(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】サルコグリカン異常症の併用治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/427 20060101AFI20230428BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20230428BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A61K31/427 ZMD
A61K31/47
A61P21/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020559019
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2019050585
(87)【国際公開番号】W WO2019138012
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】503119487
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デヴリ・ヴァル・デソンヌ
(73)【特許権者】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(73)【特許権者】
【識別番号】520256385
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ・デグリ・ストゥディ・ディ・パドヴァ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・リシャール
(72)【発明者】
【氏名】ドリアンナ・サンドナ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/086687(WO,A1)
【文献】特表2009-543854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(2-(5-クロロ-2-メトキシフェニルアミノ)-4'-メチル-4,5'-ビチアゾール-2'-イル)ピバルアミド(C17)及び更なる化合物、N-[2-(5-クロロ-2-メトキシ-フェニルアミノ)-4'-メチル-[4,5']ビチアゾリル-2'-イル]-ベンズアミド(C4)、4,5,7-トリメチル-N-フェニルキノリン-2-アミン(C5)、N-(4-ブロモフェニル)-4-メチルキノリン-2-アミン(C6)又はN-(2-(3-アセチルフェニルアミノ)-4'-メチル-4,5'-ビチアゾール-2'-イル)ベンズアミド(C13)の治療上有効な組合
せを含む、
それらを必要とする患者のサルコグリカン異常症
の処置
において使用するための組成物。
【請求項2】
前記患者が、LGMD-2D、LGMD-2E、LGMD-2C又はLGMD-2Fに罹患している、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記患者がLGMD-2Dに罹患している、請求項1に記載の
組成物。
【請求項4】
前記患者がc.229C>T/p.R77C変異によって引き起こされるLGMD-2Dに罹患している、請求項1に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルコグリカン異常症の併用治療に関する。
【背景技術】
【0002】
サルコグリカン異常症は、任意のサルコグリカン(SG)をコードする遺伝子の1つの突然変異によって引き起こされる常染色体劣性遺伝疾患である。SGは、横紋筋の筋細胞膜に局在する4量体複合体を形成する1回膜貫通糖タンパク質である(1,2)。サルコグリカン複合体は、ジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)の一部として、筋肉収縮中の筋細胞膜安定性の確保に重要な役割を担い、シグナル伝達過程に関与するものと考えられる(3)。サルコグリカン異常症の全形態(LGMD2C、2D、2E及び2F)は、特定のサルコグリカンの欠陥が、野生型サルコグリカン類が副次的に欠損した変異タンパク質の欠如/強い減少に典型的に関与しているので、機能喪失(LOF)疾患として分類することができる(4)。ここ数年、サルコグリカン異常症の病理発生の研究によって、LOF状態は細胞のタンパク質品質管理(QC)システムの活性の結果であることが立証されてきた。特に、サルコグリカン異常症遺伝子欠陥の大部分は、小胞体-QCによって認識され、ユビキチン-プロテアソーム系を通る分解に運ばれるフォールディング欠陥タンパク質を生じるミスセンス変異である(5,6)。
【0003】
更に、SGの様々なミスセンス変異体は分解経路を標的化することによって、細胞膜で適切に回復することができる(5~8)。この証拠はまた、変異していても、これらのタンパク質は機能性を保持しており、変異体の処分の低減を目的とする新規治療戦略の開発は患者にとって有益なものとなることを示唆している。この目的のために、サルコグリカン異常症には病原性の主要な原因であるフォールディング欠陥SGが存在しているので、変異体のフォールディング過程を促進し、従って、品質管理に合格し、適切な作用部位へ移動することができる低分子を用いた「修復戦略」が考えられる。
【0004】
この状況で、サルコグリカン異常症の処置のための嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)コレクターの使用が開示された(国際公開第2014086687号パンフレット)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014086687号パンフレット
【文献】国際公開第2004111014号パンフレット
【文献】国際公開第2006101740号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サルコグリカン異常症の併用治療に関する。特に、本発明は特許請求の範囲によって規定される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
サルコグリカン異常症は、任意のサルコグリカン(SG)をコードする遺伝子の1つの突然変異によって引き起こされる常染色体劣性遺伝疾患である。例えば、肢帯型筋ジストロフィー2D型(LGMD2D)は、稀な常染色体劣性遺伝疾患で、α-サルコグリカンをコードする遺伝子、SGCAの突然変異によって横紋筋に影響を及ぼす。今日では、50を超える異なるSGCAミスセンス変異が報告されている。欠陥ポリペプチドは、潜在的に機能するが、細胞の品質管理によって認識されて処分されるので、これらは、α-サルコグリカンのフォールディング及び輸送に影響を及ぼすものと考えられる。α-サルコグリカンの相手、β-、γ-及びδ-サルコグリカンの副次的低減は、ジストロフィンに関連し、筋肉収縮中の筋細胞膜安定性の確保に関与する重要な膜複合体を破壊する。複合体の欠如は、筋消耗及びジストロフィーの重篤な形態の発症の原因となる。本発明者らは以前、CFTRコレクターとして知られている、ΔF508-CFTR輸送を回復するために開発された低分子の適用が、いくつかのα-サルコグリカン変異体の成熟を改善し、結果として細胞膜で回復させることを示した(国際公開第014086687号パンフレット)。ここで、本発明者らは、いくつかの特定のCFTRコレクターは組み合わせて投与したとき、相加効果及び相乗効果さえももたらすことを示す。
【0009】
従って、本発明の第1の目的は、N-(2-(5-クロロ-2-メトキシフェニルアミノ)-4'-メチル-4,5'-ビチアゾール-2'-イル)ピバルアミド(C17)及び更なる化合物、N-[2-(5-クロロ-2-メトキシ-フェニルアミノ)-4'-メチル-[4,5']ビチアゾリル-2'-イル]-ベンズアミド(C4)、4,5,7-トリメチル-N-フェニルキノリン-2-アミン(C5)、N-(4-ブロモフェニル)-4-メチルキノリン-2-アミン(C6)又はN-(2-(3-アセチルフェニルアミノ)-4'-メチル-4,5'-ビチアゾール-2'-イル)ベンズアミド(C13)の治療上有効な組合せをそれらを必要とする患者に投与することを含む、前記患者におけるサルコグリカン異常症を処置する方法に関する。
【0010】
本明細書で使用したように、用語「サルコグリカン異常症」は、当業界の一般的な意味を有し、サルコグリカン遺伝子のいずれかにおける突然変異から生じる筋ジストロフィーを意味する。特に、サルコグリカン異常症には、LGMD-2C、LGMD-2D、LGMD-2E及びLGMD-2Fが含まれる。
【0011】
本明細書で使用したように、用語「LGMD-2C」は、ガンマ-サルコグリカンをコードするSGCG遺伝子の突然変異によって引き起こされる肢帯型筋ジストロフィー2C型(サルコグリカン異常症)を意味する。
【0012】
本明細書で使用したように、用語「LGMD-2D」は、アルファ-サルコグリカンをコードするSGCA遺伝子の突然変異によって引き起こされる肢帯型筋ジストロフィー2D型(サルコグリカン異常症)を意味する。LGMD-2Dの最も一般的な欠陥は、ミスセンス変異c.229C>T/p.R77Cである。
【0013】
本明細書で使用したように、用語「LGMD-2E」は、ベータ-サルコグリカンをコードするSGCB遺伝子の突然変異によって引き起こされる肢帯型筋ジストロフィー2E型(サルコグリカン異常症)を意味する。
【0014】
本明細書で使用したように、用語LGMD-2Fは、デルタ-サルコグリカンをコードするSGCD遺伝子の突然変異によって引き起こされる肢帯型筋ジストロフィー2F型(サルコグリカン異常症)を意味する。
【0015】
本明細書で使用したように、用語「処置」又は「処置する」は、サルコグリカン異常症と診断された患者に関する治療を意味する。「治療計画」とは、疾病の処置のパターン、例えば、治療中に使用した用量投与のパターンを意味する。治療計画には、誘導計画及び維持計画を含めることができる。句「誘導計画」又は「誘導期間」は、疾患の初期処置のために使用される治療計画(又は治療計画の一部)を意味する。誘導計画の全般的な目標は、処置計画の初期期間中に対象に対して高レベルの薬物を提供することである。誘導計画は、(一部、又は全体において)、維持計画中に医師が使用するよりも多い用量の薬物を投与すること、維持計画中に医師が投与するよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含んでいてもよい「負荷計画」を使用することができる。句「維持計画」又は「維持期間」は、疾病の処置中の対象の維持のため、例えば、長期間に亘って(数ヶ月又は数年)患者を寛解に維持するために使用される治療計画(又は治療計画の一部)を意味する。維持計画は、持続療法(例えば、毎週、毎月、毎年等の規則的な間隔で薬物を投与すること)又は間欠療法(例えば、断続的処置、間欠処置、再発時の処置、又は特定の予め決定された基準(例えば、疾患の兆候等)の達成に対する処置)を使用することができる。
【0016】
薬物は、当業者にとっては周知である。例えば、C17の調製は、国際公開第2004111014号パンフレットに完全に記載されており、C4、C5、C6及びC13の調製は、国際公開第2006101740号パンフレットに記載されている。
【0017】
本明細書で使用したように、用語「組合せ」は、第1の薬物を更なる(第2、第3…の)薬物と一緒に提供する投与の全形態を意味するものとする。薬物は、同時、別々又は順次、及び任意の順番で投与することができる。組み合わせて投与した薬物は、薬物を送達した患者において生物学的活性を有する。本発明の状況内で、組合せはこのように少なくとも2つの異なる薬物を含み、1つの薬物はC17であり、その他の薬物はC4、C5、C6又はC13である。本発明では、本発明の組合せは、実施例によって例示したように、相加効果及び相乗的効果さえも提供する。用語「相乗」又は「相乗的」には、個々の効果と比較して2つ以上の薬剤の組合せの相加効果を上回る効果を包含する。一部の実施形態では、相乗又は相乗的効果は、例えば、医薬組成物において、又は処置の方法において、2つ以上の薬剤の組合せを使用することの有利な効果を意味する。
【0018】
「治療有効量」は、所望する治療結果を達成するために、必要な投薬量及び期間での有効な量を意味する。薬物の治療有効量は、個々の疾患状態、年齢、性別及び体重、個々において所望する応答を誘発する薬物の能力等の要素に従って変化し得る。治療有効量はまた、薬物のいかなる毒性効果又は有害な効果よりも治療上有益な効果が勝っている量である。薬物の効率的な投薬量及び投与計画は、処置する疾患又は症状に左右され、当業者が決定することができる。当技術分野における通常の技術を有する医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物で使用する薬物の用量を所望する治療効果を達成するために必要な用量よりも低いレベルで開始し、所望する効果が達成されるまで徐々に投薬量を増加させてもよい。全般的に、本発明の組成物の適切な用量は、特定の投与計画に従って治療効果を生じるために効果的な最も低い用量の化合物の量である。このような有効用量は、全般的に上述の要素に左右される。例えば、治療上の使用のための治療有効量は、疾患の進行を安定化させる能力によって測定することができる。治療化合物の治療有効量は、典型的に患者の症状を改善する。通常の当業者は、患者のサイズ、患者の症状の重症度、及び特定の組成物又は選択した投与経路等の要素に基づいてこのような量を決定することができるだろう。薬物の治療有効量の例示的、非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば、約0.1~50mg/kg、例えば、約0.1~20mg/kg、例えば、約0.1~10mg/kg、例えば、約0.5、例えば、約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kg又は約8mg/kgである。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であってもよく、例えば、標的部位の近くに投与してもよい。処置の上記方法の投与計画及び使用は、最適な所望する応答(例えば、治療応答)を提供するために調節する。例えば、いくつかの分割用量を徐々に投与してもよく、又は用量は治療状況の緊急性によって示されるように比例的に低減又は増加させてもよい。一部の実施形態では、処置の有効性は、治療中、例えば、予め規定した時点でモニターする。非限定的な例として、本発明による処置は、本発明の薬剤の1日投与量として、処置開始後、1日当たり約0.1~100mg/kg、例
えば、0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgの量で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日に少なくとも1回、或いは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20週に少なくとも1回、或いはそれらの任意の組合せで、単回投与又は24、12、8、6、4若しくは2時間毎の分割投与、又はそれらの任意の組合せを使用して提供することができる。
【0019】
典型的には、本発明の薬物は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で患者に投与する。これらの組成物で使用することができる薬学的に許容される担体には、限定はしないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースにした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が含まれる。対象への投与に使用するために、組成物は患者への投与用に製剤化される。本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーによって、又は埋め込み貯蔵体を介して投与することができる。本明細書での使用には、皮下、静脈内、筋肉内又は注入技術が含まれる。本発明の組成物の滅菌注射形態は、水性又は油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して当業界で公知の技術によって製剤化することができる。滅菌注射調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒に溶かした滅菌注射溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液であってもよい。使用することができる許容される媒体及び溶媒は、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、滅菌した、不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒体として便利に使用される。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の無菌性の不揮発性油を使用することができる。脂肪酸、例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に許容される油、例えば、オリーブ油又はヒマシ油であるので、注射可能物質の調製において、特に、ポリオキシエチレン化された種類において有用である。これらの油溶液又は懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース又はエマルジョン及び懸濁液を含む薬学的に許容される投薬形態の製剤化において通常使用される類似の分散剤を含有することができる。その他の通常使用される界面活性剤、例えば、Tween、Span及び薬学的に許容される固形物、液体又はその他の投薬形態の製造において通常使用されるその他の乳化剤又は生物学的利用率増強剤も、製剤化の目的のために使用することができる。本発明の組成物は、限定はしないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液を含む経口的に許容される任意の投薬形態で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体にはラクトース及びコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウム等の潤沢剤も典型的に添加する。カプセル形態での経口投与のためには、有用な希釈剤には、例えば、ラクトースが含まれる。水性懸濁液が経口使用のために必要な場合、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と一緒にする。所望するならば、ある特定の甘味剤、矯臭剤又は着色剤も添加することができる。或いは、本発明の組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。これらは、室温では固形物であるが、直腸温度では液体であり、従って直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することによって調製することができる。このような材料には、カカオ脂、ビーズワックス及びポリエチレングリコールが含まれる。組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解した活性成分を含有する適切なローション又はクリームに製剤化することができる。適切な担体には、限定はしないが、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれる。下部腸管への局所的適用は、直腸坐薬製剤(上記参照)又は適切な浣腸製剤で達成することができる。パッチも使用することができる。本発明の組成物はまた、経鼻エアロゾル又は吸入によって投与することができる。このような組成物は、医薬製剤の業界で周知の技術に従って調製し、ベンジルアルコール又はその他の適切な保存剤、生物学的利用率を増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又はその他の従来の溶解剤若しくは分散剤を使用して、生理食塩水の溶液として調製することができる。
【0020】
本発明は、以下の図面及び実施例によって更に例示される。しかし、これらの実施例及び図面は、けっして本発明の範囲の限定として解釈するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】CFTRコレクターの投与によるフォールディング欠陥R77C-α-SGの回復を示した図である。 A、一時的にR77C-α-SGを発現しており、コレクターC17、10μM、C4、5μM又はコレクターC17+C4の組合せ(それぞれ2分の1用量、すなわち、それぞれ5μM及び2.5μM)で24時間処理したβγδ細胞のタンパク質溶解物のウェスタンブロット。野生型α-SGを発現している細胞を陽性対照として利用した。膜は、α-SG及び負荷対照として使用したα-アクチニンに対する抗体で探索した。 B、少なくとも3つの独立したウェスタンブロット実験のα-SGタンパク質バンドの濃度測定分析による定量。α-SG(+/-SEM)の平均量は、野生型形態を発現している細胞におけるタンパク質含量のパーセンテージとして示す。統計学的解析は一元配置ANOVA検定-多重比較ダネット検定によって実施した。**、P≦0.01;****、P≦0.0001。
【
図2A】欠陥R77C-α-SGに対するC17+C4の併用投与の相乗効果を示した図である。R77C-α-SGを発現しており、媒体又は指示したコレクターで24時間処理したβγδ細胞のIF共焦点分析。インタクトな細胞(透過処理していない)を、細胞外エピトープを認識する抗α-SG抗体で免疫修飾し、Alexa Fluor 594結合抗マウス2次抗体によって明らかにした。野生型α-SGを発現している細胞を陽性対照として示す。各画像の右側に、DAPIによって染色した核を有する同じ領域を示す。画像は、Leica SP5レーザー走査共焦点顕微鏡で、同じ設定条件及び倍率で記録した。
【
図2B】欠陥R77C-α-SGに対するC17+C4の併用投与の相乗効果を示した図である。媒体(陰性対照)又は指示したコレクターで24時間処理した、R77C-α-SGを発現しているβγδ細胞の膜染色の平均蛍光強度、WT-α-SGを発現しているβγδ細胞を陽性対照として使用した。3連で実施した、少なくとも3つの独立した実験の蛍光値は、ImageXpress顕微鏡システムを使用して記録した。平均値(+/-SEM)は、トランスフェクション効率を考慮するために、透過処理条件下でα-SG及びDAPIの両方が陽性の細胞の数で正規化した。統計学的解析は一元配置ANOVA検定-多重比較ボンフェローニ検定によって実施した。n.s.、P>0.05;**、P≦0.01;***、P≦0.001;****、P≦0.0001。
【
図3】欠陥R77C-α-SGに対するC17+C5の併用投与の相加効果を示した図である。媒体(陰性対照)、C17 10μM、C5 5μM又はC17+C5(それぞれ2分の1用量、すなわち、それぞれ5μM及び2.5μM)で24時間処理した、R77C-α-SGを発現しているβγδ細胞の膜染色の平均蛍光強度。ImageXpress顕微鏡システムは、3連で実施した、少なくとも3つの独立した実験の蛍光値を記録するために利用した。平均値(+/-SEM)は、トランスフェクション効率を考慮するために透過処理条件下でα-SG及びDAPIの両方が陽性の細胞の数で正規化した。統計学的解析は一元配置ANOVA検定-多重比較ボンフェローニ検定を使用して実施した。n.s.、P>0.05;**、P≦0.01;***、P≦0.001。
【
図4】LGMD2D患者の筋管における欠陥α-SGに対するC17+C13の併用投与の相加効果を示した図である。SGCA対立遺伝子にL31P及びV247M変異を有するLGMD2D患者の筋原細胞形態を7日間分化させた。最後の4日間、細胞を媒体(陰性対照)、C17 5μM、C13 5μM又はC17+C13(それぞれ5μM)で処理した。処理の終了時に、筋管を溶解し、少なくとも3つの独立した実験のウェスタンブロット及び濃度測定分析によってα-SGの含量を評価した。α-SG(+/-SEM)の平均量は、陰性対照(媒体)のタンパク質含量の増加倍率として表す。統計学的解析は一元配置ANOVA検定-続いてチューキーHSD下位検定を使用して実施した。n.s.、P>0.05;*、P≦0.05;***、P≦0.001。
【
図5】LGMD2D患者の筋管における欠陥α-SGに対するC17+C6の併用投与の相加効果を示した図である。SGCA対立遺伝子にL31P及びV247M変異を有するLGMD2D患者の筋原細胞形態を7日間分化させた。最後の4日間、細胞を媒体(陰性対照)、C17 5μM、C6 15μM又はC17+C6(5μM+15μM)で処理した。処理の終了時に、筋管を溶解し、少なくとも3つの独立した実験のウェスタンブロット及び濃度測定分析によってα-SGの含量を評価した。α-SG(+/-SEM)の平均量は、陰性対照(媒体)のタンパク質含量の増加倍率として表す。統計学的解析は一元配置ANOVA検定-続いてチューキーHSD下位検定を使用して実施した。n.s.、P>0.05;*、P≦0.05;***、P≦0.01。
【実施例】
【0022】
化学物質及び処理
シクロヘキシミド、グラフェニン及びMG132は、Sigma-Aldrich社から、VX809及びVX770はSelleck Chemicals社から入手し、C4及びC17は嚢胞性線維症財団から恵与され、C4、C5、C6及びC13はExclusive Chemistry社から入手した。化合物は全てDMSOに溶解し、各処理において媒体の含量が同じ(1‰)になるように使用溶液は1000Xに調製した。
【0023】
プラスミド、細胞培養、トランスフェクション及び処理
pcDNA3哺乳類発現ベクターにクローニングしたヒトα-サルコグリカンをコードする完全長cDNAは以前に記載された(11)。α-サルコグリカンのミスセンス変異体を発現するプラスミドは以前に記載された(6、7)。
【0024】
HEK-293、V247M細胞(8)、HER-911及びβγδ-HERは、10%牛胎児血清(FBS)(Gibco社)を補給したダルベッコ改変イーグル培地(Sigma社)で増殖させ、5%CO2を含有する湿潤な雰囲気中で37℃で維持した。
【0025】
不死化ヒト筋芽細胞(12)はパリのMyology Instituteの「ヒト細胞培養プラットフォーム」から入手した。LGMD2D患者由来の初代ヒト筋原細胞はTelethon Genetic Bio-Bank facilityで生検断片から単離された(8)。筋原細胞は、骨格増殖培地(SGM)と称する15%FBS(Gibco社)を補給した骨格筋細胞増殖培地(Promocell社)で増殖させた。分化を開始するために、集密に増殖した筋芽細胞を、骨格分化培地(SDM)と称する2%ウマ血清(Euroclone社)、ヒト組換えインスリン(Sigma社)10μg/ml、ヒトアポトランスフェリン(Sigma-Aldrich社)100μg/mlを補給したDMEMでインキュベートした。分化は7日間実施した。
【0026】
一時発現のために、HEK293細胞を50000細胞/cm2で播種し、翌日Transit293(MirusBio社)で製造者の指示に従ってトランスフェクトした。トランスフェクションして24時間後、培地を2%FBSを補給し、指示した濃度のコレクター(DMSOに溶解した)を含有するDMEM又はDMSOのみ(最終DMSO濃度、0.1%)で置換した。HER911又はβγδ細胞を50000細胞/cm2で播種し、翌日9μlのFugene HDトランスフェクション試薬(Promega社製E2312)及び3μgの野生型又は変異型α-SGをコードするプラスミドでトランスフェクトした。MG132を細胞溶解の8時間前に添加し、CFTRコレクターは細胞溶解又はIFアッセイ(トランスフェクトしたHEK293、V247M細胞、HER911及びβγδ細胞)の24時間前、筋管溶解、CHXによる処理又はIFアッセイの24~96時間前に添加した。
【0027】
処理後、細胞を氷冷したPBSで2回洗浄し、完全プロテアーゼ阻害剤(Sigma-Aldrich社)を補給した5%デオキシコール酸ナトリウムで溶解した。
【0028】
安定的にβ-、γ-及びδ-サルコグリカンを発現するHER911細胞株の確立
安定的にβγδ-SGを発現するクローン細胞株は、レンチウイルスベクターを使用してHER911細胞にβ-SG、γ-SG及びδ-SG cDNAを組み込むことによって得た。細胞を6ウェルプレートに蒔いた翌日、β-、γ-及びδ-SGを発現するレンチウイルスベクターの適量を培養培地1mlを含有する各ウェルに直接添加し、細胞を100感染効率(MOI)で感染させた。37℃で3時間インキュベーション後、培養培地1mlを各ウェルに添加し、細胞を37℃で更に48時間インキュベートした。各ウェルを6ウェルプレートで再度継代培養し、上記で説明したように、形質導入を更に2回反復した。3回形質導入した後、細胞をT-75培養フラスコで継代培養し、100%の集密になるまで37℃で維持した。次に、細胞を収集し、遠心分離し、培養培地に5×105細胞/mlの密度で再懸濁した。クローン細胞株を得るために、単一細胞をAstrios Beckman Coulter(Brea社、CA)によって細胞懸濁液から選別し、96ウェルプレートの培養培地中に播種した。10日後、30個のクローン細胞株の全数を選択し、大きな培養プレートに継代培養した。30個のクローン全てにqPCR分析を行い、各SGのコピー数/ゲノムを決定し、RT-qPCR分析を行って、SGの発現をモニターした。SG発現陽性細胞クローン1個を次のステップのために選択した。
【0029】
免疫ブロット分析
タンパク質溶解物は、ビシンコニン酸タンパク質アッセイキット(Thermo Scientific社)によって、製造者の指示に従って定量した。タンパク質溶解物をNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4~12%ビス-トリスタンパク質ゲル(Thermo Fisher Scientific社)で分解し、ニトロセルロース膜(iBlot、Thermo Fisher Scientific社)に製造者の指示に従って移した。膜をOdysseyブロッキング緩衝液(Li-Cor社)で室温で1時間ブロックした。1次抗体(以下参照)でのインキュベートは、Odysseyブロッキング緩衝液中で4℃で一晩実施した。ロバ抗ウサギIRDye680及び抗マウスIRDye800抗体(EuroBio社)で室温で1時間インキュベートした後、タンパク質は、Odissey画像システム(Li-Cor社)で、製造者の指示に従って、蛍光によって検出した。
【0030】
濃度測定は、ImageJソフトウェアで実施した。α-サルコグリカンバンドの強度は、α-アクチニンの強度で正規化した。
【0031】
共焦点免疫蛍光法
免疫蛍光法-共焦点分析は、インタクトな細胞(透過処理していない)又は透過処理した細胞のいずれかで実施した。前者の条件では、細胞はポリリジンで処理したガラス上で増殖させ、処理の終了時に、4℃で30分間インキュベートし、その後氷冷PBSで2回ゆっくり洗浄し、1次抗体で4℃で5時間インキュベートした。氷冷PBSで3回ゆっくり洗浄した後、細胞を蛍光標識2次抗体で4℃で2時間インキュベートした。1次及び2次抗体は、0.5% BSAを補給したPBSで希釈した。2次抗体でインキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、その後PBSに溶かした4%パラホルムアルデヒド(PFA)で15分間固定した。NH4Cl 50mmol/Lで15分間インキュベートし、PBSで洗浄した後、核をHoechst又はDAPIで染色した。透過処理した細胞の分析では、上記のように増殖させて処理した細胞をPBSで洗浄し、PBS3.7%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich社)で室温で15分間固定した。スライドをPBSで濯ぎ、PBS 0.5% Triton X-100(Sigma-Aldrich社)で5分間透過処理し、次に10% SVFを含有するPBSで30分間ブロックして、非特異的染色を防いだ。1次及び2次抗体によるインキュベーションは前述のように実施した。細胞はLeica SP5共焦点レーザー走査顕微鏡で調べた。
【0032】
R77C-α-SGでトランスフェクトしたβγδ細胞の膜染色の平均蛍光強度の定量は、ImageXpress顕微鏡システム(Molecular Devices社)を使用することによって実施した。正規化は、トランスフェクション効率における可能性のある差を考慮するために、透過処理条件下で、DAPI及びα-SGの両方が陽性の細胞の数を計数することによって実施した。
【0033】
抗体
α-SGに特異的なマウスモノクローナル抗体(NCL-a-SARC)は、Leica Biosystem社から、α-アクチニンに特異的なウサギポリクローナル抗体はSanta Cruz社から入手した。Alexa fluor 488、Alexa fluor 594及びDyLight 488結合ヤギ抗マウス及びヤギ抗ウサギは、Life Technologies社から入手した。
【0034】
統計学的解析
データは平均+/-SEMで表す。群間の統計学的差は、一元配置ANOVA検定、続いて対照との同時多重比較についてはダネット検定又は可能性のある対照全体の同時比較についてはボンフェローニ検定(pairs)によって決定した。P<0.05の信頼度を統計学的有意性として使用した。
【0035】
結果
R77Cアミノ酸置換は、LGMD2Dに関与して最も頻繁に報告されている突然変異である[http://www.dmd.nl]。この変異体は、単独で発現したとき凝集する傾向があり、従って、野生型β-、γ-、δ-SGをコードするcDNAがレンチウイルス形質導入によってHER911細胞のゲノムに安定的に組み込まれた、以後βγδ細胞と称する細胞株を確立した(データは示さず)。野生型又はR77C-α-SGのいずれかによるその後のトランスフェクションによって、最終的な細胞モデルの生成がもたらされた。βγδ細胞(未処理であるか、又は唯一の媒体で処理されている)中でトランスフェクトされたR77C-α-SGのレベルは非常に低く、野生型と比較して約20%であり(
図1A及び
図1B)、タンパク質は細胞膜ではほとんど検出不可能で(
図2A、媒体)、患者の筋肉細胞に存在する状態をよく模倣している(9、10)。このモデルは、単一分子として、又は組合せのいずれかで投与したCFTRコレクターC17及びC4の有効性を評価するために利用した。C17及びC4による処理は、R77C-α-SGタンパク質含量の3から4倍の増加を誘導した(
図1A及び
図1B)。意外なことに、透過処理していない細胞の強い細胞表面染色によって明らかなように、回復したタンパク質が細胞膜に局在していた(
図2A)。特に、各コレクターが単一適用の半用量であるC17+C4併用投与は、変異体の全含量が野生型の含量に達したので、より着実な効果を引き起こした(
図1B)。更に、細胞膜での蛍光シグナルの強度は、ImageXpress顕微鏡システムを使用して評価すると、個々に適用したコレクターによって得られる強度よりも有意に高かった(
図2B)。次に、単一の投与と比較してまた半分の用量であるコレクターC5とコレクターC17との同時投与を試験した。この場合もまた、コレクターの組合せは、単一化合物投与と比較して、細胞表面α-SG回復の更なる増加を引き起こした(
図3)。また、コレクターC6とコレクターC17の同時投与及びコレクターC13とコレクターC17の同時投与を試験した(
図4及び
図5)。これらの場合もまた、コレクターの組合せは、単一化合物投与と比較して、細胞表面α-SG回復の更なる増加を引き起こした。これら全てを考慮して、R77C-α-SG等のサルコグリカンの変異体は、CFTRコレクター処理によってインビトロにおいてうまく回復することができ、コレクターは組み合わせて投与したとき、相加効果及び相乗効果さえも有し得ると結論づけた。
【0036】
(参考文献)
本明細書を通じて、様々な参考文献は本発明が属する従来技術について述べている。これらの参照文献の開示は、本明細書では本開示に参考として組み込まれる。