(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20230428BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20230428BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 560
(21)【出願番号】P 2020546686
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2019019527
(87)【国際公開番号】W WO2020054130
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018169681
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0072110(KR,A)
【文献】特開2002-168062(JP,A)
【文献】特開平09-069645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0256661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルをシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池ストリングを複数備える太陽電池モジュールであって、
複数の前記太陽電池ストリングは、所定方向に並んでおり、
隣り合う前記太陽電池ストリングは、一方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一部と他方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一部とが、前記太陽電池ストリングの主面と交差する厚さ方向に離間して重なり合うように、配置されて
おり、
前記一方の前記太陽電池ストリングの一部と前記他方の前記太陽電池ストリングの一部との間に配置された絶縁部材を更に備え、
前記絶縁部材は、複数の前記太陽電池ストリングを封止する封止材であり、
複数の前記太陽電池ストリングは、前記所定方向における奇数番目の前記太陽電池ストリングと前記所定方向における偶数番目の前記太陽電池ストリングとが、前記厚さ方向において高低差を有するように、配置されている、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記一方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一部は、前記一方の前記太陽電池ストリングにおける、前記複数の太陽電池セルの配列方向に沿う長手縁部であり、
前記他方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一部は、前記他方の前記太陽電池ストリングにおける、前記複数の太陽電池セルの配列方向に沿う長手縁部である、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
複数の前記太陽電池ストリングの一方主面側を保護する第1保護部材と、
複数の前記太陽電池ストリングの前記一方主面側と反対の他方主面側を保護する第2保護部材と、
を更に備え、
前記封止材は、前記第1保護部材と前記第2保護部材とによって挟み込まれており、
前記奇数番目の前記太陽電池ストリングの前記一方主面と前記第1保護部材との間に介在する前記封止材の厚さと、前記偶数番目の前記太陽電池ストリングの前記一方主面と前記第1保護部材との間に介在する前記封止材の厚さとは異なる、
請求項
1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
複数の前記太陽電池ストリングは、隣り合う前記奇数番目の前記太陽電池ストリングと前記偶数番目の前記太陽電池ストリングとが対をなすように、複数対の太陽電池ストリングを含み、
前記複数対の太陽電池ストリングのうちの一対の太陽電池ストリングは、電気的に並列接続される、
請求項
1または3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
複数の太陽電池セルをシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池ストリングを複数備える太陽電池モジュールであって、
複数の前記太陽電池ストリングは、所定方向に並んでおり、
隣り合う前記太陽電池ストリングは、一方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一部と他方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一部とが、前記太陽電池ストリングの主面と交差する厚さ方向に離間して重なり合うように、配置されており、
隣り合う前記太陽電池ストリングは、前記一方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一方端側の一方主面側の一部が、前記他方の前記太陽電池ストリングの前記所定方向における一方端側と反対の他方端側の一方主面側と反対の他方主面側の一部の下に重なるように、配置されて
おり、
前記一方の前記太陽電池ストリングの一部と前記他方の前記太陽電池ストリングの一部との間に配置された絶縁部材を更に備え、
前記絶縁部材は、複数の前記太陽電池ストリングを封止する封止材であり、
複数の前記太陽電池ストリングは、隣り合う奇数番目の前記太陽電池ストリングと偶数番目の前記太陽電池ストリングとが対をなすように、複数対の太陽電池ストリングを含み、
前記複数対の太陽電池ストリングのうちの一対の太陽電池ストリングは、電気的に並列接続される、
太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、太陽電池セルをモジュール化する場合、導電性の接続線を用いることなく、太陽電池セルの一部同士を重ね合わせることで、直接、電気的かつ物理的に接続を行う方式が存在する。このような接続方式はシングリング方式と称され、シングリング方式で電気的に接続された複数の太陽電池セルは太陽電池ストリングと称される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
太陽電池ストリングでは、太陽電池モジュールにおける限られた太陽電池セル実装面積に、より多くの太陽電池セルが実装可能になり、光電変換のための受光面積が増え、太陽電池モジュールの出力が向上する。更に、両面電極の太陽電池セルをシングリング方式を用いて接続する太陽電池ストリングでは、隣り合う太陽電池セルの一部同士を重ね合わせる重ね合わせ領域において、一方の太陽電池セルのバスバー電極が他方の太陽電池セルで覆われるため、バスバー電極による遮光ロスが低減し、太陽電池モジュールの出力が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池モジュールは、上述した太陽電池ストリングを複数備えることがある。この場合、太陽電池ストリング間の絶縁を確保するために、太陽電池ストリング同士を離間して配置する必要がある。そのため、より多くの太陽電池ストリングの実装が困難であり、太陽電池モジュールの出力向上が困難であった。また、太陽電池ストリング間に隙間が生じるため、意匠性が低下していた。
【0006】
本発明は、出力向上と意匠性の向上とが可能な太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルをシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池ストリングを複数備える太陽電池モジュールであって、複数の太陽電池ストリングは所定方向に並んでおり、隣り合う太陽電池ストリングは、一方の太陽電池ストリングの所定方向における一部と他方の太陽電池ストリングの所定方向における一部とが、太陽電池ストリングの主面と交差する厚さ方向に離間して重なり合うように、配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、太陽電池モジュールの出力が向上し、かつ意匠性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る太陽電池モジュールを受光面側からみた図である。
【
図2】
図1に示す太陽電池モジュールにおける太陽電池ストリングのII部分の拡大図(受光面側)である。
【
図3】
図2に示す太陽電池ストリングのIII-III線断面図である。
【
図4】
図1~
図3に示す太陽電池ストリングにおける太陽電池セルを受光面側からみた図である。
【
図5】
図1~
図3に示す太陽電池ストリングにおける太陽電池セルを裏面側からみた図である。
【
図6】
図4および
図5に示す太陽電池セルのVI-VI線断面図である。
【
図7】
図4および
図5に示す太陽電池セルのVII-VII線断面図である。
【
図8】
図6および
図7に示す太陽電池セルにおける太陽電池積層体のVIII部分の拡大断面図である。
【
図9】
図1に示す太陽電池モジュールのIX-IX線断面図である。
【
図10】第1実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図11】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける複数の太陽電池ストリング1の電気的な接続方法の一例を説明するための図である。
【
図12】第2実施形態に係る太陽電池モジュールを受光面側からみた図である。
【
図13】
図12に示す太陽電池モジュールのXIII-XIII線断面図である。
【
図14】第2実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
[第1実施形態]
(太陽電池モジュール)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールを受光面側からみた図である。
図1に示すように、太陽電池モジュール100は、X方向(第1方向、所定方向)に配列された複数の長方形状の太陽電池ストリング1を備える。太陽電池ストリング1の各々は、X方向に交差するY方向(第2方向)に配列された複数の長方形状の太陽電池セル2を備える。
以下、複数の太陽電池セル2の配置方法、すなわち太陽電池ストリング1の構成について説明する。なお、複数の太陽電池ストリング1の配置方法、すなわち太陽電池モジュール100の構成については後述する。
【0012】
(太陽電池ストリング)
図2は、
図1に示す太陽電池モジュール100における太陽電池ストリング1のII部分の拡大図(受光面側)であり、
図3は、
図2に示す太陽電池ストリング1のIII-III線断面図である。
図2および
図3に示すように、太陽電池ストリング1は、複数の太陽電池セル2をシングリング方式を用いて電気的に接続する。
【0013】
太陽電池ストリング1では、太陽電池セル2の端部の一部が重なり合うことにより、太陽電池セル2が直列に接続される。具体的には、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2のY方向の一方端側の一方主面側(例えば受光面側)の一部は、他方の太陽電池セル2のY方向における一方端側と反対の他方端側の他方主面側(例えば裏面側)の一部の下に重なる。太陽電池セル2の一方端側の受光面側の一部、および、他方端側の裏面側の一部には、X方向に延在するバスバー電極部(後述)が形成される。一方の太陽電池セル2の一方端側の受光面側のバスバー電極部は、例えば接続部材8を介して、他方の太陽電池セル2の他方端側の裏面側のバスバー電極部と電気的に接続される。
【0014】
このように、瓦を屋根に葺いたように、複数の太陽電池セル2が一様にある方向にそろって傾く堆積構造となることから、このようにして太陽電池セル2を電気的に接続する方式を、シングリング方式と称する。また、ひも状につながった複数の太陽電池セル2を、太陽電池ストリングと称する。
以下では、隣り合う太陽電池セル2,2が重なる領域を、重ね合わせ領域Ro2という。
【0015】
接続部材8としては、低融点金属またははんだを被覆した銅芯材からなるリボン線、低融点金属粒子または金属微粒子を内包した熱硬化性樹脂フィルムで形成された導電性フィルム、低融点金属微粒子とバインダーとで形成された導電性接着剤、または、はんだ粒子を含有するはんだペースト等が用いられる。また、接続部材8としては、例えば、熱硬化型の接着性樹脂材料に、導電性粒子(例えば、金属微粒子)を分散させた導電性接着ペーストに、バリア膜材料を含む接続部材ペーストが用いられてもよい。このような接続部材8の一例としては、エポキシ樹脂またはウレタンアクリレート等のオリゴマー成分を含有するAgペーストまたはCuペーストが挙げられる。
以下、太陽電池セル2について説明する。
【0016】
(太陽電池セル)
図4は、
図1~
図3に示す太陽電池ストリング1における太陽電池セル2を受光面側からみた図であり、
図5は、太陽電池セル2を裏面側からみた図である。
図6は、
図4および
図5に示す太陽電池セル2のVI-VI線断面図であり、
図7は、
図4および
図5に示す太陽電池セル2のVII-VII線断面図である。
図4~
図7に示す太陽電池セル2は、長方形状の両面電極型の太陽電池セルである。太陽電池セル2は、2つの主面を有する太陽電池積層体10と、太陽電池積層体10の主面のうちの一方面側(例えば受光面側)に形成された金属電極層21と、太陽電池積層体10の主面のうちの他方面側(例えば裏面側)に形成された金属電極層31とを有する。
【0017】
図8は、
図6および
図7に示す太陽電池セルにおける太陽電池積層体10のVIII部分の拡大断面図である。
図8に示すように、太陽電池積層体10は、2つの主面を有する半導体基板(光電変換基板)110と、半導体基板110の主面のうちの一方面側(例えば受光面側)に順に積層されたパッシベーション層120、第1導電型半導体層121および透明電極層122と、半導体基板110の主面のうちの他方面側(例えば裏面側)に順に積層されたパッシベーション層130、第2導電型半導体層131および透明電極層132とを有する。
【0018】
<半導体基板>
半導体基板110としては、導電型単結晶シリコン基板、例えばn型単結晶シリコン基板またはp型単結晶シリコン基板が用いられる。これにより、高い光電変換効率が実現する。
半導体基板110は、n型単結晶シリコン基板であると好ましい。これにより、結晶シリコン基板内のキャリア寿命が長くなる。これは、p型単結晶シリコン基板では、光照射によってp型ドーパントであるB(ホウ素)が影響して再結合中心となるLID(Light Induced Degradation)が起こる場合があるが、n型単結晶シリコン基板ではLIDをより抑制するためである。
【0019】
半導体基板110は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有する。これにより、半導体基板110に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
また、半導体基板110は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板110における光閉じ込め効果が向上する。
【0020】
半導体基板110の厚さは、50μm以上250μm以下であると好ましく、60μm以上230μm以下であるとより好ましく、70μm以上210μm以下であると更に好ましい。これにより、材料コストが低減する。
なお、半導体基板110として、導電型多結晶シリコン基板、例えばn型多結晶シリコン基板またはp型多結晶シリコン基板を用いてもよい。この場合、より安価に太陽電池が製造される。
【0021】
<第1導電型半導体層および第2導電型半導体層>
第1導電型半導体層121は、半導体基板110の受光面側の略全面にパッシベーション層120を介して形成されており、第2導電型半導体層131は、半導体基板110の裏面側の略全面にパッシベーション層130を介して形成されている。
【0022】
第1導電型半導体層121は、第1導電型シリコン系層、例えばp型シリコン系層で形成される。第2導電型半導体層131は、第1導電型と異なる第2導電型のシリコン系層、例えばn型シリコン系層で形成される。なお、第1導電型半導体層121がn型シリコン系層であり、第2導電型半導体層131がp型シリコン系層であってもよい。
p型シリコン系層およびn型シリコン系層は、非晶質シリコン層、または、非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む微結晶シリコン層で形成される。p型シリコン系層のドーパント不純物としては、B(ホウ素)が好適に用いられ、n型シリコン系層のドーパント不純物としては、P(リン)が好適に用いられる。
【0023】
<パッシベーション層>
パッシベーション層120,130は、真性シリコン系層で形成される。パッシベーション層120,130は、パッシベーション層として機能し、キャリアの再結合を抑制する。
【0024】
<透明電極層>
透明電極層122は、半導体基板110の受光面側の略全面に形成されており、透明電極層132は、半導体基板110の裏面側の略全面に形成されている。
透明電極層122,132は、透明導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、透明導電性金属酸化物、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタンおよびそれらの複合酸化物等が用いられる。これらの中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましい。更に、信頼性またはより高い導電率を確保するため、インジウム酸化物にドーパントを添加すると好ましい。ドーパントとしては、例えば、Sn、W、Zn、Ti、Ce、Zr、Mo、Al、Ga、Ge、As、Si、またはS等が挙げられる。
【0025】
再び
図4~
図7および
図2,
図3を参照して説明する。金属電極層21は、太陽電池積層体10の受光面側に形成され、金属電極層31は、太陽電池積層体10の裏面側に形成される。
金属電極層21は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー電極部21fと、櫛歯の支持部に相当する単数または複数のバスバー電極部21bとを有する。バスバー電極部21bは、Y方向の一方端側の受光面側(一方主面側)の一部の重ね合わせ領域Ro2に沿ってX方向に延在する。フィンガー電極部21fは、バスバー電極部21bから、X方向に交差するY方向に延在する。
同様に、金属電極層31は、櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー電極部31fと、櫛歯の支持部に相当する1または複数のバスバー電極部31bとを有する。バスバー電極部31bは、Y方向の他方端側の裏面側(他方主面側)の一部の重ね合わせ領域Ro2に沿ってX方向に延在する。フィンガー電極部31fは、バスバー電極部31bから、X方向に交差するY方向に延在する。なお、金属電極層31は、櫛型に限定されるものではなく、例えば、太陽電池セル2の裏面側の略全体に矩形状に形成されてもよい。
【0026】
図7に示すように裏面側のフィンガー電極部31fは、受光面側の重ね合わせ領域Ro2に対応する位置に存在せず、受光面側のフィンガー電極部21fよりも若干短くなっている。これは、受光面側の重ね合わせ領域Ro2は遮光部となるため光の入射量が極めて少なく、発生する電流も小さいため直列抵抗による電圧降下ロスが無視できるためである。
一方、裏面側の重ね合わせ領域Ro2に対応する位置には、受光面側のフィンガー電極部21fが配置されている。これは、裏面側の重ね合わせ領域Ro2に対応する受光面側では、光の入射量および電流の発生量が共に大きく、抵抗を低く抑える必要があるためである。
【0027】
金属電極層21,31は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。
【0028】
(太陽電池モジュール:複数の太陽電池ストリングの配置方法)
図9は、
図1に示す太陽電池モジュール100のIX-IX線断面図である。
図1および
図9に示すように、太陽電池モジュール100では、上述した複数の太陽電池ストリング1がX方向に配列されている。
太陽電池ストリング1は、受光側(第1)保護部材3と裏側(第2)保護部材4とによって挟み込まれている。受光側保護部材3と裏側保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材(絶縁部材)5が充填されており、これにより、太陽電池ストリング1は封止される。
【0029】
封止材5は、太陽電池ストリング1を封止して保護するもので、太陽電池ストリング1の受光側の面と受光側保護部材3との間、太陽電池ストリング1の裏側の面と裏側保護部材4との間、および、太陽電池ストリング1,1の間に介在する。
封止材5の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状が挙げられる。シート状であれば、面状の太陽電池ストリング1の表面および裏面を被覆しやすいためである。
封止材5の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有する絶縁性材料であると好ましい。また、封止材5の材料は、太陽電池セル2と受光側保護部材3と裏側保護部材4とを接着させる接着性を有すると好ましい。
このような材料としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性樹脂が挙げられる。
【0030】
受光側保護部材3は、封止材5を介して、太陽電池ストリング1の受光面を覆って、その太陽電池ストリング1を保護する。
受光側保護部材3の形状としては、特に限定されるものではないが、面状の受光面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
受光側保護部材3の材料としては、特に限定されるものではないが、封止材5同様に、透光性を有しつつも紫外光に耐性の有る材料が好ましく、例えば、ガラス、または、アクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、受光側保護部材3の表面は、凹凸状に加工されていても構わないし、反射防止コーティング層で被覆されていても構わない。これらのようになっていると、受光側保護部材3は、受けた光を反射させ難くして、より多くの光を太陽電池ストリング1に導けるためである。
【0031】
裏側保護部材4は、封止材5を介して、太陽電池ストリング1の裏面を覆って、その太陽電池ストリング1を保護する。
裏側保護部材4の形状としては、特に限定されるものではないが、受光側保護部材3同様に、面状の裏面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
裏側保護部材4の材料としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材料が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、若しくは含シリコーン樹脂等の樹脂フィルムと、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が挙げられる。
【0032】
太陽電池モジュール100において、隣り合う太陽電池ストリング1,1は、一方の太陽電池ストリング1のX方向における一部と他方の太陽電池ストリング1のX方向における一部とが、太陽電池ストリング1の主面と交差する厚さ方向に離間して重なり合うように、配置されている。具体的には、一方の太陽電池ストリング1におけるY方向(複数の太陽電池セル2の配列方向)に沿う長手縁部と、他方の太陽電池ストリング1におけるY方向(複数の太陽電池セル2の配列方向)に沿う長手縁部とが、厚さ方向に離間して重なり合っている。
隣り合う太陽電池ストリング1,1が重なる領域を、重ね合わせ領域Ro1という。
【0033】
一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間には、封止材(絶縁部材)5が配置される。
なお、本実施形態では、一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間に配置される絶縁部材(例えば、後述する
図10における5b相当)として、太陽電池ストリング1の受光側の面と受光側保護部材3との間に配置される封止材(例えば、後述する
図10における5a相当)および太陽電池ストリング1の裏側の面と裏側保護部材4との間に配置される封止材(例えば、後述する
図10における5c相当)と同等の封止材を挙げた。しかし、一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間に配置される絶縁部材は、これに限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、もしくはそれらを基材としたテープ状またはシート状の絶縁テープまたは絶縁シートが挙げられる。
【0034】
X方向における一方端側(例えば、
図1および
図9では左側)から奇数番目の太陽電池ストリング1の受光面と受光側保護部材3との間に介在する封止材5の厚さDoと、偶数番目の太陽電池ストリング1の受光面と受光側保護部材3との間に介在する封止材5の厚さDeとは異なる。具体的には、奇数番目の太陽電池ストリング1の受光面と受光側保護部材3との間に介在する封止材5の厚さDoは、偶数番目の太陽電池ストリング1の受光面と受光側保護部材3との間に介在する封止材5の厚さDeよりも薄い。
【0035】
これにより、複数の太陽電池ストリング1は、X方向における奇数番目の太陽電池ストリング1と偶数番目の太陽電池ストリング1とが、太陽電池ストリング1の厚さ方向において高低差を有するように、配置される。具体的には、奇数番目の太陽電池ストリング1は、偶数番目の太陽電池ストリング1よりも厚さ方向において高い位置に配置される。
【0036】
図10は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
図10に示すように、例えば、受光側保護部材3上の全面にシート状の封止材5aを配置し、その後、奇数番目の太陽電池ストリング1を配置する。その後、封止材5aおよび奇数番目の太陽電池ストリング1上の全面にシート状の封止材5bを配置し、その後、偶数番目の太陽電池ストリング1を配置する。その後、封止材5bおよび偶数番目の太陽電池ストリング1上の全面にシート状の封止材5cを配置し、その後、裏側保護部材4を配置する。これにより、
図9に示す太陽電池モジュール100を作製する。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態の太陽電池モジュール100によれば、複数の太陽電池セル2をシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池ストリング1を複数備え、複数の太陽電池ストリング1はX方向に並んでおり、隣り合う太陽電池ストリング1,1は、一方の太陽電池ストリング1のX方向における一部と他方の太陽電池ストリング1のX方向における一部とが、太陽電池ストリング1の厚さ方向に離間して重なり合うように、配置されている。これにより、太陽電池モジュール100における限られた太陽電池ストリング実装面積に、太陽電池ストリング間の絶縁を確保しつつ、より多くの太陽電池ストリングが実装される。そのため、光電変換のための受光面積が増え、太陽電池モジュールの出力が向上する。
【0038】
例えば、太陽電池ストリング1を5個並置させた場合に対して、
図1に示す第1実施形態のように、太陽電池ストリング1を1個増やして6個配置することができれば、太陽電池モジュールの出力が約15%向上する。
【0039】
なお、太陽電池ストリングの配置数が同じ太陽電池モジュールを比較した場合に、太陽電池モジュールの出力を向上させようとするならば、太陽電池ストリングが重ならない方がよい。この場合、製造誤差に起因して、太陽電池ストリング間に隙間が生じ、意匠性が低下してしまう可能性がある。
本実施形態によれば、太陽電池ストリング1の一部が重なり合っているので、製造誤差に起因して太陽電池ストリング1間に隙間が生じることがなく、太陽電池モジュール100の意匠性が向上する。
【0040】
また、第1実施形態の太陽電池モジュール100によれば、隣り合う太陽電池ストリング1,1における一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間に封止材(絶縁部材)5または絶縁部材が配置されている。これにより、隣り合う太陽電池ストリング1,1間の絶縁の確保が容易となる。
【0041】
ここで、奇数番目の太陽電池ストリング1と偶数番目の太陽電池ストリング1とに高低差をつけて重ね合わせると、奇数番目の太陽電池ストリング1の発電領域の大きさと偶数番目の太陽電池ストリング1の発電領域の大きさとが異なり、奇数番目の太陽電池ストリング1の出力電流と偶数番目の太陽電池ストリング1の出力電流とが異なってしまう。
【0042】
この点に関し、第1実施形態の太陽電池モジュール100では、
図11に示すように、複数の太陽電池ストリング1において、隣り合う奇数番目の太陽電池ストリング1と偶数番目の太陽電池ストリング1とが対をなすように、複数対の太陽電池ストリング1を構成する。そして、複数対の太陽電池ストリング1のうちの一対の太陽電池ストリング1を、電気的に並列接続する。これにより、太陽電池モジュール100全体の出力電流が均一化される。
【0043】
[第2実施形態]
第1実施形態では、奇数番目の太陽電池ストリング1と偶数番目の太陽電池ストリング1とに高低差をつけることにより、複数の太陽電池ストリング1を重ね合わせる形態を例示した。
第2実施形態では、複数の太陽電池ストリング1をシングリング方式を用いて重ね合わせる形態について説明する。
【0044】
図12は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールを受光面側からみた図であり、
図13は、
図12に示す太陽電池モジュールのXIII-XIII線断面図である。
図12および
図13に示す第2実施形態の太陽電池モジュール100は、上述した
図1および
図9に示す第1実施形態の太陽電池モジュール100と比較して、複数の太陽電池ストリング1の配置構成が異なる。具体的には、第2実施形態の太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池ストリング1をシングリング方式を用いて重ね合わせて、X方向に配列する。
【0045】
太陽電池モジュール100では、太陽電池ストリング1の端部の一部が太陽電池ストリング1の厚さ方向において離間して重なり合うように、太陽電池ストリング1がX方向に配列される。具体的には、隣り合う太陽電池ストリング1,1のうちの一方の太陽電池ストリング1のX方向における一方端側の受光面側(一方主面側)の一部は、他方の太陽電池ストリング1のX方向における一方端側と反対の他方端側の裏面側(一方主面側と反対の他方主面側)の一部の下に離間して重なる。
【0046】
これにより、第2実施形態の太陽電池モジュール100でも、隣り合う太陽電池ストリング1,1は、一方の太陽電池ストリング1のX方向における一部と他方の太陽電池ストリング1のX方向における一部とが、太陽電池ストリング1の主面と交差する厚さ方向に離間して重なり合うように、配置される。具体的には、一方の太陽電池ストリング1におけるY方向(複数の太陽電池セル2の配列方向)に沿う長手縁部と、他方の太陽電池ストリング1におけるY方向(複数の太陽電池セル2の配列方向)に沿う長手縁部とが、厚さ方向に離間して重なり合う。
隣り合う太陽電池ストリング1,1が重なる領域を、重ね合わせ領域Ro1という。
【0047】
一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間には、封止材(絶縁部材)5が配置される。
なお、本実施形態では、一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間に配置される絶縁部材(例えば、後述する
図14における5b相当)として、太陽電池ストリング1の受光側の面と受光側保護部材3との間に配置される封止材(例えば、後述する
図14における5a相当)および太陽電池ストリング1の裏側の面と裏側保護部材4との間に配置される封止材(例えば、後述する
図14における5c相当)と同等の封止材を挙げた。しかし、一方の太陽電池ストリング1の一部と他方の太陽電池ストリング1の一部との間に配置される絶縁部材は、これに限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、もしくはそれらを基材としたテープ状またはシート状の絶縁テープまたは絶縁シートが挙げられる。
【0048】
図14は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
図14に示すように、例えば、受光側保護部材3上の全面にシート状の封止材5aを配置し、その後、太陽電池ストリング1をシングリング方式を用いて重ね合わせて配置する。その際、太陽電池ストリング1間にシート状の封止材5bを配置する。例えば、X方向に隣り合う太陽電池ストリング1の上に重なる太陽電池ストリング1の裏面側に封止材5bを配置する。その後、封止材5a、封止材5bおよび太陽電池ストリング1上の全面にシート状の封止材5cを配置し、その後、裏側保護部材4を配置する。これにより、
図13に示す太陽電池モジュール100を作製する。
【0049】
以上説明したように、第2実施形態の太陽電池モジュール100でも、第1実施形態の太陽電池モジュール100と同様の利点を得ることができる。
【0050】
第2実施形態の太陽電池モジュール100では、太陽電池ストリング1をシングリング方式を用いて重ね合わせる。この場合、X方向における奇数番目の太陽電池ストリング1の発電領域の大きさと偶数番目の太陽電池ストリング1の発電領域の大きさとが同一であり、奇数番目の太陽電池ストリング1の出力電流と偶数番目の太陽電池ストリング1の出力電流とが同一となる。これにより、第1実施形態と比較して、太陽電池ストリング1の電気的な接続の自由度が高い。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、両面電極型の太陽電池セル2を含む太陽電池ストリング1を重ね合わせる形態を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池セルを含む太陽電池ストリングを重ね合わせる場合にも適用可能である。
【0052】
また、上述した実施形態では、
図8に示すようにヘテロ接合型の太陽電池セル2を含む太陽電池ストリング1を重ね合わせる形態を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、ホモ接合型の太陽電池セル等の種々の太陽電池セルを含む太陽電池ストリングを重ね合わせる場合にも適用可能である。
【0053】
また、上述した実施形態では、太陽電池ストリング1の長手縁部を重ね合わせる形態を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、太陽電池ストリングの短手縁部を重ね合わせる場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 太陽電池ストリング
2 太陽電池セル
3 受光側保護部材(第1保護部材)
4 裏側保護部材(第2保護部材)
5,5a,5b,5c 封止材(絶縁部材)
8 接続部材
10 太陽電池積層体
21,31 金属電極層
21f、31f フィンガー電極部
21b,31b バスバー電極部
100 太陽電池モジュール
110 半導体基板
120,130 パッシベーション層
121 第1導電型半導体層
131 第2導電型半導体層
122,132 透明電極層
Ro1,Ro2 重ね合わせ領域