(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】散布型粉末消臭剤組成物、散布型粉末消臭剤組成物製品及び消臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20230428BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20230428BHJP
C01D 7/00 20060101ALI20230428BHJP
A61L 2/23 20060101ALI20230428BHJP
B65D 83/06 20060101ALI20230428BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
A61L9/01 B
C01B33/40
C01D7/00 Z
A61L2/23
B65D83/06 E
A61L101:02
(21)【出願番号】P 2020525767
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2019024280
(87)【国際公開番号】W WO2019244928
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018119071
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
(72)【発明者】
【氏名】坪井 靖之
(72)【発明者】
【氏名】小倉 英史
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-286430(JP,A)
【文献】特開平11-286431(JP,A)
【文献】特開平11-286429(JP,A)
【文献】特開2003-049396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
C01F 1/00-17/38
C01B 33/00-33/193
C01D 7/00-7/42
A61L 2/00-2/28;11/00-12/14
B65D 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性無機粉体(A)(ただし、ハイドロタルサイト類を除く。)と、飽和水溶液のpHが7~12である水溶性無機金属塩化合物(B)と
、ハイドロタルサイト類(C)と、を含有し、
前記(A)成分はタルクを含み、
前記(A)成分の総質量に対する前記タルクの含有量は50質量%以上であ
り、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が1~8であり、
前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が1.5~15であり、
前記(A)成分の含有量は、散布型粉末消臭剤組成物の総質量に対して30~95質量%ある、
散布型粉末消臭剤組成物。
【請求項2】
消臭剤、除菌剤、抗菌剤、冷感剤、及び温感剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物(D)をさらに含有する、請求項
1に記載の
散布型粉末消臭剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の含有量は、散布型粉末消臭剤組成物の総質量に対して5~70質量%である、請求項1又は2に記載の散布型粉末消臭剤組成物。
【請求項4】
散布型粉末消臭剤組成物の総質量に対して、粒子径50μm以下の粒子を30質量%以上100質量%未満で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の散布型粉末消臭剤組成物。
【請求項5】
嵩密度は、0.3~1.0g/cm
3
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の散布型粉末消臭剤組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の
散布型粉末消臭剤組成物と、容器とを有し、前記容器は、前記粉末消臭剤組成物を収容している、
散布型粉末消臭剤組成物製品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の
散布型粉末消臭剤組成物を、処理対象物に散布することを含む、消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末消臭剤組成物、粉末消臭剤組成物製品、及び消臭方法に関する。
本願は、2018年6月22日に、日本に出願された特願2018-119071号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
臭気に対する意識の高まりから、消臭を目的としたケア用品が使用されている。ケア用品としては、例えば、液体の消臭剤組成物をトリガースプレー容器又はエアゾール容器に封入した製品が汎用されている。
しかし、液体の消臭剤組成物は、革製品又は繊維製品等の処理対象物に付着した臭気に対する消臭効果が低かった。
こうした問題に対して、靴等の消臭を目的とした粉末消臭剤組成物が提案されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-276560号公報
【文献】特開昭63-101201号公報
【文献】特開平3-57455号公報
【文献】特開平6-218031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の粉末消臭剤組成物は、消臭効果を未だ満足できるものではなかった。加えて、処理対象物の内部や表面に対して、速やかに拡散するように、粉末消臭剤組成物には、使用時の高い流動性が求められる。さらに、粉末消臭剤組成物には、保管中に固化しにくいことが求められる。
そこで、本発明は、固化しにくく、流動性に優れ、かつ消臭効果をより高められる粉末消臭剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1]水不溶性無機粉体(A)(ただし、ハイドロタルサイト類を除く。)と、飽和水溶液のpHが7~12である水溶性無機金属塩化合物(B)とを含有し、
前記(A)成分はタルクを含み、
前記(A)成分の総質量に対する前記タルクの含有量は50質量%以上である、粉末消臭剤組成物。
[2][(A)成分の質量]/[(B)成分の質量]で表される質量比は1~10である、[1]に記載の粉末消臭剤組成物。
[3]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の粉末消臭剤組成物。
[4]消臭剤、除菌剤、抗菌剤、冷感剤、及び温感剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物(D)をさらに含有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[5]前記(A)成分がさらにゼオライト、シリカ、銀担持ゼオライト、酸化亜鉛、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の多孔質物質を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[6][タルクの質量]/[多孔質物質の質量]で表される質量比は、5~100が好ましく、5~70がより好ましい、[5]に記載の粉末消臭剤組成物。
[7][(A)成分の質量]/[(B)成分の質量]で表される質量比は1~10が好ましく、1.2~8がより好ましく、1.5~6がさらに好ましい、[1]~[6]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[8]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
[(A)成分の質量]/[(C)成分の質量]で表される質量比は1~20が好ましく、1.2~17がより好ましく、1.5~15がさらに好ましい、[1]~[7]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[9]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
[(B)成分の質量]/[(C)成分の質量]で表される質量比は1~10が好ましく、1.2~8がより好ましく、1.5~6がさらに好ましい、[1]~[8]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[10]タルクの平均粒子径は、0.1~500μmが好ましく、1~250μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましく、10~75μmがさらに好ましく、10~50μmが特に好ましい、[1]~[9]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[11]前記(A)成分の平均粒子径は、0.1~500μmが好ましく、1~250μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましく、10~75μmがさらに好ましい、[1]~[10]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[12]前記(B)成分の平均粒子径は、0.1~500μmが好ましく、1~400μmがより好ましく、10~300μmがさらに好ましく100~300μmがさらに好ましい、[1]~[11]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[13]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
前記(C)成分の平均粒子径は、1~500μmが好ましく、1~250μmがより好ましい、[1]~[12]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[14]平均粒子径が、1~500μmが好ましく、10~250μmが好ましく、10~150μmがさらに好ましい、[1]~[13]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[15][(B)成分の平均粒子径]/[(A)成分の平均粒子径]で表される粒子径比は、0.5~50が好ましく、1~20がより好ましい、[1]~[14]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[16]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
[(B)成分の平均粒子径]/[(C)成分の平均粒子径]で表される粒子径比は、0.5~20が好ましく、1~10がより好ましい、[1]~[15]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[17]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、[(C)成分の平均粒子径]/[(A)成分の平均粒子径]で表される粒子径比は、0.5~20が好ましく、1~15がより好ましい、[1]~[16]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[18]前記(A)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、30~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい、[1]~[17]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[19]前記(B)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、15~50質量%がさらに好ましい、[1]~[18]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[20]前記(A)成分と前記(B)成分との合計の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、50質量%以上100質量%が好ましく、70質量%以上100質量%未満がより好ましく、70~95質量%がさらに好ましい、[1]~[19]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[21]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
前記(C)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%がさらに好ましい、[1]~[20]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[21]消臭剤、除菌剤、抗菌剤、冷感剤、及び温感剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物(D)をさらに含有し、
前記(D)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、0.001~20質量%が好ましく、0.001~10質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい、[1]~[20]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[22]前記(A)成分が、(A1)成分、(A2)成分、及び(A3)成分からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記(A1)成分が、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、シリカ、ゼオライト、焼セッコウ、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、酸化チタン、酸化鉄、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記(A2)成分が、酸化亜鉛、鉛白、リトポン、二酸化チタン、及び硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記(A3)成分が、銀担持ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化クロム、及びセラミックパウダーからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[21]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[23]前記(B)成分が、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、及びリン酸二水素カリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[22]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[24]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
前記(C)成分が、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイトの焼成物からなる無機化合物、及び前記無機化合物が酸性基及び塩基性基を有する金属塩に担持された金属複合体からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[23]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[25]ハイドロタルサイト類(C)をさらに含有し、
前記(C)成分が、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの固溶体であり、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの質量比は、90:10~20:80が好ましく、80:20~30:70がより好ましく、70:30~40:60がさらに好ましい、[1]~[24]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[26]消臭剤、除菌剤、抗菌剤、冷感剤、及び温感剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物(D)をさらに含有し、
前記(D)成分が、高度分岐環状デキストリン、シクロデキストリン、塩化ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ダイクロサン、トリクロサン、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン、塩酸クロロヘキシジン、1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノール、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、N-アルキル-p-メンタン-3-カルボキサミド、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール(3-ヒドロキシブタン酸メンチル)、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N-メチル-2,2-イソプロピルメチル-3-メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、カプサイシン、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4-(l-メントキシメチル)-2-(3’-メトキシ-4’-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール-I、サンショール-II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン、およびスピラントールからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[25]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[27] 粉末消臭剤組成物の総質量に対し、粒子径が50μm以下の粒子を30質量以上100質量%未満で含むことが好ましく、50~90質量%で含むことがより好ましく、70~90質量%で含むことがさらに好ましい、[1]~[26]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
[28]嵩密度は、0.3~1.0g/cm3が好ましく、0.5~0.8g/cm3がより好ましく、0.6~0.75g/cm3がさらに好ましい、[1]~[27]のいずれか一項に記載の粉末消臭剤組成物。
【0006】
[29][1]~[28]のいずれかに記載の粉末消臭剤組成物と、容器とを有し、前記容器は、前記粉末消臭剤組成物を収容している、粉末消臭剤組成物製品。
[30]前記容器は、上端に開口部を有する容器本体と、前記開口部を塞ぐ中栓とを有し、
前記中栓は、前記容器本体の内外を連通する1つ以上の貫通孔を有し、
前記容器を倒立し、前記容器本体内の前記粉末消臭剤組成物を前記貫通孔から前記容器本体外へ排出する、[29]に記載の粉末消臭剤組成物製品。
【0007】
[31][1]~[28]のいずれかに記載の粉末消臭剤組成物を、処理対象物に散布することを含む、消臭方法
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉末消臭剤組成物によれば、固化しにくく、流動性に優れ、かつ消臭効果をより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る容器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(粉末消臭剤組成物)
本発明の粉末消臭剤組成物は、(A)~(B)成分を含有する。
本明細書において「粉末」とは、粉末消臭剤組成物を構成する粒子が0.1~1000μmの粒子径を有することを意味する。
粉末消臭剤組成物の含水量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。なお、含水量の下限値は、通常、0質量%である。
【0011】
粉末消臭剤組成物の平均粒子径は、1~500μmが好ましく、10~250μmが好ましく、10~150μmがさらに好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であれば、粉体消臭剤組成物が舞い上がるのを抑制できる。平均粒子径が上記上限値以下であれば、比表面積が大きくなるため、粉末消臭剤組成物の消臭効果をさらに高められる。さらに、粉末消臭剤組成物で処理対象物を処理した後に、処理対象物の感触がざらざらしにくく、処理後の処理対象物の使用感を良好にできる。
平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(BECKMAN COULTER社製 LS 13 320)により測定される体積平均粒子径(D50)である。
【0012】
粉末消臭剤組成物の嵩密度は、0.3~1.0g/cm3が好ましく、0.5~0.8g/cm3がより好ましく、0.6~0.75g/cm3がさらに好ましい。嵩密度が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物の舞い上がりを抑制できる。嵩密度が上記上限値以下であれば、使用時の体積が大きくなり、消臭対象物の全体に粉が行きわたるため、消臭効果がさらに高まる。
嵩密度は、JIS K3362:1998に準拠して測定される。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分は、ハイドロタルサイト類を除く水不溶性無機粉体である。(A)成分を含有することで、粉末消臭剤組成物が固化するのを抑制できる。
「水不溶性無機粉体」とは、20℃の水に対する溶解度が0.5g/L以下の無機粉体である。
(A)成分としては、例えば、粉末鉱物((A1)成分)、無機顔料((A2)成分)、機能性無機粉末及びその他無機粉末((A3)成分)が挙げられる。(A)成分は、タルクを50質量%以上含む。
(A1)成分としては、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、シリカ、ゼオライト、焼セッコウ、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、酸化チタン、酸化鉄、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
(A2)成分としては、酸化亜鉛、鉛白、リトポン、二酸化チタン、硫酸バリウム等が挙げられる。
(A3)成分としては、銀担持ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化クロム、セラミックパウダー等が挙げられる。
【0014】
(A)成分は、タルクを含む。タルク(和名:滑石)は含水珪酸マグネシウム(Mg3Si4O10(OH)2)からなる層状鉱物である。タルクは、粉砕されると白色又は灰色をした粉体となる。
(A)成分中のタルクの含有量は、(A)成分100質量%に対して、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%でもよい。(A)成分中のタルクの含有量が上記下限値以上であれば、流動性に優れる。具体的には、(A)成分中のタルクの含有量は、(A)成分100質量%に対して、50~100質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、60~98質量%がさらに好ましい。
これらの(A)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0015】
(A)成分を2種以上組み合わせる場合、タルクと多孔質物質を組み合わせることが好ましく、また、多孔質物質は金属を担持していてもよい。多孔質物質としては、ゼオライト、シリカ、銀担持ゼオライト、酸化亜鉛、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。タルクと多孔質物質との具体的組み合わせとしては、タルクとゼオライトとの組み合わせ、タルクとシリカとの組み合わせ、タルクとゼオライトとシリカとの組み合わせ、タルクと銀担持ゼオライトとの組み合わせ、タルクとゼオライトと銀担持ゼオライトの組み合わせ、タルクと銀担持ゼオライトとシリカとの組み合わせ、タルクと酸化亜鉛との組み合わせ、タルクと炭酸カルシウムとの組み合わせ等があげられる。中でも、(A)成分としては、タルクとゼオライトの組み合わせ、タルクと銀担持ゼオライトとの組み合わせ、タルクとゼオライトと銀担持ゼオライトとの組み合わせ、タルクと銀担持ゼオライトとシリカとの組み合わせが好ましく、タルクと銀担持ゼオライトとの組み合わせ、タルクとゼオライトと銀担持ゼオライトとの組み合わせがより好ましい。これらの組み合わせであれば、消臭効果のさらなる向上を図れる。
タルクと多孔質物質を組み合わせる場合、[タルクの質量]/[多孔質物質の質量]で表される質量比は、5~100が好ましく、5~70がより好ましい。前記質量比が上記範囲内であれば、消臭効果と流動性との両方を向上しやすい。
【0016】
タルクの平均粒子径は、0.1~500μmが好ましく、1~250μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましく、10~75μmがさらに好ましく、10~50μmが特に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、固化を抑制しやすくなる。
【0017】
(A)成分の平均粒子径は、例えば、0.1~500μmが好ましく、1~250μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましく、10~75μmがさらに好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が舞い上がるのを抑制できる。平均粒子径が上記上限値以下であれば、比表面積が大きくなるため、粉末消臭剤組成物の消臭効果をさらに高められる。さらに、粉末消臭剤組成物で処理した処理対象物において、ざらざらとした不快感を抑制できる(即ち、処理後の処理対象物の使用感を良好にできる)。
【0018】
粉末消臭剤組成物中の(A)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量(100質量%)に対して、30~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、粉体消臭剤組成物をさらに固化しにくくできる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、流動性をさらに高められる。
【0019】
<(B)成分>
(B)成分は、水溶性無機金属塩化合物である。(B)成分を含有することで、粉末消臭剤組成物が高い消臭効果を発揮する。加えて、(B)成分を含有することで、粉末消臭剤組成物の流動性を高められる。
「水溶性無機粉体」とは、20℃の水に対する溶解度が1g/L超の無機粉体である。
【0020】
(B)成分の飽和水溶液のpHは、7~12であり、7.5~11が好ましい。飽和水溶液のpHが上記範囲内であれば、粉末消臭剤組成物が消臭効果を発揮できる。pHは、測定対象を25℃とし、pHメーター(製品名:HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)により測定される値である。
【0021】
(B)成分としては、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。これらの(B)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0022】
(B)成分の平均粒子径は、例えば、0.1~500μmが好ましく、1~400μmがより好ましく、10~300μmがさらに好ましく100~300μmがさらに好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められ、固化をより良好に抑制できる。平均粒子径が上記上限値以下であれば、比表面積が大きくなるため、粉末消臭剤組成物の消臭効果をさらに高められ、使用感を良好にできる。
【0023】
粉末消臭剤組成物中の(B)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、15~50質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、消臭効果をさらに高め、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに良好に抑制できる。
【0024】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう)は、1~10が好ましく、1.2~8がより好ましく、1.5~6がさらに好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに抑制しやすい。A/B比が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。
【0025】
[(B)成分の平均粒子径]/[(A)成分の平均粒子径]で表される粒子径比(以下、「B粒子径/A粒子径比」ともいう)は、0.5~50が好ましく、1~20がより好ましい。B粒子径/A粒子径比が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに抑制しやすい。B粒子径/A粒子径比が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。
【0026】
粉末消臭剤組成物中の(A)成分と(B)成分との合計量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、70~95質量%がさらに好ましい。
【0027】
<任意成分>
粉末消臭剤組成物は、(A)~(B)成分以外の任意成分を含有できる。
任意成分としては、ハイドロタルサイト類((C)成分)、消臭剤、除菌剤及び抗菌剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物((D)成分)、香料等が挙げられる。
【0028】
(C)成分は、ハイドロタルサイト類である。(C)成分を含有することで、粉末消臭剤組成物は消臭効果をさらに高められる。
本稿において、(C)成分としては、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイトの焼成物からなる無機化合物、及び前記無機化合物が酸性基及び塩基性基を有する金属塩に担持された金属複合体等が挙げられる。なかでも、ハイドロタルサイトの焼成物からなる無機化合物が好ましく、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの固溶体であることがより好ましい。
(C)成分が酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの固溶体である場合、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの質量比は、90:10~20:80が好ましく、80:20~30:70がより好ましく、70:30~40:60がさらに好ましい。
これらの(C)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0029】
(C)成分の平均粒子径は、1~500μmが好ましく、1~250μmがより好ましい。
【0030】
粉末消臭剤組成物中の(C)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物の消臭効果をさらに高められる。(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、流動性をさらに高められる。
【0031】
[(A)成分の質量]/[(C)成分の質量]で表される質量比(以下、「A/C比」ともいう)は、1~20が好ましく、1.2~17がより好ましく、1.5~15がさらに好ましい。A/C比が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに抑制しやすい。A/C比が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。
【0032】
[(B)成分の質量]/[(C)成分の質量]で表される質量比(以下、「B/C比」ともいう)は、1~10が好ましく、1.2~8がより好ましく、1.5~6がさらに好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに抑制しやすい。A/B比が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。
【0033】
[(B)成分の平均粒子径]/[(C)成分の平均粒子径]で表される粒子径比(B粒子径/C粒子径比)は、0.5~20が好ましく、1~10がより好ましい。B粒子径/C粒子径比が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに抑制しやすい。B粒子径/C粒子径比が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。
【0034】
[(C)成分の平均粒子径]/[(A)成分の平均粒子径]で表される粒子径比(以下、「C粒子径/A粒子径比」ともいう)は、0.5~20が好ましく、1~15がより好ましい。C粒子径/A粒子径比が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物が固化するのをさらに抑制しやすい。C粒子径/A粒子径比が上記上限値以下であれば、粉末消臭剤組成物の流動性をさらに高められる。
【0035】
(D)成分は、消臭剤、除菌剤、抗菌剤、冷感剤、及び温感剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である。(D)成分を含有することにより、消臭効果、除菌効果又は抗菌効果を発揮し、粉末消臭剤組成物で処理した繊維製品を着用した時に冷感や温感を付与する。
消臭剤としては、高度分岐環状デキストリン、シクロデキストリン等が挙げられる。
高度分岐環状デキストリンとしては、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度が50~10000の範囲にあるグルカンであって、内分岐環状構造部分はα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状のグルカン鎖であり、外分岐構造部分は内分岐環状構造部分に結合した非環状のグルカン鎖であるデキストリンが挙げられる。高度分岐環状デキストリンとしては、クラスターデキストリン(グリコ栄養食品株式会社製)等が挙げられる。
除菌剤又は抗菌剤としては、四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)、ダイクロサン、トリクロサン、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン、塩酸クロロヘキシジン、1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリエタノール、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
冷感剤とは、皮膚に適用することで冷感を付与する成分であり、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、N-アルキル-p-メンタン-3-カルボキサミド、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール(3-ヒドロキシブタン酸メンチル)、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N-メチル-2,2-イソプロピルメチル-3-メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、また、これら化合物を含有する植物抽出物等があげられる。
温感剤とは、皮膚に適用することで温感を付与する成分であり、カプサイシン、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4-(l-メントキシメチル)-2-(3’-メトキシ-4’-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール-I、サンショール-II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン、およびスピラントール等があげられる。
これらの(D)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0036】
粉末消臭剤組成物中の(D)成分の含有量は、粉末消臭剤組成物の総質量に対して、0.001~20質量%が好ましく、0.001~10質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であれば、粉末消臭剤組成物の消臭効果をさらに高めたり、抗菌・除菌効果を付与したり、粉末消臭剤組成物で処理した処理対象物を着用した時に冷感や温感を感じることができる。(D)成分の含有量が上記上限値以下であれば、吸湿を抑え、固化をより良好に抑制できる。
(D)成分は、粉体、液体のいずれでもよい。粉末消臭剤組成物への配合のし易さ、また、(D)成分がメントールやカプサイシン等の冷感剤又は温感剤の場合、冷感・温感を感じるまでの速さの点で、粉体が好ましい。
(D)成分がメントールやカプサイシン等の冷感剤又は温感剤の場合、粉末消臭剤組成物は、粒子径の小さい粒子を一定量以上含むことで、粉末消臭剤組成物で処理した処理対象物を着用した時に冷感や温感を感じるまでの時間が短くなり、効果の即効性が付与される。
【0037】
粉末消臭剤組成物は、粉末消臭剤組成物の総質量に対し、粒子径が50μm以下の粒子を30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。粉末消臭剤組成物は、組成物全体の体積に対し、粒子径が50μm以下の粒子は100質量%未満で含むことが好ましく、90質量%以下がより好ましい。具体的には、粉末消臭剤組成物は、粉末消臭剤組成物の総質量に対し、粒子径が50μm以下の粒子を30質量以上100質量%未満で含むことが好ましく、50~90質量%で含むことがより好ましく、70~90質量%で含むことがさらに好ましい。粒子径が50μm以上の粒子が上記下限値以上であると、粉末消臭剤組成物の流動性を向上することで均一に広がりやすくなり、冷感や温感を均一に感じやすくなる。ここで粒子径及び特定の粒子径を有する粒子の量は、JIS K3362:2008に準拠して、ふるい分け方によって測定できる。
【0038】
メントールやカプサイシン等の冷感剤又は温感剤は皮膚に触れることで、冷感や温感を感じさせるものである。粉末消臭剤組成物が粒子径の小さい粒子を一定量以上含むことで、冷感剤又は温感剤が皮膚に触れやすくなり、冷感又は温感を感じるまでの時間が短くなり、即効性を向上しやすくなると考えられる。
【0039】
香料としては、粉末香料又は液体香料のいずれでもよい。香料の成分は、所望する香気を勘案して適宜決定される。
粉末消臭剤組成物中の香料の含有量は、香料の種類や所望する香りの強さ等を勘案して適宜決定される。香料が液体香料の場合、粉末消臭剤組成物の総質量に対する液体香料の含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
香料が粉末香料の場合、粉末消臭剤組成物の総質量に対する粉末香料の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0040】
(製造方法)
粉末消臭剤組成物は、例えば、以下の製造方法により得られる。
例えば、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて任意成分を粉体混合により混合する方法が挙げられる。この製造方法によれば、(A)成分、(B)成分等の各成分が独立した粒子で混在する。
また、例えば、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて任意成分の一部又は全部を造粒する方法が挙げられる。造粒方法としては、特に限定されず、従来公知の流動層造粒、乾式造粒、湿式造粒等が挙げられる。この製造方法によれば、各成分の一部又は全部が混在した粒子を有する。
なお、(D)成分が液体である場合、(D)成分を噴霧することで、(D)成分を粉末消臭剤組成物に配合できる。
また、香料が液体である場合、香料を噴霧することで、香料を粉末消臭剤組成物に配合できる。
【0041】
粉末消臭剤組成物は、容器に収容されて、粉末消臭剤組成物製品(すなわち、粉末消臭剤組成物、及び容器を有し、粉末消臭剤組成物が容器に収容された製品)となる。
容器としては、例えば、スタンディングパウチ、注出孔を有するボトル、広口瓶、缶等、粉体を収容する公知の容器が挙げられる。中でも、注出孔を有するボトルが好ましい。
容器の一例について、図面を参照して説明する。
図1の容器1は、容器本体10と、蓋体20とを有する。
容器本体10は、有底円筒状の胴部12と、胴部12の上端から上方に向かい窄まる肩部14と、肩部14の上端から上方に延びる円筒状の口部16とを有する。口部16の上端には開口部11が形成されている。口部16の外周面には、ねじ山19が形成されている。
蓋体20は、中栓22と、上蓋24とを有する。中栓22と上蓋24とは、ヒンジ部23で接続されている。上蓋24は、ヒンジ部23を軸にして、F方向に回動できる。
中栓22は、円形の天壁部21aと、天壁部21aの周縁から下方に延びる円筒状の側壁部21bとを有する。側壁部21bの内面には、ねじ溝29が形成されている。ねじ溝29と、ねじ山19とが螺合して、中栓22が口部16に装着されている。即ち、中栓22は、開口部11を塞いでいる。
天壁部21aの下面(即ち、容器本体10の内部に向く面)には、円筒状の整流部28が設けられている。
天壁部21aの上面には、円筒状の注出部26が突き出している。注出部26は、整流部28の内方に位置している。注出部26の内部は、注出孔(貫通孔)27となっている。注出孔27は、容器本体10の内外を連通している。
上蓋24の内面には、円柱状の突起部25が設けられている。上蓋24と中栓22とを嵌め合わせた時に、突起部25は注出孔27に嵌め合わされる。
【0042】
容器1の内容量は、特に限定されないが、50~200mLが好ましく、60~100mLがより好ましい。また、胴部12の外径Rは、30~50mmが好ましく、35~40mmがより好ましい。このような大きさであれば、取り扱いが容易である。
【0043】
注出孔27の内径rは、1~10mmが好ましく、2~8mmがより好ましく、3~7mmがさらに好ましい。内径rが上記範囲内であれば、適量の粉末消臭剤組成物を振り出しやすい。
【0044】
容器本体10の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、ガラス、金属等が挙げられ、中でも、樹脂が好ましい。
蓋体20の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が挙げられる。
【0045】
(使用方法)
粉体消臭剤組成物の使用方法は、処理対象物に粉体消臭剤組成物を散布する方法である。
なお、処理対象物としては、繊維製品、革製品、木製製品及び金属製品等が挙げられる。繊維製品としては、衣類、布巾、タオル類、シーツ等が挙げられる。革製品としては、合成皮革製品、天然皮革製品等が挙げられる。木製製品としては、天然木製品等が挙げられる。金属製品としては、ステンレス製品、アルミニウム製品等が挙げられる。
なかでも繊維製品及び革製品が好ましく、靴及び靴下がより好ましい。すなわち、本発明の粉体消臭剤組成物は、靴及び靴下用の粉体消臭剤組成物として有用である。
粉体消臭剤組成物の使用方法の一例について、上述の容器入り粉体消臭剤組成物を例にして、処理対象物が靴の場合の使用方法について説明する。
まず、上蓋24を上方向に引き上げ、注出孔27を露出させる。容器本体10を把持し、容器1を倒立させて、注出孔27を下方に向ける。注出孔27を靴の内部、靴下の内部又は表面等の消臭対象物に向ける。容器1を倒立した状態で、容器1を上下に振り動かし、注出孔27から内容物(粉体消臭剤組成物)を振り出し、粉体消臭剤組成物を消臭対象物に散布する。このように、容器本体10内の粉末消臭剤組成物を注出孔27から排出し、粉末消臭剤組成物を消臭対象に散布する。粉末消臭剤組成物を靴の内部に散布した場合には、靴に振動を与えて、粉末消臭剤組成物を靴の内部に広げることが好ましい。
消臭対象物に粉末消臭剤組成物を散布した直後から24時間後において、消臭対象物を消臭する。
【0046】
粉末消臭剤組成物の散布量は、消臭対象物の大きさ等を勘案して、適宜決定される。例えば、消臭対象物が靴であれば、片方の靴1つ当たり、0.1~2gが好ましく、0.3~1.5gがより好ましい。
【0047】
上述の容器1の蓋体20は、いわゆるヒンジキャップであるが、本発明はこれに限定されない。蓋体は、上蓋と中栓とが螺合するものでもよい。
上述の中栓22は、突出した注出部26を有するが、本発明はこれに限定されず、中栓に貫通孔が形成されていればよい。加えて、貫通孔は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。
上述の実施形態では、粉末消臭剤組成物を容器から消臭対象物に対して直接散布しているが、本発明はこれに限定されない。容器から粉末消臭剤組成物をスプーンに取り出し、スプーンで消臭対象物に粉末消臭剤組成物を散布してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0049】
(使用原料)
<(A)成分>
A1-1:タルク(MS-KY、日本タルク株式会社製、平均粒子径:25μm)。
A3-1:銀担持ゼオライト(ゼオミックAJ10N、シナネンゼオミック株式会社製、平均粒子径:4μm)。
A1-2 クラウンタルクRD(松村産業株式会社、平均粒子径:50μm)
【0050】
<(B)成分>
B-1:炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム、東ソー株式会社、平均粒子径:250μm)。
【0051】
<(C)成分>
C-1:ハイドロタルサイト焼成物(酸化マグネシウムと酸化アルミニウム質量比の固溶体、KW-2000、協和化学工業株式会社、化学組成:Mg0.7Al0.3O1.15、平均粒子径:40μm)。
<(D)成分>
D-1:高度分岐環状デキストリン(クラスターデキストリン、グリコ栄養食品株式会社製、平均粒子径:100μm)。
D-2:l-メントール(クラリアントジャパン、平均粒子径:30μm(粉砕後))
<香料>
粉末香料(シトラスパウダーLA-7810、長谷川香料株式会社、平均粒子径:40μm)。
【0052】
(評価方法)
<消臭効果>
イソ吉草酸(疑似悪臭)0.01質量%エタノール水溶液500μLを6cm×6cmの綿布に滴下し、一晩ドラフト内で放置したものを消臭対象品とした。各例の粉末消臭剤組成物0.5gを消臭対象品に散布し、その直後と24時間後に臭気強度の官能評価を行った。官能評価は、5名のパネルが下記の基準に基づき行った。5名の評価結果の平均値を求めた。
≪評価基準≫
0点:消臭効果が非常に高い。悪臭を全く感じない。
1点:消臭効果が高い。悪臭をほとんど感じない。
2点:消臭効果がやや高い。悪臭をやや感じる。
3点:消臭効果が低い。悪臭がほとんど低減しない。
4点:消臭効果が全くない。悪臭が低減しない。
【0053】
<固化率>
各例の粉末消臭剤組成物を密閉容器に入れ、これを45℃85%RHで16時間保管し、次いで25℃65RH%で8時間保管し、このサイクルを21日間繰り返した。その後、粉末消臭剤組成物を目開き1.7mmの篩に通し、篩上に残った粒子(固化粒子)の質量を測定した。篩に投入した粉末消臭剤組成物の質量で固化粒子の質量を除して、固化率(質量%)を算出した。求めた固化率を下記評価基準に従って評価した。
≪評価基準≫
A:1質量%未満。
B:1%以上3%未満。
D:3%以上。
【0054】
<流動性>
シャーレの上に黒布(綿ブロード:直径6cmの円形にカット)を乗せ、黒布の上に各例の粉末消臭剤組成物0.17gを乗せた。シャーレを叩いて、黒布に振動を与え、粉末消臭剤組成物の広がり方を目視で観察した。観察結果を下記評価基準に分類し、流動性を評価した。
≪評価基準≫
A:黒布全体に均一に広がる。
B:黒布の一部に広がらない部分がある。
D:黒布の一部にしか広がらない。
【0055】
<嵩密度>
嵩密度は、JIS K3362:1998に準拠して測定した。
【0056】
<粒子径が50μm以下の粒子の含有量>
JIS K3362:2008に準拠して、ふるい分け方によって測定した。
【0057】
<即効性>
靴の中に粉末消臭剤組成物を1g入れ、靴をたたき、振動を与えることで粉末消臭剤組成物を靴の内側に均一に広げた。その後靴下(ユニクロ製、商品名「スーピマコットンカノコソックス」)を着用した足で靴を履き、靴を履いた瞬間から冷感を感じるまでの時間を計測した。試験はそれぞれ2回行い、計測結果の平均値を算出し、算出結果を以下の評価基準で評価した。
《評価基準》
A:靴を履いた瞬間から10分以内に冷感を感じる。
B:靴を履いた瞬間から30分以内に冷感を感じる。
C:靴を履いた瞬間から1時間以内に冷感を感じる。
D:靴を履いた瞬間から冷感を感じるまで1時間以上かかるか、または冷感を感じない。
粉末消臭剤組成物の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(BECKMAN COULTER社製 LS 13 320)により測定される体積平均粒子径(D50)であり、体積%は粒度分布より算出した。
【0058】
(実施例1~13、比較例1~3)
表1に示す組成に従い、(A)~(D)成分及び香料を粉体で混合し、各例の粉末消臭剤組成物を得た。
各例の粉末消臭剤組成物ついて、消臭効果、固化率、流動性を評価し、その結果を表中に示す。
但し、実施例1、4、5、12、13は参考例である。
【0059】
【0060】
【0061】
表1に示すように、実施例1~13は、直後の消臭効果が、0.6~1.8であり、24時間後の消臭効果が0~1.8であった。また、実施例1~13は、固化率が3%未満、流動性が「B」又は「A」であった。
(B)成分を含有しない比較例1と、(A)成分中のタルクが50質量%未満である比較例3とは、流動性が「D」であった。(A)成分がタルクを含まない比較例2は、固化率が「D」(10%)であった。また、比較例1は、直後の消臭効果が2.8、24時間後の消臭効果が2.4であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、粉末消臭剤組成物を固化しにくくし、流動性に優れ、かつ消臭効果の向上を図れることを確認できた。
また、実施例10~12は、粒子径が50μm以下の粒子を30質量%以上含むことにより、即効性が「A」又は「B」であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の粉末消臭剤組成物によれば、固化しにくく、流動性に優れ、かつ消臭効果をより高められる。
【符号の説明】
【0063】
1 容器、10 容器本体、11 開口部、20 蓋体、22 中栓、27 注出孔