(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】自律車両の駐車動作
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230428BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230428BHJP
B60W 30/06 20060101ALI20230428BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230428BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
B60W30/06
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2022505436
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 US2020045406
(87)【国際公開番号】W WO2021030189
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317015065
【氏名又は名称】ウェイモ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】ダイアー,ジョン,ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パーヴィシェヴ,コンスタンチン
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン,ジョナサン,リー
(72)【発明者】
【氏名】パンディット,サリル
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116739(JP,A)
【文献】特開2017-65357(JP,A)
【文献】特開2007-52600(JP,A)
【文献】特開2018-1979(JP,A)
【文献】特開2019-31284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0229020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律運転モードを有する車両を操作する方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、前記車両が停止して乗客を待つための停車位置を特定することと、
前記停車位置に前方に寄せることによって停車するために、前記1つ以上のプロセッサによって、前記自律運転モードで前記車両を操作することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記乗客に関する前記停車のコンテキストに基づいて、前記乗客が前記車両に入る前または入った後に、前記停車位置で前記車両を操作して後退させるかどうかを決定することと、
前記乗客が前記車両に入る前または入った後に、前記停車位置で前記車両を操作して後退させるかどうかの前記決定に基づいて、前記1つ以上のプロセッサによって、前記自律運転モードで前記車両を操作して後退させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記停車位置に前方に寄せることによって停車するために前記車両を操作するときに、前記車両の前にある別の物体の調整された最短距離内で前記車両を操作するために、他の物体に対する前記車両の最短距離を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記停車位置の所定の閾値距離内に歩行者がいることを判断することによって、前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入った後に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記停車位置の所定の閾値距離内に歩行者がいないことを判断することによって、前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入る前に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記車両が前記停車位置で操作され後退するように準備ができると、前記乗客が前記車両に到達するための予想される時間量を決定することによって、前記コンテキストを決定することと、
前記予想される時間量を閾値と比較することと、をさらに含み、前記乗客が前記車両に入る前または入った後に、前記停車位置で前記車両を操作して後退させるかどうかの前記決定は、前記比較にさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記車両を操作して後退させることは、前記比較が、前記予想される時間量が前記閾値よりも長いことを示しているときに、前記乗客が前記車両に入る前に、前記車両を操作して後退させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記車両を操作して後退させることは、前記比較が、前記予想される時間量が前記閾値よりも短いことを示しているときに、前記乗客が前記車両に入った後に、前記車両を操作して後退させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記予想される時間量を決定することは、前記乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報に基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記予想される時間量を決定することは、歩行者の所定の歩行速度にさらに基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記予想される時間量を決定することは、前記乗客が過去にピックアップのために1台以上の車両に到達するのにどれくらいの時間を要したかを示す、履歴データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記予想される時間量を決定することは、乗客がピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記予想される時間量を決定することは、乗客が所定の時刻のピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記予想される時間量を決定することは、乗客が所定の曜日のピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記予想される時間量を決定することは、乗客が前記停車位置でのピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記予想される時間量を決定することは、乗客が前記停車位置および1つ以上の追加の停車位置を含む地理的領域でのピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記車両に向かって前進している歩行者が、前記停車位置の所定の距離内にいることを判断することによって前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入った後に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記車両に向かって前進している歩行者が、前記停車位置の所定の距離内にいないことを判断することによって前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入った後に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記車両の1つ以上のコンピューティングデバイスと前記乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスとの間に、通信リンクが確立されていることを判断することによって前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入った後に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記車両の1つ以上のコンピューティングデバイスと前記乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスとの間に、通信リンクが確立されていないことを判断することによって前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入る前に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報が、前記車両の所定の閾値距離内にあることを判断することによって前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入った後に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報が、前記車両の所定の閾値距離内にないことを判断することによって前記コンテキストを決定することをさらに含み、前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入る前に前記車両を操作して後退させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記車両を操作して後退させることは、前記乗客が前記車両に入る前に前記車両を操作して後退させることを含み、前記方法は、前記乗客に通知を提供して、前記乗客が前記車両に入ろうと試みる前に前記車両が後退操作を完了するのを待つべきであることを示すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月9日に出願された米国仮特許出願第16/536,560号の出願日の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ある場所から別の場所への乗客または物品の輸送を支援するために、自律運転モードで動作させるとき、人間の運転手を必要としない車両などの自律車両を使用することができる。運転手がいない可能性のある自律車両が、乗客をピックアップするために停車する準備をしているとき、縦列駐車(駐車スポットに並んで寄せ、後退してその駐車スポットに入ることを含む)などの特定の駐車操作は難しく、かつ時には危険な操作である場合がある。例えば、縦列駐車操作を完了するにはかなり長い時間がかかる可能性があり、その間、乗客は、車両が完全に駐車される前に無意識のうちに車両に乗り込もうとする場合があり、不快な状況を引き起こす可能性がある。さらに、車両のコンピューティングデバイスは、車両の後ろに非常に接近したり、後退せずに同じスポットに寄せようとしたりする可能性のある他の近くの車両の運転手からの社会的合図に気付くことができない場合がある。場合によっては、これは、車両が縦列駐車操作を使用する必要がないかもしくは出るために後退したりする必要のない、非常に長い停車位置を常に見つけようとすることによって回避され得る。当然のことながら、これは常に可能であるとは限らず、車両が「ブロックの周り」で1回以上周回してから、停車して乗客を待つことができる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、自律運転モードを有する車両を操作する方法を提供する。本方法は、1つ以上のプロセッサによって、車両が停止して乗客を待つための停車位置を特定することと、停車位置に前方に寄せることによって停車するために、1つ以上のプロセッサによって、自律運転モードで車両を操作することと、1つ以上のプロセッサによって、乗客に関する停車のコンテキストに基づいて、乗客が車両に入る前または入った後に、停車位置で車両を操作して後退させるかどうかを決定することと、乗客が車両に入る前または入った後に、停車位置で車両を操作して後退させるかどうかの決定に基づいて、1つ以上のプロセッサによって、自律運転モードで車両を操作して後退させることと、を含む。
【0004】
一例では、本方法はまた、停車位置に前方に寄せることによって停車するために車両を操作するときに、車両の前にある別の物体の調整された最短距離内で車両を操作するために、他の物体に対する車両の最短距離を調整することも含む。別の例では、本方法はまた、停車位置の所定の閾値距離内に歩行者がいることを判断することによって、コンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入った後に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、停車位置の所定の閾値距離内に歩行者がいないことを判断することによって、コンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入る前に車両を操作して後退させることを含む。
【0005】
別の例では、本方法はまた、車両が停車位置で操作され後退するように準備ができると、乗客が車両に到達するための予想される時間量を決定することによって、コンテキストを決定することと、予想される時間量を閾値と比較することと、も含む。この例では、乗客が車両に入る前または入った後に、停車位置で車両を操作して後退させるかどうかの決定は、上記比較にさらに基づく。加えて、車両を操作して後退させることは、上記比較が、予想される時間量が閾値よりも長いことを示しているときに、乗客が車両に入る前に、車両を操作して後退させることを含む。代わりに、車両を操作して後退させることは、上記比較が、予想される時間量が閾値よりも短いことを示しているときに、乗客が車両に入った後に、車両を操作して後退させることを含む。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報に基づく。この例では、予想される時間量を決定することは、歩行者の所定の歩行速度にさらに基づく。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客が過去にピックアップのために1台以上の車両に到達するのにどれくらいの時間を要したかを示す、履歴データに基づく。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客がピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客が所定の時刻のピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客が所定の曜日のピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客が停車位置でのピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく。加えて、または代わりに、予想される時間量を決定することは、乗客が停車位置および1つ以上の追加の停車位置を含む地理的領域でのピックアップのために1台以上の車両に到達するための、予想される時間量を示す履歴データに基づく。
【0006】
別の例では、本方法はまた、車両に向かって前進している歩行者が、停車位置の所定の距離内にいることを判断することによってコンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入った後に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、車両に向かって前進している歩行者が、停車位置の所定の距離内にいないことを判断することによってコンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入った後に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、車両の1つ以上のコンピューティングデバイスと乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスとの間に、通信リンクが確立されていることを判断することによってコンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入った後に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、車両の1つ以上のコンピューティングデバイスと乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスとの間に、通信リンクが確立されていないことを判断することによってコンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入る前に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報が、車両の所定の閾値距離内にあることを判断することによってコンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入った後に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報が、車両の所定の閾値距離内にないことを判断することによってコンテキストを決定することも含み、車両を操作して後退させることは、乗客が車両に入る前に車両を操作して後退させることを含む。別の例では、本方法はまた、車両を操作して後退させることが、乗客が車両に入る前に車両を操作して後退させることを含むことも含み、本方法は、乗客に通知を提供して、乗客が車両に入ろうと試みる前に車両が後退操作を完了するのを待つべきであることを示すことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】典型的な実施形態に係る例示的な車両の機能図である。
【
図3】本開示の態様に係る車両の例示的な外観図である。
【
図4】本開示の態様に係る
図2の地図情報に対応する、車道の区画の例である。
【
図5】本開示の態様に係る
図4の車道の区画における、自律運転モードを有する車両の例である。
【
図6】本開示の態様に係る
図4の車道の区画における、自律運転モードを有する車両の例である。
【
図7】本開示の態様に係る
図4の車道の区画における、自律運転モードを有する車両の例である。
【
図8】本開示の態様に係る
図4の車道の区画における、自律運転モードを有する車両の例である。
【
図9】本開示の態様に係る
図4の車道の区画における、自律運転モードを有する車両の例である。
【
図10】本開示の態様に係る例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概要
本技術は、自律車両の駐車動作に関する。例えば、運転手がいない可能性のある自律車両が、乗客をピックアップするために停車する準備をしているとき、縦列駐車(駐車スポットに並んで寄せ、後退してその駐車スポットに入ることを含む)などの特定の駐車操作は難しく、かつ時には危険な操作である場合がある。例えば、縦列駐車操作を完了するにはかなり長い時間がかかる可能性があり、その間、乗客は、車両が完全に駐車される前に無意識のうちに車両に乗り込もうとする場合があり、不快な状況を引き起こす可能性がある。さらに、車両のコンピューティングデバイスは、車両の後ろに非常に接近したり、後退せずに同じスポットに寄せようとしたりする可能性のある他の近くの車両の運転手からの社会的合図に気付くことができない場合がある。場合によっては、これは、車両が縦列駐車操作を使用する必要がないかもしくは出るために後退したりする必要のない、非常に長い停車位置を常に見つけようとすることによって回避され得る。当然のことながら、これは常に可能であるとは限らず、車両が「ブロックの周り」で1回以上周回してから、停車して乗客を待つことができる場合がある。このような状況を回避するために、縦列駐車操作を実施するのではなく、かつ/または停車するための非常に長い場所を探したりするのではなく、他の運転動作を実行することができる。
【0009】
例えば、例えば乗客をピックアップしたり降ろしたりするために車両が停車する前に、車両のコンピューティングデバイスは、最初に停車する場所を特定することができる。これには、例えば、事前に保存された地図情報内の所定の停車位置のセットを特定することによって、または車両が前方に寄せて停止するのに十分な長さの道路脇のエリアを検索することによって可能なスポットを特定することによって、車両が駐車することを許可されるエリアを特定することが含まれ得る。これらの所定の停車位置のセットおよび/または可能な停車位置のうち、車両のコンピューティングデバイスは、利用可能な停車位置を選択することができる。
【0010】
車両が特定された停車位置に停車する準備ができると、車両のプランニングシステムは、停車動作を実行することができる。これには、特定された停車位置へ前方に寄せて車両を停止させることが含まれ得る。場合によっては、これにより、特定された停車位置から出せるようになる前に、車両が後退する(すなわち、バックする)必要があり得る。
【0011】
この時点で、または車両が特定された停車位置に接近または寄せる直前に、車両のコンピューティングデバイスは、車両と別の物体との間に間隔を作るために車両を直ちに後退させるべきかどうかを決定することができる。車両が直ちに後退するか、または乗客が車両に入るのを待つべきかを決定するために、車両のコンピューティングデバイスは、車両の乗客に関する停車のコンテキストを決定することができる。例えば、このコンテキストは、とりわけ、実際の乗客(すなわち、割り当てられた乗客)または潜在的な乗客(すなわち、乗客である可能性のある歩行者)が近くにいるかどうかを示し得る。このコンテキストに基づいて、車両のコンピューティングデバイスは、乗客が車両に入るのを待ってから車両を操作して後退させるべきである。コンテキストが、実際の乗客または潜在的な乗客が車両の近くにいないことを示している場合、車両のコンピューティングデバイスは、乗客が車両に入る前に、車両を操作して後退させることができる。これは、車両の前の物体から離れるように後退することを含み得る。
【0012】
一例では、コンテキストを決定することは、乗客が車両に到達または到着するのに予想される時間量を決定することを含み得る。加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、近くに歩行者がいるかどうかを決定することを含み得る。加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、車両に向かって能動的に前進している歩行者がいるかどうかを決定することを含み得る。加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、車両のコンピューティングデバイスが、乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスとの通信を確立および/または認証したかどうかを判断することを含み得る。加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、乗客のクライアントコンピューティングデバイスの位置情報が、乗客が車両の近くにいることを示しているかどうかを判断することを含み得る。
【0013】
本明細書に記載される特徴は、自律車両が特定の駐車動作を実行することを可能にし得る。上記のように、これらの駐車動作は、自律運転モードを有する車両のコンピューティングデバイスが、安全にかつ縦列駐車操作を回避しながら、利用可能な停車位置を見つける能力を向上させることができる。言い換えれば、車両はより小さな駐車位置を見つけることができるため(例えば、長さ5.1~5.2メートルのバンは、15メートル以上の停車位置ではなく、8~10メートルの停車位置で停車できる可能性がある)、車両は、乗客を待つために停車位置を見つける可能性が高く、停車位置を見つける前に周囲を1回以上周回しなければならない可能性は低い。さらに、車両が停車位置で後退するタイミングは、車両の潜在的もしくは実際の乗客に関する停車のコンテキストに依存するため、これにより、車両が停止し、ここでも乗客にとって危険であり得る、車両が後退する直前もしくは後退中に、知らない乗客が車両に乗り込もうと試みる状況を回避することができる。
【0014】
例示的システム
図1に示されるように、本開示の一態様による車両100は、様々な構成要素を含む。本開示のいくつかの態様は、特定のタイプの車両に関連して特に有用であるが、車両は、自動車、トラック、オートバイ、バス、レクリエーション車両などを含むがこれらに限定されない任意のタイプの車両であってもよい。車両は、1つ以上のコンピューティングデバイス、例えば、1つ以上のプロセッサ120、メモリ130、および汎用コンピューティングデバイスに典型的に存在する他の構成要素を含むコンピューティングデバイス110を有し得る。
【0015】
メモリ130は、1つ以上のプロセッサ120によってアクセス可能である情報を記憶し、その情報には、プロセッサ120によって実行または別様に使用され得る命令134およびデータ132が含まれる。メモリ130は、プロセッサによってアクセス可能である情報を記憶することができる任意のタイプのメモリであってもよく、それには、コンピューティングデバイス可読媒体、またはハードドライブ、メモリカード、ROM、RAM、DVD、もしくは他の光ディスク、ならびに他の書き込み可能および読出し専用メモリなどの電子デバイスを用いて読み取ることができるデータを記憶する他の媒体が含まれる。システムおよび方法は、上記の異なる組み合わせを含んでもよく、それによって、命令およびデータの様々な部分が、様々なタイプの媒体に記憶される。
【0016】
命令134は、プロセッサにより直接的に(マシンコードなど)または間接的に(スクリプトなど)実行される任意の一連の命令であってもよい。例えば、命令は、コンピューティングデバイス可読媒体上のコンピューティングデバイスコードとして記憶されてもよい。その点について、「命令」および「プログラム」という用語は、本明細書では、互換的に使用され得る。命令は、プロセッサによる直接処理のための物体コード形式で、または要求に応じて解釈されるか、もしくは予めコンパイルされるスクリプトもしくは独立したソースコードモジュールの集合を含む、任意の他のコンピューティングデバイス言語で記憶されてもよい。命令の機能、方法、およびルーチンについては、以下でさらに詳細に説明される。
【0017】
データ132は、命令134に従ってプロセッサ120によって検索、記憶、または修正されてもよい。例えば、特許請求された主題は、いかなる特定のデータ構造にも限定されないが、データは、コンピューティングデバイスレジスタ内、複数の異なるフィールドおよびレコードを有する表、XMLドキュメント、またはフラットファイルとしてリレーショナルデータベース内に記憶されてもよい。データはまた、任意のコンピューティングデバイス可読形式でフォーマットされてもよい。
【0018】
1つ以上のプロセッサ120は、市販されているCPUまたはGPUなどの任意の従来のプロセッサであってもよい。代替的に、1つ以上のプロセッサは、ASICまたは他のハードウェアベースプロセッサなどの専用デバイスであり得る。
図1は、プロセッサ、メモリ、およびコンピューティングデバイス110の他の要素を同じブロック内にあるものとして機能的に例示しているが、プロセッサ、コンピューティングデバイス、またはメモリは、実際には、同じ物理的な筐体内に格納されていてもいなくてもよい複数のプロセッサ、コンピューティングデバイス、またはメモリを含むことができることは、当業者により、理解されるであろう。例えば、メモリは、ハードドライブ、またはコンピューティングデバイス110の筐体とは異なる筐体内に配置された他のストレージ媒体であってもよい。したがって、プロセッサまたはコンピューティングデバイスへの言及は、並行に動作してもしなくてもよいプロセッサまたはコンピューティングデバイスまたはメモリの集合体への言及を含むことを理解されたい。
【0019】
一態様では、コンピューティングデバイス110は、自律運転モードで車両を制御するために、車両の様々な構成要素と通信することができる、自律制御システムの一部分であってもよい。例えば、
図1に戻ると、コンピューティングデバイス110は、自律運転モードにおいて、メモリ130の命令134に従って、車両100の動き、速度などを制御するために、減速システム160、加速システム162、ステアリングシステム164、ルーティングシステム166、プランニングシステム168、測位システム170、および認知システム172など、車両100の様々なシステムと通信し得る。
【0020】
一例として、コンピューティングデバイス110は、車両の速度を制御するために、減速システム160および加速システム162と相互作用し得る。同様に、ステアリングシステム164は、車両100の方向を制御するために、コンピューティングデバイス110によって使用されてもよい。例えば、車両100が自動車またはトラックのように道路で使用するように構成されている場合、ステアリングシステムは、車両の向きを変えるための車輪の角度を制御する構成要素を含んでいてもよい。
【0021】
ルーティングシステム166は、目的地へのルートを生成するために、コンピューティングデバイス110によって使用されてもよい。プランニングシステム168は、ルートをたどるために、コンピューティングデバイス110によって使用されてもよい。この点において、プランニングシステム168および/またはルーティングシステム166は、詳細な地図情報、例えば、車道の形状および高度、車線境界線、交差点、横断歩道、制限速度、信号機、建物、標識、リアルタイムの交通情報、停車スポット、植物、または他のそのような物体および情報を識別する非常に詳細な地図を格納し得る。
【0022】
図2は、車道の区画に関する地図情報200の例である。地図情報200は、コンピューティングデバイス110のメモリ130に格納された地図情報のローカルバージョンでもよい。この例では、地図情報200は、縁石210、212、車線220、222、駐車スポット230、232、234、ならびに乗り場240の形状、位置、および他の特性を識別する情報を含む。
図2には、そのような特徴のいくつかのみが示されているが、地図情報200は、車両100を自律運転モードで制御できるようにするために、著しくより多くの特徴および詳細を含み得る。
【0023】
本明細書では、地図情報を画像ベースの地図として描いているが、地図情報は、完全に画像ベースである必要はない(例えば、ラスタ)。例えば、地図情報は、1つ以上の道路グラフ、または道路、車線、交差点、および道路区分で表し得るこれらの特徴間の接続などの情報のグラフネットワークを含み得る。各特徴は、グラフデータとして記憶され得、地理的場所などの情報と関連付けられ得、他の関連する特徴にリンクされているかどうかにかかわらず、例えば、一時停止標識は、道路および交差点などにリンクされ得る。いくつかの例では、関連付けられたデータは、道路グラフのグリッドベースのインデックスを含んで、特定の道路グラフの特徴の効率的な検索を可能にし得る。
【0024】
測位システム170は、地図上または地球上の車両の相対的または絶対的位置を判定するために、コンピューティングデバイス110によって使用され得る。例えば、測位システム170は、デバイスの緯度、経度、および/または標高の位置を判定するためのGPS受信機を含むことができる。レーザを利用した位置特定システム、慣性支援GPS、またはカメラを利用した位置特定などの他の位置特定システムも、車両の位置を識別するために使用することができる。車両の位置は、緯度、経度、および標高などの絶対的な地理的位置だけでなく、多くの場合、より少ないノイズでその絶対的な地理的位置を判定することができる、車両のすぐ周りにある他の車に対する位置などの相対的な位置情報を含むことができる。
【0025】
測位システム170はまた、車両の方向および速度、またはそれらの変化を判定するための加速度計、ジャイロスコープ、または別の方向/速度検出デバイスなど、コンピューティングデバイス110のコンピューティングデバイスと通信する他のデバイスを含んでいてもよい。例示に過ぎないが、加速デバイスは、重力の方向、または重力に対して垂直な平面に対する車両の縦揺れ、偏揺れ、または横揺れ(またはそれらの変化)を判定してもよい。このデバイスはまた、速度の増減、およびそのような変化の方向を追跡することもできる。本明細書で説明したようなデバイスの位置および方位データの提供は、コンピューティングデバイス110、他のコンピューティングデバイス、および上記の組み合わせに自動的に提供され得る。
【0026】
認知システム172はまた、他の車両、車道内の障害物、交通信号、標識、樹木などの車両の外部にある物体を検出するための、1つ以上の構成要素を含む。例えば、認知システム172は、レーザ、ソナー、レーダー、カメラ、および/またはコンピューティングデバイス110のコンピューティングデバイスによって処理され得るデータを記録する、他の任意の検出デバイスを含んでもよい。車両がミニバンなどの乗客車両である場合には、ミニバンは、ルーフまたは他の都合の良い位置に搭載されるレーザまたは他のセンサを含んでもよい。例えば、
図3は、車両100の例示的な外観図である。この例では、ルーフ上部筐体310およびドーム状筐体312は、LIDARセンサ、ならびに様々なカメラおよびレーダーユニットを含み得る。加えて、車両100の前端部に位置する筐体320、ならびに車両の運転者側および助手席側の筐体330、332は、各々、LIDARセンサを記憶し得る。例えば、筐体330は、運転者ドア360の前部に位置している。車両100はまた、車両100のルーフ上にまた位置するレーダーユニットおよび/またはカメラのための筐体340、342を含む。追加のレーダーユニットおよびカメラ(図示せず)は、車両100の前端および後端に、ならびに/またはルーフもしくはルーフ上部筐体310に沿った他の位置上に位置し得る。
図3は、左右の方向指示器112、114も示している。この例では、前部左方向指示器112A、後部左方向指示器112B、および前部右方向指示器114Aが示されているが、
図3の観点からは、後部右方向指示器は見えない。
【0027】
コンピューティングデバイス110は、コンピューティングデバイス110のメモリのプライマリ車両制御コードに従って車両100の動きを制御するために、車両の様々な構成要素と通信することが可能であり得る。例えば、
図1に戻ると、コンピューティングデバイス110は、メモリ130の命令134に従って、車両100の動き、速度などを制御するために、減速システム160、加速システム162、ステアリングシステム164、ルーティングシステム166、プランニングシステム168、測位システム170、認知システム172、および動力系174(すなわち、車両のエンジンまたはモータ)などの車両100の様々なシステムと通信する、様々なコンピューティングデバイスを含んでもよい。
【0028】
車両の様々なシステムは、どのように車両を制御するかを判定するためおよび制御するために、自律車両制御ソフトウェアを使用して機能し得る。一例として、認知システム172の認知システムソフトウェアモジュールは、カメラ、LIDARセンサ、レーダーユニット、ソナーユニットなどの自律車両の1つ以上のセンサによって生成されたセンサデータを使用して、物体およびその特徴を検出および識別することができる。これらの特徴には、位置、タイプ、進行方向、配向、速度、加速度、加速度の変化、サイズ、形状などを含み得る。場合によっては、物体タイプに基づいて様々な動作モデルを使用する動作予測システムソフトウェアモジュールに特徴を入力して、検出された物体の予測される将来の動作を出力する。他の例では、特徴は、既知の交通信号の状態を検出するように構成された信号機検出システムソフトウェアモジュール、車両の1つ以上のセンサによって生成されたセンサデータから建設ゾーンを検出するように構成された建設ゾーン検出システムソフトウェアモジュール、ならびに、車両のセンサによって生成されたセンサデータから緊急車両を検出するように構成された緊急車両検出システムなどの1つ以上の検出システムソフトウェアモジュールに入れることができる。これらの検出システムソフトウェアモジュールの各々は、様々なモデルを使用して、建設ゾーンまたは物体が緊急車両である可能性を出力し得る。検出された物体、予測された将来の行動、検出システムソフトウェアモジュールからの様々な可能性、車両の環境を識別する地図情報、車両の位置および方位を識別する測位システム170からの位置情報、車両の目的地、ならびに車両の様々な他のシステムからのフィードバックをプランニングシステム168のプランニングシステムソフトウェアモジュールに入力し得る。プランニングシステムは、この入力を使用して、ルーティングシステム166のルーティングモジュールによって生成されたルートに基づいて、将来のある短い期間にわたって車両がたどる軌道を生成することができる。コンピューティングデバイス110の制御システムソフトウェアモジュールは、例えば、軌道をたどるために、車両の制動、加速、およびステアリングを制御することによって、車両の動きを制御するように構成し得る。
【0029】
コンピューティングデバイス110は、様々な構成要素を制御することにより、自律運転モードで車両を制御することができる。例として、例えば、コンピューティングデバイス110は、詳細な地図情報およびプランニングシステム168からのデータを使用して、車両を目的地の位置に完全に自律的にナビゲートすることができる。コンピューティングデバイス110は、車両の位置を判定するために測位システム170を使用し、その位置に安全に到着するために、必要に応じて、物体を検出し、かつ物体に応答するために、認知システム172を使用してもよい。ここでも、そのために、コンピューティングデバイス110は、軌道を生成し、車両にこれらの軌道を追従させ、(例えば、加速システム162により、エンジンまたは動力系174に燃料または他のエネルギーを供給することによって)車両を加速させ、(例えば、エンジンまたは動力系174に供給される燃料を減少させ、ギヤを変更し、および/または減速システム160によりブレーキをかけることによって)減速させ、(例えば、ステアリングシステム164により、車両100の前輪または後輪の向きを変えることによって)方向変換させ、(例えば、シグナリングシステムの方向指示器112または114を点灯することによって)そのような変更を信号通知することができる。このため、加速システム162および減速システム160は、車両のエンジンと車両の車輪との間に様々なコンポーネントを含む、動力伝達装置の一部であり得る。この場合も、これらのシステムを制御することによって、コンピューティングデバイス110はまた、車両を自立的に操縦するために、車両の動力伝達装置を制御し得る。
【0030】
例示的な方法
上述し、図に示した動作に加えて、様々な動作を、ここで説明する。以下の動作は、以下に説明する正確な順序で実施される必要がないことを理解されたい。むしろ、様々な工程が、異なる順序で、または同時に処理されてもよく、工程もまた、追加または省略されてもよい。
【0031】
図4は、地図情報200に対応する車道400の区画の例示的な表現である。これに関して、縁石410、412の形状、位置、および他の特性は、縁石210、212に対応し得、車線420、422は、車線220、222に対応し得、駐車スポット430、432、434は、駐車スポット230、232、234に対応し得、かつ乗り場440は、乗り場240に対応し得る。
図5は、位置マーカ510によって表されるピックアップ位置に接近中の、車道400の区画上の車両100の例示的な表現である。
【0032】
図10は、自律運転モードを有する車両を操作するために、コンピューティングデバイス110のプロセッサ120などの、1つ以上のコンピューティングデバイスの1つ以上のプロセッサによって実施され得る、本開示の態様による例示的なフロー
図1000である。この例では、ブロック1010で、車両が停止して乗客を待つための停車位置が特定される。言い換えれば、例えば、乗客をピックアップしたり降ろしたりするために、車両100が停車することができる前に、コンピューティングデバイス110は、最初に車両100が停車する場所を特定することができる。これには、例えば、
図2の駐車スポット230、232、234などの地図情報200内の所定の停車位置のセットを識別することによって、または車両が前方に寄せて停止するのに十分な長さの道路脇のエリアを検索することによって可能な停車位置を特定することによって、車両が駐車することを許可されるエリアを特定することが含まれ得る。場合によっては、コンピューティングデバイス110はまた、地図情報200に基づいて、または乗り場440のエリアが車両100が安全に駐車するのに十分大きいと判断することによって、乗り場240を、可能な停車位置として特定することもできる。
【0033】
これらの所定の停車位置のセットおよび/または可能な停車位置のうち、コンピューティングデバイス110は、停車位置が利用可能であり、さらに車両が停車位置に寄せることができるように十分に広い(すなわち、部分的に占有されていない)、利用可能な停車位置を特定または選択することができる。例えば、
図5に戻ると、コンピューティングデバイスは、駐車スポット430および434(または駐車スポット230および234)が、ここではそれぞれ車両520および530によって占有されていると判断することができる。これに関して、コンピューティングデバイス110は、駐車スポット230(または駐車スポット232)、および場合によっては乗り場440(または乗り場240)を、利用可能であるとして特定することができる。次に、コンピューティングデバイス110は、乗り場440および駐車スポット430から選択することができる。この例では、車両100は、乗り場440が位置マーカ510の位置に接近していたとしても、乗り場440よりも駐車スポット430で乗客をより長く待つことができ得るため、駐車スポット430を特定または選択することが好ましい可能性がある。
【0034】
図10に戻ると、ブロック1020で、車両は、停車し停車位置へ前方に寄せるために、自律運転モードで操作される。車両100が特定された停車位置に停車する準備ができると、車両のプランニングシステムは、停車動作を実行することができる。これには、車両100を特定された停車位置へ前方に寄せて車両を停止させるために、車両100を自律的に操作するコンピューティングデバイス110が関わり得る。例えば、
図6に目を向けると、コンピューティングデバイス110は、プランニングシステム168を使用して、軌道610を生成することができる。その後、コンピューティングデバイス110は、上述の軌道610に従うために、車両100を制御することができる。
図7は、特定された停車位置(ここでは駐車スポット432)に寄せた後の車両100を表す。
【0035】
典型的には、運転状況にあるとき、コンピューティングデバイス110は、常に、車両100と他の道路利用者との間の最小距離を維持しようと試み得る。例えば、交差点で停車しようとする場合、車両100は、常に、別の停車中の車両の少なくともおおむね2メートル後ろに停車することができる。ただし、特定された停車位置に寄せるときに、停車動作により、この最小距離が調整され、例えばおおむね0.15メートル(約6インチ)などのはるかに短い距離に減少される場合がある。例えば、
図7に示されるように、車両100と車両520との間の距離、ここではD1は、ほんのおおむね数インチであり得る。車両を別の物体の非常に近くに寄せるのを可能にすることにより、特定された停車位置から出られるようになる前に、車両を後退させる必要がある可能性もある。
【0036】
図10に戻ると、ブロック1030で、乗客に関する停車のコンテキストに基づいて、乗客が車両に入る前または入った後に、停車位置で車両を操作して後退させるかどうかが決定される。車両100を、前方に寄せることによって停車するために操作する時点で、または車両が特定された停車位置に接近する直前に、コンピューティングデバイス110は、車両と別の物体(別の駐車車両など)との間の間隔を作るために車両が直ちに後退すべきかどうかを決定することができる。場合によっては、車両100の前に停車位置がない(すなわち、車両の前に駐車場がない)場合など、後退が必要とされない場合もあるが、しかしながら、多くの場合、車両100が特定された停車位置から出る準備をするために、後退することが有用であり得る。
図8に目を向けると、プランニングシステム168は、停車位置(ここでは駐車スポット432)で後退して車両100と車両520との間に間隔を作るために車両100がたどる、軌道810を生成することができる。当然のことながら、上記のように、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両100に入る前または入った後に、車両100が軌道810に沿っていつ後退すべきかを決定しなければならない。
【0037】
乗客が車両に入る前または入った後に車両100が後退すべきかどうかを決定するために、コンピューティングデバイス110は、車両の乗客に関する停車のコンテキストを決定することができる。例えば、コンテキストが、実際の乗客または潜在的な乗客(すなわち、乗客である可能性のある歩行者)が近くにいることを示す場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両100に入るのを待ち(ならびにドアも閉め、かつ/またはシートベルトもしくは他の拘束装置も締め)、その後、車両を操作して後退させるようにすべきである。コンテキストが、実際の乗客または潜在的な乗客が車両の近くにいないことを示している場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。これは、車両100の前の、車両520などの物体から離れるように後退することを含み得る。
【0038】
場合によっては、コンテキストが乗客が近くにいる可能性が高いことを示しているにもかかわらず、コンピューティングデバイス110は、車両100が1台以上の他の車両によって「閉じ込められた(boxed in)」状態になるのを防ぐために、乗客が車両に入る前に後退することが実際には賢明であると依然として決定することができる。これは、例えば、別の車両が車両100に後ろから接近しているため車両100の後ろに寄せているように見える、または車両100の後ろの別の車両が、車両100の後ろの停車位置から出ようとしている(例えば、駐車スポット430内の車両530など)、といった理由の場合である。これは、たとえ認知システムが実際に車両が寄せることもしくは出ることを観察していない場合であっても、履歴上、同一もしくは類似した時間(すなわち、同じ日時、同じ曜日など)に、複数の車両が駐車スポットや他の停車位置に位置してそこに寄せようとしている、交通量の多いエリアにも当てはまる。例えば、コンピューティングデバイス110は、特定のエリアの交通量および/または過去に停車位置に駐車された車両の数に関する履歴情報にアクセスすることができる。そのような場合、車両100が出ることができるためのスペースを確保するために、後退することが賢明であり得る。
【0039】
さらに、コンピューティングデバイス110は、停車位置に寄せること、車両を後退させることおよび/または前方に寄せることなどの操作を完了するための時間を推定することができる。例えば、停車位置に寄せて後退するための推定時間が、乗客が車両100に到着する可能性の高い時間までの推定を超え(以下でさらに説明する)、コンピューティングデバイス110は、車両が操作を完全に放棄すべきである(例えば、二重駐車または単に停止して待機する)と決定することができる。別の例として、車両がすでに停車位置内に位置しており、前方に寄せてから後退するための推定時間が、乗客が車両110に到着する可能性が高い時間までの推定を超える場合、コンピューティングデバイス110は、車両を制御して、停車位置へ(後退せずに)前方に寄せて、乗客が車両に乗車するのを待ってから、後退させることができる。別の例として、前方に寄せてからバックするための推定時間が、別の車両が車両110に到着して、車両を車両の前から停車位置に「閉じ込める(box)」可能性が高い時間までの推定を超える場合、コンピューティングデバイス110は、停車位置内で車両110を前方に操作し、乗客が乗車するのを待ってから、後退することを決定することができる。別の車両が車両110に到着する可能性が高いこの推定値は、停車位置または停車位置周辺のエリアの履歴データ、および/または近くの停車位置に寄せている車両の数の観測値、現在の交通量、時刻、曜日、日付などに基づくことができる。
【0040】
別の例として、車両110の前の車両(例えば、駐車スポット434内の車両520など)がすぐに出発する可能性が高い場合、コンピューティングデバイス110は、コンテキストが乗客が近くにいる可能性が高いことを示している場合であっても、後退させるのではなく、実際に車両を前方に寄せることができ、コンピューティングデバイスは、スペースを確保するために実際に車両を前方に寄せることができる。例えば、人が他の車両に乗り込んでいる、方向指示器が作動している、他の車両から排気ガスが出ている、などの特定の信号が認知システムによって観察される場合、コンピューティングデバイス110は、他の車両が停車位置から出ようとしている可能性が高いと判断することができる。ここでも、そのような場合、コンピューティングデバイスは、スペースを確保するために実際に車両を前方に寄せることができる。
【0041】
コンテキストが乗客が近くにいる可能性が高いことを示しているにもかかわらず、コンピューティングデバイス110が、車両が後退すべきかもしくは前方に寄せるべきであると判断した場合、コンピューティングデバイス110は、外部の三次的通信システム(例えば、スピーカーを介した音声、表示画面への表示など)を介して乗客にメッセージを通信するか、またはメッセージを(例えば、ネットワーク460を介して)乗客クライアントコンピューティングデバイスに送信することによって、乗客が車両に入ろうとする前に車両が後退操作を完了するのを待つ必要があることを、乗客に示すことができる。
【0042】
場合によっては、コンテキストを判断することは、乗客が車両100に到着する可能性が高いときまでの時間を判断することを含み得る。この判断は、例えば、乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスの位置情報に基づいて行うことができる。例えば、コンピューティングデバイス110は、乗客のクライアントコンピューティングデバイス(例えば、携帯電話)によって生成された位置情報(GPS座標など)を定期的に受信することができる。この位置情報は、車両100の配車システムのサーバコンピューティングデバイスから、および/またはクライアントコンピューティングデバイスから直接、受信することができる。コンピューティングデバイス110は、この位置情報が、毎秒2メートルなどの通常の歩行速度を想定して、乗客が所定の閾値期間内に車両100の現在の位置に到達する可能性が高いことを示しているかどうかを判断することができる。もしそうである場合、これは、実際の乗客が車両100の近くにいることを示し得、そのような状況では、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両100に入るのを待ってから、車両を後退させるべきである。もしそうでない場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。
【0043】
あるいは、コンピューティングデバイス110は、乗客および/または他の乗客の履歴データに基づいて、乗客が車両100に到着する可能性が高いときまでの時間を判断することができる。例えば、履歴データには、特定された停車位置、近くの(例えば、徒歩もしくは直線距離でおおむね50メートル以下の)停車位置、または他の同様の位置(同様のサイズもしくは位置の駐車場または同様のタイプの店舗など)で、この乗客および/または他の乗客をピックアップするために車両がいったん停止して、このような乗客が車両に到達するために要する、平均時間に関する集計統計が含まれ得る。履歴データは、異なる所定の時間帯および/または曜日にセグメント化された「スライスされた」データであり得る。この履歴データは、地図情報に埋め込まれ、複数の停車位置を含む地理的領域および/または特定の停車位置に関連付けられ得る。この履歴データから、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両100に到達するための予想される時間量を決定することができる。
【0044】
次に、コンピューティングデバイス110は、この予想される時間量が、乗客が、通常の歩行速度(おおむね毎秒2メートルであり得る)を想定した所定の閾値期間内に車両100の現在位置に到達する可能性が高いことを示すかどうかを決定することができる。もしそうである場合、これは、実際の乗客が車両100の近くにいることを示し得、そのような状況では、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入るのを待ってから、車両を操作して後退させるようにすべきである。もしそうでない場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。
【0045】
加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、車両100の近くに歩行者がいるかどうかを判断することを含み得る。例えば、コンピューティングデバイス110は、車両100の認知システムからのセンサデータを使用して、車両100の所定の閾値距離内、例えば、おおむね100メートル以内の歩行者を、識別または検出することができる。これは、潜在的な乗客が車両100の近くにあり、おそらく車両に接近する準備ができていることを示し得、そのような状況では、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入るのを待ってから、車両を操作して後退させるようにすべきである。もしそうでない場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。
【0046】
加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、車両100に向かって能動的に前進している歩行者がいるかどうかを判断することを含み得る。例えば、コンピューティングデバイス110は、物体の将来の軌道を予測することができ、それが車両100の位置と重なる場合、これは、歩行者が車両に向かって能動的に前進していることを示し得る。ここでも、これは、潜在的な乗客が車両100の近くにあり、おそらく車両に接近していることを示し得、そのような状況では、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入るのを待ってから、車両を操作して後退させるようにすべきである。もしそうでない場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。
【0047】
加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、コンピューティングデバイス110が、(歩行者が車両100の近くで検出されるかどうかにかかわらず、)乗客に関連付けられたクライアントコンピューティングデバイスとの通信リンクを確立および/または認証したかどうかを判断することを含み得る。例えば、乗客のピックアップ位置からおおむね50メートルもしくはおおむね25秒などの特定の距離内または時間内に一度、コンピューティングデバイス110は、乗客のクライアントコンピューティングデバイス(例えば、携帯電話)とコンピューティングデバイス110との間に、Bluetooth(登録商標)通信リンクを確立しようと試みることができる。このことが発生すると、Bluetooth(登録商標)接続は一般にかなり短い距離で行われるため、これは実際の乗客が車両100の近くにいることを示し得、そのような状況では、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両100に入るのを待ってから、車両を操作して後退させるようにすべきである。もしそうでない場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。
【0048】
加えて、または代わりに、コンテキストを決定することは、乗客のクライアントコンピューティングデバイスの位置情報が、乗客が車両100の近くにいることを示しているかどうかを判断することを含み得る。例えば、コンピューティングデバイス110は、乗客のクライアントコンピューティングデバイス(例えば、携帯電話)によって生成された位置情報(GPS座標など)を定期的に受信することができる。この位置情報は、車両100の配車システムのサーバコンピューティングデバイスから、および/またはクライアントコンピューティングデバイスから直接、受信することができる。コンピューティングデバイス110は、この位置情報が、乗客が車両100の現在の位置からおおむね100メートルなどの所定の閾値距離内にあることを示しているかどうかを判断することができる。もしそうである場合、これは、実際の乗客が車両100の近くにいることを示し得、そのような状況では、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入るのを待ってから、車両を操作して後退させるようにすべきである。もしそうでない場合、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入る前に、車両100を操作して後退させるようにすることができる。
【0049】
図10に戻ると、ブロック1040で、車両は、乗客が車両に入る前または入った後に、停車位置で車両を操作して後退させるようにするかどうかの決定に基づいて、自律運転モードで操作されて後退する。例えば、上記の例に基づいて、コンテキストのいずれかが、車両100が乗客が車両100に入るのを待つべきであることを示す場合は、コンピューティングデバイス110は、例えば
図7に示される場所で、乗客が車両に入るのを待ってから、後退するために軌道810をたどることができる。ここでも、車両100は、自律運転モードで車両520に向かって操作され得、かつ車両100と車両520との間の距離、ここでは
図9のD2は、おおむね数インチほどであり得る。次に、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入るのを待つことができる。これは、例えば、車両のドアが開閉されることによって、かつ/または乗客が、例えば、車両内のボタンを押すことによるかもしくはコンピューティングデバイス110に車両のドアを自動的に閉じさせ得るコマンドでもある、乗車を開始するためのコマンドを話すことによって乗車を開始することによって、確認され得る。ある時点で、プランニングシステム168はまた、車両100が停車位置(ここでは駐車スポット432)から出られるようにするために軌道910を生成することができる。これに関して、乗客が車両100に入った後、コンピューティングデバイス110はまた、軌道910をたどるために自律運転モードで車両を制御することができる。
【0050】
コンテキストのいずれも、車両100が乗客が車両に入るのを待つべきであることを示さない場合は、コンピューティングデバイス110は、乗客が車両に入るのを待つ前に、
図9に示す軌道810をたどるように車両を制御することができる。ここでも、車両100は、自律運転モードで車両520に向かって操作され得、車両100と車両520との間の距離、ここでは
図9のD2は、おおむね数インチほどであり得る。ある時点で、プランニングシステム168は、車両100が停車位置(ここでは駐車スポット432)から出られるようにするために軌道910を生成することができる。これに関して、乗客が車両に入ると、コンピューティングデバイス110はまた、軌道910をたどるために、自律運転モードで車両を制御することができる。
【0051】
本明細書に記載される特徴は、自律車両が特定の駐車動作を実行することを可能にし得る。上記のように、これらの駐車動作は、自律運転モードを有する車両のコンピューティングデバイスが、安全にかつ縦列駐車操作を回避しながら、利用可能な停車位置を見つける能力を向上させることができる。言い換えれば、車両はより小さな駐車位置を見つけることができるため(例えば、長さ5.1~5.2メートルのバンは、15メートル以上の停車位置ではなく、8~10メートルの停車位置で停車できる可能性がある)、車両は、乗客を待つために停車位置を見つける可能性が高く、停車位置を見つける前に周囲を1回以上周回しなければならない可能性は低い。さらに、車両が停車位置で後退するタイミングは、車両の潜在的もしくは実際の乗客に関する停車のコンテキストに依存するため、これにより、車両が停止し、ここでも乗客にとって危険であり得る、車両が後退する直前もしくは後退中に、知らない乗客が車両に乗り込もうと試みる状況を回避することができる。
【0052】
特段の記述がない限り、前述の代替例は、相互に排他的ではないが、独自の利点を達成するために様々な組み合わせで実施することができる。上述した特徴のこれらおよび他の変形および組み合わせは、特許請求の範囲によって定義される主題から逸脱することなく利用することができるので、実施形態の前述の説明は、特許請求の範囲によって定義される主題を限定するものとしてではなく、例示として見なされるべきである。加えて、本明細書に記載の例、ならびに「など」、「含む」などと表現された語句の提示は、特許請求の範囲の主題を特定の例に限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、例は、多くの可能な実施形態のうちの1つだけを例示することが意図される。さらに、異なる図面中の同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を特定することができる。