IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイションの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】タングステンCMP用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230428BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230428BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230428BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020514585
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 US2018051012
(87)【国際公開番号】W WO2019055749
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】62/559,259
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ピー.ドッカリー
(72)【発明者】
【氏名】タイラー カーター
(72)【発明者】
【氏名】マシュー イー.カーネス
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ バンクイケン
(72)【発明者】
【氏名】パンカージ シン
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160435(JP,A)
【文献】特開2010-073953(JP,A)
【文献】特開2009-239009(JP,A)
【文献】国際公開第2017/074801(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0236718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨組成物であって、
水性液体キャリアと、
前記液体キャリアに分散した研削粒子と、
鉄含有促進剤と、
アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーと、を含み、
前記カチオン性ポリマーが、下式による化合物を含み、
【化1】
式中、L 、L 、X およびX のうちの少なくとも1つは正に帯電した基を含み、R 、R およびR はH、OH、またはアルキル基であり、
前記カチオン性ポリマーが約5より大きい酸解離定数(pKa)を有する、
化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記研削粒子がコロイダルシリカ研削材を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コロイダルシリカ研削材が少なくとも10mVの永久正電荷を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記鉄含有促進剤が可溶性鉄含有触媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記可溶性鉄含有触媒に結合した安定剤をさらに含み、前記安定剤が、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
過酸化水素酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約1.0~約5.0の範囲のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーが6~11の酸解離定数(pK)を有する、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ポリマーが、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記カチオン性ポリマーがε-ポリ-L-リジンを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
約1~約200重量ppmの前記カチオン性ポリマーを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
約5~約50重量ppmの前記カチオン性ポリマーを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項13】
前記カチオン性ポリマーが約1~約100kDaの範囲の分子量を有する、請求項に記載の組成物。
【請求項14】
化学機械研磨組成物であって、
水性液体キャリアと、
前記液体キャリアに分散したコロイダルシリカ研削粒子と、
可溶性鉄含有触媒と、
前記可溶性鉄含有触媒に結合した安定剤と、
アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーであって、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含むカチオン性ポリマーと、を含み、
前記組成物が約1~約5の範囲のpHを有
前記カチオン性ポリマーが約5より大きい酸解離定数(pKa)を有する、
組成物。
【請求項15】
タングステン層を含む基板を化学機械研磨する方法であって、
(a)前記基板を、
(i)水性液体キャリアと、
(ii)前記液体キャリアに分散した研削粒子と、
(iii)鉄含有促進剤と、
(iv)アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーと、を含む研磨組成物と接触させることと、
(b)前記研磨組成物を前記基板に対して動かすことと、
(c)前記基板を研削して、前記基板から前記タングステンの一部を除去し、それにより基板を研磨することと、を含み、
前記カチオン性ポリマーが、下式による化合物を含み、
【化2】
式中、L 、L 、X およびX のうちの少なくとも1つは正に帯電した基を含み、R 、R およびR はH、OH、またはアルキル基であり、
前記カチオン性ポリマーが約5より大きい酸解離定数(pKa)を有する、
方法。
【請求項16】
前記研削粒子が少なくとも10mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(i)前記鉄含有促進剤が、可溶性鉄含有触媒を含み、
(ii)前記研磨組成物が、前記可溶性鉄含有触媒に結合した安定剤をさらに含み、前記安定剤が、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
(i)前記研磨組成物が、過酸化水素酸化剤をさらに含み、
(ii)前記研磨組成物が、約1.0~約5.0の範囲のpHを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記カチオン性ポリマーが、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記カチオン性ポリマーがε-ポリ-L-リジンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
約1~約200重量ppmの前記カチオン性ポリマーを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化学機械研磨(CMP)組成物および基板の表面を研磨(または平坦化)する方法は、当技術分野で周知である。半導体基板上の金属層(タングステンなど)を研磨するための研磨組成物(研磨スラリー、CMPスラリー、およびCMP組成物としても知られている)には、水溶液に懸濁した研削粒子と、酸化剤、キレート剤、触媒などの化学促進剤が含まれる。
【0002】
従来のCMP操作では、研磨される基板(ウェーハ)は、キャリア(研磨ヘッド)に取り付けられ、それは順次キャリアアセンブリに取り付けられ、CMP装置(研磨ツール)の研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリは、制御可能な圧力を基板に提供し、基板を研磨パッドに押し付ける。基板とパッドは、外部からの駆動力によって互いに対して動かされる。基板とパッドの相対運動により、材料の一部を研削して基板の表面から除去し、それにより基板を研磨する。パッドと基板の相対運動による基板の研磨は、研磨組成物の化学的活性(例えば、酸化剤およびCMP組成物中に存在する他の化合物による)および/または研磨組成物中に懸濁された研削材の機械的活性によりさらに促進され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的なタングステンプラグおよび相互接続プロセスでは、タングステンが誘電体上およびその中に形成された開口部内に堆積される。次いで、誘電体層上の余分なタングステンがCMP操作中に除去され、誘電体内にタングステンプラグと相互接続を形成する。半導体デバイスの形状が縮小し続けるにつれて、局所的および全体的な平坦性要件を満たすことは、CMP操作(例えば、タングステンCMP操作)で困難になっている。アレイ浸食(酸化物浸食とも呼ばれる)、プラグおよび線陥凹(line recessing)(ディッシングとも呼ばれる)、およびタングステンのエッチング欠陥は、平坦性とデバイス全体の完全性を損なうことが知られている。例えば、過度の酸化物浸食および/またはディッシングは、後続のリソグラフィーステップでの困難につながり、電気的性能を低下させる可能性のある電気的接触の問題を引き起こす可能性がある。タングステンのエッチング/腐食は、電気的性能を低下させ、デバイスの故障を引き起こすことさえある。したがって、タングステンCMP操作中に改善された平坦性を提供するタングステンCMPスラリー(または組成物)が業界で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
タングステン層を有する基板を研磨するための化学機械研磨組成物が開示されている。研磨組成物は、水性液体キャリアと、液体キャリアに分散された研削粒子と、鉄含有促進剤と、アミノ酸モノマーを有するカチオン性ポリマーと、を含む。一実施形態では、研削粒子はコロイダルシリカを含むことができ、カチオン性ポリマーはポリリジンを含むことができる。タングステン層を含む基板を化学機械研磨する方法がさらに開示されている。この方法は、基板を上述の研磨組成物と接触させることと、研磨組成物を基板に対して動かすことと、および基板を研削して基板からタングステンの一部を除去し、それにより基板を研磨することと、を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0005】
タングステン層を有する基板を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物が開示される。研磨組成物は、水性液体キャリアと、液体キャリアに分散された研削粒子と、鉄含有促進剤と、アミノ酸モノマーを有するカチオン性ポリマー(本明細書ではポリアミノ酸とも呼ばれる)と、を含む。CMP組成物は、ホモポリマーおよびコポリマーを含む、アミノ酸モノマー単位を含有する実質的に任意のカチオン性ポリマーを含み得る。式(I)は、アミノ酸モノマーを含む例示的なホモポリマーを示している。コポリマーには、2つ以上の異なるモノマー単位が含まれる。適切なコポリマーでは、モノマー単位の少なくとも1つがアミノ酸である。
【化1】
【0006】
式(I)において、L、L、X、およびXのうちの少なくとも1つは、正に帯電した基を含む。正に帯電した基の例には、スラリーpHでプロトン化され得る(例えば、約2のpH、または約3のpH、または約4、5、または6のpHでプロトン化され得る)滴定可能なアミノおよびアルキルアミノ置換基が含まれ得る。正に帯電した基は、テトラアルキルアンモニウム基などの永久正電荷を持つ基を含有していてもよい。他の窒素含有の正に帯電した基の非限定的な例には、滴定可能および対応するアルキル化塩を含むイミダゾリウム基、ピリジニウム基、およびグアニジニウム基が含まれ得る。他の正に帯電した基には、ホスホニウム基および/またはスルホニウム基が含まれ得る。Xおよび/またはXが正に帯電した基を含有する場合、Lおよび/またはLは任意に連結基であり得る。Xおよび/またはXが滴定可能なアミノ基などの正に帯電した基を含有する特定の化合物では、LおよびLは任意である。Lおよび/またはLが正に帯電した基を含有する特定の他の化合物では、XおよびXは、例えば水素またはアルキル基を含む実質的に任意の基であり得る。R、R、およびRは、例えば、OH、H、またはアルキル基を含む実質的に任意の適切な置換基であり得る。RおよびRは、モノマー単位間に結合を形成する実質的に任意の官能基を含み得る。小文字のnは、モノマー単位の結合から生じるポリマーの繰り返し単位を示すために使用される。
【0007】
上記のように、ポリアミノ酸は、式(I)に示されるような適切なアミノ酸モノマーのホモポリマー、または適切なアミノ酸モノマーを適切な方法で少なくとも1つの他のモノマー単位と含むコポリマーであり得る。ホモポリマーポリアミノ酸化合物が一般に好ましい。
【0008】
好ましい実施形態では、ポリアミノ酸化合物は、約5より大きい酸解離定数(pK)、例えば約5~約14の範囲、または好ましくは約6~約11の範囲、(または約6~約8)の酸解離定数(pK)を有する滴定可能な基を含む。表1に、いくつかのポリアミノ酸とそれに対応するpK値を示す。表1において、化合物1~4は、好ましい範囲のpK値を有する。化合物5および6のpK値は5未満である。
【表1】
【0009】
表1では、電位差滴定を使用して、α-ポリ-L-リジンおよびε-ポリ-L-リジン(化合物1および2)のpKa値を実験的に決定した。滴定は、エンドポイント(EP)モード(EP=最終pH=pH12)において、10mLビュレットで滴定剤として0.5N KOHを使用して、モデルDG115-SC pHプローブを装備したMettler-Toledo Model T5自動滴定装置を使用して実行された。自動滴定装置のデータ収集と分析は、Mettler ToledoのLabXソフトウェアによって推進された。ポリリジン溶液は、52ミリグラムのポリリジン塩酸塩(すなわち、Alamanda Polymersから入手した4700ダルトンMWのα-ポリ-L-リジン塩酸塩またはBonding Chemicalから入手したε-ポリ-L-リジン塩酸塩)を、2.5グラムの1N硝酸(Aldrich Chemicals)と水と混合して調製して150グラムの総質量を得た。混合物を撹拌し、次に10分間超音波処理した。溶液は上記のように自動滴定された。得られた滴定データは、水ベースライン滴定データの対応する酸対照溶液(酸対照=総質量150gで、水中1N硝酸2.5g)に対して減算することにより正規化された。結果として得られた、正規化されたKOH添加量対pH値の、正規化された滴定データを非線形最小二乗アルゴリズムに適合させて、実験的に決定されたpKa値を得た。
【0010】
最も好ましい実施形態では、ポリアミノ酸化合物には、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、および/またはポリヒスチジンが含まれ得る。研削粒子は、例えば、コロイダルシリカを含む、実質的に任意の適切な研削粒子を含んでもよい。一実施形態では、研磨組成物は、可溶性鉄含有触媒、この鉄含有触媒に結合した安定剤、コロイダルシリカ、ポリリジンを含み、および約1.0から約5.0の範囲のpHを含む。コロイダルシリカは、任意に、官能化シラン化合物で処理して、永久カチオンまたはアニオン電荷を付与することができる。例えば、コロイダルシリカをアミノシラン化合物で処理すると、永久正電荷を付与できる。
【0011】
開示されるCMP組成物は、バルクタングステン除去および/またはタングステンバフCMP操作(当技術分野では第1および第2段階タングステンCMP操作と呼ばれることもある)に有利に利用できることが理解されよう。バルク除去操作ではより高いタングステン除去率が必要になり得、バフ操作ではより低い欠陥レベルが必要になり得る。開示されたCMP組成物は、単一ステップのタングステンCMP操作にも有利に利用することができる。開示された実施形態は、特定のCMP操作に限定されることを意図していない。
【0012】
研磨組成物は、液体キャリアに懸濁した研削粒子を含有する。研削粒子は、金属酸化物粒子、ダイヤモンド粒子、および/またはセラミック粒子などの実質的に任意の適切な研削材料を含み得る。金属酸化物粒子には、例えば、シリカおよび/またはアルミナ研削粒子が含まれ得る。セラミック粒子は、立方晶窒化ホウ素または炭化ケイ素などの材料を含んでもよい。開示された実施形態は、研削粒子に関して限定されない。
【0013】
特定の実施形態(以下に開示される実施例など)では、研削材は、コロイダルシリカ、発熱性(ヒュームド)シリカ、またはそれらの混合物を含んでもよい。本明細書で使用されるコロイダルシリカ粒子という用語は、構造的に異なる粒子を生成する熱分解または火炎加水分解プロセスではなく、湿式プロセスによって調製されるシリカ粒子を指す。コロイダルシリカ粒子は、凝集していても凝集していなくてもよい。非凝集粒子は、球形またはほぼ球形の形状の個別の粒子であるが、他の形状(通常、楕円形、正方形、または長方形の断面など)を持つこともできる。凝集粒子は、複数の離散粒子がクラスター化または結合して、一般に不規則な形状の凝集体を形成する粒子である。
【0014】
研削粒子は、実質的に任意の適切な粒径を有し得る。液体キャリアに懸濁された粒子の粒径は、さまざまな手段を使用して業界で定義できる。例えば、粒径は、粒子を取り囲む最小の球体の直径として定義され得、例えば、CPS Disc Centrifuge、Model DC24000HR(CPS Instruments、ルイジアナ州、プレーリービルから入手可能)またはMalvern Instruments(登録商標)から入手可能なZetasizer(登録商標)を含む多くの市販の機器を使用して測定できる。研削粒子は、約5nm以上(例えば、約20nm以上、約40nm以上、約50nm以上、または約60nm以上)の平均粒径を有し得る。研削粒子は、約200nm以下(例えば、約160nm以下、約140nm以下、約120nm以下、または約100nm以下)の平均粒径を有し得る。したがって、研削粒子は、約5nm~約200nm(例えば、約20nm~約160nm、約40nm~約140nm、約50nm~約120nm、または約60nm~約100nm)の範囲の平均粒径を有し得る。
【0015】
研磨組成物は、実質的に任意の適切な量の研削粒子を含むことができる。研削組成物は、典型的には、約0.01重量%以上(例えば、約0.05重量%以上)の研磨粒子を含む。より典型的には、研磨組成物は、約0.1重量%以上(例えば、約0.2重量%以上、約0.5重量%以上、または1重量%以上)の研削粒子を含むことができる。研磨組成物中の研削粒子の量は、典型的には約30重量%以下、より典型的には約20重量%以下(例えば、約10重量%以下、約5重量%以下、または約3重量%以下)である。好ましくは、研磨組成物中の研削粒子の量は、約0.01重量%~約30重量%、より好ましくは約0.05重量%~約20重量%(例えば、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、または約0.2重量%~約3重量%)の範囲にある。
【0016】
液体キャリアを使用して、研磨される基板の表面への研削材および任意の化学添加剤の塗布を促進する(例えば、平坦化)。液体キャリアは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、水、およびこれらの混合物を含む任意の適切なキャリア(例えば、溶媒)であり得る。好ましくは、液体キャリアは、水、より好ましくは脱イオン水を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0017】
研削粒子がシリカ(コロイダルシリカまたは熱分解法シリカなど)を含む実施形態では、シリカ粒子は、研磨組成物中に正電荷を任意に有してもよい。シリカ粒子などの分散粒子上の電荷は、当技術分野では一般にゼータ電位(または界面動電位)と呼ばれている。粒子のゼータ電位とは、粒子を取り巻くイオンの電荷と研磨組成物のバルク溶液の電荷との間の電位差を指す(例えば、液体キャリアとその中に溶解した任意の他の成分)。ゼータ電位は通常、水性媒体のpHに依存する。所与の研磨組成物について、粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロになるpHとして定義される。等電点から離れてpHが増加または減少すると、それに応じて表面電荷(および、したがってゼータ電位)が減少または増加する(負または正のゼータ電位値に)。研磨組成物などの分散液のゼータ電位は、Malvern Instrumentsから入手可能なZetasizer、Brookhaven Instrumentsから入手可能なZetaPlus Zeta Potential Analyzer、および/またはDispersion Technologies Inc.から入手可能な電気音響分光計などの市販の機器を使用して取得できる。
【0018】
特定の実施形態では、研削粒子は、約6mV以上(例えば、約10mV以上、約15mV以上、または約20mV以上)の永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子を含む。研磨組成物中のコロイダルシリカ粒子は、約50mV以下(例えば、約45mV以下または約40mV以下)の永久正電荷を有し得る。好ましくは、コロイダルシリカ粒子は、約6mV~約50mV(例えば、約10mV~約45mV、約15mV~約40mV、または約20mV~約40mV)の範囲の永久正電荷を有する。
【0019】
永久正電荷とは、例えば、フラッシング、希釈、濾過などによって、シリカ粒子の正電荷が容易に可逆的でないことを意味する。永久正電荷は、例えば、カチオン性化合物をコロイダルシリカと共有結合した結果であり得る。永久正電荷は、例えば、カチオン性化合物とコロイダルシリカ間の静電相互作用の結果であり得る可逆的な正電荷とは対照的である。
【0020】
それにもかかわらず、本明細書で使用される場合、少なくとも6mVの永久正電荷は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる同一出願人による米国特許第9,238,754号にさらに詳細に記載されている、3段階の限外濾過試験後にコロイダルシリカ粒子のゼータ電位が6mVを超えたままであることを意味する。
【0021】
研磨組成物中の永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子は、例えば、同一出願人による米国特許第7,994,057号および同第9,028,572号に開示されているように、少なくとも1つのアミノシラン化合物で粒子を処理することにより得ることができる。あるいは、研磨組成物中の永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子は、同一出願人による米国特許第9,422,456号に開示されているように、コロイダルシリカ粒子にアミノシラン化合物などの化学種を組み込むことにより得ることができる。
【0022】
研磨組成物は一般に、約7未満のpHである酸性である。研磨組成物は、典型的には約1以上(例えば、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、または約3以上)のpHを有する。好ましくは、研磨組成物は、約6以下(例えば、約5以下、約4.5以下、約4以下、または約3.5以下)のpHを有する。したがって、研磨組成物は、約1~約6(例えば、約2~約5、約2~約4.5、または約2.5~約4.5)の範囲のpHを有し得る。バルクタングステン除去に使用される研磨組成物は、約2~約4の範囲(例えば、約2~約3.5)のpHを好ましく有し得る。タングステンバフ研磨作業に使用される研磨組成物は、約3か~約5(例えば、約3~約4.5)の範囲のpHを好ましく有し得る。研磨組成物のpHは、任意の適切な手段により達成および/または維持され得る。研磨組成物は、実質的に任意の適切なpH調整剤または緩衝系を含み得る。例えば、適切なpH調整剤には、硝酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、水酸化アンモニウムなどが含まれ、適切な緩衝剤にはリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩などが含まれる。
【0023】
研磨組成物の任意の実施形態は、鉄含有促進剤をさらに含有していてもよい。本明細書で使用される鉄含有促進剤は、タングステンCMP操作中にタングステンの除去速度を高める鉄含有化学物質である。例えば、鉄含有促進剤は、米国特許第5,958,288号および同第5,980,775号に開示されているような可溶性鉄含有触媒を含んでもよい。そのような鉄含有触媒は、液体キャリアに可溶であり得、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄や、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物ならびに過塩素酸塩、過臭素酸塩および過ヨウ素酸塩を含むハロゲン化鉄、などの第二鉄(鉄III)または第一鉄(鉄II)化合物、ならびに酢酸鉄、カルボン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、マロン酸鉄、シュウ酸鉄、フタル酸鉄、およびコハク酸鉄などの有機鉄化合物、ならびにそれらの混合物、を含み得る。
【0024】
鉄含有促進剤は、米国特許第7,029,508号および同第7,077,880号に開示されているような、コロイダルシリカ粒子の表面に結び付いた(例えば、コーティングしたまたは結合した)鉄含有活性剤(例えば、フリーラジカル生成化合物)または鉄含有触媒を含んでもよい。例えば、鉄含有促進剤は、コロイド表面粒子の表面上のシラノール基と結合していてもよい。
【0025】
研磨組成物中の鉄含有促進剤の量は、使用される酸化剤および促進剤の化学形態に応じて変わり得る。好ましい酸化剤過酸化水素(またはその類似体)が使用され、可溶性鉄含有触媒(硝酸第二鉄など)が使用される場合、触媒は、組成物の総重量に基づいて約0.5~3000ppmのFeの範囲を提供するのに十分な量で組成物中に存在してよい。研磨組成物は、約1ppm以上のFe(例えば、約2ppm以上、約5ppm以上、または約10ppm以上)を含み得る。研磨組成物は、好ましくは、約500ppm以下(例えば、約200ppm以下、約100ppm以下、または約50ppm以下)のFeを含む。したがって、研磨組成物は、約1~約500ppm(例えば、約2~約200ppm、約5~約100ppm、または約10~約50ppm)の範囲のFeを含むことができる。バルクタングステン除去に使用される研磨組成物は、約5~約50ppmのFe(例えば、約10~約40ppmのFe)を好ましく含み得る。タングステンバフ研磨作業に使用される研磨組成物は、約0.5~約20ppmのFe(例えば、約1~約10ppmのFe)を好ましく含み得る。
【0026】
鉄含有促進剤を含む研磨組成物の実施形態は、安定剤をさらに含むことができる。そのような安定剤がなければ、鉄含有促進剤および、存在する場合、酸化剤は、酸化剤を経時的に急速に分解するように反応する可能性がある。安定剤の添加は、鉄含有促進剤の有効性を低下させる傾向があり、研磨組成物に添加される安定剤の種類と量の選択が、CMP性能に大きな影響を与える可能性がある。安定剤の添加は、酸化剤が存在する場合、促進剤の酸化剤との反応を阻害する安定剤/促進剤複合体の形成をもたらし、同時に、急速なタングステン研磨速度を促進するための十分に活性を促進剤が維持することを可能にする。
【0027】
有用な安定剤には、リン酸、有機酸、ホスホン酸化合物、ニトリル、および金属に結合し、過酸化水素分解に対する反応性を低下させる他のリガンド、およびそれらの混合物が含まれる。酸安定剤はそれらの共役形態で使用されてもよく、例えば、カルボン酸の代わりにカルボン酸塩が使用されてもよい。本明細書で有用な安定剤を説明するために使用される「酸」という用語は、酸安定剤の共役塩基も意味する。例えば、「アジピン酸」という用語は、アジピン酸とその共役塩基を意味する。安定剤は単独または組み合わせて使用でき、過酸化水素などの酸化剤が分解する速度を大幅に低下させる。
【0028】
好ましい安定剤には、リン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、およびそれらの混合物が含まれる。好ましい安定剤は、鉄含有促進剤あたり約1当量~約3.0重量パーセント以上(例えば、約3~約10当量)の範囲の量で本発明の組成物に添加することができる。本明細書で使用する「鉄含有促進剤あたりの当量」という用語は、組成物中の鉄イオンあたり1分子の安定剤を意味する。例えば、鉄含有促進剤あたり2当量は、各触媒イオンに対して2分子の安定剤を意味する。
【0029】
研磨組成物は、酸化剤を任意選択でさらに含むことができる。酸化剤は、スラリー製造プロセス中に、またはCMP操作の直前に(例えば、半導体製造施設に位置するタンク内で)研磨組成物に添加されてもよい。好ましい酸化剤には、無機または有機の過化合物(per-compound)が含まれる。本明細書で定義される過化合物は、少なくとも1つのペルオキシ基(-O-O-)を含有する化合物、または最も高い酸化状態の元素を含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の例には、過酸化水素およびその付加物例えば尿素過酸化水素および過炭酸塩、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酢酸、およびジ-t-ブチル過酸化物、モノ過硫酸塩(SO )、二過硫酸塩(S )、および過酸化ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。最も高い酸化状態の元素を含有する化合物の例には、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過ホウ酸、過ホウ酸塩および過マンガン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。最も好ましい酸化剤は過酸化水素である。
【0030】
酸化剤は、例えば、約0.1から約10重量パーセントの範囲の量で研磨組成物中に存在してもよい。過酸化水素酸化剤および可溶性鉄含有促進剤が使用される好ましい実施形態では、酸化剤は、研磨組成物中に約0.1~約6重量パーセント(例えば、約0.2~約5重量パーセント、約0.3~約4重量パーセント、または約0.5~約3重量パーセント)の範囲の量で存在し得る。
【0031】
研磨組成物は、液体キャリアの溶液中にアミノ酸モノマー単位(本明細書ではポリアミノ酸化合物とも呼ばれる)を有するカチオン性ポリマーをさらに含む。ポリアミノ酸化合物は、アミノ酸モノマーに由来するポリマーであることは理解されよう。ポリアミノ酸化合物は、タングステンプラグと線陥凹(つまりディッシング)、特にタングステン線(相互接続)陥凹を抑制し、アレイ浸食を減らすことを目的としている。適切なポリアミノ酸化合物は、(必ずしもではないが)タングステンのエッチングをさらに阻害し得る。実質的に任意の適切なポリアミノ酸、例えば、式(I)に従って上記で開示されたものを使用することができる。そのような適切なポリアミノ酸には、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびポリリジンが含まれ得る。好ましいポリアミノ酸化合物には、ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンが含まれる。最も好ましいポリアミノ酸化合物には、ポリリジンが含まれる。
【0032】
ポリリジンは、D-リジンおよび/またはL-リジンから構成されるε-ポリリジンおよび/またはα-ポリリジンを含み得ることが理解されるであろう。したがって、ポリリジンは、α-ポリ-L-リジン、α-ポリ-D-リジン、ε-ポリ-L-リジン、ε-ポリ-D-リジン、およびこれらの混合物を含み得る。特定の好ましい実施形態では、ポリリジンはε-ポリ-L-リジンである。さらに、ポリアミノ酸化合物(または複数のポリアミノ酸化合物)は、アクセス可能な任意の形で使用できること、例えば、ポリアミノ酸の共役酸または塩基および塩形態をポリアミノ酸の代わりに(またはそれに加えて)使用できることが理解されよう。この文脈で有用なポリアミノ酸添加剤を説明するために使用される「酸」という用語は、ポリアミノ酸および、存在できる滴定可能な官能基を修正するためにpHを調整することによりアクセスできる任意の形態を意味することを意図している。そのような形態には、その共役塩基または酸およびその任意の他の塩が含まれる。例えば、「ポリリジン」という用語は、ポリリジンアミノ酸およびアミン官能基をプロトン化することにより形成される共役酸を意味する。
【0033】
ポリアミノ酸化合物は、実質的に任意の適切な分子量および多分散性指数を有し得る。例えば、ポリアミノ酸は、約1~約100kDaの範囲の分子量を有し得る。しかしながら、開示された実施形態は、ポリアミノ酸化合物の分子量または多分散性指数によって制限されないことが理解されるであろう。
【0034】
研磨組成物中のポリアミノ酸化合物の量は、使用される特定のポリアミノ酸、使用される酸化剤、および促進剤の化学形態に応じて変化し得る。好ましいポリアミノ酸であるポリリジンが使用され(例えば、ε-ポリ-L-リジン)、好ましい過酸化水素酸化剤および可溶性鉄含有触媒が使用される場合、ポリリジンは、組成物の総重量に基づいて約1~約1000ppmの範囲の量で組成物中に存在できる。研磨組成物は、好ましくは約1ppm以上のポリリジン(例えば、約5ppm以上、約10ppm以上、約15ppm以上または約20ppm以上)を含む。研磨組成物は、好ましくは、約1000ppm以下のポリリジン(例えば、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約75ppm以下、約50ppm以下、または約25ppm以下)を含む。したがって、研磨組成物は、約1~約1000ppmの範囲のポリリジン(例えば、約1~約500ppm、約1~約200ppm、約1~約100、約1~約50、約5~約500ppm、約5~約200ppm、約5~約100ppm、約5~約50、または約5~約25ppmのポリリジン)を含むことができる。
【0035】
研磨組成物は、任意選択で、さらなるタングステンエッチング阻害を提供する化合物(すなわち、ポリアミノ酸によって提供されるタングステンエッチング阻害に加えて)を含んでもよい。そのような任意の化合物(含まれる場合)は、固体タングステンの可溶性タングステン化合物への変換を阻害すると同時に、CMP操作による固体タングステンの効果的な除去を可能にすることを目的としている。有用であり得る化合物のクラスには、窒素含有複素環、アルキルアンモニウムイオン、アミノアルキル、およびアミノ酸などの窒素含有官能基を有する化合物が含まれる。タングステンエッチングの適切な抑制剤は、米国特許第6,136,711号および同第9,238,754号により詳細に開示されている。
【0036】
研磨組成物は、任意選択で殺生物剤をさらに含んでもよい。殺生物剤は、任意の適切な殺生物剤、例えばイソチアゾリノン殺生物剤を含んでもよい。研磨組成物中の殺生物剤の量は、典型的には約1ppm~約50ppm、好ましくは約1ppm~約20ppmの範囲である。
【0037】
研磨組成物は、その多くが当業者には既知である任意の好適な技術によって調製することができる。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで調製することができる。通常、研磨組成物は、その成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。本明細書で使用される「成分」という用語は、個々の成分(例えば、研削粒子、鉄含有促進剤、ポリアミノ酸など)を含む。
【0038】
例えば、シリカは水性液体キャリアに分散されてもよい。次いで、鉄含有促進剤、安定剤、ポリアミノ酸、および殺生物剤などの他の成分を、成分を研磨組成物に組み込むことができる任意の方法によって添加および混合することができる。酸化剤は、研磨組成物の調製中のいつでも添加することができる。例えば、研磨組成物は、使用前に調製され、酸化剤などの1つ以上の成分が、CMP操作の直前に(例えば、CMP操作の約1分以内、または約10分以内、または約1時間以内、または約1日以内、または約1週間以内)に添加される。研磨組成物はまた、CMP操作中に基板の表面で(例えば研磨パッド上で)成分を混合することによっても調製することができる。
【0039】
本発明の研磨組成物はまた、使用前に適切な量の水で希釈されることを意図した濃縮物として提供することもできる。そのような実施形態では、研磨組成物濃縮物は、酸化剤を含むまたは含まずに、研削粒子と、ポリアミノ酸化合物と、任意の鉄含有促進剤と、安定剤と、任意の殺生物剤と、水とを、この濃縮物を適切な量の水および、適切な量でまだ存在しない場合には酸化剤で希釈すると、研磨組成物の各成分が、各成分について上記の適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在するような量で、含むことができる。例えば、研削粒子、ポリアミノ酸化合物、および任意の鉄含有促進剤および安定剤は、研磨組成物中にそれぞれ各成分の上記濃度の約2倍(例えば、約3倍、約4倍、または約5倍)の量で存在し、濃縮物は、等量(例えば、それぞれ1等量の水、2等量の水、3等量の水、または4等量の水)で適切な量の酸化剤と一緒に希釈され、各成分は、各成分について上記の範囲内の量で研磨組成物中に存在する。その上、当業者には理解されるように、濃縮物は、他の成分が少なくとも部分的にまたは完全に濃縮物中に溶解することを確実にするために、最終研磨組成物中に存在する水の好適な割合を含有することができる。
【0040】
本発明の研磨組成物は任意の基板を研磨するために使用され得るが、研磨組成物は、タングステンを含む少なくとも1つの金属および少なくとも1つの誘電材料を含む基板の研磨に特に有用である。タングステン層は、例えばチタンおよび/または窒化チタン(TiN)を含む1つ以上のバリア層の上に堆積されてもよい。誘電体層は、金属酸化物、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)に由来する酸化ケイ素層、多孔質金属酸化物、多孔質または非多孔質炭素ドープ酸化ケイ素、フッ素ドープ酸化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、フッ素化有機ポリマー、または他の適切な高誘電率(high-k)または低誘電率(low-k)絶縁層であってもよい。
【0041】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置とともに使用するのに特に好適である。通常、装置は、使用時に運動し、軌道運動、直線運動、または円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触し、運転時にプラテンとともに運動する研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触し、それに対して動かすことにより、基板が研磨されるように保持するキャリアとを含む。基板の研磨は、研磨パッドおよび本発明の研磨組成物と接触して配置される基板と、次いで基板(例えば、本明細書に記載のタングステン、チタン、窒化チタン、および/または誘電材料)の少なくとも一部を研削するように基板に対して動かす、研磨パッドによって行われる。
【0042】
基板は、任意の好適な研磨パッド(例えば、研磨表面)とともに化学機械研磨組成物で平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば、織布および不織布の研磨パッドが含まれる。さらに、好適な研磨パッドは、さまざまな密度、硬度、厚さ、圧縮率、圧縮時に反発する能力、および圧縮弾性率の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形成生成物(co-formed product)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0043】
本開示は多数の実施形態を含むことが理解されるであろう。これらの実施形態には、以下の実施形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
第1の実施形態では、化学機械研磨組成物は、水性液体キャリアと、液体キャリアに分散された研削粒子と、鉄含有促進剤と、アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーと、を含む。
【0045】
第2の実施形態は、研削粒子がコロイダルシリカ研削材を含む第1の実施形態を含むことができる。
【0046】
第3の実施形態は、コロイダルシリカ研削材が少なくとも10mVの永久正電荷を有する第2の実施形態を含むことができる。
【0047】
第4の実施形態は、鉄含有促進剤が可溶性鉄含有触媒を含むことができ、最初の3つの実施形態のいずれか1つを含むことができる。
【0048】
第5の実施形態は、第4の実施形態を含みことができ、さらに、可溶性鉄含有触媒に結合した安定剤を含むことができ、安定剤が、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
第6の実施形態は、最初の5つの実施形態のいずれか1つを含むことができ、過酸化水素酸化剤をさらに含むことができる。
【0050】
第7の実施形態は、最初の6つの実施形態のいずれか1つを含むことができ、約1.0~約5.0の範囲のpHを有することができる。
【0051】
第8の実施形態は、カチオン性ポリマーが下式による化合物を含む、最初の7つの実施形態のいずれか1つを含むことができる。
【化2】
【0052】
式中、L、L、XおよびXのうちの少なくとも1つは正に帯電した基を含み、R、RおよびRはH、OH、またはアルキル基である。
【0053】
第9の実施形態は、カチオン性ポリマーが約5より大きい酸解離定数(pK)を有する、第8の実施形態を含むことができる。
【0054】
第10の実施形態は、カチオン性ポリマーが6~11の酸解離定数(pK)を有する、第8の実施形態を含むことができる。
【0055】
第11の実施形態は、カチオン性ポリマーがポリリジン、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、第8の実施形態を含むことができる。
【0056】
第12の実施形態は、カチオン性ポリマーがポリリジンを含む、第11の実施形態を含むことができる。
【0057】
第13の実施形態は、カチオン性ポリマーがε-ポリ-L-リジンを含む、第12の実施形態を含むことができる。
【0058】
第14の実施形態は、約1~約200重量ppmのカチオン性ポリマーを含む、第8の実施形態を含むことができる。
【0059】
第15の実施形態は、約5~約50重量ppmのカチオン性ポリマーを含む、第8の実施形態を含むことができる。
【0060】
第16の実施形態は、カチオン性ポリマーが約1から約100kDaの範囲の分子量を有する、第8の実施形態を含むことができる。
【0061】
第17の実施形態では、化学機械研磨組成物は、水性液体キャリアと、液体キャリアに溶解したコロイダルシリカ研削粒子と、可溶性鉄含有触媒と、可溶性鉄含有触媒に結合した安定剤と、アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーであって、ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンうちのの少なくとも1つを含むカチオン性ポリマーと、を含み、組成物は約1~約5の範囲のpHを有する。
【0062】
第18の実施形態は、カチオン性ポリマーがポリリジンである、第17の実施形態を含むことができる。
【0063】
第19の実施形態では、タングステン層を含む基板を化学機械研磨する方法は、(a)基板を、(i)水性液体キャリアと、(ii)液体キャリアに分散した研削粒子と、(iii)鉄含有促進剤と、(iv)アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーと、を含む研磨組成物と接触させることと、(b)研磨組成物を基板に対して動かすことと、(c)基板を研削して基板からタングステンの一部を除去し、それにより基板を研磨することと、を含む。
【0064】
第20の実施形態は、研削粒子が少なくとも10mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカを含む、第19の実施形態を含むことができる。
【0065】
第21の実施形態は、(i)鉄含有促進剤が、可溶性鉄含有触媒を含み、(ii)研磨組成物が、可溶性鉄含有触媒に結合した安定剤をさらに含み、安定剤が、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、第19または第20の実施形態を含むことができる。
【0066】
第22の実施形態は、(i)研磨組成物が、過酸化水素酸化剤をさらに含み、(ii)研磨組成物は約1.0~約5.0の範囲のpHを有する、第19~第21の実施形態のいずれか1つを含むことができる。
【0067】
第23の実施形態は、カチオン性ポリマーがポリリジン、ポリアルギニン、およびポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、第19~第22の実施形態のいずれか1つを含むことができる。
【0068】
第24の実施形態は、カチオン性ポリマーがポリリジンを含む、第23の実施形態を含むことができる。
【0069】
第25の実施形態は、約1~約200重量ppmのカチオン性ポリマーを含む、第23の実施形態を含むことができる。
【0070】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0071】
実施例1
使用直前に水で2:1に希釈される濃縮物として、9つの研磨組成物(対照AおよびBならびに実施例1A、1B、1C、1D、1E、1F、および1G)を調製した。組成物1A~1Gには、さまざまな濃度のε-ポリ-L-リジン(30~3000重量ppmの範囲)が含まれていた。濃縮コロイダルシリカ(Akzo Nobel、Fuso、およびNalcoから市販されているものなど)を、マロン酸、硝酸第二鉄、TBAH(水酸化テトラブチルアンモニウム)、適切な量のε-ポリ-L-リジン、およびKathon(登録商標)殺生物剤を含む混合物に添加することにより9つの研磨組成物の各々を調製した。コロイダルシリカの平均粒径は120nmであった。対照Aにはε-ポリ-L-リジンは含まれていなかった。対照Bには、ε-ポリ-L-リジンの代わりに3000重量ppmのリジンが含まれていた。9つの研磨組成物の各々は、2700重量ppmのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、81重量ppmのマロン酸、3.7重量ppmの硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)、7.5重量パーセントのコロイダルシリカおよび15重量ppmのKathon LXを含んでいた。硝酸を使用してpHを3.05に調整した。ε-ポリ-L-リジンの濃度は、以下により詳細に記載されるように変化した。
【0072】
上述の9つの研磨組成物の各々のタングステンのエッチング速度を評価した。この実施例は、タングステンのエッチング速度に対するε-ポリ-L-リジンの効果を示している。各研磨組成物のタングステンのエッチング速度を取得するために、組成物を最初に1部の研磨組成物を2部の脱イオン水に希釈した。次いで、研磨組成物を45℃に加熱し、その後、過酸化水素を0.5重量パーセントの濃度まで添加した。温度が45℃に戻るのを5分間待った後、タングステン層を有する2インチのウェーハを5分間研磨組成物に(タングステン側を上にして)浸した。タングステン除去速度は、研磨組成物への浸漬の前後に行われた抵抗測定により決定された。
【0073】
タングステンのエッチング速度を表2に示す。対照Aには、ε-ポリ-L-リジンまたはリジンは含まれていなかった。対照Bには、ε-ポリ-L-リジンは含まれておらず、重量で1000ppmのリジンが含まれていた(希釈後)。組成物1A~1Gには、表2に示すとおり、10ppm(1A)、25ppm(1B)、50ppm(1C)、100ppm(1D)、250ppm(1E)、500ppm(1F)、および1000ppm(1G)のε-ポリLリジンが含まれていた。表2に記載されているすべてのε-ポリ-L-リジン濃度は、脱イオン水で2:1に希釈した後のものである。
【表2】
【0074】
表2に示した結果から明らかなように、50~1000重量ppmの範囲のε-ポリ-L-リジン濃度を含む組成物1C~1Gは、対照A(抑制剤なし)の20分の1以下および対照B(1000重量ppmのリジン)の4分の1以下のWエッチング速度を示した。
【0075】
実施例2
24の研磨組成物が調製された(実施例2A~2X)。調製された研磨組成物は、添加剤の種類と濃度を除いて同一であった。タングステンのエッチング速度は、研磨組成物ごとに測定され、添加剤の効果を評価した。タングステンのエッチング速度は、実施例1で上述したのと同じ手順を使用して測定された(過酸化水素も実施例1で説明したように0.5重量パーセントの濃度まで加えられた)。
【0076】
各研磨組成物は、濃縮コロイダルシリカ(Fuso(登録商標)PL-2)をマロン酸、硝酸第二鉄、およびKathon(登録商標)殺生物剤を含む混合物に加えて、コロイダルシリカ濃度が3.0重量パーセントになるように調製した。各研磨組成物は、25重量ppmのマロン酸、12重量ppmの硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)、および15重量ppmのKathon LXを含んでいた。硝酸を使用してpHを2.5に調整した。次いで、エッチング試験の前に、適切な添加化合物を研磨組成物に添加した。添加剤濃度は、50または100重量ppmであった。
【0077】
表3に、各研磨組成物の添加剤化合物と対応する濃度、および測定されたタングステンのエッチング速度を列挙する。表3に示す結果から明らかなように、ε-ポリリジンおよびα-ポリリジン添加剤を含む研磨組成物2A/2B、2O/2P、および2Q/2Rは、非常に低いタングステン静的エッチング速度を示した。さらに、ポリヒスチジンおよびポリアルギニン添加剤を含む研磨組成物2S/2Tおよび2W/2Xも、非常に低いタングステン静的エッチング速度を示した。
【表3】
【0078】
実施例3
この実施例では、3つの研磨組成物について、タングステン研磨速度および線陥凹(ディッシング)を評価した。この実施例は、タングステンCMP操作中のディッシングに対するポリリジンの抑制効果を示している。CMP組成物は、実施例1に関して上述したものと同様の手順を使用して得られた(濃縮コロイダルシリカがマロン酸と硝酸第二鉄を含む混合物に添加された)。3つの研磨組成物の各々は、445重量ppmのマロン酸、206重量ppmの硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)、0.33重量パーセントのカチオン性アミノシラン処理コロイダルシリカ(米国特許第7,994,057号および同第9,028,572号に開示されているように調製)、15重量ppmのKathon LXおよび2.0重量パーセントの過酸化水素をpH2.3(pHは硝酸を使用して調整)で含んでいた。処理されたコロイダルシリカは120nmの平均粒径を有していた。対照C研磨組成物は、さらなる成分を含まなかった。対照D研磨組成物は、25重量ppmのカチオン性ポリマーポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)を含んでいた。研磨組成物3Aは、25重量ppmのε-ポリ-L-リジンを含んでいた。
【0079】
タングステン研磨速度は、ブランケットタングステンウェーハを研磨することで取得された。線陥凹値は、チタン/窒化チタン複合バリア層を備えた2k Silyb 854タングステンパターン付きウェーハ(Silyb Wafer Servicesから入手可能)を研磨することによって得られた。Mirra(登録商標)CMP研磨ツールとNexPlanar(登録商標)E6088研磨パッドを使用して、2.0psiのダウンフォース、115rpmのプラテン速度、121rpmのヘッド速度でウェーハを研磨した。スラリー流量は90ml/分であった。各パターン付きウェーハは、光学エンドポイントに加えて、さらに30%の過剰研磨まで研磨された。線陥凹値は、原子間力顕微鏡(AFM)プロフィロメーター測定を使用して1×1ミクロンの線特徴(line feature)全体で取得した。タングステン研磨速度と線陥凹値を表4に示す。
【表4】
【0080】
表4に示した結果から明らかなように、ε-ポリ-L-リジンを使用すると、線陥凹が対照Cと比較してほぼ4倍、対照Dと比較してほぼ3倍減少する。
【0081】
実施例4
この実施例では、9つの研磨組成物について、タングステン研磨速度と線陥凹(ディッシング)を評価した。この実施例は、タングステンCMP操作中のディッシングに対するカチオン性ポリアミノ酸の効果を示している。CMP組成物は、実施例1に関して上述したものと同様の手順を使用して得られた(濃縮コロイダルシリカがマロン酸と硝酸第二鉄を含む混合物に添加された)。各研磨組成物は、445重量ppmのマロン酸、206重量ppmの硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)、0.33重量パーセントのカチオン性アミノシラン処理コロイダルシリカ(米国特許第7,994,057号および同第9,028,572号に開示されているように調製)、15重量ppmのKathon LXおよび2.0重量パーセントの過酸化水素をpH2.3(pHは硝酸を使用して調整)で含んでいた。処理されたコロイダルシリカは120nmの平均粒径を有していた。
【0082】
対照C研磨組成物は、さらなる成分を含まなかった。対照E研磨組成物は500重量ppmのL-リジンを含んでいた。他の研磨組成物は、すべての化合物が等モル量のモノマーで存在するように用量が調整されたポリマー(または抑制剤)を含んでいた。対照F研磨組成物は、8.6重量ppmのα-ポリ-L-アスパラギン酸を含んでいた。対照G研磨組成物は、9.3重量ppmのα-ポリ-L-グルタミン酸を含んでいた。
【0083】
研磨組成物4A~4Eは、10重量ppmのε-ポリ-L-リジン(4A)、10重量ppmのα-ポリ-D-リジン(4B)、11.5重量ppmのα-ポリ-L-アルギニン塩酸塩(4C)、10重量ppmの4700ダルトンMWのα-ポリ-L-リジン塩酸塩(4D)、および12.5重量ppmの66,000Da MWのα-ポリ-L-リジン臭化水素酸塩(4E)を含んでいた。表5は、対照F、対照G、および組成物4A~4Eのポリアミノ酸pKa値を示している。これらの値は、表1から取得された。組成物4Bおよび4Eの値は、表1に示されている組成物4Dの値と同一であると想定された。
【0084】
タングステン研磨速度は、ブランケットタングステンウェーハを研磨することで取得された。線陥凹値は、窒化チタンバリア層を備えた2k Silyb 854タングステンパターン付きウェーハ(Silyb Wafer Servicesから入手可能)を研磨することにより取得された。Mirra(登録商標)CMP研磨ツールとNexPlanar(登録商標)E6088研磨パッドを使用して、2.0psiのダウンフォース、115rpmのプラテン速度、121rpmのヘッド速度でウェーハを研磨した。スラリー流量は90ml/分であった。各パターン付きウェーハは、光学的エンドポイントに加えてさらに30%の過剰研磨まで研磨された。線陥凹値は、原子間力顕微鏡(AFM)プロフィロメーター測定を使用して1×1ミクロンの線特徴全体で取得された。タングステン研磨速度と線陥凹値を表5に示す。
【表5】
【0085】
表5に示した結果から明らかなように、pK<5の非カチオン性ポリアミノ酸(対照FとG)の使用は、抑制剤を含まない例(対照C)と比較してタングステン線陥凹を有意に減少させない。一方、非重合アミノ酸L-リジン(対照E)は線陥凹を研磨組成物4B~4Eと同程度に減少させるが、タングステン除去速度は50%以上減少することが観察された。対照Eとは対照的に、研磨組成物4A~4Eは、タングステン研磨速度の対応する低下なしに、対照Cと比較して、線陥凹の有意な減少を達成した。最良の例では、ε-ポリ-L-リジンを使用すると、タングステンの突出(負の陥凹)が生じ、これは、多くの統合スキームにとって非常に望ましい特性である。実施例4B、4D、および4Eを比較すると、ポリマーの分子量と立体化学の変化はタングステンCMPの性能に大きく影響しないことがさらに実証される。
【0086】
実施例5
この実施例では、5つの研磨組成物について、タングステン研磨速度と線陥凹(ディッシング)を評価した。この実施例は、タングステンCMP操作中のタングステン研磨速度とディッシングに対するε-ポリ-L-リジン濃度の影響を示している。CMP組成物は、実施例1に関して上述したものと同様の手順を使用して得られた(濃縮コロイダルシリカがマロン酸と硝酸第二鉄を含む混合物に添加された)。各研磨組成物は、445重量ppmのマロン酸、206重量ppmの硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)、0.33重量パーセントのカチオン性アミノシラン処理コロイダルシリカ(米国特許第7,994,057号および同第9,028,572号に開示されているように調製)、15重量ppmのKathon LXおよび2.0重量パーセントの過酸化水素をpH2.3(pHは硝酸を使用して調整)で含んでいた。処理されたコロイダルシリカは120nmの平均粒径を有していた。対照C研磨組成物は、さらなる成分を含まなかった(すなわち、ε-ポリ-L-リジンを含まなかった)。研磨組成物5A~5Dは、表6に示すように、ε-ポリ-L-リジン12ppm(5A)、25ppm(5B)、50ppm(5C)、および75ppm(5D)を含んでいた。
【0087】
タングステン研磨速度は、ブランケットタングステンウェーハを研磨することで取得された。線陥凹値は、窒化チタンバリア層を備えた2k Silyb 854タングステンパターン付きウェーハ(Silyb Wafer Servicesから入手可能)を研磨することにより得られた。Mirra(登録商標)CMP研磨ツールとNexPlanar(登録商標)E6088研磨パッドを使用して、2.0psiのダウンフォース、115rpmのプラテン速度、121rpmのヘッド速度でウェーハを研磨した。スラリー流量は90ml/分であった。各パターン付きウェーハは、光学的エンドポイントに加えてさらに30%の過剰研磨まで研磨された。線陥凹値は、原子間力顕微鏡(AFM)プロフィロメーター測定を使用して1×1ミクロンの線特徴全体で取得された。タングステン研磨速度と線陥凹値を表5に示す。
【表6】
【0088】
表6に示した結果から明らかなように、ε-ポリ-L-リジンの添加により、タングステン線陥凹が大幅に減少する。この特定の例示配合物では、25ppm以下のε-ポリ-L-リジン濃度を有する組成物が好ましい。
【0089】
実施例6
この実施例では、タングステン、TEOS、およびパターン化フィールド酸化物研磨速度、ならびに線浸食および線陥凹(ディッシング)を2つのバフ研磨組成物について評価した。この実施例は、タングステンバフCMP操作中の線浸食の低減におけるε-ポリ-L-リジンの効果を示している。2つの研磨組成物の各々は、100重量ppmのマロン酸、54重量ppmの硝酸第二鉄九水和物(Fe(NO・9HO)、2重量パーセントのカチオン性コロイダルシリカ(同一出願人による米国特許第9,422,456号の実施例13に開示されるように調製)、15重量ppmのKathon LXおよび0.80重量パーセントの過酸化水素をpH4.4(pHは硝酸を使用して調整)で含んでいた。研磨組成物7Aは、追加の1600ppmのグリシンも含有し、一方研磨組成物7Bは、追加の25ppmのε-ポリ-L-リジンを含有した。
【0090】
タングステンとTEOSの研磨速度は、ブランケットタングステンとTEOSウェーハを研磨することで取得された。Applied Materials 200mm Mirra(登録商標)研磨ツールとNexPlanar(登録商標)E6088研磨パッドを使用して2k Silyb 854タングステンパターン付きウェーハを研磨することにより、パターン酸化物フィールド除去速度、浸食値、および線陥凹値を取得した。Silyb 854タングステンパターン付きウェーハは、Cabot Microelectronicsから入手可能な市販のW8051(2% H2O2)バルクスラリーで事前研磨(調製)された。タングステンバフ研磨条件は次のとおり、ダウンフォース=2.5psi、プラテン速度=100rpm、ヘッド速度=101rpm、スラリー流量=50mL/分であった。表7に示すパターン研磨時間は、ブランケットTEOS除去速度に基づいており、パターンの500ÅのTEOS除去を対象としている。浸食値および線陥凹値は、原子間力顕微鏡(AFM)プロフィロメーター測定を使用して3×1ミクロン線特徴全体で取得された。ブランケットおよびパターン研磨の結果を表7に示す。
【表7】
【0091】
表7に示した結果から明らかなように、ε-ポリ-L-リジンの添加は、非常に好ましい線の突出を維持しながら、酸化物浸食を著しく減少させる。
【0092】
本明細書に引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み入れられることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」という用語および同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「備える」、「有する」、「含む」および「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各別個の値を個々に参照する簡略方法として有用であることを単に意図しており、それぞれの別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書において提供される任意のおよびすべての例、または例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須であると主張されていない任意の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0094】
本発明を行うために本発明者らに既知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実行されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変形および同等物を含む。その上、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。