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7270844テレフタル酸混合物の製造方法、テレフタル酸混合物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】テレフタル酸混合物の製造方法、テレフタル酸混合物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/16 20060101AFI20230428BHJP
   C07C 27/02 20060101ALI20230428BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20230428BHJP
   C08G 63/181 20060101ALI20230428BHJP
   C08G 63/52 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
C07C27/02
C07C51/09
C08G63/181
C08G63/52
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022523124
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021063917
(87)【国際公開番号】W WO2022033735
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】102020123772.3
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521106566
【氏名又は名称】リトテク ウムヴェルテクニク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】RITTEC UMWELTTECHNIK GMBH
【住所又は居所原語表記】Moorweide 13,21339 Lueneburg Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ビールマン,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】ブレポール,エステル
(72)【発明者】
【氏名】アイヒャート,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】サリコフ,ヴィタリ
(72)【発明者】
【氏名】ショール,シュテファン
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-323411(JP,A)
【文献】特開2020-105088(JP,A)
【文献】特表2012-514111(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0024799(KR,A)
【文献】米国特許第05473102(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C07C 27/02; 51/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合系ポリマー廃棄物(CP廃棄物)から再生テレフタル酸(r-TA)と再生イソフタル酸(r-IA)との混合物を製造する方法であって、
- CP廃棄物のイソフタル酸(IA)含有量を分析する工程、
- 前記CP廃棄物を、IA含有量の異なる2つ以上の画分に分割する工程、
- 前記画分を混合して、混合物中のIA含有量を所望の量にする工程、および
- 前記混合物を処理して、r-IA異性体含有量が0.001重量%~25重量%に調整されたr-TAとr-IAとの混合物を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
前記CP廃棄物が、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(エチレンテレフタレート-co-イソフタレート)コポリマー、ポリブチレンテレフタレート、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸構造単位を含むポリエチレンテレフタレートコポリマー、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CP廃棄物が、IAの割合が0.1重量%未満である第1の画分と、IAの割合が0.1重量%を超える第2の画分とに分割される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記画分を混合する工程の前に、1つ以上の画分を圧縮および/または粉砕する工程が行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記画分を混合する工程が、重量計量を経て押出機内で行われ、異性体比率(TA:IAモル比)が99.999:0.001~75:25になるように前記混合物が調整される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記r-TAとr-IAとの混合物を得る処理工程が、塩基触媒による解重合反応によりジオールが得られる処理と、r-TAとr-IAとを分離精製する処理とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
生成物としてのr-TAとr-IAが遊離酸としてではなく塩として得られる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
得られた前記生成物を重合させる重合工程を行って、再生ポリエチレンテレフタレート(r-PET)、再生ポリブチレンテレフタレート(r-PBT)、または再生ポリプロピレンテレフタレートを生成物として得る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アルキド樹脂または飽和もしくは不飽和のポリエステル樹脂を製造するための、r-PET、r-PBT、再生ポリプロピレンテレフタレート、またはさらなる縮合系ポリマーを生成する重合反応における、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法によって得られるr-TAとr-IAとの混合物の使用であって、該混合物中のr-IA含有量が0.001重量%~25重量%である、使用。
【請求項10】
前記混合物中のr-IA含有量が0.01重量%~10重量%である、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生テレフタル酸(r-TA)と再生イソフタル酸(r-IA)との混合物を製造する方法であって、本発明によりその混合比を所望の通りに設定することができる方法、および対応する混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂は、特に、飲料ボトル、サラダボウルやソーセージ、チーズなどの食品包装、繊維、繊維製品、自動車部品、透明・不透明・色付きの洗剤ボトル、製造廃棄物などとして大規模に使用されている。このような目的には、一般に縮合系ポリマーが用いられ、特にポリエチレンナフタレート、ポリ(エチレンテレフタレート-co-イソフタレート)コポリマー、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸構造単位を含むポリエチレンテレフタレートコポリマーが用いられる。
【0003】
PETとしては、化石由来の基礎化学物質から直接製造される、いわゆるバージンPETや、メカニカルマテリアルリサイクルプロセスに完全または部分的に由来する再生プラスチックから得られる再生PET(r-PET)と呼ばれるものがある。このリサイクルプロセスは、リサイクルするプラスチックがポリマーベースの多層複合材料である場合、時間がかかることが多い。多層複合材料には、PETのほか、バリア層としてポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)またはエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)からなる薄層、撥水層としてエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)からなる層が含まれる。ボール紙、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)もしくはこれらのコポリマー、または金属からなる層が単独で、または組み合わせられて含まれていることもある。プラスチック廃棄物がほぼ完全に分別されていたとしても、リサイクルは簡単ではない。PET廃棄物からテレフタル酸を得るための多くのプロセスが先行技術で公知である。このテレフタル酸は原料として再利用可能であり、再生テレフタル酸(r-TA)と呼ばれている。このようなプロセスは、高圧および/または高温での操作を要し、また、多くの場合、バッチプロセスであるため、かなり非経済的である。PETを含む廃棄物を、アルコールとNaOHを用いた塩基触媒による解重合により連続プロセスで分解できることが知られている。
【0004】
先行技術によりPETや他の縮合系ポリマーを製造する場合、目的のポリマーの特性に影響を与えるために、重合混合物に精製テレフタル酸(PTA)に加えて精製イソフタル酸(PIA)が添加される。両者のモル比は通常99:1(PTA:PIAモル比)である。PTAとPIAは、飽和または不飽和のポリエステル樹脂やアルキド樹脂の製造にも使用される。これらは、特に、構造部品の製造や、コーティング剤、シーラント剤、接着剤、塗料やニスの製造において、固体材料として、あるいは複合材料の一部として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良された再生テレフタル酸(r-TA)を製造する方法および改良されたr-TAを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の方法に関する課題は、
- ポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物のイソフタル酸(IA)含有量を分析する工程、
- 前記PET廃棄物を、IA含有量の異なる2つ以上の画分に分割する工程、
- 前記画分を混合して、混合物中のIA含有量を所望の量にする工程、および
- 前記混合物を処理して、r-IA異性体含有量が0.001重量%~25重量%に調整されたr-TAとr-IAとの混合物を得る工程
を含む方法により達成される。
【0007】
本発明は、様々な供給源からのプラスチック材料のリサイクルの可能性を広げ、後の使用に非常に有利なr-TA/r-IAの比率に設定できるという大きな利点を有する。リサイクルするプラスチックは連続式反応器で処理され、各プラスチックに対応するジカルボン酸とジオールが生成物として得られる。すなわち、PETの場合、異性体同士であるr-TAとr-IAの形態のベンゼンジカルボン酸およびモノエチレングリコール(MEG)が生成物として得られる。本発明により得られる比率は、r-TAを用いたr-PETの製造において、工程上の手間を軽減できるような非常に有利なものである。これは、r-IAがある割合で既に含まれていることで、後でr-IAを混和するという作業工程が省略されるためである。
【0008】
本発明の方法における分析工程において、リサイクル材料から採取したサンプルを処理、特に、HPLCで分析する。次に、リサイクル材料を2つの画分に分割し、特に、IAの割合が0.1重量%未満である第1の画分と、IAの割合が0.1重量%を超える、好ましくは1重量%を超える、特に好ましくは1.5重量%を超える第2の画分に分割する。好ましくは、リサイクル材料を3つの画分に分割する。第3の画分は、IAの割合が3重量%を超える画分である。リサイクル材料が分別されている場合は、通常、それぞれのIA含有量はほぼ一定で1つの値である。したがって、ボトル、熱成形パッケージ、ポリエステル繊維製品、製造廃棄物など、高純度に分別された様々なリサイクル材料におけるIA含有量はそれぞれ異なるものの、各リサイクル材料に特有のIA含有量となっている。したがって、これらのリサイクル材料を、本発明における画分として使用することができる。また、本発明において、IA含有量の異なるリサイクル材料から、後の混合工程に必要なIA含有量を有する画分を生成することができる。これには、第1のリサイクル材料にIA含有量の少ない第2のリサイクル材料を所望の割合で混ぜることにより、第1のリサイクル材料のIA含有量を減らすこと、また、第1のリサイクル材料にIA含有量の多い第2のリサイクル材料を所望の割合で混ぜることにより、第1のリサイクル材料のIA含有量を増やすことも含まれる。このようにして後の用途に合ったIA含有量を得ることができることは有利である。
【0009】
本発明において、混合工程を行う前に、1つ以上の画分を圧縮する工程を設けてもよい。特に繊維系の出発材料を使用する場合、このような工程を設けることは、後の処理効率を向上させるために必要または望ましい場合がある。
【0010】
複数の画分を混合する工程において、各画分は、「分析」工程からの混合仕様に従って混合され、特に固体ディスペンサーでの重量計量を経て、ドラムミキサーなどの適切な混合機で混合される。また、前記廃棄物が、対応する数の重量計量ユニットにより押出機に計量供給されると同時に混合されるという方法も可能であり、特に有利である。本発明において、分析工程から求められる異性体比率(TA:IAモル比)が100:0~75:25、好ましくは99:1~90:10、最適には99:1~97:3になるように混合物が調整される。
【0011】
混合後、PET廃棄物混合物を処理することにより、r-IA異性体含有量が0.001重量%~25重量%に調整されたr-TAとr-IAとの混合物を得ることができる。この処理は、具体的には、塩基触媒による解重合反応を行って、該反応により生成したジオールを得る工程と、r-TAとr-IAを分離精製する工程とを含む。
【0012】
得られたr-TA/r-IA混合物の異性体比率は、通常、出発材料ポリマーまたは処理工程前の画分混合物と同じか非常に近い比率であり、多くの場合、99:1(r-TA:r-IAモル比)である。その結果、本発明において、得られた異性体混合物は、イソフタル酸またはテレフタル酸を添加せずに、あるいは少量だけ添加して、PETを生成する重縮合反応工程に供給することができる。このことは、IAの方がTAより市場価格が高いことから、コスト面で有利である。本発明による混合物を使用することにより、リサイクル過程において手間のかかる異性体分離とr-PET重合前の異性体混合物の再調整が不要となるため、非常に有利である。
【0013】
本発明の方法の別の実施形態において、r-TAより関心の高いr-IAを得るために、処理工程により得られたr-TA/r-IA混合物を、再結晶または溶融結晶化などの文献公知の方法を用いてそれぞれの異性体に分離する。
【0014】
上記の物質に関する課題は、r-IA異性体含有量が1.5重量%~3重量%に調整されたr-TAとr-IAとの混合物、特に本明細書に記載の方法によって得られるこのような混合物によって達成される。
【0015】
上記の用途に関する課題は、r-PETを生成する重合反応において、前記混合物を用いることにより達成される。
【0016】
以下、本発明の方法の1つの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
基本手順
イソフタル酸(IA)含有量の測定に関しては、廃棄物サンプルを解重合またはトランスエステル化などの前処理工程に供して分析用に調製し、これらを用いてクロマトグラフィー(GC、HPLC)またはNMR分光法により分析を行う。
【0018】
このようにして得られた各廃棄物画分の含有量情報を処理して、混合仕様を作成する。これは、処理工程終了時の粗生成物中のイソフタル酸の所望の含有量を設定するために使用される。
【0019】
すでに存在しているか、本発明において収集された複数の廃棄物画分を、次の工程で粉砕および/または圧縮してもよい。この工程は、繊維や繊維状廃棄物画分、低強度のフィルム材料においては、「解重合」段階への供給を問題なく行うために有利である。
【0020】
圧縮工程を行わずに、または圧縮工程を行った後、「分析」工程からの混合仕様に従って、「混合」工程で廃棄物画分を混合する。混合は、固体ディスペンサーでの重量計量を経て、例えばドラムミキサーなどの適切な混合機で行われる。しかし、好ましい形態では、各廃棄物画分が、別個の重量計量ユニットにより押出機に計量供給されると同時に混合される。本発明において、異性体比率(TA:IAモル比)は、100:0~75:25、好ましくは99:1~90:10、最適には99:1~97:3に設定される。
【0021】
ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(エチレンテレフタレート-co-イソフタレート)コポリマー、ポリブチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸構造単位を含むポリエチレンテレフタレートコポリマーなどの縮合系ポリマー廃棄物を処理する工程には、「解重合」工程がサブ工程として含まれる。「解重合」工程は、各画分が前記混合仕様に従った割合になるように重量計量されて供給された連続運転二軸スクリュー押出機内で行われる。縮合系ポリマーのケン化反応または解重合反応は、固体の水酸化ナトリウムを添加し、押出機内で連続的に行われる。本発明において、適当な時点で水を計量して供給してもよい。この実施形態において、6.66kg/hのPET含有廃棄物、2.91kg/hの水酸化ナトリウム、最大10kg/hの水が処理された。プロセス中の水酸化ナトリウムとPET廃棄物の比率は、ポリアルキレンテレフタレートまたは上記のポリエチレンイソフタレートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸構造単位を含むポリエチレンテレフタレートコポリマーの構成繰り返し単位に基づく化学量論比が約2.1で一定に保たれるように設定される。
【0022】
縮合系ポリマーと水酸化ナトリウムが反応すると、縮合系ポリマーの繰り返し単位あたり1モルのジアルコールが遊離する。縮合系ポリマーがPETである場合は、モノエチレングリコール(MEG)と微量のジエチレングリコール(DEG)がジアルコールとして遊離する。このMEGまたはDEGは、押出工程中または押出工程後に蒸留により回収され、蒸留、精留または吸着による精製後、処理またはプラスチックサイクルに供給される。
【0023】
このサブ工程では、さらなる反応生成物としてジカルボン酸の塩が生成される。出発材料がPETと水酸化ナトリウムである場合は、テレフタル酸二ナトリウムが生成される。テレフタル酸二ナトリウムは水に溶解するため(20℃で約140g/L溶解する)、押出機に水を添加すると押出機内で溶解プロセスが始まる。これにより、時間を要する次のサブ工程の処理時間が大幅に短縮される。押出機に水を添加すると粘度が低下するため、材料流れの搬送効率が向上し、連続処理が促進される。本発明において、押出後に水をさらに添加してもよい。例えば、攪拌槽またはインライン分散機に水をさらに添加してもよい。インライン分散機は、ポンプ作用により、溶解した原料をシステム内で搬送する働きもする。
【0024】
押出機からの反応排出物は、テレフタル酸二ナトリウム、イソフタル酸二ナトリウム、MEG、水酸化ナトリウムの未反応分、およびPET残渣などのPET廃棄物で構成される水性懸濁液である。投入材料の組成によっては、PAや染料の分解物や、PE、PP、PSなどの他のポリマーが少量含まれる場合もある。
【0025】
PEまたはPPなどのポリオレフィンやPA6.6などのポリアミドは、プロセス中、好ましい操作条件(T=130℃~160℃)下で化学的に変化せず、次のサブ工程である「ろ過」処理工程で容易かつ効果的に分離できる。ポリアルキレンを含有する出発材料は、押出機で一回搬送される間に、ポリアルキレンの92%~97%が解重合反応で分解される。投入材料がPETである場合、さらに水を加えて得られるテレフタル酸二ナトリウムの原料溶液を、複数のろ過段階とそれに続く吸着および/または抽出とで構成される精製カスケードに供することにより、不純物および異物が除去される。
【0026】
精製した原料溶液に適当な条件下で酸を加えてr-TAとr-IAとの混合物を沈殿させ、連続ろ過して回収する。母液から処理水と対応する塩を、蒸発および晶析などの適切な方法で回収することができる。必要であれば、続いて再結晶を行うことにより、r-TA/r-IA混合物の純度および形態をさらに適切に調整することが可能である。出発材料がPETである場合、調整後に得られる異性体混合物には、75重量%~100重量%のr-TAと25重量%~0重量%のr-IAが含まれる。
【0027】
本発明において、この最後の工程に続いて、MEGまたはr-MEGと得られた混合物を公知の方法で重合する重合工程を行ってもよく、この重合工程によりr-PETが得られる。
【0028】
実施形態1
PE層を有するPETからなる、多層食品トレーの製造により生じた製造廃棄物を画分1とする。ポリエステル繊維製品を画分2、使用済みPETボトルを画分3とする。3つの画分を、洗浄し、乾燥した後、業界標準の14mm未満、可能であれば3mm未満のサイズに粉砕し、リサイクルプロセス用に調製する。
【0029】
各廃棄物画分からサンプルを採取する。採取した各サンプル30gを13.1gの水酸化ナトリウムと実験室用混錬機(Haake PolyLab Rheomix 600)で140℃で5分間混合する。得られたペーストを500mLの水に溶解し、残渣をろ去する。ろ液を水で1:25に希釈し、HPLCで測定を行う。HPLC測定における操作パラメータは以下の通りに設定した。
【0030】
【表1】
【0031】
HPLCによるIA含有量の測定により、第1画分のIA含有量は1.65%、第2画分は0.09%、第3画分は3.17%という結果が得られた。
【0032】
次に、粉砕したPET含有廃棄物を、不活性ガス雰囲気下、同方向回転二軸スクリュー押出機に連続的に計量供給した。各画分が別個の計量装置で計量され、総流量10kg/hで、全体の流れにおける異性体比率が98.5:1.5(TA:IAモル比)になるように供給された。さらに別の計量装置により、4.37kg/hのNaOHが二軸スクリュー押出機に計量供給された。この供給流れにより、PETの構成繰り返し単位に基づく化学量論比としてNaOH 1molに対してPET約2.1molが一定に保たれる。押出機のハウジングの一部の領域では、80℃~180℃になるように温度制御を行った。押出機の処理部において、反応生成物中のテレフタル酸二ナトリウム/イソフタル酸二ナトリウム混合物を溶解させるために、計量装置を用いて10kg/hの水をさらに添加した。特にビーズ状の水酸化ナトリウムを使用する場合は、密に噛み合うスクリューエレメントを備えた二軸スクリュー押出機を使用することで、反応混合物を十分に混合させることができる。また、固形物には大きな機械的ストレスが付与される。解重合反応の温度は、各プラスチックの分解点未満、特にMEGの沸点未満になるように選択される。押出機で一回搬送される間に、プラスチックの92%~97%が解重合反応で分解される。
【0033】
押出機からの排出物は、テレフタル酸二ナトリウム/イソフタル酸二ナトリウム混合物の飽和溶液、未溶解のテレフタル酸二ナトリウム/イソフタル酸二ナトリウム混合物、未反応PET残渣、MEG残渣、DEG、染料およびPE残渣で構成される懸濁液であった。押出機の排出口から採取したサンプルのケン化度を測定したところ、PET含有廃棄物のPET含有量に対して92%~97%であった。
【0034】
次の工程において、得られた懸濁液に十分な量の水を加えてテレフタル酸二ナトリウム/イソフタル酸二ナトリウム混合物を完全に溶解させ、多段階精製カスケードに供して、すなわち、ろ過と、従来技術による吸着精製プロセスおよび/または抽出精製プロセスとに供して、不純物を分離除去した。リサイクルプロセスのこの時点で、PET/PE多層材料からPE残渣が分離され、繊維製品材料から染料が分離される。
【0035】
次いで、精製した溶液を酸で処理し、r-TAとr-IAとの混合物を沈殿させる。酸としては、25%(w/w)の濃度の硫酸が本発明において特に好適である。
【0036】
この混合物を、ろ過、再懸濁、再結晶、再ろ過、および複数の洗浄工程とその後の乾燥という処理に供し、最終生成物を得た。染料やビスフェノールAなどの残存不純物は除去されている。本発明の方法は、添加物、充填剤、着色剤、顔料、ケーシング、ラベル、金属および金属コーティング、ボール紙などの不純物の存在も許容できることが利点である。このような不純物は、ろ過やその他の操作工程で除去される。
【0037】
得られたr-TA/r-IA混合物を、本発明の方法で得られたMEGまたは他の供給源由来のMEGと重合させる工程は、これら2つのモノマーを加熱可能な撹拌反応器中で混合することにより実施される。重量分率30.8重量%のr-MEGと、重量分率0.33重量%のr-DEGと、触媒としての約0.025重量%のアンチモングリコレートと、0.028重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを、68.8重量%のr-TA/r-IA混合物に添加して、重合反応混合物を調製した。重合反応は、不活性ガス雰囲気下、よく攪拌しながら、230℃~280℃、特に240℃の温度で行った。真空にして、遊離した反応水を留去することで、重縮合反応の平衡の生成物側へのシフトを強制的に行った。反応終了後、本発明により得られたr-TA/r-IA混合物からr-PETが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
下記の図面は以下の通りである。
【0039】
図1】本発明の方法の略図である
図2】本発明の方法の処理工程の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明の方法のブロック図である。適切な廃棄物a~nは、最初の工程1で洗浄および粉砕され、予備乾燥を経ずに、または予備乾燥を経て、続く工程2で分析に供され、IA含有量が求められる。この分析結果に基づいて、各廃棄物が分画または分類され、混合仕様が作成される。ここでは廃棄物画分cに関してのみ工程3として圧縮工程が示されているが、これは任意で行ってもよい工程である。その後、必須の工程として、複数の画分を混合する工程4が行われ、所望のIA含有量を有するPET廃棄物が得られる。工程4へは曲線矢印で示されており、この矢印は、所望の画分が混合仕様に従ってそれぞれの割合で混合装置、特にスクリュー押出機に搬送されることを表している。混合された画分は、工程5で処理され、r-IA異性体含有量が0.001重量%~25重量%に調整されたr-TAとr-IAとの混合物が最終的に得られる。
【0041】
図2は、処理工程5をより詳細に示したものである。この処理工程では、まず、NaOHと任意で水が添加され、塩基触媒による解重合反応6が行われる。解重合反応工程の終了時に、MEG、DEGおよび水の流れが得られ、この流れはMEGの精製7に供され、その結果、MEGとDEGが得られる。解重合反応6で得られたペースト状物質フローは、水と硫酸が添加されて溶解工程8に供され、残渣(RES)はろ過工程9で分離除去される。晶析工程10(その後のろ過を含む)では、水と硫酸が添加されて、所望の生成物と、特にNaSO4とが得られる。
【0042】
この方法は、PET製品を新たに製造するために再利用される高品質の出発材料としての、r-IAが所定の割合で含まれるr-TAとr-IAとの混合物が容易に得られるという大きな利点を有する。この高品質な原料を使用すれば、r-PET製品を製造する際にIAを添加する工程が不要になるため、同等の特性を有するr-PET製品を安価に製造することができる。これは、本発明における出発材料の分析および処理前の混合により可能となるものである。この分析と混合という工程を追加することで、高品質な製品の製造が可能になる。
図1
図2