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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】D2D同期のためのシグナリング方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20230428BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20230428BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20230428BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W92/18
H04W4/46
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021562442
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020007276
(87)【国際公開番号】W WO2020202895
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】19305428.5
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】チョチーナ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515431(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03448097(EP,A1)
【文献】特開2019-036995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス-デバイス間通信システムにおいて同期データを受信するデバイスによって実施される方法であって、
第1の同期信号と、第1の初期同期元に関連する第1の情報とを受信することと、
第2の同期信号と、第2の初期同期元に関連する第2の情報とを受信することと、
前記第1の情報及び前記第2の情報に基づいて、前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元と同期しているかを判定することと、
を含み、
前記第1の同期信号は、前記第1の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は前記第1の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であり、
前記第2の同期信号は、前記第2の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は前記第2の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であり、
前記第2の初期同期元は、前記第1の初期同期元であるか、又は該第1の初期同期元とは別の初期同期元である、
方法。
【請求項2】
前記同期信号と、前記2つの初期同期元に関連する前記情報とに従って前記デバイスの同期を管理すること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の情報又は前記第2の情報は、第1の同期ID又は第2の同期IDを含み、該第1の同期IDが該第2の同期IDと同一である場合に、前記デバイスは、前記第1の初期同期元と前記第2の初期同期元とが同期していると判定し、前記第1の同期IDが前記第2の同期IDと異なる場合に、前記デバイスは、前記第1の初期同期元と前記第2の初期同期元とが同期していないと判定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
同期された初期同期元のグループに関する情報を受信することであって、同一の同期された初期同期元のグループからの2つの初期同期元は同期されている、受信すること、
を更に含み、
前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元と同期しているかを判定することは、前記グループに関する情報と、前記第1の情報及び前記第2の情報とに基づいて、前記第1の初期同期元及び前記第2の初期同期元のそれぞれにグループを決定することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
同期された初期同期元のグループに関する情報は、初期同期元IDのグループを含み、前記第1の情報又は前記第2の情報は、前記第1の初期同期元又は前記第2の初期同期元
のIDを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
受信された前記第1の同期信号及び前記第2の同期信号のうちの少なくとも1つの同期信号は、別のデバイスによって発信され、該別のデバイスは前記デバイスに、前記第1の情報及び前記第2の情報のうちの情報を送信し、該第1の情報及び該第2の情報のうちの該情報は、前記少なくとも1つの同期信号に対応する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の同期信号と前記第2の同期信号とが非整合である場合に、少なくとも1つの他のデバイスに、前記第1の同期と前記第2の同期との間のタイミング差に関する情報と、前記第1の情報及び前記第2の情報とを送信すること、
を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の同期信号と前記第2の同期信号とが非整合である場合、及び前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元と同期している場合に、
前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元であるかを判定することと、
そうである場合に、前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元であるという情報を前記少なくとも1つの他のデバイスに送信することと、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元であるかを判定することは、前記第1の情報及び前記第2の情報に基づいて、又は前記タイミング差を閾値と比較することにより行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の同期信号及び前記第2の同期信号のうちの少なくとも1つの同期信号は、初期同期元により発信され、前記方法は、前記第1の初期同期元と前記第2の初期同期元とが同期しているという情報を前記1つの他のデバイスに送信すること、
を更に含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の初期同期元及び前記第2の初期同期元は、前記デバイス-デバイス間通信ネットワークのデバイスである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の初期同期元及び前記第2の初期同期元は、無線基地局及び全地球航法衛星システムのうちの同期元である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の同期信号は第1のデバイスによって発信され、前記第2の同期信号は第2のデバイスによって発信され、前記方法は、
前記第1の同期信号と前記第2の同期信号とが非整合であり、前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元と同期している場合に、
前記第1の同期と前記第2の同期との間のタイミング差に関する情報と、前記第1の初期同期元と前記第2の初期同期元とが同期しているという情報とを、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスのうちの少なくとも一方のデバイスに送信すること、
を更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第3の同期信号を受信するとともに、第3の初期同期元に関連する第3の情報を受信することと、
前記第2の初期同期元と前記第3の初期同期元とが同期している場合に、少なくとも1つの他のデバイスに、前記第1の情報及び前記第2の情報、並びに、
以下の2つの場合、すなわち、
前記第2の同期信号のパワーが前記第3の同期信号のパワーよりも高い場合、若しくは、
前記第2の同期信号を送信するフレームの開始が、前記第3の同期信号を送信するフレームの開始前に受信された場合に、前記第1の同期信号と前記第2の同期信号との間のタイミング差に関する情報、又は、
前記第1の同期信号と計算された同期信号との間のタイミング差に関する情報であって、該計算された同期信号は、前記第2の同期信号に基づいて、前記第2の同期信号の前記発信元と前記デバイスとの間の推定伝播遅延又は最小伝播遅延に従って計算される、情報、
を送信することと、
を更に含み、
前記第3の同期信号は、前記第3の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は前記第3の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
いくつかの同期信号を受信するとともに、いくつかの対応する初期同期元に関連する情報を受信することであって、該いくつかの対応する初期同期元は、前記第2の初期同期元に同期している、受信することと、
前記第1の同期信号と、前記第2の同期信号及び前記いくつかの同期信号との合成の間のタイミング差に関する情報と、前記第1の情報及び前記第2の情報とを、少なくとも1つの他のデバイスに送信することと、
を更に含み、
前記いくつかの同期信号のうちの各同期信号が、前記いくつかの対応する初期同期元のうちの対応する初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は前記対応する初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
プロセッサによって実行されると、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を行うコード命令を含む、コンピュータープログラム。
【請求項17】
デバイス-デバイス間通信システムにおけるデバイスであって、
少なくとも1つのアンテナと、
プロセッサと、
命令を記憶している非一時的コンピューター可読媒体であって、該命令は、前記プロセッサによって実行されると、該デバイスが、
第1の同期信号を受信するとともに、第1の初期同期元に関連する第1の情報を受信することと、
第2の同期信号を受信するとともに、第2の初期同期元に関連する第2の情報を受信することと、
前記第1の情報及び前記第2の情報に基づいて、前記第1の初期同期元が前記第2の初期同期元と同期しているかを判定することと、
を行うように構成する、非一時的コンピューター可読媒体と、
を備え、
前記第1の同期信号は、前記第1の初期同期元によって発信される初期同期信号であるか、又は前記第1の初期同期元に基づいて同期されている別のデバイスによって発信される同期信号であり、
前記第2の同期信号は、前記第2の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は前記第2の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であり、
前記第2の初期同期元は、前記第1の初期同期元であるか、又は該第1の初期同期元とは別の初期同期元である、デバイス。
【請求項18】
デバイス-デバイス間通信システムにおけるデバイスであって、
少なくとも1つのアンテナと、
プロセッサと、
命令を記憶している非一時的コンピューター可読媒体であって、該命令は、前記プロセッサによって実行されると、該デバイスが、
同期信号を受信するとともに、初期同期元に関連する情報を受信することと、
前記受信した同期信号に基づいて同期信号を発信するとともに、前記初期同期元に関連する情報を発信することと、
を行うように構成する、非一時的コンピューター可読媒体と、
を備え、
前記同期信号は、前記初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は前記初期同期元に基づいて同期している1つの他のデバイスによって発信された同期信号であり、
前記初期同期元に関連する情報は、前記初期同期元に関連する前記情報が他の初期同期元に関連する情報と比較されるとき、前記初期同期元が別の初期同期元と同期するかを判定することを可能にし、
前記情報は、前記初期同期元に関する少なくともIDを含む、デバイス。
【請求項19】
デバイス-デバイス間通信システムによって実施される方法であって、前記デバイス-デバイス間通信システムは、請求項17に記載の第1のデバイスと、請求項18に記載の第2のデバイスと、第1の初期同期元と、第2の初期同期元とを備え、該方法は、
前記第1のデバイス又は前記第2のデバイスによる、第1の同期信号と、前記第1の初期同期元に関連する情報との前記受信と、
前記第2のデバイスが前記同期信号を受信する場合の、該第2のデバイスによる、前記第1の同期信号に基づく第3の同期信号の前記発信、及び該第1の初期同期元に関連する情報の前記発信と、
前記第1のデバイスによる、前記第2の同期信号と、前記第1の同期信号及び/又は前記第3の同期信号との前記受信と、
前記第1のデバイスによる前記デバイス-デバイス間システムの第3のデバイスへの、前記第2の同期と前記第1の同期信号及び前記第3の同期信号のうちの1つとの間のタイミング差に関する情報と、前記第1の情報及び前記第2の情報との前記送信と、
を含み、
前記第1の同期信号は、前記第1の初期同期元によって発信された前記第1の初期同期信号であるか、又は前記第1の初期同期元に基づいて同期している1つの他のデバイスによって発信された同期信号である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、デバイス-デバイス間電気通信システムの分野に関し、より詳細には、そのような電気通信システムにおけるデバイスの同期に関する。
【背景技術】
【0002】
D2D電気通信システムの2つのデバイス-デバイス間でサイドリンク(デバイス-デバイス間)通信を行うには、これらのデバイスを同期する必要があり、そうしないと、デバイスは受信メッセージを復号することができない。
【0003】
LTE又はNRは、D2D通信専用の規格LTE V2X及びNR V2Xを規定する。これらの規格によれば、デバイス-デバイス間電気通信システムにおける同期は、基地局によって、又は全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)、又は他のデバイスによって送信された信号に基づいて行うことができる。基地局から受信した信号に基づいて同期を行う場合、1次同期信号PSS及び2次同期信号SSSから構成される同期信号が基地局によって、或る特定のフレームの特定の部分において送出される。同期を行うデバイスは、これらの同期信号の自己相関性を用いて当該同期信号を検出する。検出されると、フレームにおけるこれらの信号の位置に関する情報が、基地局への同期を可能にする。デバイスによって送信された信号に基づいて同期を行う場合、当該デバイスもまた、1次同期信号PSS及び2次サイドリンク同期信号SSSSから構成される同期信号を、或る特定のフレームの特定の部分において発信することができる。同期を行うデバイスは、これらの同期信号の自己相関性を用いて当該同期信号を検出する。検出されると、これらの信号のフレームにおける(例えば、PSBCHのMIBにおける)これらの信号の位置に関する情報がこのデバイスを、同期信号を発信したデバイスに同期することを可能にする。
【0004】
フレームとは、タイミング単位として理解され、異なる規格では例えばフレーム、サブフレーム、スロット、又は他のタイミング単位を指す場合があり、その開始時に通信が開始され得る。
【0005】
デバイスが2つ以上の送信元から同期信号を受信する場合、当該デバイスがどの送信元に同期するかを決定するための規則が定められている。それらの規則は、同期元に関する性質を定義する。したがって、2つの異なる同期元から同期信号を検出した場合、デバイスは、優先度が最高である送信元に従って同期する。最高の優先度は通常、基地局又はGNSSに影響を受け、これらの同期元は1次送信元と呼ぶことができる。より低い優先度は通常、デバイスが基地局のカバレッジにあるか、又はデバイスの1つ若しくはいくつかのホップを介して1次送信元に基づいて同期されている場合に、同期元として動作するデバイスに影響を受ける。優先度が最も低い同期元は、同期元として単独で動作する、すなわち、直接的に又は他のデバイスを介在して初期同期元に同期していない(すなわち、直接的に又は他のデバイスを介在して取得した初期同期元からのタイミングを中継していない)デバイスである。優先度が同じいくつかの同期元からの信号を検出した場合、デバイスは、受信信号が最も強い送信元に同期する。
【0006】
デバイスの同期とは、時間及び周波数の同期として理解される。
【0007】
しかしながら、これらの規則は、いくつかの状況では不適切となり、同期の喪失ひいては付近のデバイスとの通信の喪失につながるか、更にはデバイスが付近のデバイスと同期できなくなる場合がある。そのような状況のいくつかの例を以下に説明する。
【0008】
図1の例では、2つのユーザー装置(UE1、UE4)がいずれも、内部基準クロック(Ref Clockと呼ぶ)に基づいて同期信号を発信する同一の基地局(BS)に同期している。各UEの基地局までの相対距離の差により異なる可能性がある伝播遅延により、UE1及びUE4は、後の異なる瞬間において、基地局が発信した同期信号SS0を検出し、独自のSS0検出に基づいて同期信号(上向き矢印SS1及びSS4)を発信することによってこの同期を伝播する。SS1及びSS4を検出すると、UE2及びUE5は、それぞれUE1及びUE4に同期し、それぞれSS2及びSS5を発信する。これは、UE3及びUE6において繰り返され、それぞれSS3及びSS6を発する。
【0009】
異なる距離、同期信号の各発信元と比較して異なる相対速度、及びUEの異なるハードウェア特性により、UE7により検出された同期信号SS3及びSS6(下向き矢印SS3及びSS6)には、時間差Δtが生じる。そのような状況では、クラスターUE1、UE2、UE3及びクラスターUE4、UE5、UE6の同期が分岐すると言われる。その結果、UE7はSS3及びSS6を2つの異なる同期元から生じたものとして考え、UE7はSS3及びSS6のうちの最も強い信号に基づいて同期する。そのようなクラスターの分岐があると、確立することができる、例えば一方のクラスターのうちの1つのUEと他方のクラスターのうちの1つのUEとの間の潜在的なD2D通信が減り、それによって通信効率が低下する場合がある。
【0010】
図2の例では、BS1のカバレッジ下で移動する3つのUE(UE1、UE2、UE3)が、より小さいカバレッジを有するBS2の同期メッセージSS2を一時的に検出する。この2つのBSはRef clockで同期しているが、UEの視点から見ると、BS1から同期信号SS1を受信する経路は、BS2から同期SS2を受信する経路よりも長いため、伝播遅延が異なる。UE2によって検出される同期信号SS1及びSS2にはΔtの時間差が生じる。UE2はSS1及びSS2を2つの異なる同期元から生じたものとして考える。したがって、UE2においてSS2のパワーはSS1のパワーよりも強いため、UE2はBS2に同期する。UE1及びUE3はBS1に同期しているため、UE2がBS2に同期すると、UE2は同期クラスター(UE1、UE2、UE3)から抜け、UE1及びUE3との通信を停止する。
【0011】
図3の例では、2つのUE、すなわちUE1及びUE2はいずれもBS1に同期しているため、D2D通信をともに行うことができるUEのクラスターを形成する。UE3はBS2に同期している。BS1及びBS2もまた、ともに同期している。しかしながら、BS2とUE3との間の伝播経路はBS1とUE1又はUE2との間の伝播経路よりも長いため、UE2とUE3とは同期していない。また、BS2はUE2よりも高い優先度を有する送信元であるため、UE3はUE2が発信する同期信号に基づいてUE2に直接同期することはできない。したがって、UE3が同期している送信元もまた、UE1及びUE2が使用している同期元に同期している(Ref clockで同期している)にもかかわらず、UE3はD2D通信によりクラスターUE1及びUE2と通信することができない。
【0012】
図4の例では、UE2はBSに同期しており、UE1はGNSSに同期している。UE2の既定の同期のための優先ルールが例えば、BSに影響を受ける優先度が最高であり、次がGNSS、次が他のUEというものである場合、UE2は優先的にBS1(Ref clockで同期)に同期する。したがって、UE1とUE2とを同期することはできない。したがって、UE2はGNSSから同期信号SSIを受信するものの、UE1とUE2とがD2D通信により通信することはできない。一方で、UE2の既定の同期のための優先ルールが例えば、GNSSに影響を受ける優先度が最高であり、次がBS、次が他のUEというものである場合、UE1とUE2とを同期することは可能であるが、UE2は自身がそのカバレッジにいるBSに同期しなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの例において、十分に互いの近くにいるデバイスが、D2D通信に入れないか、又は脱同期により通信を失う。D2D通信ネットワーク内のデバイスの小さな地理的スケールにおけるこの脱同期は、新たな規格であるNRにおいて、また新たなサービスが提供されると、生じる可能性がより高い。実際、近い将来において、高速で移動するデバイス及び/又は無線信号の強いフェージングを考慮することが必要であろう。
【0014】
本発明は、効率的に同期することができない2つの近接デバイスの状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このために、本発明は、デバイス-デバイス間通信システムにおいて同期データを処理するデバイスによって実施される方法であって、
第1の同期信号と、第1の初期同期元に関連する第1の情報、例えば第1の同期信号が第1の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は第1の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であるか、とを受信することと、
第2の同期信号と、第2の初期同期元に関連する第2の情報、例えば第2の同期信号が第2の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は第2の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であるか、とを受信することであって、
当該第2の初期同期元は、第1の初期同期元であるか、又は第1の初期同期元とは別の初期同期元であり、
第1の初期同期元又は第2の初期同期元によって発信された初期同期信号は、第1の初期同期元又は第2の初期同期元による別の同期信号の受信に依存しない、受信することと、
を含む、方法に関する。
【0016】
同期信号は、D2D通信システムのデバイスが同期できるようにする信号である。これらの信号は同期元によって発信される。同期元は、そのような同期信号を発信することができる任意の実体であり得る。例えば、同期元は1次同期元、例えばGNSS、又はLTEにおける発展型ノードB(evolved-Node B)若しくはNRにおけるgNodeB等の基地局であってもよい。同期元はまた、直接的に又は間接的に(すなわち別のデバイスを介在して)1次送信元に同期したデバイスであってもよい。同期元はまた、別の同期元に事前に同期することなく、すなわち受信した同期信号に基づいて同期信号を発信するデバイスであってもよい。
【0017】
初期同期元は、D2D通信システムにおいて時間基準として機能する。デバイスが自身に同期できるようにする第1の同期信号を開始するのが初期同期元である。したがって、初期同期元によって発信される同期信号は、初期同期元による他の同期信号の受信に依存しない。したがって、基地局(より一般的には任意のワイヤレスアクセスポイント)、GNSS、及び別の同期元が示すタイミングを直接中継することなく同期信号を発信するデバイスは、初期同期元である。いくつかの初期同期元が同一の基準クロックを用い、よってともに同期することができる。初期同期信号は、初期同期元が発信する同期信号である。例えば、gNB又はeNBは、初期同期信号を発する前に内部クロックのドリフトを補正するためにGNSS情報を実装特徴として使用することができるとしても、初期同期元として考えられる。異なる同期した基地局間のクロックドリフトを制限するために異なる方法を使用することができるが、初期同期信号を発信する際に、gNB又はeNBは、独自のクロックに基づいてタイミングを示し、別のeNB/gNBから(例えばSSBを介して)取得したタイミング情報を単に転送する訳ではない。
【0018】
初期同期元に基づいて同期されたデバイスとは、当該デバイスがこの初期同期元によって発信された初期同期信号によって直接的に、又は同じく初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって間接的に同期していると理解される。
【0019】
初期同期元に関連する情報は、初期同期元が示すタイミングと相対的な、又はより一般的には当該タイミングに依存する情報である。これらの初期同期元に関連する情報は、デバイスが、初期同期元が同期しているか否かを判定すること及び/又は初期同期元が示すタイミング間の時間差(例えば、それぞれのフレーム開始間の差及び/又は初期同期元のそれぞれの基準クロック間の差)を求めることを可能にすることができる。
【0020】
デバイスは、上述の例と同様に2つの同期信号を受信する。また、同期信号毎に、デバイスは、これらの信号の初期同期元に関連する情報を受信する。当該情報に基づいて、デバイスは、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが同期しているかを判定することができる。したがって、本発明は、デバイスが、同一優先度のいくつかの同期元の間の競合を解消し、異なる優先度のいくつかの同期元の使用を最適化することを可能にする。すなわち、図3のUE3の例において分かるように、UE3が、自身と同じ基準クロックに同期していることを知っていることからUE2を同期元として使用し得るように、デバイスがD2D通信を行うためにより優先度の低い同期元を使用することを可能にする。一方で、UE2は、(例えば圏外への移動により、又はBS1の無線信号のフェージングのために)BS1のカバレッジから外れる場合に、なんとかBS2を介して同期することができ、これは、BS1が、大きなカバレッジを有するeNBであり得るBS2と比較して小さいカバレッジを有するgNBである場合に生じ得る。また、BS1のカバレッジゾーンは、その環境(例えば、建物等)に強い影響を受ける可能性がある。
【0021】
したがって、デバイスに送信される付加的な情報に基づき、本発明は、同期元が複数あり、それらの同期信号がデバイスの視点から見ると急速に消失又は出現し得る文脈において、デバイスが自身の同期の管理を向上することを可能にする。
【0022】
したがって、本発明の一態様によれば、本発明は、同期信号と、2つの初期同期元に関連する情報とに従ってデバイスの同期を管理することを更に含む。
【0023】
同期の管理とは、デバイスが、2つ以上の同期信号を、初期同期元に関連する情報とともに受信したときに、例えば、
- どの同期元に同期するか、又は、
- 同期している送信元とは別の送信元に同期するか、又は、
- 同期している送信元と同期し続けるか、又は、
- 受信した異なる同期信号を合成するか、
を判定することによって同期基準を決めることとして理解される。
【0024】
本発明の一態様によれば、デバイスはまた、同期信号と、2つの初期同期元に関する情報とに従って同期手順を管理してもよい。すなわち、デバイスは、
- 当該デバイスが通信することができる他のデバイスに送出する同期情報を決定する(例えば、後述するように時間差に関する情報を送出する)か、又は、
- デバイスがアタッチしている基地局(例えばeNB又はgNB)に送出する同期情報を決定してもよい。
【0025】
さらに、同期信号と、初期同期元に関連する情報とに基づいて同期されたデバイスは、少なくとも1つの他の同期信号と、当該他の同期信号に対応する初期同期元に関連する情報とを発信することができる。さらに、同期を管理するステップは、第1の同期信号及び第2の同期信号と、第1の初期同期元及び第2の初期同期元に関連する第1の情報及び第2の情報とを共同で又は複合的に処理するステップを含む。
【0026】
一変形において、第1の同期信号は、デバイスのための同期基準を与え、第2の基準信号は、第1の同期信号と同一か又はより高い優先度を有する。したがって、少なくともデバイスが自身の同期に用いる同期情報と同じくらい信頼できる同期情報のみが処理される。
【0027】
デバイスはまた、同期元が複数あり、それらの同期信号がデバイスの視点から見ると急速に消失又は出現し得る文脈において、この初期同期元(複数の場合もある)に関連する情報を他のデバイスに送信して、これらの他のデバイスが自身の同期の管理を向上することを可能にしてもよい。
【0028】
本発明の一態様によれば、デバイスは、第1の情報及び第2の情報に基づいて、第1の初期同期元が第2の初期同期元と同期しているかを判定する。
【0029】
本発明の一態様によれば、第1の情報又は第2の情報は、第1の同期ID又は第2の同期IDを含み、第1の同期IDが第2の同期IDと同一である場合に、デバイスは、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが同期していると判定し、第1の同期IDが第2の同期IDと異なる場合に、デバイスは、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが同期していないと判定する。
【0030】
したがって、同期IDは、2つの初期同期元が同期しているか否かを判別することを可能にするIDである。したがって、同期IDは、デバイスが、第1の初期同期元が第2の初期同期元と同期しているかを容易に判定することを可能にする。全ての初期同期元はクラス分けされ、同一クラスの初期同期元は同期している。
【0031】
同期IDは明示的である場合があり、すなわち、各クラスにIDが付与され、又は同期IDは暗黙的である場合があり、すなわち、他の情報を介して同期IDが取得されてもよい。例えば、PSSS値及び/又はSSSS値は、初期同期元のクラスにそれぞれ対応する複数の範囲に分けられてもよい。同期信号を送信する際に、デバイスは、自身が基づいて同期している初期同期元に対応するPSSS値及び/又はSSSS値を用いる。そのような同期信号を受信したデバイスは、PSSS及び/又はSSSSの値を求め、よって初期同期元のクラスを推測することができる。当然ながら、D2D通信ネットワークにおけるデバイスは、異なる範囲で事前に構成されるか、又は異なる範囲を知らされていなければならない。
【0032】
本発明の一態様によれば、第1の情報及び第2の情報に基づいて、第1の初期同期元が第2の初期同期元であるかを判定する。
【0033】
本発明の一態様によれば、第1の情報又は第2の情報は、第1の同期ID又は第2の同期IDを含み、第1の同期IDが第2の同期IDと同一である場合に、デバイスは、第1の初期同期元が第2の初期同期元であると判定し、第1の同期IDが第2の同期IDと異なる場合に、デバイスは、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが異なると判定する。
【0034】
この場合、同期IDは、初期同期元の一意なIDであってもよい。一意という特徴は、例えばネットワーク内(例えば、初期同期元を代表する装置の物理ID)、又は制限された地理的領域内(例えば、PCI、物理セルID)で見ることができる。
【0035】
また別の変形において、デバイスは、第1の情報及び第2の情報に基づいて、第1の初期同期元が第2の初期同期元と地理的に同じ場所に位置しているかを判定する。
【0036】
本発明の一態様によれば、方法は、同期された初期同期元のグループに関する情報を受信することであって、同一の同期された初期同期元のグループからの2つの初期同期元は同期されている、受信することを更に含み、
第1の初期同期元が第2の初期同期元と同期しているかを判定することは、グループに関する情報と、第1の情報及び第2の情報とに基づいて、第1の初期同期元及び第2の初期同期元のそれぞれにグループを決定することを含む。
【0037】
したがって、デバイスは、グループに関する情報、例えば同期しているかどうかに従ってグループ分けし直した、すなわちクラスによって分類された初期同期元のリストを事前に受信するか、又は当該情報で初期構成される。受信した初期同期元に関連する情報及びリストに基づいて、デバイスは、対応する初期同期元がどのグループに属するかを識別し、よって対応する初期同期元が別の初期同期元と同期しているか否かを判定することができる。
【0038】
各初期同期元は、グループに関する情報内のIDにより識別されてもよく、受信した同期元に関連する情報は送信元のIDを含んでいてもよい。
【0039】
本発明の一態様によれば、受信された第1の同期信号及び第2の同期信号のうちの少なくとも1つの同期信号は、別のデバイスによって発信され、当該別のデバイスはデバイスに、第1の情報及び第2の情報のうちの情報を送信し、当該第1の情報及び第2の情報のうちの情報は、少なくとも1つの同期信号に対応する。
【0040】
デバイスは、同期信号を発信するデバイスを介して初期同期元に関連する情報を得る。これにより、最終的なデバイスが同期信号を受信する前に初期同期信号の伝播にいくつかの中間デバイスが関与している場合にも、本発明を効率的に実施することが可能になる。
【0041】
本発明の一態様によれば、方法は、第1の同期信号と第2の同期信号とが非整合である場合に、少なくとも1つの他のデバイスに、第1の同期信号と第2の同期信号との間のタイミング差に関する情報と、第1の情報及び第2の情報とを送信することを更に含む。
【0042】
非整合同期信号とは、UEが、初期同期信号に関連する情報なしでは、これらの同期信号を異なる送信元から発信されたものと見なすものとして理解される。別の言い方をすれば、実際の規格に関して、2つの非整合同期信号は、閾値よりも大きな時間差で受信される信号である。このような閾値は、特定の差の下では2つの信号の始点を判別することができないデバイスの部品の固有の能力によって定義することができる。この閾値はまた、規格における値として設定してもよい。タイミング差に関する情報は、例えば、2つの同期信号の間の時間差の計算された値を含むことができる。
【0043】
そのような非整合信号を受信すると、デバイスは少なくとも1つの他のデバイスに、デバイスにおいて観測される第1の受信信号と第2の受信信号との間の時間差に関する情報を、対応する初期同期元(複数の場合もある)に関連する情報とともに送信する。デバイス近傍の別のデバイスへこのような情報を送信することにより、当該別のデバイスが、より大きなスケールで、より高い関連性を持って動作する同期元に関連する情報収集することを可能にする。
【0044】
デバイスにおいて観測される第1の受信信号と第2の受信信号との間の時間差(又はタイミング差)とは、例えば、受信側において計算された、第1の信号及び第2の信号を発信した2つの実体により発信されたそれぞれのフレーム間の時間差として理解される。より正確には、第1の受信信号と第2の受信信号との間の時間差は理論的なものであってもよく、規格に応じて、同期信号を受信するデバイスは、各同期信号の受信時刻の間、又は各同期信号の受信からそれぞれ推測される2つの時刻の間の時間差、例えば受信機側において計算される、第1の信号及び第2の信号を発信した2つの実体によって発信されたそれぞれのフレームの間の時間差を計算することによって時間差を求めてもよく、それぞれのフレームは、同期信号の受信に基づいて推測される。したがって、第1の同期信号と第2の同期信号との間及び第1の情報と第2の情報との間のタイミング差は、第1の同期信号及び第2の同期信号から、又は第1の同期信号及び第2の同期信号に基づいてそれぞれ推測された2つのフレーム基準時刻の間の時間差である。フレーム基準時刻は、同期信号によって示されてもよい。したがって、本発明による初期同期信号は、同期信号の受信時刻、同期信号から推測したフレーム基準時刻、及び/又は同期信号によって示されるフレームの開始に基づいて適用してもよい。したがって、これらの用語は同義として考える。
【0045】
したがって、2つの初期同期元が同期している場合、そのような時間差に関する情報が、一方又は他方の初期同期信号に基づいて同期しているデバイスと、2つの同期信号のうちの一方(例えば最も強い信号)のみの検出に基づいて同期することを可能にする。また、このような情報は、デバイスが、より正確に同期すること及び/又はより安定した同期を持つことを可能にする。
【0046】
したがって、別のデバイスは、(第1の同期信号及び第2の同期信号を受信するデバイスについて上述したように)自身の同期を、より正確な情報と、クラスターのデバイスと接続しようとする場合に考慮すべき適切なスケールである全クラスターに関する情報とに基づいて管理することができる。結果として、本発明は、クラスターからの脱落を低減し、D2D通信システムのノード間の高精度の同期を必要とする低レイテンシの通信を可能にする。
【0047】
本発明の一態様によれば、方法は、第1の同期信号と第2の同期信号とが非整合であるかを判定することと、第1の同期信号と第2の同期信号との間のタイミング差を判定することとを更に含む。
【0048】
これは、第1の初期同期元に基づいて同期しているデバイスと同期し、そのような同期を維持することを、(タイミング差が計算されるか、又は別のデバイスから受信されると)1つの他の初期同期元から、又はこの他の初期同期元と同期しているデバイスから受信される最も強い同期信号を検出することのみによって、この他の初期同期元と第1の初期同期元とが同期している場合に、又はより一般的には、これらの2つの初期同期元の基準クロック間の時間差が既知である(例えば、この時間差は第1の情報及び第2の情報に基づいて計算することができる)場合に可能にする。したがって、デバイスは、その状況に関してより関連性の高い同期元を、他の初期同期元に基づいて同期しているデバイスと同期するために用いることができる。これは、クラスター内のデバイスの同期を維持しつつ各デバイスの同期を容易にすることを可能にする。
【0049】
本発明の一態様によれば、方法は、第1の同期信号と第2の同期信号とが非整合である場合、及び第1の初期同期元が第2の初期同期元と同期している場合に、第1の初期同期元が第2の初期同期元であるかを判定することと、そうである場合に、第1の初期同期元が第2の初期同期元であるという情報を少なくとも1つの他のデバイスに送信することとを更に含む。
【0050】
したがって、その中で同一の初期同期元に基づいてデバイス同士が同期されている2つの異なるクラスターを、再結合するか、又は少なくともそれらの同期カバレッジを作成することができる。例えば、後述するように最短受信時間を選択するか、又はいくつかの同期信号の受信時間を平均することによって行う。
【0051】
これは特に、第1の同期信号及び第2の同期信号がデバイス-デバイス間通信ネットワークのデバイスによって送出される文脈において適切である。この文脈において、本発明は、同期信号のうちの一方を送信した少なくとも1つのデバイスに、第1の同期信号と第2の同期信号との間のタイミング差に関する情報と、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが同期しているか又は同一であるという情報とを送信することを更に含んでもよい。
【0052】
本発明の一態様によれば、第1の初期同期元が第2の初期同期元であるかを判定することは、第1の情報及び第2の情報に基づいて、又はタイミング差を閾値と比較することにより行われる。
【0053】
すなわち、第1の同期信号と第2の同期信号との間の時間差が閾値未満である場合、デバイスは、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが同一であると考える。第1の同期信号と第2の同期信号とは非整合であるため、時間差もまた低い方の閾値を上回る。2つの初期同期元が同一であるかを判定するための閾値の使用は、付加的な同期情報を避けることを可能にする。第1の初期同期元が第2の初期同期元と同一であるかを判定するための第1の情報及び第2の情報の使用は、計算を削減することを可能にする。
【0054】
本発明の一態様によれば、第1の同期信号及び第2の同期信号のうちの少なくとも1つの同期信号は、初期同期元により発信され、方法は、第1の初期同期元と第2の初期同期元とが同期しているという情報を1つの他のデバイスに送信することを更に含む。
【0055】
したがって、2つの同期信号を受信するデバイスが同期しているデバイスクラスターは、別の同期元から、具体的には初期同期元の恩恵を、クラスターの全てのデバイスがこの初期同期元から直接的に又は間接的に(他のデバイスを介在して)初期同期信号を受信せずとも受けることができる。これは特に、初期同期元が1次送信元である場合に適切である。
【0056】
本発明の一態様によれば、第1の初期同期元及び第2の初期同期元は、無線基地局及び/又は全地球航法衛星システムのうちの同期元である。
【0057】
本発明の一態様によれば、本発明は、第3の同期信号を受信するとともに、第3の初期同期元に関連する第3の情報、例えば第3の同期信号が、第3の初期同期元により発信される初期同期信号であるか、又は第3の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスにより発信される同期信号であるか、を受信することと、
第2の初期同期元と第3の初期同期元とが同期している場合に、少なくとも1つの他のデバイスに、第1の情報及び第2の情報、並びに
以下の2つの場合、すなわち、
- 第2の同期信号のパワーが第3の同期信号のパワーよりも高い場合、又は、
- 第2の同期信号を送信するフレームの開始が、第3の同期信号を送信するフレームの開始前に受信される場合、すなわち、第2の同期信号が示すフレームの開始が、第3の同期信号が示すフレームの開始よりも前である場合に、第1の同期信号と第2の同期信号との間のタイミング差に関する情報、
第1の同期信号と計算された同期信号との間のタイミング差に関する情報であって、当該計算された同期信号は、第2の同期信号に基づいて、第2の同期信号の発信元とデバイスとの間の推定伝播遅延若しくは最小伝播遅延に従って計算される、情報、
を送信することとを更に含む。
【0058】
デバイスクラスターのデバイスが、いくつかの初期同期元から、及び/又はそれらの初期同期元に同期しているデバイスからいくつかの同期信号を受信すると、それらの初期同期元が同期しており、よって同一クラスに属する場合に、デバイスは、受信した同期信号の中から、クラスを代表することができる特定の同期信号を選択することができる。例えば、パワーが最も高い同期信号又は最小クロックを有する同期信号、すなわち、最初に到着するフレームを示す同期信号である。
【0059】
デバイスと同期信号の発信元との間の伝播遅延を考慮する同期信号を計算することも有利である。
【0060】
これは、タイミング差に関する情報を最適化することを可能にし、その最適化された情報は、クラスター内の他のデバイスの視点から見てより関連性が高くなる。
【0061】
本発明の一態様によれば、本発明は、いくつかの同期信号を受信するとともに、いくつかの対応する初期同期元に関連する情報、例えば、いくつかの同期信号のうちの各同期信号が、いくつかの対応する初期同期元のうちの対応する初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は対応する初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であるか、を受信することであって、いくつかの対応する初期同期元は、第2の初期同期元に同期している、受信することと、
第1の同期信号と、第2の同期信号及びいくつかの同期信号との合成の間のタイミング差に関する情報と、第1の情報及び第2の情報とを、少なくとも1つの他のデバイスに送信することとを更に含む。
【0062】
デバイスクラスターのデバイスが、いくつかの初期同期元から、及び/又はそれらの初期同期元に同期しているデバイスからいくつかの同期信号を受信すると、それらの初期同期元が同期しており、よって同一クラスに属する場合に、デバイスは、クラスを代表することができる同期信号を計算することができる。例えば、計算された同期信号は、例えば同期信号のタイミングの合成(例えば平均、加重平均等)とすることができる。これは、タイミング差に関する情報を最適化することを可能にし、その最適化された情報は、クラスター内の他のデバイスの視点から見てより関連性が高くなる。
【0063】
一変形において、選択されたデバイスのみが、タイミング差に関する情報を送信することを許可される。選択は、構成によって若しくは事前構成によって、又はデバイスの能力に基づいて行われてもよい。例えば、ネットワークによって指定された、又はローカルマネージャーとして若しくはグループキャストリーダーとして示されたデバイスのみが、タイミング差に関する情報を送信することができる。したがって、シグナリングオーバーヘッドが低減され、選択された送信元からの情報のみが転送される。
【0064】
一変形において、デバイスは、第1の同期信号が当該デバイスの同期基準を与える場合にタイミング差を送信し、第2の基準信号は第1の同期信号と同一か又はそれよりも高い優先度を有する。したがって、タイミング差を受信するデバイスの同期探索手順は単純化される。
【0065】
本発明の第2の態様は、プロセッサによって実行されると、上述したような方法を行うコード命令を含む、コンピュータープログラム製品に関する。
【0066】
本発明の第3の態様は、デバイス-デバイス間通信システムにおけるデバイスであって、
少なくとも1つのアンテナと、
プロセッサと、
命令を記憶している非一時的コンピューター可読媒体であって、命令は、プロセッサによって実行されると、デバイスが、
第1の同期信号を受信するとともに、第1の初期同期元に関連する第1の情報、例えば第1の同期信号が第1の初期同期元によって発信される初期同期信号であるか、又は第1の初期同期元に基づいて同期されている別のデバイスによって発信される同期信号であるか、を受信することと、
第2の同期信号を受信するとともに、第2の初期同期元に関連する第2の情報、例えば第2の同期信号が第2の初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は第2の初期同期元に基づいて同期している別のデバイスによって発信された同期信号であるか、を受信することであって、
当該第2の初期同期元は、第1の初期同期元であるか、又は第1の初期同期元とは別の初期同期元であり、
第1の初期同期元又は第2の初期同期元によって発信された初期同期信号は、第1の初期同期元又は第2の初期同期元による別の同期信号の受信に依存しない、受信することと、
を行うように構成する、非一時的コンピューター可読媒体と、
を備える、デバイスに関する。
【0067】
本発明の第4の態様は、デバイス-デバイス間通信システムにおけるデバイスであって、
少なくとも1つのアンテナと、
プロセッサと、
命令を記憶している非一時的コンピューター可読媒体であって、命令は、プロセッサによって実行されると、デバイスが、
同期信号を受信するとともに、初期同期元に関連する情報、例えば同期信号が初期同期元によって発信された初期同期信号であるか、又は初期同期元に基づいて同期している1つの他のデバイスによって発信された同期信号であるか、を受信することと、
受信した同期信号に基づいて同期信号を発信するとともに、初期同期元に関連する情報を発信することと、
を行うように構成する、非一時的コンピューター可読媒体と、
を備える、デバイスに関する。
【0068】
一変形において、デバイスは異なる同期信号を、その内部同期のための同期基準として用いる。
【0069】
本発明の第5の態様は、デバイス-デバイス間通信システムによって実施される方法であって、デバイス-デバイス間通信システムは、本発明の第3の態様に記載の第1のデバイスと本発明の第4の態様に記載の第2のデバイスと、第1の初期同期元と、第2の初期同期元とを備え、方法は、
第1のデバイス又は第2のデバイスによる、第1の同期信号と、第1の初期同期元に関連する情報、例えば第1の同期信号が第1の初期同期元によって発信された第1の初期同期信号であるか、又は第1の初期同期元に基づいて同期している1つの他のデバイスによって発信された同期信号であるか、の受信と、
第2のデバイスが第1の同期信号を受信する場合の、第2のデバイスによる、第1の同期信号に基づく第3の同期信号の発信、及び第1の初期同期元に関連する情報の発信と、
第1のデバイスによる、第2の同期信号と、第1の同期信号及び/又は第3の同期信号との受信と、
第1のデバイスによるデバイス-デバイス間システムの第3のデバイスへの、第2の同期と第1の同期信号及び第3の同期信号のうちの1つとの間のタイミング差に関する情報と、第1の情報及び第2の情報との送信と、
を含む、方法に関する。
【0070】
本発明は、添付図面の図に、限定としてではなく例として示される。添付図面において、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明による2つのUEクラスター及び1つの基地局を示す図である。
図2】本発明による1つのUEクラスター及び2つの基地局を示す図である。
図3】本発明による1つのUEクラスター及び2つの基地局を示す図である。
図4】本発明による1つのUEクラスター、1つの基地局、及び1つのGNSSを示す図である。
図5】本発明によるデバイスを示す図である。
図6】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図5を参照して、2つのデバイス1.1及び1.2並びに基地局1.3を示す。一方のデバイス1.1は基地局1.3のカバレッジエリアにあり、他方のデバイスは基地局1.3のカバレッジエリアにはない。LTE又はNR規格1.1の文脈において、基地局1.3はeNodeB(発展型ノードB)又はgNodeBであり、デバイスはユーザー装置UEである。
【0073】
各デバイス1.1及び1.2は、1つの通信モジュール(COM_UE)1.4と、1つの処理モジュール(PROC_UE)1.5と、メモリユニット(MEMO_UE)1.6とを備える。MEMO_UE1.4は、コンピュータープログラムを取り出す不揮発性ユニットと、D2D通信システムをパラメーター化したもの、例えば同期された初期同期元のグループに関する情報(例えば、初期同期元IDリスト)、所定の閾値等を取り出す揮発性ユニットとを含む。PROC_UE1.5は、
- 同期信号を検出し、
- いくつかの初期同期元が同期しているかを判定し、
- 他のデバイスへの初期同期元の同期に関連する情報をデバイスに送信し、
- 同期信号を発信し、
- 初期同期元に関連する情報をデバイスに送信し、
- いくつかの受信した同期信号間のタイミング差を求め、
- タイミング差に関する情報をデバイスに送信し、
- 同期を管理する、
ように構成される。
【0074】
COM_UE1.3は、他のデバイス1.1又は1.2に対して同期信号と情報とを送受信し、BS1.3から同期信号と情報とを受信するように構成される。
【0075】
BS1.3は、1つの通信モジュール(COM_BS)1.7と、1つの処理モジュール(PROC_BS)1.8と、メモリユニット(MEMO_BS)1.9とを備える。MEMO_BS1.8は、コンピュータープログラムを取り出す不揮発性ユニットと、D2D通信システムをパラメーター化したもの、例えばBS1.3のID又は同期IDを取り出す揮発性ユニットとを含む。PROC_BS1.7は、同期信号を処理するように構成される。COM_BS1.6は、処理された同期信号を発信するように構成される。
【0076】
図6を参照して、本発明による一実施形態のステップを示すフローチャートを示す。
【0077】
ステップS0において、デバイス1.1をパラメーター化する。したがって、デバイスはBS又はD2D通信システムの別のデバイスから、本発明の実施を可能にする情報を受信することができる。例えば、デバイス1.1は、同期された初期同期元のグループに関連する情報を受信してもよい。例えば、デバイスはBS1.3又は別のデバイス1.2から、同期された初期同期元のグループによって同期元IDがソートされた初期同期元IDリストを受信する。デバイスはまた、所定の閾値及びアルゴリズムを受信してもよい。
【0078】
ステップS1において、デバイス1.1は、少なくとも2つの同期信号(SS1、...、SSN)を受信する。同期信号を受信するとは、デバイス1.1が対応する同期信号の送信元に十分に近く、それらの同期信号を検出することとして理解される。
【0079】
上記したように、同期信号のいくつかの送信元が存在し、それらはBS1.3、GNSS、及び他のデバイス1.2である。LTE又はNRの文脈において、規格は、BS1.3によって、及び他のデバイス1.2によって発信される同期信号の形式を規定する。
【0080】
BS1.3によって発信される場合に、同期信号は、例えば1次同期信号PSS、2次同期信号SSS、及びブロードキャストチャネルPBCHからな構成されるSSブロックである。これらのPSS及びSSSはBSによって、或る特定のフレームの特定の位置において、構成された周期性で送出される。PSS及びSSSが検出されると、デバイス1.1は、セルのタイミングを(例えばフレーム基準時刻を推測することによって)求めるために、すなわち、BSによって発信されたフレームの開始及び継続時間を識別するために、セルのIDを決定しPBCHを復号することができる。同期信号に示されるように(例えばフレーム基準時刻を推測することによって)フレームの開始が分かると、デバイス1.1は無線セルに完全に同期することができる。
【0081】
別のデバイス1.2によって発信される場合に、同期信号(V2X通信のためのSLSSサイドリンク同期信号と呼ばれる)は、1次サイドリンク同期信号PSSS及び2次サイドリンク同期信号SSSSから構成される。これらのPSSS及びSSSSはデバイスによって、或る特定のフレームの特定の位置において送出される。PSSS及びSSSSが検出されると、デバイス1.1は、PSBCHを復号し、フレームの開始を判定することができる。よって、デバイス1.1は、デバイス1.2に完全に同期することができる。
【0082】
同期信号はまた、GNSSによって送出されてもよく、考慮するGNSSによって独自の形式を有する。
【0083】
デバイス1.1によって受信される各同期信号(SS1、...、SSN)は、別のデバイス1.2、BS1.3、又はGNSSによって発信されてもよい。
【0084】
別のデバイス1.2によって発信される場合、2つの場合が考慮され、当該別のデバイス1.2は1次同期元(BS1.3又はGNSS)である初期同期元に基づいて同期されるか、又は当該別のデバイス1.2はデバイスである初期同期元に基づいて、すなわち同期を開始したカバレッジ外のデバイス1.2から同期される。
【0085】
発信された各同期信号とともに、同期信号に対応する初期同期元に関連する情報が送信される。この情報は、初期同期元のID、例えば、初期同期元がBS1.3である場合にセルのID、又は少なくとも或る特定の地理的範囲内の各初期同期元を識別することを可能にする任意の他の特定のIDであってもよい。初期同期元に関連する情報はまた、同一クラスの全ての初期同期元について、すなわち同期している全ての初期同期元について同一である同期IDであってもよい。
【0086】
したがって、デバイス1.2から同期信号を受信する場合、このデバイス1.2は、同期信号とともに、自身が基づいて同期している初期同期元に関連する情報も送信する。したがって、この情報は、いくつかのデバイスを介して送信してから、デバイス1.1によって同期信号とともに受信されてもよい。
【0087】
上記したように同期信号をBS1.3から受信する場合、同期信号は、デバイス1.1がセルのIDを判定することを可能にし、このIDは、本発明に従って、初期同期元に関連する情報として使用することができる。初期同期元に関連する別の種類の情報、例えば同期IDを用いる場合、この情報は、例えば同期信号を含むフレームにおいて送信することができる。
【0088】
上記したように、各同期信号SSiに対応する初期同期元を同期することができる。同期された初期同期元は、初期同期元のクラスを形成する。
【0089】
ステップS2において、デバイスは、受信した同期信号が、同期している初期同期元に基づくか否かを判定する。
【0090】
そのために、デバイスは、受信した初期同期元に関連する情報を比較する。
【0091】
同期IDを用いる場合、デバイスは、受信したIDを比較する。第1の同期信号及び第2の同期信号とともに送信された2つのID間の各一致は、第1の同期信号及び第2の同期信号が、同期している初期同期元から発せられたことを示唆する。初期同期元から発せられた同期信号とは、同期信号が初期同期元によって、又は初期同期元に基づいて同期しているか、若しくは初期同期元のタイミングを中継しているデバイスによって発信されるものとして理解される。
【0092】
初期同期元を識別することを可能にするセルのID又は他の種類のIDが使用される場合、デバイス1.1は初期同期元IDリストを探索する。第1の同期信号及び第2の同期信号とともに送信されたIDが、同一グループの初期同期元を指す場合、第1の同期信号及び第2の同期信号は、同期している初期同期元から発せられている。
【0093】
ステップS3において、デバイス1.1は、受信した同期信号(SS1、...、SSN)と、対応する初期同期元(ISS1、...、ISSN)に関連する情報とに従って自身の同期を管理する。
【0094】
例えば、図2の場合に、BS1とBS2とは同期しているため、UE2は、自身の同期をBS1からBS2へ変更する必要はなく、したがってBS1に、よって他のデバイスUE3及びUE1に同期し続けることができる。
【0095】
また、T(SS1)=T(SS2)+Δtであるため、UE2は、BS2によって発信された同期信号SS2を使用して、BS1に同期することができ、したがって、UE2がBS2のカバレッジにいる限り、UE2はSS1を復号する必要がない。T(SSi)は、SSiを輸送するフレームの始点であり、ΔtはT(SS1)とT(SS2)との間の時間差である。この時間差は、全てのフレームがSSiを輸送する訳ではないので、フレームの継続時間を法として見るべきである。
【0096】
これは特に、UE2の視点から見て、BS2によって発信された同期信号が、BS1によって発信された同期信号よりも強い場合に適切である。したがって、本発明は、同期信号の検出プロセスの精度を向上することを可能にする。
【0097】
例えば、図1の場合、2つのクラスターが同一のBSに同期しているため、UE7は、第1の同期信号(SS3)を送出するUE、すなわちUE3に同期することができる。これは、自身とBSとの間で最も低い同期レイテンシを有するUEに同期することを可能にする。このレイテンシは、例えば、クラスター内のより多い数のUE、又は最後のUEとBSとの間のより長い累積送信経路によるものであり得る。
【0098】
また、T(SS6)=T(SS3)+Δtであるため、UE7は、(レイテンシのより少ない)UE3によって発信された同期信号SS3を使用してUE6に同期することができる。
【0099】
同一の戦略を、UE2がBS1又はBS2に同期することができる図3の場合に適用することができる。図4の場合、UE2は、BS又はGNSSに同期することができる。
【0100】
ステップS4において、デバイス1.1は、2つの同期信号間、又は異なるクラスの2つの代表的な同期信号間、又は1つの同期信号と1つの代表的な同期信号との間のタイミング差を求める。
【0101】
クラスの代表的な同期信号とは、デバイス1.1によって受信されるか、又はデバイス1.1によって計算される同期信号として理解され、すなわち、その代表的な同期信号は存在しなくてもよく、単に仮想同期信号とすることができる。
【0102】
クラスの代表的な同期信号は、以下のものであり得る。
【0103】
- デバイス1.1によって受信された同一クラスの同期信号の中で最高のパワーを有する受信した同期信号。
【0104】
- 或るフレームにおいて送信された受信した同期信号であって、当該フレームの開始は、デバイス1.1によって受信された同一クラスの他の同期信号を送信するフレームの開始の前に受信される、同期信号。言い換えれば、受信した同期信号から推測されるフレーム基準時刻が、デバイス1.1によって受信された同一クラスの他の同期信号から推測されるフレーム基準時刻の前であるか、又は受信した同期信号によって示されるフレームの開始が、デバイス1.1によって受信された同一クラスの他の同期信号によって示されるフレームの開始よりも前である場合。上記代表は、クラスの最低レイテンシの同期信号と呼ばれる場合がある。
【0105】
- 推定伝播遅延又は最小伝播遅延をクラスの1つの受信した同期信号、例えばクラスの最低レイテンシの同期信号に対して相殺することによって計算される、計算された同期信号。推定伝播遅延又は最小伝播遅延は、デバイス1.1と考慮する同期信号の発信元との間の伝播遅延の推定に基づく。
【0106】
- デバイス1.1によって受信された同一クラスの同期信号を合成することによって計算される、計算された同期信号。例えば、デバイス1.1によって受信された同一クラスの同期信号の受信時刻の平均/加重平均等を計算することによる。
【0107】
図6の例において、デバイスは、受信した同期信号が、同期している初期同期元に基づくか否かを判定する。このステップは、ステップ4~7を実施する際、特にタイミング差を求める際の任意選択とすることができる。実際は、タイミング差は、同期した初期同期元から発されたものでない同期信号に基づいて求めてもよい。
【0108】
2つの同期信号間、又は異なるクラスの2つの代表的な同期信号間、又は1つの同期信号と1つの代表的な同期信号との間のタイミング差を求めるために、デバイスは、考慮する2つの同期信号の受信時刻間、又は2つの同期信号から推測されるフレーム基準時刻間、又は2つの同期信号によって示されるフレームの開始間の時間差Δtを計算する。
【0109】
ステップS5において、デバイス1.1は、受信した同期信号(又は代表的な同期信号)を発した2つの初期同期元が同一であるかを判定する。
【0110】
これは、2つの初期同期元に関連する情報を用いて行うことができる。例えば、同期元に関連する情報が送信元のIDを含む場合である。デバイス1.1はまた、ステップ4において計算された時間差を閾値と比較することによって、これを判定してもよい。時間差が既定の閾値を下回る場合、2つの初期同期元は同期していると考えられる。
【0111】
2つの初期同期元が同一であるかを判定することは、2つのクラスターが同一の初期同期元に同期している場合に特に適切である。
【0112】
ステップS6において、デバイス1.1はデバイス1.3へ、求められ受信された情報を送信する、すなわち、デバイス1.1は、計算された時間差を、対応する初期同期元、すなわち、時間差を計算するために用いた同期信号を発した初期同期元に関連する情報とともに送信してもよい。用いられる同期信号が計算された同期信号である場合、送出される初期同期元に関連する情報は、同一クラスの初期同期元に関連する情報のうちの1つの情報である。
【0113】
デバイス1.1はまた、時間差を計算するために用いた2つの初期同期元が同一の送信元であるという事実に関する情報を送信してもよい。
【0114】
ステップS7において、デバイス1.3は、受信する同期信号(SS’1、...、SS’M)と、これらの受信した同期信号を発した初期同期元に関連する(受信した同期信号とともに受信した)情報と、ステップ6において説明したようにデバイス1.1から受信した情報とに従って自身の同期を管理する。
【0115】
例えば、図1の場合、UE7は、UE3及び/又はUE6に、初期同期信号SS6及びSS3の間の時間差Δt=T(SS6)-T(SS3)と、初期同期元BSに関連する情報とを送出してもよい。また、UE7は、初期同期元が各クラスターについて同じであることを規定してもよい。
【0116】
UE3及び/又はUE6は、それらの同期カバレッジが、UE7により2つのクラスターを統合することを可能にしてもよい。例えば、UE3及び/又はUE6は、分散アルゴリズムを用いて、共通の同期基準に収束してもよい。例えば、UE3及び/又はUE6は、UE3/UE6のうちの1つの同期に追従することを決め、その変更をクラスターの他のメンバーに知らせて、同期基準を変更したクラスターのUEに基づいて他のメンバーが同期し直すことができるようにしてもよい(一方のクラスターを他方に統合する)。
【0117】
例えば、図2の場合、UE3はUE2から、初期同期信号SS1及びSS2の間(初期同期信号SS1及びSS2から推測されたフレーム基準時刻間、又は初期同期信号SS1及びSS2によって示されるフレームの開始間)の時間差Δt=T(SS1)-T(SS2)と、これらの初期同期元BS1及びBS2に関連する情報とを受信してもよい。
【0118】
関連付けられた情報に基づいて、UE3は、BS1とBS2とが同期していることを判定することが可能になる。したがって、UE3がBS2の圏内に入ると、T(SS1)=Δt+T(SS2)であるため、UE3は、BS2によって発信された初期同期信号SS2を用いて、BS1に同期することができる。これは、SS2がSS2よりも強い初期同期信号であり、また(BS1から同期信号SS1を受信する経路がBS2から同期信号SS2を受信する経路よりも長いため)無線チャネルによる影響を受けにくい可能性があるため、特に有利である。
【0119】
例えば、図3の場合、UE3はUE2から、初期同期信号SS1及びSS2の間の時間差Δt=T(SS1)-T(SS2)と、これらの初期同期元BS1及びBS2に関連する情報とを受信してもよい。
【0120】
関連付けられた情報に基づいて、UE3は、BS1とBS2とが同期していることを判定することが可能になる。
【0121】
したがって、T(SS1)=Δt+T(SS2)であるため、UE3は、BS2から受信した初期同期信号SS2に基づいてクラスターUE1及びUE2に同期することができる。
【0122】
例えば、図4の場合、UE1はUE2から、初期同期信号SS1及びSS2の間の時間差Δt=T(SS1)-T(SS2)と、これらの初期同期元BS1及びBS2に関連する情報とを受信してもよい。
【0123】
時間差に基づいて、T(SS1)=Δt+T(SS2)であるため、UE1は、GNSSから受信した初期同期信号SS1に基づいてUE2に同期することができる。
【0124】
これらの例では、1つ又は2つの初期同期元のみを示すが、上記したように、3つ以上の初期同期元が同期プロセスに関与し得る。この場合、UEは、代表的な同期信号に基づいて同期することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6