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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】防眩性ハードコート積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20230428BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230428BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230428BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230428BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/02 B
B32B27/30 A
B32B7/023
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021168468
(22)【出願日】2021-10-14
(62)【分割の表示】P 2017094366の分割
【原出願日】2016-01-19
(65)【公開番号】P2022017317
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】藤本淳
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241019(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026446(WO,A1)
【文献】特開2011-133862(JP,A)
【文献】特開2016-006160(JP,A)
【文献】特開2008-026883(JP,A)
【文献】特開2010-054861(JP,A)
【文献】特開2004-109966(JP,A)
【文献】特開2007-108449(JP,A)
【文献】特開2006-030983(JP,A)
【文献】特開2009-036818(JP,A)
【文献】特開2006-154758(JP,A)
【文献】特開2005-181940(JP,A)
【文献】特開2005-148444(JP,A)
【文献】特開2007-293301(JP,A)
【文献】特開2015-033851(JP,A)
【文献】特開2002-107503(JP,A)
【文献】特開2010-211150(JP,A)
【文献】特開2014-048410(JP,A)
【文献】特開2011-065139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10- 1/18
G02B 5/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは多官能(メタ)アクリレート、撥水剤、及び平均粒子径0.5~10μmの樹脂微粒子を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
ここで、上記平均粒子径0.5~10μmの樹脂微粒子の配合量は、上記多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.3~15質量部であり;
上記第1ハードコートの厚みは~4μmであり;
上記第2ハードコートは(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部、及び(E)平均粒子径1~300nmの無機微粒子 50~300質量部(但し、300質量部を除く)を含む塗料からなり;
下記(1)~(3)を満たすハードコート積層フィルム。
(1)全光線透過率が85%以上。
(2)上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。
(3)XYZ表色系のY値が4.2%以下。
【請求項2】
更に下記(4)を満たす、請求項1に記載のハードコート積層フィルム。
(4)上記第1ハードコート表面の往復7500回綿拭後の水接触角が100度以上。
【請求項3】
更に下記(5)を満たす、請求項1又は2に記載のハードコート積層フィルム。
(5)最小曲げ半径が40mm以下。
【請求項4】
更に下記(6)を満たす、請求項1~3の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
(6)黄色度指数が3以下。
【請求項5】
上記第1ハードコートが平均粒子径1~6μmの樹脂微粒子を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる請求項1~4の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項6】
上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が6H以上である請求項1~5の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項7】
上記第2ハードコートが(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部、及び(E)平均粒子径1~300nmの無機微粒子 50~200質量部を含む塗料からなる請求項1~6の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項8】
上記第2ハードコートの厚みが、10~30μmである、請求項1~の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項9】
請求項1~の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムの画像表示装置部材としての使用。
【請求項10】
請求項1~の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムを含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ハードコート積層フィルムに関する。更に詳しくは、耐擦傷性に優れた防眩性ハードコート積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置上に設置され、表示を見ながら指やペン等でタッチすることにより入力を行うことのできるタッチパネルを搭載したカーナビゲーション装置が普及している。
【0003】
カーナビゲーション装置では、万が一の交通事故時の安全性の観点から、高レベルの耐衝撃性及び耐割れ性を付与するために、プラスチック製ディスプレイ面板を用いたり、ガラス製ディスプレイ面板の表面に飛散防止フィルムを貼合したりすることが広く行われている。またカーナビゲーション装置の画像表示装置には、画面に外部からの光が入射し、この光が反射して表示画像を見難くするという問題に対処するため、防眩性が付与されている。防眩性の付与は、防眩性ハードコート積層フィルムをプラスチック製ディスプレイ面板の表面に貼合したり、飛散防止フィルムの表面に防眩性ハードコートを形成したりする方法により行われる。
【0004】
防眩性ハードコート積層フィルムとしては多数の提案がなされている(例えば、特許文献1)。しかし、カーナビゲーション装置にタッチパネルが搭載されることを考慮すると、その耐擦傷性は不十分であり、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持できる防眩性ハードコート積層フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-211150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、防眩性に優れ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置の部材(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)として好適な防眩性ハードコート積層フィルムを提供することにある。本発明の更なる課題は、防眩性、及び耐擦傷性に優れ、カーナビゲーション装置などの、画面に外部からの光が入射する環境でしばしば使用される装置であって、タッチパネル機能を有する装置の部材として好適な防眩性ハードコート積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のハードコート積層フィルムにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;
(B)撥水剤 0.01~7質量部;
(C)シランカップリング剤 0.01~10質量部;及び
(D)平均粒子径 0.5~10μmの樹脂微粒子 0.1~5質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる;ハードコート積層フィルムである。
【0009】
第2の発明は、表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第2ハードコートは、
(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び
(E)平均粒子径 1~300nmの無機微粒子 50~300質量部;
を含む塗料からなる;第1の発明に記載のハードコート積層フィルムである。
【0010】
第3の発明は、上記(C)シランカップリング剤が、アミノ基を有するシランカップリング剤、及びメルカプト基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される1種以上を含む、第1の発明又は第2の発明に記載のハードコート積層フィルムである。
【0011】
第4の発明は、上記(B)撥水剤が、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤を含む、第1~3の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0012】
第5の発明は、上記第2ハードコートを形成する塗料が、更に(F)レベリング剤 0.01~1質量部;を含む、第2~4の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0013】
第6の発明は、上記第1ハードコートの厚みが、0.5~5μmである、第1~5の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0014】
第7の発明は、上記第2ハードコートの厚みが、15~30μmである、第2~5の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0015】
第8の発明は、表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは無機粒子を含まない塗料からなり;
上記第2ハードコートは無機粒子を含む塗料からなり;
下記(イ)~(ハ)を満たすハードコート積層フィルムである。
(イ)全光線透過率が85%以上。
(ロ)上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度が5H以上。
(ハ)XYZ表色系のY値が1.5~4.2%。
【0016】
第9の発明は、最小曲げ半径が40mm以下である第8の発明に記載のハードコート積層フィルムである。
【0017】
第10の発明は、上記第1ハードコート表面の往復1万回綿拭後の水接触角が100度以上である第8の発明又は第9の発明に記載のハードコート積層フィルムである。
【0018】
第11の発明は、第1~10の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムの画像表示装置部材としての使用である。
【0019】
第12の発明は、第1~10の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムを含む画像表示装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、防眩性に優れる。本発明の好ましい防眩性ハードコート積層フィルムは、防眩性、及び耐擦傷性に優れる。そのため液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置の部材(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)、特にカーナビゲーション装置などの、画面に外部からの光が入射する環境でしばしば使用される装置であって、タッチパネル機能を有する装置の部材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する。本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、好ましくは、表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する。
【0022】
第1ハードコート:
上記第1ハードコートは、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの表面を形成する。上記第1ハードコートは、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムがタッチパネル機能を有する画像表示装置の部材として用いられる場合には、タッチ面を形成する。上記第1ハードコートは、良好な防眩性、及び耐擦傷性を発現し、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持する働きをする。
【0023】
上記第1ハードコートは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(B)撥水剤 0.01~7質量部;(C)シランカップリング剤 0.01~10質量部;及び(D)平均粒子径 0.5~10μmの樹脂微粒子 0.1~5質量部;を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる。
【0024】
無機粒子(例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;及び金属粒子;など。)は、ハードコートの硬度を高めるのに効果が大きい。また適切な粒子径の無機粒子は防眩性を良好にする。一方、上記成分(A)などの樹脂成分との相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで本発明においては、表面を形成する第1ハードコートには、防眩性を良好にするための粒子としては樹脂微粒子を用い、無機粒子を含まないようにして耐擦傷性を保持し、一方、第2ハードコートには多量の特定の無機微粒子を含ませて硬度を高めることにより、この問題を解決したものである。
【0025】
ここで無機粒子を「含まない」とは、有意な量の無機粒子を含んではいないという意味である。ハードコート形成用塗料の分野において、無機粒子の有意な量は、防眩性付与の観点から、上記成分(A)100質量部に対して、通常0.1質量部程度以上である。従って、無機粒子を「含まない」とは、上記成分(A)100質量部に対して、無機粒子の量が通常0.1質量部未満、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下と言い換えることもできる。
【0026】
(A)多官能(メタ)アクリレート:
上記成分(A)は、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであり、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
【0027】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;トリペンタエリスリトールアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有8官能反応性モノマー;及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0028】
なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0029】
(B)撥水剤:
上記成分(B)は、指すべり性、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める働きをする。
【0030】
上記撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、及びアクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコンオイル、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;フルオロポリエーテル系撥水剤、フルオロポリアルキル系撥水剤等の含弗素系撥水剤;などをあげることができる。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
これらの中で、上記成分(B)としては、撥水性能の観点から、フルオロポリエーテル系撥水剤が好ましい。上記成分(A)と上記成分(B)とが化学結合ないしは強く相互作用し、上記成分(B)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、上記成分(B)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とフルオロポリエーテル基とを含有する化合物を含む撥水剤(以下、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤と略す。)がより好ましい。上記成分(B)として更に好ましいのは、上記成分(A)と上記成分(B)との化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な撥水性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物である。
【0032】
(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤は、分子内にフルオロポリエーテル基を含有する点で上記成分(A)とは明確に区別される。1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつフルオロポリエーテル基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤であって、上記成分(B)である。
【0033】
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記成分(B)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。一方、上記成分(B)の使用効果を得るという観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。
【0034】
(C)シランカップリング剤:
上記成分(C)は、上記第1ハードコートと上記透明樹脂フィルム又は上記第2ハードコートとの密着性を向上させる働きをする。
【0035】
シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。これらの中で上記成分(C)としては、密着性の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、及びメルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプト基と加水分解性基を有するシラン化合物)が好ましい。密着性及び臭気の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0036】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0037】
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0038】
上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、密着性向上効果を確実に得る観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。一方、塗料のポットライフの観点から、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下であってよい。
【0040】
(D)平均粒子径 0.5~10μmの樹脂微粒子:
上記成分(D)は、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムに、防眩性を付与し、画像表示装置の画面に外部からの光が入射し、この光が反射したとしても、表示画像を視認できるようにする働きをする。
【0041】
樹脂微粒子としては、例えば、シリコン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、弗素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、及びアミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂微粒子をあげることができる。これらの中で、低比重、潤滑性、分散性、及び耐溶剤性の観点から、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、及び弗素系樹脂の微粒子が好ましい。また光拡散性を良好にする観点から、真球状のものが好ましい。樹脂微粒子としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0042】
上記成分(D)の平均粒子径は、防眩性を確実に得る観点から、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上である。一方、ハードコートの透明性を保持する観点から、通常10μm以下、好ましくは6μm以下である。
【0043】
なお本明細書において、樹脂微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0044】
上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、付与しようとする防眩性のレベルにもよるが、通常0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.3~3質量部である。また耐擦傷性の観点から、好ましくは0.5~3質量部であってよい。
【0045】
上記第1ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0046】
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス-4-シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0047】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4、4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2、4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0048】
上記第1ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、及び有機着色剤などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0049】
上記第1ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)~(D)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0050】
上記第1ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0051】
上記第1ハードコート形成用塗料を用いて上記第1ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0052】
上記第1ハードコートの厚みは、耐擦傷性及び表面硬度の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上である。一方、防眩性、表面硬度、密着性、及び耐曲げ性の観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
【0053】
第2ハードコート:
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、好ましくは、表面側から順に第1ハードコート、第2ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する。上記第2ハードコートは、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの硬度を高め、それによって表面硬度を高める働きをする。上記第2ハードコートは、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び(E)平均粒子径1~300nmの無機微粒子 50~300質量部;を含む塗料からなる。
【0054】
上記(A)多官能(メタ)アクリレートについては、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0055】
(E)平均粒子径 1~300nmの無機微粒子:
上記成分(E)は、本発明のハードコート積層フィルムの硬度を飛躍的に高める働きをする。
【0056】
無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;及び金属微粒子;などをあげることができる。
【0057】
これらの中でより硬度の高いハードコートを得るためにシリカや酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
【0058】
無機微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの硬度を高めたりする目的で、当該無機微粒子の表面をビニルシラン、及びアミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;及び脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを用いることは好ましい。
【0059】
上記成分(E)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0060】
上記成分(E)の平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及び硬度改良効果を確実に得る観点から、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下である。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な無機微粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
【0061】
なお本明細書において、無機微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0062】
上記成分(E)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、硬度の観点から、50質量部以上、好ましくは80質量部以上である。一方、透明性の観点から、300質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは160質量部以下である。
【0063】
(F)レベリング剤:
上記第2ハードコート形成用塗料には、上記第2ハードコートの表面を平滑なものにし、上記第1ハードコートを形成し易くする観点から、更に(F)レベリング剤を含ませることが好ましい。
【0064】
上記レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコン系レベリング剤、弗素系レベリング剤、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤、弗素変性アクリル系レベリング剤、弗素変性シリコン系レベリング剤、及びこれらに官能基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など。)を導入したレベリング剤などをあげることができる。これらの中で、上記成分(F)としては、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤が好ましい。上記成分(F)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0065】
上記成分(F)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記第2ハードコートの表面を平滑なものにし、上記第1ハードコートを形成し易くする観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。一方、上記第2ハードコートの上に、上記第1ハードコート形成用塗料が弾かれることなく良好に塗工できるようにする観点から、1質量部以下、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下であってよい。
【0066】
上記第2ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0067】
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0068】
上記光重合開始剤については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0069】
上記第2ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及び樹脂微粒子などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0070】
上記第2ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)、上記成分(E)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。これらの中で、1-メトキシ-2-プロパノールが好ましい。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0071】
上記第2ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0072】
上記第2ハードコート形成用塗料を用いて上記第2ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0073】
上記第2ハードコートの厚みは、硬度の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは18μm以上である。一方、耐カール性、及び耐曲げ性の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下である。
【0074】
透明樹脂フィルム:
上記透明樹脂フィルムは、上記第1ハードコートを、又は、上記第1ハードコート及び上記第2ハードコートを、その上に形成するための透明フィルム基材となる層である。上記透明樹脂フィルムとしては、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。上記透明樹脂フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;エチレンノルボルネン共重合体等の環状炭化水素系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、及びビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のアクリル系樹脂;芳香族ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン、及び4-メチル-ペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリマー型ウレタンアクリレート系樹脂;及びポリイミド系樹脂;などのフィルムをあげることができる。これらのフィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらのフィルムは、これらの1種又は2種以上を、2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0075】
上記透明樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの取扱性の観点からは、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。本発明の防眩性ハードコート積層フィルムを高い剛性を必要としない用途に用いる場合には、経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。本発明のハードコート積層フィルムをカーナビゲーション装置のディスプレイ面板として用いる場合には、剛性を保持する観点から、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上であってよい。また装置の薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1200μm以下、より好ましくは1000μm以下であってよい。
【0076】
上記透明樹脂フィルムは、好ましくは、アクリル系樹脂の透明樹脂フィルムである。
【0077】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステルを含む共重合体、及びこれらの変性体などをあげることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
【0078】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などをあげることができる。
【0079】
上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸・(メタ)アクリル酸メチル共重合、及びN-置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合などをあげることができる。
【0080】
上記変性体としては、例えば、分子内環化反応によりラクトン環構造が導入された重合体;分子内環化反応によりグルタル酸無水物が導入された重合体;及び、イミド化剤(例えば、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアンモニアなどをあげることができる。)と反応させることによりイミド構造が導入された重合体
(以下、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂ということがある。);などをあげることができる。
【0081】
上記アクリル系樹脂の透明樹脂フィルムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物のフィルムをあげることができる。またこれらのフィルムは、これらの1種又は2種以上を、2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0082】
上記透明樹脂フィルムは、より好ましくは、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体のフィルムである。表面硬度、耐擦傷性、透明性、表面平滑性、外観、剛性、及び耐湿性に優れた防眩性ハードコート積層フィルムとなり、タッチパネルのディスプレイ面板として好適に用いることができる。
【0083】
上記透明樹脂フィルムは、より好ましくは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のフィルムである。表面硬度、耐擦傷性、透明性、表面平滑性、外観、剛性、耐熱性、及び耐熱寸法安定性に優れた防眩性ハードコート積層フィルムとなり、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることができる。
【0084】
上記アクリル系樹脂の黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数が3以下のアクリル系樹脂を用いることにより、画像表示装置の部材として好適に用いることのできる防眩性ハードコート積層フィルムを得ることができる。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0085】
上記アクリル系樹脂のメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)は、押出負荷や溶融フィルムの安定性の観点から、好ましくは0.1~20g/10分、より好ましくは0.5~10g/10分である。
【0086】
また上記アクリル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、アクリル系樹脂を100質量部としたとき、0.01~10質量部程度である。
【0087】
上記透明樹脂フィルムは、より好ましくは、第一アクリル系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二アクリル系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムである。なお本明細書においては、上記α1層側にタッチ面が形成されるものとして本発明を説明する。
【0088】
アクリル系樹脂は表面硬度には優れているが、切削加工性が不十分になり易いのに対し、芳香族ポリカーボネート系樹脂は切削加工性には優れているが、表面硬度が不十分になり易い。そのため上記の層構成の透明多層フィルムを用いることにより、両者の弱点を補い合い、表面硬度、及び切削加工性の何れにも優れた防眩性ハードコート積層フィルムを容易に得ることができるようになる。
【0089】
上記α1層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの表面硬度の観点から、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、更に好ましくは80μm以上であってよい。
【0090】
上記α2層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、上記α1層と同じ層厚みであることが好ましい。
【0091】
なおここで「同じ層厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で同じ層厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みであれば、多層フィルムの耐カール性を良好に保つことができるからである。Tダイ共押出法による無延伸多層フィルムの場合には、通常-5~+5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、層厚み65μmと同75μmとは同一と解釈されるべきである。
【0092】
上記β層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの耐切削性の観点から、通常20μm以上、好ましくは80μm以上であってよい。
【0093】
上記α1層及び上記α2層に用いるアクリル系樹脂については、上述した。
【0094】
なお上記α1層に用いるアクリル系樹脂と、上記α2層に用いるアクリル系樹脂とは、異なる樹脂特性のもの、例えば種類、メルトマスフローレート、及びガラス転移温度などの異なるアクリル系樹脂を用いても良いが、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、同じ樹脂特性のものを用いることが好ましい。例えば、同一グレードの同一ロットを用いるのは、好ましい実施態様の一つである。
【0095】
上記β層に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0096】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0~30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100~70質量部)、好ましくは0~10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100~90質量部)の量で用いることにより、耐切削加工性や耐衝撃性をより高めることができる。
【0097】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムをあげることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0098】
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01~10質量部程度である。
【0099】
上記透明樹脂フィルムの製造方法は特に制限されない。上記透明樹脂フィルムがポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のフィルムである場合の好ましい製造方法としては、特開2015-033844号公報に記載された方法をあげることができる。上記透明樹脂フィルムが第一アクリル系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二アクリル系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムである場合の好ましい製造方法としては、特開2015-083370号公報に記載された方法をあげることができる。またハードコートを形成するに際し、上記透明樹脂フィルムのハードコート形成面又は両面に、ハードコートとの接着強度を高めるため、事前にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施してもよい。
【0100】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、表面側から順に上記第1ハードコート、上記第2ハードコート、上記透明樹脂フィルムの層、及び第3ハードコートを有することがより好ましい。上記第3ハードコートを形成することにより、防眩性ハードコート積層フィルムを一方へカールさせようとする力(以下、カール力と略すことがある。)と他方へカールさせようとする力とが両方働くことになる。そしてこの2つのカール力が相殺されてゼロになるようにすることにより、カールの発生を抑制することができる。
【0101】
また近年、画像表示装置の軽量化を目的に、ディスプレイ面板の裏側にタッチ・センサが直接形成された2層構造のタッチパネル(所謂ワン・ガラス・ソリューション)が提案されている。また更なる軽量化のため、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションも提案されている。本発明の防眩性ハードコート積層フィルムを、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションに用いる場合には、上記第3ハードコートを形成することにより、印刷面として好適な特性を付与することが容易になる。
【0102】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、所望により、上記第1ハードコート、上記第2ハードコート、上記透明樹脂フィルムの層、及び上記第3ハードコート以外の任意の層を有していてもよい。任意の層としては、例えば、上記第1~3のハードコート以外のハードコート、アンカーコート、粘着剤層、透明導電層、高屈折率層、低屈折率層、及び反射防止機能層などをあげることができる。
【0103】
図1は本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの一例を示す断面の概念図である。タッチ面側から順に、第1ハードコート1、第2ハードコート2、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)3、芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β)4、第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)5、及び第3ハードコート6を有している。
【0104】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、全光線透過率(JIS K 7361-1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%以上であることにより、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0105】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、2度視野に基づくXYZ表示系のY値(株式会社島津製作所の分光光度計「SolidSpec-3700(商品名)」及び反射ユニット「絶対反射率測定装置 入射角5°(商品名)」を使用し、上記分光光度計の説明書に従い、5度正反射(積分球前に反射ユニットを設置する。拡散光を除いた正反射の値になる。)の条件で測定。)が、防眩性の観点から、通常4.2%以下、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下である。一方、表示された画像が白茶けたものにならないようにする観点から、通常1.5%以上、好ましくは2.0%以上である。
【0106】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、防眩性の観点から、付与しようとする防眩性のレベルにもよるが、通常3%以上、好ましくは5%以上であってよい。一方、表示された画像が白茶けたものにならないようにする観点から、通常30%以下、好ましくは25%以下であってよい。
【0107】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコート表面の鉛筆硬度(JIS K 5600-5-4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは5H以上、より好ましくは6H以上、更に好ましくは7H以上である。鉛筆硬度が5H以上であることにより、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。鉛筆硬度は高いほど好ましい。
【0108】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、最小曲げ半径が好ましくは40mm以下、より好ましくは35mm以下、更に好ましくは30mm以下である。最小曲げ半径が好ましくは40mm以下であることにより、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、フィルムロールとして容易に扱うことができるようになり、製造効率などの点で有利になる。最小曲げ半径は小さいほど好ましい。ここで最小曲げ半径は、下記実施例の試験(ホ)に従い測定した値である。
【0109】
なお最小曲げ半径は、防眩性ハードコート積層フィルムを折り曲げたとき、曲げ部の表面にクラックが発生する直前の曲げ半径であり、曲げの限界を示す指標である。曲げ半径は、曲率半径と同様に定義される。
【0110】
曲率半径は、以下のように定義される。曲線のM点からN点までの長さをΔS;M点における接線の傾きと、N点における接線の傾きとの差をΔα;M点における接線と垂直であり、かつM点で交わる直線と、N点における接線と垂直であり、かつN点で交わる直線との交点をO;としたとき、ΔSが十分に小さいときは、M点からN点までの曲線は円弧に近似することができる(図2)。このときの半径が曲率半径と定義される。また曲率半径をRとすると、∠MON=Δαであり、ΔSが十分に小さいときは、Δαも十分に小さいから、ΔS=RΔαが成り立ち、R=ΔS/Δαである。
【0111】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコート表面の水接触角が好ましくは100度以上、より好ましくは105度以上である。本発明の防眩性ハードコート積層フィルムを、タッチパネル機能を有するディスプレイ装置の部材として用いる場合、上記第1ハードコートはタッチ面を形成することになる。上記第1ハードコート表面の水接触角が100度以上であることにより、タッチ面上において、指やペンを思い通りに滑らし、タッチパネルを操作することができるようになる。指やペンを思い通りに滑らせるという観点からは、水接触角は高い方が好ましく、水接触角の上限は特にないが、指すべり性の観点からは、通常120度程度で十分である。ここで水接触角は、下記実施例の試験(へ)に従い測定した値である。
【0112】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、好ましくは上記第1ハードコート表面の往復7500回綿拭後の水接触角が100度以上である。より好ましくは往復1万回綿拭後の水接触角が100度以上である。往復7500回綿拭後の水接触角が100度以上であることにより、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持することができる。水接触角100度以上を維持できる綿拭回数は多いほど好ましい。ここで綿拭後の水接触角は、下記実施例の試験(ト)に従い測定した値である。
【0113】
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数が3以下であることにより、本発明の防眩性ハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0114】
製造方法:
本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの製造方法は、特に制限されず、任意の方法で製造することができる。好ましい製造方法としては、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性の観点から、例えば、
(1)上記透明樹脂フィルムの上に、上記第2ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する工程;
(2)上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜に、活性エネルギー線を積算光量が1~230mJ/cm、好ましくは5~200mJ/cm、より好ましくは10~160mJ/cm、更に好ましくは20~120mJ/cm、最も好ましくは30~100mJ/cmとなるように照射し、上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を、指触乾燥状態の塗膜にする工程;
(3)上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記指触乾燥状態の塗膜の上に、上記第1ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する工程;及び
(4)上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を温度30~100℃、好ましくは温度40~85℃、より好ましくは温度50~75℃に予熱し、活性エネルギー線を積算光量が240~10000mJ/cm、好ましくは320~5000mJ/cm、より好ましくは360~2000mJ/cmとなるように照射する工程;を含む方法をあげることができる。
【0115】
上記工程(1)において、上記第2ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0116】
上記工程(1)において形成された上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜は、上記工程(2)において指触乾燥状態、ないしはタック性のない状態になり、ウェブ装置に直接触れても貼り付いたりするなどのハンドリング上の問題を起こすことはなくなる。そのため、次の上記工程(3)において、上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記指触乾燥状態の塗膜の上に、上記第1ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成することができるようになる。
【0117】
なお本明細書において、「塗膜が指触乾燥状態(タック性のない状態)にある」とは、塗膜がウェブ装置に直接触れてもハンドリング上の問題はない状態にあるという意味である。
【0118】
上記工程(2)における活性エネルギー線の照射は、上記第2ハードコート形成用塗料として用いる塗料の特性にもよるが、塗膜を確実に指触乾燥状態にする観点から、積算光量が通常1J/cm以上、好ましくは5mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上、更に好ましくは20mJ/cm以上、最も好ましくは30mJ/cm以上となるように行う。一方、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性の観点から、積算光量が通常230mJ/cm以下、好ましくは200mJ/cm以下、より好ましくは160mJ/cm以下、更に好ましくは120mJ/cm以下、最も好ましくは100mJ/cm以下となるように行う。
【0119】
上記工程(2)において活性エネルギー線を照射する前に、上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を予備乾燥することは好ましい。上記予備乾燥は、例えば、ウェブを温度23~150℃程度、好ましくは温度50~120℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5~10分程度、好ましくは1~5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
【0120】
上記工程(2)において活性エネルギー線を照射する際に、上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を温度40~120℃、好ましくは温度70~100℃に予熱してもよい。塗膜を確実に指触乾燥状態にすることができる。上記予熱の方法は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。具体的方法の例については、下記工程(4)の説明において後述する。
【0121】
上記工程(3)において、上記第1ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0122】
上記工程(3)において形成された上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜は、上記工程(4)において完全に硬化される。同時に上記第2ハードコート形成用塗料からなる上記塗膜も完全に硬化される。
【0123】
理論に拘束される意図はないが、上記方法により、上記第1ハードコートと上記第2ハードコートとの密着性を向上させることができるのは、活性エネルギー線の照射を、上記工程(2)では塗膜を指触乾燥状態にするには十分であるが、完全硬化するには不十分な積算光量に抑制し、上記工程(4)において初めて塗膜を完全硬化するのに十分な積算光量にすることにより、両ハードコートの完全硬化が同時に達成されるためと推測される。
【0124】
上記工程(4)における活性エネルギー線の照射は、塗膜を完全硬化させる観点、及び第1ハードコートと第2ハードコートの密着性の観点から、積算光量が240mJ/cm以上、好ましくは320mJ/cm以上、より好ましくは360mJ/cm以上となるように行う。一方、得られるハードコート積層フィルムが黄変したものにならないようにする観点、及びコストの観点から、積算光量が10000mJ/cm以下、好ましくは5000mJ/cm以下、より好ましくは2000mJ/cm以下となるように行う。
【0125】
上記工程(4)において活性エネルギー線を照射する前に、上記第1ハードコート形成用塗料からなる上記ウェット塗膜を予備乾燥することは好ましい。上記予備乾燥は、例えば、ウェブを温度23~150℃程度、好ましくは温度50~120℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5~10分程度、好ましくは1~5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
【0126】
上記工程(4)において活性エネルギー線を照射する際には、上記第1ハードコート形成用塗料からなるウェット塗膜は、上記第1ハードコート形成用塗料と上記第2ハードコート形成用塗料の特性が大きく異なる場合であっても良好な層間密着強度を得る観点から、温度30~100℃、好ましくは温度40~85℃、より好ましくは温度50~75℃に予熱されている。上記予熱の方法については、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、図3のように活性エネルギー線照射装置と対置したロールにウェブを抱かせて、ロールの表面温度を所定温度に制御する方法;活性エネルギー線照射装置周辺を照射炉として囲い、照射炉内の温度を所定温度に制御する方法;及びこれらの組み合わせなどをあげることができる。
【0127】
上記工程(4)の後、エージング処理を行ってもよい。防眩性ハードコート積層フィルムの特性を安定化することができる。
【実施例
【0128】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K 7361-1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0130】
(ロ)2度視野に基づくXYZ表示系のY値:
株式会社島津製作所の分光光度計「SolidSpec-3700(商品名)」及び反射ユニット「絶対反射率測定装置 入射角5°(商品名)」を使用し、上記分光光度計の説明書に従い、5度正反射(積分球前に反射ユニットを設置する。)の条件で測定した。
【0131】
(ハ)ヘーズ:
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0132】
(ニ)鉛筆硬度:
JIS K 5600-5-4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用い、防眩性ハードコート積層フィルムの第1ハードコート面について測定した。
【0133】
(ホ)最小曲げ半径:
JIS-K6902:2007の曲げ成形性(B法)を参考とし、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%にて24時間状態調節した試験片について、曲げ温度23℃±2℃、折り曲げ線は防眩性ハードコート積層フィルムのマシン方向と直角となる方向とし、防眩性ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが外側となるように折り曲げて曲面が形成されるようにして行った。クラックが発生しなかった成形ジグのうち正面部分の半径の最も小さいものの正面部分の半径を最小曲げ半径とした。この「正面部分」は、JIS K6902:2007の18.2項に規定されたB法における成形ジグに関する同用語を意味する。
【0134】
(へ)水接触角:
防眩性ハードコート積層フィルムの第1ハードコート面を、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R 3257:1999を参照。)で測定した。
【0135】
(ト)耐擦傷性1(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、防眩性ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、防眩性ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復1万回擦った後、上記(へ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。水接触角が100度以上であるときは、更に往復5千回擦った後、上記(へ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復1万回後でも水接触角100度以上。
B:往復7500回後では水接触角100度以上だが、1万回後は100度未満。
C:往復5000回後では水接触角100度以上だが、7500回後は100度未満。
D:往復5000回後で水接触角100度未満。
【0136】
(チ)耐擦傷性2(耐スチールウール性):
防眩性ハードコート積層フィルムを、第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置いた。続いて、学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、試験片の表面を往復100回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察した。傷が認められない場合には、更に往復50回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復200回後でも傷は認められない。
B:往復150回後では傷は認められないが、往復200回後には傷を認めることができる。
C:往復100回後では傷は認められないが、往復150回後には傷を認めることができる。
D:往復100回後で傷を認めることができる。
【0137】
(リ)黄色度指数;
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定した。
【0138】
(ヌ)表面平滑性(表面外観):
防眩性ハードコート積層フィルムの表面(両方の面)を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にうねりや傷がない。間近に光を透かし見ても、ムラやブツがない。
○:間近に光を透かし見ると、僅かなムラのある箇所がある。しかし、うねり、傷、及びブツはない。
△:間近に見ると、表面にうねりや傷を僅かに認める。またムラやブツがある。
×:表面にうねりや傷を多数認めることができる。また明らかなムラやブツがある。
【0139】
(ル)碁盤目試験(密着性):
JIS K 5600-5-6:1999に従い、防眩性ハードコート積層フィルムに第1ハードコート面側から碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
【0140】
(ヲ)切削加工性(曲線状切削加工線の状態):
コンピュータにより自動制御を行うルーター加工機を使用し、防眩性ハードコート積層フィルムに、直径2mmの真円形の切削孔と直径0.5mmの真円形の切削孔を設けた。このとき使用したミルは刃先の先端形状が円筒丸型の超硬合金製4枚刃、ニック付きのものであり、刃径は加工箇所に合わせて適宜選択した。続いて直径2mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。同様に直径0.5mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。表には前者の結果-後者の結果の順に記載した。
◎:顕微鏡観察でもクラック、ヒゲは認められない
○:顕微鏡観察でもクラックは認められない。しかしヒゲは認められる。
△:目視でクラックは認められない。しかし顕微鏡観察ではクラックが認められる。
×:目視でもクラックが認められる。
【0141】
使用した原材料
(A)多官能(メタ)アクリレート:
(A-1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(A-2)ペンタエリスリトールトリアクリレート。3官能。
【0142】
(B)撥水剤:
(B-1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY-1203(商品名)」。固形分20質量%。
(B-2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。固形分70質量%。
【0143】
(C)シランカップリング剤:
(C-1)信越化学工業株式会社のN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン「KBM-602(商品名)」。
(C-2)信越化学工業株式会社のN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM-603(商品名)」。
(C-3)信越化学工業株式会社の3-アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM-903(商品名)」。
(C-4)信越化学工業株式会社の3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン「KBM-802(商品名)」。
(C-5)信越化学工業株式会社の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-403(商品名)」。
【0144】
(D)平均粒子径 0.5~10μmの樹脂微粒子:
(D-1)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社の真球状シリコン系樹脂微粒子「トスパール120(商品名)」。平均粒子径2μm。
(D-2)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社の真球状シリコン系樹脂微粒子「トスパール130(商品名)」。平均粒子径3μm。
(D-3)綜研化学株式会社のアクリル系樹脂微粒子「MA-180TA(商品名)」。平均粒子径1.8μm。
(D-4)綜研化学株式会社のアクリル系樹脂微粒子「MX-80H3wT (商品名)」。平均粒子径0.5μm。
(D-5)東洋紡株式会社のアクリル系樹脂微粒子「FH-S010(商品名)」。平均粒子径10μm。
【0145】
(D’)参考微粒子:
(D’-1)株式会社アドマテックスのシリカ微粒子「SO-E6(商品名)」。平均粒子径2μm。
【0146】
(E)平均粒子径 1~300nmの無機微粒子:
(E-1)ビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径20nmのシリカ微粒子。
【0147】
(F)レベリング剤:
(F-1)楠本化成株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「ディスパロンNSH-8430HF(商品名)」。固形分10質量%。
(F-2)ビックケミー・ジャパン株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「BYK-3550(商品名)」。固形分52質量%。
(F-3)ビックケミー・ジャパン株式会社のアクリル重合体系レベリング剤「BYK-399(商品名)」。固形分100質量%。
(F-4)楠本化成株式会社のシリコン系レベリング剤「ディスパロンLS-480(商品名)」。固形分100質量%。
【0148】
(G)任意成分:
(G-1)双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB-PI714(商品名)」。
(G-2)1-メトキシ-2-プロパノール。
【0149】
(H1)第1ハードコート形成用塗料:
(H1-1)上記(A-1)100質量部、上記(B-1)2質量部(固形分換算0.40質量部)、上記(B-2)0.06質量部(固形分換算0.042質量部)、上記(C-1)0.5質量部、上記(D-1)2質量部、上記(G-1)4質量部、及び上記(G-2)100質量部を混合攪拌して得た塗料。表1に配合表を示す。なお上記(B-1)と上記成分(B-2)については、表に固形分換算の値を記載している。
【0150】
(H1-2~20)配合を表1~3の何れか1に示すように変更したこと以外は、上記(H1-1)と同様にして塗料を得た。
【0151】
(H1’)参考第1ハードコート形成用塗料:
(H1’-1~7)配合を表1~3の何れか1に示すように変更したこと以外は、上記(H1-1)と同様にして塗料を得た。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
(H2)第2ハードコート形成用塗料:
(H2-1)上記(A-2)100質量部、上記(E-1)140質量部、上記(F-1)2質量部(固形分換算0.2質量部)、上記(G-1)17質量部、及び上記(G-2)200質量部を混合攪拌して得た塗料。表4に配合表を示す。なお上記(F-1)と上記(F-2)については、表に固形分換算の値を記載している。
【0156】
(H2-2~12)配合を表4又は表5に示すように変更したこと以外は、上記(H2-1)と同様にして塗料を得た。
【0157】
(H2’)参考第2ハードコート形成用塗料:
(H2’-1、2)配合を表5に示すように変更したこと以外は、上記(H2-1)と同様にして塗料を得た。
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
(P)透明樹脂フィルム:
(P-1)2種3層マルチマニホールド方式の共押出Tダイ、及び第一鏡面ロール(溶融フィルムを抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール。)と第二鏡面ロールとで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機を備えた装置(図4参照)を使用し、2種3層多層樹脂フィルムの両外層(α1層とα2層)としてエボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド「PLEXIMID TT50(商品名)」を、中間層(β層)として住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301-4(商品名)」を、共押出Tダイから連続的に共押出し、α1層が第一鏡面ロール側となるように、回転する第一鏡面ロールと第二鏡面ロールとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μm、α1層の層厚み80μm、β層の層厚み90μm、α2層の層厚み80μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度300℃、第一鏡面ロールの設定温度130℃;第二鏡面ロールの設定温度120℃、引取速度6.5m/分であった。
【0161】
(P-2)両外層として、上記「PLEXIMID TT50(商品名)」の替わりに、三菱瓦斯化学株式会社のアクリル系樹脂「Optimas 7500FS(商品名)」を用いたこと以外は、上記(P-1)と同様にして透明樹脂フィルムを得た。
【0162】
(P-3)層比をα1層の層厚み60μm、β層の層厚み130μm、α2層の層厚み60μmに変更したこと以外は、上記(P-1)と同様にして透明樹脂フィルムを得た。
【0163】
(P-4)層比をα1層の層厚み40μm、β層の層厚み170μm、α2層の層厚み40μmに変更したこと以外は、上記(P-1)と同様にして透明樹脂フィルムを得た。
【0164】
(P-5)三菱樹脂株式会社の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム「ダイヤホイル(商品名)」、厚み250μm。
【0165】
(P-6)住友化学株式会社のアクリル系樹脂フィルム「テクノロイS001G(商品名)」、厚み250μm。
【0166】
(P-7)単層Tダイ、及び第一鏡面ロール(溶融フィルムを抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール。)と第二鏡面ロールとで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機を備えた装置を使用し、住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301-4(商品名)」をTダイから連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと第二鏡面ロールとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度320℃、第一鏡面ロールの設定温度140℃;第二鏡面ロールの設定温度120℃、引取速度5.6m/分であった。
【0167】
例1
上記(P-1)の両面にコロナ放電処理を行った。両面とも濡れ指数は64mN/mであった。次にα1層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H2-1)をウェット厚み40μm(硬化後厚み22μm)となるように塗布した。次に炉内温度90℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図3参照)、鏡面金属ロールの温度90℃、積算光量80mJ/cmの条件で処理した。上記(H2-1)のウェット塗膜は、指触乾燥状態の塗膜になった。次に上記(H2-1)の指触乾燥状態の塗膜の上にダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H1-1)をウェット厚み4μm(硬化後厚み2μm)となるように塗布した。次に炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図1参照)、鏡面金属ロールの温度60℃、積算光量480mJ/cmの条件で処理し、第1ハードコート、及び第2ハードコートを形成した。続いて、α2層側の面の上に第3ハードコートを、第2ハードコートの形成に用いたのと同じ塗料(例1は上記(H2-1)。)を用い、ダイ方式の塗工装置を使用して、硬化後厚み22μmとなるように形成し、ハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(ヲ)を行った。結果を表6に示す。
【0168】
例2~20、例1C~7C
上記(H1-1)の替わりに表6~9の何れか1に示す塗料を用いたこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表6~9の何れか1に示す。
【0169】
例21~31、例8C、9C
上記(H2-1)の替わりに表10~12の何れか1に示す塗料を用いたこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表10~12の何れか1に示す。
【0170】
例32~36
上記(P-1)の替わりに表12に示す透明樹脂フィルムを用いたこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表12に示す。
【0171】
例37~40
第1ハードコートの硬化後厚みを、表13に示すように変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表13に示す。
【0172】
例41~44
第2ハードコートの硬化後厚みを、表13又は表14に示すように変更し、第3ハードコートの硬化後厚みを第2ハードコートの硬化後厚みと同じに変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表13又は表14に示す。
【0173】
例45~59
ハードコート積層フィルムの製造条件を表14~16の何れか1に示すように変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表14~16の何れか1に示す。
【0174】
【表6】
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
【表9】
【0178】
【表10】
【0179】
【表11】
【0180】
【表12】
【0181】
【表13】
【0182】
【表14】
【0183】
【表15】
【0184】
【表16】
【0185】
本発明の好ましい防眩性ハードコート積層フィルムは、防眩性、耐擦傷性、表面硬度、及び指すべり性に優れる。更に耐折り曲げ性、色調、外観、層間密着強度、及び切削加工性も良好である。そのため液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置の部材(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。)、特にカーナビゲーション装置などの、画面に外部からの光が入射する環境でしばしば使用される装置であって、タッチパネル機能を有する装置の部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
図1】本発明の防眩性ハードコート積層フィルムの一例を示す断面図である。
図2】曲率半径を説明する図である。
図3】実施例で用いた紫外線照射装置の概念図である。
図4】実施例で用いた製膜装置の概念図である。
【符号の説明】
【0187】
1:第1ハードコート
2:第2ハードコート
3:第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)
4:芳香族ポリカーボネート系樹脂の層(β)
5:第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)
6:第3ハードコート
7:紫外線照射装置
8:鏡面金属ロール
9:ウェブ
10:抱き角
11:溶融樹脂フィルム
12:Tダイ
13:第一鏡面ロール
14:第二鏡面ロール

図1
図2
図3
図4