(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20230428BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20230428BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230428BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230428BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230428BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230428BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20230428BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230428BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08J3/12 A CEZ
B01J20/26 D
B01J20/34 Z
B01J20/30
B01J20/28
A61F13/53 300
A61F13/15 141
C08F6/00
(21)【出願番号】P 2022500467
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005228
(87)【国際公開番号】W WO2021162085
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020023472
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020023473
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020145970
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】西村 公彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】新居 知哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 一司
(72)【発明者】
【氏名】夛田 賢治
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/122246(WO,A1)
【文献】特表2005-525445(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002387(WO,A1)
【文献】特開2006-063508(JP,A)
【文献】特表2013-520244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
B01J 20/00-20/34
A61F 13/15-13/84
C08F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋された吸水性樹脂であり、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度が、3.5ppm以下である吸水性樹脂:
ここで、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度とは、常温常圧下で、密閉可能な2Lガラス容器に入れた吸水性樹脂10.0gに23.5±0.5℃の生理食塩水10.0gを均一に添加し、15分間密閉状態で静置したときの、密閉容器内に存在している揮発成分のうち、10.6eVランプの光イオン検出器(PID)で検出される全ての物質の濃度を合計した数値であり、校正ガスであるイソブチレン換算の検出値で示した値である。
【請求項2】
膨潤倍率が0.0倍、0.5倍、1.0倍、2.5倍、5.0倍、10.0倍、および20.0倍となる条件下で、それぞれ15分間静置したときの各揮発成分濃度の合計値が、9.5ppm以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂。
【請求項3】
膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の最大値が0.4ppm以下である、請求項1または2に記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の合計値が50.0ppm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項5】
無加圧下吸収倍率(CRC)が23g/g以上であり、かつ加圧下吸収倍率(AAP)が15g/g以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
質量平均粒子径(D50)が300~600μmであり、150μm未満の粒子の割合が5質量%以下であり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20~0.50である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項7】
揮発成分低減剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項8】
比表面積が25m
2/kg以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の吸水性樹脂を含む吸収性物品。
【請求項10】
前記吸水性樹脂と親水性繊維とを含む複合体である吸収体を含み、当該吸収体の全質量に対する前記吸水性樹脂の含有量が60質量%以上である、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物を重合して、含水ゲル状架橋体を得る重合工程、前記重合工程で得られた前記含水ゲル状架橋体の乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、前記重合工程の終了時以降に、アミノ基を有する還元剤を添加する工程を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記表面架橋工程の終了時以降に、アミノ基を含む還元剤を添加する工程を含む、請求項11に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記アミノ基を含む還元剤を水溶液として添加する工程を含む、請求項11または12に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記アミノ基を含む還元剤は、ヒドラジド基を含有する化合物を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の、吸水性樹脂の製造方法。
【請求項15】
表面架橋された吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した後、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる、吸水性樹脂の製造方法
であって、
前記吸水性樹脂の製造方法は、(A)比表面積が25m
2
/kg以上である、前記表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程を含む、吸水性樹脂の製造方法。
【請求項16】
含水率が27.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した場合には、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率が20質量%以下となるように乾燥させる、請求項1
5に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨潤時に発生する臭気が低減された吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料(衛生物品、吸収性物品)に含まれる吸水剤として、高吸水性高分子(SAP)が使用されている。前記SAPとしては、一般に、表面架橋された吸水性樹脂が使用される。
【0003】
一般に、臭気は個人の生活習慣、環境などで感覚が分かれ、わずかな臭気であっても快・不快の印象が大きく変わることが分かっている。近年、消費者の健康や安全に対する意識が高まるにつれ、衛生材料(衛生物品、吸収性物品)の分野でも、従来はあまり気にされてこなかった僅かな臭気に注目が集まるようになってきた。
【0004】
従来の衛生材料において、原料に含まれる様々な微量の不純物に起因して、膨潤時に臭気が発生することが知られており、使用者の中にはこの臭気を不快と感じる人が一定の割合で存在することが分かってきた。尿等を吸収した前記衛生材料から発生する臭気には、当該尿等の臭気以外に、当該尿等に含まれる水分を吸収したり、水分と接触して発生する臭気があり、不織布、粘着剤、グルー、および吸水性樹脂といった化学製品からの発生と考えられている。
【0005】
表面架橋された吸水性樹脂は、残存モノマーおよび残存架橋剤をはじめとする反応性原料由来の未反応物、原料から副生成する副生成物など、様々な不純物を微量ながら含む。そのため、表面架橋された吸水性樹脂が水分(もしくは尿水)を吸収し膨潤したときに、吸水性樹脂由来の臭気が発生し、一部の消費者にとっては不快な印象を与えるとの問題が生じている。
【0006】
従来から、表面架橋された吸水性樹脂が膨潤したときに発生する臭気を低減する方法の開発が進められている。
【0007】
例えば、特許文献1には、表面架橋された吸水性樹脂において、アルコール系揮発性物質の含有量または残存エチレングリコールの含有量を特定の範囲に制御することによって、前記臭気の発生を抑制する方法が記載されている。
【0008】
特許文献2には、吸水性樹脂に対して、亜硫酸塩または過硫酸塩を添加して、残存モノマーと当該亜硫酸塩または当該過硫酸塩とを反応させ、当該吸水性樹脂におけるモノマー残量を低減する方法が記載されている。
【0009】
特許文献3には、表面架橋された吸水性樹脂に対して、凝集防止剤および水を添加した後、当該吸水性樹脂を乾燥することによって、水と共に臭気を除去する方法が記載されている。
【0010】
特許文献4には、表面架橋された吸水性樹脂に対して、システインを含む水溶液からなる臭気結合剤を添加した後、当該吸水性樹脂を乾燥することによって、臭気を除去する方法が記載されている。
【0011】
特許文献5には、吸水性樹脂に対して、2-オキサゾリドンなどの後架橋剤を用いて後架橋反応を行うことで、臭気を除去する方法が記載されている。
【0012】
特許文献6~7には、逆相懸濁重合によって得られる吸水性樹脂に対して、樹脂粒子内部の分散媒を低減させことによって、分散媒由来の臭気を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO2006/033477(日本国特開2006-116535)
【文献】日本国特開2006-297373
【文献】WO2019/022389
【文献】日本国特表2009-515691
【文献】WO2006/042704
【文献】WO2012/108253
【文献】WO2009/025235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年、前記衛生材料の薄型化が進んでいる。衛生材料の薄型化に伴い、当該衛生材料における、前記表面架橋された吸水性樹脂の含有量は増大する一方、当該吸水性樹脂以外の成分(例えば、パルプ等)の含有量は減少する。ここで、パルプは、臭気を吸着する脱臭作用も有している。よって、衛生材料の薄型化に伴ってパルプの含有量が減少することで、前記吸水性樹脂に由来する臭気の発生量が増大する。また、衛生材料の薄型化によって、例えば衛生材料が失禁パットである場合には、臭気を吸着するパルプの含有量が少ないため、介護者および装着者等の使用者が前記臭気を知覚し易くなっている。
【0015】
即ち、近年、前記衛生材料の薄型化に伴って前記臭気の発生量が増大し、当該臭気を使用者が知覚し易くなったことによって、臭気に関する問題を解決するのに、上述のような従来技術では不十分となってきている。
【0016】
また、近年、前記衛生材料の薄型化によって、求められる吸水速度が高速化している。前記吸水速度の高速化は、通常、前記表面架橋された吸水性樹脂の比表面積を増大させることによって達成される。しかしながら、前記表面架橋された吸水性樹脂の比表面積が増大する場合、当該表面架橋された吸水性樹脂内部に存在する前記の臭気物質(吸水性樹脂に含まれる不純物からの揮発成分)が外部に揮発し易くなり、前記表面架橋された吸水性樹脂に由来する臭気の発生量が増大する。
【0017】
本発明の一態様は、吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持しつつ、膨潤時に発生する臭気を十分に低減した吸水性樹脂およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、表面架橋された吸水性樹脂において、低倍率膨潤時の揮発成分濃度が一定値以下である場合に、吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持しつつ、膨潤時に発生する臭気を低減した吸水性樹脂およびその製造方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明の一実施形態には、以下の態様が含まれる。
【0020】
表面架橋された吸水性樹脂であり、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度が、3.5ppm以下である吸水性樹脂:
ここで、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度とは、常温常圧下で、密閉可能な2Lガラス容器に入れた吸水性樹脂10.0gに23.5±0.5℃の生理食塩水10.0gを均一に添加し、15分間密閉状態で静置したときの、密閉容器内に存在している揮発成分のうち、10.6eVランプの光イオン検出器(PID)で検出される全ての物質の濃度を合計した数値であり、校正ガスであるイソブチレン換算の検出値で示した値である。
【0021】
表面架橋された吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した後、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる、吸水性樹脂の製造方法。
【0022】
吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させて、前記吸水性樹脂から揮発成分を除去する工程を含み、
前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系樹脂を主成分とし、
前記吸水性樹脂が、内部架橋されており、かつ、
前記吸水性樹脂が、表面架橋されている、吸水性樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持しつつ、膨潤時に発生する臭気を低減した吸水性樹脂およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第2の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法にて使用する超臨界抽出装置の一例の構成を示す模式図である。
【
図2】揮発成分濃度の測定に使用する密閉容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および実施例にそれぞれ記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態および実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味し、「ppm」は、「質量ppm」または「重量ppm」を意味する。また、「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「質量」と「重量」は、同義語であると見なす。さらに、吸水性樹脂等の質量は、特に記載のない限り、固形分に換算した数値を表す。
【0026】
[1]用語の定義
[1-1]吸水性樹脂
本明細書において、「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の架橋重合体を意味し、一般的に粒子状である。また、「水膨潤性」とは、NWSP 241.0.R2(15)で規定される無加圧下吸収倍率(CRC)が5g/g以上であることを意味し、「水不溶性」とは、NWSP 270.0.R2(15)で規定される可溶分(Ext)が50質量%以下であることを意味する。
【0027】
前記「吸水性樹脂」は、好ましくはカルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させてなる親水性の架橋重合体である。但し、その全量、即ち100質量%が前記親水性の架橋重合体である必要はなく、前記CRCやExt等の要求性能を満たす範囲内で添加剤等を含有することもできる。前記カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、アクリル酸(塩)系単量体が好ましい。
【0028】
また、本明細書において、前記吸水性樹脂は、「内部のみが架橋された重合体、つまり、内部と表面の架橋密度が実質的に同じである重合体」または「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」を指す場合がある。本明細書において、前記「内部のみが架橋された重合体」と前記「内部と表面とが架橋された重合体」は原則、区別することなく、何れも「吸水性樹脂」と表記する。但し、表面架橋の有無について明確に区別する必要がある場合は、前記「内部のみが架橋された重合体」は表面架橋が施される前であるため、「表面架橋前の吸水性樹脂」または「ベースポリマー」と表記し、前記「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」は表面架橋が施された後であるため、「表面架橋後の吸水性樹脂」または「表面架橋された吸水性樹脂」と表記する。なお、「表面架橋前」とは、「表面架橋剤を添加する前」または「表面架橋剤が添加された後であっても加熱処理による表面架橋反応が始まる前」のことを意味する。
【0029】
また、前記「吸水性樹脂」は、樹脂成分のみを指す場合の他に、添加剤等の樹脂以外の成分を含んでいる場合がある。
【0030】
[1-2]「NWSP」
「NWSP」は、Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015の略称であり、EDANA(European Disposables and Nonwovens Associations:欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry:北米不織布工業会)とが共同で発行した、欧州および米国において統一された、不織布およびその製品の評価方法である。また、NWSPには、吸水性樹脂の標準的な測定方法も示されている。本明細書では、NWSP原本(2015年)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0031】
なお、本明細書では別途言及しない限り、吸水性樹脂の各種物性の測定方法は、下記実施例での測定方法に従う。
【0032】
[2]吸水性樹脂
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、表面架橋された吸水性樹脂であり、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度が、3.5ppm以下である。
【0033】
本発明者らは、前記課題を解決するために検討を行う中で、衛生材料中の吸水性樹脂から発生する臭気の強度が、衛生材料を構成する吸収体の場所によって異なることを発見した。具体的には、吸水性樹脂と親水性繊維等とからなる吸収体を備えた紙オムツを広げて、その中央部に無臭の生理食塩水もしくは人工尿を注入し、液が拡散して吸収された後の臭いを嗅ぐと、中央付近は臭気が弱く、拡散した液の到達部の臭気が強いことに気が付いた。当該吸収体を詳しく分析したところ、中央付近では吸水性樹脂が大きく膨潤しており、拡散した液の到達部の吸水性樹脂では中央部付近と比べて吸水性樹脂が膨潤していなかった。この結果から、前記吸水性樹脂の膨潤倍率の違いで、発生する臭気の程度に差があり、低率膨潤であるほど臭気が強いことを見出した。この臭気の程度に差がある理由として、表面架橋された吸水性樹脂に含まれる様々な不純物から臭気物質(揮発成分)が発生し、その発生量に差があるためではないかと考えた。それら臭気物質(揮発成分)の発生量を測定する方法として揮発成分濃度を測定したところ、意外なことに、揮発成分濃度と臭気の程度に相関性があることが分かった(揮発成分濃度が高いほど臭気が強い)。そして、吸水性樹脂が低倍率膨潤であるほど発生する揮発成分濃度が高くなっていることを見出した。さらに、吸水性樹脂の膨潤倍率が1.0倍となる低膨潤倍率時の揮発成分濃度が最も高くなり、前記揮発成分濃度を所定値以下にしたところ、当該吸水性樹脂を用いた吸収体の衛生材料への実使用において膨潤時に発生する臭気を著しく低減できることを見出した。
【0034】
特許文献1、6などで従来行われていた吸水性樹脂が膨潤する際の臭気測定は、5倍膨潤、7.5倍膨潤等その時々で任意に決められてきた。しかし、前記発明者らの検討から、吸水性樹脂から発生する揮発成分濃度が最も高くなるのは、意外にも従来の測定条件よりも低膨潤のときであることが明らかになった。この低膨潤という条件は、これまで、衛生材料等の実使用における、臭気の程度との相関が一切検討されてこなかった条件である。本発明では衛生材料から知覚される不快臭と揮発成分濃度との相関の高い低膨潤条件で吸水性樹脂が発する揮発成分濃度を測定することが、衛生材料の不快臭低減に最も重要であることを見出したものである。
【0035】
本発明において、「膨潤倍率」とは、膨潤前の吸水性樹脂の質量に対する、膨潤後の当該吸水性樹脂が吸収した水性液体の質量の比率を意味する。例えば、膨潤倍率が1.0倍であるとは、膨潤後の当該吸水性樹脂が吸収した水性液体の質量が、膨潤前の吸水性樹脂の質量に対して、1.0倍(該吸収した水性液体の質量と、膨潤前の吸水性樹脂の質量とが同じ質量)であることを意味する。ここで、膨潤前の吸水性樹脂とは、吸水していない吸水性樹脂をいい、含水率が、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、言い換えれば固形分が80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上の吸水性樹脂をいう。
【0036】
「膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置した場合の揮発成分濃度」(以下、本明細書において、「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」と称することがある)とは、常温常圧下で、密閉可能な容器に入れた吸水性樹脂に、膨潤倍率が1.0倍となるように生理食塩水を均一に添加し、15分間密閉状態で静置したときの、密閉容器内に存在している、揮発成分(ガス状物質、気体状の物質)のうち、10.6eVランプの光イオン化検出器(PID)で検出される物質の濃度であり、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定された値である。
【0037】
本発明における揮発成分の濃度とは、前記の密閉容器内に存在している揮発成分のうち、10.6eVランプの光イオン化検出器(PID)で検出される全ての物質の濃度を合計した数値であり、校正ガスであるイソブチレン換算の検出数値である。
【0038】
前記揮発成分のうち、光イオン化検出器で検出される物質としては、酢酸、酢酸メチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチルエーテル、エチルメルカプラン、フルフラール、ヘプタン、ヘキサン、イソブチレン、アンモニア、硫化水素、二硫化炭素、二酸化窒素などがあげられる。光イオン化検出器(PID)で検出されない物質としては、水、酸素、窒素、二酸化炭素、オゾン、水素などがあげられる。本明細書において、特記しない限り、「揮発成分」とは、「10.6eVランプの光イオン化検出器(PID)で検出される物質」を意味する。
【0039】
なお、本明細書では一態様として生理食塩水を用いるが、純水、特定組成の人工尿であってもよい。
【0040】
前記1.0倍膨潤時の揮発成分濃度は、3.5ppm以下であり、より好ましくは3.3ppm以下であり、より好ましくは3.0ppm以下であり、より好ましくは2.7ppm以下であり、より好ましくは2.5ppm以下であり、より好ましくは2.3ppm以下であり、より好ましくは1.9ppm以下であり、より好ましくは1.5ppm以下であり、より好ましくは1.0ppm以下である。
【0041】
前記1.0倍膨潤時の揮発成分濃度が、3.5ppm以下であれば、当該吸水性樹脂を用いた吸収体の衛生材料への実使用において、膨潤時に発生する臭気を著しく低減することができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、膨潤倍率が0.0倍、0.5倍、1.0倍、2.5倍、5.0倍、10.0倍、および20.0倍となる条件下で、それぞれ15分間静置したときの各揮発成分濃度の合計値が、9.5ppm以下であることが好ましい。
【0043】
前述したように、衛生材料中の吸水性樹脂は吸収体に配置された場所によって尿等を吸収時の膨潤倍率が異なり、それぞれの倍率で発生する揮発成分濃度が異なる。よって最も揮発成分濃度の高い1.0倍膨潤倍率の揮発成分濃度だけでなく、他の膨潤倍率の揮発成分濃度も併せて低いことが望まれる。本発明者らは、前記7つの膨潤倍率の揮発成分濃度の合計値を9.5ppm以下に制御することが、衛生材料から発生する揮発成分濃度を低く制御するために好ましいことも明らかにした。
【0044】
ここで、「膨潤倍率が0.0倍、0.5倍、1.0倍、2.5倍、5.0倍、10.0倍、および20.0倍となる条件下で、それぞれ15分間静置したときの各揮発成分濃度の合計値」(以下、本明細書において、「各倍率膨潤時の揮発成分積算値」と称することがある)とは、密閉可能な容器に入れた吸水性樹脂に生理食塩水を、膨潤倍率がそれぞれ0倍、0.5倍、1.0倍、2.5倍、5.0倍、10.0倍、20.0倍となるように均一に添加し、それぞれ、15分間密閉状態で静置したときの各膨潤倍率における揮発成分濃度の合計であり、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定された値である。各倍率膨潤時の揮発成分積算値は、好ましくは9.5ppm以下であり、より好ましくは8.0ppm以下であり、より好ましくは7.5ppm以下であり、より好ましくは7.0ppm以下であり、より好ましくは6.5ppm以下であり、より好ましくは6.0ppm以下であり、より好ましくは5.0ppm以下であり、さらに好ましくは4.0ppm以下であり、さらに好ましくは3.5ppm以下である。
【0045】
前記各倍率膨潤時の揮発成分積算値が、9.5ppm以下であれば、当該吸水性樹脂を用いた吸収体の衛生材料への実使用において、膨潤時に発生する臭気を著しく低減することができる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の最大値が0.5ppm以下であることが好ましい。
【0047】
本発明者らは、衛生材料から感じる不快臭は時間の経過とともに弱くなっていくことにも気が付き、吸水性樹脂が膨潤時に発生する揮発成分濃度も膨潤直後から時間の経過とともに増減することと相関があることに気が付いた。さらに、衛生材料から発生する不快臭を知覚しにくくするためには、吸水性樹脂から発生する揮発成分濃度の時間変化において、最大濃度を抑制できることが好ましいことも見出した。
【0048】
ここで、「膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の最大値」(以下、本明細書において、「経時膨潤時の最大揮発成分濃度」と称することがある)とは、密閉可能な容器に入れた吸水性樹脂に、膨潤倍率が5.0倍となるように生理食塩水を均一に添加し、密閉状態で、生理食塩水添加時から900秒経過時までの間、5秒毎に(合計180回)測定した揮発成分濃度の最大値であり、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定された値である。経時膨潤時の最大揮発成分濃度は、好ましくは0.5ppm以下であり、より好ましくは0.4ppm以下であり、より好ましくは0.3ppm以下であり、より好ましくは0.2ppm以下である。
【0049】
前記経時膨潤時の最大揮発成分濃度が、0.5ppm以下であれば、当該吸水性樹脂を用いた吸収体の衛生材料への実使用において、膨潤時に発生する臭気を著しく低減することができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の合計値が50.0ppm以下であることが好ましい。
【0051】
前述したように、衛生材料中の吸水性樹脂は時間の経過とともに発生する揮発成分濃度が低下するが、本発明者らは衛生材料から感じる不快臭は、一時的な揮発成分発生濃度だけでなく、膨潤開始時点からの総量にも影響され、その総量を低く制御できることが好ましいことも見出した。
【0052】
ここで、「膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の合計値」(以下、本明細書において、「経時膨潤時の揮発成分積算値」と称することがある)とは、密閉可能な容器に入れた吸水性樹脂に、膨潤倍率が5.0倍となるように生理食塩水を均一に添加し、密閉状態で、生理食塩水添加時から900秒経過時までの間、5秒毎に(合計180回)測定した揮発成分濃度の合計値であり、具体的には、実施例に記載の測定方法により測定された値である。経時膨潤時の揮発成分積算値は、好ましくは50.0ppm以下であり、より好ましくは45.0ppm以下であり、さらに好ましくは35.0ppm以下であり、よりさらに好ましくは25.0ppm以下であり、特に好ましくは20.0ppm以下である。
【0053】
前記経時膨潤時の揮発成分積算値が、50.0ppm以下であれば、当該吸水性樹脂を用いた吸収体の衛生材料への実使用時における、膨潤時に発生する臭気を著しく低減することができる。
【0054】
[2-1]ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、これに限定されるものではないが、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分として含むことが好ましい。本明細書において、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とは、アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物を架橋重合させてなる親水性の架橋重合体を意味する。つまり、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とは、アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する重合体である。
【0055】
本明細書において、「アクリル酸(塩)」とは、アクリル酸および/またはその塩を意味し、「アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物」とは、架橋剤を除く単量体全体に対して、アクリル酸(塩)を50モル%以上含む単量体組成物を意味する。
【0056】
言い換えれば、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、当該ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を構成する構造単位全体に対して、アクリル酸(塩)由来の構造単位を50モル%以上含む架橋重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する架橋重合体である。
【0057】
より好ましくは、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、重合反応に関与する単量体成分のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは実質100モル%のアクリル酸(塩)を原料として用いて得られた架橋重合体である。
【0058】
(単量体)
吸水性樹脂(ポリマー)を形成する原料成分(モノマー)であり、アクリル酸(塩)系単量体、アクリル酸(塩)系単量体以外の単量体および、内部架橋剤がある。吸水性樹脂を形成するモノマー全量は、単量体組成物である。アクリル酸(塩)系単量体としては、(メタ)アクリル酸およびその塩が挙げられる。
【0059】
単量体組成物に含まれてもよいアクリル酸(塩)系単量体以外の単量体としては、不飽和二重結合を有する単量体(エチレン性不飽和単量体)のうち、酸基を含有する単量体が好ましい。当該単量体としては、具体的には、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体および/またはその塩が挙げられる。これら単量体は、必要に応じて一種類または二種類以上用いられる。
【0060】
前記塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0061】
また、アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物は、10~90モル%の範囲で中和されていることが好ましく、40~80モル%の範囲で中和されていることがより好ましく、60~75モル%の範囲で中和されていることが特に好ましい。
【0062】
従って、アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩、アンモニア等の一価の塩基性化合物を含む中和液で中和されていることが好ましく、水酸化ナトリウムを含む中和液で中和されていることが特に好ましい。
【0063】
また、単量体組成物は、必要に応じて、上述した単量体以外に、親水性または疎水性の不飽和単量体(以下、「他の単量体」と称する)を含んでいてもよい。当該他の単量体としては、例えば、メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体;が挙げられる。他の単量体の使用量は、得られる吸水性樹脂の物性を損なわない程度であればよく、具体的には、単量体組成物の内部架橋剤を除いた部分に対して、50モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0064】
(内部架橋剤)
内部架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内部架橋剤の中から、反応性等を考慮して少なくとも1種類の内部架橋剤が選択される。
【0065】
本発明においては、吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤、より好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤が選択される。前記重合性不飽和基としては、具体的には、アリル基、(メタ)アクリレート基が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。また、前記(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、アルキレングリコール単位の数(以下、「n」と表記する)としては、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは6以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
【0066】
前記内部架橋剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体組成物に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.001モル%以上、さらに好ましくは0.01モル%以上であって、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水性樹脂が得られる。一方、当該範囲外の使用量では、ゲル強度の低下に伴い、水可溶分が増加したり、吸収倍率が低下したりすることがある。
【0067】
(微量成分)
本発明において、単量体組成物は、重合禁止剤、Fe、プロピオン酸、酢酸、アクリル酸ダイマー、その他不純物等の微量成分を含む場合がある。
【0068】
単量体組成物に含まれうる重合禁止剤としては、国際公開第2008/096713号に例示のN-オキシキシル化合物、マンガン化合物、置換フェノール化合物が挙げられ、好ましくは置換フェノール類、特にメトキシフェノール類(p-メトキシフェノール)が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、当該単量体組成物に対して、5~200ppmであり、好ましくは5~160ppm、さらには10~160ppm、より好ましくは10~100ppm、さらに好ましくは10~80ppm、最も好ましくは10~70ppmである。
【0069】
単量体組成物に含まれうる鉄量(Fe)は、当該単量体組成物に対して2ppm以下が好ましく、より好ましくは1.5ppm以下、さらに好ましくは1.0ppm以下、よりさらに好ましくは0.5ppm以下、特に好ましくは0.3ppm以下である。なお、Feの下限は塩基(特に苛性ソーダ)の精製コストから0.001ppm以上であり、好ましくは0.01ppmである。
【0070】
なお、単量体組成物中の鉄量は、例えば、JIS K1200-6に記載のICP発光分光分析方法で定量でき、具体的な定量方法の参考文献として、国際公開第2008/090961号を参照することができる。
【0071】
単量体組成物に含まれうるプロピオン酸は、当該単量体組成物に対して500ppm以下が好ましく、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300pm以下である。
【0072】
単量体組成物に含まれうる酢酸は、当該単量体組成物に対して1質量%以下がよく、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは3000pm以下である。さらに好ましくは2000ppm以下、よりさらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0073】
単量体組成物に含まれうるアクリル酸ダイマーは、当該単量体組成物に対して1000ppm以下がよく、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200pm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
【0074】
また、単量体組成物に含まれうるその他不純物としては、プロトアネモニン、アリルアクリレート、アリルアルコール、アルデヒド分(特にフルフラール)、マレイン酸、安息香酸が挙げられる。前記単量体組成物における、これらその他不純物6種類の含有量としては、好ましくは少なくとも1種類以上の前記その他不純物の含有量が0~20ppmであり、より好ましくは2種類以上の、さらに好ましくは3種類以上の、よりさらに好ましくは4種類以上の、特に好ましくは5種類以上の、最も好ましくは6種類のその他不純物全ての含有量が、各々0~20ppmである。各々のその他不純物の含有量としては、好ましくは各々が0~10ppmであり、より好ましくは0~5ppmであり、さらに好ましくは0~3ppmであり、特に好ましくは0~1ppmであり、ND(検出限界)であることが最も好ましい。すなわち、単量体組成物において、前記6種類のその他不純物の全ての含有量がND(検出限界)であることが最も好ましい。また、その他不純物の合計量(前記6種類のその他不純物の、単量体組成物に対する重量の合計)は、100ppm以下が好ましく、0~20ppm、さらには0~10ppmであることがより好ましい。
【0075】
上記微量成分(およびそれらの誘導体)は、後述する表面架橋工程等で揮発成分(臭気)に変異する場合がある。それゆえ、単量体組成物は、原料面からこれらの存在を少なくすることが好ましい。換言すると、単量体組成物中の上記微量成分の量を少なくすることで、これら微量成分が表面架橋工程等で揮発成分に変異することが少なくなり(すなわち、揮発成分に由来する臭気が減少し)、表面架橋された吸水性樹脂から臭気を低減することができる。
【0076】
(表面架橋剤)
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は表面架橋されている。使用される表面架橋剤としては、例えば、米国特許第7183456号に記載された表面架橋剤が挙げられる。これら表面架橋剤の中から、反応性等を考慮して少なくとも1種類の表面架橋剤が選択される。また、表面架橋剤の取り扱い性や吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくはカルボキシル基と反応する官能基を二つ以上有する表面架橋剤であって、共有結合が形成される有機化合物が選択される。
【0077】
前記表面架橋剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコール化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物;ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物とハロエポキシ化合物との縮合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;オキサゾリジノン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリシドール等の多価グリシジル化合物;オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物;環状尿素化合物;等が挙げられる。これらの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
[2-2]揮発成分低減剤
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、揮発成分低減剤を含んでいてもよい。揮発成分低減剤は、揮発成分(前記光イオン化検出器で検出される揮発成分のうち、少なくとも1種類以上)を揮発させないようにする機能を有する物質であり、例えば、揮発成分を捕捉し揮発させないようにする機能を有する物質である。揮発成分を捕捉し揮発を抑制するメカニズムとしては、例えば、揮発成分を化学吸着させてもよいし物理吸着させてもよい。前記揮発成分低減剤は、還元剤、界面活性剤、および無機酸(塩)から選ばれる少なくとも1つを含んでよい。
【0079】
(還元剤)
前記還元剤として、特に限定されないが、カルボキシル基を有する還元剤、アミノ基を有する還元剤、リン酸系還元剤、硫酸系還元剤が含まれる。カルボキシル基を有する還元剤の例示化合物としては、L-アスコルビン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸などが挙げられる。アミノ基を有する還元剤の例示化合物としては、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スクシン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等のヒドラジド基を含有する化合物;L-システイン、システアミンなどのアミノ酸;ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸などのアミノオキシ化合物、アミノオキシ酢酸、および、それらの類縁化合物などの下記構造式(1)で示される官能基を有する化合物;などが挙げられる。また、前記アミノ酸、アミノオキシ化合物、アミノオキシ酢酸、および、前記構造式(1)で示される官能基を有する化合物は、安定化のために、塩酸塩(ヘミ塩酸塩)の状態であってもよい:
H2N-O- ・・・式(1)。
【0080】
前記構造式(1)で示される官能基を有する化合物としては、式(1)で示される官能基を有する限り、特に限定されないが、例えば、以下の化学式(2)~(6)で示される構造を有する化合物が挙げられる:
【0081】
【化1】
(式(2)中、Rは、H、CH
3、C
2H
5、C
6H
5CH
2、またはSO
3Hである)
【0082】
【化2】
(式(3)中、Rは、H、CH
3、n-C
3H
7、iso-C
3H
7、n-C
4H
9、n-C
6H
13、n-C
10H
21、またはC
6H
5CH
2である。Rはそれぞれ同じであってもよく、違っていてもよい)
【化3】
【化4】
【0083】
【化5】
(式(6)中、R
1、R
2、R
3は、H、C
6H
5、C
6H
3C
l2、CH
3、またはC
2H
5であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ同じであってもよく、違っていてもよい)。
【0084】
リン酸系還元剤の例示化合物としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウムなどが挙げられる。硫酸系還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。前記還元剤の中でもアミノ基を有する還元剤がより好ましく、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スクシン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等のヒドラジド基を含有する化合物;L-システイン、システアミン、アミノオキシ酢酸(ヘミ塩酸塩)が特に好ましい。前記還元剤は、必要に応じて一種類または二種類以上用いられるが、ヒドラジド基と反応する化合物(ケトン基および/またはアルデヒド基など、活性カルボニル基を有する樹脂または化合物)を含有した場合、ヒドラジド基が反応し消失する。臭気物質(揮発成分)の揮発を抑制する機能が低下するため、ヒドラジド基を含有する化合物とヒドラジド基と反応する化合物とを併用しないことが好ましい。
【0085】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂が、還元剤を含む場合には、添加剤等を含む吸水性樹脂の全量に対する、還元剤の含有量は、好ましくは0.001~2.0質量%であり、より好ましくは0.005~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.008~1.2質量%であり、特に好ましくは0.01~1.0質量%である。還元剤の含有量が0.001質量%以上であれば、臭気物質(揮発成分)を好適に除去することができる。また、還元剤の含有量が2.0質量%以下であれば、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性(白色性、AAP等を含む)を好適に維持することができる。本実施形態は、吸水性樹脂由来の臭気を抑制できる以外にも、白色性を維持することができる。また、吸水物性(AAP)を維持することができる。
【0086】
(界面活性剤)
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。
【0087】
アニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石けん、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム石けん、ステアリン酸ナトリウム石けん、オレイン酸カリウム石けん、ヒマシ油カリウム石けんなどの脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリムなどのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウムなどのアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)硫酸エステル塩;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などのナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルなどがある。
【0088】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミドなどがある。
【0089】
カチオン性界面活性剤および両面界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライト、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアミンオキサイドがある。
【0090】
さらに、界面活性剤としては、フッ素原子を有する界面活性剤がある。本発明の一実施形態において使用されるフッ素原子を有する界面活性剤としては、種々のものがあるが、例えば、一般の界面活性剤の疎水基水素原子をフッ素原子に置き換えたアルキル基(パーフルオロアルキル基)とし、界面活性が格段に強くなっている物質がある。あるいは、前記フッ素原子を有する界面活性剤は、パーフルオロアルキル基の代わりに、前記疎水基水素原子の1部(例えば、水素原子1つ)をフッ素原子に置き換えたアルキル基を有する界面活性剤であってもよい。また、炭化水素系界面活性剤とフッ素原子を有する界面活性剤とを含む組成物であってもよい。フッ素原子を有する界面活性剤の場合、疎水基として同じ構造のフルオロカーボン鎖を用いていても、親水基を変えることにより、アニオン型、ノニオン型、カチオン型および両性型の4種類の界面活性剤となり得る。疎水基である炭素鎖は直鎖であっても分枝状であっても使用可能である。代表的なフッ素原子を有する界面活性剤としては、以下のものがある。
【0091】
フルオロアルキル(C2~C10)カルボン酸、N-パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3-[フルオロアルキル(C6~C11)オキシ]-1-アルキル(C3~C4)スルホン酸ナトリウム、3-[ω-フルオロアルカノイル(C6~C8)-N-エチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、N-[3-(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、フルオロアルキル(C11~C20)カルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7~C13)、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキル(C4~C12)スルホン酸塩(Li、K、Na)、N-プロピル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6~C10)アルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6~C10)-N-エチルスルホニルグリシン塩(K)、リン酸ビス(N-パーフルオロオクチルスルホニル-N-エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキル(C6~C16)エチルリン酸エステル、パーフルオロアルキル第四級アンモニウムヨウ化物(商品名フロラードFC-135、住友スリーエム株式会社製カチオン性フッ素系界面活性剤)、パーフルオロアルキルアルコキシレート(商品名フロラードFC-171、住友スリーエム株式会社製ノニオン性界面活性剤)、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩(商品名フロラードFC-95およびFC-98、住友スリーエム株式会社製アニオン性界面活性剤)。ここで、記号「C」の後の数字は、炭素数を表す。例えば、C2~C10とは、「炭素数が2以上10以下」を意図する。
【0092】
本発明の一実施形態では、有機金属界面活性剤も用いることができる。本発明の一実施形態において使用される有機金属界面活性剤は、分子の主鎖や側鎖にSi、Ti、Sn、Zr、Geなどの金属を有するものであり、好ましくは分子の主鎖にSiを有するものであり、より好ましくはシロキサン系界面活性剤である。
【0093】
代表的な有機金属界面活性剤としては、吉田、近藤、大垣、山中『新版界面活性剤ハンドブック』工学図書、1966、34頁に記載の有機金属界面活性剤などが挙げられる。有機金属界面活性剤に含まれる金属としては、SiまたはTiの代わりにSn、Zr、Geなどを用いることができる。本発明の一実施形態で使用される界面活性剤は前記界面活性剤に限定されるものではない。
【0094】
これらの界面活性剤の中で、安全性の面からノニオン性界面活性剤が好ましく、その中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0095】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂が、界面活性剤を含む場合には、添加剤等を含む吸水性樹脂の全量に対する、界面活性剤の含有量は、好ましくは0.001~2.0質量%であり、より好ましくは0.005~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.008~1.2質量%であり、特に好ましくは0.01~1.0質量%である。界面活性剤の含有量が0.005質量%以上であれば、臭気物質(揮発成分)を好適に除去することができる。また、界面活性剤の含有量が1.5質量%以下であれば、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性(白色性、AAP等を含む)を好適に維持することができる。
【0096】
(無機酸(塩))
無機酸(塩)は、無機酸およびそれらの塩を含む化合物であり、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩が挙げられる。還元剤として作用する無機酸(塩)は除外する。炭酸塩の例示化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウムが挙げられ、リン酸塩の例示化合物としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムが挙げられる。
【0097】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂が、無機酸(塩)を含む場合には、添加剤等を含む吸水性樹脂の全量に対する、無機酸(塩)の含有量は、好ましくは0.001~2.0質量%であり、より好ましくは0.005~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.008~1.2質量%であり、特に好ましくは0.01~1.0質量%である。無機酸(塩)の含有量が0.005質量%以上であれば、臭気物質(揮発成分)を好適に除去することができる。また、無機酸(塩)の含有量が1.5質量%以下であれば、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性(白色性、AAP等を含む)を好適に維持することができる。
【0098】
[2-3]吸水性樹脂の物性
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の無加圧下吸収倍率(CRC)は23g/g以上であることが好ましく、より好ましくは25g/g以上であり、さらに好ましくは27g/g以上であり、特に好ましくは28g/g以上である。CRCの上限は高いほど好ましいが、他の物性とのバランスから50g/g以下であることが好ましく、より好ましくは45g/gであり、さらに好ましくは40g/g以下であり、特に好ましくは35g/g以下である。
【0099】
また、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)は、好ましくは15g/g以上、より好ましくは17g/g以上、さらに好ましくは20g/g以上、特に好ましくは23g/g以上、最も好ましくは24g/g以上である。上限値については特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは50g/g以下である。
【0100】
AAPが15g/g以上の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(通常、「Re-Wet(リウェット)」と称する)が多くなりすぎないので、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適する。なお、AAPは、粒度や表面架橋剤等で制御することができる。
【0101】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、好ましくは1×10-7cm3・sec/g以上であり、より好ましくは10×10-7cm3・sec/g以上であり、さらに好ましくは20×10-7cm3・sec/g以上であり、特に好ましくは30×10-7cm3・sec/g以上である。SFCの上限値は、高値ほど好ましく特に限定されない。
【0102】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂のVortex法による吸水速度は、好ましくは60秒以下であり、より好ましくは45秒以下であり、さらに好ましくは35秒以下であり、特に好ましくは33秒以下であり、最も好ましくは30秒以下である。下限値は、低値ほど好ましく特に限定されない。
【0103】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の加圧下浸透依存吸収倍率(PDAUP)は、好ましくは10g/g以上であり、より好ましくは12g/g以上であり、さらに好ましくは15g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されない。
【0104】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の比表面積は、好ましくは20m2/kg以上であり、より好ましくは25m2/kg以上であり、より好ましくは27m2/kg以上であり、さらに好ましくは30m2/kg以上であり、よりさらに好ましくは32m2/kg以上である。吸水性樹脂の比表面積が20m2/kg以上であれば、吸水性能等の物性を維持することができる。即ち、吸水速度が高速化された吸水性樹脂を製造することができる。
【0105】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の固形分は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であり、最も好ましくは95質量%以上である。該固形分が80質量%以上であれば、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性(白色性、AAP等を含む)を好適に維持することができる。
【0106】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の形状は粒子状であることが好ましい。粒子状の前記吸水性樹脂は、例えば、不定形破砕状(不定形)、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状でありうる。子供用オムツなどの衛生物品への使用を考慮すると、液(尿)の拡散性、パルプからの脱落し難さなどの点から、上述した粒子の形状の中では、前記吸水性樹脂は、不定形であることがより好ましい。
【0107】
[2-4]吸水性樹脂の利用
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、吸水性能等の物性を維持しつつ、膨潤時に発生する臭気を低減したものであるため、紙オムツ、失禁パッド、医療用パッド等の吸収性物品に好適に使用される。
【0108】
したがって、本発明には、本発明の吸水性樹脂を含む吸収性物品も含まれる。本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、例えば、前記吸水性樹脂を含む吸収体を含む。前記吸収体は、例えば、前記吸水性樹脂と親水性繊維とを含む複合体であり得る。前記吸収体が、前記吸水性樹脂と親水性繊維とを含む複合体である場合、前記吸収体の全質量に対する前記吸水性樹脂の含有量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、吸収性物品の薄型化を可能としつつ、臭気を吸着する親水性繊維等の含有量が減少する場合でも、本発明の吸水性樹脂は膨潤時に発生する臭気を低減したものであるため、臭気の発生量を好適に減少させることができる。
【0109】
本発明の一実施形態に係る吸収性物品のより具体的な一例としては、例えば、着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される液体に対して不透過性のバックシート、及びトップシートとバックシートの間に配置された前記吸水性樹脂組を含む吸水体を含んでなる吸収性物品を挙げることができる。
【0110】
[3]吸水性樹脂の製造方法
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、前述の吸水性樹脂を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。以下、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0111】
[3-1]第1の実施形態
本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、表面架橋された吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した後、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる、吸水性樹脂の製造方法である。
【0112】
本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、好ましくは、前記吸水性樹脂の製造方法であって、以下のi)~iii)の工程のうちの一つ以上の工程を含む、吸水性樹脂の製造方法である:
i)比表面積が25m2/kg以上である吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程;
ii)吸水性樹脂の含水率が10質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加する工程;
iii)揮発成分低減剤を添加する工程。
【0113】
本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、前記吸水性樹脂の製造方法であって、以下の(A)および/または(B)の工程を含む、製造方法であってもよい:
(A)比表面積が25m2/kg以上である、前記表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程;
(B)重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、重合工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程。
【0114】
また、本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、(A)比表面積が25m2/kg以上である、前記表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程を含むことが好ましく、(A)比表面積が25m2/kg以上である、前記表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程、および(B)重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、重合工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程を含むことが特に好ましい。
【0115】
本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、特に好ましくは、表面架橋され、比表面積が25m2/kg以上である吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した後、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる吸水性樹脂の製造方法である。
【0116】
以下、説明の便宜上、「吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加」する工程を「水性液体添加工程」と表記し、「水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥」させる工程を「水性液体添加後の乾燥工程」と表記する。
【0117】
本第1の実施形態において、前記揮発成分低減剤については、前述の[ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂]で説明したとおりである。また、揮発成分低減剤を添加する工程については、後述する「[3-3]第3の実施形態」に記載のとおりである。
【0118】
[3-1-1]水性液体添加工程
本第1の実施形態における水性液体添加工程とは、表面架橋された吸水性樹脂(好ましくは、比表面積が25m2/kg以上である吸水性樹脂)に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加する工程である。即ち、当該工程は、表面架橋された吸水性樹脂の含水率を増加させる工程である。
【0119】
本発明の一実施形態において、水性液体は、水であることが好ましく、上述する揮発成分低減剤を含む水溶液であることがより好ましい。水性液体が揮発成分低減剤を含む場合、より揮発成分濃度の低い吸水性樹脂を得ることができる。また、水性液体は、有機成分、および導電性物質等の不純物を含有していてもよい。ただし、当該不純物は、本発明の効果を阻害する場合がある。それゆえ、水性液体に含まれる前記不純物(特に、本発明の効果を阻害する虞のある不純物)は、少ないことが好ましい。なお、揮発成分低減剤は、このような不純物には含まれない。
【0120】
本発明の一実施形態において、前記水性液体が、本発明の効果を阻害する虞のある有機成分を不純物として含む場合、前記水性液体に含まれる前記有機成分の濃度は、1000ppm以下であればよく、好ましくは500ppm以下であればよく、さらに好ましくは200ppm以下であればよく、特に好ましくは100ppm以下であればよい。水性液体における有機成分の濃度が前記範囲内であれば、(i)当該有機成分の存在により本発明の効果が阻害される虞がない。また、(ii)本発明の第1の実施形態に係る製造方法で製造される吸水性樹脂に残留する不純物由来の有機成分が少なくなるので、当該有機成分に起因する臭気の発生をより一層低減することができる。
【0121】
ここで、本発明の効果を阻害する虞のある有機成分としては、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、n-ヘプタン、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール)、カルボン酸系共重合体等が挙げられる。水性液体に含まれる有機成分の濃度とは、これら有機成分の合計量を意図する。
【0122】
本発明の一実施形態において、前記水性液体が、導電性物質を含む場合、前記導電性物質は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法で製造される吸水性樹脂に残留することにより、当該吸水性樹脂が尿等を吸収するときの浸透圧を低下させるため、当該吸水性樹脂の吸水性能の低下を引き起こす虞がある。また、前記水性液体に含まれる導電性物質の種類によっては臭気発生の原因となる虞もある(すなわち、本発明の効果を阻害する虞がある)。ここで、水性液体中の導電性物質の量は、当該水性液体の導電率によって評価できる。水性液体の導電率は、当該水性液体における、導電性物質(イオン等)の含有量が大きいほど、大きな値となる。従って、前記水性液体の導電率は、本発明の効果を阻害しない限り必須とはしないが、5mS/cm以下であればよく、好ましくは2mS/cm以下であればよく、さらに好ましくは1mS/cm以下であればよく、特に好ましくは500μS/cm以下であればよい。「水性液体の導電率が5mS/cm以下である」とは、当該水性液体における導電性物質の含有量が少ないこと(本発明の効果を阻害する虞の無い程度に少ないこと)を意味する。従って、前記導電率を好ましくは5mS/cm以下とすることにより、残留する導電性物質に起因する吸水性樹脂の吸水性能の低下および臭気の発生をより一層低減することができる。尚、本発明の効果を阻害する虞のある導電性物質としては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン等が挙げられる。
【0123】
尚、生理食塩水(0.9質量%食塩水)の導電率は約15.7mS/cm、生理食塩水流れ誘導性(SFC)の測定に用いる0.69質量%食塩水の導電率は約12.5mS/cm、水道水の導電率は100~200μS/cm、純水の導電率は約1μS/cmである。前記導電率は、液温25℃における値である。
【0124】
前記水性液体は、上述したように、有機成分および導電性物質等の不純物が少ない水であることが好ましく、有機成分および導電性物質等の不純物が本発明の効果を阻害しない程度に少ない、揮発成分抑制剤を含む水溶液であることが特に好ましい。
【0125】
水性液体添加工程においては、吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように、好ましくは10質量%以上となるように、より好ましくは15質量%以上となるように、さらに好ましくは20質量%以上となるように、水性液体を液滴状態で添加する。水性液体を液滴状態で添加することにより、吸水性樹脂に水性液体を均一に添加することができる。水性液体を液滴状態で添加するとき、および/または添加した後、必要に応じて、吸水性樹脂を攪拌する。そして、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で吸水性樹脂に添加することにより、後に行われる水性液体添加後の乾燥工程において、臭気の原因となる物質(以下、「臭気物質」と表記する。臭気物質は、揮発成分を意図する。)を好適に除去することができる。また、水性液体添加工程においては、吸水性樹脂に、含水率が好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下となるように、水性液体を液滴状態で添加する。尚、本発明において「含水率」は、固形分の質量および水性液体の質量を合計した吸水性樹脂全体の質量に対する、当該水性液体の質量の割合(質量%)を意味する。
【0126】
前記水性液体添加工程において水性液体を過剰に添加した場合には、膨潤した状態の吸水性樹脂同士が接着した塊状物が発生するおそれがある。また、後に行われる水性液体添加後の乾燥工程において、吸水性樹脂から十分な量の水性液体を除去するのに長時間を要することになるので、前記吸水性樹脂が膨潤した状態で長時間存在することになる。このため、水性液体添加後の乾燥工程で、膨潤した状態の吸水性樹脂同士が接着した塊状物が発生するおそれがある。前記塊状物が発生すると、前記水性液体添加後の乾燥工程において、塊状物内部の水性液体を十分に除去することができない場合がある。即ち、前記塊状物が発生すると、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性が低下するおそれがある。また、前記塊状物を後述する所望の粒度分布に調整するために解砕を行うと、前記吸水性樹脂における表面架橋層が破壊され、前記吸水性樹脂の物性が低下するおそれもある。さらには前記塊状物が発生すると、水性液体が添加された吸水性樹脂を攪拌によって乾燥させる場合において、前記攪拌を行う攪拌乾燥装置に掛かる負荷が増大し、条件によっては攪拌を行うことができなくなるおそれがある。
【0127】
水性液体添加工程において、水性液体が添加された吸水性樹脂の含水率を上述の範囲とすることにより、後に行われる水性液体添加後の乾燥工程で、当該吸水性樹脂が膨潤した状態を早期に解消することができる。従って、前記塊状物の発生を好適に防止することができ、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持することができる。
【0128】
水性液体添加工程において液滴状態で添加する水性液体の量は、水性液体が添加された吸水性樹脂の含水率、つまり目標とする含水率に基づいて算出することによって容易に設定することができる。例えば、水性液体が添加された吸水性樹脂の含水率を7.5質量%とするには、水性液体を添加する前の吸水性樹脂(固形分)92.5質量部に対して、水性液体を7.5質量部添加すればよい。
【0129】
前記水性液体添加工程においては、水性液体を添加する直前の吸水性樹脂の温度(粉温)を、好ましくは90℃~160℃に制御し、より好ましくは90℃~140℃に制御する。また、水性液体が添加された直後の吸水性樹脂の温度(粉温)を、好ましくは60℃~150℃に制御し、より好ましくは70℃~140℃に制御する。さらに、水性液体が添加された吸水性樹脂の温度(粉温)を、好ましくは30分間以内に80℃~160℃に制御し、より好ましくは90℃~160℃に制御する。即ち、水性液体が添加された吸水性樹脂に対して、好ましくは30分間以内に、水性液体添加後の乾燥工程を行う。
【0130】
また、前記水性液体添加工程においては、添加する直前の水性液体の温度を、好ましくは5℃~90℃に制御し、より好ましくは10℃~70℃に制御する。尚、水性液体の吸水性樹脂への添加は、より短時間で行うことが好ましい。
【0131】
水性液体を添加する前の吸水性樹脂の温度(粉温)、水性液体が添加された吸水性樹脂の温度(粉温)、および添加する水性液体の温度を、上述したように制御することにより、添加した水性液体が吸水性樹脂の粒子内部に速やかに浸透し、その結果、水性液体と臭気物質(揮発成分)との親和性が向上する。それゆえ、後に行われる水性液体添加後の乾燥工程において、吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持したまま、当該臭気物質(揮発成分)を水性液体と共に好適に除去することができる。
【0132】
[3-1-2]水性液体添加後の乾燥工程
本実施形態における水性液体添加後の乾燥工程とは、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる工程である。即ち、当該工程は、表面架橋された吸水性樹脂の含水率を、1時間以内に7.5質量%以上低下させる工程である。
【0133】
水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程は、例えば攪拌乾燥装置等の装置を用いて連続的な工程として行ってもよく、別々の工程として行ってもよい。つまり、本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を連続的な工程として行う連続式であってもよく、水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を別々の工程として行うバッチ式であってもよい。生産効率を考慮すれば、吸水性樹脂の製造方法は、連続式であることがより好ましい。
【0134】
水性液体添加後の乾燥工程においては、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように、好ましくは10.0質量%以上となるように、さらに好ましくは15.0質量%以上となるように、特に好ましくは20.0質量%以上となるように、乾燥させる。また、前記水性液体添加工程において、含水率が27.5質量%以上となるように水性液体を添加した場合には、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率が20.0質量%以下となるように乾燥させることがより好ましい。これにより、吸水性樹脂に含まれる臭気物質(揮発成分)を、水性液体と共に好適に除去することができる。そして、含水率の低下量が大きいほど、水性液体と共に除去される臭気物質(揮発成分)の量が増大するので、当該臭気物質(揮発成分)に起因する臭気の発生をより一層低減することができる。ここで、本発明において「1時間以内」とは、吸水性樹脂に水性液体が添加された時点から経過した時間が、1時間以内であることを意味する。
【0135】
水性液体添加後の乾燥工程において、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように吸水性樹脂が乾燥されない(含水率の低下量が7.5質量%未満である)場合、また水性液添加工程において、含水率が27.5質量%以上となるように水性液体を添加した場合に、水性液体が添加された吸水性樹脂について1時間以内に含水率を20.0質量%以下となるように乾燥されない場合には、前記吸水性樹脂が膨潤した状態で長時間存在することになる。このため、膨潤した状態の吸水性樹脂同士が接着した塊状物が発生するおそれがある。前記塊状物が発生すると、前記水性液体添加後の乾燥工程において、塊状物内部の水性液体を十分に除去することができない場合がある。即ち、前記塊状物が発生すると、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性が低下するおそれがある。また、前記塊状物を後述する所望の粒度分布に調整するために解砕を行うと、前記吸水性樹脂における表面架橋層が破壊され、前記吸水性樹脂の物性が低下するおそれもある。さらには、前記塊状物が発生すると、水性液体が添加された吸水性樹脂を攪拌によって乾燥させる場合において、前記攪拌を行う攪拌乾燥装置に掛かる負荷が増大し、条件によっては攪拌を行うことができなくなるおそれがある。
【0136】
前記水性液体添加工程を行った後、水性液体添加後の乾燥工程を開始するまでの時間は、より短時間であることが好ましく、30分間以内であることがより好ましい。最も好ましくは、水性液体添加工程と水性液体添加後の乾燥工程とを連続的に実施する。これにより、吸水性樹脂が膨潤した状態を短時間にすることができる。
【0137】
水性液体添加後の乾燥工程においては、水性液体が添加された吸水性樹脂を、好ましくは攪拌および/または気流の条件下にて乾燥させる。これにより、当該吸水性樹脂の含水率を効率的に低減することができる。前記攪拌を行う攪拌乾燥装置、および、前記気流を発生させる気流発生装置としては、公知の装置を用いることができる。
【0138】
水性液体添加後の乾燥工程においては、水性液体が添加された吸水性樹脂を、好ましくは減圧度0.0kPa~10.0kPa、より好ましくは減圧度0.1kPa~5.0kPaで乾燥させる。これにより、当該吸水性樹脂の含水率を効率的に低減することができる。減圧度を前記範囲に制御する方法としては、例えば、水性液体添加後の乾燥工程を、乾燥機を用いて実施し、当該乾燥機内部の圧力を、排気ブロアおよび/または真空ポンプ等を使用して前記範囲に制御する方法が挙げられる。前記減圧度を前記範囲に制御することにより、減圧時に生じる気流により吸水性樹脂およびその粉塵が飛散することを抑制することができる。また、前記減圧度を過剰に大きくすることは、前記乾燥工程が複雑になり、前記乾燥工程にて使用される設備が大掛かりになるため、好ましくない。
【0139】
水性液体添加後の乾燥工程においては、吸水性樹脂の含水率を低下させる装置の温度が、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは、80℃~160℃、さらに好ましくは100℃~150℃である。前記吸水性樹脂の含水率を低下させる装置の温度とは、例えば、水性液体添加後の乾燥工程を、乾燥機を用いて実施する場合には、当該乾燥機の内壁の温度を意味し、例えば、気流を用いて実施する場合には、当該気流の温度を意味する。前記吸水性樹脂の含水率を低下させる装置の温度として上述の好ましい範囲内の温度を適用することにより、乾燥時間を短縮化し、その結果、吸水性樹脂の生産性を向上させることができ、また、高温下での吸水性樹脂の劣化を抑制し、その結果、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持したまま、当該吸水性樹脂から臭気物質(揮発成分)を水性液体とともに好適に除去することができる。尚、以下において、前記吸水性樹脂の含水率を低下させる装置の温度を、「乾燥温度」とも称する。
【0140】
水性液体添加後の乾燥工程においては、水性液体が添加された吸水性樹脂を、好ましくは5分間~1時間、より好ましくは10分間~50分間の乾燥時間で、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる。前記時間内に乾燥することによって、乾燥時間の短縮化が図れ、高温下での乾燥による吸水性樹脂の劣化を抑制し、さらに長時間の攪拌または気流との接触による吸水性樹脂の損傷を抑制することができる。また、乾燥時間が5分以上となるように乾燥することによって、臭気物質(揮発成分)を効率よく除去することができる。
【0141】
上述のように乾燥温度と乾燥時間は、所望の含水率低下量を達成するために適宜設定されるが、低温度で長時間の乾燥を行うと乾燥機内での機械的ダメージにより吸水性樹脂の架橋層が破壊され、当該吸水性樹脂の物性が低下するおそれがある。一方、高温で短時間の場合、前記の表面架橋層破壊は抑制されるが、高温による吸水性樹脂の劣化が懸念される。従って、乾燥温度と乾燥時間は同時に前記範囲を満たすことが好ましい。
【0142】
[3-1-3]表面架橋された吸水性樹脂
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂は、好ましくは比表面積が25m2/kg以上、より好ましくは比表面積が27m2/kg以上、さらに好ましくは比表面積が30m2/kg以上、よりさらに好ましくは32m2/kg以上、特に好ましくは35m2/kg以上である。表面架橋された吸水性樹脂の比表面積は、前記水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を実施した後においても、殆ど変化しない。従って、水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を実施した後における当該吸水性樹脂の比表面積は25m2/kg以上であるので、吸水性能等の物性を維持することができる。即ち、吸水速度が高速化された吸水性樹脂に前記水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を実施した後においても、当該吸水性樹脂の吸水速度を維持することができる。
【0143】
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の無加圧下吸収倍率(CRC)は、好ましくは23g/g以上であり、より好ましくは25g/g以上であり、さらに好ましくは27g/g以上であり、特に好ましくは28g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは40g/g以下であり、さらに好ましくは35g/g以下である。
【0144】
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)は、好ましくは15g/g以上であり、より好ましくは17g/g以上であり、さらに好ましくは20g/g以上であり、特に好ましくは23g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは40g/g以下であり、さらに好ましくは30g/g以下である。
【0145】
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂のVortex法による吸水速度は、好ましくは35秒以下であり、より好ましくは33秒以下であり、さらに好ましくは30秒以下である。下限値は低値ほど好ましく、特に限定されない。
【0146】
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、好ましくは10×10-7cm3・sec/g以上であり、より好ましくは20×10-7cm3・sec/g以上であり、さらに好ましくは30×10-7cm3・sec/g以上である。上限値は高値ほど好ましく、特に限定されない。
【0147】
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の残存モノマー量は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下である。下限値は低値ほど好ましく、特に限定されない。
【0148】
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の各物性値を、好ましくは上述した範囲とすることにより、前記水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を実施した後において、好適な範囲の各物性値を備えた吸水性樹脂を得ることができる。
【0149】
[3-1-4]表面架橋された吸水性樹脂の製造方法
水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。前記製造方法として、例えば、以下に示す方法を挙げることができる。ただし、表面架橋された吸水性樹脂の製造方法は、以下に示すすべての工程を含む必要はなく、少なくとも重合工程、乾燥工程および表面架橋工程を含んでいればよい。また、本発明の第1の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、以下に示す各工程を含み得るが、すべての工程を含む必要はない。
【0150】
[3-1-4-1]単量体水溶液の調製工程
本工程は、前述したアクリル酸(塩)系単量体を含む単量体、および少なくとも1種類の前述した内部架橋剤を含む単量体組成物の水溶液(以下、「単量体水溶液」と称することがある)を調製する工程である。尚、単量体のスラリー液を使用することもできるものの、本明細書では便宜上、単量体水溶液に関して説明することとする。
【0151】
(単量体)
本工程において使用される単量体は、[ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂]で説明したとおりである。
【0152】
(塩基性化合物による中和)
本発明の一実施形態において、アクリル酸は塩基性化合物を用いて部分的に中和されていることが好ましい。即ち、本発明の一実施形態では、ポリアクリル酸の酸基が部分的に中和されている吸水性樹脂が好ましい。
【0153】
前記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の吸水性能の観点から、強塩基性の化合物が選択される。尚、当該塩基性化合物は、取り扱い性の観点から、水溶液とされていることが好ましい。
【0154】
前記中和を行う時期は、重合前、重合中、重合後の何れでもよく、複数の時期または回数で中和を行うこともできる。また、吸水性樹脂の生産効率の観点から、連続式で中和することが好ましい。
【0155】
本発明においてアクリル酸(塩)を用いる場合、その中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上であって、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。当該中和率の範囲とすることで、吸水性樹脂の吸水性能の低下を抑制することができる。尚、前記中和率は、上述した重合前、重合中、重合後の何れの中和においても適用される。また、吸水性樹脂に関しても同様に適用される。
【0156】
ここで、ポリアクリル酸(塩)系樹脂の中和率とは、前記ポリアクリル酸(塩)系樹脂に含まれる酸基のモル数に対する、前記酸基のうちの部分的中和された酸基のモル数の割合を意味する。
【0157】
(内部架橋剤)
本工程において使用される内部架橋剤およびその使用量は、前述の[ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂]で説明したとおりである。
【0158】
本発明の一実施形態において、前記内部架橋剤を添加するタイミングは、重合体を均一に架橋できればよく、重合前の単量体水溶液や重合中または重合後の含水ゲル状重合体に内部架橋剤を添加する方法が挙げられる。中でも、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加する方法が好ましい。
【0159】
(単量体水溶液に添加される物質)
本発明の一実施形態では、前記単量体水溶液の調製時、前記重合反応および架橋反応の期間中、または前記重合反応および架橋反応の後の何れか一ヵ所以上で、吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記物質を単量体水溶液、反応中の溶液、または反応後の溶液に添加することができる。
【0160】
当該物質としては、具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)の架橋体等の親水性高分子;炭酸塩、アゾ化合物、各種気泡を生じる発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等の化合物;が挙げられる。
【0161】
前記親水性高分子の添加量は、前記単量体水溶液に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。また、前記化合物の添加量は、前記単量体水溶液に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。
【0162】
前記親水性高分子として水溶性樹脂または吸水性樹脂を用いると、グラフト重合体または吸水性樹脂、例えば、澱粉-アクリル酸(塩)共重合体、PVA-アクリル酸(塩)共重合体等が得られる。これらグラフト重合体または吸水性樹脂も、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の範疇に含まれる。
【0163】
(単量体組成物の濃度)
上述した単量体、内部架橋剤、その他の各物質および各成分(以下、「単量体成分」と表記する)を目的に応じて種々選択し、前記範囲を満たすようにそれぞれの量を規定して互いに混合することによって、単量体成分の混合物(単量体組成物)を作製し、それを水に入れることで単量体組成物の水溶液(単量体水溶液と呼称)が作製される。尚、本発明の第1の実施形態では、単量体を水溶液とすること以外に、水と親水性溶媒との混合溶液とすることもできる。
【0164】
また、単量体組成物の合計の濃度は、吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であって、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。当該単量体組成物の濃度は、下記式(A)から算出される;単量体組成物の濃度(質量%)=〔(単量体組成物の質量)/(単量体水溶液の質量)〕×100 式(A)尚、前記式(A)中、「単量体水溶液の質量」には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性有機溶媒の質量は含まれない。
【0165】
[3-1-4-2]重合工程
本工程は、単量体水溶液を重合させて含水ゲル状重合体(含水ゲル状架橋体)を得る工程である。好ましくは前記単量体水溶液の調製工程で得られた、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体および少なくとも1種類の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、単に「含水ゲル」と表記する)を得る工程である。
【0166】
(重合開始剤)
本発明の一実施形態で用いられる重合開始剤としては、重合させるモノマーの種類や重合条件等に合わせて、通常の吸水性樹脂の製造において利用されている重合開始剤の中から1種または2種以上選択して使用することができる。重合開始剤としては、例えば、熱分解型開始剤や光分解型開始剤が挙げられる。
【0167】
熱分解型開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物;等が挙げられる。
【0168】
光分解型開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。
【0169】
これらの中でもコスト、残存モノマーの低減能を考慮すると過硫酸塩が好ましい。また、前記過硫酸塩または過酸化物等の酸化性重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤とすることもできる。前記還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L-アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられる。
【0170】
前記重合開始剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体組成物に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.010モル%以上であって、好ましくは1.000モル%以下、より好ましくは0.500モル%以下、さらに好ましくは0.100モル%以下である。また、前記還元剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.0005モル%以上であって、好ましくは0.0200モル%以下、より好ましくは0.0150モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水性樹脂が得られる。
【0171】
また、本発明の一実施形態においては、前記重合反応を、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって開始させてもよい。また、活性エネルギー線の照射と前記重合開始剤とを併用してもよい。
【0172】
(重合形態)
本発明の一実施形態に適用される重合形態としては、水溶液重合、逆相懸濁重合、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈澱重合等が挙げられる。中でも、重合の制御の容易性や吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは水溶液重合または逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合が選択される。水溶液重合は特開平4-255701号公報等に記載されている。逆相懸濁重合は国際公開第2007/004529号、国際公開第2012/023433号等に記載されている。
【0173】
前記水溶液重合の好ましい形態としては、高温開始重合、高濃度重合、発泡重合等がある。当該「高温開始重合」とは、重合開始時の単量体水溶液の温度を、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上、特に好ましくは50℃以上であって、好ましくは単量体水溶液の沸点以下とする重合形態を意味する。また「高濃度重合」とは、重合開始時の単量体濃度を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であって、好ましくは単量体水溶液の飽和濃度以下とする重合形態を意味する。「発泡重合」とは、発泡剤または気泡を含む前記単量体水溶液を重合する重合形態を意味する。尚、これら重合形態は、それぞれ単独で実施してもよいし、二つ以上を併用して実施してもよい。また、前記水溶液重合の重合形態は、バッチ式でもよく連続式でもよいが、生産効率の観点から連続式が好ましい。
【0174】
さらに、上述の連続式の水溶液重合としては、米国特許第4893999号、米国特許第6906159号、米国特許第7091253号、米国特許第7741400号、米国特許第8519212号、特開2005-36100号公報等に記載された連続ベルト重合や、米国特許第6987151号等に記載された連続ニーダー重合が挙げられる。
【0175】
前記発泡重合における気泡の分散方法としては、単量体水溶液に溶存している気体を溶解度の低下によって気泡として分散させる方法、外部から気体を導入して気泡として分散させる方法、単量体水溶液に発泡剤を添加して発泡させる方法等が挙げられる。また、目的とする吸水性樹脂の物性に応じて、前記分散方法を適宜併用して実施してもよい。
【0176】
前記外部から気体を導入する場合、当該気体として、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、オゾン等や、これら気体の混合気体が挙げられる。重合性やコストの観点から、好ましくは窒素や炭酸ガス等の不活性ガスが使用され、より好ましくは窒素が使用される。
【0177】
使用することができる発泡剤として、アゾ化合物や有機または無機のカーボネート溶液、分散液、0.1μm~1000.0μmの粒子径の粉末が挙げられる。中でも無機のカーボネートが好ましく、具体的には炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩を使用することができる。
【0178】
発泡重合で得られた発泡形状の含水ゲルをゲル粉砕することで乾燥が容易となる。また、発泡形状の吸水性樹脂とすることで、吸水性樹脂の吸水速度を向上させることができる。発泡形状であることは、電子顕微鏡で吸水性樹脂粒子の表面の孔、例えば直径が1μm以上、100μm以下の孔を確認することで判断できる。孔は、吸水性樹脂粒子一つ当たり、好ましくは1個以上、より好ましくは10個以上であって、好ましくは10000個以下、より好ましくは1000個以下であり、前記発泡重合で制御することができる。
【0179】
[3-1-4-3]ゲル粉砕工程
本工程は、前記重合工程の途中、および/または、重合工程後に実施される、含水ゲルを粉砕する工程である。具体的には、前記重合工程において含水ゲルを粉砕してもよく、前記重合工程後に含水ゲルを粉砕してもよい。即ち、本工程は、含水ゲルをゲル粉砕して粒子状含水ゲル架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」と表記する)を得る工程である。尚、後述する粉砕工程での「粉砕」と区別するために、本工程は「ゲル粉砕」と表記する。また、ゲル粉砕の対象は前記重合工程で得られた含水ゲルだけでなく、特に言及しない限り、後述するリサイクルされた造粒ゲルが含まれている場合がある。他の工程も特に言及しない限り、同様の趣旨である。
【0180】
前記ゲル粉砕とは、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押出し機、カッターミル等のゲル粉砕機を用いて、含水ゲルを所定の大きさに調整することを指す。
【0181】
含水ゲルをゲル粉砕する場合、好ましくは温水をゲル粉砕機に添加することが好ましい。温水を添加することによって、粘着性が低く、通気性のよい粒子状含水ゲルが得られるため、乾燥し易くなるので好ましい。温水の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であって、好ましくは100℃以下である。
【0182】
ゲル粉砕の実施形態や稼働条件等に関しては、前記水溶液重合では、連続水溶液重合を記載する文献に併せて記載される方法が採用される。また、国際公開第2011/126079号パンフレットに記載された内容も本発明の第1の実施形態に好ましく適用される。尚、重合形態がニーダー重合である場合には、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に実施されていることになる。また、本発明の第1の実施形態でゲル粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水性樹脂を得ることができる。
【0183】
また、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、微粉リサイクル工程において、取り除かれた微粉と水性液とを混合して造粒ゲルを得る造粒工程、ゲル粉砕工程の終了後から乾燥工程で乾燥が完了するまでの少なくとも一つの工程、および/または工程間で、含水ゲルに、前記造粒ゲルを添加する造粒ゲル添加工程、を含むことがより好ましい。そして、本発明の第1の実施形態のゲル粉砕工程におけるゲル粉砕では、ゲル粉砕エネルギーを適切に制御することがより好ましい。下記所定のゲル粉砕エネルギーでゲル粉砕して得られた粒子状含水ゲルは、当該粒子状含水ゲルと造粒ゲルとの混合物を通気バンド式乾燥機で乾燥させるときに積層させても、当該混合物が密に積層され難い。従って、通常の条件でゲル粉砕して得られた粒子状含水ゲルを用いた場合と比べて、極めて短時間で乾燥することができる。さらに、当該粒子状含水ゲルは、後述する造粒ゲルと馴染み易く、均一に乾燥され易い。また、得られる吸水性樹脂の物性面においても、吸水速度、例えば国際公開第2009/016055号に記載されているFSRや、JIS K 7224(1996年度)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」に記載されているVortexでの評価が向上する。
【0184】
ここで、本発明の一実施形態における「ゲル粉砕エネルギー」とは、含水ゲルをゲル粉砕するとき、ゲル粉砕装置が必要とする単位質量、即ち、含水ゲルの単位質量当たりの機械的エネルギーを指し、ジャケットを加熱冷却するエネルギーや投入する水およびスチームのエネルギーは含まれない。尚、「ゲル粉砕エネルギー」は、英語表記の「Gel Grinding Energy」から「GGE」と略称する。
【0185】
GGEは、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、以下の式(I)によって算出される;
GGE[J/g]={√3×電圧×電流×力率×モーター効率}/
{1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲルの質量} …式(I)
前記「力率」および「モーター効率」は、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって変化する装置固有の値であり、0以上、1以下までの値を採る。これら値は、装置メーカー等への問い合わせ等で知ることができる。また、ゲル粉砕装置が単相交流電力で駆動する場合、GGEは、前記式(I)中の「√3」を「1」に変更して算出することができる。尚、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲルの質量の単位は[g/s]である。
【0186】
前記GGEにおける「力率」および「モーター効率」は、ゲル粉砕時での値を採用する。空運転時の力率およびモーター効率の値は、空運転時の電流値が小さいこともあり、近似的に前記式(I)のように定義する。前記式(I)における「1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲルの質量」[g/s]とは、例えば、含水ゲルが定量フィーダーで連続的に供給される場合、[g/s]に換算した値をいう。但し、含水ゲルには後述するように、リサイクルされた造粒ゲルが含まれている場合がある。
【0187】
本発明の一実施形態においてゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE)は、好ましくは100J/g以下、より好ましくは80J/g以下、さらに好ましくは60J/g以下であって、好ましくは20J/g以上、より好ましくは25J/g以上、さらに好ましくは30J/g以上である。ゲル粉砕エネルギーを前記範囲内に制御することで、適切なせん断・圧縮力を含水ゲルに与えながらゲル粉砕することができる。
【0188】
尚、ニーダー重合後におけるスクリュー押出機の使用や、複数のスクリュー押出機の使用等、ゲル粉砕が複数の装置で行われる場合には、それぞれの装置で消費されたエネルギーの合計をゲル粉砕エネルギー(GGE)とする。
【0189】
また、ゲル粉砕エネルギーを上述したように制御する場合には、前記温度の温水の添加と組み合わせて行うことで、より優れた効果が得られる。さらに、通常のゲル粉砕後に、前記ゲル粉砕エネルギーに基づくゲル粉砕を行ってもよい。
【0190】
ゲル粉砕工程によって細粒化された粒子状含水ゲルの粒子径は、乾燥のし易さや、得られる吸水性樹脂の物性の観点から、0.1mm~10.0mmの範囲が好ましい。また粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)は、好ましくは0.1mm~5.0mm、より好ましくは0.1mm~2.0mmである。粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)が前記範囲であると、乾燥が十分に行われる。本発明の第1の実施形態では乾燥工程に供される含水ゲルの質量平均粒子径は、好ましくは前記範囲内であり、より好ましくは前記粒子径、および前記質量平均粒子径の両方を満足することである。
【0191】
前記粒子状含水ゲルの粒度として、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.2~1.5、より好ましくは0.2~1.3、さらに好ましくは0.2~1.2である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、粒度分布の狭さを示し、その値が小さいほど均一な粒子径となり、均等に乾燥させることができるという利点がある。しかしながら、当該粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.2未満とするには、ゲル粉砕前の重合時における粒度制御や、ゲル粉砕後における粒子状含水ゲルの分級等の特殊な操作を必要とするため、生産性やコストの観点から、実質的には実施することが難しい。
【0192】
尚、後述する吸水性樹脂の比表面積を高めるには、国際公開第2011/126079号パンフレットに記載されたゲル粉砕方法を用いることが好ましい。また、当該ゲル粉砕方法を上述した発泡重合と組み合わせてもよい。
【0193】
また、均一で効率的な乾燥のために、粒子状含水ゲルの含水率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上であって、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
【0194】
[3-1-4-4]乾燥工程
本工程は、粉砕された含水ゲルを乾燥する工程であり、具体的には、前記粒子状含水ゲル、または造粒ゲルを添加した場合には造粒ゲルと粒子状含水ゲルの両方を、所望する固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。当該固形分、即ち、前記ゲル100質量%から含水率を引いた値は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であって、好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下である。乾燥重合体の固形分を前記範囲内とすることで、粉砕や分級、表面架橋を効率的に実施することができる。尚、本明細書において「乾燥が完了」とは、固形分が80質量%に到達した状態を指す。ところで、本工程では乾燥重合体がブロック状になっており、さらにブロックの上下、中央/端で含水率が異なっている場合がある。この場合には、様々な位置から乾燥重合体を適宜取得し、必要により砕いてから含水率を測定して平均すればよい。
【0195】
本明細書において、前記所定の固形分を下回る乾燥重合体を、未乾燥物と表記することがある。乾燥工程における「被乾燥物」または「粒子状含水ゲル」には、粒子状含水ゲルと造粒ゲルの両方を含む場合がある。また、本発明の第1の実施形態の乾燥工程は、特に粒子状含水ゲルと造粒ゲルの両方を含む場合により効果的な条件である。尚、他の工程においても同様に、含水ゲルおよびその処理物に、造粒ゲルおよびその処理物が含まれる場合がある。
【0196】
乾燥工程における乾燥方法は、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥、攪拌乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、攪拌乾燥、および熱風乾燥が好ましい。攪拌乾燥としては、パドルドライヤーまたは回転ドラム式乾燥機等の攪拌乾燥機で行うことが好ましい。また熱風乾燥は、通気回分式、または通気ベルト上で熱風乾燥を行う通気バンド式乾燥機で行うことが好ましい。通気バンド式乾燥機を用いることで、乾燥重合体や乾燥途中の粒子状含水ゲル等の被乾燥物の物理的破損や摩擦による微粉末の発生等を防止しつつ、効率的な乾燥が行える。
【0197】
本発明の一実施形態における乾燥温度、即ち、熱風の温度は、乾燥効率を考慮すると、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。また、乾燥時間は、好ましくは10分間~120分間、より好ましくは20分間~90分間、さらに好ましくは30分間~60分間である。当該範囲内の乾燥温度および乾燥時間とすることで、得られる吸水性樹脂の物性を所望する範囲とすることができる。尚、他の乾燥条件に関しは、乾燥に供する粒子状含水ゲルや造粒ゲルの含水率、総質量および目的とする固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行うときには、国際公開第2006/100300号パンフレット、同第2011/025012号パンフレット、同第2011/025013号パンフレット、同第2011/111657号パンフレット等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0198】
[3-1-4-5]粉砕工程、分級工程
粉砕工程は、乾燥後の重合体を粉砕する工程であり、分級工程は、粉砕された重合体から微粉を取り除く工程である。具体的には、前記乾燥工程を経て得られる乾燥重合体を、粉砕工程で粉砕し、所望する範囲の粒度に分級工程で調整して、架橋重合体を得る工程である。乾燥後の粉砕工程を経ることで、粒子状の架橋重合体(以下単に架橋重合体ともいう)を得ることができる。
【0199】
前記粉砕工程で使用される粉砕機としては、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機や、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。中でも、粉砕効率の観点から、好ましくはロールミルが選択される。また、これら粉砕機を複数併用することもできる。
【0200】
前記分級工程での粒度の調整方法としては、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。中でも、分級効率の観点から、好ましくは篩分級が選択される。尚、粉砕のし易さやの観点から、付加的に粉砕工程前に分級工程を行ってもよい。
【0201】
架橋重合体の粒度分布は、質量平均粒子径(D50)が好ましくは300μm以上、600μm以下であって、150μm未満の粒子の割合が5質量%以下である。質量平均粒子径(D50)の上限は、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは450μm以下、特に好ましくは400μm以下である。また、150μm未満の粒子の割合は、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.27以上であって、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.45以下、さらに好ましくは0.43以下、特に好ましくは0.40以下、最も好ましくは0.35以下である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、粒度分布の狭さを示し、その値が小さいほど均一な粒子径となり、粒子の偏析が少なくなるという利点がある。好ましくは、質量平均粒子径(D50)と150μm未満の粒子の割合を満足することであり、より好ましくは質量平均粒子径(D50)、150μm未満の粒子の割合、および対数標準偏差を満足することであり、前記各範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0202】
なお、質量平均粒子径(D50)と対数平均標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号の「(3) Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に記載された測定方法によって測定され得る。
【0203】
上述した粒度は、粉砕工程および分級工程後の基材吸水性樹脂にも適用される。そのため、表面架橋を行う場合は、架橋重合体で調整された前記範囲の粒度を維持するように、表面架橋工程で表面架橋処理されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度が調整されることがより好ましい。したがって、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂も、質量平均粒子径(D50)と150μm未満の粒子の割合とが上述の範囲内であることを満足することが好ましく、質量平均粒子径(D50)、150μm未満の粒子の割合、および粒度分布の対数標準偏差(σζ)が上述の範囲内であることを満足することがより好ましい。さらに好ましくは、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、質量平均粒子径(D50)が300~600μmであり、150μm未満の粒子の割合が5質量%以下であり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20~0.50である。
【0204】
[3-1-4-6]表面架橋工程
本工程は、必要に応じて上述した各工程を経て得られる架橋重合体の表面層に、さらに架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、熱処理工程、冷却工程等を含む構成となっている。当該表面架橋工程において、架橋重合体の表面でラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等が起こり、基材吸水性樹脂が得られる。
【0205】
表面架橋工程時における架橋重合体の最高到達温度(粉温)、つまり、熱処理工程時における架橋重合体の最高到達温度(粉温)は、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは190℃以上である。
【0206】
[3-1-4-6-1]混合工程
本工程は、表面架橋剤を含む溶液(以下、「表面架橋剤溶液」と表記する)を混合装置内で架橋重合体と混合することで、基材吸水性樹脂を得る工程である。
【0207】
(表面架橋剤)
本発明の第1の実施形態においては、表面架橋時に表面架橋剤が使用される。当該表面架橋剤については、前述の[ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂]で説明したとおりである。
【0208】
前記表面架橋剤の使用量、複数種類を使用する場合はその合計量は、架橋重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~10.00質量部、より好ましくは0.01質量部~5.00質量部、さらに好ましくは0.01質量部~2.00質量部である。表面架橋剤の使用量を当該範囲内とすることで、架橋重合体の表面層に最適な架橋構造を形成することができ、高物性の吸水性樹脂が得られる。
【0209】
前記表面架橋剤は、水溶液として架橋重合体に添加することが好ましい。この場合、水の使用量は、架橋重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~20.0質量部、より好ましくは0.3質量部~15.0質量部、さらに好ましくは0.5質量部~10質量部である。水の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋剤溶液の取り扱い性が向上し、架橋重合体に対して表面架橋剤を均等に混合することができる。
【0210】
また、親水性有機溶媒を必要に応じて前記水と併用して、前記表面架橋剤溶液とすることもできる。この場合、親水性有機溶媒の使用量は、架橋重合体100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。当該親水性有機溶媒としては、具体的には、メチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール等の多価アルコール類;等が挙げられる。しかしながら、これら親水性有機溶媒の使用は、できるだけ少ない使用量に制限されることが好ましい。
【0211】
また、下記「[3-1-4-7]添加剤とその添加工程」で添加される各種の添加剤を、5質量部以下の範囲内で、前記表面架橋剤溶液に添加したり、混合工程で別途添加したりすることもできる。
【0212】
(混合方法、混合条件)
前記架橋重合体と前記表面架橋剤溶液との混合は、表面架橋剤溶液を予め作製しておき、当該溶液を架橋重合体に対して、好ましくは噴霧または滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が選択される。
【0213】
前記混合を行う混合装置は、架橋重合体と表面架橋剤とを均一かつ確実に混合するのに必要なトルクを有していることが好ましい。当該混合装置は、高速攪拌型混合機が好ましく、高速攪拌型連続混合機がより好ましい。尚、当該高速攪拌型混合機の回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは300rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0214】
本工程に供給される架橋重合体の温度は、表面架橋剤溶液との混合性や加湿混合物の凝集性の観点から、好ましくは35℃~80℃、より好ましくは35℃~70℃、さらに好ましくは35℃~60℃である。また、混合時間は、好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上であって、好ましくは1時間以下、より好ましくは10分間以下である。
【0215】
[3-1-4-6-2]熱処理工程
本工程は、前記混合工程で得られた基材吸水性樹脂に熱を加えて、架橋重合体の表面上で架橋反応させる工程である。前記基材吸水性樹の熱処理は、当該基材吸水性樹を静置状態で加熱してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で加熱してもよいものの、加湿混合物全体を均等に加熱できる点において、攪拌下で加熱することが好ましい。前記熱処理を行う熱処理装置は、前記観点から、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。
【0216】
本工程における加熱温度は、表面架橋剤の種類および量、並びに吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは150℃~250℃、より好ましくは170℃~250℃、さらに好ましくは170℃~230℃、よりさらに好ましくは180℃~230℃である。また、加熱時間は、好ましくは少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも7分間である。加熱温度と加熱時間とを前記範囲内に制御することにより、得られる吸水性樹脂の吸水性能が向上するため好ましい。
【0217】
[3-1-4-6-3]冷却工程
本工程は、前記熱処理工程後、および/または乾燥工程後に、必要に応じて設けられる任意の工程である。本工程は、前記熱処理工程を終えた高温の吸水性樹脂を所定の温度まで強制冷却し、表面架橋反応を速やかに終了させる工程である。
【0218】
前記吸水性樹脂の冷却は、静置状態で冷却してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で冷却してもよいものの、吸水性樹脂全体を均等に冷却できる点において、攪拌下で冷却することが好ましい。前記冷却を行う冷却装置は、前記観点から、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。尚、これら冷却装置は、熱処理工程で使用される熱処理装置と同じ仕様とすることもできる。熱処理装置の熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるからである。
【0219】
本工程における冷却温度は、熱処理工程での加熱温度、吸水性樹脂の吸水性能等に応じて適宜設定すればよく、好ましくは40℃~100℃、より好ましくは50℃~90℃、さらに好ましくは50℃~70℃以下である。
【0220】
[3-1-4-7]添加剤とその添加工程
[3-1-4-7-1]表面改質剤
表面改質剤は、吸水性樹脂の粒子表面を改質する目的で添加される添加剤で、具体的には、通液性向上剤、吸湿下のAnti-Caking剤、粉体の流れ制御剤、吸水性樹脂のバインダー等が挙げられる。特に通液性向上の観点から、多価金属塩、カチオン性ポリマー、無機微粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を使用することができ、必要に応じて2種類以上を併用することができる。前記表面改質剤の添加量は、選択される化合物に応じて、適宜設定される。表面改質剤の添加工程は、吸水性樹脂の粒子表面を改質する目的から、好ましくは重合工程以降、より好ましくは乾燥工程以降、さらに好ましくは表面架橋工程以降に行われる。また、表面改質剤の添加は、任意の1以上の工程で行うことができる。
【0221】
(多価金属塩)
多価金属塩を使用する場合、多価金属塩の多価金属カチオンは、好ましくは2価以上、より好ましくは2価以上、好ましくは4価以下、さらに好ましくは3価または4価である。また、使用できる多価金属としては、アルミニウム、ジルコニウム等が挙げられる。従って、本工程で使用することができる多価金属塩としては、乳酸アルミニウム、乳酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム等が挙げられる。中でも、食塩水流れ誘導性(SFC)の向上効果の観点から、乳酸アルミニウムまたは硫酸アルミニウムがより好ましく、硫酸アルミニウムがさらに好ましい。
【0222】
前記多価金属塩の添加量としては、吸水性樹脂1gに対して、好ましくは0モル以上であって、好ましくは5.0×10-5モル未満、より好ましくは4.0×10-5モル未満、さらに好ましくは3.0×10-5モル未満である。
【0223】
さらに、前記多価金属を含む溶液には、多価金属の吸水性樹脂内への浸透性を調整する剤として、さらに水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の、1価の金属化合物を含んでいてもよい。
【0224】
(カチオン性ポリマー)
カチオン性ポリマーを使用する場合、当該カチオン性ポリマーとしては、米国特許第7098284号に記載されている物質が挙げられる。中でも、通液性向上の観点から、ビニルアミンポリマーがより好ましい。また、カチオン性ポリマーの質量平均分子量は、5000以上、1000000以下が好ましい。
【0225】
前記カチオン性ポリマーは、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上であって、好ましくは5.0質量部未満、より好ましくは4.0質量部未満、さらに好ましくは3.0質量部未満となるように添加すればよい。
【0226】
(無機微粒子)
無機微粒子を使用する場合、無機微粒子としては、米国特許第7638570号に記載されている物質が挙げられる。中でも、通液性向上の観点から、二酸化ケイ素が好ましい。
【0227】
前記無機微粒子は、一次粒子径が100nm未満であることが好ましく、80nm未満であることがより好ましく、50nm未満であることがさらに好ましい。また、前記無機微粒子の形態は粉末状であってもよく、懸濁状態の溶液の形態であってもよい。その添加量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上であって、好ましくは5.0質量部未満、より好ましくは4.0質量部未満、さらに好ましくは3.0質量部未満となるように添加すればよい。尚、前記無機微粒子を懸濁状態の溶液の形態にて吸水性樹脂に添加する場合には、当該無機微粒子の添加量は、当該懸濁状態の溶液における当該無機微粒子の固形分を基準として算出される。
【0228】
[3-1-4-7-2]その他の添加剤
その他の添加剤としては、キレート剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、リン原子を有する化合物、酸化剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維、テルペン系芳香性化合物、フェノール系芳香性化合物等の芳香性物質等が挙げられ、これらは1つまたは2つ以上を使用することができる。その他の添加剤としては、好ましくはキレート剤、より好ましくはアミノ多価カルボン酸またはアミノ多価燐酸が好ましく、具体的には、特開平11-060975号公報、国際公開第2007/004529号パンフレット、国際公開第2011/126079号パンフレット、国際公開第2012/023433号パンフレット、特表2009-509722号公報、特開2005-097519号公報、特開2011-074401号公報、特開2013-076073号公報、特開2013-213083号公報、特開昭59-105448号公報、特開昭60-158861号公報、特開平11-241030号公報、特開平2-41155号公報等に記載のキレート剤が挙げられる。
【0229】
その他の添加剤(好ましくはキレート剤)は、モノマーまたは吸水性樹脂に対して、好ましくは0.001質量%~1.000質量%の範囲で添加または含有される。
【0230】
前記添加剤は、上述した各工程、即ち、単量体水溶液の調製工程、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程から選ばれる少なくとも一つの工程の前後、またはその工程の途中で添加することができる。好ましくは、重合工程以降の何れかの工程の前後、またはその工程の途中で添加される。
【0231】
[3-1-4-7-3]添加剤の添加工程
添加剤を吸水性樹脂に添加する場合、当該添加剤が液体、または水等の水性媒体の溶液のときには、当該液体または溶液を吸水性樹脂に対して噴霧し、十分なトルクをかけて吸水性樹脂と添加剤とを均一かつ確実に混合することが好ましい。一方、前記添加剤が粉状等の固体である場合には、吸水性樹脂とドライブレンドしてもよく、水等の水性液体をバインダーとして使用してもよい。
【0232】
前記混合に使用する装置としては、具体的には、攪拌型混合機、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられる。尚、攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0233】
[3-1-4-8]整粒工程
本発明の一実施形態においては、上述した工程以外に、必要に応じて整粒工程を実施することができる。整粒工程とは、前記表面架橋工程を経て得られる表面架橋後の吸水性樹脂が水性液体添加工程および水性液体添加後の乾燥工程を経た後に、所望の範囲の粒度に調整して最終製品として出荷可能な状態にある吸水性樹脂、即ち、吸水剤を得る工程である。但し、表面架橋工程前に粉砕工程および分級工程が無い場合は、表面架橋工程後の後述の操作を粉砕工程、分級工程とする。整粒工程での粒度調整方法は、前記分級工程と同様の調整方法を採用することができる。さらに、前記表面架橋工程や表面改質剤の添加工程で吸水性樹脂が凝集した場合に、解砕、例えば軽い粉砕を行ってもよい。また、粒度調整後の粒度分布も用途に応じて適宜調整することができ、好ましくは前記分級工程と同定度である。従って、所望の質量平均粒子径(D50)、当該質量平均粒子径(D50)の割合、および対数標準偏差等を満足するように篩等による分級等を行えばよい。
【0234】
[3-1-4-9]微粉リサイクル工程
本工程は、前記分級工程で取り除かれた微粉を前記乾燥工程の乾燥が完了する以前にリサイクルする工程である。詳細には、前記吸水性樹脂の製造工程において得られる微粉を、前記製造工程、好ましくは前記乾燥工程以前にリサイクルして吸水性樹脂を製造する工程である。リサイクルされる微粉は、好ましくは前記分級工程、より好ましくは前記分級工程および前記整粒工程等で取り除かれた微粉である。尚、微粉が得られた吸水性樹脂の製造工程と厳密に同一の吸水性樹脂の製造工程へリサイクルする必要はなく、本発明の第1の実施形態の趣旨を損なわない程度に異なる他の吸水性樹脂の製造工程へリサイクルしてもよい。例えば、ある製造ラインで発生した微粉を隣の製造ラインへリサイクルしてもよいし、同一の製造ラインで微粉を取り除いてからリサイクルするまでに重合条件等を変更してもよい。
【0235】
[3-1-4-9-1]造粒工程
本工程は、前記取り除かれた微粉と水性液を混合して造粒ゲルを得る工程である。造粒ゲルとは、光学顕微鏡によって観察したとき個々の粒子が複数集まって凝集または融着して大きな粒子状となっているゲルであり、好ましくは分級操作や搬送操作によって損壊しない程度の強度を有するゲルである。
【0236】
(微粉)
本発明の第1の実施形態においては、吸水性樹脂の製造において得られる全ての微粉を対象とするものの、好ましくは前記分級工程、より好ましくは前記分級工程および前記整粒工程で取り除かれた微粉を対象とし、当該微粉に水性液を添加して造粒する。分級工程から取り除かれた微粉と整粒工程から取り除かれた微粉の混合比率(質量比)は、好ましくは99:1~50:50、より好ましくは98:2~60:40、さらに好ましくは95:5~70:30である。整粒工程で取り除かれた微粉は、表面架橋工程、場合によっては表面架橋工程に加えて、上述した「表面改質剤」に記載した表面改質剤の添加工程を経ているので、造粒工程に所定比率含まれていると、造粒ゲルの凝集性が低減して有利である。さらに、本発明の第1の実施形態では例えば、各製造工程中のバックフィルター等で取り除かれた微粉を造粒に用いてもよく、また、別々の工程で取り除かれて得られた微粉や別の製造過程(別の製造装置)で取り除かれて得られた微粉を混合して用いることもできる。また、微粉は、共に乾燥する含水ゲルと同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよいものの、共に乾燥する含水ゲルに由来する同一組成の微粉を用いることが好ましい。
【0237】
造粒に使用する微粉のサイズとしては、吸水性樹脂の最終製品のサイズ未満であることが好ましい。例えば、微粉は、JIS標準篩分級により規定される質量平均粒子径(D50)が好ましくは150μm以下、より好ましくは106μm以下である。微粉のD50の下限は、好ましくは38μm以上、より好ましくは45μm以上である。本工程では微粉を対象としているものの、最終製品のサイズを超える凝集物であっても、適宜粉砕し、微粉として造粒に使用することができる。好ましくは、JIS標準篩分級により規定される150μm未満の粒子径を有する粒子を、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、さらに好ましくは90質量%~100質量%以下含んでいることが望ましい。また、微粉の形状としては、造粒強度の面から、逆相懸濁重合で得られた球形よりも、水溶液重合で得られた不定形であることが好ましい。また、上述したように、前記微粉は、吸水性樹脂の製造において一般的に行われている表面架橋工程後に取り除いた微粉であってもよいし、表面架橋工程前に取り除いた微粉であってもよいし、それらの混合物であってもよい。
【0238】
前記微粉、好ましくは前記微粉を所定比率で混合した混合物に、水性液を添加して造粒ゲルを得る。造粒ゲルは、前記単独の工程、或いは複数の工程から得られる様々な粒子径を有する微粉を使用している。造粒工程において、前記微粉と前記水性液との混合によって前記範囲を超える巨大なゲル状物が得られた場合には、当該巨大なゲル状物は篩等の分級手段によって除去することが好ましい。また、除去された当該巨大なゲル状物は、必要に応じて乾燥、粉砕して再利用することができる。
【0239】
水性液と混合するときの微粉の温度は、好ましくは40℃~120℃、より好ましくは50℃~100℃、さらに好ましくは60℃~90℃である。微粉の温度を高めることで微粉、および水性液の混合性が向上して所望の造粒ゲルが得られ易くなる。一方、微粉の温度を高くしすぎると加熱コストが高くなる。微粉の温度は必要に応じて熱風等による外部からの加熱、乾燥工程での加熱後の保温、或いは室温の空気の吹きつけ等による冷却によって適宜調節することができる。好ましくは、微粉を蒸気トレース等の加熱手段を持つ容器中で加熱または保温する。
【0240】
(水性液)
微粉との混合に用いる水性液としては、具体的には、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;等を含んだ水溶液等が挙げられる。水性液は、物性や造粒強度の面から、好ましくは90質量%~100質量%、より好ましくは99質量%~100質量%の範囲内が水であることが好ましく、水のみからなることが特に好ましい。また、前記水性液には、本発明の第1の実施形態の効果を損なわない範囲で、架橋剤、キレート剤、界面活性剤、重合開始剤、酸化剤、還元剤、親水性高分子等の他の添加剤を少量含有させることもできる。添加剤は、1種、或いは2種以上添加してもよく、2種以上添加する場合の異同は問わない。例えば、重合工程に記載された重合開始剤や還元剤を添加した水性液を使用することで、造粒ゲルと含水ゲルの残存モノマーを低減することができる。好ましい重合開始剤は、過硫酸塩、好ましい還元剤は、(重)亜硫酸(塩)である。例えば、酸化剤を添加した水性液を使用することで、造粒ゲルを乾燥したときの、吸水倍率等の物性の低下を抑えることができる場合がある。好ましい酸化剤は、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過酸化物から選ばれる少なくとも一つの酸化剤であり、より好ましくは、過酸化水素である。例えば、界面活性剤を添加した水性液を使用することで、造粒ゲルに界面活性剤を含有させることができ、当該造粒ゲル同士の凝集を効果的に抑制することができる。また、架橋剤および/または親水性高分子を添加した水性液を使用することによって、前記造粒ゲルの凝集強度を高くし、後工程での再微粉化を抑制することができる。前記架橋剤は上述した内部架橋剤や表面架橋剤から、前記親水性高分子は上述した単量体水溶液に添加される親水性高分子から、それぞれ選択される。
【0241】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が例示される。
【0242】
尚、微粉が、上述の架橋剤、キレート剤、界面活性剤、重合開始剤、酸化剤、還元剤等の添加剤を含有している場合は、水性液にあえて添加剤を加えなくてもよいか、または、水性液に不足分のみの添加剤を加えればよい。微粉に添加剤の添加工程の項で記載したキレート剤、界面活性剤、酸化剤、還元剤等が含まれていることが特に好ましい。
【0243】
微粉と水性液とを混合して造粒する場合、予め加熱した水性液を使用することが好ましい。加熱した水性液を使用することで微粉を短時間で均一に造粒することができ、生産性が向上する。水性液の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であって、好ましくは水性液の沸点以下、より好ましくは100℃以下である。尚、水性液の沸点は、塩類や溶媒の添加、減圧や加圧等の圧力等によって調整することができる。また、別の方法として、水蒸気と常温の水性液を同時に添加して、実質的に前記温度にしてもよい。
【0244】
水性液の添加量は、微粉100質量部(有姿)に対して、好ましくは100質量部未満、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下であって、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。水性液の添加量が100質量部以下の場合、乾燥に掛かる負荷を低く抑えられる。一方、水性液の添加量が10質量部以上の場合、造粒強度が十分となると供に、微粉の混合が均一になって造粒物が損壊しにくくなる。
【0245】
(混合装置)
本発明の第1の実施形態では、水性液と微粉との混合に用いる混合装置は特に限定されない。例えば容器固定型混合機であれば、機械攪拌型混合機が好ましい。具体的にはタービューライザー(ホソカワミクロン社製)、レディゲミキサー(レディゲ社製)、およびモルタルミキサー(西日本試験機社製)等が例示される。また、混合には、バッチ式混合機および連続式混合機の何れを用いてもよい。
【0246】
本発明の第1の実施形態では、好ましくは加熱した水性液と加熱した微粉とを前記混合装置で混合する。本発明の第1の実施形態では、水性液と微粉の加熱に加えて、混合装置内、具体的には混合装置の壁面および/または攪拌羽根等の攪拌手段が加熱されていることがより好ましい。このように混合装置内、水性液、微粉の何れもが所定の温度に加熱された状態で混合すると、より効率的に、前記巨大なゲル状物の生成を抑制しつつ、所望の粒子径を有する造粒ゲルを容易に得ることができる。本発明の第1の実施形態においては、微粉、水性液、混合装置の何れも加熱されていなくても、このような効果が得られるものの、好ましくは少なくとも一つ、より好ましくは二つ、さらに好ましくは全てが所定の温度に加熱されていることで、より優れた効果が得られる。
【0247】
前記混合時の混合装置内、好ましくは混合装置の内壁面、および/または攪拌手段の加熱温度は、好ましくは50℃~120℃、より好ましくは55℃~100℃、さらに好ましくは60℃~90℃、特に好ましくは65℃~90℃、最も好ましくは70℃~90℃である。混合装置、好ましくは内壁面、攪拌手段の何れか、より好ましくは両方を加熱することで微粉を短時間で均一に造粒することができ、生産性が向上する。混合装置内の温度は、例えば加熱した気体を供給したり、伝導電熱等によって適宜調整したりすることができる。
【0248】
本発明の第1の実施形態では、微粉と水性液を混合するとき、高速混合により造粒することが好ましい。高速混合することで前記巨大なゲル状物の生成を抑制できるため、前記巨大なゲル状物が生成した場合に必要になる巨大な混合力が不要となり、またゲル状の塊が混練状態となって主鎖の切断や絡まり等が発生し、その結果、吸水性樹脂が劣化するという問題を回避することができる。
【0249】
前記高速混合とは、混合装置内で原料である微粉、および水性液の接触時点から、造粒ゲルの生成までの時間が短いことを意味する。即ち、混合装置内に原料を投入してから造粒ゲルが取り出されるまでの時間が短いことをいう。混合時間は、好ましくは3分間以下、より好ましくは1分間以下であって好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上である。混合時間が5秒間以上であると、水性液と微粉とが均一に混合され、一体化した巨大なゲル状物となる虞がない。また、混合時間が3分間以下であると、得られる吸水性樹脂の水可溶分の増加や加圧下吸水倍率の低下等、吸水性樹脂の性能低下を招く虞がない。
【0250】
従って、高速混合を達成するための手段としては、原料を短時間で混合装置に投入することが望ましい。水性液を噴霧する等の方法で徐々に添加する等、何れか一方、或いは両方の原料の投入時間が長いと、混合時間も長くなるため、微粉が大きな凝集塊となったり、長時間の混練によって吸水性樹脂が劣化したりすることがある。混合装置には、微粉と水性液を同時、或いは異なるタイミングで一方の投入後に他方を投入してもよい。従って、投入が同時の場合は両方の原料、または異なるタイミングの場合は後に投入する原料の投入開始から投入終了までの時間は、好ましくは60秒間以下、より好ましくは30秒間以下、さらに好ましくは10秒間以下である。
【0251】
さらに高速混合を達成するために、高速攪拌パドル混合機を用いることが好ましい。このとき、パドル回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは200rpm以上、さらに好ましくは300rpm以上であって、好ましくは5000rpm以下、より好ましくは4000rpm以下、さらに好ましくは3000rpm以下である。パドル回転軸の方向は限定されず、鉛直方向でも水平方向でもよい。
【0252】
[3-1-4-9-2]造粒ゲル添加工程
本工程は、前記乾燥工程で乾燥が完了するまでの、前記重合工程~乾燥工程の少なくとも一つの工程、および/または工程間で、含水ゲルに造粒ゲルを添加する工程である。具体的には、前記重合工程中、前記重合工程後であって前記ゲル粉砕工程前、前記ゲル粉砕工程中、前記ゲル粉砕工程後であって前記乾燥工程前、および、前記乾燥工程中よりなる群から選ばれる少なくとも1工程以上で、含水ゲルに造粒ゲルを添加することが好ましい。尚、前記重合工程中でも含水ゲルが得られるため、当該重合工程中に造粒ゲルを添加してもよい。また、乾燥工程において、固形分が80質量%未満である重合体は、通常、含水ゲルと見なすことができる。即ち、乾燥工程の途中までは含水ゲルが存在するため、当該乾燥工程中に造粒ゲルを添加してもよい。好ましくは前記ゲル粉砕工程後であって前記乾燥工程前、または、前記乾燥工程中、より好ましくはゲル粉砕工程後であって乾燥工程前の含水ゲルに、造粒ゲルを添加する。このように粉砕後の含水ゲルに造粒ゲルを添加すると、両者の粒度差が小さいため混合し易く、乾燥が不均一になり難い。特に、ゲル粉砕エネルギーを制御した粉砕を行うと含水ゲルが造粒形状となるため、不均一な乾燥をより一層抑制することができる。一方、ゲル粉砕工程前、またはゲル粉砕工程中に造粒ゲルを添加すると、ゲル粉砕機に負荷が掛かったり、ゲル粉砕が不安定になったりして、ゲル粒子径を制御することができなくなる場合がある。尚、「工程前」、「工程後」とは、当該工程前、或いは当該工程後の全ての工程を含む。
【0253】
造粒ゲル添加工程において、造粒ゲルの固形分は、50質量%以上、90質量%以下である。
【0254】
(固形分)
造粒ゲルを含水ゲルに再添加する工程において、本発明ではさらに、造粒ゲルの固形分と含水ゲルの固形分が適切に制御されていることが好ましい。即ち、造粒ゲルや含水ゲルの固形分が少なくなりすぎると、部分的に乾燥が不完全となったり、凝集物が生成し易くなったりする。また、固形分が多くなりすぎると、残存モノマーの量が多くなる傾向がある。本発明では、造粒ゲルの固形分および/または含水ゲルの固形分は、適切な範囲内であることが望ましい。含水ゲルの固形分は、好ましくは30質量%~70質量%、より好ましくは45質量%~55質量%、さらに好ましくは45質量%~50質量%である。造粒ゲルの固形分は、好ましくは50質量%~90質量%、より好ましくは55質量%~85質量%、さらに好ましくは60質量%~80質量%である。好ましくは再添加工程における造粒ゲルの固形分が前記範囲であり、より好ましくは造粒ゲルの固形分が前記範囲内であり、さらに好ましくは造粒ゲルと含水ゲルの温度が前記範囲内である。
【0255】
本発明の第1の実施形態において、造粒ゲルと含水ゲルとの比率は、分離された微粉の量と造粒ゲルの固形分の設定に応じて適宜決定すればよい。吸水性樹脂の物性の観点から、含水ゲル100質量部(有姿)に対して、造粒ゲルは、通常、10質量部~50質量部、好ましくは15質量部~40質量部、より好ましくは20質量部~30質量部となるように添加する。本発明の第1の実施形態の方法によれば、造粒ゲルの割合が10質量部以上であっても、不均一な乾燥を抑制することができる。尚、造粒ゲルの割合が多くなりすぎると、最終製品である吸水性樹脂の最終的な品質や物性が、リサイクルされた微粉、即ち、造粒ゲルによって大きく影響されることになる。
【0256】
造粒ゲルが添加された含水ゲルは、前記乾燥工程で処理される。混合ゲルの各種条件等は、前記乾燥工程の各種条件等と同じであるため説明を省略する。また、乾燥工程以降に行われる粉砕工程、分級工程も前記粉砕工程、分級工程と同じであり、必要に応じて前記表面架橋工程や整粒工程等が施されて、製品となる吸水性樹脂が得られる。また、分級工程等で得られる微粉も、前記リサイクル工程で処理されてもよい。
【0257】
[3-2]第2の実施形態
本発明の第2の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させて、前記吸水性樹脂から不純物を除去する工程(以下、本明細書において、吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させて、前記吸水性樹脂から不純物を除去する工程を、「不純物除去工程」と称することがある)を含み、前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系樹脂を主成分とし、前記吸水性樹脂が、内部架橋されており、かつ、表面架橋されている。
【0258】
なお、前記不純物は、特に限定されないが、炭素数が2以上の有機化合物であることが好ましい。例えば、前記残存アクリル酸(塩)モノマーおよび残存架橋物等の反応性原料由来の未反応物、原料に含まれる不純物、並びに、原料に由来する副生成物などの低分子量の化合物が挙げられる。
【0259】
[3-2-1]不純物除去工程
不純物除去工程において、基材吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させる方法は、基材吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させることができれば、特に限定されない。例えば、基材吸水性樹脂を固定床または流動床として抽出槽内に収容し、当該抽出槽内にて、基材吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させる方法を挙げることができる。また、基材吸水性樹脂と超臨界溶媒との接触は、連続方式で行ってもよいし、バッチ方式で行ってもよい。さらに、吸水性樹脂の製造プロセスが連続方式である場合には、当該接触工程は複数の抽出槽を並列に設置するなどして、連続的に処理してもよい。
【0260】
超臨界溶媒に用いられる化合物は特に限定はされないが、好ましくはできるだけ低温、低圧力下で超臨界状態になる化合物を選択することが、エネルギー消費や装置を小規模化する上で好ましい。選択される化合物が超臨界状態になる温度は150℃以下である化合物を選択することが好ましく、より120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。また選択される化合物が超臨界状態になる圧力は、100MPa以下である化合物を選択することが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、30MPa以下であることがさらに好ましい。
【0261】
前記記載の温度と圧力の範囲で選択される超臨界溶媒に用いられる物質の例としては、エチレン、二酸化炭素、エタン、亜酸化窒素、プロピレン、クロロジフルオロメタン、プロパン、ジクロロジフルオロメタン、アンモニアなどが挙げられる。なかでも、取り扱い性や超臨界状態を得る条件の容易さから、超臨界溶媒は超臨界二酸化炭素であることが好ましい。
【0262】
以下に、基材吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させる方法の一例として、超臨界溶媒として超臨界二酸化炭素を使用し、
図1に示す構成を備える前記超臨界抽出装置を用いて実施する不純物除去工程について説明する。
【0263】
図1に示す通り、前記超臨界抽出装置は、二酸化炭素ボンベ1、圧力調整弁2、高圧液体送液ポンプ3、冷却装置4、耐圧抽出槽5、減圧バルブ6、および流量計7から構成される。また、
図1における矢印は、二酸化炭素ガスおよび超臨界二酸化炭素の流れる方向を示す。
【0264】
最初に基材吸水性樹脂を、耐圧抽出槽5の内部に入れてセットする。続いて、二酸化炭素ボンベ1から気体状態の二酸化炭素(二酸化炭素ガス)を高圧液体送液ポンプ3内に放出し、その際に、圧力調整弁2および冷却装置4を使用して、高圧液体送液ポンプ3内の当該二酸化炭素の温度と圧力を調整することにより、当該二酸化炭素を超臨界状態とする。このようにして、高圧液体送液ポンプ3内部にて、超臨界二酸化炭素を調製する。その後、前記超臨界二酸化炭素を、高圧液体送液ポンプ3を用いて、耐圧抽出槽5の内部に注液することによって、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界二酸化炭素とを接触させる。その際、耐圧抽出槽5の内部の温度および圧力を制御することによって、前記超臨界二酸化炭素における二酸化炭素の超臨界状態を保持する。その後、耐圧抽出槽5にて、前記吸水性樹脂と接触した後の前記超臨界二酸化炭素を、減圧バルブ6を用いて減圧することによって、二酸化炭素ガスの状態に変換し、耐圧抽出槽5から外部の大気中に放出する。
【0265】
本発明の一実施形態における超臨界溶媒とは、臨界温度および臨界圧力を超えた超臨界状態のときに、液体に近い密度と気体のように低い粘性を備え、液体と気体との中間的な状態となった物質を意味する。ここで、表1に、代表的な化合物の超臨界状態となる温度と圧力を示す。特に好ましく用いられる二酸化炭素の臨界温度は、約31℃(31.1℃)であり、臨界圧力は、約7.4MPa(7.38MPa)である。
【0266】
【表1】
本発明の一実施形態において、超臨界溶媒を構成する化合物は、ガスの状態で保存しておき、不純物除去工程の直前に、該ガスの温度および圧力を、臨界温度および臨界圧力を超える範囲に制御することによって、超臨界溶媒を調製し、調製した超臨界溶媒と吸水性樹脂とを接触させることが好ましい。
【0267】
前記超臨界溶媒は、上述の液体と気体との中間的な状態であり、かつ、構成する前記化合物の分子の大きさが小さいことから、当該超臨界溶媒は、吸水性樹脂の内部に存在する微細な隙間に侵入することができる。また、前記超臨界溶媒は、ヘキサンおよびトルエン等の典型的な有機溶媒と同様の極性を有する。
【0268】
ここで、基材吸水性樹脂における前記不純物である残存モノマーおよび残存架橋物等の反応性原料由来の未反応物、原料に含まれる不純物、並びに、原料に由来する副生成物などは、一般に、低分子量の有機化合物からなるか、あるいは、低分子量の有機化合物を多く含んでいることが知られている。
【0269】
また、前記低分子量の有機化合物は、前記典型的な有機溶媒と同様の極性を有することも知られている。すなわち、前記低分子量の有機化合物と前記超臨界溶媒は、同程度の極性を有しており、両者の親和性は高い。
【0270】
従って、本発明の一実施形態における不純物除去工程において、基材吸水性樹脂と超臨界溶媒とが接触することによって、当該基材吸水性樹脂内部の前記微細な隙間に当該超臨界溶媒が侵入し、当該基材吸水性樹脂内部に存在する前記不純物を構成する前記低分子量の有機化合物を当該吸水性樹脂から抽出することができる。その結果、本発明の第2の実施形態における不純物除去工程において、前記不純物自体を、前記基材吸水性樹脂から除去することができる。
【0271】
また、前記基材吸水性樹脂は、前記超臨界溶媒には溶解しない。従って、前記超臨界溶媒によって、前記基材吸水性樹脂が劣化するおそれがない。さらに、本発明の第2の実施形態において、前記超臨界溶媒は、前記不純物除去工程の後、ガスとして前記基材吸水性樹脂から揮発する。よって、処理された後の吸水性樹脂には、前記超臨界溶媒を構成していた化合物は残存していない。従って、処理された後の前記吸水性樹脂に残存する前記超臨界溶媒由来の化合物に起因して、当該吸水性樹脂の吸水性能等の物性が低下するおそれがない。
【0272】
それゆえに、本発明の一実施形態における不純物除去工程は、吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持しつつ、当該吸水性樹脂に含有される前記不純物を除去することができるとの効果を奏する。
【0273】
本発明の一実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる接触時間は、好ましくは1秒~1000分であり、より好ましくは1分~900分であり、さらに好ましくは2分~800分である。前記接触時間を上述の範囲内に制御することによって、前記基材吸水性樹脂に含まれる不純物を、前記超臨界溶媒に好適に溶解させることができ、その結果、前記基材吸水性樹脂から前記不純物を好適に除去することができる。
【0274】
本発明の一実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂に接触させる前記超臨界溶媒の体積は、前記吸水性樹脂1gあたり、好ましくは0.1mL~1000L以下であり、より好ましくは1mL~500L以下であり、さらに好ましくは10mL~250L以下である。前記基材吸水性樹脂1gに対して接触させる前記超臨界溶媒の体積を上述の範囲に制御することによって、前記基材吸水性樹脂に含まれる不純物を、前記超臨界溶媒に好適に溶解させることができ、その結果、前記基材吸水性樹脂から前記不純物を好適に除去することができる。ここで、「吸水性樹脂1gあたり」とは、「抽出槽に投入される吸水性樹脂1gあたり」を意図する。
【0275】
本発明の一実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる間は、当該超臨界溶媒を構成する化合物が超臨界状態を保つことが、前記基材吸水性樹脂から前記不純物を好適に除去することができる面において好ましい。
【0276】
上述の観点から、本発明の一実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる際の温度は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは35℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。また、本発明の一実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる際の圧力は、好ましくは4.2MPa以上であり、より好ましくは7.0MPa以上であり、さらに好ましくは10.0MPa以上である。
【0277】
本発明の一実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる際の温度および圧力が過剰に高い値である場合、吸水性樹脂の一部の構造が変化し、および/または、当該吸水性樹脂の内部構造が変化することによって、当該吸水性樹脂の吸水性能等の物性が低下するおそれがある。また、コスト面から工業的に過剰なエネルギーを与えることとなり、経済性に劣るため、好ましくない。
【0278】
前記吸水性樹脂の物性の低下およびコストアップを回避するとの観点から、本発明の第2の実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる際の温度は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下である。また、本発明の第2の実施形態における不純物除去工程において、前記基材吸水性樹脂と前記超臨界溶媒とを接触させる際の圧力は、好ましくは200MPa以下であり、より好ましくは150MPa以下である。
【0279】
また、前記超臨界溶媒は、吸水性樹脂から除去する対象の不純物、および、当該吸水性樹脂との親和性を考慮して、水及び/又は有機溶剤を添加して極性を変えてもよい。前記有機溶剤としては、低分子量の有機溶剤が挙げられ、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を選択することが好ましい。前記の水及び/又は有機溶剤は、単独あるいは混合溶液として超臨界溶媒と同時に不純物除去工程に供給されてもよく、予め水を吸水性樹脂に少量添加して膨潤状態にしたのちに、不純物除去工程で、超臨界溶媒と低分子量の有機溶剤との混合物を接触させてもよい。
【0280】
[3-2-2]処理前の吸水性樹脂の物性
本発明の一実施形態において、前記不純物除去工程に供される吸水性樹脂(以下、「処理前の吸水性樹脂」とも称する)は、ポリアクリル酸(塩)系樹脂を主成分とし、内部架橋されており、かつ、表面架橋されていれば、特に限定されない。
【0281】
なお、以下に示す処理前の吸水性樹脂の物性の測定方法は、本発明の一実施形態に係る「吸水性樹脂の処理方法」にて得られる吸水性樹脂(以下、「処理後の吸水性樹脂」とも称する)、本発明の一実施形態に係る「吸水性樹脂の製造方法」にて製造される吸水性樹脂および本発明の一実施形態に係る「吸水性樹脂」の物性の測定にも適用できる。
【0282】
本発明の一実施形態において、前記処理前の吸水性樹脂は、粒子径が45μm以上850μm以下である粒子状の吸水性樹脂を、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含む吸水性樹脂である。
【0283】
本発明の一実施形態において、前記処理前の吸水性樹脂の90質量%以上を占める粒子状の吸水性樹脂の粒子径を上述の範囲内に調節することによって、処理後の吸水性樹脂を紙オムツ等の衛生用品における吸水剤として使用する際に、当該粒子径が大きい大粒子径の吸水性樹脂に起因して、当該衛生製品の装着者に与えられるゴツゴツ感等の不快感を低減することができる。また、前記処理前の吸水性樹脂の90質量%以上を占める粒子状の吸水性樹脂の粒子径を上述の範囲内に調節することによって、前記処理前の吸水性樹脂の90質量%以上を占める粒子状の吸水性樹脂の粒子径が小さい小粒子径の吸水性樹脂が、衛生用品製造工場における吸水性樹脂の取扱い時に飛散して起こるダスト問題の発生を抑制することができる。さらに、前記処理前の吸水性樹脂の90質量%以上を占める粒子状の吸水性樹脂の粒子径を上述の範囲内に調節することによって、前記処理前の吸水性樹脂の内部における隙間の大きさを、前記超臨界溶媒が侵入し易い大きさに制御することも期待できる。前記隙間の大きさが、前記超臨界溶媒が侵入し易い大きさに制御された場合には、前記隙間に侵入した前記超臨界溶媒によって、前記不純物を好適に除去できると考えられる。
【0284】
前記処理前の吸水性樹脂の90質量%以上を占める粒子状の吸水性樹脂の粒子径を上述の範囲内に調節する方法としては、吸水性樹脂の粒子径を調節するための公知の方法を使用することができる。
【0285】
前記処理前の吸水性樹脂の粒子径が45μm以上850μm以下である粒子状の吸水性樹脂の割合は、米国特許第7638570号の「(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に記載された測定方法によって測定され得る。
【0286】
具体的には、吸水性樹脂10.0gを、室温(20~25℃)および湿度50RH%の条件下にて、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μm、45μmおよび受け皿のJIS標準篩(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER, TYPE:ES-65型, SER.No.0501)を用いて5分間かけて分級する。その後、各篩上に残留した吸水性樹脂の質量を測定する。前記測定の結果に基づき、分級前の吸水性樹脂の質量(10.0g)に対する各篩上に残留した吸水性樹脂の質量の割合である残留百分率Rを算出することによって、前記処理前の吸水性樹脂の粒子径が45μm以上850μm以下である粒子状の吸水性樹脂の割合が得られる。
【0287】
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂の無加圧下吸収倍率(CRC)は、好ましくは20g/g以上であり、より好ましくは22g/g以上であり、さらに好ましくは25g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、50g/g以下であり、より好ましくは48g/g以下であり、さらに好ましくは45g/g以下である。
【0288】
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)は、好ましくは5g/g以上であり、より好ましくは7g/g以上であり、さらに好ましくは10g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは40g/g以下であり、より好ましくは38g/g以下であり、さらに好ましくは35g/g以下である。
【0289】
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂の含水率は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下であり、さらに好ましくは15%質量以下である。
【0290】
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂のVortex法による吸水速度は、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは15秒以上であり、さらに好ましくは20秒以上である。上限値は、高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは90秒以下であり、さらに好ましくは80秒以下である。
【0291】
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂の生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、好ましくは1×10-7cm3・sec/g以上であり、より好ましくは2×10-7cm3・sec/g以上であり、さらに好ましくは5×10-7cm3・sec/g以上である。上限値は、高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは200×10-7cm3・sec/g以下であり、より好ましくは150×10-7cm3・sec/g以下であり、さらに好ましくは100×10-7cm3・sec/g以下である。
【0292】
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂の上述の物性値が上述の範囲であることは、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の処理方法にて得られる吸水性樹脂もまた、優れた物性を備える面において好ましい。
【0293】
[3-2-3]処理前の吸水性樹脂の製造方法
本発明の一実施形態における処理前の吸水性樹脂の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。前記製造方法として、例えば、前記第1の実施形態に係る製造方法における、水性液体添加工程に供される、表面架橋された吸水性樹脂の製造方法と同様の方法を挙げることができる。また、本発明の第2の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、前記第1の実施形態に係る製造方法に記載の各工程を含み得るが、すべての工程を含む必要はない。
【0294】
[3-2-4]処理後の吸水性樹脂の物性
本発明の一実施形態における不純物処理工程後の吸水性樹脂に含まれる不純物の量は、当該吸水性樹脂の全質量を100質量%とした場合に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0295】
本発明の一実施形態における基材吸水性樹脂の処理方法における前記不純物除去工程において、前記不純物の含有量を、処理前の不純物含有量を100質量%とした場合に、30質量%以上低下させることが好ましく、50質量%以上低下させることがより好ましい。
【0296】
前記不純物は、内部架橋および表面架橋されている吸水性樹脂に含まれる一般的な不純物であり得る。前記不純物としては、例えば、残存モノマーおよび残存架橋剤等の反応性原料由来の未反応物、原料に含まれる不純物、並びに、原料から副生成する副生成物などを挙げることができる。また、不純物や副生性物の中には、未知物質であり各種分析方法では特定できない場合があるが、その場合であっても、クロマトグラフ等のピーク強度の変化で確認すれば良い。
【0297】
[3-3]第3の実施形態
本発明の第3の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、表面架橋された吸水性樹脂の製造方法であって、重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、重合工程の終了時以降に、揮発成分低減剤を添加する工程を含む。
【0298】
[3-3-1]揮発成分低減剤を添加する工程
本発明の第3の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、重合工程の終了時以降に、揮発成分低減剤を添加する工程を含めばよいが、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程を含むことがより好ましく、前記表面架橋工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程を含むことがさらに好ましい。
【0299】
前記揮発成分低減剤については、前述の[ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂]で説明したとおりである。揮発成分低減剤は、還元剤、界面活性剤、および無機酸(塩)から選ばれる少なくとも1つを含んでいればよいが、還元剤を含むことがより好ましく、アミノ基を有する還元剤を含むことがさらに好ましく、アミノ酸(塩酸塩)、アミノオキシ化合物(塩酸塩)、アミノオキシ酢酸(塩酸塩)、および、前記構造式(1)で示される官能基を有する化合物(塩酸塩)、ヒドラジド基を含有する化合物を含むことがより好ましく、アミノ酸(塩酸塩)、アミノオキシ化合物(塩酸塩)、アミノオキシ酢酸(塩酸塩)、および、前記構造式(1)で示される官能基を有する化合物(塩酸塩)が特に好ましい。
【0300】
前記揮発成分低減剤を吸水性樹脂に添加する場合、前記揮発成分低減剤の添加方法は、特に限定されるものではない。前記揮発成分低減剤は、例えば、水等の水性媒体に溶解した水溶液または、該水性媒体に懸濁させた分散液に調製して、当該溶液または分散液を吸水性樹脂に対して添加し、吸水性樹脂と混合することができる。あるいは、前記揮発成分低減剤が粉状等の固体である場合には、吸水性樹脂とドライブレンドしてもよく、水等の水性液体をバインダーとして使用してもよい。中でも、前記揮発成分低減剤は、水溶液で吸水性樹脂に添加することがより好ましい。
【0301】
前記混合に使用する装置としては、具体的には、例えば、攪拌型混合機、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられる。なお、攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、特に限定されるものではないが、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、さらに好ましくは10000rpm以下、よりさらに好ましくは2000rpm以下である。
【0302】
揮発成分低減剤は、還元剤、界面活性剤、および無機酸(塩)から選ばれる少なくとも1つを含んでいればよい。還元剤は、添加剤等を含む吸水性樹脂の全量に対し、所定の含有量となるように吸水性樹脂に添加する。界面活性剤も、添加剤等を含む吸水性樹脂の全量に対し、所定の含有量となるように吸水性樹脂に添加する。無機酸(塩)も、添加剤等を含む吸水性樹脂の全量に対し、所定の含有量となるように吸水性樹脂に添加する。還元剤、界面活性剤、無機酸(塩)の所定の含有量については、前述の「還元剤」、「界面活性剤」、「無機酸(塩)」に記載の含有量と同様である。
【0303】
本発明の一実施形態において、前記揮発成分低減剤を、水性媒体の溶液または分散液に調製して、当該溶液または分散液を吸水性樹脂に対して添加する場合、あるいは、水等の水性液体をバインダーとして使用する場合、当該溶液または分散液、ならびにバインダーとしての水性液体の添加および水性液体添加後の乾燥は、前述の第1の実施形態に記載の「水性液体添加工程」(前記[3-1-1]項に記載の表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を添加する工程)、および「水性液体添加後」の乾燥工程(前記[3-1-2]項に記載の該水性液体を添加した吸水性樹脂を乾燥する工程)と同様にして行うことが好ましい。より具体的には、第1の実施形態に記載された「水性液体添加工程」([3-1-1]項に記載)で、好ましくは水性液体として揮発成分低減剤を含む水溶液、より好ましくはアミノ基を有する還元剤を含む水溶液を添加し、且つ、第1の実施形態に記載された「水性液体添加後」の乾燥工程(前記[3-1-2]項に記載)で乾燥させる方法が挙げられる。より好ましい実施形態は、比表面積25m2/kg以上の表面架橋された吸水性樹脂に、アミノ基を有する還元剤を含む水溶液を、含水率27.5%以上となるように液滴状態で添加した場合、1時間以内に含水率が20%質量以下となるように乾燥させることである。
【0304】
また、前記表面架橋工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する場合、当該添加の工程に供する表面架橋された吸水性樹脂の物性については、前述の第1の実施形態に記載の「表面架橋された吸水性樹脂」に記載の物性と同様であることが好ましい。
【0305】
[3-3-2]処理前の吸水性樹脂の製造方法
本発明の一実施形態における揮発成分低減剤を添加する工程に供する吸水性樹脂の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0306】
本発明の一実施形態に係る製造方法が、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物を重合して、含水ゲル状架橋体を得る重合工程(重合工程)の終了時以降に、揮発成分低減剤を添加する工程を含む場合、処理前の吸水性樹脂の製造方法としては、前記第1の実施形態に係る製造方法における、重合工程を少なくとも含む製造方法を挙げることができる。
【0307】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法が、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程を含む場合、処理前の吸水性樹脂の製造方法としては、前記第1の実施形態に係る製造方法における、重合工程、および重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程を少なくとも含む製造方法を挙げることができる。
【0308】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法が、前記表面架橋工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程を含む場合、処理前の吸水性樹脂の製造方法としては、前記第1の実施形態に係る製造方法における、重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程を少なくとも含む製造方法を挙げることができる。
【0309】
また、本発明の第3の実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、揮発成分低減剤(好ましくは、アミノ基を有する還元剤)を添加する工程をさらに含んでいればよく、さらに前記第1の実施形態に係る製造方法に記載の各工程を含み得るが、すべての工程を含む必要はない。
【0310】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法としては、前記[3-1-1]項に記載の表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を添加する工程(水性液体添加工程)、及び、前記[3-1-2]項に記載の該水性液体を添加した吸水性樹脂を乾燥する工程(水性液体添加後の乾燥工程)を含み、且つ、該水性液添加工程で用いられる水性液体の代わりに揮発成分低減剤(特に、アミノ基を含む還元剤)を含む水溶液を添加する工程を含む製造方法を挙げることができる。
【0311】
従来の技術は、吸水性樹脂を含有する衛生物品(吸収性物品)を使用した場合、表面架橋された吸水性樹脂から揮発する物質(表面架橋された吸水性樹脂由来の揮発成分)による臭気と吸水性樹脂が吸収した尿からの臭気(尿臭)とが混合することで、不快な臭気を発生させていた。そのため吸収性物品の使用者に嫌がられることがあった。本実施形態により、表面架橋された吸水性樹脂由来の揮発成分による臭気を抑制したことで、前記の不快な臭気を抑制することができる。特に、150℃以上で表面架橋された吸水性樹脂(表面架橋剤として、多価アルコール、アルキレンカーボネート化合物が挙げられる)に対して、前記の不快な臭気を抑制することが必要であったが、本実施形態によって該不快な臭気を抑制できる。
【0312】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0313】
[1]表面架橋された吸水性樹脂であり、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度が、3.5ppm以下である吸水性樹脂:
ここで、膨潤倍率が1.0倍となる条件下で、15分間静置したときの揮発成分濃度とは、常温常圧下で、密閉可能な2Lガラス容器に入れた吸水性樹脂10.0gに23.5±0.5℃の生理食塩水10.0gを均一に添加し、15分間密閉状態で静置したときの、密閉容器内に存在している揮発成分のうち、10.6eVランプの光イオン検出器(PID)で検出される全ての物質の濃度を合計した数値であり、校正ガスであるイソブチレン換算の検出値で示した値である。
【0314】
[2]膨潤倍率が0.0倍、0.5倍、1.0倍、2.5倍、5.0倍、10.0倍、および20.0倍となる条件下で、それぞれ15分間静置したときの各揮発成分濃度の合計値が、9.5ppm以下である、[1]に記載の吸水性樹脂。
【0315】
[3]膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の最大値が0.4ppm以下である、[1]または[2]に記載の吸水性樹脂。
【0316】
[4]膨潤倍率が5.0倍となる条件下で、膨潤開始時から900秒後まで、5秒毎に測定した揮発成分濃度の合計値が50.0ppm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0317】
[5]無加圧下吸収倍率(CRC)が23g/g以上であり、かつ加圧下吸収倍率(AAP)が15g/g以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0318】
[6]質量平均粒子径(D50)が300~600μmであり、150μm未満の粒子の割合が5質量%以下であり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20~0.50である、[1]~[5]のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0319】
[7]揮発成分低減剤を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の吸水性樹脂。
【0320】
[8]比表面積が25m2/kg以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の吸水性樹脂。
【0321】
[9][1]~[8]のいずれかに記載の吸水性樹脂を含む吸収性物品。
【0322】
[10]前記吸水性樹脂と親水性繊維とを含む複合体である吸収体を含み、当該吸収体の全質量に対する前記吸水性樹脂の含有量が60質量%以上である、[9]に記載の吸収性物品。
【0323】
[11]アクリル酸(塩)系単量体を含む単量体組成物を重合して、含水ゲル状架橋体を得る重合工程、前記重合工程で得られた前記含水ゲル状架橋体の乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、前記重合工程の終了時以降に、アミノ基を有する還元剤を添加する工程を含むことを特徴とする、[1]~[8]のいずれか1つに記載の吸水性樹脂を製造する方法。
【0324】
[12]前記表面架橋工程の終了時以降に、アミノ基を含む還元剤を添加する工程を含む、[11]に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【0325】
[13]前記アミノ基を含む還元剤を水溶液として添加する工程を含む、[11]または[12]に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【0326】
[14]前記アミノ基を含む還元剤は、ヒドラジド基を含有する化合物を含む、[11]~[13]のいずれかに記載の、吸水性樹脂の製造方法。
【0327】
[15]表面架橋された吸水性樹脂に、含水率が7.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した後、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率の低下量が7.5質量%以上となるように乾燥させる吸水性樹脂の製造方法。
【0328】
[16]以下の(A)および/または、(B)の工程を含む、[15]に
記載の吸水性樹脂の製造方法:
(A)比表面積が25m2/kg以上である、前記表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程;
(B)重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、重合工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程。
【0329】
[17]前記(A)比表面積が25m2/kg以上である、前記表面架橋された吸水性樹脂に水性液体を液滴状態で添加する工程を含み、含水率が27.5質量%以上となるように水性液体を液滴状態で添加した場合には、水性液体が添加された吸水性樹脂を、1時間以内に、含水率が20質量%以下となるように乾燥させる、[16]に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【0330】
[18]前記(B)重合工程、重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程、および表面架橋工程をこの順に含み、前記重合工程の終了時以降に揮発成分低減剤を添加する工程を含む、[16]または[17]に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【0331】
[19]吸水性樹脂と超臨界溶媒とを接触させて、前記吸水性樹脂から揮発成分を除去する工程を含み、
前記吸水性樹脂が、ポリアクリル酸(塩)系樹脂を主成分とし、前記吸水性樹脂が、内部架橋されており、かつ、前記吸水性樹脂が、表面架橋されている、吸水性樹脂の製造方法。
【0332】
[20]前記重合工程で得られた含水ゲルの乾燥工程の終了時以降に、アミノ基を含む還元剤を添加する工程を含む、[11]に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【0333】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0334】
以下に示す実施例および比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれることとする。
【0335】
<吸水性樹脂の物性値等の測定・評価>
以下に吸水性樹脂(吸水剤も含む)の測定方法を述べるが、長期保管されていた場合や吸収体や紙オムツ等の衛生材料から取り出した場合、吸水性樹脂(吸水剤も含む)が吸湿し、吸水性樹脂の含水率が10質量%を超える(もしくは、吸水性樹脂の固形分が90質量%より低くなる)場合がある。その場合でも、吸水性樹脂の揮発成分濃度は、含水率が10質量%を超えた状態で測定する。CRC、AAP、SFC、吸収速度、PDAUP、質量平均粒子径、比表面積についても、含水率が10質量%を超えた状態で測定してもよいが、吸水性樹脂の含水率を10質量%以下に調整してから測定する方が好ましい。吸水性樹脂の含水率を10質量%以下に調整する方法として、80℃及び減圧下(10.0kPa以下)で24時間乾燥する方法が挙げられる。
【0336】
下記実施例1~12および比較例1~14にて得られた吸水性樹脂(吸水剤を含む)の物性値等の測定および評価を、以下の方法にて行った。
【0337】
[揮発成分濃度の測定]
吸水性樹脂の揮発成分濃度の測定は、RAE Systems社製MiniRAE LiteポータブルVOCモニターPGM-7300を用いて行った。装置のPID検出器には10.6eV紫外線ランプを用いた。装置の校正には100ppmイソブチレン標準ガスを用い、イソブチレン換算での揮発成分濃度を測定した。
【0338】
吸水性樹脂の「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」、「各倍率膨潤時の揮発成分積算値」、「経時膨潤時の最大揮発成分濃度」、および「経時膨潤時の揮発成分積算値」は下記の方法で測定した。
【0339】
(a)「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」
図2に示す、直径2.2cmのキャップ10を備えたポリエチレン製の蓋9を有する、内容量2Lのガラス瓶8(低型貯蔵瓶 2Lまめ丸くん/石塚硝子株式会社)の蓋9を開けて、ガラス瓶8内に後述する実施例および比較例で得られた吸水性樹脂10.0gを均一に散布した。吸水性樹脂を散布後、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水10.0gを、10.0mLシリンジ(ニプロ株式会社製)を用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ。生理食塩水を前記ガラス瓶8内に注ぎ込んだ後、速やかに蓋9を閉め、前記ガラス瓶8を密閉して、室温24℃の室内で放置した。
【0340】
前記ガラス瓶8を密閉してから15分経過後、キャップ10を開け、VOCモニターPGM-7300のノズルを差し込んだ。このとき、ノズルの先端が前記ガラス瓶8の底から1~2cmの位置に達するまでノズルを差し込んだ。揮発成分モニターによる測定は1分間行い、1分間の間にモニターに表示された揮発成分濃度の最大値を「1.0倍膨潤時揮発成分の濃度」とした。
【0341】
(b)「各揮発成分濃度の合計値」
「各倍率膨潤時の揮発成分積算値」は、下記の「0倍膨潤時の揮発成分濃度」、「0.5倍膨潤時の揮発成分濃度」、「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」、「2.5倍膨潤時の揮発成分濃度」、「5.0倍膨潤時の揮発成分濃度」、「10.0倍膨潤時の揮発成分濃度」、および「20.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の各数値を足し合わせることで算出した。
【0342】
「0倍膨潤時の揮発成分濃度」、「0.5倍膨潤時の揮発成分濃度」、「2.5倍膨潤時の揮発成分濃度」、「5.0倍膨潤時の揮発成分濃度」、「10.0倍膨潤時の揮発成分濃度」、および「20.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の測定は次のように行った。
【0343】
(b-1)「0倍膨潤時の揮発成分濃度」
図2に示す、直径2.2cmのキャップ10を備えたポリエチレン製の蓋9を有する、内容量2Lのガラス瓶8(低型貯蔵瓶 2Lまめ丸くん/石塚硝子株式会社)の蓋9を開けて、ガラス瓶8内に後述する実施例および比較例で得られた吸水性樹脂10.0gを均一に散布した。吸水性樹脂を散布後、速やかに蓋9を閉め、前記ガラス瓶8を密閉して、室温24℃の室内で15分放置した。
【0344】
その後、キャップ10を開け、揮発成分モニターPGM-7300のノズルを差し込んだ。このとき、ノズルの先端が前記ガラス瓶8の底から1~2cmの位置に達するまでノズルを差し込んだ。VOCモニターによる測定は1分間行い、1分間の間にモニターに表示された揮発成分濃度の最大値を「0倍膨潤時の揮発成分濃度」とした。
【0345】
(b-2)「0.5倍膨潤時の揮発成分濃度」
温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水10.0gの替わりに、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水5.0gを、10.0mLシリンジ(ニプロ株式会社製)を用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ以外は、前記(a)記載の「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の測定と同様に行った。
【0346】
(b-3)「2.5倍膨潤時の揮発成分濃度」
温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水10.0gの替わりに、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水25gを、50mLガラスビーカーを用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ以外は、前記(a)記載の「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の測定と同様に行った。
【0347】
(b-4)「5.0倍膨潤時の揮発成分濃度」
温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水10.0gの替わりに、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水50gを、100mLガラスビーカーを用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ以外は、前記(a)記載の「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の測定と同様に行った。
【0348】
(b-5)「10.0倍膨潤時の揮発成分濃度」
温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水10.0gの替わりに、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水100gを、200mLガラスビーカーを用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ以外は、前記(a)記載の「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の測定と同様に行った。
【0349】
(b-6)「20.0倍膨潤時の揮発成分濃度」
温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水10.0gの替わりに、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水200gを、200mLガラスビーカーを用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ以外は、前記(a)記載の「1.0倍膨潤時の揮発成分濃度」の測定と同様に行った。
【0350】
(c)「経時膨潤時の最大揮発成分濃度」および(d)「経時膨潤時の揮発成分積算値」
図2に示す、直径2.2cmのキャップ10を備えたポリエチレン製の蓋9を有する、内容量2Lのガラス瓶8(低型貯蔵瓶 2Lまめ丸くん/石塚硝子株式会社)の蓋9を開けて、ガラス瓶8内に、後述する実施例および比較例で得られた吸水性樹脂10.0gを均一に散布した。吸水性樹脂を散布後、温度23.5℃±0.5℃の生理食塩水50.0gを、100mLビーカーを用いて前記ガラス瓶8内に均一に注ぎ込んだ。生理食塩水を前記ガラス瓶8内に注ぎ込んだ後、速やかに蓋9を閉めて前記ガラス瓶8を密閉するとともに、キャップ10を開けて、揮発成分モニターPGM-7300のノズルを差し込んだ。このとき、ノズルの先端が前記ガラス瓶8の底から1~2cmの位置に達するまでノズルを差し込んだ。生理食塩水を注ぎ込んだ時点から5秒間隔で揮発成分モニターに表記される数値を記録した。計測は生理食塩水を注ぎ込んでから900秒間が経過した時点まで行い、合計180点分の揮発成分濃度を記録した。前記180点の揮発成分濃度で最も高い揮発成分濃度を「経時膨潤時の最大揮発成分濃度」とした。また、前記180点の揮発成分濃度の総和を「経時膨潤時の揮発成分積算値」とした。作業環境の温度は24℃であった。
【0351】
なお、当該測定方法では、吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行っても揮発成分が検出されることがある。かかる場合は、吸水性樹脂を入れる前のガラス瓶8内部から検出された揮発成分濃度を減じて補正した。
【0352】
[無加圧下吸収倍率(CRC)]
吸水性樹脂のCRCは、NWSP 241.0.R2(15)に準拠して測定した。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して吸水性樹脂を自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)を用いて3分間脱水した後に、無加圧下吸収倍率(CRC)(単位:g/g)を測定した。
【0353】
[加圧下吸収倍率(AAP)]
吸水性樹脂のAAPは、NWSP 242.0.R2(15)に準拠して測定した。但し、本発明においては、加圧条件を4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)に変更して測定した。具体的には、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用い、吸水性樹脂0.9gを1時間、4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)の加圧下で膨潤させた後、AAP(加圧下吸収倍率)(単位:g/g)を測定した。即ち、本明細書では、AAP(加圧下吸収倍率)は、全て、4.83kPaの加圧下で測定した値である。
【0354】
[生理食塩水流れ誘導性(SFC)]
吸水性樹脂の生理食塩水流れ誘導性(SFC)(単位:×10-7cm3・sec/g)は、米国特許第5669894号に記載された測定方法に準拠して測定した。
【0355】
具体的には、吸水性樹脂0.900gを容器に均一に入れた後、当該吸水性樹脂を人工尿に浸漬し、圧力2.07kPaで加圧した状態で吸水性樹脂を膨潤させた。前記人工尿は、塩化カルシウム二水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウム六水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、リン酸二水素アンモニウム0.85g、リン酸水素二アンモニウム0.15g、および純水994.25gを混合して調製した。
【0356】
加圧してから60分間経過後に、膨潤した吸水性樹脂であるゲル層の高さ(cm)を記録した。次いで、ゲル層を圧力2.07kPaで加圧した状態で、当該ゲル層に0.69質量%食塩水を通過させた。このときの室温は、20~25℃に調整した。そして、天秤とコンピューターとを用いて、ゲル層を通過する食塩水の量を20秒間隔で記録し、通過する食塩水の流速Fs(T)を計測した。流速Fs(T)は、20秒毎に増加する、通過した食塩水の質量(g)を、通過時間(s)で割ることにより計測される。食塩水の静水圧が一定となり安定した流速が得られた時間をTsとし、このTsを起点として10分間に計測されたデータを使用して、流速Fs(T=0)を算出した。即ち、Fs(T)を時間に対してプロットし、最小2乗法により得られる結果に基づいて、Fs(T=0)を算出した。Fs(T=0)は、ゲル層を通過する食塩水の最初の流速(g/s)である。そして、食塩水流れ誘導性(SFC)を、下記式(7)によって算出した。
【0357】
SFC={Fs(T=0)×L0}/(ρ×A×ΔP) 式(7)
式(7)において、L0はゲル層の高さ(cm)であり、ρは食塩水の密度(g/cm3)であり、Aはゲル層の断面積A(cm2)であり、ΔPはゲル層にかかる静水圧(dyne/cm2)である。
【0358】
[Vortex法による吸水速度]
吸水性樹脂のVortex法による吸水速度(単位:秒)は、JIS K 7224(1996)に準拠して、以下の手順にて測定した。
【0359】
具体的には、まず、生理食塩水1000質量部に食品添加物である食用青色1号(CAS No.3844-45-9)0.02質量部を添加して着色し、液温を30℃に調整した。これを試験液とした。
【0360】
次に前記試験液50mLを容量100mLのビーカーに計り取り、長さ40mm、直径8mmの円筒型攪拌子(スターラーチップ)を当該ビーカーに入れ、600rpmで攪拌を開始した。続いて、前記攪拌中の試験液中に吸水性樹脂2.0gを入れ、円筒型攪拌子がゲル化した試験液に覆われるまでの時間を測定し、Vortex法による吸水速度とした。以下、Vortex法による吸水速度を、単に「Vortex法吸水速度」とも表記する。
【0361】
[加圧下浸透依存吸収倍率(PDAUP)]
吸水性樹脂のPDAUPは、NWSP 243.0.R2(15)に準拠して測定した。具体的には、吸水性樹脂5.00gを秤量し、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用いて、4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)の荷重下で1時間膨潤させた後の吸水倍率(PDAUP)(単位:g/g)を測定した。
【0362】
[質量平均粒子径および対数標準偏差]
吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50、単位:μm)および吸水性樹脂粒子の粒度分布の狭さを示す対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された「(3) Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」の測定方法に準拠して測定した。
【0363】
[粒子径が150μmの粒子の割合]
目開き150μmを有するJIS標準篩(JISZ8801-1(2000))、又はJIS標準篩に相当する篩を用いて、吸水性樹脂10gを分級した。分級条件としては、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES-65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。分級後、粒子径が150μm未満の粒子の質量を用いて、粒子径が150μm未満の粒子の割合[質量%]を下記式
粒子径が150μm未満の粒子の割合[質量%]={(目開き150μmを通過した粒子の質量[g])/(吸水性樹脂の質量[g])}×100
〔粒子状含水ゲルのD50(質量平均粒子径)〕
一方、粒子状含水ゲル架橋重合体の質量平均粒子径は、以下の手法で測定した。
【0364】
即ち、粉砕した、温度20~25℃の粒子状含水ゲル(固形分α質量%)20gを、0.08質量%エマール20C(界面活性剤、花王株式会社製)を含む20質量%塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)500g中に添加して分散液とし、長さ50mm×直径7mmのスターラーチップを用いて300rpmで1時間攪拌した(高さ21cm、直径8cmの円柱のポリプロピレン製容器(容量約1.14L)を使用)。
【0365】
攪拌終了後、回転盤の上に重ねて設置したJIS標準の篩(直径21cm、篩の目開き:8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mm)の中央部に、前記分散液を投入した。エマール水溶液100gを使用して全粒子状含水ゲルを篩上に洗い出した後、上部からエマール水溶液6000gを、篩を手で回転させながら(20rpm)、30cmの高さからシャワー(孔72個あき、液量:6.0L/min)を使って注水範囲(50cm2)が篩全体に行きわたるように満遍なく注ぎ、粒子状含水ゲルを分級した。分級した一段目の篩上の粒子状含水ゲルを約2分間水切り後、秤量した。二段目以降の篩についても同様の操作で分級し、水切り後にそれぞれの篩の上に残留した粒子状含水ゲルを秤量した。
【0366】
各篩の上に残留した粒子状含水ゲルの質量から、下記式(8)より、粒子状含水ゲル全体に対する、質量割合X(単位:質量%)を算出した。篩の上に残留した固形分α質量%の粒子状含水ゲルに使用された篩の目開きR(α)(単位:mm)は、下記の式(9)に従って算出した。各々の篩に残留する粒子状含水ゲルのXとR(α)を、対数確率紙にプロットし、Xの累積重量比とR(α)の関係を示したグラフ(粒度分布)を作成した。このグラフから残留百分率が50質量%に相当する粒子径を粒子状含水ゲルの質量平均粒子径(D50)として読み取った。
【0367】
X=(w/W)×100 式(8)
R(α)=(20/W)1/3×r 式(9)
なお、ここで、X、w、W、R(α)及びrは下記の値を意味する。
【0368】
X:分級及び水切り後に各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量%(単位:質量%)
w:分級及び水切り後に各篩上に残留した粒子状含水ゲルのそれぞれの質量(単位:g)
W:分級及び水切り後に各篩上に残留した粒子状含水ゲルの総質量(単位:g)
R(α):固形分α質量%に換算した粒子状含水ゲルを分級した場合の篩の目開き(単位:mm:計算値)
r:0.08質量%エマール20C(界面活性剤、花王株式会社製)を含む20質量%塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した粒子状含水ゲルを分級したJIS標準の篩の目開き(単位:mm:実測値)
[比表面積]
吸水性樹脂の比表面積は、マイクロフォーカスX線CTシステム(島津製作所製inspeXio SMX-100CT)を用いて取得した吸水性樹脂の3次元画像データを、高速3次元解析ソフト(ラトックシステムエンジニアリング社製TRI/3D-VOL-FCS64)で解析することにより求めた値である。
【0369】
inspeXio SMX-100CTを用いて取得した前記3次元画像データは、胴径1cm、全長4cmのガラス製バイアルに吸水性樹脂を1g詰めたサンプルを作製し、当該バイアルの底面に両面テープを貼り付け、inspeXio SMX-100CTの試料台上に固定した状態で、下記条件で測定することにより取得した。
【0370】
X線管電圧(kV) :50
X線管電流(μA) :40
インチサイズ(inch) :4.0
X線フィルタ :なし
SDD(mm) :500
SRD(mm) :40
Z(mm) :108
X(mm) :0
Y(mm) :0
CTモード1 :CBCT
CTモード2 :ノーマル走査
走査角度 :フル走査
ビュー数 :1200
アベレージ数 :5
マルチローテーション回数 :なし
スムージング :YZ
スライス厚(mm) :0.008
スライス間距離(mm) :0.010
スケーリング係数 :50
BHCデータ :なし
精細モード :あり
FOV XY(mm) :5.0
FOV Z(mm) :4.0
ボクセルサイズ(mm/voxel):0.010
また、TRI/3D-VOL-FCS64を用いた画像解析では、下記手順(1)~(6)にそって解析を実施した。
【0371】
(1)L値を37580に設定し、計測対象領域における全粒子(吸水性樹脂粒子)の抽出を行った;(2)サイズが10voxel以下のノイズと考えられる粒子の除去処理を行った;(3)各粒子内部の独立気泡の抽出を行った;(4)本来は1粒子であるが複数の粒子としてみなされている粒子の合成処理、または、本来複数の粒子であるが1粒子としてみなされている粒子の分離処理を行った;(5)エッジ粒子の除去処理を行った;(6)単位をvoxelに設定し、計測対象領域における全粒子の総表面積と見かけ総体積、および独立気泡の総体積を算出した。なお、見かけ総体積とは、粒子内部に独立気泡が無いと仮定して算出した全粒子の総体積のことをさす。
【0372】
前記画像解析によって得られた値を用いて、下記式(10)から吸水性樹脂の比表面積を算出した。下記式(10)における吸水性樹脂の真密度は、本発明では1.7kg/m3に固定して計算した。真密度の測定は特許第6093751号に記載の方法に従った。また、真密度が不明の場合は、45μm未満の粒子径にまで粉砕された吸水性樹脂の乾式密度を測定し、当該乾式密度を真密度とした。
【0373】
比表面積(m2/kg)=総表面積(m2)/{(見かけ総体積(m3)-独立気泡の総体積(m3))×吸水性樹脂の真密度(kg/m3)} 式(10)。
【0374】
[含水率、固形分]
吸水性樹脂の含水率(単位:質量%)は、NWSP 230.0.R2(15)に準拠して測定した。ただし、本発明においては、NWSP 230.0.R2(15)で規定される測定条件のうち、試料である吸水性樹脂の量を1.0gに、乾燥温度を180℃に、それぞれ変更した。
【0375】
吸水性樹脂の固形分(単位:質量%)は、上記より測定された含水率の値を用いて、下記式(11)から算出した。
【0376】
固形分(質量%)=100‐含水率(質量%) 式(11)。
【0377】
[臭気評価]
(吸収体の作製)
10cm×16cmに裁断した不織布(大王製紙製、ヒートロンペーパーLFPWTF)を2枚重ね、ヒートシーラーにより、3辺を熱溶着させて、一辺が開口した不織布の袋を作製した。次に、吸水性樹脂10質量部を、前記の不織布の袋に入れた後、吸水性樹脂が漏れないように残りの1辺を熱溶着させて閉じ、評価用吸収体を得た。
【0378】
(吸収体の臭気評価)
吸収体の臭気評価は以下の(1)~(4)の手順で行った。
【0379】
(1)まず、
図2に示す、直径2.2cmのキャップ10を備えたポリエチレン製の蓋9を有する内容量2Lのガラス瓶8(低型貯蔵瓶 2Lまめ丸くん/石塚硝子株式会社)に、前記吸収体を入れた;(2)温度23.5±0.5℃の生理食塩水50gを注ぎ込んだ;(3)速やかに蓋9を閉め、前記ガラス瓶8を密閉して、室温24℃の室内で静置した;(4)前記ガラス瓶8を密閉してから10分経過後、蓋9を開け、吸収体の上部の空気の臭気を、成人10人のパネラーがかぐことによって、臭気評価を行った。従って、前記ガラス瓶8は、各パネラーに対して一つ準備した。
【0380】
評価方法は、臭気が無いものを0点とし、不快な臭気を強く感じるものを5点とし、被験者の不快度合いに応じて6段階評価する方法とした。この臭気ポイントは、点数が低い方が、不快臭が少ないことを示す。
【0381】
<判定基準>
0:周囲の空気と同じである
1:僅かに臭気を感じるものの、どのような臭気であるか表現することができない(但し、不快ではなく、気にはならない)
2:臭気を感じるものの、不快ではない
3:臭気を感じて、不快である
4:臭気を強く感じるものの、不快ではない
5:臭気を強く感じて、不快である。
【0382】
前記判定基準に基づいて各パネラーが臭気評価を行い、平均値を求め(小数点以下は四捨五入)、吸水性樹脂が膨潤してなる膨潤ゲルの臭気評価とした。尚、判定基準において「臭気を強く感じるものの、不快ではない」を「臭気を感じて、不快である」よりも悪い評価にした理由は、臭気の質の快不快には個人差があるため、臭気を強く感じる方が、吸水性樹脂を衛生材料として使用したときのリスクが高くなることによる。
【0383】
[アクリル酸]
実施例において使用したアクリル酸中の、p-メトキシフェノール量は70ppmであり、プロトアネモニン(protoanemonin)量、およびアルデヒド分量は各々ND(1ppm未満)であった。また、当該アクリル酸中の酢酸量は1470ppm、プロピオン酸量は270ppm、アクリル酸ダイマー量は90ppmであった。
【0384】
[製造例1]
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム水溶液2000g(単量体濃度:39質量%、Fe量:0.28ppm)に、ポリエチレングリコールアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:9)1.8gを溶解して、反応液(1)とした。得られた反応液(1)を、マグネティックスターラーを入れた、縦320mm×横220mm×高さ50mmのサイズのステンレス製のバット型容器に注入した。このとき、反応液の深さは23mmであった。当該バット型容器の上部を、窒素ガス導入口、排出口、および重合開始剤投入口を備えたポリエチレンフィルムでシールした。その後、バット型容器を水温25℃のウォーターバスに漬け、反応液の温度を25℃に保持しながら、当該反応液に窒素ガスを導入して、反応液中の溶存酸素を除去した。次いで、窒素ガスを、バット型容器における反応液の上部の空間に導入すると共に排出し続けた。即ち、当該空間の雰囲気を窒素ガスとした。
【0385】
その後、重合開始剤として、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液10.5gと、L-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.4gとを注入し、マグネティックスターラーで十分混合した。重合開始剤を投入してから2分間経過後、重合反応が開始されたので、前記バット型容器を、水温12℃のウォーターバスに当該バット型容器の底から10mmの高さまで浸ける操作を断続的に繰り返して、重合温度をコントロールした。重合反応が開始されてから15分間経過後、重合温度が85℃(ピーク温度)になったので、生成した含水ゲル状ポリマーを熟成するために、前記バット型容器を、水温60℃のウォーターバスに当該バット型容器の底から10mmの高さまで浸け、20分間保持した。その後、得られた含水ゲル状ポリマーを、孔径11mm、孔数18個のダイスを取り付けたミートチョッパー(型番:HL-G22SN/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル架橋重合体(1)を得た。当該粒子状含水ゲル架橋重合体(1)の質量平均粒子径は、2500μmであった。
【0386】
前記粒子状含水ゲル架橋重合体(1)を、50メッシュ(目の大きさ:300μm)の金網上に広げ、通気流回分式乾燥機(形式:71-S6/佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて、180℃で30分間、熱風乾燥した。次に、得られた乾燥物を、ロールミルを用いて粉砕する粉砕工程を行い、粉砕物を目開き710μmおよび150μmの金網で分級した。これにより、150μm~710μmの粒子径を有する不定形破砕状で粒子状の架橋重合体粉末(a)と、150μm未満の粒子径を有する微粉状の架橋重合体粉末(b)とを得た。
【0387】
上述した手順を繰り返すことにより、架橋重合体粉末(b)500gを得た。当該架橋重合体粉末(b)300gを、水温80℃のウォーターバスで保温された5Lモルタルミキサー(西日本試験機製作所製)に入れた後、当該モルタルミキサーの攪拌羽根を60Hz/100Vで高速回転させながら、80℃に調整した微粒子造粒用の水450gをモルタルミキサーに一気に投入した。水を投入してから10秒間以内に、架橋重合体粉末(b)と水とが混合されて造粒物となった。そして、水を投入してから10分間経過後に造粒物を取り出すことにより、3~10mmの粒子径の造粒ゲルを得た。さらに、得られた造粒ゲル600gと、上述した手順を繰り返すことによって得た粒子状含水ゲル架橋重合体(1)600gとを、軽く混ぜ合わせた。その後、得られた混合物を、50メッシュ(目の大きさ:300μm)の金網上に広げ、通気流回分式乾燥機(形式:71-S6/佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて、180℃で30分間、熱風乾燥した。次に、得られた乾燥物を、ロールミルを用いて粉砕する粉砕工程を行い、粉砕物を目開き710μmおよび150μmの金網で分級した。これにより、150μm~710μmの粒子径を有する不定形破砕状の架橋重合体粉末(c)を得た。当該架橋重合体粉末(c)の諸物性を前記架橋重合体粉末(a)と共に表2に示す。
【0388】
[製造例2]
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸400質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液185質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:9)2.3質量部、2質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液1.3質量部、10質量%ポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王株式会社製)水溶液5質量部、および脱イオン水368質量部を投入して混合することで、水溶液(1)を作製した。尚、脱イオン水は、40℃に予め加温した。
【0389】
続いて、前記水溶液(1)を攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液185質量部を、大気開放状態で約30秒間掛けて当該水溶液(1)に投入し、混合した。これにより、単量体水溶液(1)を調製した。尚、前記混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、当該単量体水溶液(1)の温度は約84℃まで上昇した。
【0390】
その後、前記単量体水溶液(1)の温度が83℃となった時点で、重合開始剤として5質量%過硫酸ナトリウム水溶液13質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液(2)とした。
【0391】
次に、前記反応液(2)を、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)を貼り付け)に、大気開放状態で流し込んだ。尚、該バット型容器は、ホットプレートを用いて、表面温度が40℃となるように予め加熱した。
【0392】
前記反応液(2)を前記バット型容器に流し込んだ後、1分間以内に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液(2)は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応は、約1分間以内に終了した。当該重合反応によって、含水ゲル状架橋重合体(2)を得た。
【0393】
次に、前記含水ゲル状架橋重合体(2)を適切な大きさに切断した後に、孔径8mm、孔数33個のダイスを取り付けたミートチョッパー(型番:HL-G22SN/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル架橋重合体(2)を得た。当該粒子状含水ゲル架橋重合体(2)の質量平均粒子径は、700μmであった。
【0394】
前記粒子状含水ゲル架橋重合体(2)を、50メッシュ(目の大きさ:300μm)の金網上に広げ、通気流回分式乾燥機(形式:71-S6/佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて、180℃で30分間、熱風乾燥した。次に、得られた乾燥物を、ロールミルを用いて粉砕する粉砕工程を行い、粉砕物を目開き710μmおよび150μmの金網で分級した。これにより、150μm~710μmの粒子径を有する不定形破砕状の(粒子状の)架橋重合体粉末(d)を得た。当該架橋重合体粉末(d)の諸物性を表2に示す。
【0395】
[製造例3]
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸400質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液185質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:9)2.5質量部、2質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液1.3質量部、および脱イオン水373質量部を投入して混合することで、水溶液(2)を作製した。尚、脱イオン水は、40℃に予め加温した。
【0396】
続いて、前記水溶液(2)を攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液185質量部を、大気開放状態で約30秒間掛けて当該水溶液(2)に投入し、混合した。これにより、単量体水溶液(2)を調製した。尚、前記混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、当該単量体水溶液(2)の温度は約84℃まで上昇した。
【0397】
その後、前記単量体水溶液(2)の温度が83℃となった時点で、重合開始剤として5質量%過硫酸ナトリウム水溶液13質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液(3)とした。
【0398】
次に、前記反応液(3)を、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)を貼り付け)に、大気開放状態で流し込んだ。尚、該バット型容器は、ホットプレートを用いて、表面温度が40℃となるように予め加熱した。
【0399】
前記反応液(3)を前記バット型容器に流し込んだ後、1分間以内に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液(3)は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応は、約1分間以内に終了した。当該重合反応によって、含水ゲル状架橋重合体(3)を得た。
【0400】
次に、前記含水ゲル状架橋重合体(3)を適切な大きさに切断した後に、孔径6mm、孔数52個のダイスを取り付けたミートチョッパー(型番:HL-G22SN/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル架橋重合体(3)を得た。当該粒子状含水ゲル架橋重合体(3)の質量平均粒子径は、400μmであった。
【0401】
前記粒子状含水ゲル架橋重合体(3)を、50メッシュ(目の大きさ:300μm)の金網上に広げ、通気流回分式乾燥機(形式:71-S6/佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて、180℃で30分間、熱風乾燥した。次に、得られた乾燥物を、ロールミルを用いて粉砕する粉砕工程を行い、粉砕物を目開き710μmおよび150μmの金網で分級した。これにより、150μm~710μmの粒子径を有する不定形破砕状の(粒子状の)架橋重合体粉末(e)を得た。当該架橋重合体粉末(e)の諸物性を表2に示す。
【0402】
[製造例4]
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン容器に、アクリル酸291.0質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:9)0.43質量部、アクリル酸にIRGACURE(登録商標184を1.0質量%溶解させたアクリル酸溶液3.6質量部、0.45質量%ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム0.61質量部および脱イオン水255質量部を投入して混合することで水溶液(3)を作成した。なお、脱イオン水は、50℃に予め加温した。
【0403】
続いて、前記水溶液(3)を攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液247質量部を大気開放状態で約30秒間かけて当該水溶液(3)に投入し、混合した。これにより、単量体水溶液(4)を調製した。尚、前記混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、当該単量体水溶液(4)の温度は約100℃まで上昇した。
【0404】
その後、前記単量体水溶液(4)の温度が98℃となった時点で、重合開始剤として3質量%過硫酸ナトリウム水溶液1.8質量部を加えて、約1秒間攪拌し、反応液(4)とした。
【0405】
次に、前記反応液(4)を、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)を貼り付け)に、大気開放状態で流し込んだ。また、ステンレス製バット型容器に反応液(4)を注ぎ込むと同時に紫外線を照射した。
【0406】
前記反応液(4)を前記バット型容器に流し込んだ後、1分間以内に重合反応が開始した。3分後、紫外線の照射を停止し、含水ゲル状架橋重合体(4)を得た。
【0407】
次に、前記含水ゲル状架橋重合体(4)を適切な大きさに切断した後に、孔径7.5mm、孔数38個のダイスを取り付けたミートチョッパー(型番:HL-G22SN/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル架橋重合体(4)を得た。当該粒子状含水ゲル架橋重合体(4)の質量平均粒子径は、1000μmであった。
【0408】
前記粒子状含水ゲル架橋重合体(4)を、50メッシュ(目の大きさ:300μm)の金網上に広げ、通気流回分式乾燥機(形式:71-S6/佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて、180℃で30分間、熱風乾燥した。次に、得られた乾燥物を、ロールミルを用いて粉砕する粉砕工程を行い、粉砕物を目開き710μmおよび150μmの金網で分級した。これにより、150μm~710μmの粒子径を有する不定形破砕状の(粒子状の)架橋重合体粉末(f)を得た。当該架橋重合体粉末(f)の諸物性を表2に示す。
【0409】
[製造例5]
内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、アクリル酸425.2質量部、37質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液4499.5質量部、脱イオン水538.5質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数:9)4.3質量部を投入して反応液(5)を調製した。その後、反応液(5)を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。
【0410】
続いて、反応液(5)を撹拌しながら、10質量%過硫酸ナトリウム水溶液28.3質量部および1質量%L-アスコルビン酸水溶液1.5質量部を添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で反応液(5)の温度は重合ピーク温度86℃に達した。重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体(5)を反応器から取り出した。なお、得られた含水ゲル状架橋重合体(5)は、細粒化された粒子状含水ゲル架橋重合体であった。当該粒子状含水ゲル架橋重合体(5)の質量平均粒子径は、1500μmであった。
【0411】
前記粒子状含水ゲル架橋重合体(5)を50メッシュ(目の大きさ:300μm)の金網上に広げ、通気流回分式乾燥機(形式:71-S6/佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて、170℃で65分間、熱風乾燥した。次に、得られた乾燥物を、ロールミルを用いて粉砕し、得られた粉砕物を目開き710μmおよび150μmの金網で分級した。これにより、150μm~710μmの粒子径を有する不定形破砕状の(粒子状の)架橋重合体粉末(g)を得た。当該架橋重合体粉末(g)の諸物性を表2に示す。
【0412】
【表2】
[比較例1]
得られた架橋重合体粉末(c)100質量部に、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.7質量部、および脱イオン水3質量部からなる表面架橋剤水溶液(4.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した。得られた混合物を、熱媒温度210℃の混合機で40分間加熱処理し、目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(1)を得た。当該基材吸水性樹脂(1)の諸物性を表3に示す。
【0413】
[比較例2]
製造例1で得られた架橋重合体粉末(c)100質量部に、トリエチレングリコール1.0質量部、および脱イオン水3質量部からなる表面架橋剤水溶液(4.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(2)を得た。当該基材吸水性樹脂(2)の諸物性を表3に示す。
【0414】
[比較例3]
製造例1で得られた架橋重合体粉末(c)100質量部に、エチレンカーボネート1.0質量部、プロピレンカーボネート1.0質量部、および脱イオン水4質量部からなる表面架橋剤水溶液(6.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(3)を得た。当該基材吸水性樹脂(3)の諸物性を表3に示す。
【0415】
[比較例4]
製造例2で得られた架橋重合体粉末(d)100質量部に、エチレングリコール0.8質量部、および脱イオン水2.5質量部からなる表面架橋剤水溶液(3.3質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(4)を得た。当該基材吸水性樹脂(4)の諸物性を表3に示す。
【0416】
[比較例5]
製造例2で得られた架橋重合体粉末(d)100質量部に、プロピレングリコール0.8質量部、1,6-ヘキサンジオール0.8質量部、および脱イオン水2.4質量部からなる表面架橋剤水溶液(4.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(5)を得た。当該基材吸水性樹脂(5)の諸物性を表3に示す。
【0417】
[比較例6]
製造例2で得られた架橋重合体粉末(d)100質量部に、トリエチレングリコール0.5質量部、プロピレングリコール0.5質量部、および脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液(4.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(6)を得た。当該基材吸水性樹脂(6)の諸物性を表3に示す。
【0418】
[比較例7]
得られた架橋重合体粉末(e)100質量部に、1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、および脱イオン水2.8質量部からなる表面架橋剤水溶液(3.8質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(7)を得た。当該基材吸水性樹脂(7)の諸物性を表3に示す。
【0419】
[比較例8]
得られた架橋重合体粉末(e)100質量部に、トリエチレングリコール0.3質量部、1,6-ヘキサンジオール0.3質量部、および脱イオン水3.4質量部からなる表面架橋剤水溶液(4.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(8)を得た。当該基材吸水性樹脂(8)の諸物性を表3に示す。
【0420】
[比較例9]
得られた架橋重合体粉末(e)100質量部に、エチレンカーボネート0.4質量部、1,6-ヘキサンジオール0.7質量部、および脱イオン水2.9質量部からなる表面架橋剤水溶液(4.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(9)を得た。当該基材吸水性樹脂(9)の諸物性を表3に示す。
【0421】
[比較例10]
得られた架橋重合体粉末(a)100質量部に、エチレンカーボネート0.4質量部、1,6-ヘキサンジオール0.7質量部、および脱イオン水3.9質量部からなる表面架橋剤水溶液(5.0質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(10)を得た。当該基材吸水性樹脂(10)の諸物性を表3に示す。
【0422】
[比較例11]
得られた架橋重合体粉末(f)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、プロピレングリコール1.50質量部、および脱イオン水3.50質量部からなる表面架橋剤水溶液(5.03質量部)を、スプレーで噴霧混合した。得られた混合物を、熱媒温度100℃の混合機で45分間加熱処理し、目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(11)を得た。当該基材吸水性樹脂(11)の諸物性を表3に示す。
【0423】
[比較例12]
得られた架橋重合体粉末(g)100質量部に、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、および脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液(3.8質量部)を、スプレーで噴霧混合した以外は、比較例1の操作と同様の操作を行った。これにより、表面架橋された吸水性樹脂である基材吸水性樹脂(12)を得た。当該基材吸水性樹脂(12)の諸物性を表3に示す。
【0424】
【表3】
[実施例1]
基材吸水性樹脂(1)を150℃に加熱し、内部の温度を150℃に設定した攪拌乾燥装置である二軸間接加熱乾燥機(CD-80/株式会社栗本鐵工所製)に、3.0kg/hrの割合で投入するとともに、原料投入口からスプレーを用いて脱イオン水を2.0kg/hrの割合で均一に添加した。そして、二軸間接加熱乾燥機の攪拌羽の回転数を20rpmとし、当該乾燥機内部に滞留する粉体(吸水性樹脂+脱イオン水)の量が2.5kgとなるように排出口の堰を調整して、連続的に攪拌乾燥を行った。当該乾燥機内部における粉体の滞留時間、すなわち乾燥時間は50分であった。粉体を連続的に乾燥させて排出することで吸水性樹脂(1)を得た。当該吸水性樹脂(1)の諸物性を表4に示す。
【0425】
[実施例2]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(2)を用い、乾燥機内部の温度を60℃に変更し、基材吸水性樹脂(2)を2.5kg/hrの割合で投入すると共に、水道水を0.28kg/hrの割合で添加することにより、当該乾燥機内部における基材吸水性樹脂(2)の滞留時間、即ち乾燥時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(2)を得た。当該吸水性樹脂(2)の諸物性を表4に示す。
【0426】
[実施例3]
基材吸水性樹脂(3)を150℃に加熱し、内部の温度を85℃に設定した攪拌乾燥装置である二軸間接加熱乾燥機(CD-80/株式会社栗本鐵工所製)に、3.00kg/hrの割合で投入するとともに、原料投入口からスプレーを用いて3.18質量%セスキ炭酸ナトリウム水溶液を0.66kg/hrの割合で均一に添加した。そして、二軸間接加熱乾燥機の攪拌羽の回転数を20rpmとし、当該乾燥機内部に滞留する粉体(吸水性樹脂+3.18質量%セスキ炭酸ナトリウム水溶液)の量が2.5kgとなるように排出口の堰を調整して、連続的に攪拌乾燥を行った。当該乾燥機内部における粉体の滞留時間、すなわち乾燥時間は50分であった。粉体を連続的に乾燥させて排出することで吸水性樹脂(3)を得た。当該吸水性樹脂(3)の諸物性を表4に示す。
【0427】
[実施例4]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(4)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、0.4質量%L-システイン水溶液を0.61kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(4)を得た。当該吸水性樹脂(4)の諸物性を表4に示す。
【0428】
[実施例5]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(5)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、0.09質量%グリセリン脂肪酸エステル(花王株式会社製、商品名:エキセル122V)水溶液を1.36kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(5)を得た。当該吸水性樹脂(5)の諸物性を表4に示す。
【0429】
[実施例6]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(6)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、1.00質量%リン酸二水素ナトリウム水溶液を0.61kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(6)を得た。当該吸水性樹脂(6)の諸物性を表4に示す。
【0430】
[実施例7]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(7)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、0.67質量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液を0.45kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(7)を得た。当該吸水性樹脂(7)の諸物性を表4に示す。
【0431】
[実施例8]
基材吸水性樹脂(8)30質量部、およびアジピン酸ジヒドラジド3質量部を容量225mlのマヨネーズ瓶に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動(室温下で3分間)によって混合し、吸水性樹脂(8)を得た。当該吸水性樹脂(8)の諸物性を表4に示す。
【0432】
[実施例9]
基材吸水性樹脂(9)50質量部を分取用ステンレスカラム(GLサイエンス社製、cat.no.6010-15023)に充填し、83.5℃、21.0MPaの条件で超臨界二酸化炭素を7.0g/minの流速で24時間流した。これにより、吸水性樹脂(9)を得た。当該吸水性樹脂(9)の諸物性を表4に示す。
【0433】
[実施例10]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(10)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、0.50質量%ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム系アニオン界面活性剤(三洋化成株式会社性、商品名:ビューライトESS)水溶液を0.24kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(10)を得た。当該吸水性樹脂(10)の諸物性を表4に示す。
【0434】
[実施例11]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(11)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、0.33質量%グリセロールモノオレエート(花王株式会社製、商品名:レオドールMO-60)水溶液を0.37kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(11)を得た。当該吸水性樹脂(11)の諸物性を表4に示す。
【0435】
[実施例12]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(12)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、1.00質量%リン酸3ナトリウム水溶液を1.07kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(12)を得た。当該吸水性樹脂(12)の諸物性を表4に示す。
【0436】
[実施例13]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(3)を用い、基材吸水性樹脂(3)を2.5kg/hrの割合で投入すると共に、脱イオン水を1.67kg/hrの割合で添加することにより、乾燥機内部における基材吸水性樹脂(3)の滞留時間、即ち乾燥時間を60分間としたこと以外は、実施例1の操作と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(13)を得た。当該吸水性樹脂(13)の諸物性を表4に示す。
【0437】
[実施例14]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(4)を用い、乾燥機内部の温度を90℃に変更し、基材吸水性樹脂(4)を3.0kg/hrの割合で投入すると共に、脱イオン水を0.75kg/hrの割合で添加した以外は、実施例1の操作と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(14)を得た。当該吸水性樹脂(14)の諸物性を表4に示す。
【0438】
[実施例15]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(5)を用い、乾燥機内部の温度を120℃に変更し、基材吸水性樹脂(5)を2.5kg/hrの割合で投入するとともに、脱イオン水を1.07kg/hrの割合で添加することにより、当該乾燥機内部における基材吸水性樹脂(5)の滞留時間、即ち乾燥時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(15)を得た。当該吸水性樹脂(15)の諸物性を表4に示す。
【0439】
[実施例16]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(6)を用い、乾燥機内部の温度を120℃に変更し、基材吸水性樹脂(6)を2.5kg/hrの割合で投入するとともに、脱イオン水を1.67kg/hrの割合で添加することにより、当該乾燥機内部における基材吸水性樹脂(6)の滞留時間、即ち乾燥時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(16)を得た。当該吸水性樹脂(16)の諸物性を表4に示す。
【0440】
[実施例17]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(7)を用い、基材吸水性樹脂(7)を3.75kg/hrの割合で投入するとともに、脱イオン水を1.6kg/hrの割合で添加することにより、当該乾燥機内部における基材吸水性樹脂(7)の滞留時間、即ち乾燥時間を40分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(17)を得た。当該吸水性樹脂(17)の諸物性を表4に示す。
【0441】
[実施例18]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(8)を用い、乾燥機内部の温度を90℃に変更し、基材吸水性樹脂(8)を5.0kg/hrの割合で投入するとともに、脱イオン水を0.55kg/hrの割合で添加することにより、当該乾燥機内部における基材吸水性樹脂(8)の滞留時間、即ち乾燥時間を30分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(18)を得た。当該吸水性樹脂(18)の諸物性を表4に示す。
【0442】
[実施例19]
基材吸水性樹脂(1)の替わりに基材吸水性樹脂(9)を用い、乾燥機内部の温度を100℃に変更し、基材吸水性樹脂(9)を3.0kg/hrの割合で投入するとともに、脱イオン水を0.75kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(19)を得た。当該吸水性樹脂(19)の諸物性を表4に示す。
【0443】
[実施例20]
基材吸水性樹脂(3)の替わりに基材吸水性樹脂(2)を用い、セスキ炭酸ナトリウム水溶液を添加する替わりに、1.5質量%アミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩水溶液を0.30kg/hrの割合で添加したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。これにより、吸水性樹脂(20)を得た。当該吸水性樹脂(20)の諸物性を表4に示す。
【0444】
[比較例13]
基材吸水性樹脂(4)100質量部に対して、メタクリル酸73mol%およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート27mol%からなる共重合体0.03質量部、並びに、脱イオン水6質量部からなる水性液体を、スプレーを用いて噴霧混合した。尚、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートのエチレングリコールの付加数はn=25であり、共重合体の質量平均分子量(Mw)は20000であった。得られた混合物を熱媒温度98℃の混合機に入れ、圧力700mmH2Oに減圧し、60分間撹拌した。これにより、比較用吸水性樹脂(13)を得た。各種条件等をまとめて表4に示し、当該比較用吸水性樹脂(13)の諸物性を表4に示す。
【0445】
[比較例14]
WO2012/108253の実施例4に準拠し、比較用吸水性樹脂(14)を得た。具体的な作成方法を以下に示す。
【0446】
(第1水溶液の調製)
500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しながら23.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液156.2gを滴下して90モル%の中和をした後、室温にて撹拌して完全に溶解させた。これに過硫酸カリウム0.11gおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを加えて溶解し、単量体の第1水溶液を調製した。
【0447】
(第2水溶液の調製)
500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しながら23.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.2gを滴下して60モル%の中和をした。これに過硫酸カリウム0.15gおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミド12.9mgを加えて溶解し、単量体の第2水溶液を調製した。この第2水溶液は、温度を約23℃に保持した。
【0448】
(工程1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管および攪拌機(翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン500mlを仕込み、これに無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社の商品名「ハイワックス1105A」)0.92gを添加した。そして、これを80℃まで昇温して溶解した後、60℃まで冷却した。
【0449】
撹拌機の回転数を300rpmに設定し、漏斗を用いて第1水溶液をセパラブルフラスコに一括添加した。そして、内温を40℃に設定して10分間攪拌し分散させた。続いて、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名「リョートーシュガーエステルS-370」)0.92gをn-ヘプタン8.5gに加温溶解することで調製した液をセパラブルフラスコに漏斗を用いて添加し、撹拌速度を500rpmに変更して第1水溶液を更に分散させた。
【0450】
次に、攪拌機の回転数を450rpmに設定し、セパブルフラスコ内を窒素で置換しながら40℃で30分間保持した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合したところ、球状の1次粒子のスラリーが得られた。このスラリーの一部から120℃の油浴を用いて水とn-ヘプタンとを共沸して水のみを系外へ抜き出し、続いてn-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は80μmであった。
【0451】
(工程2)
工程1で得られたスラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更して23℃に冷却し、第2水溶液をスラリーに添加した。そして、フラスコ内を窒素で置換しながら30分間保持した後、フラスコを再度70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合した。これにより、1次粒子が凝集した2次粒子を含むスラリーを得た。
【0452】
(後架橋工程)
工程2の後、120℃の油浴を使用してフラスコを加熱し、水とn-ヘプタンとを共沸することで、n-ヘプタンを還流しながら251.7gの水を系外へ抜き出した。そして、フラスコの内容物に後架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持した後、n-へプタンを蒸発させて乾燥した。これにより、表面が架橋した2次粒子からなる比較用吸水性樹脂(4)230.9gを得た。
【0453】
【表4】
[まとめ]
表4より明らかなように、実施例1~20で得られた吸水性樹脂1~20は、いずれも1.0倍膨潤時の揮発成分濃度が3.5ppm以下であり、かつ、臭気評価がいずれも0~2であり、不快な臭気は全く、またはほとんど感じられないものである。
【0454】
表3および4より明らかなように、比較例1~12で得られた基材吸水性樹脂1~12および比較用吸水性樹脂(13)、(14)は、いずれも1.0倍膨潤時の揮発成分濃度が3.9ppm以上であり、かつ、臭気評価がいずれも3以上であり、不快な臭気をはっきりと感じるものである。
【0455】
実施例1~20と比較例1~14の比較より明らかなように、吸水性樹脂の1.0倍膨潤時の揮発成分濃度が3.5ppm以下である場合に、膨潤時に発生する臭気を十分に低減した吸水性樹脂を得ることができることがわかった。また、吸水性樹脂1~20は諸物性を維持しており、近年の衛生材料に要求される吸水性能等の要求を満たすことも分かった。
【産業上の利用可能性】
【0456】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂は、吸水性樹脂の吸水性能等の物性を維持しつつ、膨潤時に発生する臭気を十分に低減した吸水性樹脂、および当該吸水性樹脂を含む衛生材料の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0457】
1 二酸化炭素ボンベ
2 圧力調整弁
3 高圧液体送液ポンプ
4 冷却装置
5 耐圧抽出槽
6 減圧バルブ
7 流量計
8 ガラス瓶
9 ポリエチレン製の蓋
10 ポリエチレン製のキャップ