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  • 特許-運搬台車用の駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】運搬台車用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20230428BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20230428BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B60B19/00 H
B60K7/00
F16H1/32 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021104769
(22)【出願日】2021-06-24
(62)【分割の表示】P 2017026352の分割
【原出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2021178631
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】落合 修
(72)【発明者】
【氏名】富安 健也
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101654039(CN,A)
【文献】特開2008-174020(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101659287(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103182900(CN,A)
【文献】特開2015-083440(JP,A)
【文献】実開昭58-039316(JP,U)
【文献】特開2007-022342(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101659205(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
B60K 7/00
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
モータから入力される動力を減速して出力する減速機と、
前記減速機からの出力により回転するメカナムホイールと、を備え、
前記減速機は、前記モータからの動力を入力される減速部と、前記減速部を支持するキャリアと、前記キャリアに対して相対回転可能なケースと、を有する偏心揺動型減速機であり、
前記メカナムホイールは、前記ケースに固定され、
前記キャリアは、前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸方向における前記減速機の一方の側から他方の側に連続して延び、
前記減速機は、前記軸方向に連続して延びる前記キャリアと前記ケースとの間に配置された一対の軸受をさらに備え、
前記一対の軸受は、前記軸方向において前記減速部の一方の側及び他方の側に配置され、
前記減速機の少なくとも一部は、前記メカナムホイールの回転軸線を中心とする径方向における前記メカナムホイールの内側に配置され、
前記方向において、前記メカナムホイールと前記ケースとの接続部分の中心は、前記一対の軸受の作用点の間に位置している、運搬台車用の駆動装置。
【請求項2】
前記一対の軸受は、前記キャリアと前記ケースの間でスラスト方向荷重およびラジアル方向荷重の両方を受ける、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記減速機の前記ケースは、前記メカナムホイールに圧入されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸方向において、前記メカナムホイールの少なくとも一部は、前記一対の軸受の作用点の間に位置している、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸方向において、前記メカナムホイールの中心は、前記一対の軸受の作用点の中心と一致している、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記一対の軸受は、前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸線を中心として回転可能な転動体を有する円筒コロ軸受である、請求項1に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車用の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用車輪としてメカナムホイールが知られている。メカナムホイールは、ホイール本体と、ホイール本体の外周に回転自在に取り付けられた複数のローラと、を有する。各ローラは、ホイール本体の回転軸線に対して傾斜した回転軸線を中心として回転自在に、ホイール本体に支持されている。このような特殊な構造を有するメカナムホイールを運搬台車の走行車輪として用いることにより、車体の前後方向以外の方向にも移動可能な運搬台車を実現可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公表2014-526419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メカナムホイールは、その複雑な構成や動作にともない、荷重のかかり方も複雑となる。とりわけメカナムホイールには複数の方向に荷重がかかることが予測され、このような荷重に耐え得る設計及び作製は、煩雑で困難とされてきた。結果として、メカナムホイールを含む台車は、未だ広く普及されるに至っていない。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、メカナムホイールを含む運搬用台車の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による運搬台車用の駆動装置は、
モータと、
モータから入力される動力を減速して出力する減速機と、
前記減速機からの出力により回転するメカナムホイールと、を備え、
前記減速機は、前記モータからの動力を入力される減速部と、前記減速部を支持するキャリアと、前記キャリアに対して相対回転可能なケースと、を有し、
前記メカナムホイールは、前記ケース又は前記キャリアに固定されている。
【0007】
この場合、前記減速機は、前記キャリアと前記ケースとの間に配置された一対の軸受をさらに備え、
前記一対の軸受は、前記キャリアと前記ケースの間でスラスト方向荷重およびラジアル方向荷重の両方を受けてもよい。
【0008】
また、前記減速機の少なくとも一部は、前記メカナムホイールの回転軸線を中心とする径方向における前記メカナムホイールの内側に配置されていてもよい。
【0009】
また、前記減速機の前記ケースは、前記メカナムホイールに圧入されていてもよい。
【0010】
前記減速機は、前記キャリアと前記ケースとの間に配置された一対の軸受をさらに備え、
前記減速機の少なくとも一部は、前記メカナムホイールの回転軸線を中心とする径方向における前記メカナムホイールの内側に配置され、
前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸方向において、前記メカナムホイールの少なくとも一部は、前記一対の軸受の作用点の間に位置していてもよい。
【0011】
また、前記減速機は、前記キャリアと前記ケースとの間に配置された一対の軸受をさらに備え、
前記減速機の少なくとも一部は、前記メカナムホイールの回転軸線を中心とする径方向における前記メカナムホイールの内側に配置され、
前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸方向において、前記メカナムホイールの中心は、前記一対の軸受の作用点の中心と一致していてもよい。
【0012】
また、前記減速機は、前記キャリアと前記ケースとの間に配置された一対の軸受をさらに備え、
前記一対の軸受は、前記メカナムホイールの回転軸線と平行な軸線を中心として回転可能な転動体を有する円筒コロ軸受であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メカナムホイールを含む運搬用台車の駆動装置に十分な強度を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態を説明する図であって、運搬台車用の駆動装置を示す概略斜視図。
図2図1に示す駆動装置の回転軸線に沿った断面図。
図3】本発明の第2の実施の形態を説明する図であって、運搬台車用の駆動装置の回転軸線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面は簡略化されており、例えば各要素の寸法、各要素間の寸法比及び各要素の具体的な形状が、実物のそれらから異なっている部分が図面に含まれうる。ただし、当業者であれば、そのような簡略化された図面から、以下に説明する実施形態及び本発明のその他の実施形態を十分に理解することが可能である。
【0016】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る運搬台車用の駆動装置を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す駆動装置のモータの回転軸線に沿った断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、駆動装置10は、モータ20と、モータ20から入力される動力、すなわち回転を減速して出力する減速機30と、減速機30からの出力により回転するメカナムホイール40と、を備える。
【0018】
図2に示すように、減速機30は、モータ20からの動力(回転)を入力される減速部31と、減速部31を支持するキャリア32と、キャリア32に対して相対運動可能なケース33と、を有している。また、図2に示す例においては、減速機30は、さらに、モータ20を支持する基部34を有している。
【0019】
ケース33及び基部34は、概ね円筒状の部材であり、モータ20の回転軸線Ax方向に延在する。基部34の一方の端部には、モータ20の本体部21が、図示しない締結部材によって基部34に取り付けられている。一方、基部34の他方の端部には、ケース33の一方の端部が、ボルト等の締結部材51によって固定されている。
【0020】
回転軸線Axを中心とする径方向におけるケース33及び基部34の内側には、入力軸35が、回転軸線Ax方向に延在している。また、回転軸線Axを中心とする径方向におけるケース33の内側には、減速部31及びキャリア32が配置されている。
【0021】
入力軸35は、減速部31にモータ20の動力を入力するインプットギアとして機能する。具体的には、入力軸35の一方の端部には、モータ20の出力軸25が接続されている。これにより、入力軸35は、モータ20の出力軸25と一体的に、回転軸線Axを中心に回転することができる。このようにして、モータ20から出力される動力(回転)が、入力軸35に伝達される。入力軸35は、その他方の端部において、減速部31にモータ20の動力を入力するようになっている。
【0022】
なお、モータ20の本体部21及び出力軸25は、それぞれ、基部34及び入力軸35に着脱可能に取り付けられている。そのため、モータ20は、必要に応じて交換することが可能である。
【0023】
減速部31は、入力軸35から入力される動力(回転)を減速して、トルクが増大された動力をキャリア32またはケース33に伝達する。図2に示す例においては、ケース33は基部34に固定されているため、減速部31は、キャリア32に動力を伝達し、キャリア32を回転させる。
【0024】
図2に示す例においては、減速機30は、偏心揺動型減速機として構成されており、減速部31は、偏心揺動歯車をなしている。偏心揺動型の減速機は、一般にバックラッシが小さく、駆動装置10全体の誤動作を低減させることが可能である。もちろん、減速機30としては、偏心揺動型減速機に限られず、他の方式の減速機も採用可能である。例えば、減速機30は、遊星歯車型減速機であってもよいし、遊星歯車型及び偏心揺動型が組み合わされた減速構造によって構成されてもよい。また、他の任意の方式の減速構造によって減速機30が構成されてもよい。なお、減速機30が遊星歯車型減速機である場合、減速部31は、遊星歯車をなす。
【0025】
キャリア32は、減速部31を保持している。また、キャリア32は、ケース33との間に配置された一対の軸受60a,60bによって、ケース33に対して相対回転可能に接続されている。図2に示す例においては、減速部31が固定されたケース33と噛み合うことにより、キャリア32は、減速部31とともに減速された回転数にて回転軸線Axを中心に回転する。キャリア32は、また、一対の軸受60a,60bによって、ケース33に対する回転軸線Ax方向への移動を規制されている。
【0026】
一対の軸受60a,60bは、また、キャリア32やケース33等に加えられる荷重を支える。ここで、運搬台車にメカナムホイールを用いる場合、キャリア32やケース33等には、メカナムホイールからスラスト方向荷重やラジアル方向荷重が加えられ得る。ここでいうスラスト方向とは、回転軸線Axが延在する方向である。また、ラジアル方向とは、回転軸線Axを中心とする径方向である。一対の軸受60a,60bは、キャリア32とケース33の間でスラスト方向荷重およびラジアル方向荷重の両方を受けることができる。このような一対の軸受60a,60bがキャリア32とケース33との間に配置されていることにより、当該スラスト方向荷重およびラジアル方向荷重が減速機30の各部品、例えば減速部31、に伝えられることが防止される。この結果、減速機30を長寿命化させることが可能である。なお、図2に示す例においては、軸受60a,60bは、アンギュラ玉軸受であり、それぞれ、軌道輪61a,61bと、軌道輪61a,61bに囲まれた一列の球状の転動体62a,62bと、を含んでいる。
【0027】
なお、一対の軸受60a,60bは、アンギュラ玉軸受に限られず、他の方式の軸受であってもよい。例えば、一対の軸受60a,60bは、後述するメカナムホイール40の回転軸線Bxと平行な軸線を中心として回転可能な転動体を有する円筒コロ軸受であってもよい。この場合も、一対の軸受60a,60bは、少なくともラジアル方向荷重を受けることができる。この結果、当該ラジアル方向荷重が減速機30の各部品、例えば減速部、に伝えられることが防止される。この結果、減速機30を長寿命化させることが可能である。なお、メカナムホイール40の内側に減速機30が配置される後述の例では、減速機30を構成する各要素へのスラスト方向荷重は小さく、ラジアル方向荷重が大きくなるので、メカナムホイール40の回転軸線Bxと平行な軸線を中心として回転可能な転動体を有する円筒コロ軸受は好適といえる。
【0028】
キャリア32の他方の端部には、メカナムホイール40を接続するための接続部80が、ボルト等の締結部材53により固定されている。この接続部80に対して、後述するメカナムホイール40のホイール本体41が、ボルト等の締結部材52により固定される。接続部80は、メカナムホイール40と減速機30との間に無駄な隙間が形成されることのないよう、メカナムホイール40及び減速機30の寸法に合わせて設計されている。また、接続部80は、運搬台車の走行時にメカナムホイール40に加わる荷重の大きさや向きを考慮して、当該荷重に耐え得るだけの強度を有するように設計さている。もちろん、接続部80を減速機30に固定する締結部材53や減速機30も、メカナムホイール40の寸法やメカナムホイール40に加わる荷重の大きさや向きを考慮して設計されている。すなわち、本実施の形態においては、駆動装置10全体が、メカナムホイール40に加わる荷重の大きさや向きを考慮して設計されている。
【0029】
基部34とケース33とキャリア32とによって囲まれる内部空間Sは、シール部70によってシールされている。本実施形態のシール部70は、基部34と入力軸35との間をシールする第1シール要素71と、ケース33とキャリア32との間をシールする第2シール要素72と、を有する。減速部31及び軸受60a,60bは、シール部70によってシールされて閉じられた内部空間Sに配置されている。
【0030】
次に、メカナムホイールについて説明する。
【0031】
図1に示すように、メカナムホイール40は、ホイール本体41と、ホイール本体41の外周に回転自在に取り付けられた複数の樽形状のローラ42と、を有する。各ローラ42は、ホイール本体41の回転軸線Bxに対して傾斜した回転軸線Byを中心として回転可能に、ホイール本体41に支持されている。ローラ42の回転軸線Byは、メカナムホイール40の回転軸線Bxに対しておよそ45°の角度を成している。
【0032】
図2に示す例においては、メカナムホイール40は、キャリア32の接続部80に、メカナムホイール40の回転軸線Bxとキャリア32の回転軸線Axとが一致するように固定されている。なお、後述の例のように、減速部31がケース33を回転させるようになっている場合、メカナムホイール40は、ケース33に固定され、ケース33とともに回転するようにしてもよい。
【0033】
このような駆動装置10が、図示しない車体に取り付けられることにより、運搬台車が構成される。なお、駆動装置10は、モータ20からの動力が減速機30を介してホイール40に伝達される台車類全般に対して適用可能である。例えば、走行時にオペレータによるアシストを要する台車に対してだけではなく、走行時にオペレータによるアシストを要しないAGVやRGVなどの台車(すなわち無人搬送車)に対しても、本発明に係る駆動装置10を応用することが可能である。
【0034】
以上に説明した第1の実施の形態による運搬台車用の駆動装置10は、モータ20と、モータ20から入力される動力を減速して出力する減速機30と、減速機30からの出力により回転するメカナムホイール40と、を備えている。そして、減速機30は、モータ20からの動力を入力される減速部31と、減速部31を支持するキャリア32と、キャリア32に対して相対回転可能なケース33と、を有しており、メカナムホイール40は、ケース33又はキャリア32に固定されている。
【0035】
このような駆動装置においては、減速機30に対して十分な強度を付与することが可能であり、このような減速機30を介して、メカナムホイール40をモータ20に接続して用いることができる。また、種々の強度や大きさの減速機30を予め設計または用意しておくことで、メカナムホイール40の適用時に複雑な強度計算やそれに基づく設計及び作製等の負担を大幅に軽減することができる。また、本実施の形態によれば、メカナムホイール40の寸法やメカナムホイール40に加わる荷重の方向および大きさを考慮して減速機30あるいは駆動装置10全体を設計することもできる。
【0036】
また、第1の実施の形態では、減速機30は、キャリア32とケース33との間に配置された一対の軸受60a,60bをさらに備え、一対の軸受60a,60bは、キャリア32とケース33の間でスラスト方向荷重およびラジアル方向荷重の両方を受ける。この結果、当該スラスト方向荷重およびラジアル方向荷重が減速機30の各部品、例えば減速部31、に伝えられることが防止される。この結果、減速機30を長寿命化させることが可能である。
【0037】
あるいは、減速機30は、キャリア32とケース33との間に配置された一対の軸受60a,60bをさらに備え、一対の軸受60a,60bは、メカナムホイール40の回転軸線Bxと平行な軸線を中心として回転可能な転動体を有する円筒コロ軸受であってもよい。この場合、一対の軸受60a,60bは、ラジアル方向荷重を受けることができる。この結果、当該ラジアル方向荷重が減速機30の各部品、例えば減速部31、に伝えられることが防止される。この結果、減速機30を長寿命化させることが可能である。
【0038】
〔第2の実施の形態〕
次に、図3を参照して、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、減速機の少なくとも一部がメカナムホイールの内側に配置されている点と、メカナムホイールがキャリアではなくケースに固定されている点と、において、第1の実施の形態と異なり、他の構成は、第1の実施の形態と略同一である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0039】
図3に示す駆動装置100において、減速機30の減速部31は、動力をケース33に伝達するようになっている。具体的には、図3に示す例においては、ケース33は基部34に固定されておらず、キャリア32が基部34にボルト等の締結部材55によって固定されている。この結果、減速部31は、動力をケース33に伝達して、ケース33を回転させるようになっている。
【0040】
また、図3に示す駆動装置100においては、減速機30の少なくとも一部が、メカナムホイール40の回転軸線Bxを中心とする径方向におけるメカナムホイール40の内側に配置されている。つまり、回転軸線Ax方向において、減速機30の少なくとも一部は、メカナムホイール40と重複する領域に配置されている。具体的には、減速機30のケース33が、メカナムホイール40に圧入されている。メカナムホイール40のホイール本体41は、ボルト等の締結部材56によってケース33に固定されているだけでなく、ケース33によってホイール本体41の内周側から支持されている。もちろん、減速機30のケース33は、圧入以外の方法、例えばすきまばめ、によってメカナムホイール40の内側に配置されてもよい。
【0041】
このように、減速機30の少なくとも一部がメカナムホイール40の内側に配置されていることにより、駆動装置100の回転軸線Bx方向の寸法を小さくすることができる。また、メカナムホイール40から減速機30に加えられる力のモーメントをより小さくすることが可能である。この結果、減速機30をより長寿命化させることが可能である。また、メカナムホイール40から減速機30に加えられる力のモーメントが小さくなることにより、メカナムホイール40を減速機30に固定する締結部材56の寸法を、より小さくすることが可能である。
【0042】
図3に示す例では、メカナムホイール40の回転軸線Bxと平行な軸方向において、メカナムホイール40の少なくとも一部は、軸受60aの作用点P1と軸受60bの作用点P2との間に位置している。ここで、軸受60a,60bの作用点P1,P2とは、軸受60a,60bの軌道輪61a,61bによって当該軌道輪61a,61bによって囲まれた一列の転動体62a,62bに伝えられる力の合力が軸受60a,60bの中心軸Cxと交わる点のことである。メカナムホイール40の少なくとも一部が軸受60aの作用点P1と軸受60bの作用点P2との間に位置していることにより、減速機30に加えられる力のモーメントをより効果的に小さくすることが可能である。
【0043】
さらに、図3に示す例においては、メカナムホイール40の中心Oは、一対の軸受60a,60bの作用点Pa,Pbの中心と一致している。この場合、メカナムホイール40から減速機30に加えられる力のモーメントをゼロにすることが可能である。この結果、減速機30をより一層長寿命化させることが可能である。
【0044】
図3に示す例において、基部34とケース33とキャリア32とによって囲まれる内部空間Sは、シール部170によってシールされている。本実施形態のシール部170は、基部34と入力軸35との間をシールする第1シール要素171と、ケース33とキャリア32との間をシールする第2シール要素172と、ケース33の他方の端部をシールする第3シール要素173と、を有する。減速部31及び軸受60a,60bは、シール部170によってシールされて閉じられた内部空間Sに配置されている。
【0045】
以上に説明した第2の実施の形態による運搬台車用の駆動装置100において、減速機30の少なくとも一部は、メカナムホイール40の回転軸線Bxを中心とする径方向におけるメカナムホイール40の内側に配置されている。このため、駆動装置100の回転軸線Bx方向の寸法を小さくすることができる。また、メカナムホイール40によって減速機30に加えられる力のモーメントをより小さくすることが可能である。この結果、減速機30をより長寿命化させることが可能である。また、メカナムホイール40から減速機30に加えられる力のモーメントが小さくなることにより、メカナムホイール40を減速機30に固定する締結部材56の寸法をより小さくすることが可能である。
【0046】
また、減速機30のケース33は、メカナムホイール40に圧入されている。これにより、メカナムホイール40のホイール本体41は、その内周側からケース33によって支持される。この結果、メカナムホイール40の強度を向上させることが可能である。
【0047】
また、メカナムホイール40の回転軸線Bxと平行な軸方向において、メカナムホイール40の少なくとも一部は、一対の軸受60a,60bの作用点P1,P2の間に位置している。これにより、メカナムホイール40から減速機30に加えられる力のモーメントを、より効果的に小さくすることが可能である。この結果。減速機30をより一層長寿命化させることが可能である。
【0048】
また、メカナムホイール40の回転軸線Bxと平行な軸方向において、メカナムホイール40の中心Oは、一対の軸受60a,60bの作用点の中心と一致している。これにより、メカナムホイール40から減速機30に加えられる力のモーメントをゼロにすることが可能である。この結果。減速機30をより一層長寿命化させることが可能である。
【0049】
本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。例えば、上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素及び/又は方法以外の構成要素及び/又は方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、上述の構成要素及び/又は方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。
【符号の説明】
【0050】
10 駆動装置
20 モータ
25 出力軸
30 減速機
31 減速部
32 キャリア
33 ケース
34 基部
35 入力軸
40 メカナムホイール
41 ホイール本体
42 ローラ
60a 軸受
60b 軸受
図1
図2
図3