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特許7270732車両用のブレーキシステムの液圧制御ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】車両用のブレーキシステムの液圧制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/40 20060101AFI20230428BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
B60T8/40 C
B60T15/36 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021525399
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 IB2020054614
(87)【国際公開番号】W WO2020250055
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2019111178
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】仁張 勉
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209203(JP,A)
【文献】実開昭51-067419(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/40
B60T 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ(45)によって昇圧されるブレーキ液が吐出される吐出管路(38)と、
前記吐出管路(38)からブレーキ液が流入するダンパ(27)と、
ブレーキ液が、前記ダンパ(27)に流入したブレーキ液が流出するダンパ管路(36)または前記ダンパ(27)を迂回するバイパス管路(37)のいずれかを選択的に通るようにガイドするバイパス弁(39)と、を備えるブレーキ液圧制御装置において、
前記バイパス弁(39)は、前記ダンパ管路(36)へ通じるダンパ管路開口(393)と、前記バイパス管路(37)へ通じるバイパス管路開口(394)を有するピストン(391)を備え、
前記バイパス弁(39)は、前記ダンパ通路(36)および/または前記バイパス管路(37)に対して傾斜して配置され、
前記ダンパ管路開口(393)、および前記バイパス管路開口(394)は段部を有し、前記ピストン(391)の軸に対し側方に設けられ、
それらの開口面積は、前記ダンパ管路(36)、および前記バイパス管路(37)の開口面積に比して狭く形成されており、
前記ピストン(391)が受ける圧力に応じて、前記ピストン(391)が通常状態から切換状態になることで、前記ダンパ管路開口(393)はダンパ通路(36)との間を遮断し、前記バイパス管路開口(394)と前記バイパス管路(37)とを連通させる
ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記ダンパ管路開口(393)と前記バイパス管路開口(394)は、前記ピストン(391)の軸に対して対称の位置にある、
請求項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記バイパス弁(39)は、前記ピストン(391)をブレーキ液の流入方向と逆向きに付勢するスプリングを有する、
請求項1または2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記バイパス弁(39)が通常状態にあるときは、前記ピストン(391)は、前記スプリングによるスプリング力によって、所定の位置で位置決めされている
請求項3に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムのブレーキ液圧制御装置に関し、特に、ブレーキ液の液圧を上昇させるポンプを備えたブレーキ液圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ液圧制御装置して、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる主流路と、主流路のブレーキ液を逃がす副流路と、副流路のポンプから主流路にブレーキ液を供給する供給流路と、有する液圧回路を備えているものがある。
【0003】
例えば、副流路のブレーキ液の流れにおける上流側端部は、主流路のうちの、増圧弁を基準とするホイールシリンダ側の領域に接続されており、副流路の下流側端部は、主流路のうちの、増圧弁を基準とするマスタシリンダ側の領域に接続されている。また、供給流路のブレーキ液の流れにおける上流側端部は、マスタシリンダに連通し、供給流路の下流側端部は、副流路のうちの、減圧弁を基準とする下流側の領域であって、且つ、その領域に設けられているポンプの吸込側に接続されている。また、主流路のうちの、副流路の下流側端部との接続部を基準とするマスタシリンダ側の領域に、回路制御弁が設けられており、供給流路の途中部に吸入制御弁が設けられている。
【0004】
例えば、増圧弁、減圧弁、ポンプ、回路制御弁、及び吸入制御弁と、それらが組み込まれているハウジングと、それらの動作を司る電子制御ユニットによって、ブレーキ液圧制御装置が構成される。ブレーキ液圧制御装置において、増圧弁、減圧弁、ポンプ、回路制御弁、及び吸入制御弁の動作が制御されることで、液圧回路の液圧が制御される。
【0005】
特に、ブレーキシステムの入力部(例えばブレーキペダル等)におけるブレーキ操作の状態に関わらず、ホイールシリンダのブレーキ液の液圧を上昇させる必要が生じた際には、増圧弁が開き、減圧弁が閉じ、回路制御弁が閉じ、且つ、吸入制御弁が開いた状態で、ポンプが駆動される。
【0006】
ポンプが駆動されると、ブレーキ液に生じた脈動がブレーキシステムから車両のエンジンルームへと伝わっていき、騒音が発生する場合がある。この騒音は、使用者(ドライバー)が不快と感じる程の大きさになることもある。このため、ブレーキシステムの従来の液圧制御装置には、ポンプの駆動時に発生する脈動の低減を図ったものも提案されている。例えば、特許文献1に記載のブレーキ液圧制御装置は、1つの液圧回路内に1つのポンプを備え、該ポンプの吐出側に、該ポンプから吐出されたブレーキ液の脈動を低減させるダンパを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2017-537020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のダンパは、ポンプから吐出されたブレーキ液の脈動が、チューブ状で弾性変形可能な抑制要素に一旦収容されることによって、脈動を低減させるものである。しかし、該抑制要素に流入したブレーキ液は車両を制動させるホイールシリンダの液圧増加には寄与しないため、ブレーキ液をポンプにより自動加圧することによって車両を制動させる場合、所望のブレーキ力を得るまでの時間に遅れが生じる。これは、差し迫った衝突を回避するために車両を急制動させたい場合、騒音よりも衝突の回避または軽減が優先されるべきであり、車両の状況に応じて、ブレーキ力の立ち上がり時間を短縮することのできるシステムであることが望ましい。
【0009】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、車両の制動モードや要求される制動力に応じて、ダンパを介さずにポンプから吐出されたブレーキ液をホイールシリンダへ通流させることを可能とするブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、ポンプ(45)によって昇圧されるブレーキ液が吐出される吐出管路(38)と、前記吐出管路(38)からブレーキ液が流入するダンパ(27)と、ブレーキ液が、前記ダンパ(27)に流入したブレーキ液が流出するダンパ管路(36)または前記ダンパ(27)を迂回するバイパス管路(37)のいずれかを選択的に通るようにガイドするバイパス弁(39)と、を備えるブレーキ液圧制御装置において、前記バイパス弁(39)は、前記ダンパ管路(36)へ通じるダンパ管路開口(393)と、前記バイパス管路(37)へ通じるバイパス管路開口(394)を有するピストン(391)を備え、前記バイパス弁(39)は、前記ダンパ通路(36)および/または前記バイパス管路(37)に対して傾斜して配置され、前記ダンパ管路開口(393)、および前記バイパス管路開口(394)は段部を有し、前記ピストン(391)の軸に対し側方に設けられ、それらの開口面積は、前記ダンパ管路(36)、および前記バイパス管路(37)の開口面積に比して狭く形成されており、前記ピストン(391)が受ける圧力に応じて、前記ピストン(391)が通常状態から切換状態になることで、前記ダンパ管路開口(393)はダンパ通路(36)との間を遮断し、前記バイパス管路開口(394)と前記バイパス管路(37)とを連通させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置では、ダンパに流入したブレーキ液が流出するダンパ管路またはダンパを迂回するバイパス管路のいずれかを選択的に通るようにガイドするバイパス弁とを備えるブレーキ液圧制御装置において、前記バイパス弁は、前記ダンパ管路へ通じるダンパ管路開口と、前記バイパス管路へ通じるバイパス管路開口を有するピストンを備えている。
つまり、ポンプによって加圧され脈動を伴ったブレーキ液を、車両の制動モードや要求される制動力に応じて、脈動を低減するダンパ管路か、ダンパを迂回するバイパス管路かを選択的に通過させることが可能になると共に、ダンパ、ダンパ管路、およびバイパス管路の配置の自由度を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の構成の一例を表す図である。
図2】従来のブレーキ液圧制御装置のダンパ部材の配置を表す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のダンパ部材の配置を表す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のバイパス弁の断面を表す図である。
図5】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のバイパス弁の動きを説明する図である。
図6】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のバイパス弁の動きを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニットについて、図面を用いて説明する。
【0014】
なお、以下では、本発明に係るブレーキ液圧制御装置を含むブレーキシステムが、4輪車に搭載されている場合について説明しているが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置を含むブレーキシステムは、4輪車以外の他の車両(2輪車、トラック、バス等)に搭載されてもよい。また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る液圧制御ユニットを含むブレーキシステムは、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分には、同一の符号を付している、又は、符号を付すことを省略している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
<ブレーキシステム、およびブレーキ液圧制御装置の構成説明>
【0015】
図1に示したブレーキシステムは、4輪車用のブレーキシステムの液圧回路のうち、1車輪へのブレーキ系統のみを示した図である。図1においては、ブレーキシステムは、倍力装置を用いずに運転者によるブレーキペダルの踏力を増幅してホイールシリンダに伝達するブレーキシステムに適用されている。ただし、ブレーキシステムは、倍力装置を用いる例であってもよい。
【0016】
ブレーキ液圧制御装置20は、第1から第4の4つの液圧回路を有する。第2から第4の液圧回路は第1の液圧回路と同様の構成を有するため、図1から省略されている。4輪それぞれの車輪のホイールシリンダ14には第1から第4の液圧回路を介して、マスタシリンダ13からブレーキ液が供給される。
【0017】
第1の液圧回路30は、モータ49により駆動されるポンプ45を備えている。また、第1の液圧回路30は、アキュムレータ25及びダンパ27を備えている。
【0018】
ポンプ45は、モータ49により駆動されてブレーキ液を吐出する。モータ49の駆動は、電子制御ユニット10により制御される。なお、第1の液圧回路30に設けられるポンプ45の数は一つに限られない。
【0019】
マスタシリンダ13に連通する管路には、第1の圧力センサ17が設けられている。第1の圧力センサ17は、マスタシリンダ13の内圧を検出する。
【0020】
車輪の液圧ブレーキ15のホイールシリンダ14に連通する管路には、第2の圧力センサ16が設けられている。第2の圧力センサ16は、ホイールシリンダ14の内圧を検出する。
【0021】
第1の液圧回路30は、複数の電磁制御弁を備えている。複数の電磁制御弁は、常閉型でリニア制御可能な回路制御弁22と、常閉型でオンオフ制御される吸入制御弁26と、常開型でリニア制御可能な増圧弁23と、常閉型でオンオフ制御される減圧弁24を含む。
【0022】
回路制御弁22は、マスタシリンダ13とポンプ45の吐出側とを結ぶ流路32に配置されている。回路制御弁22は、リニア制御可能になっており、マスタシリンダ13と増圧弁23との間の流路面積を連続的に調整する。
【0023】
吸入制御弁26は、マスタシリンダ13とポンプ45の吸入側とを結ぶ管路31に配置されている。吸入制御弁26は、マスタシリンダ13とポンプ45の吸入側との間を連通又は遮断する。
【0024】
増圧弁23は、回路制御弁22とホイールシリンダ14とを結ぶ管路33に配置されている。増圧弁23は、リニア制御可能になっており、マスタシリンダ13及び回路制御弁22側から車輪の液圧ブレーキ15のホイールシリンダ14側への作動油の流量を連続的に調整する。
【0025】
減圧弁24は、ポンプ45の吸入側とホイールシリンダ14とを結ぶ流路34に配置されている。減圧弁24は、ポンプ45の吸入側とホイールシリンダ14との間を連通又は遮断する。減圧弁24は、開弁状態で車輪の液圧ブレーキ15のホイールシリンダ14に供給されたブレーキ液をアキュムレータ25に供給することにより減圧する。減圧弁24の開閉を断続的に繰り返すことにより、ホイールシリンダ14からアキュムレータ25に流れるブレーキ液の流量を調節することができる。
【0026】
電子制御ユニット10は、例えば、周知の液圧制御動作(ABS制御動作、ESP制御動作等)に加えて、以下の液圧制御動作を実施する。
増圧弁23が開放され、減圧弁24が閉鎖され、回路制御弁22が開放され、吸入制御弁26が閉鎖され、ブレーキペダル11が操作された際に、ブレーキペダル11のブレーキレバースイッチBLSの検出信号及び第1の液圧回路30の圧力センサ17、18の検出信号から、ホイールシリンダ14の液圧の不足又は不足の可能性が検知されると、電子制御ユニット10は、アクティブ増圧制御動作を開始する。
【0027】
アクティブ増圧制御動作において、電子制御ユニット10は、回路制御弁22を閉鎖し、吸入制御弁26を開放し、かつ増圧弁23を開放した状態で、モータ49を駆動させる。これにより、マスタシリンダ13からのブレーキ液が、管路31、管路33を介してホイールシリンダ14へ流動するのを可能にする。この時、電子制御ユニット10は、減圧弁24を閉鎖状態のままにすることで、ホイールシリンダ14からアキュムレータ25へのブレーキ液の流動を制限する。また、電子制御ユニット10は、増圧弁23をリニア制御することによってホイールシリンダ14のブレーキ液の液圧を調整する。
【0028】
第1の液圧回路30の液圧の不足の解消又は回避が検知されると、電子制御ユニット10は、回路制御弁22を開放させ、吸入制御弁26を閉鎖させ、且つ、ポンプ45の駆動を停止することで、アクティブ増圧制御動作を終了する。
【0029】
ここで、ポンプ45が駆動されると、ブレーキ液に生じた脈動は、ホイールシリンダ14まで伝わっていくことがある。このため、ポンプ45の吐出側にダンパ27を設け、脈動を伴ったブレーキ液を一旦ダンパに収容することによって脈動を低減させる液圧回路が公知である。しかし、緊急ブレーキのように、ブレーキ液の液圧をホイールシリンダに直ちに伝達する必要がある場合、一旦ダンパに収容されるブレーキ液はホイールシリンダには流動しないため、車両制動力の立ち上がりが遅れるという問題があった。
<従来のダンパ部材の配置>
【0030】
図2を用いて、従来のブレーキ液圧制御装置のダンパ部材の配置およびブレーキ液の流れについて説明する。
【0031】
ポンプ45から吐出されたブレーキ液が通る吐出管路38上にダンパ27が配置され、ダンパ27の下流には、絞り28と逆止弁29が配置される。
【0032】
ポンプ45は2つのポンプ部材(図示せず)を備えたプランジャ型ポンプとして構成されており、これら2つのポンプ部材は、モータ49によって偏心体を用いて駆動される。ポンプ部材は運転中にブレーキ液を、吐出管路38を通して圧送し、この際に液圧を伴ったブレーキ液の流れを生じさせる。このブレーキ液は、ポンプ部材に交互に作用するプランジャに基づいて脈動する。ポンプ45は、液圧ハウジング21に配置されていて、脈動されたブレーキ液を吐出管路に圧送する。
【0033】
ダンパ27は、ブレーキ液の脈動を低減するために用いられ、そのために減衰室を内部に有している。ポンプにより圧送されるブレーキ液は、減衰室に一旦流入する。その後、ダンパ27の減衰室から流出したブレーキ液は、絞り28を介して管路33に流出する。絞り28は可変の絞り作用によって調節可能に構成されていても良い。
<本発明に係るダンパ部材の配置の例>
【0034】
図3を用いて、本発明に係るダンパ部材の配置およびブレーキ液の流れについて説明する。尚、従来のダンパ部材の配置と同様の構成については、図3において同じ符号を用いており、図2で説明したものと同様の作用、機能をもたらす。
【0035】
図3におけるダンパ部材の配置は、図2の配置とは異なり、バイパス管路37およびバイパス弁39が設けられている。バイパス弁39は、ポンプ45によって生じる液圧を伴ったブレーキ液の液圧Pに基づいて制御可能である。バイパス弁39は、通常の位置(液圧を伴ったブレーキ液の流れがない場合の位置)において、ポンプ45から吐出されるブレーキ液がダンパ管路36を通過するように設定される。
【0036】
バイパス弁39を通過するブレーキ液の液圧が比較的低い液圧、例えば20バール未満の場合、バイパス弁39は通常状態の位置にとどまるため、ブレーキ液はダンパ管路を通過する。一方、バイパス弁39を通過するブレーキ液の液圧が比較的高い液圧、例えば20バール以上の場合、バイパス弁39はブレーキ液がバイパス管路37を通過する位置に切り替わる。このため、バイパス弁39は、液圧が比較的高い場合、ブレーキ液をダンパ27および絞り28を迂回するようにガイドする。
【0037】
さらに、ダンパ管路36に設けられたダンパ27の下流およびバイパス管路37には、逆止弁29、35が設けられている。逆止弁29、35は、逆止弁29、35の下流において上流よりも高い液圧流体圧力が発生すると、閉鎖されるように構成される。逆止弁29、35が閉鎖しており、かつ、バイパス弁39がダンパ管路36を閉鎖する場合は、バイパス弁39の下流に配置されるダンパ27を、ブレーキ液圧制御装置の管路システムから完全に流体的に分離する。
<本発明に係るバイパス弁の断面図の説明>
【0038】
図4は、ブレーキ液の液圧に依存して制御可能なバイパス弁の断面を示している。
バイパス弁39は、カップ状のピストン391及びスプリング392を有している。
スプリング392の一端はピストン391の底部に結合され、他の一端は吐出管路38の終端部に結合されており、スプリング391はポンプにより昇圧されたブレーキ液の流入方向と逆向きにピストン391を付勢している。またピストン391の外壁には、ブレーキ液がピストンの外壁を通じて吐出管路38に逆流しないように、シールリング395が設けられている。
【0039】
図4において、ピストン391は通常の位置にあることを示しており、ピストン391が通常状態で保持されるよう、ピストンの開口部に金属リング396が設けられている。スプリング392は実施例においてはコイル状のスプリングであり、バイパス弁39を通過するブレーキ液の液圧が比較的低い液圧、具体的には20バール未満である場合、スプリングは図4が示す位置に保持されるよう、バネ定数が設定されている。尚、ブレーキ液の液圧により所定の力がピストンに加わるときにスプリング392の収縮がされるよう、ばね定数が予め調整されている。
【0040】
ピストン391はさらに、ピストンの軸に対して側方にダンパ管路開口393およびバイパス管路開口394を備えている。実施例では、ダンパ管路開口393とバイパス管路開口394はピストン391の軸方向に対し対称の位置に配置されており、ピストンの加工がされやすく形成されている。ただし、ダンパ管路開口393とバイパス管路開口394の配置はこの実施例には限定されず、ダンパ管およびバイパス管路の配置に応じて適宜配置を変えても良い。通常の位置において、ダンパ管路開口はダンパ管路36に通じており、バイパス管路開口394は吐出管路38により閉鎖されている。
【0041】
バイパス弁39を通過するブレーキ液の液圧が比較的高い液圧、具体的には20バール以上になると、スプリング392の付勢力に抗してピストン391は、図4において下方に移動する。この時、ダンパ管路開口393は吐出管路38により閉鎖され、バイパス管路開口394はバイパス管路37に通じる。尚、ダンパ管路開口393およびバイパス管路開口394は図4のように段部を有しており、絞り効果を奏するように構成されている。
<バイパス弁の動きの説明>
【0042】
図5は、バイパス弁39の2つの弁位置を示している。図5は、バイパス弁の通常の位置、または比較的低い液圧のブレーキ液がバイパス弁を通過する際のバイパス弁の位置を示している。図6は、比較的高い液圧のブレーキ液がバイパス弁を通過する際のバイパス弁の位置を示している。
【0043】
ダンパ27の内部には、脈動を伴ったブレーキ液が収容される弾性変形可能な抑制要素271が設けられる。ダンパ27の下方には、吐出管路38とダンパ27を接続するようにダンパ管路36が設けられる。尚、実施例では、吐出管路38からダンパ27にブレーキ液が流入する際に通過するダンパ流入管路36aと、ブレーキ液がダンパ27から流出する際に通過するダンパ流出管路36bがダンパ27の軸と略平行に設けられている。また、ダンパ流入管路36aおよびダンパ流出管路36bと平行にバイパス管路37が吐出管路38と接続されている。
【0044】
実施例においては、ダンパ流入管路36aとバイパス管路37は吐出管路38を隔てて反対側に配置され、バイパス弁39はダンパ流入管路36aとバイパス管路37に対して傾斜して配置されている。
具体的には、バイパス弁の摺動方向とダンパ流入管路36aとで形成される角度が鈍角となるように、また、バイパス弁の摺動方向とバイパス管路37とで形成される角度が鋭角となるようにそれぞれ配置されている。
【0045】
図5における破線矢印は、比較的低い液圧のブレーキ液がバイパス弁を通過する際のブレーキ液の流れを示している。吐出管路38からピストン391に流入したブレーキ液は、ダンパ管路開口393、ダンパ流入管路36aを介して、ダンパ27の抑制要素271に収容される。この時、バイパス管路開口394は吐出管路38により閉鎖されているため、バイパス管路開口394からブレーキ液が流出しない構造となっている。その後、ブレーキ液は絞り28を有するダンパ流出管路36bを通過し、管路33へ流出される。
【0046】
図6における破線矢印は、比較的高い液圧を伴ったブレーキ液がバイパス弁を通過する際のブレーキ液の流れを示している。吐出管路38からピストン391に流入したブレーキ液は、バイパス管路開口394、バイパス管路37を介して、直接管路33へ流出する。この時、ダンパ管路開口393は吐出管路により閉鎖されているため、ダンパ管路開口を通じてブレーキ液が流出することはない。従い、ダンパ27および絞り28を迂回して管路33に至ることが可能となる。
<本発明のブレーキ液圧制御装置の効果>
【0047】
本実施の形態に係るバイパス弁およびバイパス管路を備えるブレーキ液圧制御装置の効果について説明する。
【0048】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、バイパス弁39のピストン391に、ダンパ管路36へ通じるダンパ管路開口393と、バイパス管路37へ通じるバイパス管路開口394を有する構成としたので、車両の制動モードや要求される制動力に応じて、脈動を低減するダンパ管路か、ダンパを迂回するバイパス管路かを選択的に通過させることが可能になると共に、ダンパ管路とバイパス管路の配置の自由度を向上させることが可能となる。
【0049】
本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、バイパス弁39がダンパ管路36またはバイパス管路37に対して傾斜して配置され、また、ダンパ管路開口393またはバイパス管路開口394はピストン391の軸に対し、側方に設けられるため、バイパス弁39、ダンパ管路36、およびバイパス管路全体をコンパクトに納めることが可能となるとともに、バイパス弁の摺動距離を縮小させることが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
10 電子制御ユニット、20 ブレーキ液圧制御装置、27 ダンパ、28 絞り、36 ダンパ管路、37 バイパス管路、38 吐出管路、39 バイパス弁、45 ポンプ、391 ピストン、392 スプリング、393 ダンパ管路開口、394 バイパス管路開口、395 シールリング、396 金属リング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6