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特許7270748スパークプラグ接続部材およびスパークプラグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】スパークプラグ接続部材およびスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
H01T13/20 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021544691
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020051818
(87)【国際公開番号】W WO2020160941
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-20
(31)【優先権主張番号】102019201574.3
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019216340.8
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ラインシュ,ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ボナウ,コリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヌーファー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ヒューベアトゥス
(72)【発明者】
【氏名】キュンツェル,カーステン
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-176687(JP,A)
【文献】特開2018-026293(JP,A)
【文献】特開2016-009567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の接触部材(9a)および/または第2の接触部材(9b)および/または抵抗部材(8)は、次の一般式(1)の酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の酸化物(11)を含み:
1-x 式(1)
ここでMはTi、Zr、Sn、およびこれらの組合せから選択され、DはV、Nb、Ta、P、As、Sb、Bi、およびこれらの組合せから選択され、0<x<0.5であり、および/または次の一般式(2)の酸化物であり:
Zn1-yO 式(2)
ここでQはAl、Ga、In、B、Ti、Zr、Hf、Si、Ge、Sn、およびこれらの組合せから選択され、0<y<0.5であり、
および/またはZrO2-r、TiO2-r、SnO2-r、ZnO1-r、HfO2-r、V5-r、Nb5-r、およびTa5-rであって0.5>r≧0であるものからなる群から選択される酸化物である、スパークプラグ接続部材。
【請求項2】
前記第1の接触部材(9a)および/または前記第2の接触部材(9b)および/または前記抵抗部材(8)は金属および炭素含有化合物を有さない、請求項1に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項3】
第1の接触部材(9a)と第2の接触部材(9b)とを含むスパークプラグ接続部材において、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)の間に抵抗部材(8)が配置されており、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)は10 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、前記抵抗部材(8)は10 -3 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、
前記第1の接触部材(9a)および/または前記第2の接触部材(9b)および/または前記抵抗部材(8)は金属および炭素含有化合物を有さない、スパークプラグ接続部材。
【請求項4】
前記第1の接触部材(9a)および/または前記第2の接触部材(9b)および/または前記抵抗部材(8)は無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金を有さない、請求項1から3のいずれか1項に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項5】
第1の接触部材(9a)と第2の接触部材(9b)とを含むスパークプラグ接続部材において、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)の間に抵抗部材(8)が配置されており、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)は10 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、前記抵抗部材(8)は10 -3 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、
前記第1の接触部材(9a)および/または前記第2の接触部材(9b)および/または前記抵抗部材(8)は無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金を有さない、スパークプラグ接続部材。
【請求項6】
前記第1の接触部材(9a)および/または前記第2の接触部材(9b)および/または前記抵抗部材(8)は無機アモルファス酸化物である少なくとも1つの第2の酸化物(10)をさらに含む、請求項1からのいずれか1項に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項7】
前記第2の酸化物(10)はガラスである、請求項に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項8】
前記第1の接触部材(9a)および/または前記第2の接触部材(9b)および/または前記抵抗部材(8)は、ZrO、TiO、Al、およびこれらの混合物から選択される結晶性酸化物である少なくとも1つの第3の酸化物をさらに含む、請求項1からのいずれか1項に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項9】
前記第1の接触部材(9a)における前記第1の酸化物(11)の総含有率は前記第1の接触部材(9a)の総質量に対して最大で100質量%であり、および/または前記第2の接触部材(9b)における前記第1の酸化物(11)の総含有率は前記第2の接触部材(9b)の総質量に対して最大で100質量%であり、および/または前記抵抗部材(8)における前記第1の酸化物(11)の総含有率は前記抵抗部材(8)の総質量に対して最大で100質量%である、請求項1または2に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項10】
前記第1の接触部材(9a)における前記第2の酸化物(10)の総含有率は前記第1の接触部材(9a)の総質量に対して0超から75質量%であり、および/または前記第2の接触部材(9b)における前記第2の酸化物(10)の総含有率は前記第2の接触部材(9b)の総質量に対して0超から75質量%であり、および/または前記抵抗部材(8)における前記第2の酸化物(10)の総含有率は前記抵抗部材(8)の総質量に対して0超から75質量%である、請求項6または7に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項11】
前記第1の接触部材(9a)における前記第3の酸化物の総含有率は前記第1の接触部材(9a)の総質量に対して0超から20質量%であり、および/または前記第2の接触部材(9b)における前記第3の酸化物の総含有率は前記第2の接触部材(9b)の総質量に対して0超から20質量%であり、および/または前記抵抗部材(8)における前記第3の酸化物の総含有率は前記抵抗部材(8)の総質量に対して0超から20質量%である、請求項に記載のスパークプラグ接続部材。
【請求項12】
第1の接触部材(9a)と第2の接触部材(9b)とを含むスパークプラグ接続部材において、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)の間に抵抗部材(8)が配置されており、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)は10 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、前記抵抗部材(8)は10 -3 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、
前記第1の接触部材(9a)は、少なくとも1つの第1の酸化物(11)と、少なくとも1つの添加剤と任意選択として少なくとも1つの第2の酸化物(10)と、任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物とからなり、前記第1の接触部材(9a)の総質量に対する添加剤の総含有率は5質量%未満であり、および/または前記第2の接触部材(9b)は、少なくとも1つの第1の酸化物(11)と、少なくとも1つの添加剤と任意選択として少なくとも1つの第2の酸化物(10)と、任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物とからなり、前記第2の接触部材(9b)の総質量に対する添加剤の総含有率は5質量%未満であり、および/または前記抵抗部材(8)は、少なくとも1つの第1の酸化物(11)と、少なくとも1つの添加剤と任意選択として少なくとも1つの第2の酸化物(10)と、任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物とからなり、前記抵抗部材(8)の総質量に対する添加剤の総含有率は5質量%未満である、スパークプラグ接続部材。
【請求項13】
第1の接触部材(9a)と第2の接触部材(9b)とを含むスパークプラグ接続部材において、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)の間に抵抗部材(8)が配置されており、前記第1の接触部材(9a)と前記第2の接触部材(9b)は10 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、前記抵抗部材(8)は10 -3 S/mから10 S/mの比電気伝導率を有し、
前記第1の接触部材(9a)は、少なくとも1つの第1の酸化物(11)と、少なくとも1つの添加剤と任意選択として少なくとも1つの第2の酸化物(10)と、任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物とからなり、前記第1の接触部材(9a)の総質量に対する添加剤の総含有率は0.5質量%未満であり、および/または前記第2の接触部材(9b)は、少なくとも1つの第1の酸化物(11)と、少なくとも1つの添加剤と任意選択として少なくとも1つの第2の酸化物(10)と、任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物とからなり、前記第2の接触部材(9b)の総質量に対する添加剤の総含有率は0.5質量%未満であり、および/または前記抵抗部材(8)は、少なくとも1つの第1の酸化物(11)と、少なくとも1つの添加剤と任意選択として少なくとも1つの第2の酸化物(10)と、任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物とからなり、前記抵抗部材(8)の総質量に対する添加剤の総含有率は0.5質量%未満である、スパークプラグ接続部材。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のスパークプラグ接続部材(12)を含んでいるスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化に対して改善された耐性を有するスパークプラグ接続部材およびスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室に配置されるスパークプラグは、スパークプラグの電磁適合性を改善するために、1から14kΩの固有の電気抵抗を有している。このとき典型的には、中心電極の脚部とスパークプラグの電気ターミナルとを接続し、ガラスと、結晶性酸化物と、および少なくとも1つの無機非酸化物の導電性材料、多くの場合にカーボンブラックとを含むスパークプラグ接続部材が利用される。調整されるべき電気抵抗ないし電気伝導率に応じて、スパークプラグ接続部材を複数の個別コンポーネントで構成することもできる。スパークプラグの製造プロセス中に高い温度が適用され、このことは非酸化物の導電性材料の酸化につながり、それに伴い、スパークプラグ接続部材の電気抵抗値の劣化につながる。このような種類の酸化は、スパークプラグの用途に即した使用中にも起こり得る。
【発明の概要】
【0003】
それに対して、本発明によるスパークプラグ接続部材は耐酸化性が非常に高く、それに伴い、恒常的に安定した高い電気抵抗のもとで、耐久性が非常に高いという特徴がある。このときスパークプラグ接続部材は、第1の接触部材と、第2の接触部材と、抵抗部材とを含んでおり、抵抗部材は第1の接触部材と第2の接触部材との間に配置される。さらに第1の接触部材は、スパークプラグでスパークプラグの電気ターミナルと接続される。第2の接触部材は、スパークプラグで中心電極の脚部と接続される。抵抗部材は、固有の全抵抗をスパークプラグに付与するための役目を果たし、それに対して第1および第2の接触部材は、隣接する各コンポーネントの間の電気伝導率を改善する。
【0004】
本発明によると、第1の接触部材と第2の接触部材が10S/mから10S/mの比電気伝導率を有し、抵抗部材が10-3S/mから10S/mの比電気伝導率を有することによって、スパークプラグ接続部材の高い耐酸化性と良好な抵抗値が得られる。このとき比電気伝導率は、DIN1324(1988年5月)に従って判定することができる。
【0005】
本発明によるスパークプラグ接続部材に基づき、その非常に良好な耐久性が実現されるとともに、安定的に調整可能な抵抗値が得られる。
【0006】
従属請求項は、本発明の好ましい発展例を示している。
【0007】
抵抗部材の抵抗値を、およびそれに伴ってスパークプラグの抵抗値も、特別に簡易かつ安定的に調整できるようにするために、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材は少なくとも1つの第1の酸化物を含む。低い被酸化性に基づき、第1の接触部材と第2の接触部材と抵抗部材がいずれも少なくとも1つの第1の酸化物を含むのが特別に好ましい。
【0008】
このとき第1の酸化物は、次の一般式(1)の酸化物からなる群から選択され:
1-x 式(1)
ここでMはTi、Zr、Sn、およびこれらの組合せから選択され、DはV、Nb、Ta、P、As、Sb、Bi、およびこれらの組合せから選択され、0<x<0.5である。
【0009】
その代替または追加として、第1の酸化物は次の一般式(2)のうちの少なくとも1つであり:
Zn1-yO 式(2)
ここでQはAl、Ga、In、B、Ti、Zr、Hf、Si、Ge、Sn、およびこれらの組合せから選択され、0<y<0.5である。
【0010】
一般式(1)および一般式(2)の第1の酸化物は、ドーピングされた導電性の酸化物である。
【0011】
さらに別の代替的または追加的な選択肢として、第1の酸化物は、ZrO2-r、TiO2-r、SnO2-r、ZnO1-r、HfO2-r、V5-r、Nb5-r、およびTa5-rであって0.5>r≧0であるものからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物である。r=0.0001から0.1であるのが好ましい。これらの酸化物は還元された導電性材料である。
【0012】
本発明に基づいて適用される上に挙げた第1の酸化物は結晶性酸化物であり、良好な導電率をもつという特徴がある。これらの酸化物は単独で適用することができ、または、互いに任意に組み合わせることができる。これらの酸化物は、スパークプラグ接続部材が用途に即して使用されるとき実質的に酸化可能でなく、それにより、スパークプラグ接続部材が酸化に対して恒久的に良好な耐性を有し、それに伴い、安定的に調整可能な抵抗値のもとで、非常に良好な耐久性を有する。
【0013】
低減された酸化可能性という意味から、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材(8)は金属および炭素含有化合物を有さないのがさらに好ましく、特に、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材は、無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金を有さない。それが意味するのは、スパークプラグ接続部材のそれぞれの、ないしは相応の1つの部材(あるいは複数の部材)の組成に、無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金が添加されていないことである。したがってこのような化合物の含有率は、技術的に不可避である残滓を除いて、相応の部材の総質量に対して0質量%である。たとえば両方の接触部材が、または少なくとも1つの接触部材と抵抗部材が、あるいは第1の接触部材、第2の接触部材、および抵抗部材が、無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金を含んでいないとき、これらの部材の各々について、無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金の含有率が、技術的に不可避の残滓を除いて0質量%であることが成り立つ。
【0014】
回避されるべき無機非酸化物の導電性材料に数えられるのは、たとえばカーボンブラック、グラファイト、および炭化物であり、炭化物とは炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化鉄、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、およびこれらの混合物であると理解される。回避されるべき金属には、たとえば鉄、タングステン、チタン、銅、銀、およびこれらの混合物ならびに合金がある。
【0015】
さらに、スパークプラグ接続部材の安定性を改善するために、および、さらにはその抵抗値を改善するために、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材は、無機アモルファス酸化物である少なくとも1つの第2の酸化物を含むのが好ましい。無機アモルファス酸化物とは、本発明では、1つまたは複数の金属酸化物から形成されるガラスであると理解される。このときガラスは実質的に限定されることがなく、調整されるべき抵抗値やその耐温度性の観点から選択される。
【0016】
第2の酸化物として特にケイ酸塩ガラスが利用されるのが好ましい。なぜならケイ酸塩ガラスは非常に安定的であり、電気的に絶縁性が良好だからである。ケイ酸塩ガラスは、第1の酸化物のための非常に良好なマトリクスを形成する。上に挙げた理由により、ガラスはホウケイ酸ガラス、特にリチウム・ホウケイ酸ガラス、リチウム・カルシウム・ホウケイ酸ガラス、またはナトリウム・ホウケイ酸ガラスであるのが好ましい。
【0017】
ガラスの特別に好ましい組成は次のとおりである(量の記載は、当該組成の総質量に対するものである):
SiO:35から65質量%
::20から55質量%
LiO:0.5から10質量%
NaO:0から10質量%
O:最大2質量%
CaO:0から15質量%
SrO:0から15質量%
BaO:0から10質量%
MgO:0から15質量%
Al:0から15質量%
PbO:0から5質量%
【0018】
第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材は、ZrO、TiO、Al、およびこれらの混合物から選択される結晶性酸化物である、少なくとも1つの第3の酸化物を含むのがさらに好ましい。このような第3の酸化物により、スパークプラグ接続部材の電気抵抗を改善することができる。
【0019】
別の好ましい実施形態では、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材における第1の酸化物の総含有率は、それぞれの部材の総質量に対してそれぞれ最大で100質量%、特に40から95質量%、特に60から85質量%である。スパークプラグ接続部材の部材のうちの1つで第1の酸化物が100質量%の含有率をもって使用されるとき、当該部材は第1の酸化物からなる。すなわち、それ以外の酸化物やそれ以外の材料は添加されていない。このような実施形態により、所望の抵抗値ないし所望の導電率を特別に容易に調整することができる。
【0020】
40から95質量%、特に60から85質量%の範囲内で第1の酸化物の含有率を適合化することは、スパークプラグ接続部材へのさらに別の成分の添加を可能にし、特に、スパークプラグ接続部材の安定性を改善し、抵抗部材の電気抵抗ないし第1の接触部材および/または第2の接触部材の導電率を安定化することができる、少なくとも1つの第2の酸化物の添加を可能にする。
【0021】
上に挙げた理由により、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材における第2の酸化物の総含有率は、それぞれの部材(第1の接触部材、第2の接触部材、抵抗部材)の総質量にそれぞれ対して0超から75質量%、特に0超から45質量%、特に20から40質量%、特に28から38質量%であるのがさらに好ましい。
【0022】
さらに別の実施形態では、スパークプラグ接続部材は、抵抗部材の抵抗値ないし第1の接触部材および/または第2の接触部材の導電率をいっそう容易に適合化できるようにするために第3の酸化物を含む。したがって、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材における第3の酸化物の総含有率は、それぞれの部材の総質量に対してそれぞれ0超から20質量%、特に2から10質量%、および特に3から5質量%であるのが好ましい。
【0023】
特別に好ましい実施形態では、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材は、少なくとも1つの第1の酸化物と少なくとも1つの添加剤とからなる。それぞれの部材の総質量に対する添加剤の総含有率は5質量%未満、特に0.5質量%未満であり、0質量%でもあり得る。第1の接触部材、第2の接触部材、および抵抗部材が、少なくとも1つの第1の酸化物と、少なくとも1つの添加剤とからなるのが特別に好ましく、各々の部材における添加剤の総含有率は5質量%未満、特に0.5質量%未満であり、0質量%でもあり得る。
【0024】
換言すると、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材が第1の酸化物だけからなっていてよい。そのような部材は非常に容易に製造することができる。なぜなら異なる材料を混合するための特別な方法ステップを適用しなくてすむからである。しかしながら、たとえば結合剤などの添加剤の添加が有益であり得るが、添加剤はスパークプラグ接続部材の完成時にしばしば温度作用のもとで分解され、それに伴い、完成したスパークプラグ電極においては検証可能でなくなる。
【0025】
任意選択として、第1の接触部材および/または第2の接触部材および/または抵抗部材は、少なくとも1つの第2の酸化物、および任意選択として少なくとも1つの第3の酸化物もさらに含むことができる。この場合、特に第2の酸化物および第3の酸化物について上に開示されている、それぞれの部材の総質量に対する総量を適用可能である。
【0026】
本発明では、上に開示されている少なくとも1つのスパークプラグ接続部材を含むスパークプラグも同じく記載される。スパークプラグ接続部材の第1の接触部材および第2の接触部材の比電気伝導率に基づき、ならびに抵抗部材の比電気伝導率(比抵抗率)に基づき、このスパークプラグは、用途に即した使用時にも耐酸化性が非常に高いという特徴があり、それに伴い、化学的およびそれに伴って機械的な安定性も高いという特徴がある。
【0027】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施例について詳しく説明する。図面には次のものが示されている:
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に基づくスパークプラグを示す部分断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に基づく抵抗部材を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面には、本発明の主要な構成要件のみが示されている。その他すべての構成要件は、図の見やすさのために省略されている。さらに、同じ符号は同じコンポーネントに付されている。
【0030】
図1から明らかなとおり、第1の実施形態に基づくスパークプラグ1は、接地電極2と中心電極3とを含んでいる。中心電極3が周知の方式で絶縁体4から若干突き出すように、絶縁体4が設けられている。絶縁体4そのものは、ハウジング5によって部分的に取り囲まれている。符号6は電気的なターミナルナット6を表す。電気的なターミナルナット6から、ターミナルボルト7、第1の接触部材9a、抵抗部材8、および第2の接触部材9bを介して、中心電極3への導電接続部が設けられている。第1の接触部材9a、第2の接触部材9b、および第1の接触部材9aと第2の接触部材9bとの間に配置された抵抗部材8を合わせてスパークプラグ接続部材12と称する。第1の接触部材9aと第2の接触部材9bは、10S/mから10S/mの比電気伝導率を有している。それにより、電気的なターミナルナット6からターミナルボルト7を介して第1の接触部材9aへと送られる電圧が、ほぼ抵抗なく伝送される。抵抗部材8から第2の接触部材9bを介して中心電極3へと伝送される電圧も、第2の接触部材9bにより、非常に良好に導通をする特性に基づいてほぼ損失なく伝送される。換言すると、第1の接触部材9aと第2の接触部材9bは、高い電気伝導率およびこれに伴う低い電気抵抗を有している。
【0031】
図2に詳細に示されている抵抗部材8は非常に良好な耐酸化性を有しており、それに関連して恒常的に安定した抵抗値を有している。それにより、スパークプラグ部材8の化学的およびこれに伴う機械的な安定性ばかりでなく、スパークプラグ1の相応の特性も改善される。それに伴ってスパークプラグ1は、用途に即した使用時にも高い耐久性を有している。
【0032】
図2は、図1の抵抗部材8の模式的な断面図である。抵抗部材8は10-3S/mから10S/mの比電気伝導率を有しており、少なくとも1つの第1の酸化物11を含んでいる。
【0033】
第1の酸化物11は、次の一般式(1)の酸化物、または式(1)に該当するこれらの酸化物の混合物であってよい:
1-x 式(1)
【0034】
式(1)において、MはTi、Zr、Sn、およびこれらの組合せから選択され、DはV、Nb、Ta、P、As、Sb、Bi、およびこれらの組合せから選択され、xは次の関係を満たす:0<x<0.5
【0035】
式(1)の1つまたは複数の酸化物の代替または追加として、第1の酸化物11は次の一般式(2)のうちの少なくとも1つの酸化物であってもよい:
Zn1-yO 式(2)
【0036】
式(2)において、QはAl、Ga、In、B、Ti、Zr、Hf、Si、Ge、Sn、およびこれらの組合せから選択され、yは次の関係を満たす:0<y<0.5
【0037】
式(1)および(2)の1つの酸化物ないし複数の酸化物の代替または追加として、第1の酸化物11は、ZrO2-r、TiO2-r、SnO2-r、ZnO1-r、HfO2-r、V5-r、Nb5-r、およびTa5-rからなる群から選択される酸化物であってもよい。このときrは関係0.5>r≧0を満たす。
【0038】
上に挙げた酸化物をそれぞれ単独で、あるいは任意の組合せで適用することができる。第1の酸化物11の占める総含有率は、抵抗部材8の総質量に対して特に60から85質量%である。
【0039】
抵抗部材8は、無機非酸化物の導電性材料、金属、および合金を有さない。
【0040】
抵抗部材8は第1の酸化物11のほか、無機アモルファス酸化物である少なくとも1つの第2の酸化物10を含んでいる。第2の酸化物10はガラスの形態で存在し、結晶性の第1の酸化物11のためのマトリクスを部分的に形成する。それにより、抵抗部材8の非常に高い安定性が実現される。このガラスは、高い温度のもとでも安定性が高いことに基づき、特にケイ酸塩ガラスである。
【0041】
第2の酸化物10の総含有率は、抵抗部材8の総質量に対して特に5から30質量%であり、それにより、特別に安定的な抵抗部材8の酸化物マトリクスが得られる。
【0042】
任意選択として、抵抗部材8は、ZrO、TiO、Al、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの第3の酸化物を含むことができる。
【0043】
この抵抗部材8は耐酸化性が特別に高いという特徴があり、それにより、抵抗部材8を用いてのスパークプラグの製造時に、抵抗部材8の材料の劣化が起こることがない。それによって所望の抵抗値を恒久的に安定して保持することができる。このように抵抗部材8は用途に即した使用時にも、高い化学的な安定性を有するだけでなく、非常に良好な機械的安定性も有する。
【0044】
第1の接触部材9aと第2の接触部材9bは、化学的な組成に関して抵抗部材8と類似した構成となっていてよく、すなわち、同じく第1の酸化物(11)、任意選択として第2の酸化物(10)、および任意選択として第3の酸化物を上に定義したように含むことができ、特に、金属および炭素含有化合物を有さなくてよい。ただしこれらの組成は、第1の接触部材(9a)と第2の接触部材(9b)が10S/mから10S/mの比電気伝導率を有しという点で互いに相違する。このことは、相応の酸化物の相違するドーピングによって、あるいは各酸化物の相違する含有率によって実現することができる。第1の接触部材9aと第2の接触部材9bは、同時に非常に高い電気伝導率のもとで、同じく耐酸化性が良好であるという特徴がある。
【符号の説明】
【0045】
8 抵抗部材
9a 第1の接触部材
9b 第2の接触部材
10 第2の酸化物
11 第1の酸化物
12 スパークプラグ接続部材
図1
図2