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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】電動工具および方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20230428BHJP
   B23C 9/00 20060101ALI20230428BHJP
   B23D 47/00 20060101ALI20230428BHJP
   B23Q 11/06 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B23Q17/09 H
B23C9/00 Z
B23D47/00 Z
B23Q11/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020503747
(86)(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2017068649
(87)【国際公開番号】W WO2019020165
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518407205
【氏名又は名称】フェストール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ルッシュ・マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー・レモ
(72)【発明者】
【氏名】シュトイブリー・トム
(72)【発明者】
【氏名】ニートリスパッハ・ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】エヴェルツ・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】レルチャー・ルカ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0166323(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0216220(US,A1)
【文献】特表2003-527255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0036725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
B23D 47/00
B23C 9/00
B23Q 11/00、11/06
B25F 5/00
B27G 19/02、21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具(1)を有する、電動工具(10、20、30、40、50、60)であって、この電動工具が、
機械的なベクトル量(3)の検出のためのセンサー装置(2)を備え、
この機械的なベクトル量(3)が、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力を含み、および、この機械的なベクトル量(3)が、前記工具(1)から発する力に依存し、
検出された前記ベクトル量の方向が、前記電動工具(10、20、30、40、50、60)の他の構成要素に対して相対的に前記工具(1)が突き進む方向と一致し、
並びに、前記電動工具が、
前記センサー装置(2)と情報伝達的に連結された制御装置(4)を備え、
この制御装置が、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)の現象及び/または状態を、前記センサー装置(2)によって検出された前記機械的なベクトル量(3)の前記方向及び/または方向変化に従い認識するように形成されていること
前記制御装置(4)が、認識されるべき前記現象及び/または状態として、キックバック、前進鋸切断、後進鋸切断、加工材料(11)内への前記工具(1)の進入、及び/または、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)、特に前記工具(1)の摩耗状態を認識するように形成されていること、
前記センサー装置(2)が、第1のセンサー要素(25)と第2のセンサー要素(26)とを備えており、
前記第1のセンサー要素(25)が、前記機械的なベクトル量(3)の基礎である機械的な量を、第1の空間方向において測定するように形成されており、および、
前記第2のセンサー要素(26)が、前記機械的なベクトル量(3)の基礎である機械的な量を、この第1の空間方向とは異なる第2の空間方向において測定するように形成されていること、
前記電動工具(20;30;40)が、更に担持構造(21)、並びに、この担持構造(21)に軸受けされた従動軸(8)を備えており、この従動軸と、前記工具が連結されており、前記センサー要素(25、26)が、この担持構造(21)に配設されていること、および、
前記担持構造(21)が、第1の部分区間(22)と、前記工具(1)から発する力の伝達経路内において前記第1の部分区間(22)の後方、即ちこの第1の部分区間(22)の下流側に位置している第2の部分区間(23)とを備えており、および、
両方の前記センサー要素(25、26)が、それぞれに、前記第1の部分区間(22)と前記第2の部分区間(23)との間の結合要素として形成されていること、
特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記制御装置(4)は、少なくとも1つの方向範囲(14、15、16)を提供するように、および、前記現象及び/または状態を、前記機械的なベクトル量(3)の方向が前記方向範囲(14、15、16)の内側に位置するのかまたは外側に位置するかどうかに基づいて認識するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
【請求項3】
前記制御装置(4)は、複数の方向範囲(14、15、16)を提供するように、および、異なる現象及び/または状態を、前記方向範囲(14、15、16)の内のどの方向範囲内において前記機械的なベクトル量(3)の前記方向が位置しているのかに基づいて認識するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
【請求項4】
前記制御装置(4)は、1つまたは複数の方向範囲(14、15、16)の校正を行うように形成されている、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
【請求項5】
前記制御装置(4)は、前記現象及び/または状態を、前記機械的なベクトル量(3)の角速度及び/または変化角度に基づいて認識するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
【請求項6】
前記センサー装置(2)は、測定軸受(28)を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の電動工具(50)。
【請求項7】
前記制御装置(4)は、認識された前記現象及び/または認識された前記状態に対する応答において、信号を提供するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
【請求項8】
前記電動工具(10;20;30;40;50;60)は、前記工具(1)の駆動のための駆動装置(7)を備えており、および、
前記工具(1)の駆動を変化するため、特に前記工具(1)を制動するために、前記制御装置(4)が、認識された前記現象及び/または認識された前記状態に対する応答において、この駆動装置(7)を制御するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
【請求項9】
前記電動工具は、位置決め装置(29)を備えており、この位置決め装置が、
前記工具(1)を、選択的に作動位置または安全保護位置に位置決めするように形成されており、および、
前記制御装置(4)が、認識された前記現象及び/または認識された前記状態に対する応答において、この位置決め装置(29)を制御するように形成されており、従って、前記工具(1)が、作動位置または安全保護位置に位置決めされる、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の電動工具(10;60)。
【請求項10】
前記第1の部分区間(22)は、伝動機構ハウジングであることを特徴とする請求項1に記載の電動工具(40)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の、鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具(1)を有する、電動工具(10、20、30、40、50、60)の、現象及び/または状態の認識のための方法であって、この方法が、以下のステップ:即ち、
機械的なベクトル量(3)の検出のステップ(S1)と、その際、この機械的なベクトル量(3)が、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力を含み、および、この機械的なベクトル量(3)が、前記工具(1)から発する力に依存し、
その際、検出された前記ベクトル量の方向が、前記電動工具(10、20、30、40、50、60)の他の構成要素に対して相対的に前記工具(1)が突き進む方向と一致する、
および、
検出された前記機械的なベクトル量(3)の前記方向、及び/または、方向変化に従う、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)の前記現象及び/または状態の認識のステップ(S2)と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項12】
鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具(1)を有する、電動工具(10、20、30、40、50、60)であって、この電動工具が、
機械的なベクトル量(3)の検出のためのセンサー装置(2)を備え、
この機械的なベクトル量(3)が、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力を含み、および、この機械的なベクトル量(3)が、前記工具(1)から発する力に依存し、
並びに、前記電動工具が、
前記センサー装置(2)と情報伝達的に連結された制御装置(4)を備え、
この制御装置が、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)の現象及び/または状態を、前記センサー装置(2)によって検出された前記機械的なベクトル量(3)の方向及び/または方向変化に従い認識するように形成されていること、
前記制御装置(4)が、認識されるべき前記現象及び/または状態として、キックバック、前進鋸切断、後進鋸切断、加工材料(11)内への前記工具(1)の進入、及び/または、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)、特に前記工具(1)の摩耗状態を認識するように形成されていること、
前記センサー装置(2)が、第1のセンサー要素(25)と第2のセンサー要素(26)とを備えており、
前記第1のセンサー要素(25)が、前記機械的なベクトル量(3)の基礎である機械的な量を、第1の空間方向において測定するように形成されており、および、
前記第2のセンサー要素(26)が、前記機械的なベクトル量(3)の基礎である機械的な量を、この第1の空間方向とは異なる第2の空間方向において測定するように形成されていること、
前記電動工具(20;30;40)が、更に担持構造(21)、並びに、この担持構造(21)に軸受けされた従動軸(8)を備えており、この従動軸と、前記工具が連結されており、前記センサー要素(25、26)が、この担持構造(21)に配設されていること、および、
前記担持構造(21)は、第1の部分区間(22)、即ち伝動機構ハウジングと、
前記工具(1)から発する力の伝達経路内において前記第1の部分区間(22)の後方、即ちこの第1の部分区間(22)の下流側に位置している、第2の部分区間(23)とを備えており、および、
両方の前記センサー要素(25、26)が、それぞれに、前記第1の部分区間(22)と前記第2の部分区間(23)との間の結合要素として形成されていること、
を特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具と、工具から発する力に依存する機械的な量の検出のためのセンサー装置と、このセンサー装置と情報伝達的に連結された制御装置とを有する電動工具に関し、この制御装置が、検出された機械的な量に従い、この伝動工具の現象を認識するように形成されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、キックバック検知システムを有するテーブル鋸を記載しており、このキックバック検知システムが、センサーを備えており、このセンサーが軸の偏位をスカラー量として検出するように形成されている。キックバックが存在するかどうかを確認するために、制御装置は、この検出された偏位をスカラー閾値と比較する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際出願公開第2014/105935号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に記載された電動工具を、制御装置によって実施される認識が改善されるように修正することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に従う電動工具によって解決される。
本発明に従い、センサー装置は、工具から発する力に依存する機械的なベクトル量を検出することのために利用される。この機械的なベクトル量は、例示的に、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力である。この制御装置は、電動工具の現象及び/または状態を、センサー装置によって検出された機械的なベクトル量の方向及び/または方向変化に従い認識するように形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従い、これに伴って、ベクトル量が検出され、且つ、電動工具の現象及び/または状態が、このベクトル量の方向及び/または方向変化に基づいて認識される。この試みは、工具が、電動工具の所定の現象及び/または状態において、所定の方向に突き進むこと、および、この理由から、工具から発する力に依存する機械的なベクトル量の方向及び/または方向変化が、この現象及び/または状態の認識のための良好な指標であることの認識に基づいている。
機械的なベクトル量の方向及び/または方向変化の、本発明に従う考慮により、特に、認識が単なるスカラー量に基づいている場合よりも早期の現象認識及び/または状態認識は、行われ得る。このことは、所定のスカラー閾値が超過される以前に、通常、先ず第一に、所定の方向が存在し、及び/または、所定の方向変化が生じることにある。
本発明に従う電動工具でもって、従って、特に早期の-および、これに伴って改善された-現象認識及び/または状態認識は達成され得る。
【0007】
検出された機械的なベクトル量は、例示的に、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力をシミュレートし、且つ有利には2次元的である。この機械的なベクトル量は、工具から発する力に依存する。特に、検出されたベクトル量の方向は、工具から発する力の方向に、もしくは、特に電動工具の他の構成要素に対して相対的に工具が突き進む方向と一致する(に相応する)。合目的に、ベクトル量は、工具から発する力の伝達経路内において検出される。
【0008】
制御装置によって特定されるべき状態は、電動工具の特にいわゆる「キックバック」である。この概念「キックバック」でもって、1つの現象が理解され、この現象において、典型的に、電動工具による加工材料の加工の間じゅう、突然の、および、予期しない力がこの電動工具と加工材料との間で発生し、この力によって、この電動工具または加工材料が、その場合に加速され、且つ、移動の状態に陥らせられる。
テーブル丸鋸において、キックバックは、通常、使用者の方向への加工材料の予期しない加速を誘起する。ハンド丸鋸において、キックバックの際に、工具の予期され得ない移動という事態となる可能性がある。キックバックは、使用者の負傷を誘起する可能性があり、且つ、従って、作動信頼性の阻害を意味する。
【0009】
キックバックは、特に、加工材料内への突然の、過度に迅速な工具の進入の際、後進鋸切断の際、加工材料内における工具の締付けの際、所定の材料特性(例えば、不均質の木材、応力)の際、及び/または、先の丸くなった工具の際に発生する可能性がある。検出された機械的なベクトル量の方向及び/または方向変化に基づいての前記で説明された現象認識によって、特に良好に、キックバック-現象は認識可能である。
認識されるべきキックバック、もしくは、キックバック-現象でもって、ここで、特に同様に目前に迫っているキックバックが、即ち、キックバックの原因が既に与えられているが、しかしながら、電動工具及び/または加工材料の如何なる著しい加速も未だに生じていないか、もしくは、電動工具及び/または加工材料の如何なる著しい加速も生じていない現象が意味される。
電動工具または加工材料がキックバックによって移動状態に置かれる、もしくは、著しく加速される以前に、このキックバックは、既に、工具から発する力ベクトルがこの力ベクトルの方向を変化することによって、到来が予告される。工具は、即ち、キックバックの直前もしくはキックバックの開始時に、標準の作動においてとは異なる方向に突き進む。この異なる方向への突進は、機械的なベクトル量の検出によって検知され得、それによって、キックバック-状態が存在することが推定される。
【0010】
更に、認識されるべき現象が、加工材料内への工具の進入、前進鋸切断、後進鋸切断であることは可能である。
【0011】
認識されるべき状態は、特に、電動工具の摩耗状態、有利には、鋸刃として形成された工具の摩耗状態である。
【0012】
有利な更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0013】
本発明は、更に、鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具を有する、電動工具の、現象及び/または状態の認識のための方法に関している。
この方法は、工具から発する力に依存する機械的なベクトル量、即ち、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力の検出のステップと、検出された機械的なベクトル量の方向、及び/または、方向変化に従う、電動工具の現象及び/または状態の認識のステップとを備えている。
【0014】
合目的に、この方法は、ここで説明された電動工具を用いて実施される。
【0015】
更に別の例示的な詳細、並びに、例示的な実施形態を、以下で、図との関連のもとで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に従う電動工具の概略図である。
図2】機械的なベクトル量の、方向または方向変化に基づいての、現象及び/または状態認識の、図での説明のためのグラフである。
図3】第2の実施形態に従う電動工具の断面図である。
図4】第3の実施形態に従う電動工具の断面図である。
図5】第4の実施形態に従う電動工具の断面図である。
図6】第5の実施形態に従う電動工具の断面図である。
図7】第5の実施形態に従う電動工具の、1つの従動軸および2つの軸受の断面図である。
図8】第6の実施形態に従う電動工具の概略図である。
図9】方法のブロックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、第1の実施形態に従う電気工具10を示している。
【0018】
この電動工具10は、鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具1と、センサー装置2と、制御装置4とを備えている。
このセンサー装置2は、機械的なベクトル量3を検出するように形成されている。機械的なベクトル量3は、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力である。更に、この機械的なベクトル量3は、工具1から発する力に依存する。制御装置4は、情報伝達的にセンサー装置2と接続されており、且つ、センサー装置2によって検出された機械的なベクトル量3の方向及び/または方向変化に従う、電動工具10の現象及び/または状態を認識するように形成されている。
【0019】
検出された機械的なベクトル量3の方向及び/または方向変化に基づいて、電動工具10の現象認識及び/または状態認識が行われることによって、この電動工具10の現象変化または状態変化は、既に極めて早い時点で確認され得る。この現象認識及び/または状態認識は、これに伴って改善される。
【0020】
以下で、電動工具10の例示的な詳細、並びに、更に別の例示的な実施形態が説明される。
【0021】
電動工具10は、有利には、鋸、特にハンド丸鋸またはプランジソー(Tauchsaege)である。この電動工具10が、更に、同様にフラットダボフライス加工機(Flachduebelfraese)として形成されていることも可能である。工具1は、特に円形であり、且つ、作動状態において例示的に時計方向において回転する。
【0022】
例示的に、電動工具10は、ハウジング6を備えており、このハウジング内において、センサー装置2および制御装置4が配設されている。このハウジング6に、載置面9が設けられており、この載置面によって、電動工具10は、加工されるべき加工材料11の上に載置され得る。
【0023】
電動工具10は、駆動装置7を備えている。この駆動装置7は、例えば、電気モーターと伝動機構とを備えている。この駆動装置7は、有利には、制御装置4によって制御される。
電動工具10は、更に、従動軸8を備えており、この従動軸が、駆動装置7によって駆動され得る。工具1は、機械的に従動軸8と連結されている。合目的に、この工具1は、従動軸8に固定されている。
【0024】
電動工具10は、更に担持構造21を備えており、この担持構造が、合目的にハウジング6内において配設されている。この担持構造21に、例えば、従動軸8が軸受けされている。更に、この担持構造21が、駆動装置7のためのハウジングとして形成されていることは可能である。この担持構造21が、例えば、駆動装置ハウジング、特に伝動機構ハウジングを具現するか、または備えていることは可能である。
【0025】
例示的に、電動工具10は、ユーザインターフェース5を備えている。このユーザインターフェース5は、例えば入力装置を備えており、この入力装置によって、使用者が、電動工具10を、例えば、スイッチオンおよびスイッチオフ、及び/または、構成、及び/または、校正可能である。
【0026】
図1内において示されているように、電動工具10は、加工材料11の加工の際に、典型的に、載置面9によってこの加工材料11の上で載置し、且つ、送り方向12において、加工材料11に対して相対的に移動される。例示的に、工具1の鋸の歯は、その際、下から上に加工材料11内へと鋸で切断する。
この位置関係において、工具1は、残りの電動工具10に対して相対的に、例示的に図示された機械的なベクトル量3の方向に、即ち傾斜して下方へと突き進む。工具1から発する力は、特に、機械的なベクトル量3の方向に指向する。
【0027】
図1内において、センサー装置2は、例示的に、従動軸8と連結されており、且つ、従動軸8の機械的なベクトル量3、-即ち、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力-を検出するように形成されている。
【0028】
有利には、センサー装置2は、機械的なベクトル量3を連続的に検出するように形成されており、従って、変化、特に機械的なベクトル量3の方向変化が検出され得る。
【0029】
制御装置4は、例えば、マイクロコントローラーとして形成されている。この制御装置4は、機械的なベクトル量3に基づいて、電動工具10の現象及び/または状態を特定するように形成されている。
例えば、制御装置4は、検出された機械的なベクトル量3の方向が、所定の方向範囲の内側に位置するのかまたは外側に位置するのかどうかを確認するように、および、この確認に基づいて、所定の状態が存在するのかまたは存在しないのかどうかを判定するように形成されている。
【0030】
図2に基づいて、以下で、どのように、特定された現象及び/または状態の認識が例示的に行われ得るのかを、詳細に説明する。
【0031】
図2は、異なる方向範囲14、15および16と、2つの方向閾値17、18と、および、検出された機械的なベクトル量3とに関する、1つのダイヤグラムを示している。
【0032】
このダイヤグラムは、4つの四分円に分割されている。それぞれの四分円は、90°を備えている。参照符号19は、0°線を表示している。
以下で説明される角度座標、もしくは、角度数は、数学的に正の回転方向(反時計方向)において理解されるべきである。合目的に、この0°線は、載置面9及び/または送り方向12に対して平行に延びている。
【0033】
方向範囲14、15および16は、例示的に、2次元的な方向範囲である。これら方向範囲14、15および16は、ここで、同様に角度範囲とも称され得る。
【0034】
合目的に、方向範囲14、15、16は、1つの平面内において位置する。この平面は、合目的に、工具1の平面に対して平行に、もしくは、従動軸8の軸線方向に対して垂直に整向されている。これら方向範囲14、15、16は、有利には、互いにオーバーラップしない。
【0035】
制御装置4は、少なくとも1つの方向範囲14、15および16を提供するように形成されている。例えば、少なくとも1つの方向範囲は、この制御装置4内におけるメモリー内において記憶されている。これに対して選択的または付加的に、この制御装置4が、同様に少なくとも1つの方向範囲自体を生成するように形成されていることも可能である。この制御装置4は、更に、検出された機械的なベクトル量3が、方向範囲14、15または16の内側に位置するのかまたは外側に位置するのかどうかを特定するように、および、この特定に基づいて、電動工具10の状態を認識するように形成されている。
【0036】
合目的に、制御装置4は、複数の方向範囲14、15、16を提供するように、および、異なる現象及び/または状態を、方向範囲14、15、16の内のどの方向範囲内において機械的なベクトル量3の方向が位置しているのかに基づいて認識するように形成されている。特に、その際、これら方向範囲14、15、16のそれぞれの方向範囲に、それぞれに1つの現象及び/または状態は、割り当てられている。
【0037】
工具1が加工材料11内へと進入させられている場合、および、電動工具10がこの加工材料11に対して相対的に、送り方向12に移動される場合に、第1の方向範囲14は、1つの方向範囲を具現し、この方向範囲内において機械的なベクトル量3が位置する。例示的に、この第1の方向範囲14は、両方の下側の四分円内において、即ち180°と360°との間の範囲の内側に位置する。示された例において、この第1の方向範囲14は、220°から330°に至るまでに延在する。
【0038】
第1の方向範囲14内において位置する機械的なベクトル量3は、電動工具10によって送り方向12に前方へと鋸で切断されることの、現象もしくは状態が存在することに関する指標である。
それに応じて、制御装置4は、機械的なベクトル量3が第1の方向範囲14内において位置する際に、「前進鋸切断-現象」もしくは「前進鋸切断-状態」が存在することを認識するように形成されている。
【0039】
工具1が加工材料11内へと進入させられている場合、および、電動工具10がこの加工材料11に対して相対的に、標準的な送り方向12に対して反対に、即ち後退方向に移動される場合に、第2の方向範囲15は、1つの方向範囲を具現し、この方向範囲内において機械的なベクトル量が位置する。
工具1が加工材料11内へと進入される場合、更にこの第2の方向範囲15は1つの方向範囲を具現し、この方向範囲内において機械的なベクトル量3が位置する。例示的に、この第2の方向範囲15は、両方の左側の四分円内において、即ち90°と270°との間の範囲の内側に位置する。示された例において、この第2の方向範囲15は、125°から220°に至るまでに延在する。
【0040】
第2の方向範囲15内において位置する機械的なベクトル量3は、電動工具10によって後方へと鋸で切断されること、または、工具1が、加工材料11内へと進入されることの、現象もしくは状態が存在することに関する指標である。
それに応じて、制御装置4は、機械的なベクトル量3が第2の方向範囲15内において位置する際に、「後進鋸切断-現象」もしくは「後進鋸切断-状態」、または、「進入-現象」が存在することを認識するように形成されている。
【0041】
第1の方向範囲14と第2の第2の方向範囲15とは、共に標準の範囲を具現する。機械的なベクトル量3がこの標準の範囲内において位置する限り、制御装置4が、電動工具10の安全な作動状態が存在することを仮定することは可能であり、且つ、例えば相応する信号を提供することは可能である。
【0042】
キックバック-現象が存在する場合に、第3の方向範囲16は、1つの方向範囲を具現し、この方向範囲内において機械的なベクトル量が位置する。例示的に、この第3の方向範囲16は、両方の上側の四分円内において、即ち0°と180°との間の範囲の内側に位置する。示された例において、この第3の方向範囲16は、5°から100°に至るまでに延在する。
合目的に、制御装置4は、機械的なベクトル量3が第3の方向範囲16内において位置する際に、キックバック-現象を認識するように形成されている。
【0043】
制御装置4がキックバック-現象を推定する方向範囲は、同様により大きく規定され得る。例えば、この方向範囲の境界は、標準の範囲の境界と第3の方向範囲16の境界との間に配置され得る。このことは、図2内において、両方の方向閾値17、18によって図示されている。例示的に、これら方向閾値17、18は、標準の範囲の境界に隣接している。
これに対して選択的に、これら方向閾値は、同様に、標準の範囲の境界に位置することも可能である。
【0044】
合目的に、時計方向に、第2の方向閾値18から第1の方向閾値17へと延在する方向範囲は、第3の方向範囲16の位置に使用され得る。この(図2内において図示された)第3の方向範囲16は、この場合に選択的である。
【0045】
合目的に、制御装置4は、機械的なベクトル量3が両方の方向閾値17と18との間に、-即ち反時計方向において、第1の方向閾値17の後ろと第2の方向閾値18の手前との間に-位置する際に、キックバック-現象を認識するように形成されている。
このキックバック-現象は、これに伴って、キックバックに関する原因が既に与えられており、電動工具10または加工材料11が、しかしながら未だに著しく加速されていない、もしくは、未だに如何なる反動または跳ね返りも作用しない時点において、既に認識され得る。
合目的に、制御装置4は、キックバック-現象を、加工材料11に対する電動工具10の(キックバックに対する認識および応動無しに)生じる加速の50msから100msまで以前に認識するように形成されている。この加速は、例えば、上方への成分、もしくは、示されたダイヤグラム内において90°方向における成分を有する加速である。
【0046】
検出された機械的なベクトル量3の方向に基づいての、前記で説明された現象認識及び/または状態認識に対して選択的または付加的に、現象認識及び/または状態認識を、機械的なベクトル量3の方向変化に基づいて実施することも同様に可能である。
【0047】
例えば、キックバックが目前に迫っている場合、機械的なベクトル量3は、第3の方向範囲16への方向に回転する。制御装置4が、それに応じて、機械的なベクトル量3の検出された回転に基づいて、現象及び/または状態を認識するように形成されていることは可能である。例えば、制御装置4は、機械的なベクトル量の角速度を速度閾値と比較するように、および、この速度閾値の超過の際に、現象及び/または状態を認識するように形成されている。
更に、制御装置4が、どのような変化角度だけ、機械的なベクトル量3が特に所定の時間範囲内で変化したかを特定するように、および、現象及び/または状態を認識するためにこの変化角度を角度閾値と比較するように、形成されていることは可能である。
【0048】
キックバック-認識の際に、制御装置4が、更に、キックバックの異なる様式を区別するように形成されていることは可能である。例えば、後進鋸切断または進入の際に生じるキックバックが目前に迫っている場合、機械的なベクトル量3は、(第2の方向範囲15を出発点として)反時計方向に回転し、それに対して、この機械的なベクトル量3が、工具1の挟み込みによって加工材料11内において誘起されるキックバックの際に、時計方向に回転する。
制御装置4が、それに応じて、機械的なベクトル量3の回転方向を、現象および状態の認識の際に考慮するように形成されていることは可能である。
【0049】
更に、制御装置4が、状態認識及び/または現象認識の際に、同様に検出された機械的なベクトル量3の値も考慮するように形成されていることは可能である。
例えば、制御装置4が、状態及び/または現象を、ただ機械的なベクトル量3の値が、ある閾値よりも大きい場合にだけ認識するように形成されていることは可能である。このようにして、作動状態において生じる弱い衝撃が、誤って、キックバックとして認識されることは防止され得る。
【0050】
それに加えて、制御装置4が、機械的なベクトル量3が所定の方向範囲14、15、16の内側で位置する時間の長さを考慮するように形成されていることは可能である。
例えば、制御装置4が、状態及び/または現象を、ただ機械的なベクトル量3が所定の時間閾値よりも長く所定の方向範囲14、15、16内において位置する際にだけ認識するように形成されていることは可能である。
【0051】
更に、制御装置4が、検出された機械的なベクトル量3の方向に基づいて、摩耗状態が存在するかどうかを特定するように形成されていることは可能である。この摩耗状態が、特に工具1の摩耗状態であることは可能である。
制御装置4が、方向範囲を提供するように、および、機械的なベクトル量3が方向範囲の内側に位置するのかまたは外側に位置するのかどうかに基づいて摩耗状態を確認するように形成されていることは可能である。例示的に、制御装置4は、機械的なベクトル量3の方向転換、例えば力方向転換を認識可能であり、且つ、このことから、摩耗状態を推定可能である。制御装置4は、その場合に、相応する信号手段を介して、摩耗状態が存在することを表示する音響的または視覚的な信号を出力可能である。
【0052】
前記で説明された具体的な方向範囲14、15、16の角度指示は、全く例示的に理解されるべきである。それぞれの電動工具10のタイプおよび構造に応じて、実際上の角度は変化可能である。これら方向範囲14、15、16の実際上の角度は、校正を用いて確定され得る。この校正は、例えば、電動工具の開発または製造の際に、及び/または、使用者によって行われ得る。
【0053】
合目的に、制御装置4は、1つまたは複数の方向範囲14、15、16の校正を行うように形成されている。例えば、ユーザインターフェース5を用いて、この校正は着手され得る。制御装置4は、それに基づいて、駆動装置7を介して工具1を駆動し、且つ、その際、センサー装置2を介して、機械的なベクトル量3を検出する。
検出された機械的なベクトル量3に基づいて、制御装置4は、次いで、1つの方向範囲、及び/または、1つまたは複数の閾値を作成可能であり、且つ、制御装置4のメモリー内において保管可能である。この工程は、例えば新しい工具1が組み付けられる場合に行われ得る。工具1の摩耗認識は、従って改善され得る。
【0054】
以下で、センサー装置2、および、機械的なベクトル量3の検出について、詳細に説明する。
【0055】
センサー装置2は、合目的に、機械的なベクトル量3を少なくとも2次元的なベクトルとして検出するように形成されている。
この目的のために、このセンサー装置2は、機械的なベクトル量3の基礎である機械的な量を、異なる少なくとも2つの空間方向において測定するように形成されている。これら両方の空間方向は、例えば、送り方向12に対して平行に延びる1つの空間方向と、この送り方向12に対して垂直方向に延びる1つの空間方向とである。
合目的に、両方の空間方向は、従動軸8の軸線方向に対して垂直方向である。例えば、センサー装置2は、少なくとも2つのセンサー要素25、26を備えている。合目的に、これらセンサー要素25、26のそれぞれのセンサー要素は、基礎である機械的な量、-即ち、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力-を、異なる空間方向において測定することのために利用される。
【0056】
機械的なベクトル量3は、特に、力ベクトル、加速度ベクトル、速度ベクトル、偏位ベクトル、変形ベクトル、及び/または、機械的な応力ベクトルまたは応力テンソルである。
それに応じて、センサー装置2が、少なくとも2つの空間方向において、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力を測定するように形成されていることは可能である。
【0057】
センサー装置2が、特に半径方向の測定軸受28を備えていることは可能であり、この測定軸受によって、例えば、従動軸8が軸受けされている。この半径方向の測定軸受28が、力センサーまたは応力センサー、例えばピエゾ感応型のセンサーを用いて、従動軸8と測定軸受28との間の力を機械的なベクトル量3として検出するように形成されていることは可能である。
【0058】
これに対して選択的または付加的に、センサー装置2が、従動軸8から離間された間隔センサーを備えることは可能であり、これら間隔センサーが、従動軸8の偏位を、機械的なベクトル量3として検出するように形成されている。
【0059】
更に、センサー装置2が、特に担持構造21に固定された応力センサー、特にストレインゲージ(DMS)を備えていることは可能である。
【0060】
基本的に、センサー装置2が、機械的なベクトル量3を、工具1から発する力の伝達経路の内側の、適宜の部分において測定するように設備されていることは可能である。
この力の伝達経路は、例示的に、工具1から、従動軸8と、軸受装置27と、担持構造21と、ハウジング6と、および、載置面9とを介して、加工材料11へと延びる。特に、センサー装置2は、力の伝達経路内において相前後して位置する2つの部材の間の、機械的なベクトル量3を測定するように形成されている。
【0061】
図3から6までは、第2、第3、第4、および、第5の例示的な実施形態を示しており、この実施形態において、機械的なベクトル量3の検出が、それぞれに、異なる構造およびやり方で行われる。
担持構造21およびセンサー装置2の形成および配設を除いて、第2から第5までの実施形態は、前記で述べられた第1の実施形態に相応する。前記で既にこの第1の実施形態との関連において説明された特徴は、同様に第2、第3、第4、および、第5の実施形態にも適用される。
【0062】
図3は、第2の実施形態に従う、電動工具20を示している。この第2の実施形態において、センサー装置2は、2つのセンサー要素25、26を備えており、これら両方のセンサー要素が、担持構造21に配設されている。例えば、これらセンサー要素25、26は、担持構造21に粘着されている。
【0063】
これらセンサー要素25、26は、特に担持構造21の変形の検出のためのセンサーであり、この変形が、従動軸8からこの担持構造21に対して作用する力によって誘起される。これらセンサー要素25、26は、例えば、力-応力センサー、特にストレインゲージ(DMS)、ピエゾ素子、及び/または、光導体センサー(Lichtleitersensoren)である。
【0064】
合目的に、これらセンサー要素25、26は、従動軸8に対して相対的に半径方向に外方に延びる、担持構造21の2つの部分24に配設されている。例示的に、センサー要素25は、水平方向に延びる部分24に配設されており、および、センサー要素26が、垂直方向に延びる部分24に配設されている。これら部分24は、特にウェブ形状に形成されている。
【0065】
部分24は、合目的に、担持構造21の第1の部分区間22と第2の部分区間23とを互いに結合している。例示的に、第1の部分区間22は従動軸8を取り囲んでいる。特に、第1の部分区間22は、伝動機構ハウジングを具現し、または、伝動機構ハウジングを備えている。有利には、従動軸8は、第1の部分区間22において軸受けされている。
第2の部分区間23は、工具1から発する力の伝達経路内において、合目的に、第1の部分区間22の後方-即ちこの第1の部分区間22の下流側-に位置している。
【0066】
図4は、第3の実施形態に従う、電動工具30を示している。合目的に、担持構造21は、前記で述べられた第2の実施形態のように形成されている。
【0067】
第3の実施形態において、センサー装置2は、2つのセンサー要素25、26を備えており、これらセンサー要素が、従動軸8の偏位を、異なる2つの空間方向において検出するように形成されている。有利には、センサー要素25は、第1の空間方向における、従動軸8の偏位を検出し、および、センサー要素26が、この従動軸8に対して相対的に特に90°だけ回転された第2の空間方向における偏位を検出する。
【0068】
合目的に、センサー要素25、26は、間隔センサー、例えば渦電流センサー、容量型センサー、及び/または、誘導型センサーである。誘導型センサーである場合、従動軸8内において、またはこの従動軸に沿って、磁気的な微粒子が配設されていることは可能である。
【0069】
例示的に、両方のセンサー要素25、26は、担持構造21に配設されている。合目的に、これらセンサー要素25、26は、穿孔内において配設され、特にねじ込まれており、これら穿孔が、有利には担持構造21に設けられている。例示的に、両方のセンサー要素25、26は、担持構造21の内側の部分区間22に配設されている。
【0070】
図5は、第4の実施形態に従う、電動工具40を示している。第4の実施形態は、前記で第2の実施形態との関連において説明されているような、担持構造21を出発点としており、しかしながら、この第2の実施形態に比して、特に以下で説明される修正を有している。
【0071】
従って、第4の実施形態において、センサー要素25、26は、担持構造21の第1の部分区間22と第2の部分区間23との間に配設されている。特にセンサー要素25、26は結合要素を具現し、これらセンサー要素が、第2の部分区間23を、機械的に第1の部分区間22と結合する。例示的に、センサー要素25、26は、前記で第2の実施形態との関連で述べられた部分24の代用をする。
【0072】
合目的に、センサー要素25、26は、力センサーとして形成されており、且つ、第1の部分区間22と第2の部分区間23との間に存在する力を、異なる2つの空間方向において測定する。合目的に、両方の空間方向は、互いに直交して整向されている。特に第1の空間方向は、載置面9及び/または送り方向12に対して平行に延びており、および、第2の空間方向が、これに対して垂直方向に延びている。
【0073】
有利な構成に従い、第1の部分区間22は伝動機構ハウジングを具現し、且つ、センサー要素25、26を介して、有利には専らセンサー要素25、26だけを介して、第2の部分区間23及び/または残りの担持構造21に懸架される。
【0074】
図6は、第5の実施形態に従う、電動工具40を示している。合目的に、担持構造21は、前記で説明された第2の実施形態においてのように形成されている。
【0075】
図6は、例示的に、軸受装置27を示している。合目的に、この軸受装置27は、担持構造21に設けられており、且つ、従動軸8をこの担持構造21に対して軸受けしている。この軸受装置27は、合目的に、1つまたは複数の軸受31、32、特にラジアル軸受及び/またはラジアックス軸受(Radiaxlager)、有利には玉軸受を備えている。
【0076】
合目的に、軸受装置27の少なくとも1つの軸受31、32は、測定軸受28、特に半径方向の測定軸受28として形成されており、且つ、これに伴って、センサー装置2を具現している。
有利には、測定軸受28は、従動軸8と担持構造21との間に存在する力を、異なる少なくとも2つの空間方向において測定するように形成されている。例えば、測定軸受28は、複数のセンサー要素、例えばピエゾ感応型のセンサー要素、特にピエゾ感応型の薄膜センサー要素を備えており、これらセンサー要素が、合目的に、周囲方向において、従動軸8の周囲に配設されている。
特にこれらセンサー要素は、例えば外側リングのような、測定軸受28の外側の軸受構成要素、-即ち担持構造21に対して相対的に不動の軸受構成要素、もしくは、従動軸8と共に回転しない軸受構成要素-に配設されている。例示的に、8つのセンサー要素が設けられており、これらセンサー要素は、それぞれに、45°だけ互いに位置ずれされて配設されている。
【0077】
図7は、従動軸8を、軸受装置27の2つの軸受31、32と共に示している。例示的に、第1の軸受31は、工具1に割り当てられた、従動軸8の遠位の端部の領域内において配設されており、および、第2の軸受32が、工具1と反対側の、この従動軸8の遠位の端部の領域内において配設されている。
【0078】
合目的に、1つまたは両方の軸受31、32は、前記で説明された測定軸受28として形成されている。
【0079】
センサー装置2が内側で1つまたは複数の軸受31、32内において統合されている、前記で説明された構成に対して選択的または付加的に、センサー装置2が、同様に1つまたは複数の軸受31、32と、担持構造21との間に配設されていることも可能である。
【0080】
図8は、第6の実施形態に従う、電動工具60を示している。電動工具60は、ここで、例示的に、不動の鋸、特にテーブル丸鋸として形成されている。この電動工具60は、前記で既に電動工具10との関連において述べられた特徴を備えている。更に、この電動工具60において、センサー装置2及び/または担持構造21が、第2のから第5までに至る実施形態との対応関係において構成されていることは可能である。
【0081】
例示的に、工具1は、ここで反時計方向に回転する。合目的に、加工材料11は、加工の際に、鋸の歯が上方から下方へとこの加工材料11内へと鋸で切断するように、鋸刃として形成された工具1内へと押し込まれる。図8内において、相応する送り方向12が図示されている。方向範囲14、15、16、及び/または、方向閾値17、18は、電動工具60において相応して適合されている。例えば、図2内において示された方向範囲14、15、16及び/または方向閾値17、18が、ダイヤグラムの中心点を中心に点対称(punktgespiegelt)されていることは可能である。
【0082】
以下で、どのように、認識された現象及び/または認識された状態に対して応答され得るのかの、種々の可能性が述べられる。合目的に、それぞれの可能性が前記で述べられた電動工具のそれぞれの電動工具において行われていることは可能である。
【0083】
有利には、制御装置4は、認識された現象及び/または状態に対する応答において、相応する信号を提供するように形成されている。制御装置4が、例えば、この信号をメモリー内において格納するように、及び/または、特に電動工具の音響的または視覚的な信号出力手段を介して出力するように形成されていることは可能である。
格納された信号は、特にデータ記録であることは可能であり、このデータ記録において、センサー装置2によって検出されたデータが記録される。ここで扱われているのは、例えば事故経過検出の目的のためのデータ記録である。
【0084】
例えば工具1がもはや駆動されず、及び/または、制動、特に完全に制動されることを生起するために、更に制御装置4が、認識された現象及び/または状態に対する応答において、駆動装置7の所定の制御を行うように形成されていることは可能である。このことは、特に、認識された現象が、キックバック-現象である場合に有効である。
この制動は、その際、特に、その電気モーターによってさもなければ工具1が駆動される同じ該電気モーターによって行われ得る。
【0085】
選択的または付加的に、電動工具が、制動手段を備えることは可能であり、且つ、制御装置が、認識された現象及び/または信号に対する応答において、この制動手段を、工具1が制動される程に制御するように形成されていることは可能である。
【0086】
合目的に、制御装置4は、認識されたキックバック-現象の際に、駆動装置7及び/または制動手段を介して、工具1の制動を、電動工具及び/または加工材料11の未だに如何なる反動または跳ね返りも行われていない時点において生起するように形成されている。
例えば、この制動は、図2へと戻って、方向閾値17または18が既に超過され、機械的なベクトル量3が有利にはしかしながら未だに第3の方向範囲16内において位置しない時点において行われ得る。
このようにして、キックバックによって生起される反動または跳ね返りは減少、または、完全に防止され得る。
【0087】
更に、電動工具10、60が、位置決め装置29を備えていることは可能であり、この位置決め装置が、工具1を選択的に作動位置または安全保護位置に位置決めするように形成されている。制御装置4が、認識された現象及び/または状態に対する応答において、この位置決め装置29を制御するように形成されていることは可能であり、従って、工具1が、作動位置または安全保護位置に位置決めされる。
位置決め装置29は、例えば、工具1を作動位置と安全保護位置との間で移動する及び/または旋回するように形成されている。合目的に、工具1は、安全保護位置において、作動位置においてよりも十分に、ハウジング6内へと位置決めされている。合目的に、工具1は、キックバック-現象に対する応答において、安全保護位置へと位置決めされる。
【0088】
図9は、鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具1を有する、電動工具10、20、30、40、50、60の、現象及び/または状態の認識のための方法のフローチャートを示している。
この方法は、工具1から発する力に依存する機械的なベクトル量3、即ち、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力の検出のステップS1と、検出された機械的なベクトル量3の方向、及び/または、方向変化に従う、電動工具の現象及び/または状態の認識のステップとを備えている。
【0089】
合目的に、この方法は、前記で説明された電動工具10;20;30;40;50;60の内の1つの電動工具を用いて実施される。
【0090】
有利には、この方法は、更に別のステップを備えており、このステップにおいて、認識された現象及び/または認識された状態に対する、前記で述べられた応動の内の1つの応動が実施される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. 鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具(1)を有する、電動工具(10、20、30、40、50、60)であって、この電動工具が、
機械的なベクトル量(3)の検出のためのセンサー装置(2)を備え、
この機械的なベクトル量(3)が、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力を含み、および、この機械的なベクトル量(3)が、前記鋸刃(1)から発する力に依存し、
並びに、前記電動工具が、
前記センサー装置(2)と情報伝達的に連結された制御装置(4)を備え、
この制御装置が、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)の現象及び/または状態を、前記センサー装置(2)によって検出された前記機械的なベクトル量(3)の方向及び/または方向変化に従い認識するように形成されている、
ことを特徴とする電動工具。
2. 前記制御装置(4)は、認識されるべき前記現象及び/または状態として、キックバック、前進鋸切断、後進鋸切断、加工材料(11)内への前記工具(1)の進入、及び/または、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)、特に前記工具(1)の摩耗状態を認識するように形成されている、
ことを特徴とする上記1に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
3. 前記制御装置(4)は、少なくとも1つの方向範囲(14、15、16)を提供するように、および、前記現象及び/または状態を、前記機械的なベクトル量(3)の方向が前記方向範囲(14、15、16)の内側に位置するのかまたは外側に位置するかどうかに基づいて認識するように形成されている、
ことを特徴とする上記2に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
4. 前記制御装置4は、複数の方向範囲(14、15、16)を提供するように、および、異なる現象及び/または状態を、前記方向範囲(14、15、16)の内のどの方向範囲内において前記機械的なベクトル量(3)の前記方向が位置しているのかに基づいて認識するように形成されている、
ことを特徴とする上記2または3に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
5. 前記制御装置4は、1つまたは複数の方向範囲(14、15、16)の校正を行うように形成されている、
ことを特徴とする上記3または4に記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
6. 前記制御装置4は、前記現象及び/または状態を、前記機械的なベクトル量(3)の角速度及び/または変化角度に基づいて認識するように形成されている、
ことを特徴とする上記2から5のいずれか一つに記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
7. 前記センサー装置(2)は、第1のセンサー要素(25)と第2のセンサー要素(26)とを備えており、
前記第1のセンサー要素(25)が、前記機械的なベクトル量(3)の基礎である機械的な量を、第1の空間方向において測定するように形成されており、および、
前記第2のセンサー要素(26)が、前記機械的なベクトル量(3)の基礎である機械的な量を、この第1の空間方向とは異なる第2の空間方向において測定するように形成されている、
ことを特徴とする上記2から6のいずれか一つに記載の電動工具(20;30;40)。8. 前記電動工具(20;30;40)は、更に担持構造(21)、並びに、この担持構造(21)に軸受けされた従動軸(8)を備えており、この従動軸と、前記工具が連結されており、前記センサー要素(25、26)が、この担持構造(21)に配設されている、ことを特徴とする上記7に記載の電動工具(20;30;40)。
9. 前記担持構造(21)は、第1の部分区間(22)、特に伝動機構ハウジングと、第2の部分区間(23)とを備えており、および、
両方の前記センサー要素(25、26)が、それぞれに、前記第1の部分区間(22)と前記第2の部分区間(23)との間の結合要素として形成されている、
ことを特徴とする上記8に記載の電動工具(40)。
10. 前記センサー装置(2)は、測定軸受(28)を備えていることを特徴とする上記2から9のいずれか一つに記載の電動工具(50)。
11.
前記制御装置(4)は、認識された前記現象及び/または認識された前記状態に対する応答において、信号を提供するように形成されている、
ことを特徴とする上記2から10のいずれか一つに記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
12. 前記電動工具(10;20;30;40;50;60)は、前記工具(1)の駆動のための駆動装置(7)を備えており、および、
前記工具(1)の駆動を変化するため、特に前記工具(1)を制動するために、前記制御装置(4)が、認識された前記現象及び/または認識された前記状態に対する応答において、この駆動装置(7)を制御するように形成されている、
ことを特徴とする上記2から11のいずれか一つに記載の電動工具(10;20;30;40;50;60)。
13. 前記電動工具は、位置決め装置(29)を備えており、この位置決め装置が、
前記工具(1)を、選択的に作動位置または安全保護位置に位置決めするように形成されており、および、
前記制御装置(4)が、認識された前記現象及び/または認識された前記状態に対する応答において、この位置決め装置(29)を制御するように形成されており、従って、前記工具(1)が、作動位置または安全保護位置に位置決めされる、
ことを特徴とする上記1から12のいずれか一つに記載の(10;60)。
14. 鋸刃またはミーリングカッターとして形成された回転可能な工具(1)を有する、電動工具(10、20、30、40、50、60)の、現象及び/または状態の認識のための方法であって、この方法が、以下のステップ:即ち、
機械的なベクトル量(3)の検出のステップ(S1)であって、その際、この機械的なベクトル量(3)が、力、加速度、速度、偏位、変形、及び/または、機械的な応力を含み、および、この機械的なベクトル量(3)が、前記鋸刃(1)から発する力に依存するステップ(S1)と、
検出された前記機械的なベクトル量(3)の方向、及び/または、方向変化に従う、前記電動工具(10;20;30;40;50;60)の前記現象及び/または状態の認識のステップ(S2)と、
を備えていることを特徴とする方法。
【符号の説明】
【0091】
1 工具
2 センサー装置
3 機械的なベクトル量
4 制御装置
5 ユーザインターフェース
6 ハウジング
7 駆動装置
従動軸
9 載置面
10 電動工具
11 加工材料
12 送り方向
14 方向範囲、第1の方向範囲
15 方向範囲、第2の方向範囲
16 方向範囲、第3の方向範囲
17 方向閾値、第1の方向閾値
18 方向閾値、第2の方向閾値
19 0°線
20 電動工具
21 担持構造
22 第1の部分区間、内側の部分区間
23 第2の部分区間
24 部分
25 センサー要素、第1のセンサー要素
26 センサー要素、第2のセンサー要素
27 軸受装置
28 測定軸受、半径方向の測定軸受
29 位置決め装置
30 電動工具
31 軸受、第1の軸受
32 軸受、第2の軸受
40 電動工具
50 電動工具
60 電動工具
S1 ステップ
S2 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9