローディングを避けるために、手動で装填したガラスカラムで行った。逆相精製は、C-18シリカゲルを手動でゆるく装填した清浄な無金属ガラスカラムで行った。最終錯体中の含水量は測定されなかった。
【0080】
DOTAへのルテチウムのローディング(p-SCN-Bn-DOTA・Lu3+錯体の形成)。LuCl3・6H2O(127mg、326μmol)を0.4mLの0.4M酢酸ナトリウム溶液に添加した。次いで、p-SCN-Bn-DOTA(45mg、65μmol)を、シリンジによって溶液中に導入した。得られた混合物を室温で終夜撹拌した。逆相C-18カラムを用いて、水中0~40%アセトニトリルを勾配として使用して、精製を実施した。適切な画分をプールし、凍結乾燥して、18mg(収率38%)の所望の錯体を白色固体として得た。
ルテチウムのビス-DOTAモノ錯体(プロテウス-DOTA)。p-SCN-Bn-DOTA・Lu3+錯体(18mg、24.9μmol)およびNH2-PEG-4-DOTA(17mg、24.4μmol)を無水DMF(0.4mL)に添加し、続いてEt3N(20μL、140μmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を高真空下で除去し、残渣を、逆相C-18カラムを用いて、水中0~20%アセトニトリルを勾配として使用して精製して、2種の異性体を得た。第2の溶出画分を、逆相C-18カラムで、水中0~8%アセトニトリルを勾配として使用して再精製した。適切な画分をプールし、凍結乾燥した。第1の溶出異性体(2.1mg、6.4%)、第2の異性体(11.2mg、34%)を、トリエチルアンモニウム塩として単離した(図4を参照されたい)。
【0081】
第1の異性体:LC/MS m/z 1346.7 [C50H81LuN11O19S (M+H)の計算値1346.5]. 1H NMR (600 MHz, D2O, ppm), δ 7.25 (d, 2 H, J = 8.0 Hz), 7.19 (d, 2 H, J = 8.0 Hz), 3.75-3.21 (m, 55), 3.12 -2.84 (m, 17 H), 2.77-2.42 (m, 3 H), 1.20 (t, 8 H, J = 7.3 Hz).
第2の異性体:LC/MS m/z 1346.7 [C50H81LuN11O19S (M+H)の計算値1346.5]. 1H NMR (600 MHz, D2O, ppm), δ 7.24-7.20 (m, 4 H), 3.75-3.00 (m, 57), 2.84-2.81 (m, 2 H), 2.77-2.74 (m, 1 H), 2.72-2.64 (m, 2 H), 2.61-2.51 (m, 3 H), 2.50-2.47 (m, 1 H), 2.44-2.38 (m, 2 H), 2.19 (m, 1 H).
LC/MS:5~25%アセトニトリル(ACN)(0.05%TFA)/水(0.05%TFA)を使用する。
【0082】
プロテウス-DOTAの225Ac放射化学反応。無担体222Ac(5.80×104Ci/g)は、乾固硝酸塩残渣として、オークリッジ国立研究所から取得した。硝酸222Acは、後続の放射化学反応のために、0.2M Optima(商標)グレード塩酸に溶解した。775に設定したCRC-15R放射性同位体較正器(Capintec,Inc.、Florham Park、NJ)を使用して、225Ac放射能を測定し、表示された放射能値に5を乗じた;測定用ウェルの底部の中心にサンプルを置いた。水および緩衝液は、Chelex-100樹脂のカラムに通過させ、続いて滅菌フィルターデバイス(0.22または0.45μM)を通して濾過することによって、無金属および滅菌状態にした。最初に、プロテウス-DOTAを10mg/mLで水に懸濁させ、直ちに1.8mL Nuncバイアルに移し、未使用のストックを速やかに-20℃で保管した。[225Ac]プロテウス-DOTAを調製するために、20μLの無担体(5.80×104Ci/g)硝酸アクチニウム-225(66μCi)を、100μLの10mg/mLプロテウス-DOTA(1mg;0.741μmol)と1.8mL Nuncバイアル中で混合した。次に、15μLのL-アスコルビン酸溶液(150g/L)および100μLの3M酢酸アンモニウム溶液を添加した。
【0083】
溶液のpHは、1μLの反応混合物をHydrion pH試験紙にスポットすることによって、約5.5であると確認された(範囲:5.0~9.0)。反応物を60℃で30分間インキュベートし、次いで、6mLの滅菌等張生理食塩溶液(NSS)で予め平衡化した自製のイオン交換カラム(Sephadex C-25カラム)を使用して精製した。反応混合物をカラムに添加し、4mLのNSSで溶出させた。66.0μCiがロードされ、62.0μCiが通過画分において得られたことから、94%の放射化学反応回収収率が達成された。最終比放射能は、0.06Ci/gまたは84Ci/molであった。
【0084】
プロテウス-DOTAの68Ga放射化学反応。ヌードマウスの動的陽電子放出画像化を用いて68Gaプロテウス-DOTAの薬物動態を研究するために、プロテウス-DOTAをガリウム-68(68Ga)で放射標識した。68Gaは、0.3N HClを使用してオーストラリア原子力科学技術機構のジェネレータから溶出させ、続いて自動溶出制御器システムを使用してイオン交換カラム(BioRadアニオン交換カラム)で濃縮した。濃縮された68Gaを、600μLの体積の0.5M KOH溶液を使用して、[68Ga]-K[Ga(OH)4]として、イオン交換樹脂から溶出させた。溶液を中和および酸性化するために、25μLの氷酢酸(0.5M KOH 100μL当たり>3μL)を500μLの溶出液に添加した。pHは、pH試験紙によって<5であった。プロテウス-DOTAの68Ga-放射化学反応のために、10μgのプロテウス-DOTA(MW1347、7.4nmolのリガンド)を含有するエッペンドルフに、530μLの中和した[68Ga]-K[Ga(OH)4]を添加し、95℃で10分間加熱した。放射標識インキュベーション期間の後に、[68Ga]プロテウス-DOTAおよび少量の遊離68Gaを含有する反応混合物を、1mLの95%エタノール(USP注射用)および2.5mLの純水を通過させることによって予め状態調節したStrata(商標)-Xカートリッジ(33μm Polymeric Reversed Phase C-18 30mg/1mL #8B-S100-TAK、Phenomenex(登録商標)Inc.、Torrance、CA、米国)を通して取り上げた。次いで、カートリッジを3mLの水ですすいで残存する遊離68Gaを除去し、最後に、精製された[68Ga]プロテウス-DOTAを300μLのエタノール(100%)中に溶出させた。放射化学的純度をradioHPLCによって決定し、これは>98%の純度を示した。HPLCは、C-18 RP HPLCカラム(Phenomenex(登録商標)Luna C-18、5μm 100Å、250×4.6mm)で、3~10分の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中10~95%アセトニトリルの勾配溶媒系を使用して、1mL/分の流速で実施した。上記条件下で、純粋な生成物が、約9.7分の保持時間で、幅広いピークとして溶出する。最終比放射能は、約2.7mCi/7.4nmol=365mCi/μmolであった。反応を後日に反復すると、最終比放射能は、1mCi/7.4nmol=135mCi/μmolであった。
【0085】
細胞培養。GPA33(+)ヒト結腸直腸がん(CRC)細胞株SW1222は、Ludwig Institute for Cancer Immunotherapy(New York、NY)から取得し、連続継代によって増殖させた。HER2(+)乳がん細胞株BT-474、HER2(+)胃がん細胞株NCI-N87、およびGD2(+)神経芽腫細胞株IMR-32は、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas、VA)から取得した。SW1222細胞は、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、2.0mMグルタミン、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンを補充した最小必須培地中で培養した。BT-474細胞は、非必須アミノ酸(0.1mM)、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル高グルコース/F-12培地中で培養した。NCI-N87およびIMR-32細胞は、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で培養した。すべての細胞は、5%CO2(g)を含有する37℃環境に維持した。細胞株を受け取り次第、培養を確立し、継代を3か月未満に限定するために少量のアリコートで冷凍保存し、市販のキット(Lonza、Basel、スイス)を使用してマイコプラズマ陰性について定期的に試験した。カルシウムおよびマグネシウムを含まないハンクス緩衝塩溶液中の0.25%トリプシン/0.53mM EDTAの溶液を、細胞継代および収穫の間のトリプシン処理に使用した。
【0086】
動物のケア。すべての静脈内注射について、マウスをヒートランプで穏やかに温め、保定器に載せた。外側尾静脈注射を行う前に、マウスの尾をアルコールパッドで滅菌した。すべての動物実験は、動物福祉に関するアメリカ国立衛生研究所の指針に従う、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認されたプロトコルに準拠して行った。
【0087】
動物モデル。無胸腺nu/nu雌マウス(6~8週齢;Harlan/Envigo)を、ビバリウム内で少なくとも1週間馴化させた。BT-474腫瘍モデルのみについて、マウスに、細胞の接種の3日前に、トロカール注射によって、エストロゲン(17β-エストラジオール;0.72mg/ペレット60日放出;Innovative Research of America)を埋め込んだ。すべての腫瘍の確立のために、マウスの群に、培地と再構成基底膜(BD Matrigel(商標)、Collaborative Biomedical Products Inc.、Bedford、MA)の1:1混合物の200μL細胞懸濁液中の5.0×106個の細胞を、下脇腹に皮下注射によって接種し、楕円体の体積を求める公式を使用して、確立された腫瘍(100~300mm3)が、7~10日(SW1222)または3~4週間(BT-474、NCI-N87、もしくはIMR-32)以内に観察された。
【0088】
生体内分布実験。抗GPA33 DOTA-PRITの処置サイクルは、尾静脈からの3種の別個の静脈内注射:t=-28時間での0.25mgのhuA33-C825抗体(WO2016/130539に記載されている)、次いでt=-4時間での62.5μgのクリアリング剤(500kDデキストラン-DOTA-Bn(Y))、およびt=0での[225Ac]プロテウス-DOTAからなっていた。放射性ハプテンまたは抗HER2-C825/[225Ac]プロテウス-DOTAを追跡するex vivoでの生体内分布分析のために、マウスをCO2(g)窒息によって安楽死させ、腫瘍および選択された臓器を収穫し、水ですすぎ、空気乾燥し、秤量し、ガンマシンチレーション計数(Perkin Elmer Wallac Wizard 3”、Perkin Elmer、Waltham、MA)によってラジオアッセイした。計数率をバックグラウンドおよび減衰補正し、同位体に特有のシステム較正係数を使用して放射能に変換し、投与放射能に対して正規化し、1グラム当たりの注射用量のパーセント(%ID/g)の平均±1標準偏差として表した。腫瘍および様々な組織中の放射能濃度の差を、適切な場合、スチューデントの対応のないt検定によって分析した。
【0089】
225Ac]プロテウス-DOTAのDOTA-PRIT BsAbとのin vitroでの混合と、それに続くin vivoでの標的化研究。[225Ac]プロテウス-DOTAを0.06Ci/gまたは84Ci/molの最終比放射能に調製した。[225Ac]プロテウス-DOTAを室温で1週間保管した後、145μLの6.91mg/mLの抗HER2-C825(4.8nmolのBsAbまたは9.6nmolのC825)および90μLの[225Ac]プロテウス-DOTA(488nCi/8.64nmol)を室温で1時間混合すること(最終体積235μL)からなるin vitroでの混合実験。対照として、1mgのトラスツズマブ(6.67nmol)もまた、抗HER2-C825と同じ様式で、90μLの[225Ac]プロテウス-DOTA(468nCi/8.64nmol)とin vitroで混合した。これらの2種の溶液を、別個に、生理食塩水+1%ヒト血清アルブミンで予め平衡化したPD-10サイズ排除カラムにかけ、90μL(488nCi/8.64nmol)の[225Ac]プロテウス-DOTAのみのカラム溶出と比較した。溶出画分を、ガンマ計数器で、オープンウィンドウ設定を使用して計数した。
【0090】
68Ga]プロテウス-DOTAを用いたPET画像化および生体内分布研究。[68Ga]プロテウス-DOTAを約2.7mCi/7.4nmol=365mCi/μmolの最終比放射能に調製した。HER2発現NCI-N87ヒト胃癌皮下異種移植片を担持するヌードマウス(n=4)に、113~140μCi(310~384pmol)の[68Ga]プロテウス-DOTAを注射し、注射後(p.i.)15分(min)間動的陽電子放出画像化を用いて(n=2)、または注射後1時間で静的画像化を用いて(n=4)画像化した。次いで、すべての動物を、ex vivoでの生体内分布分析のために、注射後2時間で屠殺した。リストモードデータを、以下のプロトコル:12×10秒、6×30秒、5×60秒、4×300秒、30分、合計24のフレームを使用してヒストグラム化した。心臓(心臓の流出物としての血液について)および腎臓の周囲に関心領域を描出して、放射能濃度(%ID/gとして)を決定した。
【0091】
抗GPA33-DOTA-PRIT+[225Ac]プロテウス-DOTAを用いたin vivoでの標的化後の生体内分布研究。[225Ac]プロテウス-DOTAを0.20Ci/gまたは274Ci/molの最終比放射能に調製し、調製から24~48時間以内に動物の群に注射した。huA33-C825およびクリアリング剤の注射を受けた動物に、おおよそ24時間前に調製された182pmol/50nCiの[225Ac]プロテウス-DOTAを注射した。翌日に、動物を、腫瘍および選択された正常組織における[225Ac]プロテウス-DOTAの注射後24時間でのex vivoでの生体内分布判定のために屠殺した。非腫瘍担持動物の対照群に、おおよそ48時間前に調製された198pmol/50nCiの[225Ac]プロテウス-DOTAを注射し、正常組織におけるex vivoでの生体内分布判定のために、[225Ac]プロテウス-DOTAの注射後1時間で屠殺した。屠体の放射能は、この研究の間に収集されなかった。
【0092】
111In]プロテウス-DOTAの調製。類似の放射化学的方法を使用して、[111In]プロテウス-DOTAを、[111In]塩化インジウム(Nuclear Diagnostic Products,Inc.、Rockaway、NJ;249MBq[6.73mCi])および150μLの10mg/mLプロテウス-DOTA(1.5mg;1.11μmol)から調製した。[111In]プロテウス-DOTAの収率は、>98%であり、最終比放射能は、162.8GBq/g[4.4Ci/g]または2.28E5GBq/mol[6160Ci/mol]であった。この調製物を薬物動態研究に使用した。マウスへの投与前に、[111In]プロテウス-DOTAを、[68Ga]プロテウス-DOTAについて記載されたStrata(商標)-Xカートリッジ(33μm Polymeric Reversed Phase C-18 30mg/1mL #8B-S100-TAK、Phenomenex(登録商標)Inc.、Torrance、CA、米国)を使用して精製し、放射化学的純度は、過剰のBsAbを用いたin vitro結合アッセイを使用してまたは放射能検出(radiodetection)と組み合わせた分析用逆相HPLCによって、>98%であると確認された。
(実施例2)
本技術の組成物を用いたin vitro研究
本実施例は、本技術の組成物が事前標的化放射免疫治療に有用であることを実証する。
【0093】
プロテウス-DOTAは、PEGリンカーによって隔てられたベンジル-DOTA-Lu錯体に付着した、3アームのDOTAキレート剤(225Acとの安定な錯体を効率的に形成する)を含有する。図1を参照されたい。プロテウス-DOTAは、2種の二官能性DOTAキレーター:市販の2,2’,2’’-(10-(17-アミノ-2-オキソ-6,9,12,15-テトラオキサ-3-アザヘプタデシル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(アミン-PEG4-DOTA)、ならびに市販のp-SCN-Bn-DOTAおよびLuCl3・6H2Oから調製された2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸の非放射性ルテチウム錯体(p-SCN-Bn-DOTA・Lu3+錯体)を混合することによって合成した。セミ分取C-18高圧液体クロマトグラフィーを使用して、プロテウス-DOTAが、非常に高い純度(>98%)および34%の全収率で調製された。
【0094】
プロテウス-DOTAの放射化学反応は、乾固硝酸塩残渣としての無担体225Ac(5.80×104Ci/g)を使用して遂行された。225Ac標識プロテウス-DOTA([225Ac]プロテウス-DOTA)(n=3)が、94~100%の放射化学的収率で、高純度で、かつ84~274Ci/molの間の比放射能で得られ、これは、プロテウス-DOTAのBn-DOTA-Lu部分が3アームのDOTAキレーター部分による225Ac-放射性金属錯体化を妨げないことを示唆している。
【0095】
図6は、in vitroでの混合研究と、それに続く高分子量のBsAb/[225Ac]プロテウス-DOTA複合体(約212kD)を遊離[225Ac]プロテウス-DOTA(約1.5kD)から分離するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、DOTA-PRIT BsAb(抗HER2-C825)の[225Ac]プロテウス-DOTAとの結合が実証されたことを示す。これは、[225Ac]プロテウス-DOTAに対してわずかにモル過剰のBsAb(約210kD)(9.6nmolのC825/8.6nmolの[225Ac]プロテウス-DOTA)を混合し、続いて室温で1時間インキュベートすることによって行った。複合体形成がC825 scFvの存在に依存していたことを示すために、BsAbに対応する親IgG(150kD)(IgG+[225Ac]プロテウス-DOTA)または[225Ac]プロテウス-DOTA単独のいずれかを用いた対照研究を並行して行った。
【0096】
図6に示すように、BsAb+[225Ac]プロテウス-DOTAの溶出プロファイルには明確な差が存在し、回収された225Ac放射能の89%が、恐らくBsAb/[225Ac]プロテウス-DOTA複合体として、最初の4.1mL以内に溶出した。それと比較して、対照(IgG+[225Ac]プロテウス-DOTAまたは[225Ac]プロテウス-DOTA)は、それぞれ、最初の4.1mL以内に9.7%および9.3%の225Ac放射能の溶出を示した一方で、残りの放射能(約90%)は、4.6~7.1mLの溶出体積の間で収集された溶出画分に回収された。
これらの結果は、(a)本技術のプロテウス-DOTAハプテンの形態がDOTA-BsAbの認識および結合活性に悪影響を及ぼさないこと、ならびに(b)本技術のプロテウス-DOTAハプテン中の非放射性ルテチウムの存在が225Ac放射化学反応を妨げないことを実証する。したがって、本明細書に開示される組成物は、事前標的化放射免疫治療方法において有用である。
【0097】
(実施例3)
本技術の組成物を用いたin vivo研究
本実施例は、本技術の組成物がin vivo画像診断方法および事前標的化放射免疫治療に有用であることを実証する。
単離されたBsAb/[225Ac]プロテウス-DOTA複合体がin vivoで腫瘍に標的化できるか否かを決定するために、SEC精製の後に、皮下HER2発現BT-474異種移植片を担持する無胸腺ヌードマウス(n=3)の2つの群で生体内分布アッセイを実行した。最大の放射能を含有する2つのBsAb/[225Ac]プロテウス-DOTA画分(画分5および6、それぞれ、3.1~3.6mLおよび3.6~4.1mLの溶出に対応する;合計回収放射能の83%)を合わせ(合計体積:1mL)、異種移植片を担持するマウスの群に、250μLのPD10で精製された抗HER2-C825/[225Ac]プロテウス-DOTA溶液(1.0nmolの抗HER2-C825/マウス;3.7kBq[100nCi])または250μLの合計体積で製剤化された[225Ac]プロテウス-DOTA(0.51nmol、1.1kBq[30nCi])のいずれかを、外側尾静脈に静脈内注射し、ex vivoでの生体内分布判定のために、注射後4時間で屠殺した。
【0098】
図2は、注射後4時間で、抗HER2-C825/[225Ac]プロテウス-DOTAはin vivoで腫瘍に標的化することができた一方で、[225Ac]プロテウス-DOTAは無視可能な腫瘍集積を示した(それぞれ、12.4±3.92%注射用量毎グラム(%ID/g)または0.50±0.34%ID/g)ことを示す。さらに、すべてのアッセイされた組織が、[225Ac]プロテウス-DOTAについて≦約2%ID/gの取り込みを示し、これは、腎排泄および最小限の組織内保持を示唆している。抗HER2-C825 BsAb/[225Ac]プロテウス-DOTAの血中放射能は、注射後4時間で腫瘍よりも大きく(22.6±4.18%ID/g)、これは、BsAb/[225Ac]プロテウス-DOTAが血漿中で相対的に安定であり、動物をより後の時点で安楽死させた場合にさらなる腫瘍集積が生じていた可能性があることを示唆している。
【0099】
NCI-N87腫瘍を担持するマウスに、PET画像化サロゲート、[68Ga]プロテウス-DOTAを注射することによって、プロテウス-DOTAの血中半減期をさらに調査した。動的PET画像化および生体内分布研究の組合せを使用して、マウス1/マウス2についての急速相パーセント、半減期(緩徐相;分)、半減期(急速相;分)、およびR2値は、それぞれ、46/56、13.2/13.7、1.4/0.94、および0.95/0.99であると算出された。図7および表1は、高い腎臓内取り込みと、それに続く迅速なクリアランスによって明らかである迅速な腎排泄を示す。
【0100】
【表1】
【0101】
放射標識されたプロテウス-DOTAをDOTA-PRITに使用できることを実証するために、GPA33発現SW1222異種移植片を担持する無胸腺ヌードマウスの群に、[225Ac]プロテウス-DOTA(182pmol、1.85kBq[50nCi])の投与の28時間前または4時間前のいずれかに、BsAb huA33-C825(1.19nmol)およびクリアリング剤を注射した。[225Ac]プロテウス-DOTA調製物の正常組織内取り込みを評価するために、健康なヌードマウスの対照群に、[225Ac]プロテウス-DOTAのみ(198pmol、1.85kBq[50nCi])を注射した。
【0102】
生体内分布判定のために、PRITを受けたマウスを、[225Ac]プロテウス-DOTAの注射後24時間で屠殺した一方で、[225Ac]プロテウス-DOTAのみを与えたマウスを、注射後1時間で屠殺した。表2および図3に示すように、BsAb huA33-C825を用いたPRITを受けた動物について、注射後24時間での血液、腫瘍、および腎臓内取り込みは、それぞれ、0.94±0.26%ID/g、16.71±2.95%ID/g、および1.08±0.55%ID/gであり、血液および腎臓について、それぞれ、約18:1および16:1の腫瘍対臓器放射能比に対応していた。[225Ac]プロテウス-DOTA単独の血液および腎臓内取り込みは、注射後1時間で0.31±0.54%ID/gおよび0.63±0.41%ID/gであり、これは、迅速な腎クリアランスおよび無視可能な正常組織内取り込みを示している。
【0103】
【表2】
【0104】
本技術のプロテウス-DOTAハプテンを用いたDOTA-PRITの間に観察された高度の腫瘍浸透は重要であり、その理由は、すべてのDOTAハプテンがPRITの間の腫瘍集積の促進において等しく有効であるとは限らないからである。例えば、モデルPRITシステムを使用するin vivoでの225Ac-DOTA-Bnを用いた事前標的化は、注射後24時間で225Ac-DOTA-Bnの著明でない腫瘍内取り込み(<1%ID/g)をもたらした。図8を参照されたい。
【0105】
これらの結果は、(a)本技術のプロテウス-DOTAハプテンの形態がDOTA-BsAbの認識および結合活性を損なわない(すなわち、DOTA-BsAbが放射標識されたプロテウス-DOTAハプテンおよび腫瘍抗原標的、例えば、GPA33またはHER2の両方に有効に結合できる)こと、(b)本技術のプロテウス-DOTAハプテン中の非放射性ルテチウムの存在が225Ac放射化学反応を妨げないこと、ならびに(c)本技術のプロテウス-DOTAハプテンを使用して、in vivoでの腫瘍結合を保持し、かつ/またはDOTA-PRITを用いたin vivoでの事前標的化に有用である放射標識されたBsAb複合体を作製できることを実証する。したがって、本技術の組成物は、in vivo画像診断方法および事前標的化放射免疫治療に有用である。
【0106】
(実施例4)
本技術の組成物のin vivoでの生体内分布、クリアランス、および毒性プロファイル
111In]プロテウス-DOTAを[225Ac]プロテウス-DOTAのサロゲートとして使用する腫瘍のないヌードマウスでの初期実験では、[111In]プロテウス-DOTAの血中半減期は、二相性であると決定され、7.49分(アルファ;87.7%)および24.8分(ベータ)の半減期であった(R2=0.913)(図9(A))。トレーサーの注射後240分(4時間)で実行された生体内分布アッセイは、低い腎臓保持(0.96±0.25;n=5;平均±SD)を含め、非常にわずかな正常組織内取り込み(組織1グラム当たりの注射放射能のパーセント;%IA/gとして)を示した。図9(B)を参照されたい。組織解剖の後に、屠体を線量較正器においてアッセイして、残りの111In放射能(0.952±0.162%ID;n=5;平均±SD)を決定した。図12を参照されたい。
【0107】
腫瘍のないヌードマウスにおける[225Ac]プロテウス-DOTAの生体内分布研究の間に、[225Ac]プロテウス-DOTAの血液、肝臓、および腎臓内取り込みは、注射後1時間で0.31±0.54、0.04±0.06、および0.63±0.41%ID/gであり、これは、許容されるin vivoでの安定性および無視可能な腎臓保持を示している。図9(B)を参照されたい。
【0108】
健康なマウスにおける[225Ac]Pr-DOTAの毒物学研究。[225Ac]プロテウス-DOTAに起因する病的状態および組織病理学的損傷を評価するために、用量漸増毒性研究を実施した。腫瘍のないヌードマウスの群を種々の用量レベルの[225Ac]プロテウス-DOTA(0、0.25、0.5、1、2、4、または8μCi/マウス;各用量レベル当たりn=5)の単回ボーラス静脈内注射で処置し、処置により誘導される毒性を明らかにするため、注射後145日間、毎日モニタリングし、最大で週に2回秤量した。予定外の死亡例(マウスの死亡が見付かったかまたは疾病が見付かり、安楽死させた)は、病理学的検査に供された。要約すると、毒性は観察されず(>10%の体重低下として定義される;図10)、放射線誘導性の組織学的臓器損傷(例えば、腎臓変性)は、145日で実施された剖検時に、いずれの用量レベルでも観察されなかった。臓器の質量に有意な群差は観察されなかった(例えば、腎臓、肝臓、または脾臓の縮小なし;図11)。合計3匹の予定外の死亡例が発生した:0.5μCi用量群から2/5;1匹は36日目に20%の体重低下により剖検に供された-重大な病理学的または組織病理学的病変は観察されず、血液学および血液生化学的検査で重要な所見は観察されなかった;また、その時点までに、もう1匹のマウスの死亡が144日目に見付かり、剖検は不可能であった。加えて、8μCi群からの1匹のマウスを、ブドウ球菌細菌感染により、123日後に安楽死させた。このマウスにおける重要な所見は、組織球性および好酸球性心筋炎(myocardis)、好酸球性間質性肺炎、軟部組織出血、顕著な血小板減少症、ならびに網状赤血球の上昇を伴う軽度の貧血であった。心筋炎、肺炎(pnemonia)、および軽度の貧血は、予定された屠殺時に観察されたいくつかの所見に関連していた。二次出血を伴う血小板減少症は、この研究における他のマウスにおいては観察されなかった。血液生化学的検査は著変なしであった。
【0109】
225Ac]プロテウス-DOTAの投与に関連すると思われた1つの組織病理学的病変は、いくつかの臓器における組織球性および好酸球性炎症であった。これらは、複数の臓器:心臓、肺、腎臓、脾臓、肝臓、膀胱に影響を及ぼす(ただし、影響を受けた各マウスは、通常は、これらの臓器のうち1つまたは2つのみに病変を有していた)好酸球およびマクロファージから主に構成される炎症性病変であった。明白な用量応答が存在した(8μCi群では3/5匹のマウスが影響を受け、4μCiでは1/5、2μCiでは1/5、1μCiでは0/5、0.5μCiでは0/4、0.25μCiでは0/5であった)。マウスをDOTA-PRIT+177Lu-DOTA-Bnで処置してから100~200日後の毒性研究の間に、類似の病変が観察された(Cheal, S. M. et al., J Nucl Med 58, 1735-1742 (2017))。血球数に基づいて、最高用量群(8μCi)において赤血球量の軽度(約10%)の減少が観察されたが、いかなる臨床徴候または症状も伴わなかった。血液生化学的検査で、[225Ac]プロテウス-DOTAの効果は、いずれの用量レベルでも観察されなかった(n=29)。
【0110】
これらの結果は、[225Ac]プロテウス-DOTAが非毒性であり、8μCi(296kBq)/マウスもの高用量で骨髄、肝臓、または腎臓等の正常組織に対する急性または慢性の放射線損傷が観察されなかったことを実証する。これらのデータは、長期的な腎毒性が報告されている(例えば、16週間で160kBqの用量の[225Ac]DOTA-c(RGDyK)6での糸球体の喪失;1年で14.8kBqの用量の225Ac標識抗ラットHER-2/neuモノクローナル抗体での腎臓皮質の尿細管上皮の喪失に起因する皮質組織の破壊;Song, H. et al., Cancer research 69, 8941-8948 (2009)を参照されたい)225Acの副生成物(biproduct)、221Frおよび213Biが、腎臓に認識できるほどに集積しなかった可能性が高いことを示唆している。
【0111】
225Ac]プロテウス-DOTAの効率的かつ特異的な腫瘍標的化。予備実験は、抗原および[225Ac]プロテウス-DOTAのLu-DOTA部分に対するBsAbの結合アビディティの保持を示した。in vivoでの効率的な腫瘍標的化のために[225Ac]プロテウス-DOTAをDOTA-PRITと組み合わせて使用できることを実証するために、GPA33発現SW1222異種移植片を担持するヌードマウスの群に、[225Ac]プロテウス-DOTA(182pmol、1.85kBq[50nCi])の投与の28時間前にBsAb huA33-C825(250μg;1.19nmol)を静脈内注射し、4時間前にクリアリング剤(62.5μg;0.125nmolのデキストラン;7.625nmolの(Y)DOTA)を静脈内注射した。これらのマウスを、生体内分布アッセイのために、[225Ac]プロテウス-DOTAの注射後24時間で屠殺した。すべての動物を、生体内分布のために、注射後24時間で屠殺した。[225Ac]プロテウス-DOTAを用いた事前標的化放射免疫治療を受けた動物について、注射後24時間での血液、腫瘍、および腎臓内取り込み(組織1グラム当たりの注射放射能のパーセント;%IA/gとして)は、それぞれ、0.94±0.26、16.71±2.95、および1.08±0.55であり、血液および腎臓について、それぞれ、約18:1および16:1の腫瘍対臓器放射能比に対応していた。注射後24時間での組織1グラム当たりの注射放射能のパーセント;%IA/g)としての肝臓内取り込みは、1.40±0.47であり、骨内取り込みは、検出不能であった。これらの腫瘍対臓器放射能比は、同じ動物モデルにおいてトレーサー177Lu-DOTA-Bnまたは86Y-DOTA-Bnを使用する抗GPA33-DOTA-PRITを用いて行われた以前の生体内分布研究で、注射後24時間で両方のDOTA-ハプテンについての平均腫瘍内取り込みが約8%ID/g((いずれのM-DOTA-Bnハプテンについても1.85~8.8MBq;10~50pmol)(Cheal, S. M. et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 43, 925-937 (2016)を参照されたい)であったことと類似しており、これは、C825の[225Ac]プロテウス-DOTAに対する親和性が類似していたことを示唆している。
【0112】
トレーサー用量の放射標識されたプロテウス-DOTAを用いた研究に加えて、in vivo競合研究を使用して、放射標識されたプロテウス-DOTAの絶対的な腫瘍内取り込みの上限を決定した。腫瘍を担持するマウスの群に、2桁(約170~33800pmol)に及ぶ広い質量範囲のプロテウス-DOTAを投薬した後24時間で生体内分布実験を実行し、約60pmolのDOTA-ハプテン/1グラムのSW1222腫瘍の最大腫瘍内取り込み(「Bmax」)が示された。これらの結果は、同じシステムにおいて事前標的化された177Lu-DOTA-Bnを用いて達成された結果(600pmolの静脈内投与用量で約60pmol/g)と同等である。事前標的化されたプロテウス-DOTAの最大腫瘍内取り込みがSW1222腫瘍1グラム当たり62pmolであることに基づいて、定量的RCYで現在達成されるSAで、腫瘍1グラム当たり約180nCiの225Acを局在させることができる。
したがって、本技術の組成物は、in vivo画像診断方法および事前標的化放射免疫治療に有用である。
【0113】
均等物
本技術は、本出願に記載された特定の実施形態によって限定されるべきではなく、それらは、本技術の個々の態様の単なる例示として意図されている。当業者には明白であるように、本技術の趣旨および範囲から逸脱することなく、本技術の多くの改変および変形を行うことができる。本明細書に挙げられた方法および装置に加えて、本技術の範囲内にある機能的に均等な方法および装置は、前述の説明から当業者には明白である。そのような改変および変形は、本技術の範囲内に入ることが意図されている。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的系に限定されず、当然ながら、それらは変化し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することは意図されていないこともまた理解すべきである。
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、それにより、本開示はまた、マーカッシュ群のいずれかの個々の構成要素または構成要素の部分群によって記載されていることが当業者には認識される。
【0114】
当業者によって理解されるように、あらゆる目的で、特に記述説明の提供に関して、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、そのあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組合せを包含する。任意の列挙された範囲は、同範囲が少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分割されることを十分に説明し、可能にすると容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられた各範囲は、下部の3分の1、中央の3分の1および上部の3分の1等に容易に分割することができる。同じく当業者によって理解されるように、例えば「最大で」、「少なくとも」、「を超える」、「未満」などのすべての文言は、記述された数を含み、上記で論じられた部分範囲にその後分割することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々の構成要素を含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞を有する群を指すなどである。
本明細書で言及または引用されたすべての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、すべての図および表を含め、その全体が参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(A)】
図9(B)】
図10
図11
図12