(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】車体アンテナモジュールおよび車体アンテナモジュールを冷却するための方法
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20230428BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20230428BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B60R11/02 A
H01Q1/32 Z
H01Q23/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021144405
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10 2020 123 549.6
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506076628
【氏名又は名称】ヒルシュマン カー コミュニケーション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hirschmann Car Communication GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 45-51, D-72654 Neckartenzlingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】マルクス プフレッツヒンガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アダム
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ダウム
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シャイヒ
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ベーメルト
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0170542(US,A1)
【文献】特表2017-510095(JP,A)
【文献】特開2008-094380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0254900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
H01Q 1/32
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両
用の車体アンテナモジュール(10
)であって、
少なくとも、下部ハウジング(100)と、テレマティックスユニット(200)と、アンテナ支持体(400)とを備え
、前記アンテナモジュール(10)は、前記テレマティックスユニット(200)のテレマティックスプリント回路基板(202)
が冷却可能であるように構成されている、車体アンテナモジュールにおいて、
前記テレマティックスユニット(200)または前記テレマティックスプリント回路基板(202)の第1の部分(214)は強制空気流によって冷却可能であり、前記テレマティックスユニット(200)または前記テレマティックスプリント回路基板(202)の第2の部分(224)はペルティエ素子(222)によって冷却可能である
とともに、
前記第1の部分(214)は前記テレマティックスプリント回路基板(202)の非NAD領域(214)として構成され、前記第2の部分(224)は前記テレマティックスプリント回路基板(202)のNAD領域(224)として構成されることを特徴とする、
車体アンテナモジュール
(10)。
【請求項2】
・前記テレマティックスプリント回路基板(202)は、前記NAD領域(224)と前記非NAD領域(214)との間に、相互の熱交換を分断するための熱バリア手段(204)を備え、かつ/または、
・前記熱バリア手段(204)は、前記テレマティックスプリント回路基板(202)
を頭部(224)、首部(205)、および胴部(214)に分割する、前記テレマティックスプリント回路基板(202)の2つの貫通スリット(204、204)を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項3】
・前記アンテナモジュール(10)は、前記
車両の車体が前記アンテナモジュール(10)
のヒートシンクとして作用するように構成され、
・前記アンテナモジュール(10)は、前記テレマティックスユニット(200)からの熱をその下部ハウジング(100)を介して前記車体に伝達することができるように構成され、かつ/または、
・前記アンテナモジュール(10)は、
長手方向端部にファン(132)を備え、前記ファン(132)によって強制的に送風可能な空気流が、少なくとも前記テレマティックスプリント回路基板(202)の前記第1の部分(214)に向けられることを特徴とする、
請求項1または2に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項4】
前記テレマティックスユニット(200)は領域(214、220)を含み、
・前記テレマティックスユニット(200)の第1の領域(214)は、前記テレマティックスプリント回路基板(202)の前記非NAD領域(214)に対応し、
・前記テレマティックスユニット(200)の第2の領域(220)は、前記テレマティックスプリント回路基板(202)の前記NAD領域(224)が冷却可能に配置される冷却パッケージ(220)を含み、かつ/または、
・前記テレマティックスユニット(200)の少なくとも1つの領域(214/220)または両方の領域(214、220)は、前記下部ハウジング(100)と熱伝達接触することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項5】
・前記テレマティックスプリント回路基板(202)の前記第2の部分(224)は、前記テレマティックスユニット(200)の前記冷却パッケージ(220)に配置され、
・前記冷却パッケージ(220)は、前記ペルティエ素子(222)、前記テレマティックスプリント回路基板(202)の前記NAD領域(224)、およ
び冷却パッケージカバー(226)を備え、かつ/または、
・前記冷却パッケージ(220)は、前記ペルティエ素子(222)および前記NAD領域(224)を収容できる収容フレーム(223)をさらに備え、前記収容フレーム(223)は
、前記冷却パッケージカバー(226)によって閉鎖可能であることを特徴とする、
請求項
4に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項6】
・前記NAD領域(224)は前記ペルティエ素子(222)の低温側と熱伝達接触し、
・
前記テレマティックスプリント回路基板(202)の前記NAD領域(224)が冷却可能に配置される冷却パッケージ(220)は、パッケージ構成要素が前記アンテナモジュール(10)の垂直方向(Hr)に積み重なって配置されるサンドイッチ構造を有し、かつ/または、
・前記
アンテナモジュール(10)のファン(132)によって強制的に送風可能
な空気流は、前記テレマティックスユニット(200)の前記冷却パッケージ(220)にさらに向けられることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項7】
前記下部ハウジング(100)は、少なくとも1つ
のベースプレートを備え、
・前記ベースプレートの第1の部分が前記非NAD領域(214)と熱伝達接触し、
・前記ベースプレートの第2の部分が
、前記ペルティエ素子(222
)と熱伝達接触し、かつ/または、
・相互の熱交換を分断するために、前記ベースプレートは、
前記第1の部分と
前記第2の部分との間に熱バリア手段を備えることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項8】
前記下部ハウジング(100)は少なくとも
第1のベースプレート(110)および第2のベースプレート(120)を備え、
・前記第1のベースプレート(110)は
、前記非NAD領域(214)と熱伝達接触し、
・前記第2のベースプレート(120)は
、前記ペルティエ素子(222
)と熱伝達接触し、かつ/または、
・相互の熱交換を分断するために、前記
第1のベースプレート(110)および前記第2のベースプレート(120)は、前記アンテナモジュール(10)において、熱バリアスリット(115)を介して互いに離間して配置されていることを特徴とする、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項9】
・少なくとも1つのまたは1つの対応するアンテナ支持体(400)が、前記第1のベースプレート(110)および/または前記第2のベースプレート(120)に配置され、
・前記
アンテナモジュール(10)のファン(132)によって強制的に送風可能
な空気流は、少なくとも1つのアンテナ支持体(400)にさらに向けられ、
・前記下部ハウジング(100)は
長手方向端部に側端部(130)を含み、前記側端部(130)に前記ファン(132)が取り付けられ、かつ/または、
・前記下部ハウジング(100)は
長手方向端部に側端部(140)を含み、前記側端部(140)は空気出口を含むことを特徴とする、
請求
項8に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項10】
・前記下部ハウジング(100)は
、車体(0)に面接続可能であるように構成され、
・前記下部ハウジング(100)は、熱伝達デバイス(102
)をその外面に含み、
・前記アンテナモジュール(10)自体には、別個のヒートシン
クがなく、
・前記アンテナモジュール(10)は、前記下部ハウジング(100)
の前記テレマティックスユニット(200)と上部ハウジング(500)との間に別のプリント回路基板(300)を備え、
かつ/または、
・前記アンテナモジュール(10)の最大高さは、おおよそ、
50mm、45mm、40mm、35mm、32.5mm、30mm、27.5mm、25mm、22.5mm、20mm、17.5mm、もしくは15mmであ
ることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項11】
前記熱伝達デバイス(102)は、熱伝導パッドである、
請求項10に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項12】
前記車体アンテナモジュール(10)は、直方体の形状を有する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項13】
前記車両は、自動車である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項14】
車
両の車体(0)、または車
両であって、
前記車体(0)または前記車両は、請求項1から
13のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10
)を備え
ることを特徴とする、
車体または車両。
【請求項15】
自動車の車体(0)、または自動車であって、
前記車体(0)または前記自動車は、請求項1から13のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)を備えることを特徴とする、
車体または自動車。
【請求項16】
前記車体アンテナモジュール(10)は、5Gアンテナモジュール(10)である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の車体アンテナモジュール(10)。
【請求項17】
前記車体アンテナモジュール(10)は、5Gアンテナモジュール(10)である、
請求項14に記載の車体または車両。
【請求項18】
前記車体アンテナモジュール(10)は、5Gアンテナモジュール(10)である、
請求項15に記載の車体または自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車用の車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールに関する。さらに、本発明は、車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールを冷却するための方法に関する。加えて、本発明は車体および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102016123868号(米国特許第10135110号)は、車両のルーフに取り付け可能であり、冷却システムを有する、外付け車体ルーフアンテナモジュールを開示している。この冷却システムは、バッテリと、バッテリにより電流が供給され得るペルティエ冷却素子とを備える。アンテナとアンテナに属するアンテナモジュールの電子機器は、ペルティエ冷却素子の低温側に配置されている。アンテナは、電子機器から信号を放射し、または放射された信号を別の通信デバイスから受信するように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102016123868号(米国特許第10135110号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車産業は、新世代の自動車に5G技術を備えることになる。5G技術は高周波であるため、ケーブル損失を避けるためにネットワークアクセスデバイス(NAD)トランシーバをアンテナモジュールに近づけることが好都合である。外付けまたは内蔵ルーフアンテナモジュールは、良好な高周波性能を示すが、日光に当たると高温になることがあるという欠点を有し、将来的に、温度感知トランシーバをそのような高温領域に組み込むことになる。車両ルーフ下/内の温度は最高105℃に達する。トランシーバの一般的な動作温度範囲は-40℃~+85℃である(+85℃を超えると、NADトランシーバのSAWフィルタは、通常、その有効性を失うか、または仕様の範囲外で動作するため、使用できなくなる)。したがって、本発明の目的は、車両、特に自動車用の、改良された外付けおよび/または内蔵車体アンテナモジュールを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、車両、特に自動車用の車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールによって、車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールを冷却するための方法によって、ならびに車体および車両によって達成される。本発明の有利な改良点、追加の特徴、および/または利点は、従属請求項および以下の説明から得られる。
【0006】
アンテナモジュールのNADトランシーバがそのような高温環境で機能できるようにするための、積極的な冷却が必要である。電源、増幅器、CPU、イーサネットデバイス、Wi-Fi、GNSS、SDARSなどの他の構成要素は、最高125℃のより高い温度(接合部温度)で動作することができる。さらなる課題は、インテリジェントアンテナモジュール全体で利用できる空間が制限されることである。ここでは、異なる臨界温度範囲間の熱短絡を避けなければならない。したがって、小さい領域において大きい温度差を管理できなければならない。
【0007】
本発明による車体アンテナモジュールは、少なくとも、下部ハウジングと、テレマティックスユニットと、アンテナ支持体、例えば、アンテナプリント回路基板とを備え、主に横方向に延びるアンテナモジュールは、テレマティックスユニット(telematics unit)のテレマティックスプリント回路基板が積極的に冷却可能であるように構成されており、テレマティックスユニットまたはテレマティックスプリント回路基板の第1の部分は強制空気流によって冷却可能であり、テレマティックスユニットまたはテレマティックスプリント回路基板の第2の部分はペルティエ素子によって冷却可能である。
【0008】
「車体アンテナモジュール」という用語は、このアンテナモジュールが、車両、特に自動車の車体の一部、特に少なくとも1つの車体部分、後部車体、少なくとも1つの後部車体部分、(後部)車両ルーフなどに取り付けられ、かつ/または設置されるように構成されていることを表すよう意図されている。ここで、アンテナモジュールは、外付けアンテナモジュールとして(すなわち、車体に外側から取り付け可能)、および/または特に内蔵アンテナモジュールとして(すなわち、車体の内部、例えば、外殻、カバーなどの下に取り付け可能)構成することができる。当然、これらのハイブリッド形態を使用してもよい。
【0009】
第1の部分をテレマティックスプリント回路基板の非NAD領域として構成することができ、第2の部分をテレマティックスプリント回路基板のNAD領域として構成することができる。テレマティックスプリント回路基板は、NAD領域と非NAD領域との間に、相互の熱交換を分断するための熱バリア手段を備えることができる。熱バリア手段は、特に、テレマティックスプリント回路基板の非NAD領域からNAD領域への熱の流入を防ぐよう意図されている。熱バリア手段を、例えば、テレマティックスプリント回路基板の貫通スリット、縮小した断面、接地導体の縮小、金属、特に銅の存在の局所的な減少などとして配置することができる。
【0010】
テレマティックスプリント回路基板のNAD領域は、ネットワークアクセスデバイス(NAD)および場合によりその周辺機器(
図6参照)が配置される領域である。特に、これは、テレマティックスプリント回路基板の特定の端部であってよい。したがって、非NAD領域は、NADおよび場合によりその周辺機器から離れたテレマティックスプリント回路基板の領域である。さらに、代替としてまたは追加として、NAD領域をテレマティックスプリント回路基板の熱的に重要な領域として構成および/または指定することができ、非NAD領域をテレマティックスプリント回路基板の熱的に重要でない領域として構成および/または指定することができる。
【0011】
一実施形態において、熱バリア手段(thermal barrier arrangement)は、テレマティックスプリント回路基板を好ましくは頭部(胴部に対して比較的小さい)、首部(頭部と胴部との間の狭小部)、および胴部(頭部に対して比較的大きい)に分割する、テレマティックスプリント回路基板の2つの貫通スリットを含む。貫通スリットは、テレマティックスプリント回路基板において基本的に対称に、特に鏡面対称に配置されることが好ましく、その頭部、首部、および胴部も、テレマティックスプリント回路基板において対称に、特に鏡面対称に配置されることが好ましい。テレマティックスプリント回路基板の対応する中央横方向は鏡軸であることが好ましい。
【0012】
車体または車両(全体)がアンテナモジュールの実質的なヒートシンクとして作用するように、アンテナモジュールを構成することができる。「実質的なヒートシンク」は、ファン(下記参照)による強制熱移送およびアンテナモジュールによるその他の放散以外の、唯一の所期のヒートシンクであると理解されるよう意図される。アンテナモジュールは、テレマティックスユニットからの熱をその下部ハウジングを介して車体に伝達することができるように構成することができる。下部ハウジングは、特に、良好な熱導体、特に金属、好ましくはアルミニウムから作製される。
【0013】
アンテナモジュールは、横方向端部(transverse end section)にファンを備えることができ、前記ファンによって強制的に送風可能な空気流が、少なくともテレマティックスプリント回路基板の第1の部分に向けられる。ファンは遠心ファンとして構成されることが好ましい。ファンは、テレマティックスプリント回路基板を横切って、場合により、さらに側方に、かつ/または底部を通り越して、またはアンテナモジュールを通して、強制空気流を吹き込むまたは吸い込むことができる。加えてまたはあるいは、アンテナモジュールは、車両の空調システムに流体機械的に接続可能でもある。
【0014】
テレマティックスユニットは、好ましくは横方向に互いに隣接する2つの領域を含むことができる。ここでは、テレマティックスユニットの第1の領域は、テレマティックスプリント回路基板の非NAD領域に対応し得る。さらに、テレマティックスユニットの第2の領域は、テレマティックスプリント回路基板のNAD領域が冷却可能に配置される冷却パッケージを含むことができる。加えて、テレマティックスユニットの少なくとも1つの領域または両方の領域は、下部ハウジングと熱伝達接触することができる。このために、熱伝達デバイス、例えば、熱伝導パッド、熱伝導ペースト、熱伝導ゲルなどを、下部ハウジングと対応する領域との間に配置することができる。
【0015】
テレマティックスプリント回路基板の第2の部分を、テレマティックスユニットの冷却パッケージに配置することができる。さらに、冷却パッケージは、ペルティエ素子、テレマティックスプリント回路基板のNAD領域、および好ましくは冷却パッケージカバーを備えることができる。冷却パッケージカバーを、金属、特にアルミニウム、および/またはプラスチックから形成することができる。冷却パッケージは、ペルティエ素子およびNAD領域を収容できる収容フレームをさらに備えることができ、収容フレームは、好ましくは冷却パッケージカバーによって閉鎖可能である。収容フレームを金属、特にアルミニウム、またはプラスチックから形成することができる。
【0016】
NAD領域は、ペルティエ素子の低温側と熱伝達接触することができる。当然、ペルティエ素子の低温側はペルティエ素子を通る電流の流れによって決まり、すなわち、ペルティエ素子は、その低温側がここ(NAD領域)に確立されるような方法で、冷却のために作動される。NAD領域を加熱する場合、例えば、外部温度が非常に低い場合には、当然、これは電流の流れを逆にすることによって可能になる(下記参照)。熱伝達接触を、熱伝達デバイス、例えば、熱伝導パッド、熱伝導ペースト、熱伝導ゲル、はんだなどによって確立することができる。冷却パッケージは、パッケージ構成要素がアンテナモジュールの垂直方向に積み重なって配置されるサンドイッチ構造を有することができる。さらに、ファンによって強制的に送風可能な空気流を、テレマティックスユニットの冷却パッケージにさらに向けることができる。空気流は、冷却パッケージを通り越して、特に冷却パッケージの下方および/または側面を流れる。
【0017】
冷却パッケージを、ある種の「冷蔵庫」または冷却ボックス(
図5も参照)として構成することができる。ペルティエ素子は、ペルティエ素子の動作中に温かい外面(この熱は、基本的に、下部ハウジング(第2のベースプレート(下記参照))を介して車体に伝達される)と冷却内面(冷却空間)とを有する冷蔵庫の後壁を形成する。収容フレームは、場合により冷却パッケージカバーのフレームと共に、冷蔵庫の周方向の外壁を形成し、さらに、冷却パッケージカバーは、閉じた冷蔵庫のドアとして機能し、ペルティエ素子の冷却内面とは反対側の冷蔵庫の冷却空間を閉鎖する。この措置により、NAD領域のNADまたはNAD領域が、熱的に絶縁されて、強制空気流から分断される。冷却パッケージは、液密または気密である必要はない。
【0018】
下部ハウジングは、少なくとも1つのまたは正確に1つのベースプレートを備えることができる。ここでは、ベースプレートの第1の部分、特に横方向部分が非NAD領域と熱伝達接触することができる。さらに、ベースプレートの第2の部分、特に横方向部分が、冷却パッケージ、特にペルティエ素子の高温側と熱伝達接触することができる。相互の熱交換を分断するために、ベースプレートはその第1の部分と第2の部分との間に熱バリア手段を備えることができる。熱バリア手段は、熱短絡、すなわちベースプレート部分間の熱交換を少なくとも部分的にまたは基本的に防ぐよう意図されている。
【0019】
熱バリア手段は、特に、ベースプレートの第1の部分から第2の部分への熱の流入を防ぐよう意図されている。熱バリア手段を、例えば、ベースプレートの貫通スリット、縮小した断面などとして構成することができる。さらに、2つの部分を、断熱材を介して互いに接続して、1つのまたは単一のベースプレートを形成することができる。
【0020】
下部ハウジングは、少なくとも2つまたは正確に2つの底板を含むことができる。第1のベースプレートは非NAD領域と熱伝達接触することができる。さらに、第2のベースプレートは、冷却パッケージ、特にペルティエ素子の高温側と熱伝達接触することができる。それぞれの熱伝達接触を、熱伝達デバイス、例えば、熱伝導パッド、熱伝導ペースト、熱伝導ゲルなどによって構成することができる(これは、上記の単一のベースプレートにも同様に当てはまる)。底板が金属、特にアルミニウムから作製されることが好ましい(これも、上記の単一のベースプレートに同様に当てはまる)。当然、ペルティエ素子の高温側はペルティエ素子を通る電流の流れによって決まり、すなわち、ペルティエ素子は、その高温側がここ(単一または第2のベースプレート)に配置されるような方法で、冷却のために作動される。
【0021】
相互の熱交換を分断するために、2つの底板、または単一のベースプレートの2つの熱的に分断された部分は、アンテナモジュールにおいて、好ましくは熱バリア手段、特に熱バリアスリットを介して互いに離間して配置されている。テレマティックスプリント回路基板の熱バリア手段と2つのベースプレート間の熱バリアスリットとが、横方向に見たときに少なくとも重なっているか、または一方が他方の内側にあるか、またはこれらが、垂直方向に見たときに基本的に互いに位置合わせされていることが好ましい。
【0022】
少なくとも1つのまたは1つの対応するアンテナ支持体を、第1のベースプレートおよび/または第2のベースプレートに配置することができる。例えば、少なくとも1つの別個のアンテナ支持体を含むアンテナモジュールの構成要素の内部配置によって、柔軟性(flexibility)がもたらされ、テレマティックスプリント回路基板または別のアンテナ支持体、例えばアンテナプリント回路基板を修正する必要なく、単一のアンテナ支持体を変更要件(設置空間、周波数範囲の拡大など)に迅速に適合させることができる。可能な限り最高の効率を実現するために、アンテナ支持体がアンテナモジュールの最大使用可能高さを利用することが有利である。すなわち、上部ハウジングおよび場合によりベースプレートおよび/または場合により下部ハウジングを除いて、アンテナ支持体は、基本的にアンテナモジュール内の少なくとも1つの領域の全高を占める。
【0023】
ファンによって強制的に送風可能な空気流を、少なくとも1つのアンテナ支持体にさらに向けることができる。下部ハウジングは横方向端部に側端部を含むことができ、その側端部にファンが取り付けられている。前記側端部は、ファンのための空気取入口を含み、ファンを空気取入口の真上に取り付けることができると好ましい。この側端部はプラスチックから作製されることが好ましい。横方向端部において、下部ハウジングは空気出口を含む側端部を含むことができる。空気出口を使用して、加熱した空気をアンテナモジュール外へ移送することができる。この側端部もプラスチックから作製されることが好ましい。
【0024】
一実施形態において、冷却空気を、アンテナモジュールの幾何形状に応じて、アンテナモジュールの一方の横方向端部から空気出口が位置する他方の横方向端部へファンによって向けることができる。ファンの側方配置、すなわち横方向外側の配置は、アンテナモジュールの高さを低くするのに役立つ。さらに、ファンは、アンテナ支持体、例えば、アンテナプリント回路基板、別のプリント回路基板(下記参照)などにおける、例えば他の集積電子機器を、冷却空気によって冷却可能にするのに役立つ。これは、ペルティエ素子の高温側にもある程度当てはまることがあり、冷却空気が冷却パッケージを横方向に通り越して側方に流れることができると好ましい。このために、冷却パッケージと、例えば、第2のベースプレートの側壁またはパラペット、アンテナモジュールのハウジング部分などとの間に、エアギャップを横方向に配置することができる。
【0025】
下部ハウジングを、車体に面接続可能であるように構成することができる。互いに関連する熱結合面はできる限り大きくすべきであり、良好な熱接触を実現するために、これら2つの結合面の間に表面圧力を設定することができる。これは、例えば、ねじ接続によって実現することができる。その後、例えば、熱伝導パッド、熱伝導ペースト、熱伝導ゲルなどを使用してもよい。下部ハウジングは、熱伝達デバイス、特に熱伝導パッドをその外面にさらに含むことができる。場合により、熱伝導ペースト、熱伝導ゲルなどを使用してもよい。その結果、アンテナモジュールで生じる熱を、車体およびしたがって車両全体に十分に放散させることができる。その後、この熱を車体または車両によって環境に放散させることもでき、車体または車両はヒートシンクとして作用する。
アンテナモジュール自体には、別個のヒートシンク、特に別個のフィン付きヒートシンクがないことが好ましく、すなわち、アンテナモジュールは、そのようなヒートシンクを備えていないことが好ましい。当然、例えば、下部ハウジングまたは少なくともベースプレートを、例えば冷却フィンにより冷却器としてさらに構成することができる。特に、好ましくは横方向の側壁またはパラペットがこの目的に適している。ここでは、冷却器または冷却フィンも強制空気流によって冷却可能であるとさらに好ましい。その結果、さらに、ファンから出る空気をより良好に向けることができ、ペルティエ素子の熱をより良好に伝達することができる。
【0026】
アンテナモジュールは、下部ハウジング、特にテレマティックスユニットと上部ハウジングとの間に別のプリント回路基板を備えることができる。他方のプリント回路基板を、例えば上部ハウジングに取り付けることができる。アンテナモジュールの最大高さまたは実現可能な高さは、おおよそ、50mm、45mm、40mm、35mm、32.5mm、30mm、27.5mm、25mm、22.5mm、20mm、17.5mm、または15mmである。さらに、アンテナモジュールによって、本発明による、車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールを冷却するための方法を実行することができる。
【0027】
本発明による冷却のための方法において、アンテナモジュールは、テレマティックスプリント回路基板を含むテレマティックスユニットを備え、テレマティックスユニットまたはテレマティックスプリント回路基板は、非NAD領域とNAD領域とに分割され、限界温度を超えた場合、非NAD領域および/またはNAD領域は積極的に冷却され、非NAD領域とNAD領域とを基本的に互いに独立して冷却することができる。
【0028】
これは、例えば、第1の限界温度を超えた場合、基本的にNAD領域のみまたは基本的に非NAD領域のみを最初に積極的に冷却することができることを意味する。第2の限界温度を超えた場合、さらに、非NAD領域またはNAD領域も積極的に冷却することができる。当然、第3の限界温度を超えた場合、非NAD領域とNAD領域との両方を積極的に冷却することが可能である。対応する冷却システム(上記参照)は、アンテナモジュールまたはアンテナモジュールの電子システムの対応する限界温度に達するまで休止したままであってよい。
【0029】
ここで、例えば、アンテナモジュールの動作中のNAD領域の最高温度は85℃であるため、例えば、その限界温度をおおよそ、75℃、77.5℃、80℃、81℃、または82℃に設定することができる。NAD領域の運転停止の場合の最高温度はより高く、約105℃~125℃であってよい。これに対応して、その限界温度が選択される。さらに、例えば、アンテナモジュールの動作中の非NAD領域の最高温度は125℃であるため、例えば、その限界温度をおおよそ、115℃、117.5℃、120℃、121℃、または122℃に設定することができる。
【0030】
限界温度を超えた場合、非NAD領域をファンからの強制空気流によって冷却することができる。限界温度を超えた場合、NAD領域をペルティエ素子によって冷却することができる。限界温度を超えた場合、NAD領域をペルティエ素子と強制空気流とによって冷却することができる。
【0031】
実施形態において、非NAD領域の熱を、横方向の強制空気流(
図4の矢印(空気流)参照)によって車体アンテナモジュール外へ移送することができる。さらに、ペルティエ素子の熱を、横方向の強制空気流によって車体アンテナモジュール外へ移送することができる。この熱流は、車体(
図5の矢印(熱流)参照)に放散され得るペルティエ素子の熱流と比べて比較的小さい。加えて、ペルティエ素子の熱を、好ましくは車体アンテナモジュールの下部ハウジングまたはベースプレートを介して車体に放散させることができる。この熱流は、強制空気流によって移送され得るペルティエ素子の熱流と比べて比較的大きい。
【0032】
熱故障および/または電子機器の損傷を避けるために、(インテリジェントな)熱ソフトウェアがファン、ペルティエ素子、および/またはテレマティックスプリント回路基板を制御/調整することが好ましい。少なくとも1つの温度センサが、熱ソフトウェアによる熱管理のための開始点を形成する。関連する限界温度を、少なくとも1つの臨界電子部品、特にテレマティックスプリント回路基板において測定することができる。さらに、関連する限界温度を、非NAD領域の外側および/もしくは内側、ならびに/またはNAD領域の外側および/もしくは内側で測定することができる。さらに、関連する限界温度を、ペルティエ素子の付近などにおいて、ベースプレートの少なくとも1つの点で測定することができる。
【0033】
全体的な概念では、例えば、熱管理を使用することにより、単一の限界温度またはいくつかの限界温度に応じて、場合により外部温度を考慮に入れて、以下の可能なシナリオを適用することができる。シナリオa:ファンが非アクティブで、ペルティエ素子が非アクティブである、シナリオb:ファンがアクティブ(空気流または冷却の制御/調整を伴う)で、ペルティエ素子が非アクティブである、シナリオc:ファンがアクティブ(空気流または冷却の制御/調整を伴う/伴わない)で、ペルティエ素子がアクティブ(電力の制御/調整を伴う/伴わない)である、および/またはシナリオd:ファンが非アクティブで、ペルティエ素子がアクティブ(電力の制御/調整を伴う/伴わない)である。
【0034】
冷却方法において、アンテナモジュール内で限界温度を超えた場合、場合により積極的な冷却の場合でも、アンテナモジュールの少なくとも1つの影響を受ける構成要素を動作させることができない。アンテナモジュールを、本発明による車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールとして構成することができる。
【0035】
非常に低温で、例えば、-25℃未満~-35℃未満、特に-40℃未満で、以下のシナリオeも適用可能である。NAD領域の性能が、場合により、そのような温度で理想的でないまたは得られないため、加熱によって、NAD領域を、より良好または理想的な温度範囲にすることができる。すなわち、ペルティエ素子の極性を電気的に反転させることによって、ペルティエ素子をNAD領域の加熱に使用することができる。
【0036】
本発明による車体または本発明による車両は、本発明による車体アンテナモジュール、特に本発明による5Gアンテナモジュールを備える。さらに、本発明による車両によって、本発明による、車体アンテナモジュール、特に5Gアンテナモジュールを冷却するための方法を実行することができる。冷却方法を、アンテナモジュールの内部制御ユニット、または場合により車両の制御ユニットによって実行することができ、このような制御ユニットは、当然、他の作業も担うことができる。
【0037】
以下で、縮尺通りでない添付の概略図面を参照しながら、例示的な実施形態を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。同一の、一義的な、もしくは同様の構成および/または機能を有する部分、要素、部品、ユニット、構成要素、および/または方式は、図面の説明(下記参照)、符号の説明、特許請求の範囲、および図面において同じ参照符号で示される。本発明の例示的な実施形態、またはその構成要素、線図、ユニット、部品、要素、または部分に関して、可能な代替案、静的反転および/または動的反転、組合せなどは、本発明の説明(上記参照)に記載されず、図面に示されず、かつ/または確定的でなく、符号の説明および/または図面の説明からさらに除去することができる。
【0038】
本発明において、特徴(部分、要素、部品、ユニット、構成要素、機能、寸法など)を正である、すなわち存在するものと設計しても、負である、すなわち存在しないものと設計してもよい。本特許明細書(明細書(本発明の説明(上記参照)、図面の説明(下記参照))、符号の説明、特許請求の範囲、図面)において、負の特徴は、それが存在しないことが本発明により重要であるとみなされない場合には、特徴として明記されない。すなわち、実際になされた、従来技術によって構成された発明ではない本発明は、この特徴を省略する。
【0039】
本明細書の特徴を、特定の方法で使用できるだけでなく、別の方法および/または様式(分離、集約、置換、追加、固有の位置、省略など)で使用してもよい。特に、参照符号およびそれに関連する特徴、または特徴およびそれに関連する参照符号に基づいて、特許請求の範囲および/または明細書中の説明、符号の説明、特許請求の範囲、および/または図面における特徴を置換、追加、または省略することができる。加えて、これにより、特許請求の範囲における特徴を、さらに詳細に解釈および/または特定することができる。
【0040】
本明細書の特徴を((最初はほとんど知られていない)従来技術を考慮して)、任意選択の特徴として解釈してもよい。すなわち、各特徴を、任意選択の、任意の、または好ましい特徴として、すなわち拘束力のない特徴として理解することができる。したがって、特徴を、場合によりその周辺を含めて例示的な実施形態から抜き出すことができ、その後、この特徴を一般化された本発明の概念に転換することができる。例示的な実施形態に特徴(負の特徴)がないことは、その特徴が本発明に関して任意選択であることを示す。さらに、特徴についての種類の用語の場合、その特徴の一般的な用語が記載されていてもよく(場合により、亜属などへのさらなる階層的分類)、これにより、例えば、等しい効果および/または等価物を考慮して、その特徴を一般化することができる。
【0041】
図面は単に例示的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】詳細には示されていない、本発明による自動車用の車体アンテナモジュールの実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明によるそのようなアンテナモジュールのさらなる実施形態の立体分解図である。
【
図3】本発明によるアンテナモジュールの実施形態の下部ハウジングおよびテレマティックスユニットの、本発明による配置の立体分解図である。
【
図4】組立状態にある、
図3の下部ハウジングおよびテレマティックスユニットの本発明による配置の上面図である。
【
図5】自動車の車体の凹部における、
図4の下部ハウジングおよびテレマティックスユニットの配置を通る縦方向および垂直方向の断面図である。
【
図6】頭部、首部、および胴部を含む、本発明によるテレマティックスユニットのための、本発明によるテレマティックスプリント回路基板の上面図である。
【
図7】本発明による、アンテナモジュールのための冷却システムの一般化原理の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下で、本発明について、車体アンテナモジュール10、特に5Gアンテナモジュール10の変形例(variant)の例示的な実施形態を用いて、車両、特に自動車用のそのようなアンテナモジュールを冷却するための方法(上記参照)に関連して説明する。本発明を好ましい例示的な実施形態を用いてより詳細に説明し図示するが、本発明は、開示される例示的な実施形態によって限定されるものではなく、より基本的な性質を持つものである。
【0044】
本発明の保護の範囲から逸脱することなく、その他の変形形態を例示的な実施形態および/または上記(本発明の説明)から引き出すことができる。本発明は、一般に、車両アンテナ、特に自動車用の外付け(図示せず)または内蔵ルーフアンテナモジュールの分野に適用可能である。図面は、本発明の理解に必要な本発明の対象の空間的な部分のみを示す。
【0045】
図1および
図2は、内蔵アンテナモジュール10の2つの全体構造を示し、
図1では、アンテナモジュール10は、車体0、特に後端部0またはルーフ0(前部、中央、後部)の凹部1、特にくぼみ1に配置されている。非常に一般的には、おおよそ、アンテナモジュール10は、比較的長い横方向の広がり(車両またはアンテナモジュール10の横方向Qr
、長手方向Qr)と、好ましくは高さ(車両またはアンテナモジュール10の垂直方向Hr)よりも大きい長さ(車両またはアンテナモジュール10の縦方向Lr)とを有する、擬角柱の形状、特に略または基本的に直方体の形状を有する。
【0046】
図1および
図2に示すそのようなアンテナモジュール10は、例えば、下部ハウジング100と、テレマティックスユニット200(テレマティックス制御ユニット(TCU))と、場合により、特に衛星サービス用の別の回路基板300、例えば、アンテナ支持体300と、場合により少なくとも1つのアンテナ支持体400と、上部ハウジング500とを備える。他のプリント回路基板300を設ける場合、これを上部ハウジング500に取り付けることが好ましい。
【0047】
本発明によれば(
図3~
図6参照)、テレマティックスユニット200は、冷却デバイス222、223、226、228に加えてテレマティックスプリント回路基板202を備える。テレマティックスプリント回路基板202(特に
図6参照)は2つの部分214、224に分割され、第1の部分214は非NAD領域214として構成され、第2の部分224はNAD領域224として構成される。テレマティックスプリント回路基板202の実際のプリント回路基板の外形、すなわち外側輪郭は、テレマティックスプリント回路基板202の中央横軸(central transverse axis)Qrに対して少なくとも部分的に鏡面対称に形成されることが好ましい。特に、非NAD領域214および/またはNAD領域224はこのように鏡面対称である。
【0048】
テレマティックスプリント回路基板202は、非NAD領域214とNAD領域224との間に熱バリア手段204、例えば、少なくとも1つの貫通スリット204を含む。ここでは、熱バリア手段204は2つの貫通スリット204、204を含み、これらの貫通スリット204、204は、テレマティックスプリント回路基板202を中央横軸Qrに対して頭部224、首部205、および胴部214(
図6)に鏡面対称に分割する。くびれである残りの首部205は、頭部224と胴部214との間の信号交換は保証されるが、頭部224と胴部214との間の他の(熱伝導)材料は主にまたは基本的に除去されるように設計されている。
【0049】
モバイル通信(NAD)用のトランシーバモジュールは、テレマティックスプリント回路基板202(
図3参照)の上面に位置していることが好ましい。これにはいくつかの技術的理由がある。トランシーバ自体は、プリント回路基板と、プリント回路基板にはんだ付けされた集積回路と、保護ケージとを含む別個のモジュールとして提供される。モジュールのプリント回路基板(熱抵抗が最も低い)、すなわちテレマティックスプリント回路基板202を介して、最良の放熱が実現される。保護ケージを介した放熱は、かなり効果が低いことが多い。したがって、熱交換器、すなわちペルティエ素子222の最良の接続は、トランシーバモジュールおよびその他の電子部品を担持するテレマティックスプリント回路基板202の経路を通る接続である。
【0050】
本発明(
図3~
図5参照)によれば、アンテナモジュール10において限界温度を超えた場合、テレマティックスプリント回路基板202の第1の部分214または非NAD領域214、およびテレマティックスプリント回路基板202の第2の部分224またはNAD領域224が積極的に冷却され、第1の部分214または非NAD領域214と第2の部分224またはNAD領域224とを、基本的に互いに独立して冷却することができる。
【0051】
テレマティックスプリント回路基板202の第1の部分214または非NAD領域214は強制空気流によって冷却され、テレマティックスプリント回路基板202の第2の部分224またはNAD領域224はペルティエ素子222(熱電冷却器(TEC)要素222)によって冷却されることが好ましい。強制空気流をファン132、特に遠心ファン132によって発生させることができると好ましい。例えば熱ソフトウェアによる、例えば熱管理の温度制御については、上記を参照されたい。
【0052】
さらに、テレマティックスユニット200を2つの領域214、220に分割することができる。第1の領域214はテレマティックスプリント回路基板202の第1の部分214または非NAD領域214と基本的に同一である。テレマティックスユニット200の第2の領域220は、テレマティックスプリント回路基板202のNAD領域224が冷却可能に配置される冷却パッケージ220を含む。2つの領域214、220の向き、すなわち、第1の領域214の広がり(横方向Qr)と第2の領域220の積重ね方向(サンドイッチ)(垂直方向Hr)とが、主にまたは基本的に互いに垂直であることが好ましい。加えて、ファン132によって強制的に送風可能な空気流を、冷却パッケージ220に向けることができる。
【0053】
図3を下から上へ参照すると、冷却パッケージ220は、ペルティエ素子222を収容できる収容フレーム223を備える。さらに、NAD領域224を収容フレーム223のペルティエ素子222に収容することができ、NAD領域224とペルティエ素子222とは良好に熱伝達接触する。冷却パッケージ220は、好ましくは冷却パッケージカバー226によって上部で閉鎖可能であり、冷却パッケージカバー226は、NAD領域224に位置していても、NAD領域224から距離をおいて(エアギャップ)配置されていてもよい。
【0054】
第1の領域214または非NAD領域214は、下部ハウジング100、特に第1の(下部ハウジング)ベースプレート110と良好に熱伝達接触して配置されることが好ましい。第2の領域224もしくはNAD領域224、または冷却パッケージ220、またはペルティエ素子222、および場合により収容フレーム223は、下部ハウジング100、特に第2の(下部ハウジング)ベースプレート120と良好に熱伝達接触して配置されることが好ましい。第1のベースプレート110と第2のベースプレート120とは、アンテナモジュール10において、例えば空気スリット115として構成されている熱バリア115を介して互いに離間して配置されていることが好ましい。
【0055】
ペルティエ素子222は、その高温側が第2のベースプレート120に位置し、その低温側がNAD領域224に位置するように、冷却パッケージ220に配置され、または第2の領域220もしくはNAD領域224を冷却するように作動される。特に、良好な熱伝達接触がいずれの場合にも確立される。
【0056】
少なくとも第2のベースプレート120の下、特に両方の底板110、120の下、すなわちアンテナモジュール10の外面に、熱伝達デバイス102、例えば熱伝導パッド102が配置されており、この熱伝達デバイス102は、良好な熱伝達接触を確立するために、車体0、例えば凹部1に設けることができる。すなわち、アンテナモジュール10は、車両の車体0または車両が実質的なヒートシンクとして機能するように構成されている。
【0057】
ペルティエ素子222またはペルティエ素子222の低温側、収容フレーム223、および冷却パッケージカバー226は、狭小部205の領域におけるテレマティックスプリント回路基板202を含む関連する部分について実行される設計努力に応じて、ある程度密閉された冷却空間228を画定する。ここでは、NAD領域224が、テレマティックスユニット200の冷却パケット200の冷却空間228の内側に位置し、非NAD領域214がその外側に位置する。
【0058】
アンテナ支持体400を、第1のベースプレート110および/または第2のベースプレート120に設けることができる。ここでは、強制送風可能な空気流をこの少なくとも1つのアンテナ支持体400に向けることができる。それぞれの横方向Qrにおいて隣接して、それぞれの(下部ハウジング)側端部130、140が一方または両方の底板110、120に接続することができる。ファン132を、例えば、側端部130の空気取入口に取り付けることができる。さらに、他方の側端部140は空気出口を含むことができる。
【0059】
テレマティックスユニット200は、ここでは、トランシーバ(トランシーバモジュール)だけでなく、さらなる構成要素、例えば、WLAN/BT/BTLE、GNSS用受信機、ジャイロ、eCall用音声増幅器、CANトランシーバ、イーサネットトランシーバ、および/または少なくとも1つのマイクロコントローラなどを備えることが好ましい。したがって、テレマティックスユニット200は、好ましくは完全なテレマティックスユニット200であり、単なるトランシーバまたは集積回路ではない。トランシーバとは対照的に、これらの追加の電子機器は、より高い温度に対応することができ、高度な冷却が不要である。ここでは、ファンで十分である。
【0060】
しかしながら、追加の電子機器は、可能な限り最大限に、トランシーバモジュールをさらに加熱することができないようになっていなければならない。そうでないと、ペルティエ素子222はさらに熱負荷を受け、場合により熱短絡を生じさせることになる。したがって、2つの部分(非NAD領域214およびトランシーバモジュールまたはNAD領域224)の間にできる限り小さい接続を有する、ある種の島(半島)(トランシーバモジュール、NAD領域224)を作成する必要がある。ここでは、冷却パッケージ220においてトランシーバを熱的に絶縁する必要があり得る。ファンの側方配置によって、空気が電子機器を冷却することができ、同時に冷却パッケージ220を冷却する。したがって、1つの冷却の概念において、冷却される2つの異なる部分または領域の組合せがある。
【0061】
原則として、トランシーバは、通常、ある規定された温度範囲のみで動作することが理想的である。本発明によれば、冷却および場合により加熱によって、トランシーバをこの範囲においてできる限り長く動作させることができるようにする。しかしながら、温度がさらに上昇した場合、性能だけが重要なのではなく、基本的な機能も提供しつつ、例えば、緊急時にeCallを始動させることができるようにしなければならない。そのような場合、eCallの機能を保証しなければならない。したがって、さらなる熱を発生させないように、アンテナモジュール10を作動させる、または部分的に切り替える。
【0062】
当然、本発明によれば、アンテナモジュール10において非NAD領域214とトランシーバモジュールまたはNAD領域224とが互いに離れて配置されるまで分離を推し進めることができる。これは
図7の概略ブロック図に示されている(非NAD領域214とNAD領域224との間に固有の接続がない)。上の矢印は、ファン132から非NAD領域214を横切る空気流を示し、下の矢印は、ペルティエ素子222から車体0への熱流を示す。
【符号の説明】
【0063】
0 車体
1 凹部
10 車体アンテナモジュール
100 下部ハウジング
102 熱伝達手段
110 非NAD領域214を冷却するための(第1の)(下部ハウジング)ベースプレート
115 熱バリア
120 NAD領域224または冷却パッケージ220またはペルティエ素子222を冷却するための(第2の)(下部ハウジング)ベースプレート
130 (第1の)(下部ハウジング)側端部
132 ファン
140 (第2の)(下部ハウジング)側端部
200 テレマティックスユニット
202 テレマティックスプリント回路基板
204 熱バリアデバイス
205 狭小部
214 テレマティックスユニット200の(第1の)領域およびテレマティックスプリント回路基板202の(第1の)部分、非NAD領域
220 テレマティックスユニット200の(第2の)領域、冷却パッケージ
222 ペルティエ素子
223 収容フレーム
224 テレマティックスプリント回路基板202の(第2の)部分、NAD領域
226 冷却パッケージカバー
228 冷却空間
300 アンテナ支持体
400 アンテナ支持体
500 上部ハウジング
Hr アンテナモジュール10の垂直方向
Lr アンテナモジュール10の縦方向
Qr アンテナモジュール10の横方向