(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】マメ類タンパク質ベースの組成物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/14 20060101AFI20230428BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20230428BHJP
A23L 33/185 20160101ALI20230428BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20230428BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230428BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230428BHJP
【FI】
A23J3/14
A23L29/00
A23L33/185
A23L2/66
A23L2/00 F
A23L5/00 M
(21)【出願番号】P 2020514500
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 FR2018052208
(87)【国際公開番号】W WO2019048804
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-30
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 護一
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/092778(WO,A1)
【文献】特開2007-097465(JP,A)
【文献】特開2001-245633(JP,A)
【文献】特開2001-238693(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057554(WO,A1)
【文献】DATABASE Mintel GNPD [online], 2009年6月, Drink, ID#:1126898, [Retrieved on 2022.6.22],https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1126898/from_search/aJC3S7tFGx/?page=1
【文献】DATABASE Mintel GNPD [online], 2014年8月, Unflavored Beverage, ID#:2607025, [Retrieved on 2022.6.22],https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2607025/from_search/KrFsZlePCw/?page=1
【文献】DATABASE Mintel GNPD [online], 2016年1月, Food for Special Medical Purposes, ID#:3675657,[Retrieved on 2022.6.22],https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3675657/from_search/ocxc22iSNg/?page=1
【文献】DATABASE Mintel GNPD [online], 2015年2月, Nutritionally Complete Drink for Enteral Nutrition, ID#:2802807, [Retrieved on 2022.6.22],https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2802807/from_search/iO7yZWqGNj/?page=1
【文献】DATABASE Mintel GNPD [online], 2017年2月, Tomato Diet Soup, ID#:4636429, [Retrieved on 2022.6.22],https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4636429/from_search/yiMyYmlqON/?page=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウマメタンパク質
をベース
とした、苦さが低減された組成物を調製するプロセスであって、以下のステップ:
-
エンドウマメタンパク質及びクエン酸ナトリウムを
、20~1100のエンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量(乾燥重量/乾燥重量)比で含む水溶液又は懸濁液を調製するステップ、及び
- 前記水溶液又は懸濁液を、125℃~134℃の温度にて
120~
240秒間、又は135℃~144℃の温度にて
120~
180秒間、又は145℃~155℃の温度にて
30~
70秒間加熱殺菌するステップ
を含むプロセス。
【請求項2】
エンドウマメタンパク質
をベース
とした、苦さが低減された組成物を調製するプロセスであって、以下のステップ:
-
エンドウマメタンパク質及びクエン酸ナトリウムを
、20~1100のエンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量(乾燥重量/乾燥重量)比で含む水溶液又は懸濁液を調製するステップ、及び
- 125℃~155℃の温度が適用されるという条件で、8500~26000℃.sの殺菌スケジュールを適用することによって前記水溶液又は懸濁液を加熱殺菌するステップ
を含むプロセス。
【請求項3】
前記殺菌ステップの前に
エンドウマメタンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む前記水溶液又は懸濁液を均質化するステップも含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記均質化ステップが高圧下で実施されることを特徴とする、請求項
3に記載のプロセス。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる、
エンドウマ
メタンパク質
をベース
とした、苦さが低減された組成物。
【請求項6】
1種以上の添加剤も含むことを特徴とする、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
食品製剤を調製するための請求項
5又は
6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
前記食品製剤が、以下:
- 食餌栄養を目的とする飲料、
- スポーツマン及びスポーツウーマンの栄養を目的とする飲料、
- 乳児栄養を目的とする飲料、
- 臨床栄養を目的とし、且つ/又は栄養不良に罹患している個体を対象とする飲料、
- 高齢者の栄養を目的とする飲料
からなる群から選択される「レディ・トゥ・ドリンク」飲料であることを特徴とする、請求項
7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マメ科植物タンパク質ベースの苦さが低減された組成物を調製するプロセス、前記プロセスによって得ることができる組成物、及びまた、特に食品加工分野における、とりわけ食品製剤の調製のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭水化物及び脂質と共に、タンパク質は、我々の食事のかなりの部分を占める。1日のタンパク質必要量は、一般に食物摂取量の12%~20%である。
【0003】
消費されるタンパク質は、一般に動物起源、例えば肉、魚、卵、若しくは乳製品のものであるか、又は植物起源、例えば穀物、油料植物、若しくはマメ科植物のものである。
【0004】
しかしながら、先進国では、タンパク質の摂取は、主に動物起源のタンパク質の形態である。しかしながら、多数の研究は、植物タンパク質を損なうほどの動物起源のタンパク質の過剰消費が癌及び心血管疾患の増加の原因の1つであることを実証している。
【0005】
更に、動物タンパク質は、特に乳又は卵由来のタンパク質に関係する、それらのアレルゲン性の観点、及び集約農業の悪影響に関連する環境的観点の両方で多数の不利点を有する。
【0006】
従って、製造者は、代替えとして植物タンパク質に徐々に着目してきている。実際、食品中の動物起源のタンパク質のうちの全部又は一部を置換するために植物タンパク質を使用することは一般的である。
【0007】
このような置換は、植物タンパク質が動物タンパク質と異なる機能特性を有するため、必ずしも容易ではない。この機能特性は、技術的変換、貯蔵又は家庭における調理中に生成される食物システムの感覚的性質に影響を及ぼす物理的又は物理化学的特性である。
【0008】
植物タンパク質の中でも、例えば、マメ科植物タンパク質を使用することが一般的である。乳タンパク質に関して、それらは高い栄養的利点を有するが、それらの高いコストは、非常に多くの場合、食品加工分野における大規模使用の障害となる。従って、乳タンパク質は、マメ科植物タンパク質と置換され得る。
【0009】
ある種の植物タンパク質、特にマメ科植物タンパク質の1つの欠点は、それらが味の観点で無味でなく、従って、それらが取り込まれた製品に苦さを生じさせるという事実である。
【0010】
従って、食品加工業における動物タンパク質の植物タンパク質との置換を促進するために、植物タンパク質、特に、とりわけエンドウマメタンパク質を含むマメ科植物タンパク質の苦さを低減することを特に可能にする解決策の必要性が存在する。
【0011】
従って出願人は、感心なことに、マメ科植物タンパク質ベースの組成物であって、苦さが低減されたか、又は更には苦さが完全に覆われた組成物を得ることを可能にするプロセスを開発した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の対象は、マメ科植物タンパク質ベースの苦さが低減された組成物を調製するプロセスであって、以下のステップを含むプロセスである:
- マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムの両方を含む水溶液又は懸濁液を調製するステップ、
- マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む前記水溶液又は懸濁液を、125℃~134℃の温度にて90~300秒間、又は135℃~144℃の温度にて90~210秒間、又は145℃~155℃の温度にて20~90秒間加熱殺菌するステップ。
【0013】
本発明によるプロセスは、一般にマメ科植物タンパク質に特徴的な苦味の減少を示す、マメ科植物タンパク質、特にエンドウマメタンパク質ベースの組成物を提供することを可能にするため、特に有利である。
【0014】
また本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができるマメ科植物タンパク質、特にエンドウマメタンパク質ベースの苦さが低減された組成物にも関する。
【0015】
最後に、本発明は、食品加工業における、より具体的には食品製剤を調製するための、前記苦さが低減された組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従って、本発明の対象は、マメ科植物タンパク質ベースの苦さが低減された組成物を調製するためのプロセスであって、以下のステップを含むプロセスである:
- マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液を調製するステップ、
- マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む前記水溶液又は懸濁液を、125℃~134℃の温度にて90~300秒間、又は135℃~144℃の温度にて90~210秒間、又は145℃~155℃の温度にて20~90秒間加熱殺菌するステップ。
【0017】
本発明の目的に関して、用語「マメ科植物」は、ジャケツイバラ科(Caesalpiniaceae)、ネムノキ科(Mimosaceae)、又はマメ科(Papilionaceae)に属する任意の植物、例えば、アルファルファ、クローバー、ルピナス、エンドウマメ、インゲンマメ、ソラマメ(broad bean)、ソラマメ(horse bean)、又はレンズマメ、より具体的にはエンドウマメを意味することを意図する。
【0018】
本発明の目的に関して、用語「苦さが低減された」は、苦味の知覚が低減されているか、又は更には完全に覆われている組成物を意味することを意図する。
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、クエン酸ナトリウムの使用及び125℃~134℃の温度にて90~300秒間、又は135℃~144℃の温度にて90~210秒間、又は145℃~155℃の温度にて20~90秒間の加熱殺菌ステップの使用の組み合わせによる本発明によるプロセスが、マメ科植物タンパク質ベースの組成物の苦味を低減するか、又は更には完全に覆うことを可能にすることを認めた。マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液に適用される殺菌スケジュールは、摂氏度で適用される温度を秒で表される接触時間と乗算することによって得られる数によっても定義され得る。従って、得られた数は℃.sで表され、従って、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液に適用されるエネルギー量を表す。
【0020】
本発明のプロセスによる殺菌ステップは、加熱殺菌のために当業者によって従来実行さ
れていたことに反して実施されるため、この発見はいっそう驚くべきことである。実際、超高温(UHT)殺菌であって、滅菌されるタンパク質を劣化させないように高温、すなわち135℃~150℃の温度にて15秒を超えない時間実施される殺菌(すなわち2250℃.sの殺菌スケジュール)を使用することは、現在まで一般的であった。
【0021】
従って、本発明によるプロセスの第1のステップは、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液を調製することである。
【0022】
マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液の調製は、当業者の一般的な方法により実施され得る。従って、調製は、一方のマメ科植物タンパク質を含む水溶液又は懸濁液を、他方のクエン酸ナトリウムを含む水溶液と混合することであり得る。また調製は、クエン酸ナトリウムを含む水溶液にマメ科植物タンパク質を添加すること、又はマメ科植物タンパク質を含む水溶液又は懸濁液にクエン酸ナトリウムを添加することであり得る。
【0023】
マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液の調製は、有利には、5~2500のマメ科植物タンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量(乾燥重量/乾燥重量)比を得るような方法で実施される。好ましくは、前記比は5~2000、好ましくは5~1500、より優先的には5~1000、更により優先的には5~500、5~300、5~100、とりわけ5~50である。更により優先的には、前記比は5~40であり、とりわけマメ科植物タンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量(乾燥重量/乾燥重量)比は、約20である。
【0024】
優先的な一態様によれば、マメ科植物タンパク質は、マメ科(papilonaceae)に属する。加えて、この優先的な態様によれば、マメ科植物タンパク質は、アルファルファ、クローバー、ルピナス、エンドウマメ、インゲンマメ、ソラマメ(broad bean)、ソラマメ(horse bean)及びレンズマメ並びにこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、前記マメ科植物タンパク質は、エンドウマメ、インゲンマメ、ソラマメ(broad bean)及びソラマメ(horse bean)並びにこれらの混合物からなる群から選択される。更により好ましくは、前記マメ科植物タンパク質は、エンドウマメに由来する。
【0025】
用語「エンドウマメ」は、本明細書においてその最も広い意味で解釈され、特に以下を含む:
- 「滑らかなエンドウマメ」及び「しわが寄ったエンドウマメ」の全ての品種並びに
- 「滑らかなエンドウマメ」及び「しわが寄ったエンドウマメ」の全ての突然変異品種であって、
概して意図される用途(ヒトによる消費のための食品、飼料及び/又はその他の用途)を問わない品種。
【0026】
本出願において、用語「エンドウマメ」は、エンドウ(Pisum)属、より具体的にはサティバム(sativum)及びアエスチバム(aestivum)種に属するエンドウマメの品種を含む。
【0027】
前記突然変異品種は、特に、C-L HEYDLEY et al.による表題「Developing novel pea starches」,Proceedings
of the Symposium of the Industrial Biochemistry and Biotechnology Group of the Biochemical Society,1996,pp.77-87の論文に記載された「r変異体」、「rb変異体」、「rug 3変異体」、「rug 4変異体」、「
rug 5変異体」及び「lam変異体」として知られるものである。
【0028】
更により優先的には、前記マメ科植物タンパク質は、滑らかなエンドウマメに由来する。
【0029】
これはエンドウマメが、1970年代から、飼料用だけでなく、ヒトによる消費のための食品用のタンパク質源として、欧州、主にはフランスにおいて最も広く開発されてきた、タンパク質が豊富な種子をつけるマメ科植物だからである。
【0030】
全てのマメ科植物タンパク質のように、エンドウマメタンパク質は、3つの主要なクラスのタンパク質:グロブリン、アルブミン、及び「不溶性の」タンパク質からなる。
【0031】
エンドウマメタンパク質の価値は、その良好な乳化能力、アレルゲン性がないこと、及びコストの低さにあり、これらによりエンドウマメタンパク質は経済的且つ機能的な成分となる。
【0032】
更に、エンドウマメタンパク質は、持続可能な開発に有利に寄与し、そのカーボンインパクトは非常に良好である。これは、エンドウマメが大気中の窒素を固定するために、窒素肥料を必要とせず、エンドウマメの栽培が環境に優しいからである。
【0033】
従って、マメ科植物タンパク質は、好ましくはエンドウマメタンパク質、特にエンドウマメタンパク質分離物である。
【0034】
一実施形態によれば、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液を調製するステップは、前記水溶液又は懸濁液への1種以上の添加剤の添加を含み得る。
【0035】
添加剤は、特にゲル化剤、可溶性植物繊維、糖、植物油、多糖類、塩化ナトリウム、乳化剤、食用色素、防腐剤、甘味剤、及び増粘剤から選択され得る。好ましくは、添加剤は、ゲル化剤、可溶性植物繊維、糖、植物油、多糖類、塩化ナトリウム、及び乳化剤から選択される。
【0036】
好ましくは、ゲル化剤は、アルギン酸、寒天、カラゲナン、アラビノガラクタン、ジェランガム、ゼラチン、及びペクチンから選択される。好ましくは、ゲル化剤は、ジェランガムである。
【0037】
好ましくは、可溶性植物繊維は、フルクトオリゴ糖(FOS)及びイヌリンを含むフルクタン、グルコオリゴ糖(GOS)、イソマルトオリゴ糖(IMO)、トランス-ガラクトオリゴ糖(TOS)、ピロデキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、難消化性デキストリン、並びに油料植物又はタンパク質産生植物に由来する可溶性のオリゴ糖からなる群から選択される。
【0038】
用語「可溶性繊維」は、水溶性の繊維を意味することを意図する。繊維は、種々のAOAC法に従って量的に測定され得る。例として、フルクタン、FOS及びイヌリン用のAOAC法997.08及び999.03、ポリデキストロース用のAOAC法2000.11、分岐マルトデキストリン及び難消化性デキストリン中に含有される繊維を量的に測定するためのAOAC法2001.03、又はGOS、更には油料植物若しくはタンパク質産生植物に由来する可溶性のオリゴ糖用のAOAC法2001.02が挙げられ得る。
【0039】
有利には、可溶性植物繊維は、部分的に加水分解されたコムギ又はトウモロコシデンプ
ンから得られ、全繊維の最高85%に相当する。
【0040】
好ましくは、植物油は、落花生油、アボカド油、ルリヂサ油、カメリナ油、ベニバナ油、大麻油、アブラナ油、小麦胚芽油、亜麻仁油、ニゲラ油、ヘイゼルナッツ油、クルミ油、オリーブ油、マツヨイグサ油、ペポカボチャ種子油、ブドウ種子油、シソ油、ゴマ油、大豆油、及びヒマワリ油から選択される。好ましくは、植物油は、ヒマワリ油である。
【0041】
好ましくは、多糖類は、アラビアゴム、グアーガム、タラガム、微結晶性セルロース、及びカルボキシメチルセルロースから選択される。より好ましくは、多糖類は、グアーガムである。
【0042】
好ましくは、乳化剤は、レシチン、ショ糖エステル、脂肪酸モノ及びジグリセリド、並びにソルビタンエステルから選択される。好ましくは、乳化剤は、脂肪酸モノグリセリドから選択される。
【0043】
本発明のプロセスはまた、殺菌ステップの前に、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含み、任意選択により1種以上の添加剤も含む水溶液又は懸濁液を均質化するステップを含み得る。均質化ステップは、当業者に公知の装置及び技術、例えば、高圧均質化、ミキサー、コロイドミル、マイクロビーズミルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、又はバルブホモジナイザーによって実施され得る。
【0044】
好ましい一実施形態によれば、均質化は、高圧下で実施される。この実施形態によれば、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液は、3MPa~100MPaの圧力、好ましくは15MPa~50MPaの圧力によって、とりわけ約20MPaの圧力で均質化される。
【0045】
マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む均質化されたか、又は均質化されていない水溶液又は懸濁液は、125℃~134℃の温度にて90~300秒間、又は135℃~144℃の温度にて90~210秒間、又は145℃~155℃の温度にて20~90秒間、加熱殺菌ステップに供される。
【0046】
一般に加熱殺菌は、酵素及び任意の形態の微生物、芽胞形成細菌でさえを阻害するのに十分な時間、食品を一般に100℃を超える温度に曝露することである。殺菌が高温で、すなわち135℃~150℃の温度にて通常15秒を超えない時間実施される場合(すなわち2250℃.sの殺菌スケジュール)、UHT(超高温)殺菌という用語が使用される。この技術は、殺菌される製品の栄養価及び官能品質を保持するという利点を有する。
【0047】
しかしながら、本発明によるプロセスに適用されるUHT殺菌のための通常の条件は、得られるマメ科植物タンパク質ベースの組成物の苦味を低減するか、又は覆うことを可能にしない。
【0048】
出願人企業は、感心なことに、クエン酸ナトリウムの使用と組み合わされた、マメ科植物タンパク質、特にエンドウマメタンパク質を含む水溶液又は懸濁液を特定の熱処理によって殺菌するステップが、得られるマメ科植物タンパク質、特にエンドウマメタンパク質ベースの組成物の苦味を低減するか、又は覆うことを可能にすることを発見した。
【0049】
加熱殺菌ステップは、当業者に公知の装置及び技術によって実施され得る。
【0050】
本発明のプロセスによると、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液を殺菌するステップは、125℃~134℃の温度にて90~300秒間、
又は135℃~144℃の温度にて90~210秒間、又は145℃~155℃の温度にて20~90秒間実施される。
【0051】
熱処理の効果は、時間/温度の組み合わせに関連する。一般に、温度がより高く、継続時間がより長いほど、効果がより高い。当業者は、適用される温度に応じて殺菌ステップの継続時間を調整することができる。
【0052】
特定の殺菌スケジュールが適用される場合に、特に良好な結果が得られる。用語「殺菌スケジュール」は、摂氏度で適用される温度を秒で表される接触時間と乗算することによって得られる数を意味することを意図する。従って、得られた数は、℃.sで表され、従って、マメ科植物タンパク質及びクエン酸ナトリウムを含む水溶液又は懸濁液に適用されたエネルギー量を表す。従って、8500~26000℃.s、例えば9000~25200℃.sの殺菌スケジュールが本発明によるプロセスの第2のステップに適用される場合、本発明によるマメ科植物タンパク質ベースの組成物は、特に有利な官能特性を有する。
【0053】
本発明の具体的な一実施形態では、本組成物を殺菌するステップは、125℃~134℃、好ましくは127℃~132℃の温度にて、より好ましくは約130℃の温度にて、90~300秒間、好ましくは100~280秒間、より好ましくは110~250秒間、より優先的には120~240秒間、更により優先的には約240秒間実施され得る。
【0054】
別の具体的な実施形態では、本組成物を殺菌するステップは、135℃~144℃、好ましくは137℃~142℃の温度にて、より好ましくは、約140℃の温度にて、90~210秒間、好ましくは100~200秒間、より好ましくは120~180秒間、より優先的には約180秒間実施され得る。
【0055】
別の具体的な実施形態では、本組成物を殺菌するステップは、145℃~155℃、好ましくは147℃~153℃の温度にて、より好ましくは約150℃の温度にて、20~120秒間、好ましくは30~120秒間、より好ましくは30~70秒間、より優先的には約60秒間実施され得る。殺菌ステップはまた、145℃~155℃、好ましくは147℃~153℃の温度にて、より好ましくは約150℃の温度にて、20~90秒間、好ましくは25~80秒間、より好ましくは30~70秒間、より優先的には約60秒間実施され得る。
【0056】
殺菌ステップはまた、125℃~155℃の温度が、30~240秒間適用されるという条件で、8500~26000℃.s、例えば9000~25200℃.sの殺菌スケジュールで実施され得る。温度は、特に130~150℃であり得る。本発明の別の対象は、本発明のプロセスによって得ることができる、マメ科植物タンパク質ベースの苦さが低減された組成物に関する。
【0057】
従って、本発明のプロセスによって得られる組成物は、クエン酸ナトリウムの水溶液又は懸濁液及びマメ科植物タンパク質の水溶液又は懸濁液を5~2500のマメ科タンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量(乾燥重量/乾燥重量)比で含む。好ましくは、前記比は5~2000、5~1500、5~1000、5~500、5~300、5~100、とりわけ5~50である。更により優先的には、前記比は5~50、5~40であり、とりわけマメ科植物タンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比は、約20である。本発明による組成物はまた、1種以上の添加剤を含み得る。
【0058】
添加剤は、ゲル化剤、可溶性植物繊維、糖、植物油、多糖類、塩化ナトリウム、乳化剤、食用色素、防腐剤、甘味剤、及び増粘剤から選択され得る。好ましくは、添加剤は、ゲ
ル化剤、可溶性植物繊維、糖、植物油、多糖類、塩化ナトリウム、及び乳化剤から選択される。
【0059】
好ましくは、ゲル化剤は、アルギン酸、寒天、カラゲナン、アラビノガラクタン、ジェランガム、ゼラチン、及びペクチンから選択される。好ましくは、ゲル化剤は、ジェランガムである。
【0060】
好ましくは、前記可溶性植物繊維は、フルクトオリゴ糖(FOS)及びイヌリンを含むフルクタン、グルコオリゴ糖(GOS)、イソマルトオリゴ糖(IMO)、トランス-ガラクトオリゴ糖(TOS)、ピロデキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、難消化性デキストリン、並びに油料植物又はタンパク質産生植物に由来する可溶性のオリゴ糖からなる群から選択される。
【0061】
用語「可溶性繊維」は、水溶性の繊維を意味することを意図する。繊維は、種々のAOAC法に従って量的に測定され得る。例として、フルクタン、FOS及びイヌリン用のAOAC法997.08及び999.03、ポリデキストロース用のAOAC法2000.11、分岐マルトデキストリン及び難消化性デキストリン中に含有される繊維を量的に測定するためのAOAC法2001.03、又はGOS、更には油料植物若しくはタンパク質産生植物に由来する可溶性のオリゴ糖用のAOAC法2001.02が挙げられ得る。
【0062】
有利には、可溶性植物繊維は、部分的に加水分解されたコムギ又はトウモロコシデンプンから得られ、全繊維の最高85%に相当する。
【0063】
好ましくは、植物油は、落花生油、アボカド油、ルリヂサ油、カメリナ油、ベニバナ油、大麻油、アブラナ油、小麦胚芽油、亜麻仁油、ニゲラ油、ヘイゼルナッツ油、クルミ油、オリーブ油、マツヨイグサ油、ペポカボチャ種子油、ブドウ種子油、シソ油、ゴマ油、大豆油、及びヒマワリ油から選択される。好ましくは、植物油は、ヒマワリ油である。
【0064】
好ましくは、多糖類は、アラビアゴム、グアーガム、タラガム、微結晶性セルロース、及びカルボキシメチルセルロースから選択される。より好ましくは、多糖類は、グアーガムである。
【0065】
好ましくは、乳化剤は、レシチン、ショ糖エステル、脂肪酸モノ及びジグリセリド、並びにソルビタンエステルから選択される。好ましくは、乳化剤は、脂肪酸モノグリセリドから選択される。
【0066】
本発明の第3の対象は、食品製剤を調製するためのマメ科植物タンパク質ベースの組成物の使用に関する。
【0067】
特に、食品製剤は、以下からなる群から選択される「レディ・トゥ・ドリンク」飲料である:
- 食餌栄養を目的とする飲料、
- スポーツマン及びスポーツウーマンの栄養を目的とする飲料、
- 乳児栄養を目的とする飲料、
- 臨床栄養を目的とし、且つ/又は栄養不良に罹患している個体を対象とする飲料、
- 高齢者の栄養を目的とする飲料。
【0068】
本発明は、次に続く実施例を読むことでより明白に理解されよう。これらの実施例は、単に例示することを目的とし、保護範囲を如何様にも限定しない。
【実施例】
【0069】
使用された成分のリストを以下に示す:
エンドウマメタンパク質分離物:NUTRALYS(登録商標)S85F、Roquette Freres(Lestrem、France)
可溶性繊維:NUTRIOSE(登録商標)FM06、Roquette Freres(Lestrem France)
ジェランガム:Kelco gel HM、CP Kelco(Atlanta、Georgia、USA)
グアーガム:VIDOGUM GHK 175、Unipektin Ingredients AG(Eschenz、Switzerland)
モノグリセリド:TYPE P(V)、C16/C18=45:55、Riken Vitamin Co.Ltd.(東京、日本)。
【0070】
実施例1:エンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比の影響
この実施例は、組成物の官能品質の改善に対するエンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比の影響を記載する。
【0071】
エンドウマメタンパク質を含む7つの組成物が、下記のプロセスにより、様々なエンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比で調製された:
- エンドウマメタンパク質、クエン酸ナトリウム及び添加剤の水溶液の調製、
- 20MPaでの前記溶液の均質化、
- 150℃にて60秒間のこの溶液の殺菌。
【0072】
各々の組成物の各種成分の比率を、以下の表1に示す。
【0073】
【0074】
3つの要素:苦味、甘味及びクリーム性を評価するために、調製された組成物の全てに対して官能検査が専門家の一団によって実施された。
【0075】
3つの要素の各々について、1~5のグレードが、以下のスケールにより与えられた:
- 苦味:1=苦い、5=苦くない;
- 甘味:1=甘くない、5=良好な甘味;
- クリーム性:1=クリーム性がなく、且つ口当たりが悪い、5=クリーム性があり、且つ口当たりが良い。
【0076】
官能検査の結果は、下記の表2に示す。
【0077】
【0078】
結果は、本発明による加熱殺菌された組成物(組成物2~6)におけるエンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比が評価された要素に対する影響を有することを示す。
【0079】
実際、4.4のエンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比では、得られた組成物は、本発明による組成物と比較してより苦く、且つクリーミーさがない。
【0080】
他方で、エンドウマメタンパク質重量/クエン酸ナトリウム重量比が1100、73.3、20、及び5.6である本発明による組成物については、苦味、甘味及びクリーム性は満足すべきものである。
【0081】
この実施例は、本発明のプロセスにより調製されたエンドウマメタンパク質ベースの組成物の官能特性の改善を明白に実証する。
【0082】
実施例2:UHT殺菌条件の影響の解析
この実施例の目的は、本組成物の官能品質に対するUHT殺菌条件の影響を記載することである。従って、殺菌条件を変化させることの影響を分析するために、実施例1に記載の組成物1、3及び5を使用した。様々な化合物の量を、表3に示す。
【0083】
【0084】
組成物の各々について、官能検査が専門家の一団によって実施例1と同様に実施された。評価された要素は、苦味、甘味及びクリーム性である。
【0085】
3つの要素の各々について、1~5のグレードが、以下のスケールにより与えられた:
- 苦味:1=苦い、5=苦くない;
- 甘味:1=甘くない、5=良好な甘味;
- クリーム性:1=クリーム性がなく、且つ口当たりが悪い、5=クリーム性があり、且つ口当たりが良い。
【0086】
苦味、甘味及びクリーム性の値はまた、総合官能値(又はOSV)を得るために加算され得る。このOSVが高いほど、製品はより良い。
【0087】
組成物1、3及び5によって得られた官能検査の結果を、それぞれ、表4、5及び6に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
クエン酸ナトリウムの非存在下且つ試験された様々な殺菌条件下では、組成物は、顕著な苦味及び食品用途に不適当な質感を常に有する。
【0092】
UHT殺菌条件は、通常、240秒間の120℃、20~25秒間の130℃、2秒間の140℃、又は0.1秒間の150℃である。これらの条件下では、エンドウマメタンパク質を含む組成物は、顕著な苦味及び食品用途に不適当な質感を常に有する。
【0093】
表5に示される結果によると、以下の殺菌条件により調製された組成物は、低減された苦味及び食品用途に適切な質感を有するようである:
- 120~240秒間の130℃、
- 120~180秒間の140℃、
- 30~120秒間の150℃。
【0094】
この実施例は、官能特性の改善に対する殺菌条件及びエンドウマメタンパク質を含む組成物中のクエン酸ナトリウムの存在の相乗効果を明白に実証する。本発明による組成物は、より少ない苦味及びより良好なクリーム性を有する。
【0095】
表7は、この実施例において示されたデータを要約し、総合官能値又はOSVを使用した要約された様式でそれらを示す。OSVが高いほど、製品はより良い。OSVの最大値は、3×5=15であり、完璧な製品を意味する。130℃にて120~240s、140℃にて120~180s、及び150℃にて30~120sで調製された組成物について、得られた製品のOSVは、15という理論上の最大スコアの80%を超えていることが分かる。
【0096】
従って、これらの特性は、食品製剤を調製するのに特に有利である。
【0097】